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bar bossa vol.67:bar bossa

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vol.67 - お客様:松岡祐子さん(ユニバーサル・ミュージック)
【テーマ:最近聴いていないけど、そういえば、好きだな、と思った曲】



いらっしゃいませ。
bar bossaへようこそ。

今回はユニバーサル・ミュージックにお勤めの松岡祐子さんをお迎えしました。


林;こんばんは。早速ですがお飲み物はどうしましょうか?


松岡;ソーヴィニヨンブランをお願いします。


林;お、素敵ですね。ではロワールのヴァランセイで美味しいのがありますので、そちらをお出ししますね。


松岡;はい。


林;さて、お生まれを教えていただけますでしょうか。


松岡;1981年、四谷です。慶應義塾大学病院で産まれたのですが、当時石原裕次郎さんが入院していて、祐子(字が違うのですが)という名前は裕次郎さんから?と病院内で訊かれていたようです。


林;四谷... 何か習い事はされてたのでしょうか? 松岡さんと言えばピアノですが。


松岡;母が美大を卒業していて、デザイン関係の仕事をしていたことから、四谷で過ごしていた3歳まではお絵描き教室に通っていました。お絵描き教室といっても、色々な工作を教えてもらうのですが、そこの教室の先生が『カバ先生』というあだ名で、あのお笑い芸人のカラテカ矢部さんのお父様だったんです(だいぶ後で知りました)。数年前、お仕事でカラテカ矢部さんにお会いした際にこの件をお話することができました。

その教室で年が1つか2つ上のお友達がいまして、彼女がピアノを習ってたんです。そのお友達のお家に遊びに行った際に、アラベスクという曲を弾いているのを聴いて、もうピアノの虜になりました。両親にどうしても習わせて欲しい、と頼み、引っ越しをきっかけに習い始めました。


林;え、珍しい、自分から習いたかったんですね。


松岡;父が音楽好きで、子供のころは一緒にピアノを弾いたりしましたね。父は高校生の頃バンドをやっていて、地元ではけっこう有名だったみたいです(笑)ビートルズの武道館公演も観に行って、会場で買ったジョン・レノンのカツラを被って地元に帰ったら笑われたそうです...。今思うと、音楽好きは父譲りかもしれません。


林;え、お父さん、ビートルズの武道館に行ってるんですね。これはすごいですね。


松岡;初めてのピアノの先生は、父の知人でした。音大を卒業されていて、彼女にその音大の付属小学校への入学を勧められまして、受験しました。


林;ほお、初めて買ったレコードは?


松岡;初めて買ったレコードは光GENJIの「ガラスの十代」のドーナツ盤です。諸星君が好きでした(笑)小学校の時は純粋にテレビの歌番組に出ているアーティストが好きでしたね。プリプリとか、米米とか。あとは、ジブリの音楽をピアノで弾くのがクラスで流行っていました。いつの時代もジブリは鉄板ですね。


林;なんかすごくわかります。でも今ついうっかりレコードと言ってしまいましたが、CD世代ですよね。


松岡;確か私が小学1、2年の時にCDが普及してきたと記憶しています。当時、1番上がアナログプレイヤー、2段目がラジオ、その次がカセット、CDみたいなマルチなプレイヤーがよくあったと思いますが(かなり存在感のあるオーディオです...)、父がそれを購入してきて、初めて買ったCDはBBクイーンズの「おどるぽんぽこりん」。レコードの感覚で、絵が書いてある面を下にして、そうでない何も色の付いていない面を上側にセットして、なんでかからないんだろう、と悩んだ思い出があります。


林;松岡さんだとギリギリそれを体験しているんですね。中学高校はどうでしたか?


松岡;中学の時の記憶が薄いのですが、高校はかなり充実していました。とにかく派手でした、私。いわゆるギャルです(笑)


林;え!(笑)


松岡;音大の付属だったので、音楽の授業やピアノを練習するのは当たり前でした。週1、学校で先生とピアノのレッスンを行うのですが、それに加え、毎週先生のご自宅でもホームレッスンというものがあり、それをこなすための日々の練習、アルバイト、塾、と今だったら絶対にこなせないハード・スケジュールでした。毎日楽器に触れているので、軽音楽部とか音楽系の部活は普通の学校のように、そこまでの人気はなかったような気がします。一部の男の子はディープ・パープルとか、ロック・ギターにハマってたりしましたが。


林;なるほど。逆に音楽に対してそういう感覚になるんですね。


松岡;私は中学は帰宅部で、高校時代はピアノの門下の先生が顧問だったオペラ研究部に半ば無理矢理入部させられました。オペラの伴奏が担当です。専門はクラシックでしたが、中学からは洋楽を良く聴いていました。Hiphop、R&Bですね。ネットがない時代でしたので、ラジオで新譜情報をゲットし、CDショップでポップコメントを読んで買ってました。今の時代だとほぼないことですが、やはり失敗もよくありましたよね。ただ、お小遣いで買ってるので、一枚一枚大切に聴いていたというか、あまり好きなアルバムではなかったとしても、どうにか好きなところを見つけようと必死でした(笑)あ、意外とこのベースラインいいじゃん、とか。


林;やっぱり松岡さんの世代までは僕とほぼ同じような音楽ソフトの買い方をしているんですね。さて、大学ですが。


松岡;大学もそのまま上に進み、ピアノ漬けの毎日でした。自分の生活からピアノが無くなるということは想像していなかったですし、大学卒業後は大学院に進むか、留学するか、という2つの選択肢しかないと思っていました。

大学3年になると、ピアノ科とかヴァイオリン科とか、声楽科とかでは珍しいことになるんですが、教育科の子たちがワサワサし始めるんです。就活です。
当時、ウチの学校の就職率が数パーセントで、あり得ない数字だったのですが(笑)私の周りも就活している友人は数える程度でした。もちろん私も就活はせず、大学4年も終わりに近づいた頃、急に「私はこのままで良いのかな...」という疑問がふつふつと湧いてきました。


林;そりゃそうなるのが普通の感覚ですよね。


松岡;その時思ったのが、小学校から大学までの16年間、周りの人たちが変わらずほぼ同じ、ということでした。自分がすごい狭い世界にいるような気がしてきて、外に出たい=就職したい、という気持ちになったのです。

大学卒業後、どうしても新人演奏会というものに出演しなければならず、第二新卒、という形で就活しました。今思うと非常に安易な考えで、やり直せるものならやり直したいのですが、、、
とりあえず働きたい、という気持ちだけでリクルート系列の会社に就職し、求人誌の営業を始めました。特にやりたい仕事ではなかったのと、名刺100枚獲得キャンペーンみたいな体育会系の雰囲気で、急に音楽が恋しくなりました。


林;あ、最初は音楽の会社じゃなかったんですね。


松岡;話は少し戻りますが、大学時代に資生堂ビルの受付のアルバイトをしていまして、そこの先輩がいきなり手製感満載のミックスCDをくれたんです。その人の彼氏が趣味でHOUSEのDJをやっている、とのことで、お手製のミックスCDです。聴かず嫌い&偏見だったのですが、HOUSEって苦手でした。ただただ激しくなんの抑揚もないんでしょ、的な。でも先輩からもらったものだし、次会った時に感想を言わないと、と思いまして一応チェックしたんです。そのCDはいわゆるディープ・ハウスというジャンルのものだったのですが、想像している音楽とは全く別で、一気にはまりました。

その後に付き合った大学の後輩も、たまたまハウスのDJをやったりしていて、クラブにも良く通うようになり、ダンスミュージックにどっぷりと。私もターンテーブルやミキサーを準備し、DJの真似事もできるようになりました(笑)

クラブシーンや様々な音楽と出会う中、クラシック以外の音楽に触れ合う仕事ってなんだろう、と考えている最中、営業の仕事をし始めたのですが、どうしても音楽に関係する仕事がしたくなり、退社しました。そこから職探しだったのですが、クラシック畑の純粋培養だった為、音楽関係の仕事がそもそも何があるのかさえ分からず、就職に関する本に頼ったりして。そこには、レコード会社は音大卒は取らない、という内容が書いてあり、絶望しました。要するに専門知識が高くなりすぎ、使いづらいから取らないんだ、というような内容でした。


林;え、そうなんですか。知りませんでした。


松岡;レコード会社は諦め、イベンター、ライブハウスなどの仕事を探している時に、ソニーミュージックがアシスタントを募集しているのを発見。ダメ元で応募しました。レコード会社の仕事が何も分からない状態で面接しまして(最初はソニーミュージックの系列の化粧品部門に行かされそうになりました...)、CDの営業の部門で働くことに。


林;おお、すごく運が良いんですね。


松岡;ソニーでの仕事は楽しかったですね。同年代の仲間も多く、今でもすごく良い思い出です。その数年間でレコード会社とは、ということを学びました。ただ当時のソニーはアーバン系の洋楽が少なく、扱っている商品に物足りない思いがありました。

ここで付き合っていた大学の後輩が出てくるのですが(笑)彼が早稲田の音楽サークル『ギャラクシー(業界では有名なサークルです、ライムスターとか、アーバン系のライターさんとか、現レコード会社の人とか所属していました)』に所属しており、そこでユニバーサルミュージックで働いている人と仲良くしていたんです。必然的に私もその人と仲良くしていまして、ある日、ユニバーサルに来ないか、とお話がありました。ソニーの居心地が良かっただけに、悩んだのですが、そのお話をお受けすることにしまして... 今に至る感じです。その人が現在私が所属している部署にいまして、私も同じ部署で働くことになりました。


林;なるほど。そんな感じで決まっていくものなんですね。


松岡;ユニバーサルって中途採用で入社する人がすごく多いんです。多分、ソニーのドメスティックと外資の違いだと思うのですが、雰囲気が全然違って少しカルチャーショックでした。中途採用ということは、その道のプロフェッショナルが入社しているということなので、レーベルで働くのが未経験な私も経験者のような扱いでして(笑)。入社した一週間後にトリニダードトバゴ出身のアーティストが来日するということで、入社してすぐに、雑誌のインタビュー取ってきて、と言われました。

宣伝なんてやったことなかったですし、もうとりあえず必死で...雑誌の裏に書いてある電話番号に片っ端から電話してアポを取り、まだ良くわからないアーティストのインタビューをブッキングしました。アーティストが来日した後、その人の彼を迎えに行って、と言われ、成田空港まで行きましたね、そういえば。お互い話すこともなく、リムジンバスで気まずい空気が流れたのを覚えています。


林;結構小さいころからなんでもとりあえずぶつかっていくんですね。なんか松岡さんらしいと言いますか...  


松岡;私が所属している部署はカタログ音楽商品、コンピレーションアルバムなどを中心に扱う部署で、要するにストラテジーの部署。なので、企画が命です。ユニバーサルと契約していないアーティストも良いな、と思えば日本だけで契約してリリースもする、という何でもありな部署でもあります。


林;なるほど。楽しそうですね。


松岡;入社して10年、ずっと同じ部署にいます。洋楽の編成担当をやったあと、部署内に宣伝部ができ、数年間宣伝をやりました。洋楽だけでなく、邦楽もあるため、音楽番組やワイドショーのブッキングも行いました。ちょうど安全地帯が再結成でざわざわした時ありましたよね。安全地帯も宣伝しましたよ。

現在はまた制作をやっていまして、DJ KAORIなどのノンストップ・ミックスや、FREE SOULなどのコンピレーション、その他再発商品などを担当しています。


林;橋本さん! さてこれはみんなに聞いているのですが、音楽はこれからどうなっていくと思いますか?


松岡;いろいろな記事にもなっていますが、確かに音楽業界は今、過渡期だと思います。スマホとか、YouTube とか、配信とか、サブスクリプションとか、私が業界に入ったたった10数年でこんなにどんどん新しいものが出てくるのかと。それに順応していく体力やアイディアがもっと私たちには必要だと思っています。

実際に人気のラッパーはダウンロード配信すらやらず、サブスクリプションのみで作品を発表したり、と、レコード会社が必要ではない時代かもしれません。宣伝だって、自分たちのSNSで事足りますしね。情報を発信した数秒後には世界中に広がる時代です。そんな時代だからこそ、もう私たちは何もやることない、と思っては本当に終わってしまうので、その時代に合った仕事を積極的にしていきたいですね。エンターテイメントが仕事ですので。楽しく、いろいろなアイディアを出して。可能性は無限大だと思います。

反面、アナログもブームですよね。ただ、ブームとはいっても中古市場が盛り上がっていて、新譜商品はまだまだ、といった感じです。けれど、わたしもこの一年、アナログ商品作りに多数携わりました(多分ユニバーサルでは私が1番アナログ商品作っていると思います(笑))。
フジファブリックやoriginal loveのオリジナル・アルバムアナログ化とか。和ジャズやフリー・ソウルの名盤の再発とか。

その中で好評だったのは、MUROさんが企画した7インチスプリット盤、
http://store.universal-music.co.jp/feature/captain-vinyl-7inch/

Suburbiaの橋本氏とDeep Jazz Realityの尾川氏が企画した、 King James Version/First Time We Met (ブッダ・ブランドの人間発電所ネタ)とMark Capanni/I Believe In Miracles (ライムスターのThe Choice Is Yoursネタ)のスプリット7インチ(完売しました!)や、今度でるジャクソンシスターズとオデッセイのシングルカット7インチ

http://store.universal-music.co.jp/product/uiky75024/

http://store.universal-music.co.jp/product/uiky75023/

などです。

好評商品の共通は、こんなの欲しい、と思えるような独自の企画です。こういうのを企画できるのも今の仕事の醍醐味ですし、楽しいです。


林;おおお、一気に話されましたが、お仕事ちゃんとされてますね。僕も松岡さんが作ったアナログ買ってますよ。これからはどうされる予定でしょうか?


松岡;今後はもっとデジタルに寄せた編成に力を入れる予定です。これから勉強していくこともいっぱい。仕事柄、世界中のユニバーサルミュージックのスタッフとやり取りをするのですが、もっと英語も頑張らなきゃ、と思ってます。英語の勉強の本、忙しさにかまけて全然進んでないですが...


林;英語、やっぱりやらなきゃって思うこと、僕もよくあります。さて、みんなが待っている選曲ですが。テーマは何ですか?


松岡;テーマは「最近聴いていないけど、そういえば、好きだな、と思った曲」です。1曲、最近の曲入れました。橋本さんも好きな曲です・・・


林;期待しますね。


01. マーラー/交響曲第5番第4楽章「アダージェット」



松岡;名演がいくつかありますが、YouTubeだとこれが一番ヒットしたので。「ベニスに死す」で有名すぎるほど有名なクラシック音楽ですね。マーラーって、クラシックをやっている人の中で好き嫌いけっこう分かれるんです。でも、この楽章は好きな人が多いはず・・・。
クラシック、聴かず嫌いの方も多いかと思いますが、本当に素敵な曲が多いので、ぜひ!


林;僕もマーラーに関してはあまりピンと来ていないのですが、アダージェットは美しいですよね。他も聞いてみます!


