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bar bossa vol.70:bar bossa

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vol.70 - お客様:愛知アンディー有さん(LONG WALK COFFEE)
【テーマ:ウチ(LONG WALK COFFEE)をキッカケにJAZZをもっと知りたい聴きたいと思ってくれる方に僕が薦めたい10曲】



いらっしゃいませ。
bar bossaへようこそ。

今月はゲストにLONG WALK COFFEEの愛知アンディー有さんをお迎えしました。


林;いらっしゃいませ。早速ですがお飲物はどうしましょうか。


アンディー;いつもは最初はビールと言うてしまうのですが、折角のbossaさんなので、軽めのフルーティーな赤ワインでオススメをください。


林;かしこまりました。でしたらロワールのヴァランセイなんてどうでしょうか。ガメイとピノ・ノワールでかなり可愛い感じです。


アンディー;その可愛いので。


林;アンディさん、最初沖縄の人なのかなとか思ったのですが、ハーフなんですよね。お生まれと小さい頃に聴いていた音楽なんかを教えてもらえますか?


アンディー;1985年、大阪の豊中市生まれです。父がスコットランド人でかなりの幅広い音楽好きなのですが、小学4年くらいまでは影響を受けることもなくただのサッカー少年でした。音楽で最初に好きになったグループはB'zで、当時アニメやドラマの主題歌にもなったりしていて、コンサートに行きたくなりチケットをとる為にファンクラブに入会し人生初のコンサートは小学生5年生で母とB'zを見に行きました。


林;B'zを小学5年生、やっぱりお若いですねえ。中学生になるとどうでしょうか?


アンディー;中学生になると1つ上の兄と兄の友達がギターをやりだして洋楽や邦楽のロックを聴きだし、自分も影響を受け始めます。洋楽はちょうど『NEVER MIND』が出て10周年で、よくロッキンオンやレコードコレクターなどの雑誌の表紙になっていたNIRVANA、そして邦楽は当時はガレージロックとかも知らなかったですが、売れてるバンドの中では雰囲気があきらかに異質に見えたミッシェルガンエレファントなどをよく聴いていました。


林;ミッシェルガンエレファント、カッコいいですよね。アンディーさんは楽器はしなかったんですか?


アンディー;この頃ギターを始めました。中2の時です。とにかくNIRVANAにハマりにはまり、唯一のオフィシャルVHS『LIVE TONIGHT SOLD OUT』は毎日見てました。まだ当たり前ですがYouTubeなどはないので動いて演奏しているのが見れる唯一だったのでひたすら見すぎて他のも欲しくなり小遣いやバイト代は海賊版のNIRVANAのVHSやCDに消えていくばかりでした、中3の頃に同級生とNIRVANAオンリーのコピーバンドを組みます。ここから27歳くらいまでバンドをずっとやってしまうことになります(笑)。


林;中3の時にNIRVANAのコピーバンドですか。やっぱりお父さんから教わった英語が生きたんですね。


アンディー;いや、僕、英語しゃべれないので。


林;そうなんですか。ええと、高校はどうでしょうか。


アンディー;サッカーは中学までは続けていたのですが高校はもちろん帰宅部、寝ても覚めてもバンド。音楽な青春でした、父が持っていた昔の音楽のCDやカセットテープを借りたり貰ったりしてリアルタイムで見てきたライブの話も聞いたり知識も増え続け色々な年代やジャンルを好きになり、分かったのが姿勢にPUNKをかんじるものが好きだと気づきました。新しい年代の音よりも昔の音楽のほうが好きだなというのもこの頃に思うようになります。


林;アンディーさんの世代だとNIRVANAからパンクへさかのぼる感じなんですね。そして?


アンディー;もちろん10代まではTHEナントカみたいなガレージ再ブームもちゃんと聴いたりはしてましたが。バンドの方は無事にコピーバンドは卒業して高2の頃からオリジナルをやりだして外の小さいライブハウスなどに出るようになります、最初はドラムのやつの家がすごい田舎でドラムキッドも持っていたのでアンプとかも家に置いてラジカセにマイク繋いだりして家で練習していましが(笑)オリジナルをやりだして週一回はスタジオに入るようになるので週末はだいたいバンドでスタジオみたいな高校生活でした、ナントカ卒業できるくらいしか勉強もしないくらい音楽にヤラれてました。


林;おお、すごく良いですねえ。高校卒業後は?


アンディー;高校卒業後は大学には行かずに喫茶店やカフェ、ライブハウスを掛け持ちでアルバイトをしながらバンド活動を続けました、これが26歳くらいまで続くのですが色々なことでバンドが解散となり、刺激を求めて26歳フリーター1人上京します(笑)。


林;お、何か始まりそうですね。


アンディー;東京で仲良くなった男友達と呑みやライブに遊びにいってばかりでバンドは結局、元々やっていたやつをもう一度やろうとなって東京大阪も行き来しながらやってました。この頃にその友達と行ったイヴェントでお互い知り合いが出ていたから来たという今の嫁と出会いました。音楽が好きで同い年で同じくギターをやっててバンドもやってるとのことで連絡をとったり会ったりしてるうちに付き合いだします。当時彼女は西荻窪に住んでて、好きな店があるから行こうと連れて行かれたお店がJUHAでした。


林;あ、ここでJUHAさんが、出てきましたね。


アンディー;お店はもちろん、店主の大場さんの雰囲気もすごくかっこよくてレコードにそれまでは興味はなかったのですが彼女もプレーヤーをもっていてレコードを聴いてたりしたので興味をもち始めます。そこでまたレコードで買い出すなら折角なのでJUHAで聴いたような今まで自分が通ってきていないJAZZにハマろうと思い、そこから現在に至るまでは殆どJAZZを中心にアナログレコードで買うというスタイルになりました。


林;なるほど。そういう経緯でしたか。


アンディー;そして上京1年半目にして今の嫁との間に(当時はもちろん彼女)第一子を授かります。僕はフリーター、嫁は大学にまだ行ってる学生ということもあり話し合いの末、連れて帰阪します。そこから飲食店で契約社員で働いたり、珈琲会社で営業の仕事をやったりしながらたまに東京に遊びにいっては東京はJUHAを筆頭にロンパーチッチやトムネコゴなどに行き、東京には僕たち世代に近い人がやってる良い店がたくさんあるのに大阪はホントにあまりないなと思い、飲食業や珈琲が好きということから昔から何となくバンドやらなくなったらいつか店とかやりたいなとか思っていたりしたのを31歳になる年の30歳の時にほとんど遊びで不動産屋とか見てた延長からホントにだんだんその気になってきて今の場所で決めてしまい仕事も辞めると行ってお店を始めてしまいました。ほんと半分はヤケクソというか勢いです(笑)。


林;いや、勢いって大切ですよね。


アンディー;お金の面では僕が大学に行かなかったので親が大学行くように自分に貯めてくれていた貯金があったのと居抜きの物件だったのである程度リフォームはしましたが初期費用を抑えれたのと、あと、少し両方の親から借りたりでお店ができたのはすごくラッキーだと思います。


林;これはみんなに聞いているのですが、これからの音楽はどうなると思いますか?


アンディー;これからの音楽のことは僕にはまったくわからないですが店をこういう形で始めて、ウチをキッカケにJAZZに興味が出たとか僕との会話で勉強になります、なんていう方もいらっしゃるので常に音楽はもちろん多方面にアンテナは張っておかないとな、と思います。けどホント逆に勉強させてもらってますという感じになることもたくさんありますね。


林;なるほど。これからはどうされる予定ですか?


アンディー;もうただ地道に店を潰さないように家族と生活していけて好きなレコードも買えるように日々コツコツ、という感じです。もっともっと音楽を知りたい聴きたいというのが店をやりながらできればこれ以上はないかと。


林;なんかすごくリアルな予定ですね(笑)。さて、みんなが待っている選曲ですが、まずテーマは何でしょうか?


アンディー;テーマは『ウチ(LONG WALK COFFEE)をキッカケにJAZZをもっと知りたい聴きたいと思ってくれる方に僕が薦めたい10曲』です。


林;良いですねえ。それでは聞いてみましょうか。


01. Chet Baker - Summer Sketch



アンディー;チェットはJAZZが好きになり誰かにハマろうと思って最初に好きになったし今でも一番好きですね。店のレコードの中でも一番持っていて(多分50枚くらい)1曲なんてとても選べないのですが聴いたことない方に聴かすなら唄ってるものか後期の枯れまくった頃かもと悩んだのですが初めて聴くとなれば初期のラス・フリーマンとやってる頃のこの曲が良いと思います。なんかジブリで使われてそうな世界観ですよね、この曲。


林;え、ジブリで使われてそうですか? それがよくわからないですが(笑)


02. Art Pepper - Everything Happens To Me



アンディー;アート・ペッパーも大好きでよく初期がいいと言われていて、僕はどちらも好きですがあえていうなら後期派です。このロードゲームのこの曲の力強く説得力あるアートがなんとも涙ちょちょぎれてしまいます。ウインタームーンしかり後期のアートにはずれなし!と言いたくなります。


林;ああ、アンディーさん、こういう感じなんですね。こう言ってしまうと怒られるかもですが、すごくお洒落なんですね。


03. Night Lights - Gerry Mulligan



アンディー;イントロ数秒でヤラれます。アルバム全曲名曲なのですがアート・ファーマーのチェットかと思わせるような泣きの枯れにジム・ホールのギターももちろん、マリガンはこの曲ではバリトンじゃなくピアノでしかもすごく良いメロディー。嫌いな人はいないだろうと思われる名曲ですよね。


林;仰る通りですね。ほんと嫌いな人はいないと思います。


04. Bill Evans - Loose Blues



アンディー;エヴァンスは店を始めてからかけやすいのもありたくさん聴いてるうちにハマりました。トリオはもちろん、デュオやソロ、ヴォーカルとの共演と良いものがホント多いですがなかでもこのインタープレイのやつが凄い好きです。フレディー・ハバードとのやつもよいのですが、ズート・シムズとのこの曲が特に好きです。ズートもエヴァンスにもってかれて普段のスイング感もありながら熱いようで冷めた感じになっているのがなんともいえず良いですね。


林;ああ、やっぱりすごくクールな中に抑えた情熱みたいなのが好きなんですね。アンディーさんの趣味がわかってきました。


05. Jazz Men Detroit(ケニークラーク)- Afternoon in Paris



アンディー;ジョン・ルイスの名曲ですがこのメンツでやったやつがサイコーです。ケニー・バレル、トミー・フラナガン、ポール・チェンバース、そしてなんというてもペッパー・アダムスが本当に良い!チェットの『CHET』もいいプレイしてますがこれでペッパー・アダムスにハマってしまいました。ジャケットもなんか可愛くてよいです◎


林;なるほど。やっぱり品が良いですね。アンディーさん、ロックやってたんですよね?


06. JOHN LEWIS - Little girl blue



アンディー;5の流れでそのままジョン・ルイス。JUHAマスターからの受け売りでそのまま受けてハマってしまいました、このアルバムはホント店でよくかけてますし雰囲気も固すぎず緩すぎずでちょうどよいです。なかでもこの曲にはピンと張った何かが緩まっていくような解放感みたいなものを感じられて好きです。


林;おお、すごく良いですね。確かにカフェでこれかかっているとすごく良いかもです。


07: Miles Davis Sextet - On Green Dolphin Street



アンディー;JAZZを聴きたいけどホント何も知らないんだー、みたいな方なら100%これから聴いたらと思うくらいの入門編だと思うのですが今でもやっぱりかけた瞬間トリハダたっちゃう時ありますね(笑)『1958MILES』はホント全曲名曲なのですがなかでも一発目のこの曲ははずせません、エヴァンス先生も爆発しております。


林;良いですねえ。確かにジャズのカッコよさみたいなのがわかりやすく伝わりそうです。でもほんとアンディーさん、選曲が意外と(ごめんなさい)品が良いんですね。


08: Zoot Sims - Come rain or come shine



アンディー;安定のズート・シムズ。ホントいつの時代のものを聴いてもハズレなしなのですが、バッキー・ピザレリとやってる何枚か持ってるものは全部好きです。ニルヴァーナのこの曲には名曲をさらに名曲にといった文句の付け所なしの説得力ある名演奏だと思います、このアルバムで言えばバディー・リッチが唄ってる曲やラスト曲のバッキー・ピザレリ1人の「SEND IN THE CLOWNS」も大好きです。


林;原曲、すごく好きなのですが、良い演奏ですねえ。震えますね。


09: Nat King Cole - Call the Police



アンディー;これもJUHAパイセンの受け売りをそのまま受けてハマりました、『Early 1940's』という2枚組のLPがとても良く、これだけでもナット・キング・コールで充分お腹いっぱいになれる内容です。中でもこの曲にはノセられてしまいますね。


林;楽しいですねえ。こういうのかかっているカフェ、すごくカッコいいですね。


10: Tom Waits - Grapefruit Moon



アンディー;ラストはトム・ウェイツ、もう昔から大好きで初期の5枚くらいまではJAZZではないですがジャジーな雰囲気で聴いてもらいアーティストです。ウチに貼ってるポスターもチェットとトム・ウェイツなのです。店主トム・ウェイツの話をされると喜びますので是非とも振って頂いけたら(笑)映画とかに出てるトム・ウェイツのもオススメしたいのたくさんありますよ!


林;なるほど。トム・ウェイツがアンディーさんのスターなんですね。なんか全部が理解できました。


アンディーさん今回はお忙しいところ、どうもありがとうございました。
みなさん、是非、LONG WALK COFFEEさんに行ってみてくださいね。アンディーさん、すごく魅力的な方ですよ!


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もうすっかり初夏な気分ですね。暑い日に振り回されずに、良い音楽を聴いてみたいものですね。
それではまた来月、こちらのお店でお待ちしております。

bar bossa 林伸次


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■Bar bossa林さんが選曲したコンピレーションアルバムが11/16リリース!

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■タイトル:『Happiness Played In The Bar -バーで聴く幸せ- compiled by bar bossa』
■アーティスト:V.A
■発売日:2016年11月16日
■レーベル: ユニバーサル ミュージック
■品番:UICZ-1646

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【収録曲】
1.Blossom Dearie / It Might As Well Be Spring
2.Bill Evans / Soiree
3.Paul Desmond / Emily
4.Bill Evans Trio / Elegia
5.Quincy Jones and His Orchestra / Dreamsville
6.Gerry Mulligan / Night Lights
7.Vince Guaraldi Trio / Great Pumpkin Waltz
8.Cal Tjader / Just Friends
9.Shirley Scott/Can't Get Over The Bossa Nova
10.Blossom Dearie / Give Him The Ooh-La-La
11.Burt Bacharach / I'll Never Fall In Love Again
12.NICK De CARO and orchestra / I'M GONNA MAKE YOU LOVE ME
13.Blossom Dearie / Sweet Surprise
14.Beach Boys / Caroline No
15.Burt Bacharach / Alfie
16.Milton Nascimento / Catavento
17.Earl Klugh / The April Fools
18.Danilo Perez/Another Autumn


【林 伸次 近著】

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■タイトル:『バーのマスターは「おかわり」をすすめない 飲食店経営がいつだってこんなに楽しい理由』
■著者:林 伸次
■発売日:2016年9月9日
■出版社: DU BOOKS
■金額:¥1,728 単行本

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「このビール、ぬるいんだけど」とお客さまに言われたら、あなたならどう対応しますか?
その都度悩んで、自ら回答を見つけてきた渋谷のバーのマスターの約20年。
楽しく経営を続けられたのには理由がある!

「バーの重たい扉の向こうには、お客さま、店主、お酒......その他たくさんの物語が詰まっています。ぜひ、あなたもその物語に参加してみてください。」
――本文より


「bar bossa」アーカイブ

vol.1 「モニカ・サウマーゾ」 ・vol.2 高木洋介 ・vol.3 「クリスマス・ソングのボサノヴァ」 ・vol.4 柳樂光隆 ・vol.5 「1960年代当時のブラジルのボサノヴァ女性シンガー特集」 ・vol.6 松原繁久 ・vol.7 「1970年代から1980年代までのブラジルのボサノヴァ女性シンガー特集」 ・vol.8 中村ムネユキ ・vol.9 「現代のブラジルのボサノヴァ女性シンガー特集」 ・vol.10 江利川侑介 ・vol.11 「エレンコ・レーベル」 ・vol.12 田仲昌之 ・vol.13 「ルミアール・ヂスコス」 ・vol.14 定成寛 ・vol.15 寺田俊彦 ・vol.16 白尾嘉規 ・vol.17 「畠山美由紀『rain falls』 プロデューサー中島ノブユキ インタビュー」 ・vol.18 山本勇樹 ・vol.19 「ジノンさん ルシッド・フォールについて」 ・vol.20 大場俊輔 ・vol.21 「ブラジル人と演奏しているアメリカのジャズ・ミュージシャン特集」 ・vol.22 武藤サツキ ・vol.23 「Lucid Fall (The Best of)」 ・vol.24 筒井奈々 ・vol.25 「THE PIANO ERA2013」 ・vol.26 山上周平 ・vol.27 ジノン ・vol.28 東野龍一郎 ・vol.29 林伸次 ・vol.30 中村智昭 ・vol.31 齊藤外志雄 ・vol.32 染谷大陽 ・vol.33 稲葉昌太 ・vol.34 小嶋佐和子 ・vol.35 石郷岡学 ・vol.36 原田雅之 ・vol.37 松本研二 ・vol.38 塚田耕司 ・vol.39 岩間洋介 ・vol.40 中村信彦&真理子 ・vol.41 白尾嘉規 ・vol.42 田仲昌之 ・vol.43 山本勇樹 ・vol.44 新川忠 ・vol.45 川嶋繁良 ・vol.46 田村示音 ・vol.47 山崎雄康 ・vol.48 上川大助 ・vol.49 町田和宏 ・vol.50 林下英治 ・vol.51 シュート・アロー ・vol.52 高橋悠 ・vol.53 沼田学 ・vol.54 庄野雄治 ・vol.55 山本のりこ ・vol.56 渡部徹 ・vol.57 小栗誠史 ・vol.58 相澤歩 ・vol.59 土田義周 ・vol.60 榎本善一郎 ・vol.61 町田洋子 ・vol.62 影山敏彦 ・vol.63 花田勝暁 ・vol.64 宮川泰幸 ・vol.65 林伸次 ・vol.66 高原一実 ・vol.67 松岡祐子 ・vol.68 宿口豪 ・vol.69 石亀政宏


bar bossa information
林 伸次
1969年徳島生まれ。
レコファン(中古レコード店)、バッカーナ&サバス東京(ブラジリアン・レストラン)、
フェアグランド(ショット・バー)を経た後、1997年渋谷にBAR BOSSAをオープンする。
2001年ネット上でBOSSA RECRDSをオープン。
著書に『ボサノヴァ(アノニマスタジオ)』。
選曲CD、CDライナー執筆多数。
連載『カフェ&レストラン(旭屋出版)』。

bar bossa
bar bossa
●東京都渋谷区宇田川町 41-23 第2大久保ビル1F
●TEL/03-5458-4185
●営業時間/月~土
18:00~24:00 bar time
●定休日/日、祝
お店の情報はこちら

bar bossa vol.69:bar bossa

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vol.69 - お客様:石亀政宏さん(夜長茶廊)
【テーマ:これまでの人生でターニングポイントとなった10曲】



いらっしゃいませ。
bar bossaへようこそ。

今月は鳥取の夜長茶廊の石亀政宏さんをゲストに迎えました。


林;いらっしゃいませ。こんばんは。早速ですがお飲み物はどうされますか?


石亀;カイピリーニャを甘めでお願いします!


林;甘めですね。かしこまりました。では簡単なプロフィールと小さい頃の音楽環境を教えていただけますでしょうか。


石亀;鳥取県中部にある倉吉市、1977年生まれです。三人兄弟の長男。
オールディーズが好きな父の影響で、昔の英語のヒット曲が好きな幼少時代でした。その中でもビートルズは確か編修盤のテープだったと思いますが、特に繰り返し聴いていたのを覚えています。「ラブミードゥ」とか、「チケットトゥザライド」とか。あとは家にあったレコード棚の中から、キャロル・キングとか、ニール・ヤングとか、ウェス・モンゴメリーとか、なんだろう? という感じで聴いていたのを覚えてます。


林;うわ、良いですねえ。最初に買ったレコードは?


石亀;こづかいを貯めて初めて買ったのはブルーハーツのシングルテープでした。A面が「電光石火」B面が「ラブレター」でした。 どっちも格好良かったなあ、擦り切れるまで聴きました。初めて買ったアルバムは、すこしうろ覚えですがパーソンズ『ノーモアティアーズ』だったと思います。


林;ブルーハーツとパーソンズ、わかります。その後は?


石亀;中学高校と陸上部に入って長距離を走っていました。高校の時に仲の良かった1つ上の先輩・島田さんがメタルやオルタナ・グランジが好きで、お互いの持ってるCDの貸し借りをしたり、ダビングテープやラジオ録音のテープや衛星放送の音楽番組のビデオを交換したりして熱心に聴いてました。

当時の鳥取には外資系のレコード店はもちろん、新星堂や山野楽器のような国内の販売店も無く。町の小さなCD屋さんの品揃えに頼るしかなかったんです。もちろんインターネットも無く。なので本当に欲しかったレッチリやニルヴァーナ、パールジャムやスマパン、ウィーザーなどのCDは殆ど手に入りません。逆に品揃えがとっても充実していたヘヴィーメタルは、メタリカやメガデスに始まり、古いのから速いのから遅くて重いのまで。日本からブラジル、北欧まで色々聴いてました。

『音楽っていろいろ有るよなあ』 と初めて思ったのはメタルがキッカケです。一口にジャンル括りしてあっても、こんなに細分化され多種多様に好みが分かれるものかと思い知らされました。なので未だに音楽ジャンルの話題になると僕は真っ先にヘヴィーメタルの事を考えます。


林;最初はメタルなんですね。意外ですが、でもメタルへの取り組み方が石亀さんらしいような。


石亀;ラジオから知る音楽も凄く貴重でした。当時特に好きだったのはNHK- FMカヒミカリィさんの「ミュージックパイロット」というラジオ。ネオアコを中心にジャズ、フレンチやブラジル音楽まで。ジョアン・ジルベルトやゲンズブールを初めて知ったのも、ファンタスティック・サムシングやアップルズ・イン・ステレオを知ったのも、このラジオがきっかけでした。 録音したテープを捨てずに未だに残しています。自分でテープ編修し始めたのもこの頃だったと記憶しています。


林;ラジオ、大きいですね。


石亀;上京し都内の大学に入り、すぐに音楽サークルに入りました。 音楽サークルと言っても演奏する訳でなく、リスニングサークルです。好きな音楽の情報交換したり、時々都内の小さなクラブを借りてイベントをしてました。新宿のジャム、下北沢のナイヤビンギやベースメントバー、池尻大橋のカヴァー、渋谷のエッジエンド、ナッツ、宙。 吉祥寺のフォースフロア。高円寺のマーブルトロン。恵比寿のエンジョイハウス、カラーズ。 沢山の場所にお世話になりました。今突然思い出したんですが、そういえば夏合宿もしました。夏、オフシーズンにスキー場の宿泊所を借り切って、全て機材を持ち込んで朝から順番でDJしたり、バーベキューをしたり、だらだらと花火をしたり。体育界ノリが無く、フラットでゆるくって、楽しかったです。
その時にサークルの枠を飛び越えて仲良くなった友人に、 現在になっても濃く繋がれている人が多く嬉しく思います。その後、音楽関連の仕事を続けている方が多い事にも、改めて考えるととっても感慨深いですね。


林;リスニングサークルってあるんですね。知りませんでした。いやあ、でも色んなお店の名前が圧巻です。ユニオンにはいつごろ?


石亀;ディスクユニオンにアルバイトで入ったのはその後のことです。 当時は【お茶の水明大前店】という名前の古いビルの3階、ジャズフロアに入社しました。レコードフロアからスタートし、何年かして新品のCDを扱うフロアに移りました。担当していたスタッフの退職がきっかけでブラジル音楽の小さなコーナーの管理を任され、聴き進めるうちにすっかりのめり込んでしまいました。

当時関連の再発シリーズが新譜として並んでいたこともあり、ムジカ・ロコムンドはもう擦り切れるくらい読み込みました。 その時廃盤になっていたタイトルは近所のジャニスで借りたりして、気になった音源を毎日夢中で聴き進めました。今ふりかえると、この時の小さなブラジルCDコーナーが、数年後から退社するまで働いた新宿本館のラテン・ブラジルフロアに移るきっかけだったと思います。


林;なるほど。


石亀;ディスクユニオンに入って強烈に感じたのは、聴けば聴くほど、知れば知るほどに裾野が広がっていく音楽の底知れない楽しさ。例えば古巣であるラテンブラジルフロアであれば、古いキューバのレコードから最新のブラジル新譜まで、どっちを向いてもまだ知らない音にあふれている事に身震いする思いでした 。

そして今まさに生まれつつある音のなんと多い事! 特にブラジル新譜のリリースタイトルの多さは凄まじいものがありました。それをお客様とシェアする事の楽しさを知りましたし、伝える事の難しさも同時に感じました。『これ良いですよね』のその先、オススメの作法のようなもの。そして、この音をまだ全く聴いた事の無い人にどう伝えれば興味を持ってもらえるだろう?と考え続ける事。すこし飛躍するようですが、今のお店をやる時に凄く役に立つ経験だったと思っています 。


林;これを読んでいる方も石亀さんの接客を覚えている方、多そうですね。お店を始めるきっかけは?


