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JAZZ in NEW YORK#4 - Musician Friends in New York

ニューヨークを拠点に活動しているピアニスト、中原美野(なかはらよしの)さん。
5月23日にファーストアルバム『A Ray of Light』をリリース。
そしてその新作を引っさげての凱旋ライブが6月5日(金)渋谷JZ Bratで決定しています。

JJazz.Netでは、"JAZZ in New YORK"シリーズとして中原美野さんのコラムを連載。
ライブまでの約1ヵ月間、毎週金曜日に更新しています。


4回目となる今週はバンドメンバーの探し方について。
世界で一番ジャズミュージシャンが多い街、NYならではのエピソード満載です。

中原さんがレコーディングメンバーとどうやって出会ったのか?
タイミングや人柄も重要かと思いますが、何よりもこの人とやりたい!という想いを感じます。

こういう出会いがあって生まれた彼女のファーストアルバム『A Ray of Light』は、5月23日リリースです。


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■Musician Friends in New York


NYで、バンドメンバーはどうやって見つけるの?と聞かれることが多いので、ご紹介したいと思います!まずはレコーディングメンバー。皆Blue Note、Jazz Standard、Dizzy's、Smoke、Smallsなど一流のジャズクラブや国内外のジャズフェスティバルで演奏する大活躍中のミュージシャンです。


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[Leon(bass)]


最初に出会ったのはベースのLeon Boykins。先週の記事でもご紹介したのですが、シンガーAllan Harrisのバンド、またそのサイドマン3人で結成したトリオ、"King Pony"や、自己のトリオ、その他サイドマンとして忙しく活動している。

日本でもそうだと思うけど、ジャズミュージシャンの中で「ベーシスト」は特に忙しい。NYに来て最初の頃は、知り合いもほとんどいないし、ベーシストを見つけるのに本当に苦労した。次のライブで弾いてくれる人がどうしても見つからなかったとき、QueensにあるBlackbirdというお店のジャムセッションに行ってみた。(ほぼ毎週日曜日にセッションがあり、家から徒歩30分くらいだったけど一度も行ったことがなかった。) そこにたまたま来ていたSax Playerと仲良くなり、ベーシストを探していることを伝えたら、早速数日後に紹介してくれたのがLeonだった。忙しい彼。リハーサルの時間がないとのことで、いきなり本番で共演することに。彼のmyspace(だったと思う)の音源だけが頼り。そのときはギターとベースとのトリオ。ドラムなしのトリオが初めてということもあり、不安だった。けど当日、直前にLeonと軽く打ち合わせして、不安が飛んだ。めちゃくちゃ初見が強い。お店が暗い中、楽譜に書き込んだエンディングのアレンジを、本番も忘れることなくばっちり弾いてくれた。そして、なんという安定感。ベース一つでしっかり支えてくれた。彼のWalkingはとっても合わせやすかった。この人ともっと演奏したい!と思った。次回のライブもその場でお願いしたし、その後、ライブをブッキングするときは、まず彼の予定を聞いて日程を調整することも多くなった。彼の作る曲も好きで、私のライブでも演奏させてもらった。

Leonは一見クールだけど、とっても心が優しい。いつもさりげなくアドバイスをくれる。わからないことを度々彼に相談した。誰もはっきり教えてくれなくて悩んでいた「演奏してくれたメンバーにギャラをいくら払うのが適当なのか」という疑問とか、レコーディングのことや、英語のことなど。今年から、高校でフルタイムで教え始めたそう。面倒見のいい彼、ユーモアのセンスで人気者でもあるし、いい先生になりそう。


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[Peter(drum)]


