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Canadian Independent Music Association主催、トレード・ミッション レポート

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Canadian Independent Music Association(CIMA)が主催する、カナダの音楽アーチストを紹介するトレード・ミッションが来日。過去3回の訪日ミッションでは、350万カナダドル(約3億2800万円) にも上るビジネスが生まれ、208件もの商取引が成立。第4回目の今回は音楽会社/団体12社と8組のミュージシャンが来日。最新のカナダ音楽を紹介し、原盤や著作権のライセンス、肖像権等の著作隣接権、レコードデビュー、コンサート機会の創出、そしてデジタルやモバイルコンテンツを通して新しい音楽ビジネスでの成果を目指すことを目的とした。

そのショーケース・ライブ『Canadian Blast』が11月17日(カナダ大使館内・オスカー・ピーターソン・シアター)、19日(渋谷・duo music exchage)の2日間にわたって行われました。

17日(火)は主にジャズ、アダルト・コンテンポラリー、インストゥルメンタル・ミュージックを、19日(木)はロック、、ヒップホップ、インディ・ロックのアーチストが参加。日本ではまだ馴染の少ないカナダの音楽シーンやその魅力についてインタビューと共にご紹介します。

TEXT/INTERVIEW:常見登志夫 Toshio TSUNEMI(ライター)






―ショーケース・ライブに先立ち、CIMAの会長、Stuart Johnston氏にコメントをもらいました。

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「Justin Timeとかジャズに強いレーベル、アーチストも来ています。今回はBop度はそんなに高くはないんですが、前回よりは強くなっているかもしれません。基本的には3年前のミッションと同じなんですが、知り合いや協力者も増えているので、より日本の事務所、プロモーターとの関係性を強くしたいと考えています。日本を含めたアジアの市場は、カナダにとって非常に有益な市場。これまでの3回で取扱い件数は約200、4~5億円くらいのビジネスが生まれています。共通性もあるし、カナダの造詣の深いマーケットであります。団体の代表として言いますが、日本がジャズに対して親しみがあり、造詣が深いというのはよく理解しています。だからこそこういうショーケースを設けて金銭的なビジネスをするべく来ている。ここから生み出せる可能性を期待している。例えばブランディ(vo,b)のプロデューサー、ジム・ウェストはオスカー・ピーターソンとも仕事をした人。ジャズを理解して日本のオーディエンスに可能性を感じているのは変わらないのでは。数ある大使館の中で、カナダ大使館がこういったショーケースを後押しするのは、珍しいほうかもしれない。ベルリン、ダラス、NY、LA、オーストラリア、シンガポールでもCIMAが動いています。公的資金、私的資金を投じていますが、確かに盛んな方かもしれませんね。国や放送局などが協力してくれています」

Canadian Independent Music Association
Justin Time Records


―17日に出演したアーチスト4人(組)のプロフィールとコメントをご紹介。


1.The Jessica Stuart Few
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The Jessica Stuart Fewはボーカル/ギター/琴を演奏するジェシカ・スチュアートがリーダーのトリオ。

プロフィールに「ジョニ・ミッチェルをほうふつとさせる抒情的なボイス」とある通り、確かに耳に残るボーカルが魅力。フォークジャズなるムードは、確かに頷かされる響きをもっている。
日本の琴を大胆にフィーチャーするなどオリエンタルを前面に押し出すのは、日本のマーケットでは逆に難しいとは思うが、ステージを見る限りかなりのテクニックを持っている。幼いころ、母親に習っていたとのことで、日本にも短期間だが住んでいたことがある。

2013年には日本ツアーを行い、モーションブルー横浜や横濱ジャズプロムナードにも出演。
3作目の『Same Girl EP』(2015)をリリースしたばかりだ。前回の来日と同じく、トロントで日本人が主宰するCreators' Loungeが全面的にバックアップしている。

「子供の時に日本に住んでいて、お母さんが琴と三味線をやっていて習いました。まず、ギターやドラムスのバンドのためにまず作曲をしますが、琴はちょっと違ったインスピレーションのために入れています。(琴の譜面はまった違うが)そんなことはありません。あまり関係ない。琴の譜面は番号で書いてあるけど、琴のパートのプレイそのものは覚えてしまっているから。ジャズのイディオムにもあまり支障がない。琴は9歳、ギターは15歳からやってました。ミリアッドにも曲を提供しています。マイルスやコルトレーンはもちろんアイドルだったんだけど、大学時代にデイブ・ホランド(b)を初めて聴いたとき、あ、これもジャズ、と感じました。グルーブが強いんだけど、タイミングがいつも変わっている。ちょっと変わっているかもしれないけど、ジャズの入り口としてはデイブ・ホランドが印象的でした。でもジョニ・ミッチェルとかスティービー・ワンダー。日本はジャズの楽しみ方がカナダと違うと思うので、自分たちが等身大で演奏できる、そのことを楽しみにしています。」