石亀;大学に入ったのをきっかけに上京しましたが、故郷の鳥取にはいつか帰るつもりでいました。帰るとして、さて仕事をどうするか?妻と2人でいつかはお店をやりたいね、と話していましたので帰鳥したタイミングで直ぐに物件探しを始めました。ずっとお店を出したいと思っていた場所をどうしてもお借りする事が出来ず頓挫。その後現在の物件と偶然巡り会うまで結局9ヶ月かかりました。


林;9ヶ月は長いですね。でも良い出会いでしたね。お店のコンセプトは?


石亀;場を拓くとして、コーヒーを出そうと決めてました。でも今のように『インドカレーの食べられる喫茶店』をしようとは思ってもいませんでした。鳥取は水が美味しいんです。野菜も米も魚もお肉も、どれも新鮮で美味しい。ということはここに住む人が、お家で食べている毎日の御飯もおいしいんです。その中で、お店として何を出せば喜んでもらえるか? とあれこれ考え、僕達2人が毎日でも食べたいインドカレーを出す事に決めました。ボツになった案だと、僕が作ったチャーハンをメニューに入れることまで考えてました。

ここに居ますという場を持てたことで思うのは、楽しく繋がってくれる人のなんと多い事。きっかけはなんでも良くって。コーヒーでも、音楽でも、インドカレーでも、それが猫でも、マラソンでも。楽しく繋がってくれた人に、できるだけ大事に答えたい。というのが4年半お店をやって素直に思うところです。


林;地震はどうでしたでしょうか。


石亀;いやあ恐ろしかったです。でもその後ビックリするくらい沢山の方に助けて頂きました。涙が出るくらい嬉しかったです。鳥取は大丈夫だろうと何故か勝手にたかをくくっていました。でも日本という小さな島国には、数多くの断層があるんですから、絶対安全な場所なんてもしかしたら無いのかも、というのが今の正直な気持ちです。その中で先の地震では幸いけがをする人も殆どおらず、これは自然に守られているのかな、とも感じました。ただ夜長茶廊のある、倉吉旧市街の古い町並みはこの数年で多少の様変わりを余儀なくされるだろうと思います。


林;これからの音楽、どうなると石亀さんは思いますか?


石亀;夜長茶廊の音楽会、という名前でアーティストを招いて何度かライヴをする機会を持てました。正直言って、僕はそれまで熱心なライヴファンでは無かったんです。ライヴアルバムより断然スタジオ録音盤が好きでした。一部のサンバの録音を除き愛聴盤も数えるほどでした。

夜長茶廊は小さなお店なので、もしPAを使っても最小限程度。 至近距離で奏でられるほぼ生音に近い音楽は、それぞれ鳥肌の立つような体験でした。その場に来て下さった方が何かを持ち帰る事が出来るような、ささやかだけれど日常に新しくリズムが出るような濃い時間。

音楽がどうなるのか?というのはとっても難しいお題ですが、アナログは必ず残ると思っています。 そこには体験が多く含まれると思うからです。


林;アナログ、残ってほしいですよね。今後はどうされる予定ですか?


石亀;コーヒーと音楽とインドカレーのお店、夜長茶廊。 今後は音楽について楽しみを増やそうと思っています!


林;期待しております。それではみんなが待っている選曲なのですが、まずテーマをいただけますでしょうか。


石亀;「これまでの人生でターニングポイントとなった10曲」です。


林;おお、面白そうですね。


01. Weezer - Undone -- The Sweater Song



石亀;有島博志さんのグランジ特集のラジオで『Buddy Holly』を聴いたのがきっかけでウィーザーを知りました。高3の冬、大学受験の宿代を浮かせて広島駅前のヴァージンメガストアでファーストを購入。 何てちょうどいい僕のための音楽を発見したんだろう、と思ったのを覚えています。うーん、はずかしいですね!


林;「何てちょうどいい僕のための音楽」って素晴らしいフレーズですね。僕もいつか使わせてください(笑)


02. The Apples In Stereo - Tidal Wave



石亀;他のサークルの熱の入った新入生勧誘合戦を尻目に、ポータブルのプレーヤーでやる気無くアップルズや、かせきさいだぁの7インチのレコードをかけていたのが印象的で、"ラヴドルフィン" と言う名前のリスニングサークルに入りました。 現在は屋久島にて【一湊珈琲焙煎所】を営む高田さんは、サークルの創設メンバーで2つ上の先輩です。


林;屋久島でそんなお店があるんですね。これは興味津々です。


03. Nina Simone - Little Girl Blue



石亀;沢山コンピレーションを聴きました。ジャズだとJazz Juice、Blue Brake Beats、Talkin Jazz。Acid Jazzにも夢中でした。「Mood Indigo」 が欲しくて買ったニーナ・シモンのファーストでしたが、この曲が本当にショックで、数え切れないくらい繰り返し聴いたのを覚えています。モダンジャズと括られるものの幅広さも知りました。


林;うわあ、すごい良い曲ですね。明日、買います!


04. Pharaoh Sanders - Love in Us All



石亀;竹村延和さんが初期remixで紹介されてたのがきっかけで、当時ずっと探していました。レコードで手に入れたときの嬉しさは今でも覚えてます。Joe Bonnerのアタックの強いピアノは今聴いてもゾクゾクします 。


林;カッコいいですねえ。ここまで聞いてきて石亀さんの趣味が完璧に把握できました。混沌の中に光る純粋さのような感じですよね。


05. Wayne Shorter feat. Milton Nascimento - Ponta De Areia



石亀;ミルトン・ナシメントに出逢ってなければ、ブラジル音楽にここまでのめり込む事もなかったかも知れません。どこか土の匂いのする不思議な声の魅力、おおらかなスケール感。この後、クルビ・ダ・エスキーナの作品群をはじめミナスの音楽を貪るように聴きました。


林;このアルバムでブラジルに転んだ人、全世界に多そうですね。


06. Elis Regina & Tom Jobim - Aguas de Março



石亀;オリジナルテイクの圧倒的な空気感は本当にショックでした。数々のカバーがありますがチボ・マットのカバー(『SUGAR WATER EP』 SIDE B収録)は好きで良く聴いてました。この動くエリス&トムも楽しそうで良いですね!


林;今でこそ普通に感じますが、ミラクルな演奏ですよね。


07: Maria Rita - Feliz



石亀;現行のブラジル音楽に強く惹かれるきっかけに、マリア・ヒタの存在が大きかったです。彼女にピントが合った事で、気になるアーティストがキラ星のように増えて行きました。その可能性には、もう目が眩むような想いがしたのを覚えています。最新のライヴ盤も素晴らしかったです。


林;なるほどなるほど。でもこのマリア・ヒタ、可愛いですね。


08: Guinga - Cheio de Dedos



石亀;一番好きなガット奏者は?と聞かれたらギンガと答えます。参加ゲストも豪華なファーストより。こうやってリンクを探してみると以前にも増してオフィシャルで音がアップされていて正直驚いています。YouTubeあなどれないですね。


林;ああ、一番がギンガなんですね。もうすごく納得です。良いですよねえ。


09: Emilio Morales - Las perlas de tu boca



石亀;キューバ音楽にも好きな作品がどんどん増えました。 エミリオ・モラレスのアルバム『Con cierto tumbao』は上品すぎず、かといって激しすぎず、ちょうど良い塩梅で愛聴しています。


林;あの新宿のフロアは本当に日本の音楽を豊かにしていると思います。エミリオ・モラレス、チェックしてみます。


10: Paloma - Aca Seca Trío



石亀;ラテンブラジルフロアに勤めた最後の4年位(2009年~13年)、アルゼンチンから届く新譜への注目度が、急激に高まって来たのを今でも覚えています。アンドレス・ベエウサエルトのソロ作『Dos Rios』は個人的にも愛聴していて、昨年は岡山・蔭凉寺(いんりょうじ)にて遂に、アカセカトリオでもライヴを観ることができました。素晴らしい体験でした。


林;石亀さん、聞き方の筋が通ってて、すごくバランス良いですね。鳥取の方が羨ましいです。


石亀さん、今回はお忙しいところ、どうもありがとうございました。鳥取の近くにお住まいの方はもちろん、旅行で行かれる方は是非、夜長茶廊さんに行ってみてください。


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GW真っ只中ですね。休んでいますか? 良い音楽を聴いていますか? 
それではまた来月、こちらのお店でお待ちしております。

bar bossa 林伸次


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■Bar bossa林さんが選曲したコンピレーションアルバムが11/16リリース!

barbossa500.jpg

■タイトル:『Happiness Played In The Bar -バーで聴く幸せ- compiled by bar bossa』
■アーティスト:V.A
■発売日:2016年11月16日
■レーベル: ユニバーサル ミュージック
■品番:UICZ-1646

アマゾン詳細ページへ


【収録曲】
1.Blossom Dearie / It Might As Well Be Spring
2.Bill Evans / Soiree
3.Paul Desmond / Emily
4.Bill Evans Trio / Elegia
5.Quincy Jones and His Orchestra / Dreamsville
6.Gerry Mulligan / Night Lights
7.Vince Guaraldi Trio / Great Pumpkin Waltz
8.Cal Tjader / Just Friends
9.Shirley Scott/Can't Get Over The Bossa Nova
10.Blossom Dearie / Give Him The Ooh-La-La
11.Burt Bacharach / I'll Never Fall In Love Again
12.NICK De CARO and orchestra / I'M GONNA MAKE YOU LOVE ME
13.Blossom Dearie / Sweet Surprise
14.Beach Boys / Caroline No
15.Burt Bacharach / Alfie
16.Milton Nascimento / Catavento
17.Earl Klugh / The April Fools
18.Danilo Perez/Another Autumn


【林 伸次 近著】

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■タイトル:『バーのマスターは「おかわり」をすすめない 飲食店経営がいつだってこんなに楽しい理由』
■著者:林 伸次
■発売日:2016年9月9日
■出版社: DU BOOKS
■金額:¥1,728 単行本

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「このビール、ぬるいんだけど」とお客さまに言われたら、あなたならどう対応しますか?
その都度悩んで、自ら回答を見つけてきた渋谷のバーのマスターの約20年。
楽しく経営を続けられたのには理由がある!

「バーの重たい扉の向こうには、お客さま、店主、お酒......その他たくさんの物語が詰まっています。ぜひ、あなたもその物語に参加してみてください。」
――本文より


「bar bossa」アーカイブ

vol.1 「モニカ・サウマーゾ」 ・vol.2 高木洋介 ・vol.3 「クリスマス・ソングのボサノヴァ」 ・vol.4 柳樂光隆 ・vol.5 「1960年代当時のブラジルのボサノヴァ女性シンガー特集」 ・vol.6 松原繁久 ・vol.7 「1970年代から1980年代までのブラジルのボサノヴァ女性シンガー特集」 ・vol.8 中村ムネユキ ・vol.9 「現代のブラジルのボサノヴァ女性シンガー特集」 ・vol.10 江利川侑介 ・vol.11 「エレンコ・レーベル」 ・vol.12 田仲昌之 ・vol.13 「ルミアール・ヂスコス」 ・vol.14 定成寛 ・vol.15 寺田俊彦 ・vol.16 白尾嘉規 ・vol.17 「畠山美由紀『rain falls』 プロデューサー中島ノブユキ インタビュー」 ・vol.18 山本勇樹 ・vol.19 「ジノンさん ルシッド・フォールについて」 ・vol.20 大場俊輔 ・vol.21 「ブラジル人と演奏しているアメリカのジャズ・ミュージシャン特集」 ・vol.22 武藤サツキ ・vol.23 「Lucid Fall (The Best of)」 ・vol.24 筒井奈々 ・vol.25 「THE PIANO ERA2013」 ・vol.26 山上周平 ・vol.27 ジノン ・vol.28 東野龍一郎 ・vol.29 林伸次 ・vol.30 中村智昭 ・vol.31 齊藤外志雄 ・vol.32 染谷大陽 ・vol.33 稲葉昌太 ・vol.34 小嶋佐和子 ・vol.35 石郷岡学 ・vol.36 原田雅之 ・vol.37 松本研二 ・vol.38 塚田耕司 ・vol.39 岩間洋介 ・vol.40 中村信彦&真理子 ・vol.41 白尾嘉規 ・vol.42 田仲昌之 ・vol.43 山本勇樹 ・vol.44 新川忠 ・vol.45 川嶋繁良 ・vol.46 田村示音 ・vol.47 山崎雄康 ・vol.48 上川大助 ・vol.49 町田和宏 ・vol.50 林下英治 ・vol.51 シュート・アロー ・vol.52 高橋悠 ・vol.53 沼田学 ・vol.54 庄野雄治 ・vol.55 山本のりこ ・vol.56 渡部徹 ・vol.57 小栗誠史 ・vol.58 相澤歩 ・vol.59 土田義周 ・vol.60 榎本善一郎 ・vol.61 町田洋子 ・vol.62 影山敏彦 ・vol.63 花田勝暁 ・vol.64 宮川泰幸 ・vol.65 林伸次 ・vol.66 高原一実 ・vol.67 松岡祐子 ・vol.68 宿口豪


bar bossa information
林 伸次
1969年徳島生まれ。
レコファン(中古レコード店)、バッカーナ&サバス東京(ブラジリアン・レストラン)、
フェアグランド(ショット・バー)を経た後、1997年渋谷にBAR BOSSAをオープンする。
2001年ネット上でBOSSA RECRDSをオープン。
著書に『ボサノヴァ(アノニマスタジオ)』。
選曲CD、CDライナー執筆多数。
連載『カフェ&レストラン(旭屋出版)』。

bar bossa
bar bossa
●東京都渋谷区宇田川町 41-23 第2大久保ビル1F
●TEL/03-5458-4185
●営業時間/月~土
18:00~24:00 bar time
●定休日/日、祝
お店の情報はこちら

bar bossa vol.68:bar bossa

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vol.68 - お客様:宿口豪さん(Bar blen blen blen)
【テーマ:ブラジルを好きになってしまう10曲】



いらっしゃいませ。
bar bossaへようこそ。

今回は渋谷のBar blen blen blenの宿口豪さんをお迎えしました。


林;こんばんは。早速ですがお飲物はどうしましょうか。


宿口;では大好きなコエドブルワリーの黒ビールをお願いします。妻が川越出身で、コエド直営のレストランにもよく連れて行ってもらってたんですよ。


林;そうなんですか。すごくいいところですよね。はい、どうぞ。それではお生まれと小さい頃のお話を聞かせてもらえますか。


宿口;1974年生まれです。所謂団塊ジュニア世代です。母の故郷、新潟の上越で産まれました。父は大阪出身なのですが仕事の都合で群馬県太田市に引っ越しまして、2歳から上京する18歳までそこで育ちました。群馬移民2世です(笑)。


林;根っからの群馬っ子じゃないんですね。音楽環境はどうでしたか?


宿口;父はクラシックギターを弾き、姉はピアノを習っていました。音楽好きの家庭だったと思います。僕もピアノに興味があったのですが、姉が触れることすら許してくれなかったので(笑)、小2からエレクトーンを始めました。中1まで続けました。


林;え、エレクトーンを小2から中1。


宿口;父が某電機メーカーのオーディオ事業部の勤務だったということもあって、ハード面では恵まれていたのかなと思います。
アンプ、スピーカー、レコード・プレイヤーはもちろん、80年代前半には父が会社から持ち帰った5連奏のCDプレイヤーがありましたし、当時父が開発に携わったラジカセが(当時はテレコって言ってましたが)ヒットしてくれたおかげで、僕も姉もダブルカセットでオートリバース付きのラジカセを与えられました。このラジカセを駆使して遊び倒しましたね。いろいろ録音しまくりました、架空のラジオ番組作ったり。


林;架空のラジオ番組を作るような子供だったんですね。意外と言えば意外かも。


宿口;父は休日の朝は居間の庭に面したガラス戸を全て開け放ち、爆音でクラシックやオペラのレコードをかけるような人だったので、僕はそこから逃げるように松田聖子や中森明菜など歌謡曲やアニメの主題歌をテレビからテープに録りまくっていました。
月曜20時から放送してた「ザ・トップテン」(本当は「ザ・ベストテン」が見たかったのですが、21時からだったので親が許してくれなかった)とか、夕方やってたロボット・アニメの再放送に夢中になっていました。放送前にはいつもラジカセを持ってテレビ前でスタンバイ。ラジカセはハイスペックでライン入力があるというのに、テレビには出力がなかった。なのでテレビのスピーカーにラジカセを押し当てて必死に録音していました、吠えそうになる愛犬をなだめながら(笑)。


林;(笑)


宿口;初めて心に刺さった曲は中村雅俊の「心の色」(笑)。小1でした。しみじみいい曲だなぁって聴き入っていたら祖母に「あんたは渋い趣味してるね~」なんてからかわれていました。マイナー調の曲が好みでした。中森明菜「セカンドラブ」や薬師丸ひろ子「セーラー服と機関銃」などの来生たかお曲にも相当ヤられてましたね。


林;確かに子供らしくないですね。最初のレコードは?


宿口;初めて買ったレコードは「なめんなよ」のサウンドトラックです、なめ猫の写真満載のレコード(笑)。なめ猫の免許証やポスター集めてた時だったんですよ(笑)。当時から収集欲があったのかもしれないですね。


林;(笑)


宿口;小学校高学年になってやっと念願のファミコンを手に入れてからは(近所の友人が海外に引っ越す際に譲ってくれました)、ゲーム・ミュージックにも夢中になりました。いい曲多いんですよ。当時のゲームってスペック的に同時発音数が限られていますから、作曲者も気合入ってたんじゃないのかなあと思います。あとゲーム・ミュージックって無限ループ曲なので頭に残るんですよね。「ドラクエ」シリーズ、「FF」シリーズはもちろん、「グラディウス」のアーケード版とかミステリー・アドべンチャー「オホーツクに消ゆ」とかCDも買いましたね。また、これらの音源をエレクトーンで弾くのも好きでした。こういう時だけは積極的に練習してましたね。


林;ゲームですか。流行ったモノはちゃんと押さえてますね。中学はどうでしょうか?


宿口;中学時代はバンド・ブーム全盛期。特に群馬出身のBOØWYを聴くことは通過儀礼のようなものでした。周りの友人たちもザ・ブルー・ハーツやジュン・スカイ・ウォーカーズ、プリンセス・プリンセスなどにも夢中になっていましたね。でも僕はこっそりTMネットワークやドリカムも好きで、当時エレクトーンと引き換えに買ってもらったYAMAHAのシンセサイザー、EOS B200で練習しまくってました(笑)。ギター・ロックがもてはやされていたので、鍵盤楽器をやっていることにちょっとした後ろめたさがありました。バレーボール部に所属していたためバンド活動はできませんでしたが、家でバンド・スコアのキーボード・パートを弾くのが好きでした。


林;ああ、ずっと鍵盤奏者だったんですね。これまた誰も知らない意外な話ですね。高校は?


宿口;高校時代はバレーボールを本気でやるため、県で3位の強豪校に進みました。もう厳しい練習の毎日で音楽どころではありませんでしたね。
ただクラスメイトたちがとてもファッションに敏感な連中で、結局彼らの影響でフリッパーズ・ギターやオリジナル・ラブなどを聴くことになったのです。その時高校卒業後は上京してバンドを組むことを目指すようになりました。思えば群馬にいる時に聴いていたのはほとんど邦楽ですね。唯一、A面がカーペンターズでB面がサイモンとガーファンクルという駅前で売っているようなカセットテープだけは擦り切れるほど愛聴していました。


林;ゴウさんいたってメジャー感覚というか、「俺だけ洋楽聞いてるんだよ」みたいな感覚って皆無で清々しいですね。さて高校を卒業しますが。


宿口;予備校生として上京しました。悪夢の浪人生活の始まりと思いきや、実はこの時点で目標達成だったんです、上京できたので。もう世間は渋谷系やアシッド・ジャズ・ブーム全開期です。UKロック、フレンチ・ポップスなんかも浴びるように聴きました。暇さえあれば渋谷に行ってました、すぐ行けるのが本当に嬉しくて。


林;90年代前半ですよね。もうまさにど真ん中の時代ですね。


宿口;翌年青山学院大学に進学しました。数々の有名ミュージシャンを輩出したベター・デイズという音楽サークルに入ろうと思っていたのですが、サークル勧誘コンサートで大好きなコーデュロイのカヴァーを演っていたバンドを観て青山ジャムセッションというサークルに入りました。
後に2年も留年してしまうのですが(笑)、その時にベターデイズの連中とも知り合い、仲良くなりました。一緒にライヴ企画やったり。今売れっ子ギタリストのカシーフともこの頃からの友人です。また、渋谷のDJバー・インクスティックで毎月開催されていたパーティー「フリーソウル・アンダーグラウンド」に通いました。時にはバイト先の本厚木から終電に乗って(笑)。


林;フリーソウルに通ってたんですね。


宿口;オーガナイザーの橋本徹さんや山下洋さん、小林径さんらのかける曲をメモってレコードを買い、バンドで演ってました。だから演奏する曲のジャンルはもうバラバラ。
スティーヴィー・ワンダー、アイズレー・ブラザーズ、スペンサー・デイヴィス・グループ、ブライアン・オーガーなんて感じで。アル・クーパーの「Jolie」はコーザ・ノストラより僕らの方が早かったし、ライトハウスの「One fine morning」もシアターブルックより僕らの方が早かったなんて言い張っていました(笑)。僕はヴォーカル。憧れのFender ストラトキャスターやOvationのアコギをローンで買ってギターも練習したけどさっぱりダメでしたね。


林;ああ、ここで鍵盤は演奏せずにヴォーカルだったんですね。


宿口;高校の同級生から誘われてDJを始めたのも20歳くらいからでした。最初は「フリーソウル・アンダーグラウンド」の影響下にあったのでソウル・レアグルーヴばかりかけていましたが、徐々にヒップホップ・カルチャーに影響を受け、傾倒していきました。その頃から徐々にバンド活動からDJ活動へ移行していきました。その時のヒップホップ精神は未だに僕の根底にあるものです。


林;なるほど。レアグルーヴからヒップホップっていう順番なんですね。


宿口;とにかくレコードは買いまくっていました。ヒップホップ、ソウルはもちろんロックでもハウスでもドラムンベースでも。完全な雑食、広く深く、DJ仲間もみんなそうでした。ホントいい仲間に恵まれていました。その仲間たちと「ファンクを感じるものは何でもかける」を合言葉に、南阿佐ケ谷「Cool Dread Bar」、六本木「Nuts」、新宿「OTO」と場所を移しながら「Funk Box」というパーティーを数年間毎月開催していました。
また、DJ仲間の紹介でレコード屋で働き始めたのもこの頃です。東急ハンズの前にあるマンション、ノア渋谷の8Fにあった「ソウルブラザーズ」とその本店、西新宿「レコード・コレクターズ」で3年間バイトさせてもらいました。ここでの経験も貴重なものでした。レア盤に囲まれて働ける楽しさといったら(笑)。


林;ゴウさん、絶対にレコード屋経験者の聴き方ですよね。すごくわかります。


宿口;その後友人の紹介でちょっと通うようになっていた渋谷のバー「ミリバール」のマスター、清野さんにバイトしないか?って誘ってもらったんですよ。ここでも音楽の洪水を食らいました。自分が積極的に聴いてこなかったレゲエやラテン、オーセンティックなソウル、ロック、ニュー・ウェーブetc...。音楽の幅がぐっと広がるきっかけになりました。また、音楽業界関係者やミュージシャンの出入りも多かったので、刺激的な日々でした。本当にいろいろなことを教わりましたね。


林;なるほど。ミリバールが運命を変えましたね。


宿口;そしてその数ヶ月後、ソウルブラザーズとミリバール両方の常連で仲良くさせてもらっていた橋本徹さんから、今度カフェを出店するので働かないかと声をかけていただきました。「カフェ・アプレミディ」です。オープンから2年半、お酒係として働かせていただきました。アプレミディでもたくさんの出会いがあり、本当に刺激的な時間を過ごさせていただきましたね。ソウルブラザーズ、ミリバール、カフェ・アプレミディの3つを掛け持ちしながらの学生生活は、僕の黄金時代(笑)、一番の良い思い出です。

とにかく膨大な音楽情報の波を泳ぎ続けた学生生活でした。こう振り返ってみると本当に僕は渋谷でラッキーな出会いがいっぱいありました。


林;いい話です。さて、周りは就職を考えている時期ですが。


宿口;大学卒業を控え、将来について考えざるを得なくなっていました。当初はレコード屋開業を夢見ていましたが、バーという仕事が楽しくて楽しくて。好きな音楽をかけて、楽しい人たちが来てくれて、ウソみたいな面白事件も起きる(笑)。「これだ、俺がやりたいのは!」って思うようになり、卒業を機にレコード屋を辞めました。


林;僕も同じくレコード屋をやめて飲食業に行ったのですごくわかります。


宿口;飲食店で経験を積み、30までに開業しようと決意し、1年遅れて2006年に開業しました。最初はブラック・ミュージック・バーをやろうと思っていたのですが、27歳くらいの頃でしょうか、大きく舵を切ることになります。

ある日ミリバールにパルコのクアトロ・レーベルからリリースされた新譜CDのプロモが届きました。ウィルソン・シモナルの息子、ウィルソン・シモニーニャやマックス・ヂ・カストロetc...サンパウロのクラブ・ミュージックをリリースしていたトラマ・レーベルの音源でしたが、これにヤられました。US、UKでもない独特なR&Bで、クセになりましたね。ブラジリアン・ドラムンベースもこの頃でした。それ以来ブラジルのリアルタイムの音楽を掘るようになりました。一回方向を決めるとトコトン突き進む性格なので、いろいろなとこへ出向き買い漁りました。


林;おおお。


宿口;特にラティーナのセールとヴァージン・メガストアの閉店セールでは探していたCDを安く大量に購入できて興奮したものです。
最終的には地元の隣町、群馬県大泉町のブラジル人街にもしょっちゅう行くことになりました。そこでCDを掘りつつご飯を食べたりしているうちに、どうしてもブラジルへ行きたい衝動を抑えられなくなり、2004年に初渡伯。ノープランでしたが、結局1ヶ月かけてレシーフェからサンパウロまでのバスの旅でした。
旅を通じてブラジル音楽の豊潤さに感激しました。元々雑食だったのも良かったのかもしれません。クラブミュージックが入り口でしたが、サンバ・パゴーヂも大好きになりましたし、旧譜も掘りまくり、結局あちこちでレコード200枚くらい買って帰国、しんどかったです。
もうここで完全にブラジル中毒になりました。店は絶対にブラジルだー!と決意しましたね。


林;ああ、ブラジルに行ってからの決意だったんですか。


宿口;昼は某飲食チェーンのセントラル・キッチンで肉を切りまくり、夜はバーカウンターに立って貯金しながら開店にこぎつけました。

店では24時まではできるだけブラジル音楽をかけています。最新のブラジル音楽中心に、パゴーヂ、MPB、バイーアものなど音量大きめの物が多いです。ご存知の通りブラジル音楽は多種多様ですので、基本的にリクエストはお断りして僕が最大公約数的な選曲をしています。
深夜はバーの醍醐味の時間です。秩序から無秩序へ移行する時間とでもいいましょうか(笑)。その時の気分でブラックミュージック中心になんでもかけます。とにかくウンチクよりも楽しい雰囲気になるように心がけています。自分の店は交差点でありたいと思ってます。家でもなく村でもなく。で、僕が信号機(笑)。


林;(笑)


宿口;特別な場所でもなく、単なる交差点。いろんな人がふらっと来て、ふらっと去って行けばいいなと。

おかげさまでブラジル好きの方や古くからの友人の支えもあって、12年目を迎えております。店を続ける自分的な秘訣はとにかく自分が飽きないことですかね。


林;わかります!