02. 七尾旅人×やけのはら/rollin' rollin'



松岡;Good Song!その一言に尽きると思います! 小学校高学年から洋楽に走ったので、あまり邦楽を聴いていなかったのですが、今、この曲を聴くと「青春」という2文字が浮かびます。


林;おお、これが松岡さんの「青春」ですか。良いですねえ。


03. Risco Connection/Ain't No Sopping Us Now



松岡;昨年お亡くなりになった、David Mancuso。彼の伝説のパーティー『The Loft』クラシック。YouTubeだとわかりづらいのですが、アナログで聴くとパーカッションの抜けがハンパなく気持ちよく、幸せな気分になります。

私もDavidが来日した際にパーティーに行きました。確か、札幌「PRECIOUS HALL」からスピーカーを持ってきて(@リキッド)のプレイだったのですが、素晴らしいイベントでした。


林;ああ、こういうのが松岡さんの本領なんですよね。わかってきましたよ。


04. Carlton & His Shoes/Let Me Love You



松岡;この曲が収録されたアルバム(すごい有名なアルバムですね)、レコードでなぜか3枚持ってます(笑)1枚目、いいところでプツとなるので、もう1枚買ったらまた何か不具合があって、3枚目でやっと、という感じでした。簡単に3枚手に入ったので、レア盤とかそんなのではないと思いますが、センスが良くていいですね。


林;え、簡単に3枚、手に入るものなんでしょうか。カッコいいですねえ。


05. Stevie Wonder / I Love Every little Thing About You



松岡;ユニバーサルで働きたいなーと思ったのは、彼が所属していたからでした(笑)選べない程素晴らしい曲ばかりなのですが、この曲を聴くとあたたかい気持ちになるので大好きです。タイトルからして幸せいっぱいですね。特に曲の一番最後の語りの部分がすごく好きなんです。最近プライベートでいろいろあったり・・・するStevieですが、是非新譜のリリースと来日公演を行っていただきたいです。


林;スティービーお好きなんですよね。でも1曲だと、なんかすごく渋いところを。


06. Sade / Kiss Of Life



松岡;人生の最後に聴きたい曲です。レコードのジャケットも素晴らしいです。どんな女子もSade Aduに憧れてるはず!と思っています。日本公演て・・・ないんですかねー・・・


林;これでもう松岡さんの音楽の趣味が完全に把握できてきました。美しくてちょっとセクシーで、ゆるい感じですね。


07: The RH Factor / How I Know



松岡;ロイ・ハーグローヴ率いるThe RH Factorのアルバム「Hard Groove」に収録されている曲。素敵な曲です。歌詞も◎。当時はすごく新しく感じました。グラスパーもですが、最近は多くなりましたね。


林;これって10年以上前なんですね。カッコいいですよねえ。


08: Yuna / Crush feat. Usher



松岡;最近の曲も。ラッセル・シモンズも絶賛したというマレーシア出身のユナ。Verveからデビューしました。浮遊感あるサウンド今っぽいですね。ジェネイ・アイコとかユナとか、今っぽいサウンドに合うヴォーカルです。


林;ああ、松岡さんの音楽の趣味の、最大のキーワードは「浮遊感」なんですね。ああ、どれも確かに浮き上がってますね。


09: 奥山みなこ / 花のように



松岡;大学の時に、Sunday Afternoon(長谷川ケンジさんがオーガナイザーのイベントで、今MUROさんと一緒にCaptain Vinylを主催されているDJ NORIさんもPLAYしていて、大好きだったんです)というイベントによく行っていまして、そこで教えてもらいました。優しいきれいな声ですよね。


林;へええ。すごく良い声ですね。チェックしてみます!


10: Vangelis / Memories Of Green(ブレードランナー)



松岡;ごめんなさい、私映画は観ていないんですけど、この曲が欲しくてサントラを買った記憶があります。映画音楽っていいな、と最近思います。もっとたくさん名曲があるんでしょうね、今度Digしてみようと思います!


林;え、観てないんですか。僕も観てない映画のサントラは好きですけど、これは映画が好きでって順番だと思ってました。良いですよね。 それでは松岡さん、今回は本当にお忙しいところどうもあり... あれ、どうしたんですか?


松岡;あの、私が作ったCDの宣伝をしても良いでしょうか? 


林;え、あのここはそういう場所ではないのですが、じゃあ1枚だけですよ。


松岡;あの、bar bossaの林さんが選曲したCDなんですが、『Happiness Played In The Bar -バーで聴く幸せ』です。よろしくお願いいたします。


林;あ、僕のCDでしたか。ありがとうございます... あ、ホワイトデーのプレゼントに良いかもです...

松岡さん、今回はお忙しいところどうもありがとうございました。もう10年以上も前からbar bossaに通っていただいている松岡さんとこんな対談なんて出来るなんて、不思議な気持ちですね。

さてみなさん、もう春ですね。新しい音楽を片手に外に飛び出したいですね。
それではまた来月、こちらのお店でお待ちしております。

bar bossa 林伸次


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■Bar bossa林さんが選曲したコンピレーションアルバムが11/16リリース!

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■タイトル:『Happiness Played In The Bar -バーで聴く幸せ- compiled by bar bossa』
■アーティスト:V.A
■発売日:2016年11月16日
■レーベル: ユニバーサル ミュージック
■品番:UICZ-1646

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【収録曲】
1.Blossom Dearie / It Might As Well Be Spring
2.Bill Evans / Soiree
3.Paul Desmond / Emily
4.Bill Evans Trio / Elegia
5.Quincy Jones and His Orchestra / Dreamsville
6.Gerry Mulligan / Night Lights
7.Vince Guaraldi Trio / Great Pumpkin Waltz
8.Cal Tjader / Just Friends
9.Shirley Scott/Can't Get Over The Bossa Nova
10.Blossom Dearie / Give Him The Ooh-La-La
11.Burt Bacharach / I'll Never Fall In Love Again
12.NICK De CARO and orchestra / I'M GONNA MAKE YOU LOVE ME
13.Blossom Dearie / Sweet Surprise
14.Beach Boys / Caroline No
15.Burt Bacharach / Alfie
16.Milton Nascimento / Catavento
17.Earl Klugh / The April Fools
18.Danilo Perez/Another Autumn


【林 伸次 近著】

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■タイトル:『バーのマスターは「おかわり」をすすめない 飲食店経営がいつだってこんなに楽しい理由』
■著者:林 伸次
■発売日:2016年9月9日
■出版社: DU BOOKS
■金額:¥1,728 単行本

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「このビール、ぬるいんだけど」とお客さまに言われたら、あなたならどう対応しますか?
その都度悩んで、自ら回答を見つけてきた渋谷のバーのマスターの約20年。
楽しく経営を続けられたのには理由がある!

「バーの重たい扉の向こうには、お客さま、店主、お酒......その他たくさんの物語が詰まっています。ぜひ、あなたもその物語に参加してみてください。」
――本文より


「bar bossa」アーカイブ

vol.1 「モニカ・サウマーゾ」 ・vol.2 高木洋介 ・vol.3 「クリスマス・ソングのボサノヴァ」 ・vol.4 柳樂光隆 ・vol.5 「1960年代当時のブラジルのボサノヴァ女性シンガー特集」 ・vol.6 松原繁久 ・vol.7 「1970年代から1980年代までのブラジルのボサノヴァ女性シンガー特集」 ・vol.8 中村ムネユキ ・vol.9 「現代のブラジルのボサノヴァ女性シンガー特集」 ・vol.10 江利川侑介 ・vol.11 「エレンコ・レーベル」 ・vol.12 田仲昌之 ・vol.13 「ルミアール・ヂスコス」 ・vol.14 定成寛 ・vol.15 寺田俊彦 ・vol.16 白尾嘉規 ・vol.17 「畠山美由紀『rain falls』 プロデューサー中島ノブユキ インタビュー」 ・vol.18 山本勇樹 ・vol.19 「ジノンさん ルシッド・フォールについて」 ・vol.20 大場俊輔 ・vol.21 「ブラジル人と演奏しているアメリカのジャズ・ミュージシャン特集」 ・vol.22 武藤サツキ ・vol.23 「Lucid Fall (The Best of)」 ・vol.24 筒井奈々 ・vol.25 「THE PIANO ERA2013」 ・vol.26 山上周平 ・vol.27 ジノン ・vol.28 東野龍一郎 ・vol.29 林伸次 ・vol.30 中村智昭 ・vol.31 齊藤外志雄 ・vol.32 染谷大陽 ・vol.33 稲葉昌太 ・vol.34 小嶋佐和子 ・vol.35 石郷岡学 ・vol.36 原田雅之 ・vol.37 松本研二 ・vol.38 塚田耕司 ・vol.39 岩間洋介 ・vol.40 中村信彦&真理子 ・vol.41 白尾嘉規 ・vol.42 田仲昌之 ・vol.43 山本勇樹 ・vol.44 新川忠 ・vol.45 川嶋繁良 ・vol.46 田村示音 ・vol.47 山崎雄康 ・vol.48 上川大助 ・vol.49 町田和宏 ・vol.50 林下英治 ・vol.51 シュート・アロー ・vol.52 高橋悠 ・vol.53 沼田学 ・vol.54 庄野雄治 ・vol.55 山本のりこ ・vol.56 渡部徹 ・vol.57 小栗誠史 ・vol.58 相澤歩 ・vol.59 土田義周 ・vol.60 榎本善一郎 ・vol.61 町田洋子 ・vol.62 影山敏彦 ・vol.63 花田勝暁 ・vol.64 宮川泰幸 ・vol.65 林伸次 ・vol.66 高原一実


bar bossa information
林 伸次
1969年徳島生まれ。
レコファン(中古レコード店)、バッカーナ&サバス東京(ブラジリアン・レストラン)、
フェアグランド(ショット・バー)を経た後、1997年渋谷にBAR BOSSAをオープンする。
2001年ネット上でBOSSA RECRDSをオープン。
著書に『ボサノヴァ(アノニマスタジオ)』。
選曲CD、CDライナー執筆多数。
連載『カフェ&レストラン(旭屋出版)』。

bar bossa
bar bossa
●東京都渋谷区宇田川町 41-23 第2大久保ビル1F
●TEL/03-5458-4185
●営業時間/月~土
18:00~24:00 bar time
●定休日/日、祝
お店の情報はこちら

bar bossa vol.66:bar bossa

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vol.66 - お客様:高原一実さん(ミュージシャン)
【テーマ:こういう曲が書きたいクロスオーバー】



いらっしゃいませ。
bar bossaへようこそ。

今回はゲストにミュージシャンの高原一実さんをお迎えしました。


林;こんばんは。さて早速ですがお飲物はどうしましょうか。


高原;僕、酒がめっぽう弱いんです。何か軽くて飲みやすいおすすめはありますか?


林;でしたら今はリンゴを低速ジューサーでしぼってカクテルにしているので、それでアルコール低めでお出ししましょうか。


高原;はい。ではそれでお願いします。


林;かしこまりました。さて、お生まれは?


高原;1973年、東京で生まれました。母はビートルズ好き、父はウエスタン映画とフォークが好きなごく普通の団塊の世代でした。


林;お母さん、その当時ビートルズが好きってお洒落ですね。


高原;でしょうか。そして、幼少時の健康診断でドクターが「この子はすごく耳がいい、何か音楽をやらせるといい」と薦めたのだそうです。物心ついたころにはピアノを始めて5歳の頃にはもう曲を書いていました。


林;おお!


高原;ピアノの練習そのものが楽しかった記憶はほとんどありません。辛かった思い出のほうが多かったです。ただ小学校の合唱発表会ではピアノの伴奏をかってでていました。「男の子がピアノ伴奏」というのは珍しくて話題となり、ちょっとだけ誇らしかった記憶があります。


林;それが恥ずかしかったという男子と、誇らしかったという高原さんとの違いがあらわれてますね。初めて買ったレコードは?


高原;初めて買った音源はカセットテープで杉山清貴&オメガトライブでした。小学時代はトップテン・ベストテン世代で、なかでも「ふたりの夏物語」「ルビーの指環」はハマりました。オメガトライブは僕の青春の一枚でしたね。当時から西海岸系~フュージョン・クロスオーバー路線のサウンドにビビッとくるマセガキでした。

ちなみに、なぜカセットテープだったかというと、ちょうどそのころ親にウォークマンを買ってもらったこともあり、出かけるときには常に聴いていたいという思いからでした。

今も出かける時はほぼ必ずラジオか音楽を聴いているので、この頃から全く変わっていません。


林;ああ、ネイティブ・ウォークマン世代なんですね。その後、音楽への思いは変わりましたか?


高原;小学6年の時にクラシックピアノがいよいよ辛くてやめてしまいました。中学時代はピアノよりもドラムのほうが楽しくて、ピアノはほとんど弾いていませんでした。


林;いいですね。


高原;初めてドラムでバンドもやりました。今じゃ笑える話ですがニューウェイブ系~パンク系でした。クラシックピアノの時と違ってバンドはチームプレイになるので、迷惑をかけまいと無我夢中で練習していました。


林;高原さんらしい...


高原;聴くほうはラジオが中心で、この頃に洋楽を聴きはじめました。ヒットチャートが中心でヒューイ・ルイス&ザ・ニュース、プリンス、スティング、デュラン・デュランあたりが印象に残っています。

邦楽はエピック・ソニーの作品ばかり聴いていました。特に大沢誉志幸・渡辺美里が好きで、YOU&Iで全作品レンタルしていました。この頃からもう完全に音楽に関しては雑食になりました。


林;僕、69年生まれで4才上なんですが、ちょうど僕が高校の時と全く同じですね。高校はどうでしたか?


高原;高校に入ったら器楽部という名前のビッグバンドが部活であったんです。ホーンがいっぱいいて演奏に迫力がある。よしここでドラムをまたやろうと思ったら、既に新入生が3人もいて「ドラムはいらないよ」と。

では何なら入れてもらえますか、と尋ねたら「バリトンサックスやらない?楽器は貸すから」となってチャレンジしました。ですがどんなにやっても吹く楽器がダメで早々に挫折。ピアノも新入生がいっぱいいたので、当時誰もいなかったギターに転向して独学ではじめました。ここでコードというものを知りました。


林;ギターがいなかったんですか。なるほど。


高原;ただビッグバンドのギターって、ひたすらコードの4部音符をジャッジャッ♪と弾く地味なパートなんです。地味なプレイにがまんならず(苦笑)、途中からコンボ編成もやりたいぞということでフュージョンのド定番カシオペアやデビッド・サンボーン、ジョン・スコフィールド、リー・リトナーなどをやらせてもらいました。ギターはフュージョンギターキッズらしくヤマハの青いSGギターを使っていました。


林;え、高校から始めてそんなに上手くなったんですね。


高原;ジャズのライブには小遣いと昼食代を浮かしてよく行きました。橋本一子さんのライブでジャズとも現代音楽とも言えないアプローチにものすごい衝撃を受けて、その影響でピアノを再開させました。クラシックはやりたくないけどジャズはちょっと難しすぎる、ということでポピュラーピアノといえばいいのかな、ボサノバ・サンバ・シャンソンなどの基礎やコードワーク、アドリブプレイを学びました。


林;橋本一子をその当時ライブで見てるんですね。さすが東京っ子です。その後は?