ドラムのPeter Kronreifは、Leonが出演していたライブで共演していたドラマー。二人は長い付き合いだそう。彼もLe Boeuf Brothers、Nuf Saidなど色んなバンドを掛け持ちし、日に2つ3つライブがあることも稀ではない。ジャズ、ファンク、ロックなんでもできる。オーストリア出身で、ヨーロッパへもよく演奏しに行っている。そんなPeterも、もっとも信頼しているバンドメンバーの一人。Leonと同様、彼の初見の強さにはびっくりした。拍子が変わり、キックも多い私の曲「Composition 1...」と「E-Funk」をリハの1回目でほとんど完璧に演奏した。本番で、彼と一緒に演奏するのがすごく楽しい!と感じた。久しぶりのライブでも、彼は私の曲を忘れることなく、バンドを支えてくれ、演奏中の私の判断にちゃんと着いて来てくれる。ヨーロッパツアーで帰って来た日、空港から直接私のライブに駆けつけてくれたときもそうだった。体力もすごい。そして自分の判断基準も持ち、いい加減な人が多い中で、彼はちゃんとしている。性格もいい。彼自身のバンドのライブで、作曲とアレンジの才能にもびっくりさせられた。


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[Chad(sax)]


サックスのChad Lefkowitz-Brown。Clarence Penn(drums)、グラミーを受賞したArturo O'Farrill's Afro Latin Jazz Orchestra等で活躍する他、Taylor Swiftのバックバンドのメンバーとしても演奏、TVにも出演する。アメリカ中、世界中で毎日のように演奏している。彼は今25歳。おそるべし。彼とは、友達とのセッションで出会った。リハーサルスタジオを借りているドラマーが、Chadに声をかけた。(ジャズクラブで行われているセッションに行くのではなく、友達同士でスタジオや誰かのアパート(音を出しても大丈夫なところ)でセッションをするのもすごくいい。待ち時間もなく、時間いっぱい、やりたい曲を演奏できる。) Chadは、ちゃんと約束を守る。「Sounds greatだったよ、また演奏しようよ」と言うのはミュージシャンの間では社交辞令みたいなものだけど、Chadはすごく忙しいにもかかわらず、ちゃんと実現することができた。すごく性格がよくて明るくて、レコーディングのときも励ましてくれた。程よくレイドバックもしている。ある土曜日、地下鉄の不通や遅延で仕事に遅れそうになっていたとき、乗り換えの駅でChadに偶然会い、数駅一緒に電車に乗って話していたら、彼のリラックスした空気にとりこまれ、自然とあせりが消えていた。
ところで、ニューヨークのSubwayの運行状況はひどいものがあり(特に週末)、それにやられたエピソードもたくさんある。


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[Jeff(guitar)]


レコーディングには参加していないけど、私のバンドにとって重要な、ギタリストのJeff Miles。NYに来て数ヶ月後に聴きに行った、バークリーからのドラマーの友達のライブでフロントを務めていたのが彼。 2008年Gibson Montreux Jazz Guitar Competitionで優勝する実力の持ち主だけど、技術の高さだけではなく、弾いている姿が観客を惹きつける。私はそのとき、彼の演奏はなぜかセクシーだと感じた。もちろんセクシーな服を着ていたわけでもないし、本人はセクシーさをアピールしようとしてはいない。話してみたら、そんな性格ではないことがすぐわかる。ミュージシャンにはステージ上でのセクシーさが必要だな!と思った。

私の曲はJeffに合っていると思い、ぜひ弾いてもらいたくて、最初のTomi JazzのライブでJeffにお願いした。声をかけてくれてありがとう!と、とっても優しいメールで返事をくれた。リハーサルに来てくれたとき、すごく嬉しかったのを覚えてる。そのときベースもドラムも日本人。日本人のクオーターであるという彼は、なじんでいるようでもあったし浮いているようでもあった。それ以来何度も一緒に演奏している。彼はI love teachingと自ら言う程教えるので忙しいけど、ある日、急遽連絡が来たライブ演奏の依頼で、Jeffにすぐ声をかけたところ、「Brooklynの下の方で夜まで教えてるから、終わったらタクシーで駆けつけるよ」と言ってくれた。そのギグは彼の行ったことがなかったジャズクラブだったけど、場所はHarlem。タクシーを使ったらギャラがほとんどなくなると予想できたのに、「I don't mind.」と。結局タクシーを使っても開始時間に間に合わないことがわかったので、そのときは一緒に演奏しなかったけど、声をかけるといつも、「I'm down.」と快く受けてくれる。男女問わず、私のライブを観てJeffのファンになる人は多い。私を差し置いて。Jeff自身のバンドより、私のバンドでの彼の方が格好良さが引き立つと勝手に思っています。