宿口;趣味を仕事にすると、飽きたら最悪ですよ。なので新しい趣味はすぐ店に反映することにしています。ちなみに最近はサッカーに夢中で、最近のお客さんはサッカー・バーと勘違いするほどです(笑)。
あと定期的にブラジルには行くことにしています。         

ブラジルは訪れるたびに刺激をもらいます。最初は音楽だけを求めていましたが、今はブラジルの国民酒カシャッサとブラジル料理が渡伯のテーマになっています。
特にここ数年はミルトン・ナシメントやトニーニョ・オルタでお馴染みのミナスジェライス州の食に興味が向いています。州都ベロオリゾンチには仲良くしてもらっているエドゥアルド・マイヤという有名なシェフがいまして、彼にいろいろとミナスジェライスについて学ばせてもらいました。ミナスはフランスと同じくらいの面積がある山に囲まれた農業州です。「ミナスはブラジルのトスカーナ」と言われるくらい食材が豊富で料理が美味しいんですよ。エドゥアルドはミナスのガストロノミー・イベント「ProjetoAproxima」を通じてその魅力をアピールしているので、ミナス音楽好きの方々、是非ミナスの食にも興味を向けてみても楽しいと思いますよ(笑)。


林;ミナス料理、美味しいんですよね。日本でも本格的に誰か紹介すれば良いのにといつも思います。さて、これみんなに聞いているのですが、これからの音楽はどうなると思いますか?


宿口;うーん、どうなるのでしょうか。
もともとCDのミリオンセラーやDJブームって僕ら団塊ジュニアが学生時代に支えていたと思うんですよ。何せ人口が多いですから。僕らが買えばヒットですよ。だから僕らが卒業して社会人になった途端レコード屋は衰退の一途をたどってしまったと思うんです。でも本当の音楽好きの人は社会人になっても当然買い続けてますよね。

現存のレコード・ショップやレーベルの方々は、本当に音楽が好きな人なのでしょうね。「オレらのコレを聴いてくれー!」っていう自社商品を、そういう本当の音楽好きに届ける努力をしているから続けていられるのでしょう。本当に頭が下がります。CD・レコ屋が無くなるとホント困りますからね。
そういう意味では送り手がホントの音楽好きだらけなのですから、健全なのではないのでしょうか。利益を出すのは大変でしょうけど。


林;ですね。


宿口;バーも飲食店も一緒だと思います。わかりやすく儲からないけど好きだから続けてるんですよね。
まあ僕とかウチのお客さんは相変わらずレコードもCDもiTuneでも買いまくってキャッキャしてるので、あまりこういうことは考えた事ないっすね。


林;なるほど、ゴウさんらしい回答ですね。さて今後はどうされる予定でしょうか。


宿口;ブラジルの街角にあるようなラテン系バルを路面でやりたいですね。飲んで食べて、飲んで食べてという感じのカジュアルな雰囲気で。
前回のブラジル旅行の帰りにポルトガルにも立ち寄ったのですが、リスボンもポルトも本当に素晴らしいところでした。ワインを飲みにアレンテージョ地方にも行ってきました。しみじみ美味いポルトガル料理も出したいし、ブラジルだけじゃなくラテン民族の街のアノ感じを表現できたらいいなと思ってます。さあ、果たして実現するのか?(笑)


林;ラテン系バルを路面で! 良いですねえ。是非、実現してください。それではみんなが待っている選曲ですが、まずテーマは?


宿口;テーマは「ブラジルを好きになってしまう10曲」です。


林;おお、楽しみです!


01. Max de Castro (マックス・ヂ・カストロ)「A História da Morena Nua...」



宿口;この曲は2ndアルバムに収録されているんですけど、このチキチキ・ビートが妙にクセになって大好きでしたね。ビデオクリップもかっこよくて。とにかく当時のトラマ・レーベルが好きで、ブラジルについた初日にサンパウロのクラブ「Blen blen Brasil」にトラマ・ナイト目当てで遊びに行ったくらいです。


林;ブラジル人ならではのグルーブ感ですね。ところでトラマ・ナイトっていうのがあるんですね。やっぱり現地でそういうの経験したいですねえ。


02. Paulinho Moska (パウリーニョ・モスカ) 「UM MÓBILE NO FURACÃO 」



宿口;この曲もブラジルを好きになった一つのきっかけでした。偶然ライブを観ることになり彼の歌は勿論、マルコス・スザーノのパンデイロとサッシャ・アンバッキの近未来的鍵盤にぶちのめされてしまったのです。それ以来クレジットにスザーノとサッシャがある物は全て手に入れてきましたよ


林;パウリーニョ・モスカ好きなんですね。ゴウさんってロックのイメージがなかったのですが、今回のインタビューでなるほどなあとわかってきました。


03. Adriana Calcanhotto (アドリアーナ・カルカニョット)「Vambora」



宿口;これもサッシャ・アンバッキの仕事ですね。なんとも言えない浮遊感と落ちていく感じがたまりません。凄くブラジルっぽいですね。サッシャの事を好き好き言ってたら、シンガーのTOYONOさんがフェイスブック経由で紹介してくれました。もう感激でしたね。アナ・カロリーナのサッシャ作品も神ってます。


林;アドリアーナ・カルカニョットもゴウさんの10曲に入るって意外な気がしますが、サッシャ・アンバッキがキーワードなんですね。これまた知らなかったゴウさんの一面でした。


04. Julia Bosco (ジュリア・ボスコ)「Dance com seu inimigo」



宿口;ジョアン・ボスコの娘による昨年の新譜です。サウンド・プロデュースは恋人でジョアン・ドナートの息子、ドナチーニョ。で、この音です(笑)。サイコーですね、昨年のLATINA誌のブラジル・ディスク大賞で、僕は本作を1位にしたほど好きなアルバム。ブラジルはことごとく裏切ってくれるところが好き。


林;2世つながりなんですね。うわ、この音...(笑)。僕、この80年代サウンド、リアルタイムで体験してるんでどうも立ち止まっちゃうんですよねえ...


05. Ivete Sangalo, Tatau (イヴェッチ・サンガロ、タタウ)「Arerê」



宿口;初めてサルヴァドールを訪れた時に大ヒットしていたバイーアの女王のDVDから。デュエットしているタタウはアラケトゥというグループのフロントマンでした。イヴェッチは勿論、タタウの歌声にヤられて、アラケトゥのCDを買い漁りました。親しみやすいベタなメロディーとバイーアの太鼓グルーヴがたまりません。


林;うわあ、会場盛り上がってますね。なんか今回ゴウさんの群馬でボウイを聞いてその後青学の話からサルヴァドールにたどりついたことを知ると感動します。


06. Skank (スカンキ)「Vou Deixar」



宿口;やはりこれも初めてブラジルに行った時にあちこちでかかっていた思い出の曲。元々はポリスに憧れていたのか、レゲエとロックの融合とかをやっていてメッチャかっこいいのですが、この曲からリッケンバッカーを携え完全なUKロックサウンドに。サンパウロのカラオケ・バーでこの曲歌ったらキャーキャー言われて楽しかったな。


林;ブラジルのインテリ男子って必ずスカンキ好きですよね。これカラオケ・バーで歌うとモテるんですね。勉強になりました(笑)。


07: Marcelo D2 (マルセロ・デー・ドイス)「MD2 (A Sigla Tá No Tag) ft. Som Imaginário」



宿口;我らがヒーローD2。運良く2回ライブを見たことがありますが、本当にヒップホップIQが高いんですよ。USヒップホップ・マナー。そこが他のブラジルのMCとの違いですね。後ろでスクラッチしているのはBlenにも来てくれたDJナッツ。1stは彼が全てのトラックを作っているんですよ。


林;おおお、ブレンにはそんな人も来てるんですね。ブラジル人がアメリカの音楽をどう解釈するかっていうテーマってずっとあると思うのですが、なるほどブラジルですね。


08: Péricles Part. Xande de Pilares(ペリクレスfeat.シャンヂ・ヂ・ピラリス)「 Êta Amor」



宿口;パゴーヂはブラジルのサンバ歌謡みたいなものでしょうか。ホント大好きになりました。街中に溢れていて、生活に密着した音楽ですね。名曲がありすぎて挙げればきりがないのですが、ここ数年でお気に入りはこの曲かな。元エザウタ・サンバと元ヘヴェラサォンのフロントマンによるデュエットです。


林;うわあ、すごい良い曲ですね。パゴーヂ、僕も昔すごく好きで聞いてたのですが、ゴウさん、本当にちゃんとリアルタイムでチェックしてるんですね。


09: Casuarina (カズアリーナ)『 Certidão』



宿口;こちらはよりクラシカルなパゴーヂ。インテリ層に受けの良いリオの人気グループです。この曲で歌っているジョアン・カヴァルカンチはレニーニの息子ですよ。完璧なコーラス・ワークと演奏、楽しそうに踊る観客たち。まさにこれぞリオの夜の楽しみ方って感じですね。Blenでも月1でこんなパーティーやってますので是非。


林;レニーニの息子なんですか。ごめんなさい、ほんと知りませんでした... 確かにクラシカルで僕にも響いてきます。リオですねえ。みなさんも是非、ブレンに!


10: Gilberto Gil (ジルベルト・ジル)「Se eu quiser falar com Deus」



宿口;最後にしっとりと深夜向けのいい曲を。ジルベルト・ジル御大による名曲です。こういう美しいメロディーの曲がブラジルには本当にたくさんあります。それに加えて歌詞もいいんだからもう!ブラジルの深夜のタクシーでこんな曲がかかっちゃったらもうアウトですね。一度ハマると抜け出せないカオスなブラジルへようこそ。


林;おお、この展開で最後に御大! なんか最後にジョルジ・ベンでもカエターノでもミナスでもサンバでもなくジルベルト・ジルを持ってくるのがゴウさんだなあって思います。

ゴウさん、お忙しいところどうもありがとうございました。ゴウさんの知らない顔がたくさん見れました。みなさんもこの10曲に何か感じたら是非、渋谷のブレンに行ってみてください。


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すっかり春ですね。良い音楽、聞いてますか? 音楽を片手に外に出てみませんか。
それではまた来月もこちらのお店でお待ちしております。

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■Bar bossa林さんが選曲したコンピレーションアルバムが11/16リリース!

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8.Cal Tjader / Just Friends
9.Shirley Scott/Can't Get Over The Bossa Nova
10.Blossom Dearie / Give Him The Ooh-La-La
11.Burt Bacharach / I'll Never Fall In Love Again
12.NICK De CARO and orchestra / I'M GONNA MAKE YOU LOVE ME
13.Blossom Dearie / Sweet Surprise
14.Beach Boys / Caroline No
15.Burt Bacharach / Alfie
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【林 伸次 近著】

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bar bossa information
林 伸次
1969年徳島生まれ。
レコファン(中古レコード店)、バッカーナ&サバス東京(ブラジリアン・レストラン)、
フェアグランド(ショット・バー)を経た後、1997年渋谷にBAR BOSSAをオープンする。
2001年ネット上でBOSSA RECRDSをオープン。
著書に『ボサノヴァ(アノニマスタジオ)』。
選曲CD、CDライナー執筆多数。
連載『カフェ&レストラン(旭屋出版)』。

bar bossa
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●東京都渋谷区宇田川町 41-23 第2大久保ビル1F
●TEL/03-5458-4185
●営業時間/月~土
18:00~24:00 bar time
●定休日/日、祝
お店の情報はこちら

bar bossa vol.67:bar bossa

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vol.67 - お客様:松岡祐子さん(ユニバーサル・ミュージック)
【テーマ:最近聴いていないけど、そういえば、好きだな、と思った曲】



いらっしゃいませ。
bar bossaへようこそ。

今回はユニバーサル・ミュージックにお勤めの松岡祐子さんをお迎えしました。


林;こんばんは。早速ですがお飲み物はどうしましょうか?


松岡;ソーヴィニヨンブランをお願いします。


林;お、素敵ですね。ではロワールのヴァランセイで美味しいのがありますので、そちらをお出ししますね。


松岡;はい。


林;さて、お生まれを教えていただけますでしょうか。


松岡;1981年、四谷です。慶應義塾大学病院で産まれたのですが、当時石原裕次郎さんが入院していて、祐子(字が違うのですが)という名前は裕次郎さんから?と病院内で訊かれていたようです。


林;四谷... 何か習い事はされてたのでしょうか? 松岡さんと言えばピアノですが。


松岡;母が美大を卒業していて、デザイン関係の仕事をしていたことから、四谷で過ごしていた3歳まではお絵描き教室に通っていました。お絵描き教室といっても、色々な工作を教えてもらうのですが、そこの教室の先生が『カバ先生』というあだ名で、あのお笑い芸人のカラテカ矢部さんのお父様だったんです(だいぶ後で知りました)。数年前、お仕事でカラテカ矢部さんにお会いした際にこの件をお話することができました。

その教室で年が1つか2つ上のお友達がいまして、彼女がピアノを習ってたんです。そのお友達のお家に遊びに行った際に、アラベスクという曲を弾いているのを聴いて、もうピアノの虜になりました。両親にどうしても習わせて欲しい、と頼み、引っ越しをきっかけに習い始めました。


林;え、珍しい、自分から習いたかったんですね。


松岡;父が音楽好きで、子供のころは一緒にピアノを弾いたりしましたね。父は高校生の頃バンドをやっていて、地元ではけっこう有名だったみたいです(笑)ビートルズの武道館公演も観に行って、会場で買ったジョン・レノンのカツラを被って地元に帰ったら笑われたそうです...。今思うと、音楽好きは父譲りかもしれません。


林;え、お父さん、ビートルズの武道館に行ってるんですね。これはすごいですね。


松岡;初めてのピアノの先生は、父の知人でした。音大を卒業されていて、彼女にその音大の付属小学校への入学を勧められまして、受験しました。


林;ほお、初めて買ったレコードは?


松岡;初めて買ったレコードは光GENJIの「ガラスの十代」のドーナツ盤です。諸星君が好きでした(笑)小学校の時は純粋にテレビの歌番組に出ているアーティストが好きでしたね。プリプリとか、米米とか。あとは、ジブリの音楽をピアノで弾くのがクラスで流行っていました。いつの時代もジブリは鉄板ですね。


林;なんかすごくわかります。でも今ついうっかりレコードと言ってしまいましたが、CD世代ですよね。


松岡;確か私が小学1、2年の時にCDが普及してきたと記憶しています。当時、1番上がアナログプレイヤー、2段目がラジオ、その次がカセット、CDみたいなマルチなプレイヤーがよくあったと思いますが(かなり存在感のあるオーディオです...)、父がそれを購入してきて、初めて買ったCDはBBクイーンズの「おどるぽんぽこりん」。レコードの感覚で、絵が書いてある面を下にして、そうでない何も色の付いていない面を上側にセットして、なんでかからないんだろう、と悩んだ思い出があります。


林;松岡さんだとギリギリそれを体験しているんですね。中学高校はどうでしたか?


松岡;中学の時の記憶が薄いのですが、高校はかなり充実していました。とにかく派手でした、私。いわゆるギャルです(笑)


林;え!(笑)


松岡;音大の付属だったので、音楽の授業やピアノを練習するのは当たり前でした。週1、学校で先生とピアノのレッスンを行うのですが、それに加え、毎週先生のご自宅でもホームレッスンというものがあり、それをこなすための日々の練習、アルバイト、塾、と今だったら絶対にこなせないハード・スケジュールでした。毎日楽器に触れているので、軽音楽部とか音楽系の部活は普通の学校のように、そこまでの人気はなかったような気がします。一部の男の子はディープ・パープルとか、ロック・ギターにハマってたりしましたが。


林;なるほど。逆に音楽に対してそういう感覚になるんですね。


松岡;私は中学は帰宅部で、高校時代はピアノの門下の先生が顧問だったオペラ研究部に半ば無理矢理入部させられました。オペラの伴奏が担当です。専門はクラシックでしたが、中学からは洋楽を良く聴いていました。Hiphop、R&Bですね。ネットがない時代でしたので、ラジオで新譜情報をゲットし、CDショップでポップコメントを読んで買ってました。今の時代だとほぼないことですが、やはり失敗もよくありましたよね。ただ、お小遣いで買ってるので、一枚一枚大切に聴いていたというか、あまり好きなアルバムではなかったとしても、どうにか好きなところを見つけようと必死でした(笑)あ、意外とこのベースラインいいじゃん、とか。


林;やっぱり松岡さんの世代までは僕とほぼ同じような音楽ソフトの買い方をしているんですね。さて、大学ですが。


松岡;大学もそのまま上に進み、ピアノ漬けの毎日でした。自分の生活からピアノが無くなるということは想像していなかったですし、大学卒業後は大学院に進むか、留学するか、という2つの選択肢しかないと思っていました。

大学3年になると、ピアノ科とかヴァイオリン科とか、声楽科とかでは珍しいことになるんですが、教育科の子たちがワサワサし始めるんです。就活です。
当時、ウチの学校の就職率が数パーセントで、あり得ない数字だったのですが(笑)私の周りも就活している友人は数える程度でした。もちろん私も就活はせず、大学4年も終わりに近づいた頃、急に「私はこのままで良いのかな...」という疑問がふつふつと湧いてきました。


林;そりゃそうなるのが普通の感覚ですよね。


松岡;その時思ったのが、小学校から大学までの16年間、周りの人たちが変わらずほぼ同じ、ということでした。自分がすごい狭い世界にいるような気がしてきて、外に出たい=就職したい、という気持ちになったのです。

大学卒業後、どうしても新人演奏会というものに出演しなければならず、第二新卒、という形で就活しました。今思うと非常に安易な考えで、やり直せるものならやり直したいのですが、、、
とりあえず働きたい、という気持ちだけでリクルート系列の会社に就職し、求人誌の営業を始めました。特にやりたい仕事ではなかったのと、名刺100枚獲得キャンペーンみたいな体育会系の雰囲気で、急に音楽が恋しくなりました。


林;あ、最初は音楽の会社じゃなかったんですね。


松岡;話は少し戻りますが、大学時代に資生堂ビルの受付のアルバイトをしていまして、そこの先輩がいきなり手製感満載のミックスCDをくれたんです。その人の彼氏が趣味でHOUSEのDJをやっている、とのことで、お手製のミックスCDです。聴かず嫌い&偏見だったのですが、HOUSEって苦手でした。ただただ激しくなんの抑揚もないんでしょ、的な。でも先輩からもらったものだし、次会った時に感想を言わないと、と思いまして一応チェックしたんです。そのCDはいわゆるディープ・ハウスというジャンルのものだったのですが、想像している音楽とは全く別で、一気にはまりました。

その後に付き合った大学の後輩も、たまたまハウスのDJをやったりしていて、クラブにも良く通うようになり、ダンスミュージックにどっぷりと。私もターンテーブルやミキサーを準備し、DJの真似事もできるようになりました(笑)

クラブシーンや様々な音楽と出会う中、クラシック以外の音楽に触れ合う仕事ってなんだろう、と考えている最中、営業の仕事をし始めたのですが、どうしても音楽に関係する仕事がしたくなり、退社しました。そこから職探しだったのですが、クラシック畑の純粋培養だった為、音楽関係の仕事がそもそも何があるのかさえ分からず、就職に関する本に頼ったりして。そこには、レコード会社は音大卒は取らない、という内容が書いてあり、絶望しました。要するに専門知識が高くなりすぎ、使いづらいから取らないんだ、というような内容でした。


林;え、そうなんですか。知りませんでした。


松岡;レコード会社は諦め、イベンター、ライブハウスなどの仕事を探している時に、ソニーミュージックがアシスタントを募集しているのを発見。ダメ元で応募しました。レコード会社の仕事が何も分からない状態で面接しまして(最初はソニーミュージックの系列の化粧品部門に行かされそうになりました...)、CDの営業の部門で働くことに。


林;おお、すごく運が良いんですね。


松岡;ソニーでの仕事は楽しかったですね。同年代の仲間も多く、今でもすごく良い思い出です。その数年間でレコード会社とは、ということを学びました。ただ当時のソニーはアーバン系の洋楽が少なく、扱っている商品に物足りない思いがありました。

ここで付き合っていた大学の後輩が出てくるのですが(笑)彼が早稲田の音楽サークル『ギャラクシー(業界では有名なサークルです、ライムスターとか、アーバン系のライターさんとか、現レコード会社の人とか所属していました)』に所属しており、そこでユニバーサルミュージックで働いている人と仲良くしていたんです。必然的に私もその人と仲良くしていまして、ある日、ユニバーサルに来ないか、とお話がありました。ソニーの居心地が良かっただけに、悩んだのですが、そのお話をお受けすることにしまして... 今に至る感じです。その人が現在私が所属している部署にいまして、私も同じ部署で働くことになりました。


林;なるほど。そんな感じで決まっていくものなんですね。


松岡;ユニバーサルって中途採用で入社する人がすごく多いんです。多分、ソニーのドメスティックと外資の違いだと思うのですが、雰囲気が全然違って少しカルチャーショックでした。中途採用ということは、その道のプロフェッショナルが入社しているということなので、レーベルで働くのが未経験な私も経験者のような扱いでして(笑)。入社した一週間後にトリニダードトバゴ出身のアーティストが来日するということで、入社してすぐに、雑誌のインタビュー取ってきて、と言われました。

宣伝なんてやったことなかったですし、もうとりあえず必死で...雑誌の裏に書いてある電話番号に片っ端から電話してアポを取り、まだ良くわからないアーティストのインタビューをブッキングしました。アーティストが来日した後、その人の彼を迎えに行って、と言われ、成田空港まで行きましたね、そういえば。お互い話すこともなく、リムジンバスで気まずい空気が流れたのを覚えています。


林;結構小さいころからなんでもとりあえずぶつかっていくんですね。なんか松岡さんらしいと言いますか...  


松岡;私が所属している部署はカタログ音楽商品、コンピレーションアルバムなどを中心に扱う部署で、要するにストラテジーの部署。なので、企画が命です。ユニバーサルと契約していないアーティストも良いな、と思えば日本だけで契約してリリースもする、という何でもありな部署でもあります。


林;なるほど。楽しそうですね。


松岡;入社して10年、ずっと同じ部署にいます。洋楽の編成担当をやったあと、部署内に宣伝部ができ、数年間宣伝をやりました。洋楽だけでなく、邦楽もあるため、音楽番組やワイドショーのブッキングも行いました。ちょうど安全地帯が再結成でざわざわした時ありましたよね。安全地帯も宣伝しましたよ。

現在はまた制作をやっていまして、DJ KAORIなどのノンストップ・ミックスや、FREE SOULなどのコンピレーション、その他再発商品などを担当しています。


林;橋本さん! さてこれはみんなに聞いているのですが、音楽はこれからどうなっていくと思いますか?