Setlist
Easier Said Than Done/Open Door/Talk About It/The Letter/Here Comes The Rain/(Don't Live Just For The) Weekend


【The Jessica Stuart Few - "Don't Ya"】



The Jessica Stuart Few




2.Brandi Disterheft
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Ariel Pocock
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Brandi Disterheft(ブランディ・ディスターヘフト)は、オスカー・ピーターソンからも"オスカーにもShe is what we call serious."と賛辞をもらったベーシスト/ボーカリスト。NYでロン・カーターに師事。2008年にリリースしたデビューアルバム『Debut』がJUNO Awardの「Jazz Album of the Year」を獲得している。クラシックも好きだけあってアルコでのピッチも見事だ。

ブランディ自身のプロデュースによる『Gratitude』が最新盤となっている。ビンセント・ヘリング(as)、リニー・ロスネス(p)、グレゴリー・ハッチンソン(ds)など、NYの中心ミュージシャンが参加している。

なお、今回ピアノで参加したAriel Pocock(アリエル・ポーコック)は2013年にシーマス・ブレイク(ts)、ラリー・グレナディア(b)といったNYの強力なアーチストと共演したコンテンポラリー・ジャズのアルバムをリリースしたボーカリスト・ピアニストでもある。

「(ブランディ)オスカー(ピーターソン)は私にとっての恩師で、リズム感がレイ・ブラウンと近い、と言ってくれたり、とても優しくしてくれました。

ベースを始めたのは高校生の時。母親がB3(ハモンド)オルガンやピアノを弾くなど、家庭の環境もありました。ベースのアイドルはスコット・ラファロやレイ・ブラウン。今はNYに住んでいて、ビンセント・ヘリング(as)やサイラス・チェスナット(p)、ジョン・ファーンズワース(ds)とよくセッションしています。日本人とも共演していますよ。寺久保エレナ(as)さんとか。ビンセントの家で一緒にセッションしました。NYではビバップ中心ですね。

(これからリリースされる)4枚目はピアノ・トリオで、ハロルド・メイバーン(p)、ジョン・ファーンズワース(ds)と共演。1枚目(『デビュー』)がカナダのJUNO賞をもらいました。高校が同じだったリニー・ロスネス(p)やグレゴリー・ハッチンソン(ds)とのトリオ。今日一緒に演奏するアリエル(ポーコック)もリニーを彷彿させるプレイのピアニストです。リニーは今、ロン・カーターと一緒にプレイしていますが、そのロンが私のベースの先生でした。

今回の来日では、リニーやビンセントも一緒に連れてきたかったんですが、日程の調整が付かず...。次回は別の形で一緒に来れたらいいと思っています。7年前にも一度来日しています。その時はワールドミュージック寄りのフルート奏者に雇われて、という感じで。

叔母がセルジオ・メンデスのバンドでボーカルをやっていたので、その影響でボーカルも始めました。ベース奏者としてはスタンダードを中心としたビバップなんですが、ボーカルではオリジナルもやりますし、いろんなスタイルでやっています。今回はこのショーケースだけですが、次回はぜひ小さなジャズ・クラブで演奏したいですね。」


Setlist
He May Be Yours(Helen Humes)/May I Love(G.Gershwin)/If Dreams Come True(sung by Nancy Wilson)/Gratitude(Brandi Disterheft)/Tritocism(Lucky Thompson/Oscar Pettiford)/Compared To What(Les McCan)


【Brandi Disterheft Trio- I'll Remember April】



Brandi Disterheft
Ariel Pocock




3.Myriad3
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Myriad3(ミリアッド・スリー)は、Chris Donnelly(p,syn)、Dan Fortin(b)、Ernesto Cervini(ds,per,cl,bcl)が2010年に結成したトリオ。リーダーは設けず、曲もそれぞれが提供している。2作目『The Where』(Alma Records/Universal)を2014年6月にリリース。