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[Me & Taylor]


ピアニスト、Taylor Eigsti。ボストンで1年目の夏、Studio Apartmentに一人で住んでいた時、くらーい部屋の中で音楽を聴いていたときに初めて名前を知った。その後まもなくScullers Jazz Clubに彼の演奏を聴きに行った。CDで聴いて圧倒された彼のテクニックの凄さを目の当たりにした。ただそのときは、Becca Stevens(vo)がたくさんフィーチャーされていて、もっと彼の演奏が聴きたいなと思った。

NYに来てすぐ相談に乗ってくれた友達が、彼からプライベートレッスンを受けられるかも、と教えてくれたので、早速連絡してみた。お返事来ないかなと思ったけど、すぐに快諾のお返事をくれた。今思えば彼のいつもの明るい話し方が想像できるような文章だった。時間がとれるのは3ヶ月先だった。そこまで予定が埋まっていて、でもちゃんとその遠い日にレッスンの予定を入れてくれるってすごいな、と思った。彼はレッスンでデモンストレーションを沢山してくれ、教え方は優しく、先生としても素晴らしかった。次回のレッスンではオリジナルを持って来て、とのことで、「E-Funk」「Composition 1...」を持参した。その場で楽譜を見て、この部分がすごく好き、などと言ってくれながら笑顔で演奏してくれるTaylor。彼が弾くととてもきらきらしてかっこいい曲に聴こえた。その際にもらったアドバイスを取り入れてアレンジし直したものが、アルバムに収録されています。まさにSpecial thanks to Taylorです。TaylorがNYでライブをするときは大体聴きに行っている。最も尊敬する、憧れのピアニストの一人。




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[Me & E.J.]


2012年12月Metropolitan Roomでのライブの話。 ある世界的ジャズドラマーをスペシャルゲストとしてブッキングしていたところ、直前でキャンセルされてしまった。私の尊敬するピアニストも、同じドラマーから同じ目にあっていたし、彼だけでなくニューヨークのミュージシャンは、迷いなくこういうことをするようだ。宣伝用のフライヤーやポストカードも全部作ってすでに出来上がっていた状態。途方にくれてしまったが、代わりのドラマーを見つけなければいけない。数日間途方にくれた後のある日の深夜1時。Zinc Barで憧れのドラマー、E.J. Stricklandがバンドメンバーとして演奏していることを知り、家を出る。着くといつも入り口で案内をしているAnselがいた。あまり話したことはなかったが、その時間バーのカウンターには、お客さんは私を含めて4人くらいで、自然に彼と会話が始まった。E.J.に、自分のライブで演奏してもらえるか聞きたい、と事情を話した。演奏の終わったミュージシャンに話しかけるのは、そんなに勇気を出さなくてもできるけど、さすがに、ほとんど面識のない方にライブで一緒に演奏してください、とお願いするのは少し緊張した。運良くE.J.と挨拶するチャンスが来たとき、先ほどのAnselが、私が話すより先に、彼女がライブで演奏してもらいたいんだって、と切り出してくれた。そしてE.J.。すぐ自分のスケジュールをチェックして、「Yeah, I'm free.」と。私の演奏を聴いたことがないにもかかわらず、その場で承諾してくれた。嬉しくて、普段はほとんどお酒に酔わないのに、ふらっとしてカウンターの高い椅子から落ちそうになった。大丈夫か?と慌てて手を差し伸べてくれたE.J.。そして迎えたライブは、大成功。火曜日の深夜11:30スタート。誰が来るか、と思っていた。当日は前の出演者の影響で、さらに押して0時近くに始まったにもかかわらず、会社員の方々も含むほとんどの方が最後まで聴いてくださった。一生懸命お友達に声をかけて連れて来てくださった方、NYで初めての大きなライブにお花を持って駆けつけてくれたお友達、1回のリハで完璧に演奏してくれたE.J.、素晴らしい演奏をしてくれたバンドメンバー、皆に感謝の気持ちでいっぱいの夜だった。