松岡;いろいろな記事にもなっていますが、確かに音楽業界は今、過渡期だと思います。スマホとか、YouTube とか、配信とか、サブスクリプションとか、私が業界に入ったたった10数年でこんなにどんどん新しいものが出てくるのかと。それに順応していく体力やアイディアがもっと私たちには必要だと思っています。

実際に人気のラッパーはダウンロード配信すらやらず、サブスクリプションのみで作品を発表したり、と、レコード会社が必要ではない時代かもしれません。宣伝だって、自分たちのSNSで事足りますしね。情報を発信した数秒後には世界中に広がる時代です。そんな時代だからこそ、もう私たちは何もやることない、と思っては本当に終わってしまうので、その時代に合った仕事を積極的にしていきたいですね。エンターテイメントが仕事ですので。楽しく、いろいろなアイディアを出して。可能性は無限大だと思います。

反面、アナログもブームですよね。ただ、ブームとはいっても中古市場が盛り上がっていて、新譜商品はまだまだ、といった感じです。けれど、わたしもこの一年、アナログ商品作りに多数携わりました(多分ユニバーサルでは私が1番アナログ商品作っていると思います(笑))。
フジファブリックやoriginal loveのオリジナル・アルバムアナログ化とか。和ジャズやフリー・ソウルの名盤の再発とか。

その中で好評だったのは、MUROさんが企画した7インチスプリット盤、
http://store.universal-music.co.jp/feature/captain-vinyl-7inch/

Suburbiaの橋本氏とDeep Jazz Realityの尾川氏が企画した、 King James Version/First Time We Met (ブッダ・ブランドの人間発電所ネタ)とMark Capanni/I Believe In Miracles (ライムスターのThe Choice Is Yoursネタ)のスプリット7インチ(完売しました!)や、今度でるジャクソンシスターズとオデッセイのシングルカット7インチ

http://store.universal-music.co.jp/product/uiky75024/

http://store.universal-music.co.jp/product/uiky75023/

などです。

好評商品の共通は、こんなの欲しい、と思えるような独自の企画です。こういうのを企画できるのも今の仕事の醍醐味ですし、楽しいです。


林;おおお、一気に話されましたが、お仕事ちゃんとされてますね。僕も松岡さんが作ったアナログ買ってますよ。これからはどうされる予定でしょうか?


松岡;今後はもっとデジタルに寄せた編成に力を入れる予定です。これから勉強していくこともいっぱい。仕事柄、世界中のユニバーサルミュージックのスタッフとやり取りをするのですが、もっと英語も頑張らなきゃ、と思ってます。英語の勉強の本、忙しさにかまけて全然進んでないですが...


林;英語、やっぱりやらなきゃって思うこと、僕もよくあります。さて、みんなが待っている選曲ですが。テーマは何ですか?


松岡;テーマは「最近聴いていないけど、そういえば、好きだな、と思った曲」です。1曲、最近の曲入れました。橋本さんも好きな曲です・・・


林;期待しますね。


01. マーラー/交響曲第5番第4楽章「アダージェット」



松岡;名演がいくつかありますが、YouTubeだとこれが一番ヒットしたので。「ベニスに死す」で有名すぎるほど有名なクラシック音楽ですね。マーラーって、クラシックをやっている人の中で好き嫌いけっこう分かれるんです。でも、この楽章は好きな人が多いはず・・・。
クラシック、聴かず嫌いの方も多いかと思いますが、本当に素敵な曲が多いので、ぜひ!


林;僕もマーラーに関してはあまりピンと来ていないのですが、アダージェットは美しいですよね。他も聞いてみます!


02. 七尾旅人×やけのはら/rollin' rollin'



松岡;Good Song!その一言に尽きると思います! 小学校高学年から洋楽に走ったので、あまり邦楽を聴いていなかったのですが、今、この曲を聴くと「青春」という2文字が浮かびます。


林;おお、これが松岡さんの「青春」ですか。良いですねえ。


03. Risco Connection/Ain't No Sopping Us Now



松岡;昨年お亡くなりになった、David Mancuso。彼の伝説のパーティー『The Loft』クラシック。YouTubeだとわかりづらいのですが、アナログで聴くとパーカッションの抜けがハンパなく気持ちよく、幸せな気分になります。

私もDavidが来日した際にパーティーに行きました。確か、札幌「PRECIOUS HALL」からスピーカーを持ってきて(@リキッド)のプレイだったのですが、素晴らしいイベントでした。


林;ああ、こういうのが松岡さんの本領なんですよね。わかってきましたよ。


04. Carlton & His Shoes/Let Me Love You



松岡;この曲が収録されたアルバム(すごい有名なアルバムですね)、レコードでなぜか3枚持ってます(笑)1枚目、いいところでプツとなるので、もう1枚買ったらまた何か不具合があって、3枚目でやっと、という感じでした。簡単に3枚手に入ったので、レア盤とかそんなのではないと思いますが、センスが良くていいですね。


林;え、簡単に3枚、手に入るものなんでしょうか。カッコいいですねえ。


05. Stevie Wonder / I Love Every little Thing About You



松岡;ユニバーサルで働きたいなーと思ったのは、彼が所属していたからでした(笑)選べない程素晴らしい曲ばかりなのですが、この曲を聴くとあたたかい気持ちになるので大好きです。タイトルからして幸せいっぱいですね。特に曲の一番最後の語りの部分がすごく好きなんです。最近プライベートでいろいろあったり・・・するStevieですが、是非新譜のリリースと来日公演を行っていただきたいです。


林;スティービーお好きなんですよね。でも1曲だと、なんかすごく渋いところを。


06. Sade / Kiss Of Life



松岡;人生の最後に聴きたい曲です。レコードのジャケットも素晴らしいです。どんな女子もSade Aduに憧れてるはず!と思っています。日本公演て・・・ないんですかねー・・・


林;これでもう松岡さんの音楽の趣味が完全に把握できてきました。美しくてちょっとセクシーで、ゆるい感じですね。


07: The RH Factor / How I Know



松岡;ロイ・ハーグローヴ率いるThe RH Factorのアルバム「Hard Groove」に収録されている曲。素敵な曲です。歌詞も◎。当時はすごく新しく感じました。グラスパーもですが、最近は多くなりましたね。


林;これって10年以上前なんですね。カッコいいですよねえ。


08: Yuna / Crush feat. Usher



松岡;最近の曲も。ラッセル・シモンズも絶賛したというマレーシア出身のユナ。Verveからデビューしました。浮遊感あるサウンド今っぽいですね。ジェネイ・アイコとかユナとか、今っぽいサウンドに合うヴォーカルです。


林;ああ、松岡さんの音楽の趣味の、最大のキーワードは「浮遊感」なんですね。ああ、どれも確かに浮き上がってますね。


09: 奥山みなこ / 花のように



松岡;大学の時に、Sunday Afternoon(長谷川ケンジさんがオーガナイザーのイベントで、今MUROさんと一緒にCaptain Vinylを主催されているDJ NORIさんもPLAYしていて、大好きだったんです)というイベントによく行っていまして、そこで教えてもらいました。優しいきれいな声ですよね。


林;へええ。すごく良い声ですね。チェックしてみます!


10: Vangelis / Memories Of Green(ブレードランナー)



松岡;ごめんなさい、私映画は観ていないんですけど、この曲が欲しくてサントラを買った記憶があります。映画音楽っていいな、と最近思います。もっとたくさん名曲があるんでしょうね、今度Digしてみようと思います!


林;え、観てないんですか。僕も観てない映画のサントラは好きですけど、これは映画が好きでって順番だと思ってました。良いですよね。 それでは松岡さん、今回は本当にお忙しいところどうもあり... あれ、どうしたんですか?


松岡;あの、私が作ったCDの宣伝をしても良いでしょうか? 


林;え、あのここはそういう場所ではないのですが、じゃあ1枚だけですよ。


松岡;あの、bar bossaの林さんが選曲したCDなんですが、『Happiness Played In The Bar -バーで聴く幸せ』です。よろしくお願いいたします。


林;あ、僕のCDでしたか。ありがとうございます... あ、ホワイトデーのプレゼントに良いかもです...

松岡さん、今回はお忙しいところどうもありがとうございました。もう10年以上も前からbar bossaに通っていただいている松岡さんとこんな対談なんて出来るなんて、不思議な気持ちですね。

さてみなさん、もう春ですね。新しい音楽を片手に外に飛び出したいですね。
それではまた来月、こちらのお店でお待ちしております。

bar bossa 林伸次


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■Bar bossa林さんが選曲したコンピレーションアルバムが11/16リリース!

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■タイトル:『Happiness Played In The Bar -バーで聴く幸せ- compiled by bar bossa』
■アーティスト:V.A
■発売日:2016年11月16日
■レーベル: ユニバーサル ミュージック
■品番:UICZ-1646

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【収録曲】
1.Blossom Dearie / It Might As Well Be Spring
2.Bill Evans / Soiree
3.Paul Desmond / Emily
4.Bill Evans Trio / Elegia
5.Quincy Jones and His Orchestra / Dreamsville
6.Gerry Mulligan / Night Lights
7.Vince Guaraldi Trio / Great Pumpkin Waltz
8.Cal Tjader / Just Friends
9.Shirley Scott/Can't Get Over The Bossa Nova
10.Blossom Dearie / Give Him The Ooh-La-La
11.Burt Bacharach / I'll Never Fall In Love Again
12.NICK De CARO and orchestra / I'M GONNA MAKE YOU LOVE ME
13.Blossom Dearie / Sweet Surprise
14.Beach Boys / Caroline No
15.Burt Bacharach / Alfie
16.Milton Nascimento / Catavento
17.Earl Klugh / The April Fools
18.Danilo Perez/Another Autumn


【林 伸次 近著】

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■タイトル:『バーのマスターは「おかわり」をすすめない 飲食店経営がいつだってこんなに楽しい理由』
■著者:林 伸次
■発売日:2016年9月9日
■出版社: DU BOOKS
■金額:¥1,728 単行本

アマゾン詳細ページへ


「このビール、ぬるいんだけど」とお客さまに言われたら、あなたならどう対応しますか?
その都度悩んで、自ら回答を見つけてきた渋谷のバーのマスターの約20年。
楽しく経営を続けられたのには理由がある!

「バーの重たい扉の向こうには、お客さま、店主、お酒......その他たくさんの物語が詰まっています。ぜひ、あなたもその物語に参加してみてください。」
――本文より


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林 伸次
1969年徳島生まれ。
レコファン(中古レコード店)、バッカーナ&サバス東京(ブラジリアン・レストラン)、
フェアグランド(ショット・バー)を経た後、1997年渋谷にBAR BOSSAをオープンする。
2001年ネット上でBOSSA RECRDSをオープン。
著書に『ボサノヴァ(アノニマスタジオ)』。
選曲CD、CDライナー執筆多数。
連載『カフェ&レストラン(旭屋出版)』。

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●営業時間/月~土
18:00~24:00 bar time
●定休日/日、祝
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bar bossa vol.66:bar bossa

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vol.66 - お客様:高原一実さん(ミュージシャン)
【テーマ:こういう曲が書きたいクロスオーバー】



いらっしゃいませ。
bar bossaへようこそ。

今回はゲストにミュージシャンの高原一実さんをお迎えしました。


林;こんばんは。さて早速ですがお飲物はどうしましょうか。


高原;僕、酒がめっぽう弱いんです。何か軽くて飲みやすいおすすめはありますか?


林;でしたら今はリンゴを低速ジューサーでしぼってカクテルにしているので、それでアルコール低めでお出ししましょうか。


高原;はい。ではそれでお願いします。


林;かしこまりました。さて、お生まれは?


高原;1973年、東京で生まれました。母はビートルズ好き、父はウエスタン映画とフォークが好きなごく普通の団塊の世代でした。


林;お母さん、その当時ビートルズが好きってお洒落ですね。


高原;でしょうか。そして、幼少時の健康診断でドクターが「この子はすごく耳がいい、何か音楽をやらせるといい」と薦めたのだそうです。物心ついたころにはピアノを始めて5歳の頃にはもう曲を書いていました。


林;おお!


高原;ピアノの練習そのものが楽しかった記憶はほとんどありません。辛かった思い出のほうが多かったです。ただ小学校の合唱発表会ではピアノの伴奏をかってでていました。「男の子がピアノ伴奏」というのは珍しくて話題となり、ちょっとだけ誇らしかった記憶があります。


林;それが恥ずかしかったという男子と、誇らしかったという高原さんとの違いがあらわれてますね。初めて買ったレコードは?


高原;初めて買った音源はカセットテープで杉山清貴&オメガトライブでした。小学時代はトップテン・ベストテン世代で、なかでも「ふたりの夏物語」「ルビーの指環」はハマりました。オメガトライブは僕の青春の一枚でしたね。当時から西海岸系~フュージョン・クロスオーバー路線のサウンドにビビッとくるマセガキでした。

ちなみに、なぜカセットテープだったかというと、ちょうどそのころ親にウォークマンを買ってもらったこともあり、出かけるときには常に聴いていたいという思いからでした。

今も出かける時はほぼ必ずラジオか音楽を聴いているので、この頃から全く変わっていません。


林;ああ、ネイティブ・ウォークマン世代なんですね。その後、音楽への思いは変わりましたか?


高原;小学6年の時にクラシックピアノがいよいよ辛くてやめてしまいました。中学時代はピアノよりもドラムのほうが楽しくて、ピアノはほとんど弾いていませんでした。


林;いいですね。


高原;初めてドラムでバンドもやりました。今じゃ笑える話ですがニューウェイブ系~パンク系でした。クラシックピアノの時と違ってバンドはチームプレイになるので、迷惑をかけまいと無我夢中で練習していました。


林;高原さんらしい...


高原;聴くほうはラジオが中心で、この頃に洋楽を聴きはじめました。ヒットチャートが中心でヒューイ・ルイス&ザ・ニュース、プリンス、スティング、デュラン・デュランあたりが印象に残っています。

邦楽はエピック・ソニーの作品ばかり聴いていました。特に大沢誉志幸・渡辺美里が好きで、YOU&Iで全作品レンタルしていました。この頃からもう完全に音楽に関しては雑食になりました。


林;僕、69年生まれで4才上なんですが、ちょうど僕が高校の時と全く同じですね。高校はどうでしたか?


高原;高校に入ったら器楽部という名前のビッグバンドが部活であったんです。ホーンがいっぱいいて演奏に迫力がある。よしここでドラムをまたやろうと思ったら、既に新入生が3人もいて「ドラムはいらないよ」と。

では何なら入れてもらえますか、と尋ねたら「バリトンサックスやらない?楽器は貸すから」となってチャレンジしました。ですがどんなにやっても吹く楽器がダメで早々に挫折。ピアノも新入生がいっぱいいたので、当時誰もいなかったギターに転向して独学ではじめました。ここでコードというものを知りました。


林;ギターがいなかったんですか。なるほど。


高原;ただビッグバンドのギターって、ひたすらコードの4部音符をジャッジャッ♪と弾く地味なパートなんです。地味なプレイにがまんならず(苦笑)、途中からコンボ編成もやりたいぞということでフュージョンのド定番カシオペアやデビッド・サンボーン、ジョン・スコフィールド、リー・リトナーなどをやらせてもらいました。ギターはフュージョンギターキッズらしくヤマハの青いSGギターを使っていました。


林;え、高校から始めてそんなに上手くなったんですね。


高原;ジャズのライブには小遣いと昼食代を浮かしてよく行きました。橋本一子さんのライブでジャズとも現代音楽とも言えないアプローチにものすごい衝撃を受けて、その影響でピアノを再開させました。クラシックはやりたくないけどジャズはちょっと難しすぎる、ということでポピュラーピアノといえばいいのかな、ボサノバ・サンバ・シャンソンなどの基礎やコードワーク、アドリブプレイを学びました。


林;橋本一子をその当時ライブで見てるんですね。さすが東京っ子です。その後は?


高原;高校3年の頃にキング・クリムゾンを聴いて今までに聴いたことのないような進行にびっくり。そこからプログレッシブロックに興味を持ち、プログレ専門のサークルに入りました。まあモテない音楽ばかり(苦笑)。ただ音楽の世界が相当に広がったのは確かで、複雑なコードワークやアウトフレーズ、スケールなどを学ぶことができました。ここで自分の音楽的嗜好が70年代に集中するようになり、フェンダーローズピアノ・ハモンドオルガン・メロトロン・アナログシンセ好きが確立されました。当時プログレを聴いていなかったら今の自分の作曲・アレンジ・コード感覚はないと断言できます。


林;なるほど。プログレ漬けは大きそうですね。


高原;音楽漬けに拍車をかけるように、3年間新星堂の輸入盤専門店・ディスクインでアルバイトとして働きました。世の中はアシッドジャズがブーム、70年代好きな僕はドハマりしまして、プログレと並行して社販で買いまくりました。

アシッドジャズの次はフリーソウル・渋谷系、そしてカフェ・アプレ・ミディのシリーズとブームが続きます。僕もしっかりついていきました。フリーソウルとカフェ・アプレ・ミディのシリーズは今でも僕の曲づくりのベースになっています。


林;あ、やっぱりレコード屋さんで働いているんですね。詳しいけど、知識にこだわりすぎない感じが「レコード屋出身」って感じですね。で、それで大学を卒業するとき、ミュージシャンになろうと思いませんでしたか?


高原;ミュージシャンとして生きるなら退路を断つのではなく仕事をしながらやろうと在学中から決めていました。当時からミュージシャン志望のフリーターとバンドをやっていましたが、みんな仕事が大変そうだったんですよね。ライブ後の打ち上げで飲んでたら「俺明日6時にはもう現場なんだよね」なんてことを言うわけです。こりゃフリーター生活も大変だ、どちらにしても大変ならちゃんと就職はしようと。小椋佳さんみたいな例だってあるんだと。それで30歳まではプロ指向で活動し、30歳までにメジャーになれなければプロ指向はやめようと決めたんです。


林;なるほど。現実的です。


高原;いろんな方とセッションをしたりツアーのサポートをしたりバンドを渡り歩いたりエロゲーの音楽を作ったりしながら、徐々にアイズレー・ブラザーズのような男性ボーカルのバンドをやろうと路線を固め、2000年にオレンジマーマレードというバンドを結成します。


林;おお!


高原;オレンジマーマレードは当時の僕の全精力を傾けたバンドでした。4年間ずっと週1回のリハーサルを継続する真面目なバンドで、テクはなくともライブのアンサンブルには自信がありました。曲は完全にオリジナルラブレスペクトな内容で、当時オリジナルラブの2ちゃんねる板でも何度か似てると書かれていました。ビジュアルをマツザワサトシさん(http://www.salboma.com/)に一任してカッコよくまとめてもらったり、デモテープはのべ100社に送ったりと必死にやったのですが、結果は出ませんでした。あるクラブ系のレーベルに目をかけていただき、作曲家修行をしたこともあったのですがそこでも芽は出ませんでした。

そうこうしているタイミングで左手親指に大けがを負ってしまいまして1ケ月入院。さらにLAMP(http://www.lampweb.jp/)という素晴らしいバンドのアルバム「恋人へ」を聴いてしまい、「キリンジはまだヤス(堀込泰行さん)が自分と同じ年齢だから許せるけど、LAMPのメンバーは自分よりも若くてこの完成度か・・・」と思い、もう日本のメジャーシーンを目指すのは終わりにしようと決断したんです。


林;あ、LAMPがこんなところで... ではオレンジマーマレード、聴いてみましょうか。

ORANGE MARMALADE - Perfect Journey

ORANGE MARMALADE - 車窓

※どちらも僕の曲です


高原;オレンジマーマレードは活動をストップさせましたが、実は僕にはもうひとつ2001年から続けているバンドがありました。それがTrans of Life(https://www.youtube.com/playlist?list=PLjlCkNPG49UUoaE0IIkec2oO7W4QbEmKO)です。

加入当初はリーダーでギターの富樫さんが好きなパット・メセニーやトニーニョ・オルタに影響を受けたブラジリアンフュージョンバンドでした。2004年にハウスDJの瀧澤賢太郎さん、さらに福富幸宏さんに僕らの曲がリミックスされたのをきっかけにハウスミュージックに移行します。そして2006年にDJの工藤さんと出会い、富樫さんと3人で海外での音源リリースを中心に活動するユニットスタイルができあがりました。以降年数作のペースでリリースとライブをしています。3人とも曲を書くのが特徴のユニットです。

残念ながら2015年を最後にリリースがないのですが、また 再開しようと話しているところです。聴いてください。

Trans of Life - Na Mira

Trans of Life - Foi Voce

Trans of Life - Delight Earth

※Delight Earthはギターの富樫作曲、Na MiraとFoi Voceは僕の曲です


林;おお、高原さんのブラジルが前に出ていますね。カッコいい! 再開、期待しております。さて、これみんなに聞いているのですが、これから音楽はどうなると思いますか?


高原;まずリスナー視点で考えてみます。流通方法としてはアナログ・CD・デジタル配信、再生装置についてもいろんな楽しみ方ができました。レコードもよし、真空管アンプもよし、ネットワークハードドライブに保存して呼び出して聴くもよし、YouTubeで聴くもよし。すごくいい時代になったと思います。音楽業界って市場はシュリンクしてますけど、聴くための間口はこれまでになく広がってると実感します。

その一方で録音された音楽とライブの音楽では、聴こえてくる情報量も聴収環境も全く違うものです。気になったアーティストがいらっしゃったら一度は生のライブを見てほしいなと思います。ホントにいいライブってジーンときます。今はカフェなどのお店の一角で演奏する方がすごく増えていますし、お店側も集客・認知拡大手段になるならということで利害関係が一致していますからね。


林;そうですね。


高原;逆に演奏・制作視点で考えてみると、成功の王道がなくなってしまったことが今一番の音楽業界の課題であり変革期だと思っています。

今一番の成功モデルは秋元康さんのAKBモデル、X JAPANやBABYMETAL、Perfumeの海外進出モデルだと思います。でもこれはバンド・ユニットのコンセプトから戦略戦術までのストーリーが明確につくられているからできていることで、普通のミュージシャンでは難しい。そんなわけでみんなもがいていて、宍戸留美さんのようにクラウドファンディングでスポンサーを募る方法(*1)、ジャズトロニックの野崎良太さんのようにB2B市場に活路を見出す方法(*2)などやっているのだと思います。実は、先に海外進出で→逆輸入狙いで国内のB2B市場で回収する戦略は我がTrans of Lifeでも考えていたことですが、獲得できた市場が小さすぎる中で制作を継続することは大変でもがいているところです。

おそらく今後音楽で稼ぎ出すには、海外進出成功→逆輸入モデルでバンド・ユニットのコンセプトから戦略戦術まで作り込んでいくか、内外問わず小口の収入を積み上げていくことになるんだろうと思っています。小口の積み上げはリソース面で限界があり、そうなると音楽以外に他の仕事を持ちつつ、どちらでも人生の充実を見出すパラレルワークモデルが普通になっていくんじゃないでしょうか。

*1;https://motion-gallery.net/projects/runrun25
*2;http://www.huffingtonpost.jp/lien-project-by-the-sazaby-league/the-sazaby-league_02_b_9074224.html


林;なんか高原さん、今日一番、目がキラキラ輝いてますね。音楽ビジネスの話、お好きなんですね。今後はどうされるご予定でしょうか。


高原;今後ですが、僕は一般企業でメディアの事業開発・マーケティングを担当していますので、まずはこの本業キャリアの深堀が第一です。そのかたわら、Trans of Lifeの活動を少しでも前進させつつソロ活動の準備を少しずつ進めたいと思っています。まだインストゥルメンタル主体にするか、弾き語り主体にするか軸が定まっていませんが、マイペースに決めていきたいと思います。

YouTube
https://www.youtube.com/playlist?list=PLjlCkNPG49UUoaE0IIkec2oO7W4QbEmKO

soundcloud
https://soundcloud.com/kazumi-takahara/

note
https://note.mu/kazumi_takahara

OTONA SALONE
https://otonasalone.jp/author/editor-k-t/


林;期待しております。ではみんなが待っている10曲ですが、テーマはどういうものでしょうか?


高原;「こういう曲が書きたいクロスオーバー」、そんな10曲です。結果的に70年代、フェンダーローズピアノを使っている曲に集中しました。


林;お、クロスオーバー! ではいってみましょうか。


01. Toninho Horta - Aquelas Coisas Todas



高原;MPBはボサノバからくるわかりやすいメロディと複雑なコード移動を両立したすばらしい音楽だと思っています。玄人好みなのかもしれませんが。なかでもトニーニョ・オルタのこの曲はハウス界のドン、ルイ・ヴェガがリミックスするなど、ダンスミュージック界隈でもクラシックです。


林;1曲目にふさわしい名曲ですね。


02. Ivan Lins - Essa Mare



高原;イヴァン・リンスはMPB界ではマルコス・ヴァーリ、ジョアン・ドナートと並んで鍵盤で曲を書く作曲家としてすごくレスペクトしています。この曲のコード進行とかもう猟奇的ですね。ライブだとさらにこれを弾き語りしてしまう。神がかってるなと思います。参考にしたくても参考になりません。


林;あ、イヴァン・リンスだとこのアルバムが高原さんなんですね。納得です。


03. Michael Franks - Nightmoves



高原;70年代のクロスオーバーを語る上で、トミー・リピューマを外すわけにはいきません。トミー・リピューマのプロデュース作品はどれも大好きですが、ソロ1作目の1曲目がこんなメロウな曲でいいのかよ!ふつうもうちょっと元気いい曲持ってくるだろ!と衝撃でした。


林;言われてみれば確かにそうですね。でもそれが「衝撃」と受け止めるのが高原さんらしいと言いますか...