高原;高校3年の頃にキング・クリムゾンを聴いて今までに聴いたことのないような進行にびっくり。そこからプログレッシブロックに興味を持ち、プログレ専門のサークルに入りました。まあモテない音楽ばかり(苦笑)。ただ音楽の世界が相当に広がったのは確かで、複雑なコードワークやアウトフレーズ、スケールなどを学ぶことができました。ここで自分の音楽的嗜好が70年代に集中するようになり、フェンダーローズピアノ・ハモンドオルガン・メロトロン・アナログシンセ好きが確立されました。当時プログレを聴いていなかったら今の自分の作曲・アレンジ・コード感覚はないと断言できます。


林;なるほど。プログレ漬けは大きそうですね。


高原;音楽漬けに拍車をかけるように、3年間新星堂の輸入盤専門店・ディスクインでアルバイトとして働きました。世の中はアシッドジャズがブーム、70年代好きな僕はドハマりしまして、プログレと並行して社販で買いまくりました。

アシッドジャズの次はフリーソウル・渋谷系、そしてカフェ・アプレ・ミディのシリーズとブームが続きます。僕もしっかりついていきました。フリーソウルとカフェ・アプレ・ミディのシリーズは今でも僕の曲づくりのベースになっています。


林;あ、やっぱりレコード屋さんで働いているんですね。詳しいけど、知識にこだわりすぎない感じが「レコード屋出身」って感じですね。で、それで大学を卒業するとき、ミュージシャンになろうと思いませんでしたか?


高原;ミュージシャンとして生きるなら退路を断つのではなく仕事をしながらやろうと在学中から決めていました。当時からミュージシャン志望のフリーターとバンドをやっていましたが、みんな仕事が大変そうだったんですよね。ライブ後の打ち上げで飲んでたら「俺明日6時にはもう現場なんだよね」なんてことを言うわけです。こりゃフリーター生活も大変だ、どちらにしても大変ならちゃんと就職はしようと。小椋佳さんみたいな例だってあるんだと。それで30歳まではプロ指向で活動し、30歳までにメジャーになれなければプロ指向はやめようと決めたんです。


林;なるほど。現実的です。


高原;いろんな方とセッションをしたりツアーのサポートをしたりバンドを渡り歩いたりエロゲーの音楽を作ったりしながら、徐々にアイズレー・ブラザーズのような男性ボーカルのバンドをやろうと路線を固め、2000年にオレンジマーマレードというバンドを結成します。


林;おお!


高原;オレンジマーマレードは当時の僕の全精力を傾けたバンドでした。4年間ずっと週1回のリハーサルを継続する真面目なバンドで、テクはなくともライブのアンサンブルには自信がありました。曲は完全にオリジナルラブレスペクトな内容で、当時オリジナルラブの2ちゃんねる板でも何度か似てると書かれていました。ビジュアルをマツザワサトシさん(http://www.salboma.com/)に一任してカッコよくまとめてもらったり、デモテープはのべ100社に送ったりと必死にやったのですが、結果は出ませんでした。あるクラブ系のレーベルに目をかけていただき、作曲家修行をしたこともあったのですがそこでも芽は出ませんでした。

そうこうしているタイミングで左手親指に大けがを負ってしまいまして1ケ月入院。さらにLAMP(http://www.lampweb.jp/)という素晴らしいバンドのアルバム「恋人へ」を聴いてしまい、「キリンジはまだヤス(堀込泰行さん)が自分と同じ年齢だから許せるけど、LAMPのメンバーは自分よりも若くてこの完成度か・・・」と思い、もう日本のメジャーシーンを目指すのは終わりにしようと決断したんです。


林;あ、LAMPがこんなところで... ではオレンジマーマレード、聴いてみましょうか。

ORANGE MARMALADE - Perfect Journey

ORANGE MARMALADE - 車窓

※どちらも僕の曲です


高原;オレンジマーマレードは活動をストップさせましたが、実は僕にはもうひとつ2001年から続けているバンドがありました。それがTrans of Life(https://www.youtube.com/playlist?list=PLjlCkNPG49UUoaE0IIkec2oO7W4QbEmKO)です。

加入当初はリーダーでギターの富樫さんが好きなパット・メセニーやトニーニョ・オルタに影響を受けたブラジリアンフュージョンバンドでした。2004年にハウスDJの瀧澤賢太郎さん、さらに福富幸宏さんに僕らの曲がリミックスされたのをきっかけにハウスミュージックに移行します。そして2006年にDJの工藤さんと出会い、富樫さんと3人で海外での音源リリースを中心に活動するユニットスタイルができあがりました。以降年数作のペースでリリースとライブをしています。3人とも曲を書くのが特徴のユニットです。

残念ながら2015年を最後にリリースがないのですが、また 再開しようと話しているところです。聴いてください。

Trans of Life - Na Mira

Trans of Life - Foi Voce

Trans of Life - Delight Earth

※Delight Earthはギターの富樫作曲、Na MiraとFoi Voceは僕の曲です


林;おお、高原さんのブラジルが前に出ていますね。カッコいい! 再開、期待しております。さて、これみんなに聞いているのですが、これから音楽はどうなると思いますか?


高原;まずリスナー視点で考えてみます。流通方法としてはアナログ・CD・デジタル配信、再生装置についてもいろんな楽しみ方ができました。レコードもよし、真空管アンプもよし、ネットワークハードドライブに保存して呼び出して聴くもよし、YouTubeで聴くもよし。すごくいい時代になったと思います。音楽業界って市場はシュリンクしてますけど、聴くための間口はこれまでになく広がってると実感します。

その一方で録音された音楽とライブの音楽では、聴こえてくる情報量も聴収環境も全く違うものです。気になったアーティストがいらっしゃったら一度は生のライブを見てほしいなと思います。ホントにいいライブってジーンときます。今はカフェなどのお店の一角で演奏する方がすごく増えていますし、お店側も集客・認知拡大手段になるならということで利害関係が一致していますからね。


林;そうですね。


高原;逆に演奏・制作視点で考えてみると、成功の王道がなくなってしまったことが今一番の音楽業界の課題であり変革期だと思っています。

今一番の成功モデルは秋元康さんのAKBモデル、X JAPANやBABYMETAL、Perfumeの海外進出モデルだと思います。でもこれはバンド・ユニットのコンセプトから戦略戦術までのストーリーが明確につくられているからできていることで、普通のミュージシャンでは難しい。そんなわけでみんなもがいていて、宍戸留美さんのようにクラウドファンディングでスポンサーを募る方法(*1)、ジャズトロニックの野崎良太さんのようにB2B市場に活路を見出す方法(*2)などやっているのだと思います。実は、先に海外進出で→逆輸入狙いで国内のB2B市場で回収する戦略は我がTrans of Lifeでも考えていたことですが、獲得できた市場が小さすぎる中で制作を継続することは大変でもがいているところです。

おそらく今後音楽で稼ぎ出すには、海外進出成功→逆輸入モデルでバンド・ユニットのコンセプトから戦略戦術まで作り込んでいくか、内外問わず小口の収入を積み上げていくことになるんだろうと思っています。小口の積み上げはリソース面で限界があり、そうなると音楽以外に他の仕事を持ちつつ、どちらでも人生の充実を見出すパラレルワークモデルが普通になっていくんじゃないでしょうか。

*1;https://motion-gallery.net/projects/runrun25
*2;http://www.huffingtonpost.jp/lien-project-by-the-sazaby-league/the-sazaby-league_02_b_9074224.html


林;なんか高原さん、今日一番、目がキラキラ輝いてますね。音楽ビジネスの話、お好きなんですね。今後はどうされるご予定でしょうか。


高原;今後ですが、僕は一般企業でメディアの事業開発・マーケティングを担当していますので、まずはこの本業キャリアの深堀が第一です。そのかたわら、Trans of Lifeの活動を少しでも前進させつつソロ活動の準備を少しずつ進めたいと思っています。まだインストゥルメンタル主体にするか、弾き語り主体にするか軸が定まっていませんが、マイペースに決めていきたいと思います。

YouTube
https://www.youtube.com/playlist?list=PLjlCkNPG49UUoaE0IIkec2oO7W4QbEmKO

soundcloud
https://soundcloud.com/kazumi-takahara/

note
https://note.mu/kazumi_takahara

OTONA SALONE
https://otonasalone.jp/author/editor-k-t/


林;期待しております。ではみんなが待っている10曲ですが、テーマはどういうものでしょうか?


高原;「こういう曲が書きたいクロスオーバー」、そんな10曲です。結果的に70年代、フェンダーローズピアノを使っている曲に集中しました。


林;お、クロスオーバー! ではいってみましょうか。


01. Toninho Horta - Aquelas Coisas Todas



高原;MPBはボサノバからくるわかりやすいメロディと複雑なコード移動を両立したすばらしい音楽だと思っています。玄人好みなのかもしれませんが。なかでもトニーニョ・オルタのこの曲はハウス界のドン、ルイ・ヴェガがリミックスするなど、ダンスミュージック界隈でもクラシックです。


林;1曲目にふさわしい名曲ですね。


02. Ivan Lins - Essa Mare



高原;イヴァン・リンスはMPB界ではマルコス・ヴァーリ、ジョアン・ドナートと並んで鍵盤で曲を書く作曲家としてすごくレスペクトしています。この曲のコード進行とかもう猟奇的ですね。ライブだとさらにこれを弾き語りしてしまう。神がかってるなと思います。参考にしたくても参考になりません。


林;あ、イヴァン・リンスだとこのアルバムが高原さんなんですね。納得です。


03. Michael Franks - Nightmoves



高原;70年代のクロスオーバーを語る上で、トミー・リピューマを外すわけにはいきません。トミー・リピューマのプロデュース作品はどれも大好きですが、ソロ1作目の1曲目がこんなメロウな曲でいいのかよ!ふつうもうちょっと元気いい曲持ってくるだろ!と衝撃でした。


林;言われてみれば確かにそうですね。でもそれが「衝撃」と受け止めるのが高原さんらしいと言いますか...


04. Quincy Jones - If I Ever Lose This Heaven



高原;70年代メロウとくればレオン・ウェアも外せません。この曲のサビを初めて聴いた時は本当に衝撃でした。-5thコードを連続で持ってくるとは!演奏もオールスターで何度聴いても鳥肌がたちます。クインシー・ジョーンズの70年代のA&M作品はどれも最高で、ストリングスやホーンアレンジの勉強に聴き込みました。


林;この曲、このヴァージョン、もうホント、何度聴いても鳥肌ですよね。もうたまりません。


05. Leroy Hutson - In The Mood



高原;僕がオレンジマーマレードというバンドをやっていた時に一番曲づくりの参考にして、iPodを壊すくらい聴きまくったのがリロイ・ハトソンでした。イントロとサビのオンコードの平行移動だけでご飯2杯いけますね。


林;あ、こういう曲で「ご飯2杯」というのは「作ってる人ならでは」ですね。


06. Santana - Tell Me Are You Tired



高原;「哀愁のヨーロッパ」が収録されているアルバムなんですが、「哀愁のヨーロッパ」のひとつ前の曲がこれです。サンタナってこんなフリーソウルな曲やるんだ!とびっくりでした。トム・コスタのローズピアノソロが文句なしにカッコいい。


林;うわ、ごめんなさい。サンタナ、食わず嫌いでした。カッコいいですね。


07: Casiopea - Reflections Of You



高原;80年のカシオペアのアルバムでキーボードの向谷実さんの作曲。ローズピアノってこう使うべきだよね!というお手本のようなメロウな曲に仕上がっています。カシオペアはDJさんにもっと評価されるべき名曲揃いのアーティストだと思っています。


林;カシオペアでこういう曲を持ってくるのがまたまた高原さんらしいですね。ホント、高原さん、ミスター・メローです。でもカシオペアはDJにもっともっと愛されるべきですね。本当にそう思います。


08: Mackey Feary Band - A Million Stars



高原;ハワイが生んだ松崎しげる(ルックスがそっくりなんです。笑)。この軽快なリズム、ローズピアノの使い方、ストリングスやホーンのアレンジ、ソウルフルなのに頼りないボーカル、全てがツボ。無人島に持って行く3枚のうちの1枚です。


林;ああ、この辺りもお好きそうですね。このアルバム、こんなに良いんですね。今度見かけたら買います。


09: Seawind - He Loves You



高原;無人島に持って行くもう1枚がこれです。これが自分の最も理想とする曲と言い切れます。こういう曲が書きたいのに書けないんですよ。。。


林;おお、この流れだとシーウインドですよね。もう完全に高原さんを把握できました(笑)。


10: Blossom Dearie - Many's The Time



高原;ソロ活動を意識するなかで、歌ものをやるなら、と一番聴きこんでいるのがブロッサム・ディアリーです。メジャーコード基調でポジティブな仕上がり、要所で-5thコード・オンコードを活用して曲の起承転結がすごく考えられている。弾き語りをするなら今の自分の理想型です。無人島に持って行く最後の1枚はブロッサム・ディアリーですね。


林;先日もbar bossaでブロッサム・ディアリーを語っていただきましたが、作ってる側の人にもそういう曲なんですね。良い曲ですよね。


高原;いやあ好きな曲ありすぎて10曲に絞れないですね。キーボーディストとして一番影響受けてるハービー・ハンコックを入れられなかったし、作曲家として大好きなケニー・ランキンやニック・デカロも入れられなかった。。。


林;そうなんです。そういう「これも入れたかった」がこの10曲の魅力なんです。

高原さん、今回はお忙しいところどうもありがとうございました。
今後の音楽活動も期待しております。

お正月気分も終わり、2017年が進み始めましたね。
良い音楽がある人生って本当に素晴らしいですね。
それではまた来月もこちらのお店でお待ちしております。

bar bossa 林伸次


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■Bar bossa林さんが選曲したコンピレーションアルバムが11/16リリース!

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■タイトル:『Happiness Played In The Bar -バーで聴く幸せ- compiled by bar bossa』
■アーティスト:V.A
■発売日:2016年11月16日
■レーベル: ユニバーサル ミュージック
■品番:UICZ-1646

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【収録曲】
1.Blossom Dearie / It Might As Well Be Spring
2.Bill Evans / Soiree
3.Paul Desmond / Emily
4.Bill Evans Trio / Elegia
5.Quincy Jones and His Orchestra / Dreamsville
6.Gerry Mulligan / Night Lights
7.Vince Guaraldi Trio / Great Pumpkin Waltz
8.Cal Tjader / Just Friends
9.Shirley Scott/Can't Get Over The Bossa Nova
10.Blossom Dearie / Give Him The Ooh-La-La
11.Burt Bacharach / I'll Never Fall In Love Again
12.NICK De CARO and orchestra / I'M GONNA MAKE YOU LOVE ME
13.Blossom Dearie / Sweet Surprise
14.Beach Boys / Caroline No
15.Burt Bacharach / Alfie
16.Milton Nascimento / Catavento
17.Earl Klugh / The April Fools
18.Danilo Perez/Another Autumn


【林 伸次 近著】

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■タイトル:『バーのマスターは「おかわり」をすすめない 飲食店経営がいつだってこんなに楽しい理由』
■著者:林 伸次
■発売日:2016年9月9日
■出版社: DU BOOKS
■金額:¥1,728 単行本

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「このビール、ぬるいんだけど」とお客さまに言われたら、あなたならどう対応しますか?
その都度悩んで、自ら回答を見つけてきた渋谷のバーのマスターの約20年。
楽しく経営を続けられたのには理由がある!