アルバム収録曲"Days"は、このライブに向けて前月の11月に作曲したものの、結局そのときは完成せず、レコーディングまで演奏されなかった曲です。


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次回は、NYで活躍されている日本人ミュージシャンについてご紹介します!


中原美野




【中原美野 "A Ray of Light" Release Tour 2015】

NYを拠点に活躍している新人ピアニスト/コンポーザー中原美野がJZ Brat初登場!1stアルバム『A Ray of Light』のリリースを記念して豪華メンバーが集結。ドラマ、映画、CMの音楽のアドバイザーを務めるなど、日本の音楽シーンへも活動の幅を広げている彼女から目が離せない。


<日時>
2015.6.5.Friday
1st:Open 17:30 Start 19:30
2nd:Open 21:00 Start 21:30
※時間が通常と異なります。

<出演>
中原美野(p)西口明宏(ts)土井孝幸(b)大槻"KALTA"英宣(ds)
Guest: 太田 剣(sax)

<場所>
JZ Brat(渋谷)
〒150-0031 東京都渋谷区桜丘町26-1 セルリアンタワー東急ホテル2階

<料金>
入替制¥4,000 2ステージ¥6,000

<予約・お問い合わせ>
JZ Brat
03-5728-0168(平日15:00~21:00)
予約はこちら

<詳細>
http://www.jzbrat.com/liveinfo/2015/06/#20150605(JZ Brat)


CD情報はこちら
※ライブ会場限定販売




【Pianist Yoshino Nakahara Album"A Ray of Light" EPK】




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Profile

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中原美野(Yoshino Nakahara)(ピアニスト/作曲家/編曲家/講師)

4歳でピアノを始め、ヤマハ音楽教室でクラシック演奏や作曲、アンサンブルを学び、幼少時代より作曲で多くの賞を獲得。大学を卒業後、趣味でアルトサックスを手にしたことをきっかけに、ジャズと出会う。
ジャズ・ライブに足繁く通う中、「ピアノでジャズ演奏を学びたい」と、ジャズ・ピアニスト今泉正明に師事する。バークリー音楽大学より奨学金を獲得後、2009年に渡米。2011年、「Professional Music Major Achievement Award」を受賞。ボストンで演奏活動を開始し、地元ラジオ局等に出演。多数の著名プレイヤーと共演する。ジャズだけでなく、クラシックのコンサートやミュージカルでも演奏。2011年卒業後、拠点をニューヨークに移し、北川潔、E.J. Strickland、Gilad Hekselmant等トップクラスのミュージシャンをバンドメンバーに迎え、ライブ活動を行う。2012年9月にはTomi Jazzの「Artist of the Month」に選ばれ、2013年1月には週刊NY生活に特集記事が掲載される。様々なジャンルのバンドでサイドマンとしても活躍。2014年4月には、所属するGregory McDowellバンドでの演奏の様子がNew York Timesに掲載される。その他、音楽学校でピアノやフルートの講師として、また教会でオルガン奏者としても活躍している。2013年、TBSドラマ「潜入探偵トカゲ」のサウンドトラックに、自身でアレンジしたソロピアノ演奏が収録される。日本テレビ音楽のミュージック・ライブラリーの楽曲、スマートフォンアプリのBGM等の演奏、またドラマ、映画、CMの音楽のアドバイザーを務めるなど、日本の音楽シーンへも活動の幅を広げる。2014年、初の帰国ライブを行い、大好評を博した。2015年、ニューヨークにて自己のバンドでレコーディングした1stアルバム「A Ray of Light」をリリースする。


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