04. Quincy Jones - If I Ever Lose This Heaven



高原;70年代メロウとくればレオン・ウェアも外せません。この曲のサビを初めて聴いた時は本当に衝撃でした。-5thコードを連続で持ってくるとは!演奏もオールスターで何度聴いても鳥肌がたちます。クインシー・ジョーンズの70年代のA&M作品はどれも最高で、ストリングスやホーンアレンジの勉強に聴き込みました。


林;この曲、このヴァージョン、もうホント、何度聴いても鳥肌ですよね。もうたまりません。


05. Leroy Hutson - In The Mood



高原;僕がオレンジマーマレードというバンドをやっていた時に一番曲づくりの参考にして、iPodを壊すくらい聴きまくったのがリロイ・ハトソンでした。イントロとサビのオンコードの平行移動だけでご飯2杯いけますね。


林;あ、こういう曲で「ご飯2杯」というのは「作ってる人ならでは」ですね。


06. Santana - Tell Me Are You Tired



高原;「哀愁のヨーロッパ」が収録されているアルバムなんですが、「哀愁のヨーロッパ」のひとつ前の曲がこれです。サンタナってこんなフリーソウルな曲やるんだ!とびっくりでした。トム・コスタのローズピアノソロが文句なしにカッコいい。


林;うわ、ごめんなさい。サンタナ、食わず嫌いでした。カッコいいですね。


07: Casiopea - Reflections Of You



高原;80年のカシオペアのアルバムでキーボードの向谷実さんの作曲。ローズピアノってこう使うべきだよね!というお手本のようなメロウな曲に仕上がっています。カシオペアはDJさんにもっと評価されるべき名曲揃いのアーティストだと思っています。


林;カシオペアでこういう曲を持ってくるのがまたまた高原さんらしいですね。ホント、高原さん、ミスター・メローです。でもカシオペアはDJにもっともっと愛されるべきですね。本当にそう思います。


08: Mackey Feary Band - A Million Stars



高原;ハワイが生んだ松崎しげる(ルックスがそっくりなんです。笑)。この軽快なリズム、ローズピアノの使い方、ストリングスやホーンのアレンジ、ソウルフルなのに頼りないボーカル、全てがツボ。無人島に持って行く3枚のうちの1枚です。


林;ああ、この辺りもお好きそうですね。このアルバム、こんなに良いんですね。今度見かけたら買います。


09: Seawind - He Loves You



高原;無人島に持って行くもう1枚がこれです。これが自分の最も理想とする曲と言い切れます。こういう曲が書きたいのに書けないんですよ。。。


林;おお、この流れだとシーウインドですよね。もう完全に高原さんを把握できました(笑)。


10: Blossom Dearie - Many's The Time



高原;ソロ活動を意識するなかで、歌ものをやるなら、と一番聴きこんでいるのがブロッサム・ディアリーです。メジャーコード基調でポジティブな仕上がり、要所で-5thコード・オンコードを活用して曲の起承転結がすごく考えられている。弾き語りをするなら今の自分の理想型です。無人島に持って行く最後の1枚はブロッサム・ディアリーですね。


林;先日もbar bossaでブロッサム・ディアリーを語っていただきましたが、作ってる側の人にもそういう曲なんですね。良い曲ですよね。


高原;いやあ好きな曲ありすぎて10曲に絞れないですね。キーボーディストとして一番影響受けてるハービー・ハンコックを入れられなかったし、作曲家として大好きなケニー・ランキンやニック・デカロも入れられなかった。。。


林;そうなんです。そういう「これも入れたかった」がこの10曲の魅力なんです。

高原さん、今回はお忙しいところどうもありがとうございました。
今後の音楽活動も期待しております。

お正月気分も終わり、2017年が進み始めましたね。
良い音楽がある人生って本当に素晴らしいですね。
それではまた来月もこちらのお店でお待ちしております。

bar bossa 林伸次


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■Bar bossa林さんが選曲したコンピレーションアルバムが11/16リリース!

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■タイトル:『Happiness Played In The Bar -バーで聴く幸せ- compiled by bar bossa』
■アーティスト:V.A
■発売日:2016年11月16日
■レーベル: ユニバーサル ミュージック
■品番:UICZ-1646

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【収録曲】
1.Blossom Dearie / It Might As Well Be Spring
2.Bill Evans / Soiree
3.Paul Desmond / Emily
4.Bill Evans Trio / Elegia
5.Quincy Jones and His Orchestra / Dreamsville
6.Gerry Mulligan / Night Lights
7.Vince Guaraldi Trio / Great Pumpkin Waltz
8.Cal Tjader / Just Friends
9.Shirley Scott/Can't Get Over The Bossa Nova
10.Blossom Dearie / Give Him The Ooh-La-La
11.Burt Bacharach / I'll Never Fall In Love Again
12.NICK De CARO and orchestra / I'M GONNA MAKE YOU LOVE ME
13.Blossom Dearie / Sweet Surprise
14.Beach Boys / Caroline No
15.Burt Bacharach / Alfie
16.Milton Nascimento / Catavento
17.Earl Klugh / The April Fools
18.Danilo Perez/Another Autumn


【林 伸次 近著】

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■タイトル:『バーのマスターは「おかわり」をすすめない 飲食店経営がいつだってこんなに楽しい理由』
■著者:林 伸次
■発売日:2016年9月9日
■出版社: DU BOOKS
■金額:¥1,728 単行本

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「bar bossa」アーカイブ

vol.1 「モニカ・サウマーゾ」 ・vol.2 高木洋介 ・vol.3 「クリスマス・ソングのボサノヴァ」 ・vol.4 柳樂光隆 ・vol.5 「1960年代当時のブラジルのボサノヴァ女性シンガー特集」 ・vol.6 松原繁久 ・vol.7 「1970年代から1980年代までのブラジルのボサノヴァ女性シンガー特集」 ・vol.8 中村ムネユキ ・vol.9 「現代のブラジルのボサノヴァ女性シンガー特集」 ・vol.10 江利川侑介 ・vol.11 「エレンコ・レーベル」 ・vol.12 田仲昌之 ・vol.13 「ルミアール・ヂスコス」 ・vol.14 定成寛 ・vol.15 寺田俊彦 ・vol.16 白尾嘉規 ・vol.17 「畠山美由紀『rain falls』 プロデューサー中島ノブユキ インタビュー」 ・vol.18 山本勇樹 ・vol.19 「ジノンさん ルシッド・フォールについて」 ・vol.20 大場俊輔 ・vol.21 「ブラジル人と演奏しているアメリカのジャズ・ミュージシャン特集」 ・vol.22 武藤サツキ ・vol.23 「Lucid Fall (The Best of)」 ・vol.24 筒井奈々 ・vol.25 「THE PIANO ERA2013」 ・vol.26 山上周平 ・vol.27 ジノン ・vol.28 東野龍一郎 ・vol.29 林伸次 ・vol.30 中村智昭 ・vol.31 齊藤外志雄 ・vol.32 染谷大陽 ・vol.33 稲葉昌太 ・vol.34 小嶋佐和子 ・vol.35 石郷岡学 ・vol.36 原田雅之 ・vol.37 松本研二 ・vol.38 塚田耕司 ・vol.39 岩間洋介 ・vol.40 中村信彦&真理子 ・vol.41 白尾嘉規 ・vol.42 田仲昌之 ・vol.43 山本勇樹 ・vol.44 新川忠 ・vol.45 川嶋繁良 ・vol.46 田村示音 ・vol.47 山崎雄康 ・vol.48 上川大助 ・vol.49 町田和宏 ・vol.50 林下英治 ・vol.51 シュート・アロー ・vol.52 高橋悠 ・vol.53 沼田学 ・vol.54 庄野雄治 ・vol.55 山本のりこ ・vol.56 渡部徹 ・vol.57 小栗誠史 ・vol.58 相澤歩 ・vol.59 土田義周 ・vol.60 榎本善一郎 ・vol.61 町田洋子 ・vol.62 影山敏彦 ・vol.63 花田勝暁 ・vol.64 宮川泰幸 ・vol.65 林伸次


bar bossa information
林 伸次
1969年徳島生まれ。
レコファン(中古レコード店)、バッカーナ&サバス東京(ブラジリアン・レストラン)、
フェアグランド(ショット・バー)を経た後、1997年渋谷にBAR BOSSAをオープンする。
2001年ネット上でBOSSA RECRDSをオープン。
著書に『ボサノヴァ(アノニマスタジオ)』。
選曲CD、CDライナー執筆多数。
連載『カフェ&レストラン(旭屋出版)』。

bar bossa
bar bossa
●東京都渋谷区宇田川町 41-23 第2大久保ビル1F
●TEL/03-5458-4185
●営業時間/月~土
18:00~24:00 bar time
●定休日/日、祝
お店の情報はこちら

bar bossa vol.65:bar bossa

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vol.65 - お客様:林伸次さん(bar bossa)


いらっしゃいませ。
bar bossaへようこそ。

あけましておめでとうございます。
今回は、2017年第一回目ということで、渋谷 bar bossaの林伸次さんをお迎えいたしました。


林A;こんばんは。早速ですが、お飲み物はどうしましょうか?


林B;では、シャンパーニュをグラスでお願いします。


林A;2016年を振り返りたいのですが、印象に残ったアルバムはありましたか?


林B;山本のりこさんの『Trem das Cores』ですね。ボサノヴァってまだまだ豊かな表現が出来るんだなあって思いました。


山本のりこ - Trem das Cores - Noriko Yamamoto



トレン・ダス・コーリス500.jpg

■タイトル:『Trem das Cores - 色彩の列車』
■アーティスト:山本のりこ
■発売日:2016年2月1日
■レーベル: office calor

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林A;良いアルバムですよね。ブラジルで何か良いアルバムはありましたか?


林B;アンドレ・メマーリとアントニオ・ロウレイロの『メマーリロウレイロ・デュオ』です。


林A;林さん、その二人、聞くんですね。


林B;いやあ、このアルバムはすごいですね。こちらで聞けるのでちょっと聞いてみてください。
http://www.nrt.jp/andre_mehmari_antonio_loureiro/release_information_54.html


林A;ブラジルで他には何かありましたか?


林B;ジョアン・ドナートの新譜がすごいですね。


João Donato - Donato Elétrico [2016]



林A;ファンク・マスターすごいですね。これはビシーガ70というサンパウロのアフロビート・トロピカル・バンドが全面参加ということですね。


林B;はい。でも、やっぱりこれはドナートが大爆発していますね。


林A;2016年は他にはどういうのを聴いてましたか?


林B;ブロッサム・ディアリー!


林A;なぜ、今頃になって急にブロッサム・ディアリーなんでしょうか。


林B;なんとなく、中古レコード屋さんでアルバムを買って、突然わかったと言いますか、「ああ、ブロッサムって年齢を重ねてからじゃなきゃわからないんだな」って気づいたんです。


林A;年をとるとわかる音楽ってありますよね。


林B;はい。もうブロッサム・ディアリーばかり買ってました。


林A;おすすめのアルバムはありますか?


林B;うーん、どれもが好きなのですが... ブロッサムって1966年にロンドンに行って、当時のロンドンの空気にふれて「あ、こういうジャズもありなんだ」っていうターニングポイントのようなものがあったと思うんですね。で、1970年に『That's Just the Way I Want to Be』というズバリなタイトルのアルバムを録音しているんです。これ、ブロッサム、46歳なんです。僕が今、47歳なんで、ブロッサム、すごいなあ、自由だなあってすごく思ってて。こういう音楽なんです。聞いてみてください。


Blossom Dearie - Yesterday When I Was Young



林A;なるほど。林さんの熱い想いはわかりました。ブロッサムの本を書きたいという噂を聞きましたが。


林B;はい。色々と取材をして、ブロッサムの本を書いてみたいなって思ってます。


林A;林さんは韓国のインディーズ音楽も好きですが、何かありましたか?


林B;K-POPでも良いですか?


林A;インディーズじゃないんですね。良いですよ。


林B;TWICEという女性アイドルグループなんですけど、日本人が3人、台湾人が1人、加入しているんです。


林A;もちろん韓国語で歌ってるんですよね。


林B;はい。これが個人的にすごくはまりまして。こういう曲なんですけど。


TWICE(트와이스) "TT" M/V



林A;8千万回も再生されてるんですね。でもこういうの林さん、好きですよね。さて、林さんは2016年にコンピCDを出しましたが。


林B;あ、やっとその話ですね。そうなんです。『バーのマスターは「おかわり」をすすめない』という本を出しまして、その本のサントラというスタイルのCDを出しました。


林A;このCD、何かコンセプトのようなものはあったのでしょうか?


林B;はい。これ、ユニバーサル・ミュージックからなんですね。ユニバーサルって何でもあるんです。もうどんな選曲でも出来るんです。だから、ただただひたすら自分が好きな音楽、バーでこんな音楽がかかってたらすごくそのバーに通いたいなって感じの選曲にしました。


林A;なるほど。吉祥寺のカフェ・モイの岩間さんがこちらのブログ(http://moicafe.hatenablog.com/entry/2016/11/20/002445)でも書いてましたが、シンガーズ・アンリミテッドが収録されていませんね。


林B;そうなんです。今回のCDで一番残念だったのはシンガーズ・アンリミテッドが入れられなかったことなんです。MPSというレーベルがユニバーサルからビクターに移っちゃって。一曲目はこれって決めていたのですが...


Robert Farnon & The Singers Unlimited - I Loved You (Claus Ogerman / text: Alexander Pushkin)



林A;シンガーズ・アンリミテッドがクラウス・オガーマンの曲を歌ってるんですね。


林B;はい。2016年はクラウス・オガーマンが亡くなったので、その意味もこめて。


林A;クラウス・オガーマンが亡くなりましたよね。


林B;はい。アル・シュミットがFBで書いてましたね。クラウス・オガーマンの研究本や特集なんかが日本でも出たらいいなと思っているのですが。


林A;このCD、他にはどういう意図がありましたか?


林B;今回はディレクターの方から「ボサノヴァはなしで」という言葉がありまして、じゃあ自分が10代の頃からずっと好きだった、バカラックとかマンシーニとかオガーマンの曲で埋め尽くそうかなと思いました。


林A;ニック・デカロとかビーチボーイズも収録されていますが。


林B;はい。ジャズだけにはしたくなくて、実はこの曲を収録しようと思ってたんです。で、他にもミニー・リパートンとかスティービー・ワンダーとかも入れようかなと思ってたのですが、この曲も許可がおりなくて。


If I Ever Lose This Heaven - Quincy Jones ft. Minnie Riperton, Leon Ware, & Al Jerrau



林A;なるほど。これが収録されてたらずいぶんCDのイメージが変わってましたね。


林B;はい。でも、今となっては今出てるCDですごく「自分らしくて良かったかな」って思っています。


林A;CDは売れてるんですか?


林B;一応、アマゾンのジャズ・チャートで13位までいったことがありました。


林A;おお、すごいですね。


林B;でも、みなさん買ってください。


林A;こういう林さんが選曲したCDが売れると、林さんのところに印税みたいなのは入ってくるんですか?


林B;それ、みんなに聞かれるのですが、こういう選曲CDはとっぱらいです。僕に追加のお金は入ってきません。でも、CDが売れないと言われている今、もっと売れたらいいなって思ってまして。


林A;なるほど。そういうわけですか。みなさん、是非、買ってくださいね。


林B;あ、プレゼントとかにも良いかもです(笑)。


今回は林さん、お忙しいところどうもありがとうございました。
2017年も素敵な音楽に出会えると良いですね。
それではまた来月もこちらのお店でお待ちしております。

bar bossa 林伸次


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■Bar bossa林さんが選曲したコンピレーションアルバムが11/16リリース!

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■タイトル:『Happiness Played In The Bar -バーで聴く幸せ- compiled by bar bossa』
■アーティスト:V.A
■発売日:2016年11月16日
■レーベル: ユニバーサル ミュージック
■品番:UICZ-1646

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【収録曲】
1.Blossom Dearie / It Might As Well Be Spring
2.Bill Evans / Soiree
3.Paul Desmond / Emily
4.Bill Evans Trio / Elegia
5.Quincy Jones and His Orchestra / Dreamsville
6.Gerry Mulligan / Night Lights
7.Vince Guaraldi Trio / Great Pumpkin Waltz
8.Cal Tjader / Just Friends
9.Shirley Scott/Can't Get Over The Bossa Nova
10.Blossom Dearie / Give Him The Ooh-La-La
11.Burt Bacharach / I'll Never Fall In Love Again
12.NICK De CARO and orchestra / I'M GONNA MAKE YOU LOVE ME
13.Blossom Dearie / Sweet Surprise
14.Beach Boys / Caroline No
15.Burt Bacharach / Alfie
16.Milton Nascimento / Catavento
17.Earl Klugh / The April Fools
18.Danilo Perez/Another Autumn


【林 伸次 近著】

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■タイトル:『バーのマスターは「おかわり」をすすめない 飲食店経営がいつだってこんなに楽しい理由』
■著者:林 伸次
■発売日:2016年9月9日
■出版社: DU BOOKS
■金額:¥1,728 単行本

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「このビール、ぬるいんだけど」とお客さまに言われたら、あなたならどう対応しますか?
その都度悩んで、自ら回答を見つけてきた渋谷のバーのマスターの約20年。
楽しく経営を続けられたのには理由がある!

「バーの重たい扉の向こうには、お客さま、店主、お酒......その他たくさんの物語が詰まっています。ぜひ、あなたもその物語に参加してみてください。」
――本文より


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bar bossa information
林 伸次
1969年徳島生まれ。
レコファン(中古レコード店)、バッカーナ&サバス東京(ブラジリアン・レストラン)、
フェアグランド(ショット・バー)を経た後、1997年渋谷にBAR BOSSAをオープンする。
2001年ネット上でBOSSA RECRDSをオープン。
著書に『ボサノヴァ(アノニマスタジオ)』。
選曲CD、CDライナー執筆多数。
連載『カフェ&レストラン(旭屋出版)』。

bar bossa
bar bossa
●東京都渋谷区宇田川町 41-23 第2大久保ビル1F
●TEL/03-5458-4185
●営業時間/月~土
18:00~24:00 bar time
●定休日/日、祝
お店の情報はこちら

bar bossa vol.64:bar bossa

barbossabanner201507.jpg


vol.64 - お客様:宮川泰幸さん(ヴィヴァン)
【テーマ:やっぱり美メロが好き】



いらっしゃいませ。
bar bossaへようこそ。

今月はゲストに、徳島のワインビストロ、ヴィヴァンの宮川泰幸さんをお迎えしました。


林;こんばんは。早速ですが、お飲物はどうされますか?


宮川;カイピリーニャをお願いします。


林;今日は徳島の名産スダチを使ったスダチーニャがありますが。


宮川;(笑)じゃあ、それで...


林;お待たせしました。ではお生まれはどちらだったんでしょうか?


宮川;1975年、四国の徳島の生まれです。徳島市の隣町のいわゆるベッドタウン的なところで育ちました。


林;隣町のベッドタウン的って、ええと、藍住町ですよね。実は僕も同じ徳島県藍住町出身なので、ここはちゃんと言っておかないとと思いまして。では、音楽のことを聞かせてください。


宮川;音楽的には昭和のごく普通な家庭でしたので、両親から受けた影響などは特にありませんでした。両親ともに聞くのは演歌か歌謡曲で、幼少の頃の音楽の記憶と言えば内藤国雄のおゆき位ですね(笑)


林;ご両親が藍住町で老舗の飲食店を経営されていたんですよね。最初のレコードは?


宮川;最初のレコードは買ってもらったのは恐らくタイムボカンシリーズの主題歌だったと思います。自分でおこずかいを貯めて買ったのは中森明菜のスローモーションですね。近所に「あいずみレコード」というレコード屋さんがあって、中学生くらいまではほとんどそこで買ってましたね。レコードが中心だったころは色々と試聴させてもらってました。


林;僕もあいずみレコード、通いました。新品のレコード店なのに試聴させてもらえるんですよね。僕も色々と試聴して買いました。その後は?


宮川;中学・高校時代はぼくらの頃はとにかくバンドブームでしたね。中2位になるとギター始めたりする友達もいましたが、いかんせん僕は音感というものが絶望的にないのでそちらの畑には全く手が出せませんでした。とは言えいわゆる「厨二」ですので、「楽器は弾けないけど、お前らが知らない音楽知ってるぜ」という曲がった方向に進んでいきます。

しかしネットの発達していない時代ですので情報源は限られてます。好きなアーティストのアルバムのライナーノーツに出てくるその人が好きだったり影響を受けた人達のを聴いてみたり、FMのトップテン(邦洋)番組を聴いててパーソナリティーが話すランクに入っていないミュージシャンのアルバムを買ったり。今振り返るとめんど臭い奴だなあと我ながら思います。


林;僕が高校の頃にちょうどバンドブームが始まったのですが、6才下の宮川さんの時期もバンドブームは続いてたんですね。その後はどうされたんですか?


宮川;高校卒業後は地元の料理の専門学校に入って、その後東京のレストランに就職しました。


林;学校は地元なのに、東京のレストランに就職したんですか。それはかなり思い切った展開でしたね。お店はどうでしたか?


宮川;そこは日本でも有数の厳しいお店だったので、早朝から深夜まで働きっぱなしでした。
最初の2年間は家にテレビも電話も無かったので、家に帰って聴く音楽と録音していたアヴァンティのラジオで気を休めてましたね。


林;アヴァンティ、良かったですよねえ。あの、実は宮川さん、このJJAZZのブログ、アヴァンティを意識してるんです。


宮川;え、そうだったんですか? 


林;はい。今、それで宮川さんがゲストですから。さて、東京はどうでしたか?


宮川;でも田舎から出て来て初めて行ったタワレコやHMVは衝撃的に楽しかったですね。そして自分しか知らないと思ってた音楽がフツーにある事でようやっと厨二から卒業出来たと思います。

今は地元でワインビストロをしていますが、強く影響を受けたのは原宿のパレフランスにあった時のオー・バカナルですね。ブーランジェリーとカフェ、ビストロのどれもが素晴らしく、常にドキドキする何かがあったお店です。その頃は若く、当然お金も無かったのですが、友人とカフェに行ってサラダ・ニソワーズにステック・フリット、カラフェのワインだけですごく楽しかったですね。そこで得た「楽しく食べる」と言うことがお店を開く原点だと思います。


林;あのお店は本当に良いお店でしたよね。今、僕たちが気軽にフレンチを楽しめるのも、あのお店の影響って大きいような気がします。さて、東京ではお店をやらずに徳島県の、それもまさかの藍住町でやろうと思ったのはどうしてでしょうか?


宮川;本当は東京で5坪位のワインと惣菜のお店をするつもりでした。しかし震災の後に街が真っ暗になった時、「地元でこんな事があった時、灯りになるお店になりたい」と思いまして。(この言い方はちょっとカッコつけすぎですが)

震災以降急速にヴァンナチュール界の方々と知り合う機会が増えたんですね。まあこれは「街暗い!みんなが飲まないなら俺が飲む!」という訳のわからない決意のお陰だったんですが。

その中で僕達が扱うようなワインをもっと地方でも飲んでもらいたい。そんなわけで地元でお店をオープンするに至りました。


林;なるほど。そういう経緯だったんですね。


宮川;お店は実家の一部を改装してスタートしました。夜の20時にもなれば周りが暗くなるようなところでワインを売ろうなんて我ながら無茶だなあと思います。林さんがよく仰る「お店は場所」に照らし合わせると0点です。でもこれは逆に自由に出来るかなあと思ってやってます。

ヴァンナチュールにも「流行りモノ」があって、「もうあれ飲んだ?」って会話がそこかしこであるんです。それがある時期から嫌になって、自分が思う楽しんでもらえるワインをお出しするには割と良い環境だと思います。


林;なるほど。逆に自由に出来るんですね。でも、お店、流行っているって噂、聞いてますよ。


宮川;とは言え難しさも当然あります。売り上げも安定しませんし、ワインのお店なのにご予約4名さまでお車4台で来店されると正直へこみます。「まあこんな事もあるか」、と「これは譲れない」のバランスをうまくとっていかないと続けるのは難しいかもしれませんね。これは僕自身の課題でもあります。


林;うーん、車社会なので、お酒を飲んでもらうのって本当に難しいですね。さて、これ、みんなに聞いているのですが、これからの音楽はどうなると思いますか?


宮川;これからの音楽。難しいですね。でも僕自身凄く好きなアーティスト以外はもうCD買わずに配信で済ましてます。音楽を聴くのもアンプ+レコード→コンポやラジカセ→配信とどんどんライトな感じになってますが、いつかまたクラシックな聴き方が流行ることもあるんじゃないでしょうか。あとはライブでしょうか。先日カエターノ・ヴェローゾが来日公演してましたが、僕のSNSはカエターノ一色でした。「音楽を体感する」機会がもっと増えていくと楽しいですね。


林;そうですね。音楽を体感する機会が増えていくと良いですね。さて、今後はどうするつもりでしょうか?