「バーの重たい扉の向こうには、お客さま、店主、お酒......その他たくさんの物語が詰まっています。ぜひ、あなたもその物語に参加してみてください。」
――本文より


「bar bossa」アーカイブ

vol.1 「モニカ・サウマーゾ」 ・vol.2 高木洋介 ・vol.3 「クリスマス・ソングのボサノヴァ」 ・vol.4 柳樂光隆 ・vol.5 「1960年代当時のブラジルのボサノヴァ女性シンガー特集」 ・vol.6 松原繁久 ・vol.7 「1970年代から1980年代までのブラジルのボサノヴァ女性シンガー特集」 ・vol.8 中村ムネユキ ・vol.9 「現代のブラジルのボサノヴァ女性シンガー特集」 ・vol.10 江利川侑介 ・vol.11 「エレンコ・レーベル」 ・vol.12 田仲昌之 ・vol.13 「ルミアール・ヂスコス」 ・vol.14 定成寛 ・vol.15 寺田俊彦 ・vol.16 白尾嘉規 ・vol.17 「畠山美由紀『rain falls』 プロデューサー中島ノブユキ インタビュー」 ・vol.18 山本勇樹 ・vol.19 「ジノンさん ルシッド・フォールについて」 ・vol.20 大場俊輔 ・vol.21 「ブラジル人と演奏しているアメリカのジャズ・ミュージシャン特集」 ・vol.22 武藤サツキ ・vol.23 「Lucid Fall (The Best of)」 ・vol.24 筒井奈々 ・vol.25 「THE PIANO ERA2013」 ・vol.26 山上周平 ・vol.27 ジノン ・vol.28 東野龍一郎 ・vol.29 林伸次 ・vol.30 中村智昭 ・vol.31 齊藤外志雄 ・vol.32 染谷大陽 ・vol.33 稲葉昌太 ・vol.34 小嶋佐和子 ・vol.35 石郷岡学 ・vol.36 原田雅之 ・vol.37 松本研二 ・vol.38 塚田耕司 ・vol.39 岩間洋介 ・vol.40 中村信彦&真理子 ・vol.41 白尾嘉規 ・vol.42 田仲昌之 ・vol.43 山本勇樹 ・vol.44 新川忠 ・vol.45 川嶋繁良 ・vol.46 田村示音 ・vol.47 山崎雄康 ・vol.48 上川大助 ・vol.49 町田和宏 ・vol.50 林下英治 ・vol.51 シュート・アロー ・vol.52 高橋悠 ・vol.53 沼田学 ・vol.54 庄野雄治 ・vol.55 山本のりこ ・vol.56 渡部徹 ・vol.57 小栗誠史 ・vol.58 相澤歩 ・vol.59 土田義周 ・vol.60 榎本善一郎 ・vol.61 町田洋子 ・vol.62 影山敏彦 ・vol.63 花田勝暁 ・vol.64 宮川泰幸 ・vol.65 林伸次


bar bossa information
林 伸次
1969年徳島生まれ。
レコファン(中古レコード店)、バッカーナ&サバス東京(ブラジリアン・レストラン)、
フェアグランド(ショット・バー)を経た後、1997年渋谷にBAR BOSSAをオープンする。
2001年ネット上でBOSSA RECRDSをオープン。
著書に『ボサノヴァ(アノニマスタジオ)』。
選曲CD、CDライナー執筆多数。
連載『カフェ&レストラン(旭屋出版)』。

bar bossa
bar bossa
●東京都渋谷区宇田川町 41-23 第2大久保ビル1F
●TEL/03-5458-4185
●営業時間/月~土
18:00~24:00 bar time
●定休日/日、祝
お店の情報はこちら

bar bossa vol.65:bar bossa

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vol.65 - お客様:林伸次さん(bar bossa)


いらっしゃいませ。
bar bossaへようこそ。

あけましておめでとうございます。
今回は、2017年第一回目ということで、渋谷 bar bossaの林伸次さんをお迎えいたしました。


林A;こんばんは。早速ですが、お飲み物はどうしましょうか?


林B;では、シャンパーニュをグラスでお願いします。


林A;2016年を振り返りたいのですが、印象に残ったアルバムはありましたか?


林B;山本のりこさんの『Trem das Cores』ですね。ボサノヴァってまだまだ豊かな表現が出来るんだなあって思いました。


山本のりこ - Trem das Cores - Noriko Yamamoto



トレン・ダス・コーリス500.jpg

■タイトル:『Trem das Cores - 色彩の列車』
■アーティスト:山本のりこ
■発売日:2016年2月1日
■レーベル: office calor

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林A;良いアルバムですよね。ブラジルで何か良いアルバムはありましたか?


林B;アンドレ・メマーリとアントニオ・ロウレイロの『メマーリロウレイロ・デュオ』です。


林A;林さん、その二人、聞くんですね。


林B;いやあ、このアルバムはすごいですね。こちらで聞けるのでちょっと聞いてみてください。
http://www.nrt.jp/andre_mehmari_antonio_loureiro/release_information_54.html


林A;ブラジルで他には何かありましたか?


林B;ジョアン・ドナートの新譜がすごいですね。


João Donato - Donato Elétrico [2016]



林A;ファンク・マスターすごいですね。これはビシーガ70というサンパウロのアフロビート・トロピカル・バンドが全面参加ということですね。


林B;はい。でも、やっぱりこれはドナートが大爆発していますね。


林A;2016年は他にはどういうのを聴いてましたか?


林B;ブロッサム・ディアリー!


林A;なぜ、今頃になって急にブロッサム・ディアリーなんでしょうか。


林B;なんとなく、中古レコード屋さんでアルバムを買って、突然わかったと言いますか、「ああ、ブロッサムって年齢を重ねてからじゃなきゃわからないんだな」って気づいたんです。


林A;年をとるとわかる音楽ってありますよね。


林B;はい。もうブロッサム・ディアリーばかり買ってました。


林A;おすすめのアルバムはありますか?


林B;うーん、どれもが好きなのですが... ブロッサムって1966年にロンドンに行って、当時のロンドンの空気にふれて「あ、こういうジャズもありなんだ」っていうターニングポイントのようなものがあったと思うんですね。で、1970年に『That's Just the Way I Want to Be』というズバリなタイトルのアルバムを録音しているんです。これ、ブロッサム、46歳なんです。僕が今、47歳なんで、ブロッサム、すごいなあ、自由だなあってすごく思ってて。こういう音楽なんです。聞いてみてください。


Blossom Dearie - Yesterday When I Was Young



林A;なるほど。林さんの熱い想いはわかりました。ブロッサムの本を書きたいという噂を聞きましたが。


林B;はい。色々と取材をして、ブロッサムの本を書いてみたいなって思ってます。


林A;林さんは韓国のインディーズ音楽も好きですが、何かありましたか?


林B;K-POPでも良いですか?


林A;インディーズじゃないんですね。良いですよ。


林B;TWICEという女性アイドルグループなんですけど、日本人が3人、台湾人が1人、加入しているんです。


林A;もちろん韓国語で歌ってるんですよね。


林B;はい。これが個人的にすごくはまりまして。こういう曲なんですけど。


TWICE(트와이스) "TT" M/V



林A;8千万回も再生されてるんですね。でもこういうの林さん、好きですよね。さて、林さんは2016年にコンピCDを出しましたが。


林B;あ、やっとその話ですね。そうなんです。『バーのマスターは「おかわり」をすすめない』という本を出しまして、その本のサントラというスタイルのCDを出しました。


林A;このCD、何かコンセプトのようなものはあったのでしょうか?


林B;はい。これ、ユニバーサル・ミュージックからなんですね。ユニバーサルって何でもあるんです。もうどんな選曲でも出来るんです。だから、ただただひたすら自分が好きな音楽、バーでこんな音楽がかかってたらすごくそのバーに通いたいなって感じの選曲にしました。


林A;なるほど。吉祥寺のカフェ・モイの岩間さんがこちらのブログ(http://moicafe.hatenablog.com/entry/2016/11/20/002445)でも書いてましたが、シンガーズ・アンリミテッドが収録されていませんね。


林B;そうなんです。今回のCDで一番残念だったのはシンガーズ・アンリミテッドが入れられなかったことなんです。MPSというレーベルがユニバーサルからビクターに移っちゃって。一曲目はこれって決めていたのですが...


Robert Farnon & The Singers Unlimited - I Loved You (Claus Ogerman / text: Alexander Pushkin)



林A;シンガーズ・アンリミテッドがクラウス・オガーマンの曲を歌ってるんですね。


林B;はい。2016年はクラウス・オガーマンが亡くなったので、その意味もこめて。


林A;クラウス・オガーマンが亡くなりましたよね。


林B;はい。アル・シュミットがFBで書いてましたね。クラウス・オガーマンの研究本や特集なんかが日本でも出たらいいなと思っているのですが。


林A;このCD、他にはどういう意図がありましたか?


林B;今回はディレクターの方から「ボサノヴァはなしで」という言葉がありまして、じゃあ自分が10代の頃からずっと好きだった、バカラックとかマンシーニとかオガーマンの曲で埋め尽くそうかなと思いました。


林A;ニック・デカロとかビーチボーイズも収録されていますが。


林B;はい。ジャズだけにはしたくなくて、実はこの曲を収録しようと思ってたんです。で、他にもミニー・リパートンとかスティービー・ワンダーとかも入れようかなと思ってたのですが、この曲も許可がおりなくて。


If I Ever Lose This Heaven - Quincy Jones ft. Minnie Riperton, Leon Ware, & Al Jerrau



林A;なるほど。これが収録されてたらずいぶんCDのイメージが変わってましたね。


林B;はい。でも、今となっては今出てるCDですごく「自分らしくて良かったかな」って思っています。


林A;CDは売れてるんですか?


林B;一応、アマゾンのジャズ・チャートで13位までいったことがありました。


林A;おお、すごいですね。


林B;でも、みなさん買ってください。


林A;こういう林さんが選曲したCDが売れると、林さんのところに印税みたいなのは入ってくるんですか?


林B;それ、みんなに聞かれるのですが、こういう選曲CDはとっぱらいです。僕に追加のお金は入ってきません。でも、CDが売れないと言われている今、もっと売れたらいいなって思ってまして。


林A;なるほど。そういうわけですか。みなさん、是非、買ってくださいね。


林B;あ、プレゼントとかにも良いかもです(笑)。


今回は林さん、お忙しいところどうもありがとうございました。
2017年も素敵な音楽に出会えると良いですね。
それではまた来月もこちらのお店でお待ちしております。

bar bossa 林伸次


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■Bar bossa林さんが選曲したコンピレーションアルバムが11/16リリース!

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■タイトル:『Happiness Played In The Bar -バーで聴く幸せ- compiled by bar bossa』
■アーティスト:V.A
■発売日:2016年11月16日
■レーベル: ユニバーサル ミュージック
■品番:UICZ-1646

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【収録曲】
1.Blossom Dearie / It Might As Well Be Spring
2.Bill Evans / Soiree
3.Paul Desmond / Emily
4.Bill Evans Trio / Elegia
5.Quincy Jones and His Orchestra / Dreamsville
6.Gerry Mulligan / Night Lights
7.Vince Guaraldi Trio / Great Pumpkin Waltz
8.Cal Tjader / Just Friends
9.Shirley Scott/Can't Get Over The Bossa Nova
10.Blossom Dearie / Give Him The Ooh-La-La
11.Burt Bacharach / I'll Never Fall In Love Again
12.NICK De CARO and orchestra / I'M GONNA MAKE YOU LOVE ME
13.Blossom Dearie / Sweet Surprise
14.Beach Boys / Caroline No
15.Burt Bacharach / Alfie
16.Milton Nascimento / Catavento
17.Earl Klugh / The April Fools
18.Danilo Perez/Another Autumn


【林 伸次 近著】

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■タイトル:『バーのマスターは「おかわり」をすすめない 飲食店経営がいつだってこんなに楽しい理由』
■著者:林 伸次
■発売日:2016年9月9日
■出版社: DU BOOKS
■金額:¥1,728 単行本

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「このビール、ぬるいんだけど」とお客さまに言われたら、あなたならどう対応しますか?
その都度悩んで、自ら回答を見つけてきた渋谷のバーのマスターの約20年。
楽しく経営を続けられたのには理由がある!

「バーの重たい扉の向こうには、お客さま、店主、お酒......その他たくさんの物語が詰まっています。ぜひ、あなたもその物語に参加してみてください。」
――本文より


「bar bossa」アーカイブ

vol.1 「モニカ・サウマーゾ」 ・vol.2 高木洋介 ・vol.3 「クリスマス・ソングのボサノヴァ」 ・vol.4 柳樂光隆 ・vol.5 「1960年代当時のブラジルのボサノヴァ女性シンガー特集」 ・vol.6 松原繁久 ・vol.7 「1970年代から1980年代までのブラジルのボサノヴァ女性シンガー特集」 ・vol.8 中村ムネユキ ・vol.9 「現代のブラジルのボサノヴァ女性シンガー特集」 ・vol.10 江利川侑介 ・vol.11 「エレンコ・レーベル」 ・vol.12 田仲昌之 ・vol.13 「ルミアール・ヂスコス」 ・vol.14 定成寛 ・vol.15 寺田俊彦 ・vol.16 白尾嘉規 ・vol.17 「畠山美由紀『rain falls』 プロデューサー中島ノブユキ インタビュー」 ・vol.18 山本勇樹 ・vol.19 「ジノンさん ルシッド・フォールについて」 ・vol.20 大場俊輔 ・vol.21 「ブラジル人と演奏しているアメリカのジャズ・ミュージシャン特集」 ・vol.22 武藤サツキ ・vol.23 「Lucid Fall (The Best of)」 ・vol.24 筒井奈々 ・vol.25 「THE PIANO ERA2013」 ・vol.26 山上周平 ・vol.27 ジノン ・vol.28 東野龍一郎 ・vol.29 林伸次 ・vol.30 中村智昭 ・vol.31 齊藤外志雄 ・vol.32 染谷大陽 ・vol.33 稲葉昌太 ・vol.34 小嶋佐和子 ・vol.35 石郷岡学 ・vol.36 原田雅之 ・vol.37 松本研二 ・vol.38 塚田耕司 ・vol.39 岩間洋介 ・vol.40 中村信彦&真理子 ・vol.41 白尾嘉規 ・vol.42 田仲昌之 ・vol.43 山本勇樹 ・vol.44 新川忠 ・vol.45 川嶋繁良 ・vol.46 田村示音 ・vol.47 山崎雄康 ・vol.48 上川大助 ・vol.49 町田和宏 ・vol.50 林下英治 ・vol.51 シュート・アロー ・vol.52 高橋悠 ・vol.53 沼田学 ・vol.54 庄野雄治 ・vol.55 山本のりこ ・vol.56 渡部徹 ・vol.57 小栗誠史 ・vol.58 相澤歩 ・vol.59 土田義周 ・vol.60 榎本善一郎 ・vol.61 町田洋子 ・vol.62 影山敏彦 ・vol.63 花田勝暁 ・vol.64 宮川泰幸


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林 伸次
1969年徳島生まれ。
レコファン(中古レコード店)、バッカーナ&サバス東京(ブラジリアン・レストラン)、
フェアグランド(ショット・バー)を経た後、1997年渋谷にBAR BOSSAをオープンする。
2001年ネット上でBOSSA RECRDSをオープン。
著書に『ボサノヴァ(アノニマスタジオ)』。
選曲CD、CDライナー執筆多数。
連載『カフェ&レストラン(旭屋出版)』。

bar bossa
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●東京都渋谷区宇田川町 41-23 第2大久保ビル1F
●TEL/03-5458-4185
●営業時間/月~土
18:00~24:00 bar time
●定休日/日、祝
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bar bossa vol.64:bar bossa

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vol.64 - お客様:宮川泰幸さん(ヴィヴァン)
【テーマ:やっぱり美メロが好き】



いらっしゃいませ。
bar bossaへようこそ。

今月はゲストに、徳島のワインビストロ、ヴィヴァンの宮川泰幸さんをお迎えしました。


林;こんばんは。早速ですが、お飲物はどうされますか?


