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ものんくる(角田隆太&吉田沙良) インタビュー

2011年1月に活動を開始したばかりの新人ながら、ビッグバンドスタイルのジャズと日本語ポップスをブレンドした他にはないサウンドで、耳の早いリスナーの注目を既に集めていたグループ、ものんくる。
メンバー全員がほぼ20代という新世代グループが、5月22日に実質上のファースト・フル・アルバム『飛ぶものたち、這うものたち、歌うものたち』をリリースしました。
プロデューサーは、鬼才、菊地成孔。
氏曰く、「ギル・エヴァンスのビッグバンドやカーラ・ブレイのオーケストラ、チャーリー・ヘイデンのリベレイション・ミュージック・オーケストラなどを思い起こさせる、完成度の高いモダンアレンジ・サウンドで、全曲のクオリティが高い」というお墨付きです。
めくるめくビッグバンド・アレンジの中でも映える歌声で、物語のような日本語の歌詞を絶妙な温度で聴かせてくれます。
一聴して、洗練された新しいアコースティック・ポップ・ミュージックという印象を受けるのですが、これからお届けするインタビューでは、それだけではない、想像できなかったルーツやメッセージを発見することができました。

グループの中心人物のお二人、作詞作曲編曲・ベースを担当している角田隆太さんとボーカルの吉田沙良さんにお話を伺いました。


ものんくる『飛ぶものたち、這うものたち、歌うものたち』
飛ぶものたち、這うものたち、歌うものたち

■タイトル:『飛ぶものたち、這うものたち、歌うものたち』
■アーティスト:ものんくる
■発売日:2013年5月22日
■レーベル:Airplane label
■カタログ番号:AP1049
■価格:2,625円(税込)
■アルバム詳細:http://airplanelabel.shop-pro.jp/?pid=57523301


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ものんくる(角田隆太&吉田沙良) インタビュー

■お二人の出会いを教えて下さい。

[角田隆太] 他の人のバンドのメンバーとして集められた際に出会いました。

[吉田沙良] 私はまだ大学生の頃でした。

[角田隆太] 僕は大学を卒業して1年目でしたね。


■その後、どうして一緒にバンドをやることになったのですか?

[角田隆太] 楽しかったんですよね。

[吉田沙良] ちょうど、私がメインのCDを作ってみないかという提案を大学から頂いて。でも、一緒に録りたいメンバーがいないなーと思っていて。その頃さっきの他の人のバンドで角田さんたちと一緒にライブする機会があって、この人達となら一緒にやりたいなと思いました。それで、私から声をかけたのが始まりです。角田さんがすごく素敵なオリジナル曲を書くので、それを録音したところから、ものんくるが始まりました。


■それは何年前ですか?

[角田隆太] 2年前ですね。2011年1月に結成してその年に最初のミニアルバムを(SG Worksより)リリースしました。


■何度も質問されているかもしれませんが、「ものんくる」という言葉に何か意味はあるのですか?

[角田隆太] 伊丹十三さんが監修していた「ものんくる」という雑誌があるという話を聞いて、その響きが気に入って頂いちゃいました。なので、それ自体に特に意味は無いんです。


■ものんくるの音楽は、モダンなビッグバンド・アレンジと日本語の歌詞による日本の歌の世界観がミックスした、新しいアコースティック・ポップ・ミュージックという風によく言われていると思うんですが、結成当初からそのようなスタイルだったんですか?

[角田隆太] 最初は管楽器が2人しかいなかったのでビッグバンドではなかったですけど、サウンドはそれほど変わっていないですね。


■ものんくるサウンドの源を少し知りたいなと思うのですが、音楽にハマったきっかけは何ですか?

[角田隆太] 一番最初にすごくいいなと思ったのは、aikoでしたね。友達の家にあった『桜の木の下』というアルバムを聴いて、音楽スゲーと思いましたね。その時は小学生だったので具体的に何がいいかはわからなかったんですけど、音楽を聴いていて幸せになったという経験が初めてでした。


■その時は何か楽器は演奏していたんですか?

[角田隆太] やってなかったです。


■じゃあ、普通に聞いていて衝撃を受けたんですね。

[角田隆太] それからずっとこのアルバムだけを聴いていました。


■楽器を始めたのはいつですか?