宮川;これからしばらくは自分のお店でヴァンナチュールを楽しんでもらうことに注力します。
それからワインや惣菜を買って帰れるようにして、ご家庭の食卓にも普通にワインがあるような街にしたいですね。あれ? これって街づくりでしょうか。でも楽しく食べるって本当に素敵な事だと思います。


林;良いですねえ。


宮川;あと以前林さんに「宮川さんのお店はお嫁さんもらってその子にサーヴィス担当してもらって完成です!」と言われたので完成できるよう頑張ります(笑)


林;すいません。しつこく言い過ぎですよね。今回もこれにゲスト出演して「お嫁さん募集しましょう」っていうのがメインでしたしね。というわけで、宮川さんのお店で可愛い笑顔で「いらっしゃいませ」を言いたい貴女は徳島へ急げです。

さて、みんなが待っている選曲にうつりましょうか。


01. 中森明菜「ミ・アモーレ」

宮川;初めて自分で買ったレコードが明菜ちゃんだったと言うこともあり、小学生時代はおこずかいの許す限り買ってました。サビ前のセクシーさは小学生には刺激強め。この頃確か21歳。オトナ過ぎる。。。


林;21歳なんですね。確かにこんな21歳いないですね。僕実は、宮川さんと女性の好み、結構かぶるといつも思ってます...


02. 岡村靖幸「SUPER GIRL」

宮川;僕の厨二はこの人から。バンドキッズの対極をいくこのダサカッコ良さ。しかし当時は単純にカッコいいと思ってました。あのエロい感じもたまりません。同世代での厨二病のアイドルNo. 1。


林;僕もすごく好きでした。あの、宮川さん、多少、「岡村靖幸的な要素」あると思いますよ...。


03. ビル・エヴァンス「枯葉」

宮川;演歌好きの父が唯一聴いていた洋楽がフランク・シナトラでその中でもお気に入りが枯葉。それが耳に残っていたのか、初めて買ったジャズアルバムがこの曲が収録されている「PORTRAIT IN JAZZ」。絶望的に音感のない僕ですが、ビル・エヴァンスのピアノはエヴァンスのものだと分かるくらい好き。


林;お父さん、シナトラ持ってたんですか。羨ましいですね。うちにはジャズなんて1枚もなかったですよ。


04. モンドグロッソ「Dazzling」

宮川;カシオペアの名曲のカバー。
「人が知らない音楽を」の頃に聴いていたモンドグロッソ。しかし実はみんな知っていたという。。。大沢さんのソロプロジェクト的なものよりも初期のバンドスタイルが好きだったりします。桜丘のクラブで大沢さんがDJしてた夜は同僚と夜通し踊ったのは遠い昔。


林;お、モンドグロッソ、お好きなんですね。大沢伸一さんのDJも当時、体験してるんですか。すごくバランスが良い人ですよね。


05. チェット・ベイカー「Let's get lost」

宮川;専門学校時代にフランス語学校に通ってまして。そこで知り合ったお姉さまにジャズバーに連れて行ってもらった時に彼女がかけてもらったのがこの曲。以来曲名とも合わさって僕にとって最もロマンティックな1曲。


林;あ、実は僕もチェット・ベイカーに関しては妻が大ファンでして、妻にいろんなレコードを教えてもらいました。女性に教えてもらうチェット・ベイカー繋がりですね。いやあ、でもカッコいいです。


06. 小沢健二「天気読み」

宮川;岡村靖幸と双璧をなす青春時代のアーティスト。
王子様になる前のオザケン。フリッパーズギター解散後、「らしい」アルバムを作った小山田圭吾とは対極のメロディと歌詞。心のベストテン第1位はブギーバックではなくこちら。


林;宮川さんの世代ってオザケンに本当に惚れ込んでいる男性多いですよね。いやあ、でも宮川さんも好きそうですね。


07: フレッド・アステア 「night & day」

宮川;小学生時代からラジオっ子だったんですが、高校生の頃よく聴いていたのが土曜日夕方5時からのアヴァンティ。そのおしゃれなトークや音楽や構成にいつもドキドキしてました。その中で粋なオトコとして出てくるスターでハマったのがアステア。もう単純にカッコいい!


林;アヴァンティ、ほんと良かったですよね。ちなみにうちの場合、うちの娘も好きで、麻布十番の祭りにアヴァンティが出店するっていうので、わざわざ家族で行きました。


08:ディ アンジェロ 「Brown Sugar」

宮川;R&B系のアルバムで最も聴いたのが恐らくこれ。横浜のお店で働いていた時が最も忙しい時期で、激務の後四ツ谷まで帰る電車の中で常に聴いてました。抑えたリズムとセクシーな声が疲れすぎて興奮してる気を沈めてくれてました。


林;ディ・アンジェロも宮川さん世代の男性のアイドルですね。カッコいいですねえ。


09: 山下達郎 「Funky Flushin'」

宮川;学生時代も聴いたりアルバム買ったりしてましたが、「歌の上手いおじさん」位の印象でした。それが一変したのがアヒルストアの齊藤さんに「アヒルのiPod」をもらって聴いたこの大阪フェスティバルホールでのライブバージョン。なんてすごいメロディメイカー!
以来僕のお店では遅い時間になるとほぼ達郎をかけます。


林;あ、そう言えば宮川さん、一番最初にbar bossaに来店していただいたのってアヒルの齊藤さんと一緒でしたね。アヒルのiPodにこれが入ってたんですか。飲食業界で山下達郎好き多いですね。もちろん僕も大好きです。


10: カルロス・アギーレ&キケ・シネシ 「A Beto」

宮川;ボッサの影響で聴き始めた2人。奏でる音の美しさはもちろん素晴らしいですが、アルバム「Live In Sense Of Quiet」でのそれは涙が出るほど。寒い冬の夜、お客さんもほとんど帰られて静かになった店内で聴きたいです。


林;これ、ほんと素晴らしいですよね。これ企画した成田さん読んでるかな。成田さ~ん! こうやって音楽は広がってますよ~!


宮川さん、お忙しいところどうもありがとうございました。
こんなキャラクターの愛すべき宮川さんのところに嫁ぎたいという女性の方、徳島のヴィヴァンに是非、行ってみてください。もちろん女性じゃなくても、すごく良いお店ですので、近くにお住まいの方、あるいは旅行で四国方面に行かれる方、是非、お立ち寄りくださいね。


ヴィヴァン Facebook


いよいよ本格的な冬がやってきましたね。
今年はどんな音楽を聴きましたか? どんな人と一緒に音楽を聴きましたか? 
それではまた来月もこちらのお店でお待ちしております。

bar bossa 林伸次


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■Bar bossa林さんが選曲したコンピレーションアルバムが11/16リリース!

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■タイトル:『Happiness Played In The Bar -バーで聴く幸せ- compiled by bar bossa』
■アーティスト:V.A
■発売日:2016年11月16日
■レーベル: ユニバーサル ミュージック
■品番:UICZ-1646

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【収録曲】
1.Blossom Dearie / It Might As Well Be Spring
2.Bill Evans / Soiree
3.Paul Desmond / Emily
4.Bill Evans Trio / Elegia
5.Quincy Jones and His Orchestra / Dreamsville
6.Gerry Mulligan / Night Lights
7.Vince Guaraldi Trio / Great Pumpkin Waltz
8.Cal Tjader / Just Friends
9.Shirley Scott/Can't Get Over The Bossa Nova
10.Blossom Dearie / Give Him The Ooh-La-La
11.Burt Bacharach / I'll Never Fall In Love Again
12.NICK De CARO and orchestra / I'M GONNA MAKE YOU LOVE ME
13.Blossom Dearie / Sweet Surprise
14.Beach Boys / Caroline No
15.Burt Bacharach / Alfie
16.Milton Nascimento / Catavento
17.Earl Klugh / The April Fools
18.Danilo Perez/Another Autumn


【林 伸次 近著】

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■タイトル:『バーのマスターは「おかわり」をすすめない 飲食店経営がいつだってこんなに楽しい理由』
■著者:林 伸次
■発売日:2016年9月9日
■出版社: DU BOOKS
■金額:¥1,728 単行本

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「このビール、ぬるいんだけど」とお客さまに言われたら、あなたならどう対応しますか?
その都度悩んで、自ら回答を見つけてきた渋谷のバーのマスターの約20年。
楽しく経営を続けられたのには理由がある!

「バーの重たい扉の向こうには、お客さま、店主、お酒......その他たくさんの物語が詰まっています。ぜひ、あなたもその物語に参加してみてください。」
――本文より


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林 伸次
1969年徳島生まれ。
レコファン(中古レコード店)、バッカーナ&サバス東京(ブラジリアン・レストラン)、
フェアグランド(ショット・バー)を経た後、1997年渋谷にBAR BOSSAをオープンする。
2001年ネット上でBOSSA RECRDSをオープン。
著書に『ボサノヴァ(アノニマスタジオ)』。
選曲CD、CDライナー執筆多数。
連載『カフェ&レストラン(旭屋出版)』。

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bar bossa vol.63:bar bossa

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vol.63 - お客様:花田勝暁さん(LATINA)


【テーマ:前向きに生きようと思えた個人的な10曲】



いらっしゃいませ。
bar bossaへようこそ。

今月はLATINAの編集長、花田勝暁さんをゲストに向かえました。


林;こんばんは。まずお飲物はどうしましょうか?


花田;季節のフルーツのカクテルをお願いできますか。


林;かしこまりました。では今は梨の新高があるのでそれにしますね。


花田;お願いします。


林;それでは早速ですがお生まれと小さい頃の簡単な音楽環境みたいなものを教えてもらえますか。


花田;青森県の五所川原市というところで、1982年に生まれました。姉が2人いるのですが、姉たちが習っていたので、小学校に上がったくらいからピアノを習っていました。近所にピアノ教室をやっている先生がいたんですが、習い始める時に約束してもらったのは、発表会には出なくていいよねってことでした。もうその頃にはすでに人前に出るのが嫌だったんですね。性格って変わらないですね。


林;(笑)初めて買ったCDは何ですか?


花田;父がCDコンポを買ってきたので、自分でCDを買おうと思って初めてお小遣いで買ったのは、ウッチャンナンチャンの番組で結成されたユニットのシングルCDでした。小学校3年生か4年生の頃です。あんまり発展しない話で申し訳ないくらいですが。


林;確かにうまくリアクションが返せない選択ですね。他はどういうのを聴いてましたか?


花田;長女とは5歳離れているんですが、長女は音楽が好きで、長女の聴いているものを一緒に聴いていました。最初はヒット・チャートのポップスであまり覚えていないですが、僕が小学校高学年の時に、長女が小沢健二を中心に渋谷系にはまりだして、そこからは僕ものめり込んで音楽を聴くようになりました。渋谷系のアーティストのインタビューで海外のアーティストの名前がよく出てくるので、同時代の洋楽を聴くようになりました。小6の時に最初に買った洋楽雑誌は、今でも手元にあります。


林;なるほど。お姉さんが77年生まれということはちょうど渋谷系ど真ん中ですね。花田さん、ちょっと趣味が年齢より上だなあと思っていたら、そういう経緯があるんですね。中学に入ってどうなりましたか?


花田;中学校に上がったくらいに、ピアノ教室をやめて、ギター教室に通って、ギターを習い始めました。ギターを弾くというのでバンドに誘われたりもしましたが、当時、ディスコガイド本片手に、古い洋楽名盤を取り寄せて聴くという中学生で、やりたい曲が違うので、結局バンドをやることはありませんでした。それは高校生になってもそうでした。でも、宅録には興味があって、カセットのMTRとか録音できるMDプレイヤーを買って、録音したりはしていました。


林;あ、ピアノ以外にギターも習ったんですね。


花田;中学生の時にクロスビートとロッキンオンを愛読して、スタジオボイスを買っては内容はよくわからないけどずっと眺めていました。高校生の時はロッキンオン、ロッキンオンジャパン、ミュージック・マガジンを読んでいました。


林;中学でそれはマセてますね。どのあたりを聴いてました?


花田;中高校生の時に、古い名盤じゃなくて、リアルタイムに聞いていたのは、ブリティッシュ・ポップ/グランジからシカゴ音響派/コーネリアス・フィッシュマンズという感じです。でもやっぱり古いものの方が好きで、ビートルズ、ビーチボーイズ、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドがヒーローでした。これらの音楽を自分がほぼ聴かなくなる日が来るとは思わなかったです。当時、自分自身の宅録音源のユニット名(笑)には「banana&apples」と名付けていて(ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのあのジャケと、ビートルズのレーベルのこと)、1stアルバムのタイトルは『ピーチ』(ビーチボーイズのビーチから)にしようと決めていました。


林;(笑)音楽のことがわからない人だと、すごく「果物好き」だと思われちゃいますね。高校はどうでしたか?


花田;進路についてというか、大学で何を勉強するかということは、本当にすごく真剣に悩んで。ぼくは本当に田舎で育って、そうすると、東京にこんなに沢山の仕事があるってことは全然知らずに育つんです。

親は、田舎でも普通に存在する医者とか教師とかになってほしいという感じで、なるべく可能性も潰さない為に高校で文理選択で理系を選んでいたりした自分もいたんですが、悩んで悩んで、当時好きなレコーディング・エンジニアがいたり、シカゴ音響派の全盛期だったりして、「ぼくはレコーディング・エンジニアになりたい」と思って、音響設計学科という珍しい学科を受験しました。楽に入れるところではないんですが、勉強は真面目にしていたので、模試の判定とか学校の先生や数学塾の先生からは通ると思われていたんですが、本番に弱くて受験に失敗しました。

それで、当時、2番目の姉が住んでいた京都に行って、1年間真面目に浪人して、模試の成績では受かりそうだったんですが、また本番に弱くて失敗して、後期で滑り止めで受けた同じ学部の情報系の学科に入りました。


林;レコーディング・エンジニア志望が情報系の学科に入ったんですね。


花田;そういう大学だったので、パソコンで打ち込みで音楽を作るサークルがあって、そこに入って自分1人で完結するスタイルで音楽を作って、サークルの発表会で発表したりしていました。学内のイベントの音楽とか作ってました。エレクトロニカとか、フォークトロニカを聞いていて、そんな真似事を。VOCALOIDとかがが出始める前でした。すごくはまっていましたが、ブラジルに留学することにして、研修にかかる時間も多くなって、イベント用に頼まれて作るだけになっていきました。


林;おっとブラジルが突然、登場しましたね。その辺りを詳しく教えてもらえますか?


花田;まず、ブラジル音楽との出会いですが、高3の時です。当時、カエターノ・ヴェローゾやマリーザ・モンチのアルバムが、愛読していたミュージック・マガジンで高い評価を得ていたり、好きだったシカゴ音響派の人たちが影響を受けた音楽家としてブラジルの音楽家の名前を挙げていて、興味を持ちました。


林;なるほど。


花田;当時それぞれ最新作だったカエターノ『リーヴロ』とマリーザの『アモール、アイ・ラヴ・ユー』は本当によく聴いていて、通学のバスの中でウォークマンで聞きながら、一緒に乗っている人に、どうにかこのアルバムを聴いてもらいたいなあと思っていました。「人間スピーカーになりたい」って思っていました。ブラジル音楽との出会いは、サンバやボサノヴァではなく、ロックの延長上で聴き始めたMPBでした。


林;あ、僕もMPBからです。


花田;そういうわけで、大学生になってからもブラジル音楽も沢山聴いていた中で、ブラジルに1年間インターン留学できる制度のポスターを見かけたんです。高校の英語の先生が「20歳までに留学した方がいい」って言っていた言葉が気にかかっていたのと、英語圏以外に留学したいなあという思いがあったので、ブラジルに行くのもいいなと思いました。応募して、研修を経てブラジルのリオに行きました。学校ではポルトガル語を勉強してないですし、研修での語学研修の割合も少ないので、言葉は、ほぼ上達しない状況で出発しました。初めての海外経験がリオでの1年間だったんですが、そこでとても新鮮な経験ばかりしました。


林;うわー、すごいですね。


花田;リオでの生活のことをブログとかSNSに書いていたんですが、当時からラティーナに寄稿されていた佐々木俊広さんというライターの方がリオに来ている時に、コパカバーナのホーダ・ヂ・サンバを見ている時に偶然知り合って、佐々木さんが僕やそのブログのことを、当時ラティーナで編集とブラジル担当をしていた船津亮平さんに伝えてくださったことが、ラティーナで働かせてもらえることにつながりました。


林;そんなきっかけですか。それは面白いですね。


花田;留学から戻って大学4年生の春でしたが、その年の秋には東京に部屋を借りて福岡から東京に引っ越して、ラティーナでアルバイトして働いていました。

「20歳までに留学した方がいい」って言っていた先生の真意としては、語学の面で上達が違うからって意味だったのかと思いますが、ぼくがブラジルに行って得た経験って何だったんでしょう。その後の進路にあまりにも大きな影響があるので...。


林;ブラジルって人の人生を変えますね。


花田;語学についての面だけでも、何語でもいいですが、日本語以外の言語で情報を得られるって、プラスなことだと思います。精神的な面でも、離れた国のことを寂しく思ったり、離れた国の人が気にかけてくれたりするってことで、人生が多層的にもなるかもしれません。ここではないところに、自分の思い出の場所や人があるってことが、人生に悪い影響を与えるってことはないと思います。日本以外でも生きられると思うと、日本の生活で弱ってしまった時にも、踏ん張ってみようと思えるじゃないでしょうか。


林;ああ、それは素敵な考え方ですね。ここではないところに、別の自分の場所があるって確かに人生を豊かにします。さて、これはみんなに聞いているのですが、これからの音楽はどうなると思いますか? 


花田;ぼくは、音楽業界が良かった時というのを知らない世代なんです...。望みとしては、ぼく自身は90年代のワールド・ミュージック・ブームっていうものは体験してはいないですが、「ワールド・ミュージック」を聴いているってことが、また、素敵なライフスタイルの姿であるって状況が戻ってくればいいなと思っています。自分の文章ではブラジル音楽を紹介することが圧倒的に多いですが、ブラジル音楽に限らず、世界各地の音楽を聴くことがもっと普通のことになってほしいと思っています。


林;本当にそうですね。お仕事期待しております。これからはどうされるご予定ですか? 


花田;あまり予定という予定もないですが、ラティーナの編集をしている限り、より良い音楽雑誌を目指して、頑張りたいと思っています。ぼくはやっぱり、世界中から色んな才能がどんどん登場する「ワールド・ミュージック」が今後も一番面白い音楽の1つであり続けると思っていて。さっきも言いましたが、「ワールド・ミュージック」を聞いていることがもっと普通のことになって、ラティーナを読んでいることも、もっと普通のことになればいいなあと思います。あと、仕事と離れたところでは、博士論文を完成させたいのが目下の目標です。


林;なんだか花田さんらしい真面目なご予定ですね。それでは選曲に移りましょうか。テーマは何でしょうか?


花田;「前向きに生きようと思えた個人的な10曲」です。


林;前向きに生きようと思えた曲ですか。楽しみですね。


01. Nick Drake(ニック・ドレイク)「Time Has Told Me」(1970)

花田;26歳で夭折したイギリスの天才シンガーソングライターの残した歌に、音楽を本格的に聴き始めてすぐに出会い、この歌はそれから10余年自分の心の支えとなったんでした。「〜〜時がぼくにこうも教えてくれた/これ以上求めていけない/ぼくらの大海原も/いつかそのうち岸辺に辿り着ける//だからぼくは自分がほんとうになりたくないものへと/自分自身を追い込むような生き方をやめることにしよう/自分がほんとうは愛したくないものを/愛さざるをえなくなるような生き方をやめることにしよう〜〜」という歌詞です。


林;ニック・ドレイクが1曲目ですか。ラティーナ読者は驚いてそうですが、花田さん、お好きそうですね。


02. Joy Division(ジョイ・ディビジョン)「Love Will Tear Us Apart」(1988)

花田;人生で一番繰り返しクリップを見た曲なのではないかと思います。PVが特別なんかすごいわけじゃないんですが、ヴォーカルのイアン・カーティスに見入ってしまって。当時、ロッキング・オンの渋谷陽一さんのやっている「ミュージック・サテライト」というBSのテレビ番組があって、それを姉がいつも録画してくれていてその中で紹介されたこの曲のクリップを、中学生時代繰り返し繰り返し見ていました。ブラーとかオアシスのPVが流れる中で、とりわけこの曲がすごく引っかりました。曲の内容は、愛がまた2人を引き裂くってことで、中学生には全く無縁の内容なんですが。イアン・カーティスも23歳で夭折してしまったミュージシャンです。


林;中学生の時にジョイ・ディヴィジョンにはまったっていうのも青森では浮いていたのではと想像します。今度、お姉さんの話を聞かせてください(笑)。


03. Robert Wyatt(ロバート・ワイアット)「Free Will and Testament」(1997)

花田;ソフト・マシーンのドラマー兼ヴォーカリストだったのが、事故によりドラマーとしての生命は絶たれたが、その後は、独特の魅力を持ったヴォーカルスタイルのシンガーソングライターとして活動しているロバート・ワイアット。彼の作品は後追いでも集めて、広く触れましたが、リリース時に聴いたこのアルバムが、ぼくにとって一番聴いたアルバムとなりました。「自由意志および遺言」というタイトルの曲で、今読み返しても、歌詞の意味は不可解な部分が多いですが、この澄んだ歌声に耳を澄ましている時間は、とても特別な時間でした。


林;こういう選曲だとロバート・ワイアットももちろんお好きそうですね。今回の花田さんの選曲を聞いて、「ラティーナ、買ってみようかな」って感じている人、多そうです。


04. Velvet Underground(ヴェルヴェット・アンダーグラウンド)「Sunday Morning」

花田;ヴェルヴェッツ関連から何か選ばないと嘘のような気がしたので1曲選びます。ビートルズと、ビーチ・ボーイズと、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドは、思春期の僕にとっての教科書で、とりわけヴェルヴェット・アンダーグラウンドに憧れていました。テレビジョンやギャラクシー500だとか、ヴェルヴェッツに影響を受けたヴェルヴェッツ・チルドレンの音楽も大好きでした。


林;こういう音楽の世界観って誰も指摘しないけど、天才ルー・リードがある日突然この世界に描いたすごい感覚だと思います。


05. Caetano Veloso(カエターノ・ヴェローゾ)「Força Estranha」(2011)

花田;タイトルは「奇妙な力」と訳せばいいんでしょうか。人から人へ命が受け継がれている様を歌った歌だと思っています。3.11の後、何の力もない自分と向き合いながら、この曲を聴いて、どうにか力を振り絞っていました。オリジナルは、カエターノ・ヴェローゾではなく、ホベルト・カルロスです。


林;カエターノは何か選ぶとは想像していたのですが、こういう曲なんですね。「力」、不思議な言葉ですが、強い言葉です。


06. Gonzaguinha (ゴンザギーニャ)「O que é, o que é (Viver e não ter a vergonha de ser feliz」(1982)

花田;「人生は美しい」と歌う人生讃歌のサンバ名曲です。「永遠に学び続けることの美しさ(A beleza de ser um eterno aprendiz)」というフレーズがあるのですが、「見習い(aprendiz)」という単語が、一番好きなポルトガル語です。自分の生まれた年の歌だけれど、ブラジルのサンバ系のコンサートでは、今現在、アンコールで最も歌われる回数が多い曲の1つなのではないかと思います。


林;うわ、またまた花田さんらしい言葉を。そうですね。僕たちはずっと学び続けるべきですね。


07: Saigenji「風の轍」(2008)

花田;どんなにダメな人生だったとしても、そういうのを全部含めて肯定してくれる歌で、何度も助けられました。「〜〜生かされている、すべてに//深く息を吸い込んで/風の歌を感じただけ/この奇跡をぼくはずっと守っていく//少しずつでも進んでゆける それがわかった/もう迷わない/なぜならぼくは息をしている/重ねた日々は無駄じゃなかった/なぜならここにいるから」という歌詞ですが、「息をしているだけでそれでいいじゃない」ってことに、この歌を聴くと納得してしまいます。Saigenjiさんには、この歌で紅白に出て欲しいと願ってやみません。


林;紅白にというのすごくわかります。大晦日に、日本語を話す色んな人たちに聞いてほしい歌ですね。


08: ラブクライ(Labcry)「Brave And Strong」(2001)

花田;2000年くらいから関西の「うたもの」バンドが全国的に注目されて、ぼくも羅針盤や空気公団や、このラブクライが大好きになりました。そのブームの時期が、ちょうど京都で浪人生をやっていた1年に重なり、関西のうたものバンドのライブを見られる機会もたくさんありました。羅針盤や空気公団やラブクライの歌には、優しさに溢れた歌がたくさんありました。


林;ああ、京都時代って1年ではありながら花田さんにとって日本の独特の関西文化に触れる時期だったんですね。青森から京都に行くとかなりカルチャーショックでしたでしょうね。


09: 中島ノブユキ「その一歩を踏み出す」(2015)

花田;どんな一歩を踏み出すのも臆病なぼくですが、本当に動けなくなっている時にこの曲を聴くと、何とか一歩前に踏み出そうと思えてしてしまう。音楽の不思議な力を感じる曲です。一体どこからこの説得力のある音楽が生まれてくるのか。中島さんの神秘です。


林;美しいですね。本当に音楽の力強さを感じてしまいます。音楽がこの世界にあって良かったって実感します。


10: 伊藤志宏 3 cello variation 「ペンギンは蝶の夢を見る」(2014)

花田;夢の中で飛ぶことと、実際に飛ぶこと。どちらが価値のあることなのだろうかと考えることがあります。お金を出せは宇宙に行ける日もそう遠くはないようです。伊藤志宏さんには「ペンギンは飛べない」という名曲もあるのですが、飛ぶことを夢見ながら海を泳ぎ続けるペンギンは、とても幸せなんじゃないかと思うのです。


林;今、わかりました。花田さん、ラティーナも論文も大切かと思いますが、自分のための文章を書きましょう。詩でしょうか小説でしょうか。その花田さんの世界観を表現する日を待ってます。

花田さん、お忙しいところどうもありがとうございました。音楽を届けるお仕事の今後、期待しております。


花田勝暁 twitter

ラティーナ公式HP


さて、カボチャ祭りも終わり、いよいよ年末となりましたね。そろそろ2016年を振り返る特集をメディアの人たちも動き出すころですね。忙しい時期ですが、良い音楽をきいて楽しんでくださいね。
それではまた来月もこちらのお店でお待ちしております。

bar bossa 林伸次


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■Bar bossa林さんが選曲したコンピレーションアルバムが11/16リリース!