宮川;カイピリーニャをお願いします。


林;今日は徳島の名産スダチを使ったスダチーニャがありますが。


宮川;(笑)じゃあ、それで...


林;お待たせしました。ではお生まれはどちらだったんでしょうか?


宮川;1975年、四国の徳島の生まれです。徳島市の隣町のいわゆるベッドタウン的なところで育ちました。


林;隣町のベッドタウン的って、ええと、藍住町ですよね。実は僕も同じ徳島県藍住町出身なので、ここはちゃんと言っておかないとと思いまして。では、音楽のことを聞かせてください。


宮川;音楽的には昭和のごく普通な家庭でしたので、両親から受けた影響などは特にありませんでした。両親ともに聞くのは演歌か歌謡曲で、幼少の頃の音楽の記憶と言えば内藤国雄のおゆき位ですね(笑)


林;ご両親が藍住町で老舗の飲食店を経営されていたんですよね。最初のレコードは?


宮川;最初のレコードは買ってもらったのは恐らくタイムボカンシリーズの主題歌だったと思います。自分でおこずかいを貯めて買ったのは中森明菜のスローモーションですね。近所に「あいずみレコード」というレコード屋さんがあって、中学生くらいまではほとんどそこで買ってましたね。レコードが中心だったころは色々と試聴させてもらってました。


林;僕もあいずみレコード、通いました。新品のレコード店なのに試聴させてもらえるんですよね。僕も色々と試聴して買いました。その後は?


宮川;中学・高校時代はぼくらの頃はとにかくバンドブームでしたね。中2位になるとギター始めたりする友達もいましたが、いかんせん僕は音感というものが絶望的にないのでそちらの畑には全く手が出せませんでした。とは言えいわゆる「厨二」ですので、「楽器は弾けないけど、お前らが知らない音楽知ってるぜ」という曲がった方向に進んでいきます。

しかしネットの発達していない時代ですので情報源は限られてます。好きなアーティストのアルバムのライナーノーツに出てくるその人が好きだったり影響を受けた人達のを聴いてみたり、FMのトップテン(邦洋)番組を聴いててパーソナリティーが話すランクに入っていないミュージシャンのアルバムを買ったり。今振り返るとめんど臭い奴だなあと我ながら思います。


林;僕が高校の頃にちょうどバンドブームが始まったのですが、6才下の宮川さんの時期もバンドブームは続いてたんですね。その後はどうされたんですか?


宮川;高校卒業後は地元の料理の専門学校に入って、その後東京のレストランに就職しました。


林;学校は地元なのに、東京のレストランに就職したんですか。それはかなり思い切った展開でしたね。お店はどうでしたか?


宮川;そこは日本でも有数の厳しいお店だったので、早朝から深夜まで働きっぱなしでした。
最初の2年間は家にテレビも電話も無かったので、家に帰って聴く音楽と録音していたアヴァンティのラジオで気を休めてましたね。


林;アヴァンティ、良かったですよねえ。あの、実は宮川さん、このJJAZZのブログ、アヴァンティを意識してるんです。


宮川;え、そうだったんですか? 


林;はい。今、それで宮川さんがゲストですから。さて、東京はどうでしたか?


宮川;でも田舎から出て来て初めて行ったタワレコやHMVは衝撃的に楽しかったですね。そして自分しか知らないと思ってた音楽がフツーにある事でようやっと厨二から卒業出来たと思います。

今は地元でワインビストロをしていますが、強く影響を受けたのは原宿のパレフランスにあった時のオー・バカナルですね。ブーランジェリーとカフェ、ビストロのどれもが素晴らしく、常にドキドキする何かがあったお店です。その頃は若く、当然お金も無かったのですが、友人とカフェに行ってサラダ・ニソワーズにステック・フリット、カラフェのワインだけですごく楽しかったですね。そこで得た「楽しく食べる」と言うことがお店を開く原点だと思います。


林;あのお店は本当に良いお店でしたよね。今、僕たちが気軽にフレンチを楽しめるのも、あのお店の影響って大きいような気がします。さて、東京ではお店をやらずに徳島県の、それもまさかの藍住町でやろうと思ったのはどうしてでしょうか?


宮川;本当は東京で5坪位のワインと惣菜のお店をするつもりでした。しかし震災の後に街が真っ暗になった時、「地元でこんな事があった時、灯りになるお店になりたい」と思いまして。(この言い方はちょっとカッコつけすぎですが)

震災以降急速にヴァンナチュール界の方々と知り合う機会が増えたんですね。まあこれは「街暗い!みんなが飲まないなら俺が飲む!」という訳のわからない決意のお陰だったんですが。

その中で僕達が扱うようなワインをもっと地方でも飲んでもらいたい。そんなわけで地元でお店をオープンするに至りました。


林;なるほど。そういう経緯だったんですね。


宮川;お店は実家の一部を改装してスタートしました。夜の20時にもなれば周りが暗くなるようなところでワインを売ろうなんて我ながら無茶だなあと思います。林さんがよく仰る「お店は場所」に照らし合わせると0点です。でもこれは逆に自由に出来るかなあと思ってやってます。

ヴァンナチュールにも「流行りモノ」があって、「もうあれ飲んだ?」って会話がそこかしこであるんです。それがある時期から嫌になって、自分が思う楽しんでもらえるワインをお出しするには割と良い環境だと思います。


林;なるほど。逆に自由に出来るんですね。でも、お店、流行っているって噂、聞いてますよ。


宮川;とは言え難しさも当然あります。売り上げも安定しませんし、ワインのお店なのにご予約4名さまでお車4台で来店されると正直へこみます。「まあこんな事もあるか」、と「これは譲れない」のバランスをうまくとっていかないと続けるのは難しいかもしれませんね。これは僕自身の課題でもあります。


林;うーん、車社会なので、お酒を飲んでもらうのって本当に難しいですね。さて、これ、みんなに聞いているのですが、これからの音楽はどうなると思いますか?


宮川;これからの音楽。難しいですね。でも僕自身凄く好きなアーティスト以外はもうCD買わずに配信で済ましてます。音楽を聴くのもアンプ+レコード→コンポやラジカセ→配信とどんどんライトな感じになってますが、いつかまたクラシックな聴き方が流行ることもあるんじゃないでしょうか。あとはライブでしょうか。先日カエターノ・ヴェローゾが来日公演してましたが、僕のSNSはカエターノ一色でした。「音楽を体感する」機会がもっと増えていくと楽しいですね。


林;そうですね。音楽を体感する機会が増えていくと良いですね。さて、今後はどうするつもりでしょうか?


宮川;これからしばらくは自分のお店でヴァンナチュールを楽しんでもらうことに注力します。
それからワインや惣菜を買って帰れるようにして、ご家庭の食卓にも普通にワインがあるような街にしたいですね。あれ? これって街づくりでしょうか。でも楽しく食べるって本当に素敵な事だと思います。


林;良いですねえ。


宮川;あと以前林さんに「宮川さんのお店はお嫁さんもらってその子にサーヴィス担当してもらって完成です!」と言われたので完成できるよう頑張ります(笑)


林;すいません。しつこく言い過ぎですよね。今回もこれにゲスト出演して「お嫁さん募集しましょう」っていうのがメインでしたしね。というわけで、宮川さんのお店で可愛い笑顔で「いらっしゃいませ」を言いたい貴女は徳島へ急げです。

さて、みんなが待っている選曲にうつりましょうか。


01. 中森明菜「ミ・アモーレ」

宮川;初めて自分で買ったレコードが明菜ちゃんだったと言うこともあり、小学生時代はおこずかいの許す限り買ってました。サビ前のセクシーさは小学生には刺激強め。この頃確か21歳。オトナ過ぎる。。。


林;21歳なんですね。確かにこんな21歳いないですね。僕実は、宮川さんと女性の好み、結構かぶるといつも思ってます...


02. 岡村靖幸「SUPER GIRL」

宮川;僕の厨二はこの人から。バンドキッズの対極をいくこのダサカッコ良さ。しかし当時は単純にカッコいいと思ってました。あのエロい感じもたまりません。同世代での厨二病のアイドルNo. 1。


林;僕もすごく好きでした。あの、宮川さん、多少、「岡村靖幸的な要素」あると思いますよ...。


03. ビル・エヴァンス「枯葉」

宮川;演歌好きの父が唯一聴いていた洋楽がフランク・シナトラでその中でもお気に入りが枯葉。それが耳に残っていたのか、初めて買ったジャズアルバムがこの曲が収録されている「PORTRAIT IN JAZZ」。絶望的に音感のない僕ですが、ビル・エヴァンスのピアノはエヴァンスのものだと分かるくらい好き。


林;お父さん、シナトラ持ってたんですか。羨ましいですね。うちにはジャズなんて1枚もなかったですよ。


04. モンドグロッソ「Dazzling」

宮川;カシオペアの名曲のカバー。
「人が知らない音楽を」の頃に聴いていたモンドグロッソ。しかし実はみんな知っていたという。。。大沢さんのソロプロジェクト的なものよりも初期のバンドスタイルが好きだったりします。桜丘のクラブで大沢さんがDJしてた夜は同僚と夜通し踊ったのは遠い昔。


林;お、モンドグロッソ、お好きなんですね。大沢伸一さんのDJも当時、体験してるんですか。すごくバランスが良い人ですよね。


05. チェット・ベイカー「Let's get lost」

宮川;専門学校時代にフランス語学校に通ってまして。そこで知り合ったお姉さまにジャズバーに連れて行ってもらった時に彼女がかけてもらったのがこの曲。以来曲名とも合わさって僕にとって最もロマンティックな1曲。


林;あ、実は僕もチェット・ベイカーに関しては妻が大ファンでして、妻にいろんなレコードを教えてもらいました。女性に教えてもらうチェット・ベイカー繋がりですね。いやあ、でもカッコいいです。


06. 小沢健二「天気読み」

宮川;岡村靖幸と双璧をなす青春時代のアーティスト。
王子様になる前のオザケン。フリッパーズギター解散後、「らしい」アルバムを作った小山田圭吾とは対極のメロディと歌詞。心のベストテン第1位はブギーバックではなくこちら。


林;宮川さんの世代ってオザケンに本当に惚れ込んでいる男性多いですよね。いやあ、でも宮川さんも好きそうですね。


07: フレッド・アステア 「night & day」

宮川;小学生時代からラジオっ子だったんですが、高校生の頃よく聴いていたのが土曜日夕方5時からのアヴァンティ。そのおしゃれなトークや音楽や構成にいつもドキドキしてました。その中で粋なオトコとして出てくるスターでハマったのがアステア。もう単純にカッコいい!


林;アヴァンティ、ほんと良かったですよね。ちなみにうちの場合、うちの娘も好きで、麻布十番の祭りにアヴァンティが出店するっていうので、わざわざ家族で行きました。


08:ディ アンジェロ 「Brown Sugar」

宮川;R&B系のアルバムで最も聴いたのが恐らくこれ。横浜のお店で働いていた時が最も忙しい時期で、激務の後四ツ谷まで帰る電車の中で常に聴いてました。抑えたリズムとセクシーな声が疲れすぎて興奮してる気を沈めてくれてました。


林;ディ・アンジェロも宮川さん世代の男性のアイドルですね。カッコいいですねえ。


09: 山下達郎 「Funky Flushin'」

宮川;学生時代も聴いたりアルバム買ったりしてましたが、「歌の上手いおじさん」位の印象でした。それが一変したのがアヒルストアの齊藤さんに「アヒルのiPod」をもらって聴いたこの大阪フェスティバルホールでのライブバージョン。なんてすごいメロディメイカー!
以来僕のお店では遅い時間になるとほぼ達郎をかけます。


林;あ、そう言えば宮川さん、一番最初にbar bossaに来店していただいたのってアヒルの齊藤さんと一緒でしたね。アヒルのiPodにこれが入ってたんですか。飲食業界で山下達郎好き多いですね。もちろん僕も大好きです。


10: カルロス・アギーレ&キケ・シネシ 「A Beto」

宮川;ボッサの影響で聴き始めた2人。奏でる音の美しさはもちろん素晴らしいですが、アルバム「Live In Sense Of Quiet」でのそれは涙が出るほど。寒い冬の夜、お客さんもほとんど帰られて静かになった店内で聴きたいです。


林;これ、ほんと素晴らしいですよね。これ企画した成田さん読んでるかな。成田さ~ん! こうやって音楽は広がってますよ~!


宮川さん、お忙しいところどうもありがとうございました。
こんなキャラクターの愛すべき宮川さんのところに嫁ぎたいという女性の方、徳島のヴィヴァンに是非、行ってみてください。もちろん女性じゃなくても、すごく良いお店ですので、近くにお住まいの方、あるいは旅行で四国方面に行かれる方、是非、お立ち寄りくださいね。


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いよいよ本格的な冬がやってきましたね。
今年はどんな音楽を聴きましたか? どんな人と一緒に音楽を聴きましたか? 
それではまた来月もこちらのお店でお待ちしております。

bar bossa 林伸次


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■Bar bossa林さんが選曲したコンピレーションアルバムが11/16リリース!