「E.S.T.とかバッド・プラスと比較されることが多いけど、ロックとかエレクトリックとかにも影響を受けてて、ジャズという大きな傘には入っているかと思う。そういう意味ではパワフルな感じというのは合っているのかも。だからプレイするのは90%はオリジナル。今日も1曲はスタンダード(C.ジャム・ブルース)をやるけど、僕らのアレンジ、バージョンでやらせてもらう。3人とも曲を書くし。

レコーディングの時はシンセを使ったりするけど、アコースティックなピアノ・トリオであることは間違いない。エフェクターも使わない。E.S.T.のファンにはきっと好まれるだろう、と書かれることがあるけど、それはコンポジショナル・アプローチというか、作曲のアプローチが独特で、曲のストラクチャーとか曲の発展性とか、一つひとつのピースをどうやって組み合わせていくかとか、そのアプローチが似ているから、かもしれない。

実は3人ともまったく違うテイストなんで、共通のアイドルもいないんだ。その3人が組み合わさっているからこそユニークなトリオになっているのだと思う。」


今回は5回目のツアーの途中で、ちょうど全米(NY、バルティモア、デトロイト、クリーブランド、フィラデルフィア、)や、ドイツ、オーストリア、チェコほか、ヨーロッパで9か所ツアーを行ってきたばかり。11月13日(金)にパリでテロがあった現場(バタクラン劇場)から2ブロックのところで演奏していたそうだ。

「とても怖かった。日本もそうだけど、アジアは行ったことがないので、これを突破口にしたいと思っている。東京ではここ(ミュージック・ミッション)だけなのでとても楽しみにしている。今日のステージを見ていただいてこの次はもっとできるとうれしい。バンドとしての来日は初めて。僕(Ernesto、ds)はジーン・ディノヴィ(p)と一緒に日本ツアーを行ったことがある。僕が20歳の時、ジーンは80歳だった(笑)。それぞれの仕事で何度か日本には来ているよ」


Setlist
First Flight(Chris Donnelly)/Undertow(Chris Donnelly)/C Jam Blues(Duke Ellington)/Western(Ernesto Cervini)/Skeleton Key(Chris Donnelly)


【Myriad3 First Flight】



Myriad3
Chris Donnelly
Dan Fortin
Ernesto Cervini




4.Declan O'Donovan
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Declan O'Donovan(デクラン・オドノバン)は、コメントにもあるように、往年のアーチストに多大な影響を受けているシンガー・ソングライター。実は、このカナダ大使館でのイベントに一般のファンから、どうしても聞きたいと電話でのリクエストがあったアーチストでもある。大使館側では、都内では下北沢で2日間ライブを行っているのでそちらを紹介したそうだ。
ステージはMyriad3のDan Fortin(b)とErnesto Cervini(ds)がサポート。入国して初めてのリハーサルとなったが、圧倒的なステージを繰り広げた。
8月に国内盤『Declan O'Donovan』(P-vine)がリリースされている。

「(P-vineプロデューサー田中氏) 今年の5月にトロントで音楽の見本市"カナディアン・ミュージック・ウィーク"が開かれて、私どものスタッフが見に行きました。彼に勧められて私がYouTubeで見たところ無茶苦茶かっこよかったので、これは単純にもっとも自分の好みの音楽だ、これはぜひ日本でリリースさせていただきたい、ということになって、直接本人にコンタクトしたわけです。それまで全くノーマークの存在でした(笑)。

CDの日本でのマーケットも厳しくはなっていますが、こういった洋楽のアーチストを紹介していかないと日本ではまったく広まらないので、少しでも貢献したいです。」


「(オドノヴァン) ピアノは4歳から、作曲は高校入学した16,7歳くらいの時に書き始めました。

当時はトム・ウェイツ、ボブ・ディラン、ランディ・ニューマンがアイドルでした。今日のメンバーの中では、いわゆる王道ジャズではないとは思いますが、ピアノを習ったときに、ラグタイムやストライド奏法も習っています。

今日は3人でステージに上がりますが、ふだんは一人で演奏しています。またステージの雰囲気にもよりますが、オリジナルを演奏することが多い。カバーは先ほど挙げたトム・ウェイツやボブ・ディランも歌うんですが、カナダのバッド・アンクルとかアメリカのジョー・ヘンリーといった現在のソングライターの曲を取り上げることもある。オリジナルでは第3者的な語り口をモットーにストーリー性を重視しています。(日本のデビュー盤は)"旅立ち"をテーマにしています。」


Setlist
Hank/Crumble/Cheap Souvenir/Something To Run Away From/Death Of A Salesman/Reckless/I Want You Close


【Declan O'Donovan "Hank"】



Declan O'Donovan


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