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■タイトル:『Happiness Played In The Bar -バーで聴く幸せ- compiled by bar bossa』
■アーティスト:V.A
■発売日:2016年11月16日
■レーベル: ユニバーサル ミュージック
■品番:UICZ-1646

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【収録曲】
1.Blossom Dearie / It Might As Well Be Spring
2.Bill Evans / Soiree
3.Paul Desmond / Emily
4.Bill Evans Trio / Elegia
5.Quincy Jones and His Orchestra / Dreamsville
6.Gerry Mulligan / Night Lights
7.Vince Guaraldi Trio / Great Pumpkin Waltz
8.Cal Tjader / Just Friends
9.Shirley Scott/Can't Get Over The Bossa Nova
10.Blossom Dearie / Give Him The Ooh-La-La
11.Burt Bacharach / I'll Never Fall In Love Again
12.NICK De CARO and orchestra / I'M GONNA MAKE YOU LOVE ME
13.Blossom Dearie / Sweet Surprise
14.Beach Boys / Caroline No
15.Burt Bacharach / Alfie
16.Milton Nascimento / Catavento
17.Earl Klugh / The April Fools
18.Danilo Perez/Another Autumn


【林 伸次 近著】

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■タイトル:『バーのマスターは「おかわり」をすすめない 飲食店経営がいつだってこんなに楽しい理由』
■著者:林 伸次
■発売日:2016年9月9日
■出版社: DU BOOKS
■金額:¥1,728 単行本

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「このビール、ぬるいんだけど」とお客さまに言われたら、あなたならどう対応しますか?
その都度悩んで、自ら回答を見つけてきた渋谷のバーのマスターの約20年。
楽しく経営を続けられたのには理由がある!

「バーの重たい扉の向こうには、お客さま、店主、お酒......その他たくさんの物語が詰まっています。ぜひ、あなたもその物語に参加してみてください。」
――本文より


「bar bossa」アーカイブ

vol.1 「モニカ・サウマーゾ」 ・vol.2 高木洋介 ・vol.3 「クリスマス・ソングのボサノヴァ」 ・vol.4 柳樂光隆 ・vol.5 「1960年代当時のブラジルのボサノヴァ女性シンガー特集」 ・vol.6 松原繁久 ・vol.7 「1970年代から1980年代までのブラジルのボサノヴァ女性シンガー特集」 ・vol.8 中村ムネユキ ・vol.9 「現代のブラジルのボサノヴァ女性シンガー特集」 ・vol.10 江利川侑介 ・vol.11 「エレンコ・レーベル」 ・vol.12 田仲昌之 ・vol.13 「ルミアール・ヂスコス」 ・vol.14 定成寛 ・vol.15 寺田俊彦 ・vol.16 白尾嘉規 ・vol.17 「畠山美由紀『rain falls』 プロデューサー中島ノブユキ インタビュー」 ・vol.18 山本勇樹 ・vol.19 「ジノンさん ルシッド・フォールについて」 ・vol.20 大場俊輔 ・vol.21 「ブラジル人と演奏しているアメリカのジャズ・ミュージシャン特集」 ・vol.22 武藤サツキ ・vol.23 「Lucid Fall (The Best of)」 ・vol.24 筒井奈々 ・vol.25 「THE PIANO ERA2013」 ・vol.26 山上周平 ・vol.27 ジノン ・vol.28 東野龍一郎 ・vol.29 林伸次 ・vol.30 中村智昭 ・vol.31 齊藤外志雄 ・vol.32 染谷大陽 ・vol.33 稲葉昌太 ・vol.34 小嶋佐和子 ・vol.35 石郷岡学 ・vol.36 原田雅之 ・vol.37 松本研二 ・vol.38 塚田耕司 ・vol.39 岩間洋介 ・vol.40 中村信彦&真理子 ・vol.41 白尾嘉規 ・vol.42 田仲昌之 ・vol.43 山本勇樹 ・vol.44 新川忠 ・vol.45 川嶋繁良 ・vol.46 田村示音 ・vol.47 山崎雄康 ・vol.48 上川大助 ・vol.49 町田和宏 ・vol.50 林下英治 ・vol.51 シュート・アロー ・vol.52 高橋悠 ・vol.53 沼田学 ・vol.54 庄野雄治 ・vol.55 山本のりこ ・vol.56 渡部徹 ・vol.57 小栗誠史 ・vol.58 相澤歩 ・vol.59 土田義周 ・vol.60 榎本善一郎 ・vol.61 町田洋子 ・vol.62 影山敏彦


bar bossa information
林 伸次
1969年徳島生まれ。
レコファン(中古レコード店)、バッカーナ&サバス東京(ブラジリアン・レストラン)、
フェアグランド(ショット・バー)を経た後、1997年渋谷にBAR BOSSAをオープンする。
2001年ネット上でBOSSA RECRDSをオープン。
著書に『ボサノヴァ(アノニマスタジオ)』。
選曲CD、CDライナー執筆多数。
連載『カフェ&レストラン(旭屋出版)』。

bar bossa
bar bossa
●東京都渋谷区宇田川町 41-23 第2大久保ビル1F
●TEL/03-5458-4185
●営業時間/月~土
18:00~24:00 bar time
●定休日/日、祝
お店の情報はこちら

bar bossa vol.62:bar bossa

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vol.62 - お客様:影山敏彦さん(tico moon)


【テーマ:迷える思春期のあなたへ送る10曲】



いらっしゃいませ。
bar bossaへようこそ。

今月はtico moonのギタリスト、影山敏彦さんをゲストにお迎えしました。


林;こんばんは。早速ですが、お飲物はどうされますか?


影山;ギネスビールをお願いします。


林;ギネスは最近やってなくて、黒ビールでしたらコエドの漆黒というビールがありますが、どうでしょう?


影山;じゃあ、それでお願いします。


林;それでは簡単なプロフィールをお願いできますか?


影山;1966年、東京の新宿で生まれました。新宿と言っても西新宿の十二社というところで、下町情緒あふれるところでした。近所に十二社温泉という温泉と温水プールが一緒になった施設があって、夏のスイカ割り大会やドジョウすくいが毎年楽しみでした。その後7才の時に東京の世田谷区へ引っ越しました。こちらは出来たばかりのマンモス団地で、何もかもが新しく、新宿とのギャップに子供心ながら驚きました。


林;新宿ご出身! カッコいいですねえ。小さい頃の音楽的な環境はどうでしたか?


影山;僕の小さい頃父親は映画音楽やイージーリスニング的なジャズやクラシックが好きで、家にはあの頃通販で流行っていたLPの全集ボックスが沢山ありました。よくドライブに出掛ける家庭だったので、カーステレオからはいつもそんな音楽が流れてきていました。映画「世界残酷物語」の主題歌や「男と女」のサントラなど、今でも好きだなと思う曲が沢山ありました。

またちょっと年上の従姉妹が埼玉の所沢に住んでいて、毎週の様に遊びに行っていました。従姉妹はグループサウンズや当時のアイドルが好きで、よくレコードを聴かせてもらっていました。その時のお気に入りはザ・タイガースの「シー・シー・シー」と「ジンジン・バンバン」でした。


林;おお、従姉妹からグループサウンズをっていうのが時代ですねえ。初めて買ったレコードは?


影山;初めて買ったレコードはフィンガー5の「学園天国」でした。ちょっとロックンロールっぽい曲調とオープニングの掛け合い、そして晃の大きなサングラスに完全にやられていました。


林;あれ、カッコいいですよね。他にはどういうのを聞いてましたか?


影山;その後小学校高学年の時に強烈に影響を受けたテレビ番組に出会いました。「ぎんざNOW!」という番組です。月~金の夕方の帯番組なのですが、毎日日替わりで色々な企画がありました。「しろうとコメディアン道場」というコーナーを見た時は、小学生ながら本気でお笑い芸人になろうと思っていました。音楽の企画も充実していて、バンドコンテストや洋楽・邦楽チャートコーナー、デビューしたての日本のバンドなども沢山出演していました。そしてよく出演していたCharやBowWow、Lazyなど、エレキギターを持って歌う人たち、厳密に言えばエレキギターそのものにノックアウトされてしまい、とにかくエレキギターが鳴っている音楽ならなんでも聴きたいという時期が暫く続きました。寺内タケシ、野口五郎、沢田研二のバックバンド、KISS、音楽性はさておきテレビの画面からエレキギターを見つけるのに必死でした。

と言いつつ当時流行っていた歌謡曲も大好きでした。その頃母親が家で内職をしていたのですが、いつもラジオを聞きながら仕事をしていたので、ラジオから流れてくる山口百恵や石川さゆり、岩崎宏美や沢田研二など、よく一緒に聴いていました。


林;お、ギターキッズへの入り口がこの辺りにあったんですね。その後はどうでしたか?


影山;その後中学に入り自分のラジカセを手に入れた事もあり、ラジオ熱は益々高まっていきました。平日はNHK-FMの「軽音楽をあなたに」、土曜はFM東京の洋楽、邦楽のトップテン番組、そして夜はAMの深夜放送やFEN、とにかくラジオを聴くのが楽しくて仕方がありませんでした。本格的に洋楽を聴く様になるのもこの頃からでした。と言っても主な情報源はラジオのチャート番組なので、まず好きになったのはその頃人気のあったチープトリック、クイーン、アバ、ベイシティーローラーズなど。ミュージックライフを読んでいたのもこの頃でした。ただ前述の従姉妹がこの頃ロックを聴く様になっていて、その後彼女のレコード棚にあったレッド・ツェッペリンやジェフ・ベック、ロッド・スチュワートなどにどんどん興味は移っていきました。

そして遅ればせながらとうとうラジオでザ・ビートルズに出会う事が出来たのもこの頃でした。初めて聴いたのは確かFENから流れてきた「抱きしめたい」でした。とても衝撃的な出会いだったのですが、初めて手に入れたビートルズのレコードが、父親が出張のお土産で買って来てくれた「Love Songs」という甘い曲を集めたコンピレーション盤だったので、ちょっと拍子抜けした事を今でも覚えています。もちろん今では甘いビートルズの曲も大好きですが。


林;もうギターキッズ王道そのものですね。そして?


影山;そしていよいよ中学2年のお正月に念願のエレキギターを手に入れる事が出来ました。同じ学年の他のクラスに、親が純邦楽の師匠でギターがものすごく上手な男の子がいたのですが、ひょんな事から彼と仲良くなり、学校が終わると彼の家に入り浸ってはずっとギターを教えてもらっていました。そしてとうとう中学3年の夏休み、受験生にとっては最も大切な時期に、あろう事か彼と初めてのバンドを組み、毎週の様にスタジオに入ってはギターをかき鳴らしていました。ただ2学期が始まった瞬間に塾の先生にギターを取り上げられてしまい、バンド活動も暫くおあずけとなってしまいました。


林;(笑)でも、始まりました。


影山;4月には無事高校に合格。大学の付属高校だった上、何の部活にも入らなかったので、ぬるま湯の様な高校生活が始まりました。同じクラスに他の高校から編入して来た一つ年上の同級生がいたのですが、高校時代に彼から受けた影響は計り知れませんでした。映画や音楽にとても詳しく、よく一緒にレコード屋巡りや映画館に行ったりしました。ちょうど通学の経由駅が西武新宿駅だったので、学校の帰りには毎日の様に西新宿界隈のレコード屋に足を運んでいました。ウッドストック、えとせとら、シカゴ、新宿レコード、エジソン、そして東口のディスクユニオン。たくさんは買えませんが、ただレコードを眺めているだけで幸せでした。

この頃その彼から教えてもらったパンク・ニューウェーブにどんどんのめり込んで行くのですが、やはりこういう音楽は肌で地元のリアルなうねりを感じなくてはだめだ、と妙な使命感の様な物を感じ、ライブハウスやストリートライブへ通う様になりました。東京ロッカーズは終わり、ストレートなパンクロックもありませんでしたが、E.D.P.S、少年ナイフ、くじら、コンクリーツ、突然段ボール、ガーゼ、システマティック・デス、エクスキュート、キャー、G.ZETなど、もやもやした思春期の男子高校生にとって刺激的な音楽はいくらでもありました。カムズというバンドの解散ライブを屋根裏で観た後の渋谷の朝がとても眩しかったのも、今では甘酸っぱい思い出です。


林;うわー、高校生でリアルタイムでその辺りを経験されてるんですね。


影山;とは言え相変わらす洋楽も聴いていました。ベン・ワットやトレーシー・ソーン、ヤング・マーブル・ジャイアンツ、ウィークエンド、モノクローム・セットなど、ネオアコと呼ばれる音楽に出会ったのもこの頃でした。桑原茂一さんがやってらした原宿のピテカントロプスというクラブで初めて観たドゥルッティ・コラムには、狂気を孕んだ繊細さとはこういう事なのかと、衝撃を受けました。


林;お、イメージ通りの影山さんらしさがこの辺りから見えてきましたね。そしてその後は?


影山;大学入学後、とりあえずおそらく学校で一番大きい音楽サークルに入りました。ジャンルは何でもありで、お酒を呑みながら音楽の話をするのが大好きな人たちの集まりでした。おかげで、それまで見向きもしなかったアメリカンロックやブラックミュージック、シンガーソングライターやジャズ、フュージョンなど、たくさんの素晴らしい音楽がある事を知る事ができました。


林;大学のサークルって音楽が広がるきっかけですよね。


影山;そしてまたしても衝撃的なテレビ番組に出会いました。ピーター・バラカンさんの「ポッパーズMTV」です。その頃ようやくわが家にやってきたビデオデッキで録画しては繰り返し見ていました。音楽と映像がこんなにもクリエイティブに融合していくものなのだなと、毎週楽しみにしていました。

友人に誘われるがままに始めたコンサートの搬入・搬出・警備のアルバイトは、結局大学卒業直前まで続けていました。搬入・搬出の仕事は完全に肉体労働なのですが、コンサートに少しでも携わっているという錯覚に陥り結構楽しかったです。武道館の仕事も結構多く、エリック・クラプトン、ビリー・ジョエル、アイアン・メイデン、矢沢永吉、忌野清志郎、チェッカーズなど、興味の有る無しに関わらず色々なジャンルのいわゆる大物ミュージシャンの演奏を聴けたりして、大変ながらも楽しく働いていました。


林;「錯覚に陥り」に笑いました。僕もそのバイト、学生時代やりましたよ。


影山;この頃、スターリンを解散された遠藤ミチロウさんの新しいプロジェクトのオーディションを受けたのも良い思い出です。何の間違いかテープ審査には通ってライブ審査という事になり、初めてミチロウさんにお会いしました。極度に緊張していたのですが、ミチロウさんはとても優しい方でした。もし受かっていたら全然違う人生を歩んでいたかもしれません。


林;え! すごい! さていよいよ社会人になるわけですが。


影山;大学卒業後、暫くサラリーマンをやって、その後別の仕事にも就いたのですが、色々な事情で仕事を辞める事になりました。音楽の興味としては、POP IND'S、ニューズウェーブ、Suburbia Suite等の紙媒体を経由しつつ、ちょうどその頃ブラジルの音楽に興味を持つ様になり、ガットギターを手に入れたので、一念発起してギターをちゃんと習う事にしました。中南米系のクラシックギターを得意とされる演奏家の方に数年程師事したのですが、その頃遅ればせながらでも基礎を教わっておいて本当に良かったと、今でも思っています。


林;なるほど。


影山;平行してほんの少しずつですが、人前で演奏する様になりました。シャンソンやミュゼット、ボサノヴァなど、面白いと思ったものはどんどんやってみました。そして、とにかく一緒に音楽を奏でてみたいと思える人と出会えるという事がとても大切だと感じる様になりました。そんな中で出会ったのが、現在tico moonでハープを弾いている吉野友加さんです。


林;おお!


影山;彼女と出会ったばかりの頃は、ギターとハープでどの様な演奏をすれば良いのかさっぱり見当もつきませんでしたし、共通の音楽の趣味というものも殆どありませんでした。ただ彼女とは、良いものに対する感覚は同じではないか、そして大きな目で見ればきっと同じ方向を見ているのではないか、という事を直感しました。そして徐々にオリジナル曲を作る様になり、ぼんやりとですが二人で音楽を演奏し続けて行けば見えてくる新しい世界があるのではないかと、感じる様になって行きました。


林;素敵なお話ですね。


影山;そしてギタリスト、と言うより今では音楽家と言った方が通りが良いと思いますが、伊藤ゴローさんと出会ったのも同じ頃でした。まだmoose hill名義で活動する少し前で、naomi & goroを始め、色々なボサノヴァ的なセッションで良くお見かけしていました。その頃ブラジル的なギターを弾かれる演奏家の演奏を色々と聴きに行っていたのですが、ゴローさんの奏でる音はどんな人とも違って聴こえていて、あっという間にその音の虜になっていました。ゴローさんと知り合う事によって、tico moonのアルバムリリースでお世話になる事になるレーベル、333DISCSとも出会う事が出来ました。

このお二人との出会いは自分の音楽生活の中でもとても大きな出来事でした。そしてこの後もいくつかの大切な出会いに支えられて現在に至っています。


林;こう聞いてみると、影山さんの人生は「出会い」で大きく何度も良い方向に向かってきましたね。さて、これはみんなに聞いているのですが、これからの音楽はどうなると思いますか?


影山;個人的な話ですが、今までは割と自分の好きな音楽を手許に置いておきたいという欲求が強く、レコード店でレコードやCDを集める事が何よりもの楽しみでしたが、最近ではそういう意識が段々と薄れていっている様な気がします。ふとつけたラジオから聴こえてきた音楽や、たまたま入ったカフェでかかっていた曲に心を奪われる事があっても、あえて昔の様に血眼になって探したりはせず、次の出会いを楽しみにする、そんな感じでしょうか。ただ自分のアルバムを作っている時は相変わらす血眼になっていますが。


林;なんとなくわかります。これからのご予定を教えていただけますでしょうか?


影山;とにかく続ける事、この一言に尽きます。この9月に『Arietta(アリエッタ)』というtico moonの新しいアルバムをリリースしました。tico moonの結成から15年と少し、通算8枚目のアルバムで、遊佐未森さん、ビューティフルハミングバードさんという素晴らしい2組のアーティストに作詞と歌唱・演奏で参加していただきました。tico moonを始めた頃には思ってもみなかったこんな素敵なコラボレーレションが実ったのも、ひとえに音楽を止めないで続けて来たからだと思っています。


林;このアルバム、すごく良いですねえ。二人の天国に近い音空間に遊佐未森さんの天使の声が加わるとすごい世界になりますね。さて、みんなが待っている10曲の選曲なのですが、まずテーマを教えてください。


影山;はい。「迷える思春期のあなたへ送る10曲」です。
自分の事を振り返ると、多感な思春期に見聞きしたり体験した事には今に至るまで大きな影響を受けていると感じます。そして同時に音楽には幾度となく気持ちを救われました。若い時期に音楽に触れるのは本当に素敵な事だなと思い、こんな曲を選んでみました。


林;おお、思春期で迷える方、オジサンなのに思春期みたいな方も、期待大ですね。


01. David Byrne「Once In a Lifetime」

影山;もやもやした気分になったら、まずこのビデオのダンサーの様に踊って発散してみるのはいかがでしょうか?この曲はもともとトーキングヘッズというバンドの曲ですが、2008〜9年に開催されたデヴィッド・バーンのこのツアーでの演出が素晴らしく、僕も東京公演では踊り狂いながら聴いていました。


林;もうとにかく名曲ですが、最近はこんな演出なんですね。影山さん、これで踊り狂うんですね(笑)


02. Marcus Tardelli「Baiao de Lacan」

影山;思春期の若い頃、時間だけはたくさんあり、今では考えられない程集中力と忍耐力があった様な気がします。この曲はギンガの曲をギターソロにアレンジして演奏しているのですが、こんな難しそうな曲を今ではとても弾こうとは思いません。集中力のある思春期にこそチャレンジしてみるのはいかがでしょうか?


林;うわ、すごい演奏ですね。これはすごい...


03. Cato Guitar Duo 「Jongo」 by Paulo Bellinati

影山;そして一人で演奏する事に飽きたら、是非どなたかと二人で演奏する事をお薦めいたします。この曲はもともとギターの独奏曲を作曲者自身でデュオ用に編曲したもので、ギターデュオのスタンダードとしても知られています。自身の経験上、1+1=2では無くそれ以上なのは間違いなく、試してみたらその広がりにきっと驚く事でしょう。もちろん音楽に限らず色々な事にあてはまるのではと思います。


林;自身の経験上というのが響くお言葉です!


04. Aca Seca Trio「Adolorido」

影山;そして更にもう一人誘って次はトリオです。3人というのはなかなか手強く、2対1、3対0、1対1対1など、状況がどんどん変化していきます。人間関係について学ぶにはうってつけの人数です。そして奇跡が起こった時には、この曲の様な素晴らしい瞬間が訪れるかも知れません。


林;もう奇跡ですね。3人、難しいけど、こういう瞬間もあるんですね。


05. Dr Feelgood「She does it right」

影山;4人になるともう向うところ敵無しです。メンバーの結束が最高潮に達した時には、この曲の様に一丸となってひたすら突き進み、あらゆるもやもやを吹き飛ばす事が出来るでしょう。ただ勢いがもの凄いだけに、何かにぶつかると崩壊するのも早そうです。そこさえ気をつければ4人というのはバランスのとれた人数だと思います。ちなみにギターとベースが前後するアクションもこの演奏の見所です。


林;そしてドクター・フィールグッド! カッコいいですねえ。影山さんがこういうのがお好きなのがわかったのが今回の一番の収穫かもです。


06. Frank Zappa「Inca Roads」

影山;いろいろと経験したのちは、優れたリーダーのもとで大人数で統率のとれた演奏するのはいかがでしょうか?マイルス・デイヴィス、ジェームス・ブラウン、そしてこのフランク・ザッパ、優れたリーダーがいるだけでその場が引き締まる事があります。優れたリーダーに出会う事が出来たら目の前が大きく広がるでしょう。


林;なるほど。優れたリーダーですか。でも影山さん、ザッパが好きな人だったんですね。なるほど、わかってきました。


07: Gunung Sari「Baris」

影山;若い頃はとにかく人と違う事をやってみたくなる時期があります。そんな時、たとえばガムランに打ち込む、もしくはバリ舞踊を習ってみるなどいかがでしょうか?今では日本にもたくさんのバリ舞踊団があり、その気があれば習ってみる事も出来ると思います。ちなみにこのビデオで踊っているアノムさんというダンサーの踊りを目の前で見た事がありますが、人生が変わってしまいそうになりました。


林;この間、カウンターで聞きましたが、影山さん、バリダンス踊ってたんですよね。


08: Devine & Statton「Under the weather」

影山;色々とやってみたり考え込んだりして疲れた時、こんな曲はいかがでしょうか?僕自身、この元ヤング・マーブル・ジャイアンツ、元ウィークエンドのヴォーカリスト、アリソン・スタットンの歌声に何度と無く救われました。一度で良いから生で聴いてみたい声です。


林;うわ、ここにきてデヴァイン&スタットン! 僕も大好きでした。


09: Gustave Charpentier「Depuis le Jour」

影山;この映像は1987年に公開された映画「アリア」という映画の中の一遍です。「アリア」は10曲のオペラ・アリアに、このデレク・ジャーマンをはじめとする10人の監督が映像を付けた、とても美しいオムニバス作品です。この映画を初めて観た時、雷に打たれた様に胸が熱くなったのを今でも憶えています。若い時にこんな素敵な作品に出会えた事に感謝しています。


林;へえ。こういうのがあるんですね。また影山さんの違う一面を知ることが出来ました。


10: 伊藤ゴロー「Captain Coo with a Butterfly」

影山;思春期に聴いたビートルズ、ビーチボーイズ、XTC、素晴らしい音楽に人生が多少ならずとも影響を受けていると感じます。もし思春期にこの曲に出会っていたらどんな人生が待ち受けていたでしょうか。考えただけでワクワクします。


林;ああ、確かにビートルズ、ビーチボーイズ、XTCの先にある日本の音楽ですね。今でも思春期の影山さんに刺さる曲ですね。


影山さん、お忙しいところ今回はどうもありがとうございました。みなさんも是非、tico moonの新作、聴いてみてくださいね。


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■タイトル:『Arietta』
■アーティスト:tico moon
■発売日:2016年9月14
■レーベル: 333DISCS

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試聴はこちらになります。→http://www.e-onkyo.com/sp/album/rsc333d50/


tico moon HP

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影山敏彦 twitter


いつの間にか夏も終わり、もうしっかり秋ですね。この秋も良い音楽に出会えると良いですね。
それではまた来月もこちらのお店でお待ちしております。

bar bossa 林伸次


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【林 伸次 近著】

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■タイトル:『バーのマスターは「おかわり」をすすめない 飲食店経営がいつだってこんなに楽しい理由』
■著者:林 伸次
■発売日:2016年9月9日
■出版社: DU BOOKS
■金額:¥1,728 単行本

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その都度悩んで、自ら回答を見つけてきた渋谷のバーのマスターの約20年。
楽しく経営を続けられたのには理由がある!