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■タイトル:『Happiness Played In The Bar -バーで聴く幸せ- compiled by bar bossa』
■アーティスト:V.A
■発売日:2016年11月16日
■レーベル: ユニバーサル ミュージック
■品番:UICZ-1646

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【収録曲】
1.Blossom Dearie / It Might As Well Be Spring
2.Bill Evans / Soiree
3.Paul Desmond / Emily
4.Bill Evans Trio / Elegia
5.Quincy Jones and His Orchestra / Dreamsville
6.Gerry Mulligan / Night Lights
7.Vince Guaraldi Trio / Great Pumpkin Waltz
8.Cal Tjader / Just Friends
9.Shirley Scott/Can't Get Over The Bossa Nova
10.Blossom Dearie / Give Him The Ooh-La-La
11.Burt Bacharach / I'll Never Fall In Love Again
12.NICK De CARO and orchestra / I'M GONNA MAKE YOU LOVE ME
13.Blossom Dearie / Sweet Surprise
14.Beach Boys / Caroline No
15.Burt Bacharach / Alfie
16.Milton Nascimento / Catavento
17.Earl Klugh / The April Fools
18.Danilo Perez/Another Autumn


【林 伸次 近著】

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■タイトル:『バーのマスターは「おかわり」をすすめない 飲食店経営がいつだってこんなに楽しい理由』
■著者:林 伸次
■発売日:2016年9月9日
■出版社: DU BOOKS
■金額:¥1,728 単行本

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「このビール、ぬるいんだけど」とお客さまに言われたら、あなたならどう対応しますか?
その都度悩んで、自ら回答を見つけてきた渋谷のバーのマスターの約20年。
楽しく経営を続けられたのには理由がある!

「バーの重たい扉の向こうには、お客さま、店主、お酒......その他たくさんの物語が詰まっています。ぜひ、あなたもその物語に参加してみてください。」
――本文より


「bar bossa」アーカイブ

vol.1 「モニカ・サウマーゾ」 ・vol.2 高木洋介 ・vol.3 「クリスマス・ソングのボサノヴァ」 ・vol.4 柳樂光隆 ・vol.5 「1960年代当時のブラジルのボサノヴァ女性シンガー特集」 ・vol.6 松原繁久 ・vol.7 「1970年代から1980年代までのブラジルのボサノヴァ女性シンガー特集」 ・vol.8 中村ムネユキ ・vol.9 「現代のブラジルのボサノヴァ女性シンガー特集」 ・vol.10 江利川侑介 ・vol.11 「エレンコ・レーベル」 ・vol.12 田仲昌之 ・vol.13 「ルミアール・ヂスコス」 ・vol.14 定成寛 ・vol.15 寺田俊彦 ・vol.16 白尾嘉規 ・vol.17 「畠山美由紀『rain falls』 プロデューサー中島ノブユキ インタビュー」 ・vol.18 山本勇樹 ・vol.19 「ジノンさん ルシッド・フォールについて」 ・vol.20 大場俊輔 ・vol.21 「ブラジル人と演奏しているアメリカのジャズ・ミュージシャン特集」 ・vol.22 武藤サツキ ・vol.23 「Lucid Fall (The Best of)」 ・vol.24 筒井奈々 ・vol.25 「THE PIANO ERA2013」 ・vol.26 山上周平 ・vol.27 ジノン ・vol.28 東野龍一郎 ・vol.29 林伸次 ・vol.30 中村智昭 ・vol.31 齊藤外志雄 ・vol.32 染谷大陽 ・vol.33 稲葉昌太 ・vol.34 小嶋佐和子 ・vol.35 石郷岡学 ・vol.36 原田雅之 ・vol.37 松本研二 ・vol.38 塚田耕司 ・vol.39 岩間洋介 ・vol.40 中村信彦&真理子 ・vol.41 白尾嘉規 ・vol.42 田仲昌之 ・vol.43 山本勇樹 ・vol.44 新川忠 ・vol.45 川嶋繁良 ・vol.46 田村示音 ・vol.47 山崎雄康 ・vol.48 上川大助 ・vol.49 町田和宏 ・vol.50 林下英治 ・vol.51 シュート・アロー ・vol.52 高橋悠 ・vol.53 沼田学 ・vol.54 庄野雄治 ・vol.55 山本のりこ ・vol.56 渡部徹 ・vol.57 小栗誠史 ・vol.58 相澤歩 ・vol.59 土田義周 ・vol.60 榎本善一郎 ・vol.61 町田洋子 ・vol.62 影山敏彦 ・vol.63 花田勝暁


bar bossa information
林 伸次
1969年徳島生まれ。
レコファン(中古レコード店)、バッカーナ&サバス東京(ブラジリアン・レストラン)、
フェアグランド(ショット・バー)を経た後、1997年渋谷にBAR BOSSAをオープンする。
2001年ネット上でBOSSA RECRDSをオープン。
著書に『ボサノヴァ(アノニマスタジオ)』。
選曲CD、CDライナー執筆多数。
連載『カフェ&レストラン(旭屋出版)』。

bar bossa
bar bossa
●東京都渋谷区宇田川町 41-23 第2大久保ビル1F
●TEL/03-5458-4185
●営業時間/月~土
18:00~24:00 bar time
●定休日/日、祝
お店の情報はこちら

bar bossa vol.63:bar bossa

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vol.63 - お客様:花田勝暁さん(LATINA)


【テーマ:前向きに生きようと思えた個人的な10曲】



いらっしゃいませ。
bar bossaへようこそ。

今月はLATINAの編集長、花田勝暁さんをゲストに向かえました。


林;こんばんは。まずお飲物はどうしましょうか?


花田;季節のフルーツのカクテルをお願いできますか。


林;かしこまりました。では今は梨の新高があるのでそれにしますね。


花田;お願いします。


林;それでは早速ですがお生まれと小さい頃の簡単な音楽環境みたいなものを教えてもらえますか。


花田;青森県の五所川原市というところで、1982年に生まれました。姉が2人いるのですが、姉たちが習っていたので、小学校に上がったくらいからピアノを習っていました。近所にピアノ教室をやっている先生がいたんですが、習い始める時に約束してもらったのは、発表会には出なくていいよねってことでした。もうその頃にはすでに人前に出るのが嫌だったんですね。性格って変わらないですね。


林;(笑)初めて買ったCDは何ですか?


花田;父がCDコンポを買ってきたので、自分でCDを買おうと思って初めてお小遣いで買ったのは、ウッチャンナンチャンの番組で結成されたユニットのシングルCDでした。小学校3年生か4年生の頃です。あんまり発展しない話で申し訳ないくらいですが。


林;確かにうまくリアクションが返せない選択ですね。他はどういうのを聴いてましたか?


花田;長女とは5歳離れているんですが、長女は音楽が好きで、長女の聴いているものを一緒に聴いていました。最初はヒット・チャートのポップスであまり覚えていないですが、僕が小学校高学年の時に、長女が小沢健二を中心に渋谷系にはまりだして、そこからは僕ものめり込んで音楽を聴くようになりました。渋谷系のアーティストのインタビューで海外のアーティストの名前がよく出てくるので、同時代の洋楽を聴くようになりました。小6の時に最初に買った洋楽雑誌は、今でも手元にあります。


林;なるほど。お姉さんが77年生まれということはちょうど渋谷系ど真ん中ですね。花田さん、ちょっと趣味が年齢より上だなあと思っていたら、そういう経緯があるんですね。中学に入ってどうなりましたか?


花田;中学校に上がったくらいに、ピアノ教室をやめて、ギター教室に通って、ギターを習い始めました。ギターを弾くというのでバンドに誘われたりもしましたが、当時、ディスコガイド本片手に、古い洋楽名盤を取り寄せて聴くという中学生で、やりたい曲が違うので、結局バンドをやることはありませんでした。それは高校生になってもそうでした。でも、宅録には興味があって、カセットのMTRとか録音できるMDプレイヤーを買って、録音したりはしていました。


林;あ、ピアノ以外にギターも習ったんですね。


花田;中学生の時にクロスビートとロッキンオンを愛読して、スタジオボイスを買っては内容はよくわからないけどずっと眺めていました。高校生の時はロッキンオン、ロッキンオンジャパン、ミュージック・マガジンを読んでいました。


林;中学でそれはマセてますね。どのあたりを聴いてました?


花田;中高校生の時に、古い名盤じゃなくて、リアルタイムに聞いていたのは、ブリティッシュ・ポップ/グランジからシカゴ音響派/コーネリアス・フィッシュマンズという感じです。でもやっぱり古いものの方が好きで、ビートルズ、ビーチボーイズ、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドがヒーローでした。これらの音楽を自分がほぼ聴かなくなる日が来るとは思わなかったです。当時、自分自身の宅録音源のユニット名(笑)には「banana&apples」と名付けていて(ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのあのジャケと、ビートルズのレーベルのこと)、1stアルバムのタイトルは『ピーチ』(ビーチボーイズのビーチから)にしようと決めていました。


林;(笑)音楽のことがわからない人だと、すごく「果物好き」だと思われちゃいますね。高校はどうでしたか?


花田;進路についてというか、大学で何を勉強するかということは、本当にすごく真剣に悩んで。ぼくは本当に田舎で育って、そうすると、東京にこんなに沢山の仕事があるってことは全然知らずに育つんです。

親は、田舎でも普通に存在する医者とか教師とかになってほしいという感じで、なるべく可能性も潰さない為に高校で文理選択で理系を選んでいたりした自分もいたんですが、悩んで悩んで、当時好きなレコーディング・エンジニアがいたり、シカゴ音響派の全盛期だったりして、「ぼくはレコーディング・エンジニアになりたい」と思って、音響設計学科という珍しい学科を受験しました。楽に入れるところではないんですが、勉強は真面目にしていたので、模試の判定とか学校の先生や数学塾の先生からは通ると思われていたんですが、本番に弱くて受験に失敗しました。

それで、当時、2番目の姉が住んでいた京都に行って、1年間真面目に浪人して、模試の成績では受かりそうだったんですが、また本番に弱くて失敗して、後期で滑り止めで受けた同じ学部の情報系の学科に入りました。


林;レコーディング・エンジニア志望が情報系の学科に入ったんですね。


花田;そういう大学だったので、パソコンで打ち込みで音楽を作るサークルがあって、そこに入って自分1人で完結するスタイルで音楽を作って、サークルの発表会で発表したりしていました。学内のイベントの音楽とか作ってました。エレクトロニカとか、フォークトロニカを聞いていて、そんな真似事を。VOCALOIDとかがが出始める前でした。すごくはまっていましたが、ブラジルに留学することにして、研修にかかる時間も多くなって、イベント用に頼まれて作るだけになっていきました。


林;おっとブラジルが突然、登場しましたね。その辺りを詳しく教えてもらえますか?


花田;まず、ブラジル音楽との出会いですが、高3の時です。当時、カエターノ・ヴェローゾやマリーザ・モンチのアルバムが、愛読していたミュージック・マガジンで高い評価を得ていたり、好きだったシカゴ音響派の人たちが影響を受けた音楽家としてブラジルの音楽家の名前を挙げていて、興味を持ちました。


林;なるほど。


花田;当時それぞれ最新作だったカエターノ『リーヴロ』とマリーザの『アモール、アイ・ラヴ・ユー』は本当によく聴いていて、通学のバスの中でウォークマンで聞きながら、一緒に乗っている人に、どうにかこのアルバムを聴いてもらいたいなあと思っていました。「人間スピーカーになりたい」って思っていました。ブラジル音楽との出会いは、サンバやボサノヴァではなく、ロックの延長上で聴き始めたMPBでした。


林;あ、僕もMPBからです。


花田;そういうわけで、大学生になってからもブラジル音楽も沢山聴いていた中で、ブラジルに1年間インターン留学できる制度のポスターを見かけたんです。高校の英語の先生が「20歳までに留学した方がいい」って言っていた言葉が気にかかっていたのと、英語圏以外に留学したいなあという思いがあったので、ブラジルに行くのもいいなと思いました。応募して、研修を経てブラジルのリオに行きました。学校ではポルトガル語を勉強してないですし、研修での語学研修の割合も少ないので、言葉は、ほぼ上達しない状況で出発しました。初めての海外経験がリオでの1年間だったんですが、そこでとても新鮮な経験ばかりしました。


林;うわー、すごいですね。


花田;リオでの生活のことをブログとかSNSに書いていたんですが、当時からラティーナに寄稿されていた佐々木俊広さんというライターの方がリオに来ている時に、コパカバーナのホーダ・ヂ・サンバを見ている時に偶然知り合って、佐々木さんが僕やそのブログのことを、当時ラティーナで編集とブラジル担当をしていた船津亮平さんに伝えてくださったことが、ラティーナで働かせてもらえることにつながりました。


林;そんなきっかけですか。それは面白いですね。


花田;留学から戻って大学4年生の春でしたが、その年の秋には東京に部屋を借りて福岡から東京に引っ越して、ラティーナでアルバイトして働いていました。

「20歳までに留学した方がいい」って言っていた先生の真意としては、語学の面で上達が違うからって意味だったのかと思いますが、ぼくがブラジルに行って得た経験って何だったんでしょう。その後の進路にあまりにも大きな影響があるので...。


林;ブラジルって人の人生を変えますね。


花田;語学についての面だけでも、何語でもいいですが、日本語以外の言語で情報を得られるって、プラスなことだと思います。精神的な面でも、離れた国のことを寂しく思ったり、離れた国の人が気にかけてくれたりするってことで、人生が多層的にもなるかもしれません。ここではないところに、自分の思い出の場所や人があるってことが、人生に悪い影響を与えるってことはないと思います。日本以外でも生きられると思うと、日本の生活で弱ってしまった時にも、踏ん張ってみようと思えるじゃないでしょうか。


林;ああ、それは素敵な考え方ですね。ここではないところに、別の自分の場所があるって確かに人生を豊かにします。さて、これはみんなに聞いているのですが、これからの音楽はどうなると思いますか? 


花田;ぼくは、音楽業界が良かった時というのを知らない世代なんです...。望みとしては、ぼく自身は90年代のワールド・ミュージック・ブームっていうものは体験してはいないですが、「ワールド・ミュージック」を聴いているってことが、また、素敵なライフスタイルの姿であるって状況が戻ってくればいいなと思っています。自分の文章ではブラジル音楽を紹介することが圧倒的に多いですが、ブラジル音楽に限らず、世界各地の音楽を聴くことがもっと普通のことになってほしいと思っています。


林;本当にそうですね。お仕事期待しております。これからはどうされるご予定ですか? 


花田;あまり予定という予定もないですが、ラティーナの編集をしている限り、より良い音楽雑誌を目指して、頑張りたいと思っています。ぼくはやっぱり、世界中から色んな才能がどんどん登場する「ワールド・ミュージック」が今後も一番面白い音楽の1つであり続けると思っていて。さっきも言いましたが、「ワールド・ミュージック」を聞いていることがもっと普通のことになって、ラティーナを読んでいることも、もっと普通のことになればいいなあと思います。あと、仕事と離れたところでは、博士論文を完成させたいのが目下の目標です。


林;なんだか花田さんらしい真面目なご予定ですね。それでは選曲に移りましょうか。テーマは何でしょうか?