[角田隆太] 中学生の時に友達とかもやり始めたし、クラシックギターを習いました。それで中学3年生の時に友だちにバンドに誘われたんですが、ギターが既にいたのでベースをやることになりました。よくある展開ですね(笑)。


■そのバンドは何を演奏していたんですか?

[角田隆太] オリジナルのメロディック・ハードコアです。


■メロコアだ!オリジナルで(笑)。全くそんな片鱗を感じさせないんですけど(笑)。

[角田隆太] あ、そうですかね(笑)。


■僕の中で、ものんくるのサウンドからどんどん離れていっています(笑)。aikoの方がまだ近い。

[角田隆太] 確かに(笑)。


■しばらくバンドは続くんですか?

[角田隆太] 大学2年生までメロコアやってましたね。で、大学1年生の時に、また友達に誘われてビッグバンドサークルに入るんですよ。


■メロコアをやっていた人がビッグバンドサークルに入るんだ!何で(笑)?

[角田隆太] その友だちが好きだったんで(笑)。仲良くなりたかったんですよね。


■あるある。

[角田隆太] ありますよね(笑)?


■じゃあ、大学でビッグバンドに入ってアップライトベースを始めたんですね。それまでは全くジャズは聴いていないですよね?

[角田隆太] 聴いていなかったですね。


■そこから聴き始めて、4年後に卒業してすぐに、ものんくるがあるんでしょ?何か早いね(笑)!

[角田隆太&吉田沙良] 笑

[角田隆太] 僕としてはメロコアやっているのとあんまり変わらない気持ちでやっているんですけどね。


■まじで!?例えばどの点ですか?

[角田隆太] ボーカルが声を張って、、、

[吉田沙良] エモさです。(笑)


■あー!なるほどね~!確かにボーカルがピークでは声を張ってるのが聴けますね。ものんくるの曲は1曲の中にピークが2回3回と来るアレンジですよね。それはメロコアから影響を受けているんですか(笑)?

[角田隆太] あ、そうですね。メロコアは1曲の間ずっと張っていますからね。それが(ものんくるでは)ちょっと凹んだりして繰り返すみたいな(笑)。


■沙良さんの音楽にハマったきっかけはいかがですか?

[吉田沙良] 物心ついた時からずっと、歌を歌いたい子で、歌手になるのが最初から夢でした。ちっちゃい時から歌うのが好きでしたね。


■その頃特に好きだった曲などありますか??

[吉田沙良] 3歳とか4歳だったので全然覚えていないんです。物心ついたのが小学校3年生の時だったので、それまではポワポワ生きていました(笑)。物心ついてからは、お姉ちゃんが聴いていた音楽を一緒に聴いてますます歌うことが好きになったんですけど、特に誰かみたいになりたいというのはなかったです。お姉ちゃんの影響で宇多田ヒカルとかミスチルとかを聴いていました。


■小学校3年生でその頃かぁ。僕は成人していましたよ(笑)。渋谷系とかサバービアとかは知ってる?

[吉田沙良] さ・ばー・び・あ??


■笑

[角田隆太] わかんないですね。


■で、沙良さんもバンドを始めるんですか?

[吉田沙良] バンドは全然やったことがなくて、ものんくるが初めてです。それまでは、とにかく歌うことが好きだったので、中学校で合唱部に入ってコンクールに出たり、部活でミュージカルに出たりしていました。


■その影響は、ものんくるのドラマチックな歌から感じますね。

[吉田沙良] どうやったらプロになれるのかをずっと考えた結果、クラシックを高校で学ぼうと思って桐朋学園で声楽を習いました。でもその頃からクラシックが好きじゃなかったんで、、、


■笑

[吉田沙良] 基礎を習うために入ったので好きではなくって。隠れて自分で曲を作ってピアノで弾き語りをしたりしてポップスをやっていました。それで、クラシックはもういいだろうと思って、やったことのない音楽をやってみたいなと思って洗足学園音楽大学のジャズ科に入学しました。


■なるほど。

[吉田沙良] そこで初めてジャズを聞いてかっこいいな~、と思いました。ジャズってバンドを組まなくてもその辺にいる人たちでセッションしてライブしてってできるし。そんなことをしていたら角田さんと出会いました。


■じゃあ、学外の活動で出会ったんですね。ふたりともジャズとは大学で出会うんですね。ジャズは好きですか?