「バーの重たい扉の向こうには、お客さま、店主、お酒......その他たくさんの物語が詰まっています。ぜひ、あなたもその物語に参加してみてください。」
――本文より


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林 伸次
1969年徳島生まれ。
レコファン(中古レコード店)、バッカーナ&サバス東京(ブラジリアン・レストラン)、
フェアグランド(ショット・バー)を経た後、1997年渋谷にBAR BOSSAをオープンする。
2001年ネット上でBOSSA RECRDSをオープン。
著書に『ボサノヴァ(アノニマスタジオ)』。
選曲CD、CDライナー執筆多数。
連載『カフェ&レストラン(旭屋出版)』。

bar bossa
bar bossa
●東京都渋谷区宇田川町 41-23 第2大久保ビル1F
●TEL/03-5458-4185
●営業時間/月~土
18:00~24:00 bar time
●定休日/日、祝
お店の情報はこちら

bar bossa vol.61:bar bossa

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vol.61 - お客様:町田洋子さん(ワインバー・マチルダ)


【テーマ:20年聴き続け今でも店でかけたい曲10選】



いらっしゃいませ。
bar bossaへようこそ。

今月のお客さまは初台のワインバー・マチルダの町田洋子さんです。


林;いらっしゃいませ。早速ですがお飲物はどうされますか?


町田;ロゼワインのペティアンをお願いします。


林;さすが、カッコいい注文ですね。それではフランツソーモンのロゼ・ペティアンをお出ししますね。


町田;お願いします。


林;さて、プロフィール的なものを教えていただけますか?


町田;町田洋子です。1975年生まれ、生まれも育ちも群馬県です。会社員の父と専業主婦の母、3つ上の兄の4人家族で外飼いの柴犬がいました。


林;お兄さんがいるんですね。なんとなくわかります。小さい頃の音楽環境とかは?


町田;両親が音楽を好んで聴いているという環境ではありませんでしたし、遊びはもっぱら野外。いわゆる おてんばな女の子です。幼少期、自宅にオルガンがあったので見よう見まねで「ねこふんじゃった」を弾くくらいでしたが、兄の影響で5才からエレクトーンを習い始めました。土曜日の午後、先生が自宅に来てレッスンしてくれるのですが、レッスンが嫌で嫌で。特にソルフェージュが苦手でした。音符をドレミに発音変換が出来なかったんです。小学校6年生まで習っていたのですが、最終的に家に帰らなくなりました(笑)携帯電話のない時代で本当に良かった。


林;この「鍵盤ものを習う」のって日本中であったようですが、それぞれのリアクションが違って面白いですね。


町田;聞く音楽はテレビから流れる邦楽が中心でした。アイドル全盛期だったのですが、男性アイドルより女性アイドルが好きだったようで、低学年の頃は松田聖子や中森明菜など「8時だョ!全員集合」に出てくるアイドルが好きでした。それが、3年生のクリスマスに父からカセットテープウォークマンをプレゼントされたのをキッカケに、私の音楽に対する執着心が芽生え始めます。当時まだ目新しかったポータブルプレイヤーで、ずーっと音楽を聴いていました。友達と遊ぶ時にも持ち歩いていたので、今思うと変な子供だったと思います。お気に入りだったのが少女隊の「Bye-Byeガール」って曲なんですけど、曲調がね、モータウンっぽいですよ。今まで聴いてた曲と全然違ってなんか新しくてねぇ、ちょっと踊りだしたくなっちゃうような。ハンドクラップとかホーンセクションとか入ってて、純粋にカッコイイ!と思ってヘビロテしてました。今でも脳内再生させてるくらいです。


林;おおっと、良いですねえ。


町田;その次に入れ込んだのはレベッカでした。1985年に4thアルバム 『MAYBE TOMORROW』が発売になって、完璧に魂まで持って行かれるくらいに夢中になりました。これが自分で初めて買ったCDです。確か最初にカセットで買って、その後CDを買い直したんじゃなかったっけな。ちなみにこの頃から音の位相を意識していたのと、CDのクレジットに興味があってレコーディングエンジニアとか、録音スタジオなどすべてチェックしていました。


林;レベッカ登場。あれ? でも小学生ですよね。マセてますねえ。中学にいくとどうなりましたか?


町田;中学生になると吹奏楽部に入部して打楽器をやっていました。小学校の時に見た「ポニーテールは振り向かない」というドラマの影響でドラムに興味を持ったんです。ドラムを叩きたいが為に入部しました。聴いていた音楽は引き続き女性J-POPで、レベッカ、PRINCESS PRINCESS、渡辺美里、Dreams come true、松任谷由実なんかを聴いていました。


林;あ、もうとにかく音楽中心なんですね。


町田;高校に入学してからはいろんなジャンルの音楽に触れるようになります。事の成り行きで、学校終わりに毎日JAZZ喫茶(夜はJAZZ BARになる)に通うようになりました。そこで初めてJAZZに触れ合う訳ですが、誰の曲かとは全然分かっていませんでした。ただ、「あ、このアルバムいつもかかってるけどマスターのお気に入りなのかな?」とか「あのお客さんが来るとトランペットの曲をかけるな?」とか、その程度の認識でした。それがジョン・コルトレーンとマイルス・デイビスだと分かったのは随分先の事でした。


林;カッコいい...


町田;部活には入らなかったのですが、ドラムは引き続き叩いていました。同級生とガールズバンドのコピーをしたり、学校の先生とブルースをやったり、あとは、ドラムは需要があるので、友達のバンドサポートとして、ライブハウスに出演していたりしました。


林;なるほど。ドラムたたける可愛い女子って重宝されそうですね。


町田;愛読書はドラムマガジン。この雑誌で楽器メーカー主催のサマー・ドラムスクールというのがあるのを知ります。4泊5日の合宿で、現役のプロドラマーが講師で教えてくれる、というとっても魅力的なものでした。両親に行きたい旨を相談したところ反対されたので、アルバイトをしてお金を貯めて高校2年生の時に参加しましたが、16歳の私には衝撃的でした。今なら分かる、凄腕ドラマーが講師に来ているというのに、当時はそんな事全然知らずに参加してしまいました。なにせリムショットもゴーストノートも知りませんでしたから。帰省し、すぐに買ったアルバムはジェームス・ブラウンと、山下達郎さんのライブアルバム『JOY』とT-SQUAREでした。


林;おお、すごく正しいですね。高校2年生ですよね。カッコいい...


町田;野外フェスといえばJAZZフェスで、駒ヶ根JAZZフェスティバルに行ったり、海外のJAZZフェスを深夜放送で熱心にリサーチしていました。当時お気に入りだったのはThe Rippingtons、パット・メセニー、マッコイ・タイナートリオ、ブレッカー・ブラザーズ、はにわオールスターズ、T-SQUARE。
チック・コリアに関しては 「トリオよりもエレクトリックバンドの方が好きなんだよね」などと吐かす生意気っぷり。誰か私を殴ってください。こうしてフュージョン女子高生に仕上がっていきました。ドラマーの青山純さんに憧れて、夢はスタジオミュージシャンでしたが「これ無理だわ~」となったのは高校3年生でした。


林;うわ、これは高校卒業後の展開が気になります。


町田;高校卒業後、東京の短大に進学して一人暮らしを始めました。東京最高でしたね。ライブもすぐに行けるしお芝居も沢山やっている。アルバイトでおこずかいを稼いでそういう娯楽を積極的に楽しんでいました。六本木PIT-INにはよく行きましたね。


林;90年代前半ですから東京が一番面白い頃ですよね。わかります。


町田;短大を卒業したら地元に戻って銀行員になる事を条件での上京でしたが、OLになるのが嫌で嫌で。第2次イヤイヤ期です。


林;(笑)


町田;就職せずに東京に居残りフリーターの時期が2年ありました。その間、ドラム合宿で知り合った人たちが続々とプロになっていきまして。友人がデビュー当初の平井堅さんのサポートミュージシャンをしていたので見に行ったり、打ち上げに参加してたりしてたんです。その延長線でレコード会社の人との接点が増えていきました。ほぼ毎晩、音楽関係者と新宿三丁目のBARに行く事になりまして、ガッツで朝まで飲んでいたら、レコード会社に拾って貰える事になりした。ちなみにこの頃BARで流れてたお気に入りは、キャロル・キング、カーラ・ボノフ、ドナルド・フェイゲン、クルセイダース、Billy mannなどです。現在MACHILDAでの選曲に大きく関わる時期です。


林;なるほど、新宿三丁目で飲んでたんですね。音楽も渋いはずです。レコード会社のことをもう少し詳しく教えてください。


町田;レコード会社での担当部署は新人発掘部で、オーディションやライブハウスで発掘した新人アーティストの育成がメインです。レコーディング音源を作ってプレゼンして、メジャーレーベルと契約をするところまでの仕事はとてもやりがいのあるものでした。大変な事も沢山ありましたが、冒険のチャンスを与えられた場所だったなと思います。その後、他のレコード会社に移ってプロモーターをやっていました。担当媒体はラジオ局で、新譜の宣伝をしていました。


林;すごくやりがいのある仕事ですね。さて、その後はもちろんお店へと向かうわけですが、そのあたりの経緯を教えてください。


町田;今はワインバーを生業としていますが、初めて独立した時は洋菓子店だったんです。レコード会社で働くうちに、私も物を作る仕事がしたいと強く思うようになって、当時個人的にケーキを作っていたのですが、それが知り合いの飲食店の人の目に止まって、その店にケーキを卸すようになりました。お酒のアテになるケーキとして評判を上げていくにつれ、洋菓子を本職にしようかという気持ちが大きくなってきました。
ただ、ひとつ問題があって、私は皮膚が弱くって手荒れトラブルが悩みの種だったんです。雇われの飲食店ではこの手じゃやっていけなそうなので、やるなら独立、という構図がすぐに思い浮かびました。


林;そこで独立を思いつく... 毎回、発想や展開がすごいんですね。


町田;いきなり独立するのも無謀なので2年後の独立を目標に掲げ、ケーキカフェでバイトを始めました。私、たぶん物件運が良いんだと思うんですけど、28歳の終わりにスルッと物件が見つかったんです。小田急線参宮橋駅徒歩2分。商店街沿い9坪10万円。


林;安い!


町田;ただし、とても古くて5年間限定の契約物件だったんです。そのかわりに家賃も破格。5年後店を続けたければ引越しをすればいい。新しい仕事をしたくなるかもしれない。という可能性もあるので契約することにしました。5年という条件も後押しさせるものでした。3年か5年続けるかで世間からの評価がかなり違います。次のステップに移る時重要になると思いました。それとどうしても20代で独立しておきたかった。当時女性での飲食店開業はまだ珍しく、しかも20代であればそれだけで何かしらの取材が来る、と踏みました。


林;すごい...


町田;おかげ様で、店の取材と個人の取材は半々くらいでありまして、この先自営業として生き延びさせるノリシロを作る事が出来たと思っています。若かったからこそ出来たこと、若いが為に足りなかったこと、どちらもありましたが、がむしゃらにしがみついてやるしかありませんでした。余裕なんて全然なかったな。経営者というものがこんなにも孤独なものなのかと愕然としました。そうこうしているうちに5年の終わりが見えてきまして、店を続けない決断をしました。経緯はいろいろあるのですが、もっといろんな人と関わりながら仕事がしたいようになったんです。


林;店って閉めた直後は「もうしたくない」って思うようですね。離婚後と似ているというか...


町田;それで、料理研究家とかフードスタイリストのような仕事をしていこうと東横線学芸大学駅に引っ越して小さな2階建の一軒家を借りました。そこの1階をアトリエとして撮影に使ったり、同時にケーキや料理の教室を始めました。ここでコケるんです。フリーランス向いてなかった!次に繋げる営業力が圧倒的に足りなかったんです。1年経って経営の見通しが立たず、精神的にも追い込まれていき、人生で一番辛い時期に陥りました。


林;フリーランスって営業努力が大きそうですね。


町田;そんな時に現在のMACHILDA物件の話が持ち掛けられます。ここから、ただただ流れに乗るだけの生き方になります。


林;(笑)


町田;一人で焼き菓子屋を営んでいた知人が妊娠しまして、産休期間の2年間、お菓子屋をやらないか?と誘われたんです。正直、お菓子からは暫く離れたかったし、お店は2度とやりたくない、という気持ちがありました。だけど、逆にお店ならできるという気持ちもあったりして。とにかく稼がないとご飯も食べられないし住まいも失う事になるので話を進める事にしました。初台駅から徒歩1分。人通りの少ない緑道沿いの3坪物件はちょっと特殊なんですが、酒場なら成り立つ物件だな。と密かに思っていました。焼菓子屋の彼女も店舗撤退する方向に話も変わったので、契約期限なく居抜き物件を借りられる事になったんです。やっぱり物件運は強いと思います(笑)


林;物件の運って本当に全てですよね。


町田;小さい物件なので、専門店が良いと選んだのがヴァンナチュールです。当時飲んでいて好きでしたし、周りの店舗と業態も被らないし、リサーチの結果、飲み屋難民の働き盛りの30代が多く存在する事が分かったので、そういう地元の人が入りやすい雰囲気の店にしようとおもいました。雑誌にも食べログにも乗らないようなお店がいいな、と。


林;良いですねえ。


町田;的が当たったのか、オープンしてすぐにお客様に恵まれました。オープン1ヶ月後には雑誌の取材依頼が来て、焦りました。「ちゃんとやらなくっちゃ」と覚悟を決めて本腰を入れたのはそこからですね。オープンして3ヶ月経つ頃に萎えていたメンタル面も健康を取り戻していました。


林;これ、お店をやりたいという方や飲食業界の人もたくさん読んでくれているのでもう少し詳しくお店の方針なんかを教えていただけますか?


町田;営業スタイルは人それぞれだとは思いますが、私はお客様とは一定の距離を保って接するように心がけています。基本的に定休日にお客さんと飲みに行ったり、お店主催の花見をやったりしないタイプですね。最近少しずつその仕切りを外してみたりもしてますが。


林;それって大切ですよね。


町田;そしてその日の出来事を翌日に引きずらないように気をつけています。あとはお客さんの秘密は守る。とか。「最近Aさん来てる?」なんて聞かれて、たとえ入れ違いだったとしても「はい、たまに」などとはぐらかしたりします。私もそうですが、バーテンと美容師さんにしか話せない事とかもあったりしますからね。仕事でも友達でもない誰かに話してガス抜きしたいとか。


林;大切ですよね。ところで女性一人でさらに町田さん可愛いし、男性のお客さまから色々と面倒くさいことってないですか? 


町田;何言ってるんですか!バーテンたるもの口説かれなくでどうするんですか(笑)お客さんはオフでお酒を飲んでいる。私はオンで仕事中。そりゃ素敵に見えてなくちゃ困ります。これがバーテンマジックです。でその代わり、外であったら2割減になってしまうんですよね。マイナス採点されがちな職種だなあ。と思ったりします。


林;(笑)


町田;オープン当初は「仕事終わりに飲みにいこうよ」なんて誘われたれしましたが「この後片付けがあるから2時に待ち合わせになっちゃうんだけどいい?」と聞くと、100%回避できましたよ。休みに飲みに行った事もあるんですが、その後店で、「俺の女節」を発揮してしまう方もいらして、二人きりの飲みは難しいな。と思いました。でもこういうの、女性に限らず男性バーテンにもあるんじゃないですか?ねぇ、林さん。


林;あの、僕は妻と娘がおりますので。エヘン(咳)。お店はずっと続けられますか?


町田;お店を続けるのは・・・、極論ですが辞めなければ続きます。辞めたらそこでお店は終了なんですよね。もう本当にいろんな都合がありますけど、辞めない。それにつきます。これが難しいんですけどね。


林;わかります。他に何かこの業界を目指している人たちにアドバイスはありますか?


町田;お酒を扱う仕事をカウンターでやるにはなんというかそれなりの覚悟がいります。目には見えませんが、酔ったお客さんのエネルギーというのはハイパワーですので、真っ向から食らっちゃうと、店主が滅びます。滅びる人を何人も見てきました。ただ、ワインを飲まれる方は温厚な方が多くて、変なトラブルが起こる事もほとんどないので、それに関してはワインを選んで本当に良かったとおもっています。


林;あ、僕も全く同じでワインを選んで良かったってよく思います。でも、町田さんいつも楽しそうですよね。


町田;お客さんに「こういうお店、楽そうでいいな。いつかお店やりたいな。」と思ってもらう事が出来たらラッキーとおもっています。そんなに楽じゃないんですけどね、楽そうに演出できてるのかなって。


林;ほんと、そんなに楽じゃないですけどね(笑)


町田;カウンターメインでの飲食店の仕事はお客さんとの心の距離が近いのが魅力的ですね。そして、毎日が違う夜なので飽きません。色んな職種の方がいらっしゃるので、困っている事も大抵は解決しますし楽しいですよ、うん。楽しい。嫌な事もあるけど、そういう事は翌日に持ち越さずに忘れましょう。


林;ほんとにそうです!(笑) さて、これみんなに聞いているのですが、これから音楽はどうなっていくと思いますか?


町田;スマホで育った世代って実は結構音楽を聴いてるんじゃないかな?って思ってるんです。MACHILDAに来店する若い世代の方は入店する瞬間までイヤホンをして何かしら聴いている人が多いんですよね。そして楽曲入手方法は配信で、オーディオ機材が自宅にないようなんです。ただ、音楽を聴いている割に、酒場で好きなアーティストについて語り合うシーンはあまり見た事がありません。


林;あ、そういえばそうですね。


町田;スマホ 対 自分、のような1対1の音楽ではなく、スピーカーから流れる音楽に関心を持って共有出来る日が来るといいな、というのは私の願いです。彼らがオーディオや真空管アンプなどの良質な音に触れる場が増えて、それをカッコイイ!と思えたら、そういう流行りがくるんじゃないかな、とも思っています。で、それを仕掛ける大人もそろそろ出てきてますよね?


林;僕もそこに可能性は感じています。さて、これからはどういう風にされるご予定でしょうか?


町田;MACHILDAはオープンして今年で7年目になりますが、今の店をでできる限り続けてみたいと思っています。長く続けるとなにが起こるのか、どんな心境の変化があるのかを知らないので経験してみたいですね。それと、目の前が青い海!なグッドロケーションでB&Bを経営するのが夢です。一階はテナントにして飲食店を入れたいですね。


林;青い海の前にビルを所有している独身男性はMACHILDAに急げ、ですね。さて、そろそろみんなが待っている選曲に移りたいのですが、テーマをまず教えていただけますか?


町田;はい。「20年聴き続け今でも店でかけたい曲10選」です。


林;おお、良いですねえ。楽しみです。


01. Brecker Brothers / Some Skunk Funk

町田;スタンダードジャズよりもこういったファンク寄りなものが好きなんです。初めて聴いた時は、まあ、ぶっ飛びましたね。スピード感とトリッキーな展開に夢中になった女子高生。1993年の来日ライブにはもちろん行きました。


林;カッコいいですねえ。町田さんそうとうヤンチャなのがお好きそうですね。え、93年のライブに行ってるんですか。すごい・・・。


02. Stevie Wonder / It's You feat. Dionne Warwick

町田;非常に申し上げにくいのですが、高校に入るまで、スティービー・ワンダーは亡くなっている方だと思っていました。だって名曲を作る人は皆、額縁に写真を入れられて音楽室に飾られているじゃないですか。こんな偉大音楽家が生きているなんて奇跡のように素晴らしい!It's Youはこの世で一番好きな曲です。二人の歌声はもちろん、ピアノから始まるイントロも、優しく響くホーンも、ハーモニカもすべてが愛おしい。「この曲が世界で一番好きなんだ」なんて言う人がいたら恋に落ちますね。


林;良い曲ですよねえ。僕はちょうど懐かしいなあって感じです。MACHILDAに行って、「この曲が世界で一番好き」という男性が続出しそうですが...


03. Crusaders / Scratch

町田;このアルバムを買った時、なんだか大人の階段を登ったような気がしました。オルガンの音色っていうのはなんでこうも隙間を魅力的に演出するんでしょう。主旋律のサックスよりも、オルガンばかり聴いてしまいます。LIVEならではのグルーヴも一流。


林;すごい渋い曲ですね。やっぱりドラムをやってたからこういう「ためとか隙間のある曲」がグッとくるのでしょうか。


04. Karla Bonoff / The Water Is Wide

町田;名曲は結婚式で流しにくい歌詞。の法則ですね。今は無き新宿3丁目のBAR MARTHAで夜明けが近くなるとよく流れていました。外の景色も明かりも届かない小さな店でこの曲が流れると、決まって「ああ。外は雪、って感じがする」と言う女性がいて、それがとても大人っぽくて憧れでした。なので、この曲を聴くとついつい、「外は雪」と思ってしまいます。


林;おお、そう言われてみれば確かに「外は雪」な感じですね。こういう音楽って「誰かとの会話やその時の状況の思い出」が心のどこかにしっかりと植えつけられますね。


05. Al Kooper / Jolie

町田;イントロのスネアの入りからして相当カッコイイ!こちらも3丁目仕入れ。血管から流れ込むような幸福な音色ですよね。無駄に酔って無駄に惚れそうです。1990年代後半の酒場では聞かない日はなかった。というほどみんな大好きJolie。


林;確かに90年代後半の酒場では定番でしたね。良い曲ですよねえ。無駄に惚れそうに乾杯です。


06. Chicago / Saturday in the Park

町田;ピアノで始まる曲がとにかく好きです。さらにホーンセクションが入っていれば大好物。MACHILDAは土曜日だけ15時オープンなので昼酒ができるのですが、この曲がかかると爽快。


林;MACHILDAさん、土曜日は15時オープンですよね。みなさん、是非! でも選曲が10歳くらい年上男性と付き合ってたとしか思えない、妙な「オジサン心」をくすぐりますね。


07: Donald Fagen / I.G.Y

町田;アルバム『The Night Fly』は、音質のバランスの良さからレコーディングやPAのエンジニアがシステムチェックに使っているというのは有名な話ですが、レコード会社時代、プレゼンライブの会場で朝イチにこの曲がかかるので、聞いたら自然と気合が入る一曲です。位相好きにはたまらないですね。


林;なるほど。これ、そういう風に使われるんですね。知りませんでした。


08: 古内東子 / Strength

町田;1995年発売。日本のアーティストでこんな豪華なスタジオミュージシャンでレコーディングできる人がいたのか、と感動を覚えたアルバム。ブレッカー・ブラザーズやデヴィット・サンボーン、ボブ・ジェームス、オマー・ハキムなど、憧れのミュージシャンが勢ぞろいで、嬉しいやら悔しいやら。コーラスアレンジも秀逸。


林;え、これってそんなすごいメンツなんですね。この時期ってそういうことが可能な頃だったんですね。すごい・・・。


09: 山下達郎 / Magic ways

町田;達郎さんは私のライフワークにすることにしました。今までもこれからもずっと聴き続けるであろうアーティスト。ここ数年、店を休んででもコンサートに行っています。基本的に音楽はレコーディング音源で聴くのが一番好きなのですが、達郎さんのコンサートは自分へのご褒美です。店で流れると私の機嫌が良くなるので、度々流れるのは気のせいではありません。


林;なるほど。この流れならもちろん山下達郎ですよね。「好き」って言い続けると、いつか誰かがMACHILDAに連れてきてくれるかもですよ。


10: Four Freshmen

町田;自分の好きな4声のコーラスの歴史を探っていったらたどり着きました。フォーフレッシュメンスタイル。と呼ばれるコーラススタイルの原型だったんですね。選曲の7,8,9のアーティスト音源でも多用されています。1950年代にこれをサラッとやってのけちゃった訳ですから、革命ですよね。最高です。


林;なるほど。このスタイルが後のコーラススタイルを作り出したわけですね。こういうの最後に持ってくるのが粋ですねえ。さすがです。


町田さん、お忙しいところどうもありがとうございました。なんだかすごい人生ですね。これを読んで女性たちが「私も町田さんみたいになろう」って思ってくれると良いですね。

みなさん、MACHILDAさんも良いお店ですので是非行ってみてくださいね。


MACHILDA HP

MACHILDA twitter


やっと9月ですね。まだまだ暑い日々が続きますが、良い音楽を聴いて乗り越えたいところですね。それではまたこちらのお店でお待ちしております。

bar bossa 林伸次


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【林 伸次 近著】

barbossa_cover450.jpg

■タイトル:『バーのマスターは「おかわり」をすすめない 飲食店経営がいつだってこんなに楽しい理由』
■著者:林 伸次
■発売日:2016年9月9日
■出版社: DU BOOKS
■金額:¥1,728 単行本

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