花田;「前向きに生きようと思えた個人的な10曲」です。


林;前向きに生きようと思えた曲ですか。楽しみですね。


01. Nick Drake(ニック・ドレイク)「Time Has Told Me」(1970)

花田;26歳で夭折したイギリスの天才シンガーソングライターの残した歌に、音楽を本格的に聴き始めてすぐに出会い、この歌はそれから10余年自分の心の支えとなったんでした。「〜〜時がぼくにこうも教えてくれた/これ以上求めていけない/ぼくらの大海原も/いつかそのうち岸辺に辿り着ける//だからぼくは自分がほんとうになりたくないものへと/自分自身を追い込むような生き方をやめることにしよう/自分がほんとうは愛したくないものを/愛さざるをえなくなるような生き方をやめることにしよう〜〜」という歌詞です。


林;ニック・ドレイクが1曲目ですか。ラティーナ読者は驚いてそうですが、花田さん、お好きそうですね。


02. Joy Division(ジョイ・ディビジョン)「Love Will Tear Us Apart」(1988)

花田;人生で一番繰り返しクリップを見た曲なのではないかと思います。PVが特別なんかすごいわけじゃないんですが、ヴォーカルのイアン・カーティスに見入ってしまって。当時、ロッキング・オンの渋谷陽一さんのやっている「ミュージック・サテライト」というBSのテレビ番組があって、それを姉がいつも録画してくれていてその中で紹介されたこの曲のクリップを、中学生時代繰り返し繰り返し見ていました。ブラーとかオアシスのPVが流れる中で、とりわけこの曲がすごく引っかりました。曲の内容は、愛がまた2人を引き裂くってことで、中学生には全く無縁の内容なんですが。イアン・カーティスも23歳で夭折してしまったミュージシャンです。


林;中学生の時にジョイ・ディヴィジョンにはまったっていうのも青森では浮いていたのではと想像します。今度、お姉さんの話を聞かせてください(笑)。


03. Robert Wyatt(ロバート・ワイアット)「Free Will and Testament」(1997)

花田;ソフト・マシーンのドラマー兼ヴォーカリストだったのが、事故によりドラマーとしての生命は絶たれたが、その後は、独特の魅力を持ったヴォーカルスタイルのシンガーソングライターとして活動しているロバート・ワイアット。彼の作品は後追いでも集めて、広く触れましたが、リリース時に聴いたこのアルバムが、ぼくにとって一番聴いたアルバムとなりました。「自由意志および遺言」というタイトルの曲で、今読み返しても、歌詞の意味は不可解な部分が多いですが、この澄んだ歌声に耳を澄ましている時間は、とても特別な時間でした。


林;こういう選曲だとロバート・ワイアットももちろんお好きそうですね。今回の花田さんの選曲を聞いて、「ラティーナ、買ってみようかな」って感じている人、多そうです。


04. Velvet Underground(ヴェルヴェット・アンダーグラウンド)「Sunday Morning」

花田;ヴェルヴェッツ関連から何か選ばないと嘘のような気がしたので1曲選びます。ビートルズと、ビーチ・ボーイズと、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドは、思春期の僕にとっての教科書で、とりわけヴェルヴェット・アンダーグラウンドに憧れていました。テレビジョンやギャラクシー500だとか、ヴェルヴェッツに影響を受けたヴェルヴェッツ・チルドレンの音楽も大好きでした。


林;こういう音楽の世界観って誰も指摘しないけど、天才ルー・リードがある日突然この世界に描いたすごい感覚だと思います。


05. Caetano Veloso(カエターノ・ヴェローゾ)「Força Estranha」(2011)

花田;タイトルは「奇妙な力」と訳せばいいんでしょうか。人から人へ命が受け継がれている様を歌った歌だと思っています。3.11の後、何の力もない自分と向き合いながら、この曲を聴いて、どうにか力を振り絞っていました。オリジナルは、カエターノ・ヴェローゾではなく、ホベルト・カルロスです。


林;カエターノは何か選ぶとは想像していたのですが、こういう曲なんですね。「力」、不思議な言葉ですが、強い言葉です。


06. Gonzaguinha (ゴンザギーニャ)「O que é, o que é (Viver e não ter a vergonha de ser feliz」(1982)

花田;「人生は美しい」と歌う人生讃歌のサンバ名曲です。「永遠に学び続けることの美しさ(A beleza de ser um eterno aprendiz)」というフレーズがあるのですが、「見習い(aprendiz)」という単語が、一番好きなポルトガル語です。自分の生まれた年の歌だけれど、ブラジルのサンバ系のコンサートでは、今現在、アンコールで最も歌われる回数が多い曲の1つなのではないかと思います。


林;うわ、またまた花田さんらしい言葉を。そうですね。僕たちはずっと学び続けるべきですね。


07: Saigenji「風の轍」(2008)

花田;どんなにダメな人生だったとしても、そういうのを全部含めて肯定してくれる歌で、何度も助けられました。「〜〜生かされている、すべてに//深く息を吸い込んで/風の歌を感じただけ/この奇跡をぼくはずっと守っていく//少しずつでも進んでゆける それがわかった/もう迷わない/なぜならぼくは息をしている/重ねた日々は無駄じゃなかった/なぜならここにいるから」という歌詞ですが、「息をしているだけでそれでいいじゃない」ってことに、この歌を聴くと納得してしまいます。Saigenjiさんには、この歌で紅白に出て欲しいと願ってやみません。


林;紅白にというのすごくわかります。大晦日に、日本語を話す色んな人たちに聞いてほしい歌ですね。


08: ラブクライ(Labcry)「Brave And Strong」(2001)

花田;2000年くらいから関西の「うたもの」バンドが全国的に注目されて、ぼくも羅針盤や空気公団や、このラブクライが大好きになりました。そのブームの時期が、ちょうど京都で浪人生をやっていた1年に重なり、関西のうたものバンドのライブを見られる機会もたくさんありました。羅針盤や空気公団やラブクライの歌には、優しさに溢れた歌がたくさんありました。


林;ああ、京都時代って1年ではありながら花田さんにとって日本の独特の関西文化に触れる時期だったんですね。青森から京都に行くとかなりカルチャーショックでしたでしょうね。


09: 中島ノブユキ「その一歩を踏み出す」(2015)

花田;どんな一歩を踏み出すのも臆病なぼくですが、本当に動けなくなっている時にこの曲を聴くと、何とか一歩前に踏み出そうと思えてしてしまう。音楽の不思議な力を感じる曲です。一体どこからこの説得力のある音楽が生まれてくるのか。中島さんの神秘です。


林;美しいですね。本当に音楽の力強さを感じてしまいます。音楽がこの世界にあって良かったって実感します。


10: 伊藤志宏 3 cello variation 「ペンギンは蝶の夢を見る」(2014)

花田;夢の中で飛ぶことと、実際に飛ぶこと。どちらが価値のあることなのだろうかと考えることがあります。お金を出せは宇宙に行ける日もそう遠くはないようです。伊藤志宏さんには「ペンギンは飛べない」という名曲もあるのですが、飛ぶことを夢見ながら海を泳ぎ続けるペンギンは、とても幸せなんじゃないかと思うのです。


林;今、わかりました。花田さん、ラティーナも論文も大切かと思いますが、自分のための文章を書きましょう。詩でしょうか小説でしょうか。その花田さんの世界観を表現する日を待ってます。

花田さん、お忙しいところどうもありがとうございました。音楽を届けるお仕事の今後、期待しております。


花田勝暁 twitter

ラティーナ公式HP


さて、カボチャ祭りも終わり、いよいよ年末となりましたね。そろそろ2016年を振り返る特集をメディアの人たちも動き出すころですね。忙しい時期ですが、良い音楽をきいて楽しんでくださいね。
それではまた来月もこちらのお店でお待ちしております。

bar bossa 林伸次


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■Bar bossa林さんが選曲したコンピレーションアルバムが11/16リリース!

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■タイトル:『Happiness Played In The Bar -バーで聴く幸せ- compiled by bar bossa』
■アーティスト:V.A
■発売日:2016年11月16日
■レーベル: ユニバーサル ミュージック
■品番:UICZ-1646

アマゾン詳細ページへ


【収録曲】
1.Blossom Dearie / It Might As Well Be Spring
2.Bill Evans / Soiree
3.Paul Desmond / Emily
4.Bill Evans Trio / Elegia
5.Quincy Jones and His Orchestra / Dreamsville
6.Gerry Mulligan / Night Lights
7.Vince Guaraldi Trio / Great Pumpkin Waltz
8.Cal Tjader / Just Friends
9.Shirley Scott/Can't Get Over The Bossa Nova
10.Blossom Dearie / Give Him The Ooh-La-La
11.Burt Bacharach / I'll Never Fall In Love Again
12.NICK De CARO and orchestra / I'M GONNA MAKE YOU LOVE ME
13.Blossom Dearie / Sweet Surprise
14.Beach Boys / Caroline No
15.Burt Bacharach / Alfie
16.Milton Nascimento / Catavento
17.Earl Klugh / The April Fools
18.Danilo Perez/Another Autumn


【林 伸次 近著】

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■タイトル:『バーのマスターは「おかわり」をすすめない 飲食店経営がいつだってこんなに楽しい理由』
■著者:林 伸次
■発売日:2016年9月9日
■出版社: DU BOOKS
■金額:¥1,728 単行本

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「このビール、ぬるいんだけど」とお客さまに言われたら、あなたならどう対応しますか?
その都度悩んで、自ら回答を見つけてきた渋谷のバーのマスターの約20年。
楽しく経営を続けられたのには理由がある!

「バーの重たい扉の向こうには、お客さま、店主、お酒......その他たくさんの物語が詰まっています。ぜひ、あなたもその物語に参加してみてください。」
――本文より


「bar bossa」アーカイブ

vol.1 「モニカ・サウマーゾ」 ・vol.2 高木洋介 ・vol.3 「クリスマス・ソングのボサノヴァ」 ・vol.4 柳樂光隆 ・vol.5 「1960年代当時のブラジルのボサノヴァ女性シンガー特集」 ・vol.6 松原繁久 ・vol.7 「1970年代から1980年代までのブラジルのボサノヴァ女性シンガー特集」 ・vol.8 中村ムネユキ ・vol.9 「現代のブラジルのボサノヴァ女性シンガー特集」 ・vol.10 江利川侑介 ・vol.11 「エレンコ・レーベル」 ・vol.12 田仲昌之 ・vol.13 「ルミアール・ヂスコス」 ・vol.14 定成寛 ・vol.15 寺田俊彦 ・vol.16 白尾嘉規 ・vol.17 「畠山美由紀『rain falls』 プロデューサー中島ノブユキ インタビュー」 ・vol.18 山本勇樹 ・vol.19 「ジノンさん ルシッド・フォールについて」 ・vol.20 大場俊輔 ・vol.21 「ブラジル人と演奏しているアメリカのジャズ・ミュージシャン特集」 ・vol.22 武藤サツキ ・vol.23 「Lucid Fall (The Best of)」 ・vol.24 筒井奈々 ・vol.25 「THE PIANO ERA2013」 ・vol.26 山上周平 ・vol.27 ジノン ・vol.28 東野龍一郎 ・vol.29 林伸次 ・vol.30 中村智昭 ・vol.31 齊藤外志雄 ・vol.32 染谷大陽 ・vol.33 稲葉昌太 ・vol.34 小嶋佐和子 ・vol.35 石郷岡学 ・vol.36 原田雅之 ・vol.37 松本研二 ・vol.38 塚田耕司 ・vol.39 岩間洋介 ・vol.40 中村信彦&真理子 ・vol.41 白尾嘉規 ・vol.42 田仲昌之 ・vol.43 山本勇樹 ・vol.44 新川忠 ・vol.45 川嶋繁良 ・vol.46 田村示音 ・vol.47 山崎雄康 ・vol.48 上川大助 ・vol.49 町田和宏 ・vol.50 林下英治 ・vol.51 シュート・アロー ・vol.52 高橋悠 ・vol.53 沼田学 ・vol.54 庄野雄治 ・vol.55 山本のりこ ・vol.56 渡部徹 ・vol.57 小栗誠史 ・vol.58 相澤歩 ・vol.59 土田義周 ・vol.60 榎本善一郎 ・vol.61 町田洋子 ・vol.62 影山敏彦


bar bossa information
林 伸次
1969年徳島生まれ。
レコファン(中古レコード店)、バッカーナ&サバス東京(ブラジリアン・レストラン)、
フェアグランド(ショット・バー)を経た後、1997年渋谷にBAR BOSSAをオープンする。
2001年ネット上でBOSSA RECRDSをオープン。
著書に『ボサノヴァ(アノニマスタジオ)』。
選曲CD、CDライナー執筆多数。
連載『カフェ&レストラン(旭屋出版)』。

bar bossa
bar bossa
●東京都渋谷区宇田川町 41-23 第2大久保ビル1F
●TEL/03-5458-4185
●営業時間/月~土
18:00~24:00 bar time
●定休日/日、祝
お店の情報はこちら

bar bossa vol.62:bar bossa

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vol.62 - お客様:影山敏彦さん(tico moon)


【テーマ:迷える思春期のあなたへ送る10曲】



いらっしゃいませ。
bar bossaへようこそ。

今月はtico moonのギタリスト、影山敏彦さんをゲストにお迎えしました。


林;こんばんは。早速ですが、お飲物はどうされますか?


影山;ギネスビールをお願いします。


林;ギネスは最近やってなくて、黒ビールでしたらコエドの漆黒というビールがありますが、どうでしょう?


影山;じゃあ、それでお願いします。


林;それでは簡単なプロフィールをお願いできますか?


影山;1966年、東京の新宿で生まれました。新宿と言っても西新宿の十二社というところで、下町情緒あふれるところでした。近所に十二社温泉という温泉と温水プールが一緒になった施設があって、夏のスイカ割り大会やドジョウすくいが毎年楽しみでした。その後7才の時に東京の世田谷区へ引っ越しました。こちらは出来たばかりのマンモス団地で、何もかもが新しく、新宿とのギャップに子供心ながら驚きました。


林;新宿ご出身! カッコいいですねえ。小さい頃の音楽的な環境はどうでしたか?


影山;僕の小さい頃父親は映画音楽やイージーリスニング的なジャズやクラシックが好きで、家にはあの頃通販で流行っていたLPの全集ボックスが沢山ありました。よくドライブに出掛ける家庭だったので、カーステレオからはいつもそんな音楽が流れてきていました。映画「世界残酷物語」の主題歌や「男と女」のサントラなど、今でも好きだなと思う曲が沢山ありました。

またちょっと年上の従姉妹が埼玉の所沢に住んでいて、毎週の様に遊びに行っていました。従姉妹はグループサウンズや当時のアイドルが好きで、よくレコードを聴かせてもらっていました。その時のお気に入りはザ・タイガースの「シー・シー・シー」と「ジンジン・バンバン」でした。


林;おお、従姉妹からグループサウンズをっていうのが時代ですねえ。初めて買ったレコードは?


影山;初めて買ったレコードはフィンガー5の「学園天国」でした。ちょっとロックンロールっぽい曲調とオープニングの掛け合い、そして晃の大きなサングラスに完全にやられていました。


林;あれ、カッコいいですよね。他にはどういうのを聞いてましたか?