[吉田沙良] 高校生の時に自分で曲を作ってライブをしていたんですけど、自分の曲が好きじゃなかったんですよ(笑)。でもライブをしたいし歌いたいから作ってやってたんですけど、ジャズと出会って、こんなにいい曲がすでにあるじゃないかと。その曲達を自分なりに吸収してライブでやっていいんだ、という環境に初めて出会ってすごく楽しくなりました。


■そりゃもう、もってこいだよね。

[吉田沙良] (笑)。ジャズっていうツールが面白いなあと思って。

[角田隆太] ジャズは人間的な音楽という気がしますね。他の音楽だったら前もって準備してちょっとかっこつけたりできるけど、ジャズはそういうことは一切できないし、人間的な駆け引きで成立していくような感じのところが面白いですね。


■好きなジャズミュージシャンはいますか?

[吉田沙良] わたしは、、、、誰だっけ?


■笑

[角田隆太] グレッチェン・パーラト(笑)。

[吉田沙良] (笑)。あと、、、、

[角田隆太] カーメン・マクレエ(笑)。

[吉田沙良] そう、カーメン・マクレエ(笑)。全部忘れる(笑)。


■角田さんはいかがでしょう?

[角田隆太] ハービー・ハンコックです。


■ちょっと意外ですね。

[角田隆太] ブチ切れちゃうところが好きですね(笑)。


■なんだ、角田さん、そういう所あるんですね(笑)。

[角田隆太] そうですね(笑)。


■わかりました。ものんくるの聴き方がちょっと変わります(笑)。

[角田隆太&吉田沙良] 笑

[レーベル担当者A氏」僕もちょっとわかった(笑)。やっぱエモいんですね。

[角田隆太] そうなんです。


■はみだしたり、過激な方面に行くエネルギーに魅了されるんですね。

[角田隆太] そうなんです。


■それで沙良さんは声を張らされてるんだ(笑)。

[角田隆太&吉田沙良] 笑


■沙良さん、ものんくるの歌は大変ですか?

[吉田沙良] 大変とは思ったことはないですけど、今回のアルバムが出来上がるまでは、曲をちゃんと飲み込めたと思ったことは一回もなくて、ライブでも毎回チャレンジという気持ちでずっとやっていました。


■そうですよね。かなり難しいメロディーもありますもんね。

[吉田沙良] でも、私もいろいろな音楽を通ってきたけど、ものんくるの音楽が一番しっくり来ているので、難しいというのが全然嫌ではないですね。


■アルバムのことについて聞かせてください。このタイトル『飛ぶものたち、這うものたち、歌うものたち』というのは何か意味があるのですか?

[角田隆太] これは、プロデューサーの菊地(成孔)さんがつけました。


■あ、じゃあ質問してもわからないですね。

[角田隆太] わかりません(笑)。


■これはものんくるのことなのかな?

[レーベル担当者A氏」ものんくるのことです。


■飛ぶものたち、は何なんだろう?

[レーベル担当者A氏」菊地さんのメルマガに、ものんくるにはフラミンゴのような飛翔力があって、吉田さんの事は手足が長くてベリーショートなので、美しい鳥のようだと書いてありました。そのイメージじゃないかなと思いますね。


■なるほど。ライブで要確認ですね(笑)。はじめてレコーディングにプロデューサーを迎えての作業はいかがでしたか?

[角田隆太] 菊地さんは基本的に勝手にやっていいよという感じだったので自分たちで進めていって、行き詰まったときに天の声を頂くという感じでした。


■角田さんが作曲して沙良さんに歌詞とメロディーを渡す際には、かなりのディレクションがあるのですか?

[吉田沙良] 歌い方のディレクションはないです。

[角田隆太] (エアーギターをしながら)まず僕が自分で歌って、それを聴いてもらう感じです。


■あ、ギターで。ものんくるの曲をギターで弾き語るんですか?

[角田隆太] ま、できてないんですけど(笑)。間違えたとか言いながら(笑)。

[吉田沙良] それを聴いて、その場で歌ってみる感じです。


■作詞も角田さんですが、歌の世界観を共有したりするんですか?

[吉田沙良] 歌ってくれている時に聴いて理解します。私が気になったところは質問するという感じです。

[角田隆太] 本当に話したいことは話すけど、全体として話すことはないですね。


■作詞のインスピレーションは何ですか?実体験ですか?

[角田隆太] 実体験ではないです。イメージですね。


■好きな本はなんですか?本は読むほうですか?

[角田隆太] 本は読みますね。今読んでいるのはヘンリー・ソローの『森の生活』です。


■どういう内容なんですか?

[角田隆太] 南北戦争が終わった頃に森で生活した話が綴られています。面白いですよ。


■自然についての話が出てきたというわけではないですが、歌詞を聴いていると、人知の及ばないものに対する畏怖だったり、あはれとか無常だったりという言葉が浮かんできました。「消えていく」という言葉が度々出てくるように思います。

[角田隆太] 小説を読むとしたら泉鏡花とかなので、そういう所はあるかもしれませんね。


■歌詞を聴いていて質問したくなったのですが、今の世の中についてどう思いますか?

[角田隆太] このアルバムを作っていた時期は、原発がかなりやばそうだな、っていう時期でした。収録曲のうち「春を夢見る」以外は全部 3.11の後に作ったものです。そういう意味でかなり 3.11が影響していると思います。今は一時期よりもましになったのかもしれないですけど、ネズミがかじって電源が落ちるとか、いつどうなっちゃうかわからないところがあって、どうしようかなといつも思っています。


■いつどうなるかわからない、というようなところは音楽から感じます。沙良さんはいかがですか?

[吉田沙良] 全く同じ気持ちです。


■むかついていますか(笑)?

[吉田沙良] むかついてはいないですけど、言葉で言うのは難しいですね。思うものはたくさんあります。むかつくというより悲しい。


■長いスパンで物事を考えることを忘れている、というところに僕はむかついています。このアルバムには、長いスパンで考えることが大事というメッセージも含まれている気がして個人的には嬉しかったです。

[角田隆太] そこはすごくありますね。人間の命のサイクルを超えたスパン。


■歌について、歌うことについてどう思われますか?

[角田隆太] インストで重要なことも伝えられるなと思うんですけど、歌にしか伝えられないこともやっぱりあって。特に3.11後に発信するっていう時に、インストをやっているだけではいけないような気もするというか。ちゃんと言葉にして人に伝わる形にして勝負をしたいなと思いました。


■3.11はこのアルバムにかなり大きな影響を与えているんですね。

[角田隆太] めっちゃそうですね。


■沙良さんはいかがですか?

[吉田沙良] 私は楽器になりたいと思っていて。歌詞のない楽器が羨ましいな、とずっと思っていて。なので、ものんくるの歌詞に出会うまでは、歌で歌詞を伝えるということにあんまり気を使っていなかったというか考えてこなかったというか。ものんくるの歌詞を見て、「あぁ、歌わなきゃいけないな」って思いました。


■ものんくるは歌があってこそ、と思います。では最後に、夢や目標を教えて下さい。

[吉田沙良] 私は、NHKのEテレで、ものんくるの曲とかが流れるようになりたいです。

[角田隆太&吉田沙良] ものんくるとしての目標は、普通すぎて申し訳ありませんが、ツアーで全国に演奏しに行きたいなと思っています。


[Interview:樋口亨]




『飛ぶものたち、這うものたち、歌うものたち』発売記念ライブ

6月2日(日)@モーション・ブルー・ヨコハマ

開場16:00 開演17:30 & 19:30
詳細


6月13日(木)@青山CAY

Open 18:00 ~ 菊地成孔 DJ / Start 20:00 ~ ものんくるライブ
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ものんくる
ものんくる

運命の年である2011年1月に角田と吉田を中心に結成。
早くも同年10月にはSG Worksよりファーストミニアルバムをリリース。
翌年1月に行われたmotion bulue yokohamaでの単独ライブは、結成1周年にして400名余を導引した伝説のライブとなった。
Airplane Labelから実質上のデビュー・フルアルバムである本作のリリースが決定後、その年の12月に菊地のイベント「モダンジャズ・ディスコティーク」並びにTBSラジオ「菊地成孔の粋な夜電波」出演~紹介されるや否や大きな反響を呼ぶ。

ものんくるオフィシャルサイトhttp://mononcle.aikotoba.jp/
吉田沙良オフィシャルサイト:http://sarayoshidavocal.wix.com/otameshi

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