影山;その後小学校高学年の時に強烈に影響を受けたテレビ番組に出会いました。「ぎんざNOW!」という番組です。月~金の夕方の帯番組なのですが、毎日日替わりで色々な企画がありました。「しろうとコメディアン道場」というコーナーを見た時は、小学生ながら本気でお笑い芸人になろうと思っていました。音楽の企画も充実していて、バンドコンテストや洋楽・邦楽チャートコーナー、デビューしたての日本のバンドなども沢山出演していました。そしてよく出演していたCharやBowWow、Lazyなど、エレキギターを持って歌う人たち、厳密に言えばエレキギターそのものにノックアウトされてしまい、とにかくエレキギターが鳴っている音楽ならなんでも聴きたいという時期が暫く続きました。寺内タケシ、野口五郎、沢田研二のバックバンド、KISS、音楽性はさておきテレビの画面からエレキギターを見つけるのに必死でした。

と言いつつ当時流行っていた歌謡曲も大好きでした。その頃母親が家で内職をしていたのですが、いつもラジオを聞きながら仕事をしていたので、ラジオから流れてくる山口百恵や石川さゆり、岩崎宏美や沢田研二など、よく一緒に聴いていました。


林;お、ギターキッズへの入り口がこの辺りにあったんですね。その後はどうでしたか?


影山;その後中学に入り自分のラジカセを手に入れた事もあり、ラジオ熱は益々高まっていきました。平日はNHK-FMの「軽音楽をあなたに」、土曜はFM東京の洋楽、邦楽のトップテン番組、そして夜はAMの深夜放送やFEN、とにかくラジオを聴くのが楽しくて仕方がありませんでした。本格的に洋楽を聴く様になるのもこの頃からでした。と言っても主な情報源はラジオのチャート番組なので、まず好きになったのはその頃人気のあったチープトリック、クイーン、アバ、ベイシティーローラーズなど。ミュージックライフを読んでいたのもこの頃でした。ただ前述の従姉妹がこの頃ロックを聴く様になっていて、その後彼女のレコード棚にあったレッド・ツェッペリンやジェフ・ベック、ロッド・スチュワートなどにどんどん興味は移っていきました。

そして遅ればせながらとうとうラジオでザ・ビートルズに出会う事が出来たのもこの頃でした。初めて聴いたのは確かFENから流れてきた「抱きしめたい」でした。とても衝撃的な出会いだったのですが、初めて手に入れたビートルズのレコードが、父親が出張のお土産で買って来てくれた「Love Songs」という甘い曲を集めたコンピレーション盤だったので、ちょっと拍子抜けした事を今でも覚えています。もちろん今では甘いビートルズの曲も大好きですが。


林;もうギターキッズ王道そのものですね。そして?


影山;そしていよいよ中学2年のお正月に念願のエレキギターを手に入れる事が出来ました。同じ学年の他のクラスに、親が純邦楽の師匠でギターがものすごく上手な男の子がいたのですが、ひょんな事から彼と仲良くなり、学校が終わると彼の家に入り浸ってはずっとギターを教えてもらっていました。そしてとうとう中学3年の夏休み、受験生にとっては最も大切な時期に、あろう事か彼と初めてのバンドを組み、毎週の様にスタジオに入ってはギターをかき鳴らしていました。ただ2学期が始まった瞬間に塾の先生にギターを取り上げられてしまい、バンド活動も暫くおあずけとなってしまいました。


林;(笑)でも、始まりました。


影山;4月には無事高校に合格。大学の付属高校だった上、何の部活にも入らなかったので、ぬるま湯の様な高校生活が始まりました。同じクラスに他の高校から編入して来た一つ年上の同級生がいたのですが、高校時代に彼から受けた影響は計り知れませんでした。映画や音楽にとても詳しく、よく一緒にレコード屋巡りや映画館に行ったりしました。ちょうど通学の経由駅が西武新宿駅だったので、学校の帰りには毎日の様に西新宿界隈のレコード屋に足を運んでいました。ウッドストック、えとせとら、シカゴ、新宿レコード、エジソン、そして東口のディスクユニオン。たくさんは買えませんが、ただレコードを眺めているだけで幸せでした。

この頃その彼から教えてもらったパンク・ニューウェーブにどんどんのめり込んで行くのですが、やはりこういう音楽は肌で地元のリアルなうねりを感じなくてはだめだ、と妙な使命感の様な物を感じ、ライブハウスやストリートライブへ通う様になりました。東京ロッカーズは終わり、ストレートなパンクロックもありませんでしたが、E.D.P.S、少年ナイフ、くじら、コンクリーツ、突然段ボール、ガーゼ、システマティック・デス、エクスキュート、キャー、G.ZETなど、もやもやした思春期の男子高校生にとって刺激的な音楽はいくらでもありました。カムズというバンドの解散ライブを屋根裏で観た後の渋谷の朝がとても眩しかったのも、今では甘酸っぱい思い出です。


林;うわー、高校生でリアルタイムでその辺りを経験されてるんですね。


影山;とは言え相変わらす洋楽も聴いていました。ベン・ワットやトレーシー・ソーン、ヤング・マーブル・ジャイアンツ、ウィークエンド、モノクローム・セットなど、ネオアコと呼ばれる音楽に出会ったのもこの頃でした。桑原茂一さんがやってらした原宿のピテカントロプスというクラブで初めて観たドゥルッティ・コラムには、狂気を孕んだ繊細さとはこういう事なのかと、衝撃を受けました。


林;お、イメージ通りの影山さんらしさがこの辺りから見えてきましたね。そしてその後は?


影山;大学入学後、とりあえずおそらく学校で一番大きい音楽サークルに入りました。ジャンルは何でもありで、お酒を呑みながら音楽の話をするのが大好きな人たちの集まりでした。おかげで、それまで見向きもしなかったアメリカンロックやブラックミュージック、シンガーソングライターやジャズ、フュージョンなど、たくさんの素晴らしい音楽がある事を知る事ができました。


林;大学のサークルって音楽が広がるきっかけですよね。


影山;そしてまたしても衝撃的なテレビ番組に出会いました。ピーター・バラカンさんの「ポッパーズMTV」です。その頃ようやくわが家にやってきたビデオデッキで録画しては繰り返し見ていました。音楽と映像がこんなにもクリエイティブに融合していくものなのだなと、毎週楽しみにしていました。

友人に誘われるがままに始めたコンサートの搬入・搬出・警備のアルバイトは、結局大学卒業直前まで続けていました。搬入・搬出の仕事は完全に肉体労働なのですが、コンサートに少しでも携わっているという錯覚に陥り結構楽しかったです。武道館の仕事も結構多く、エリック・クラプトン、ビリー・ジョエル、アイアン・メイデン、矢沢永吉、忌野清志郎、チェッカーズなど、興味の有る無しに関わらず色々なジャンルのいわゆる大物ミュージシャンの演奏を聴けたりして、大変ながらも楽しく働いていました。


林;「錯覚に陥り」に笑いました。僕もそのバイト、学生時代やりましたよ。


影山;この頃、スターリンを解散された遠藤ミチロウさんの新しいプロジェクトのオーディションを受けたのも良い思い出です。何の間違いかテープ審査には通ってライブ審査という事になり、初めてミチロウさんにお会いしました。極度に緊張していたのですが、ミチロウさんはとても優しい方でした。もし受かっていたら全然違う人生を歩んでいたかもしれません。


林;え! すごい! さていよいよ社会人になるわけですが。


影山;大学卒業後、暫くサラリーマンをやって、その後別の仕事にも就いたのですが、色々な事情で仕事を辞める事になりました。音楽の興味としては、POP IND'S、ニューズウェーブ、Suburbia Suite等の紙媒体を経由しつつ、ちょうどその頃ブラジルの音楽に興味を持つ様になり、ガットギターを手に入れたので、一念発起してギターをちゃんと習う事にしました。中南米系のクラシックギターを得意とされる演奏家の方に数年程師事したのですが、その頃遅ればせながらでも基礎を教わっておいて本当に良かったと、今でも思っています。


林;なるほど。


影山;平行してほんの少しずつですが、人前で演奏する様になりました。シャンソンやミュゼット、ボサノヴァなど、面白いと思ったものはどんどんやってみました。そして、とにかく一緒に音楽を奏でてみたいと思える人と出会えるという事がとても大切だと感じる様になりました。そんな中で出会ったのが、現在tico moonでハープを弾いている吉野友加さんです。


林;おお!


影山;彼女と出会ったばかりの頃は、ギターとハープでどの様な演奏をすれば良いのかさっぱり見当もつきませんでしたし、共通の音楽の趣味というものも殆どありませんでした。ただ彼女とは、良いものに対する感覚は同じではないか、そして大きな目で見ればきっと同じ方向を見ているのではないか、という事を直感しました。そして徐々にオリジナル曲を作る様になり、ぼんやりとですが二人で音楽を演奏し続けて行けば見えてくる新しい世界があるのではないかと、感じる様になって行きました。


林;素敵なお話ですね。


影山;そしてギタリスト、と言うより今では音楽家と言った方が通りが良いと思いますが、伊藤ゴローさんと出会ったのも同じ頃でした。まだmoose hill名義で活動する少し前で、naomi & goroを始め、色々なボサノヴァ的なセッションで良くお見かけしていました。その頃ブラジル的なギターを弾かれる演奏家の演奏を色々と聴きに行っていたのですが、ゴローさんの奏でる音はどんな人とも違って聴こえていて、あっという間にその音の虜になっていました。ゴローさんと知り合う事によって、tico moonのアルバムリリースでお世話になる事になるレーベル、333DISCSとも出会う事が出来ました。

このお二人との出会いは自分の音楽生活の中でもとても大きな出来事でした。そしてこの後もいくつかの大切な出会いに支えられて現在に至っています。


林;こう聞いてみると、影山さんの人生は「出会い」で大きく何度も良い方向に向かってきましたね。さて、これはみんなに聞いているのですが、これからの音楽はどうなると思いますか?


影山;個人的な話ですが、今までは割と自分の好きな音楽を手許に置いておきたいという欲求が強く、レコード店でレコードやCDを集める事が何よりもの楽しみでしたが、最近ではそういう意識が段々と薄れていっている様な気がします。ふとつけたラジオから聴こえてきた音楽や、たまたま入ったカフェでかかっていた曲に心を奪われる事があっても、あえて昔の様に血眼になって探したりはせず、次の出会いを楽しみにする、そんな感じでしょうか。ただ自分のアルバムを作っている時は相変わらす血眼になっていますが。


林;なんとなくわかります。これからのご予定を教えていただけますでしょうか?


影山;とにかく続ける事、この一言に尽きます。この9月に『Arietta(アリエッタ)』というtico moonの新しいアルバムをリリースしました。tico moonの結成から15年と少し、通算8枚目のアルバムで、遊佐未森さん、ビューティフルハミングバードさんという素晴らしい2組のアーティストに作詞と歌唱・演奏で参加していただきました。tico moonを始めた頃には思ってもみなかったこんな素敵なコラボレーレションが実ったのも、ひとえに音楽を止めないで続けて来たからだと思っています。


林;このアルバム、すごく良いですねえ。二人の天国に近い音空間に遊佐未森さんの天使の声が加わるとすごい世界になりますね。さて、みんなが待っている10曲の選曲なのですが、まずテーマを教えてください。


影山;はい。「迷える思春期のあなたへ送る10曲」です。
自分の事を振り返ると、多感な思春期に見聞きしたり体験した事には今に至るまで大きな影響を受けていると感じます。そして同時に音楽には幾度となく気持ちを救われました。若い時期に音楽に触れるのは本当に素敵な事だなと思い、こんな曲を選んでみました。


林;おお、思春期で迷える方、オジサンなのに思春期みたいな方も、期待大ですね。


01. David Byrne「Once In a Lifetime」

影山;もやもやした気分になったら、まずこのビデオのダンサーの様に踊って発散してみるのはいかがでしょうか?この曲はもともとトーキングヘッズというバンドの曲ですが、2008〜9年に開催されたデヴィッド・バーンのこのツアーでの演出が素晴らしく、僕も東京公演では踊り狂いながら聴いていました。


林;もうとにかく名曲ですが、最近はこんな演出なんですね。影山さん、これで踊り狂うんですね(笑)


02. Marcus Tardelli「Baiao de Lacan」

影山;思春期の若い頃、時間だけはたくさんあり、今では考えられない程集中力と忍耐力があった様な気がします。この曲はギンガの曲をギターソロにアレンジして演奏しているのですが、こんな難しそうな曲を今ではとても弾こうとは思いません。集中力のある思春期にこそチャレンジしてみるのはいかがでしょうか?


林;うわ、すごい演奏ですね。これはすごい...


03. Cato Guitar Duo 「Jongo」 by Paulo Bellinati

影山;そして一人で演奏する事に飽きたら、是非どなたかと二人で演奏する事をお薦めいたします。この曲はもともとギターの独奏曲を作曲者自身でデュオ用に編曲したもので、ギターデュオのスタンダードとしても知られています。自身の経験上、1+1=2では無くそれ以上なのは間違いなく、試してみたらその広がりにきっと驚く事でしょう。もちろん音楽に限らず色々な事にあてはまるのではと思います。


林;自身の経験上というのが響くお言葉です!


04. Aca Seca Trio「Adolorido」

影山;そして更にもう一人誘って次はトリオです。3人というのはなかなか手強く、2対1、3対0、1対1対1など、状況がどんどん変化していきます。人間関係について学ぶにはうってつけの人数です。そして奇跡が起こった時には、この曲の様な素晴らしい瞬間が訪れるかも知れません。


林;もう奇跡ですね。3人、難しいけど、こういう瞬間もあるんですね。


05. Dr Feelgood「She does it right」

影山;4人になるともう向うところ敵無しです。メンバーの結束が最高潮に達した時には、この曲の様に一丸となってひたすら突き進み、あらゆるもやもやを吹き飛ばす事が出来るでしょう。ただ勢いがもの凄いだけに、何かにぶつかると崩壊するのも早そうです。そこさえ気をつければ4人というのはバランスのとれた人数だと思います。ちなみにギターとベースが前後するアクションもこの演奏の見所です。


林;そしてドクター・フィールグッド! カッコいいですねえ。影山さんがこういうのがお好きなのがわかったのが今回の一番の収穫かもです。


06. Frank Zappa「Inca Roads」

影山;いろいろと経験したのちは、優れたリーダーのもとで大人数で統率のとれた演奏するのはいかがでしょうか?マイルス・デイヴィス、ジェームス・ブラウン、そしてこのフランク・ザッパ、優れたリーダーがいるだけでその場が引き締まる事があります。優れたリーダーに出会う事が出来たら目の前が大きく広がるでしょう。


林;なるほど。優れたリーダーですか。でも影山さん、ザッパが好きな人だったんですね。なるほど、わかってきました。


07: Gunung Sari「Baris」

影山;若い頃はとにかく人と違う事をやってみたくなる時期があります。そんな時、たとえばガムランに打ち込む、もしくはバリ舞踊を習ってみるなどいかがでしょうか?今では日本にもたくさんのバリ舞踊団があり、その気があれば習ってみる事も出来ると思います。ちなみにこのビデオで踊っているアノムさんというダンサーの踊りを目の前で見た事がありますが、人生が変わってしまいそうになりました。


林;この間、カウンターで聞きましたが、影山さん、バリダンス踊ってたんですよね。


08: Devine & Statton「Under the weather」

影山;色々とやってみたり考え込んだりして疲れた時、こんな曲はいかがでしょうか?僕自身、この元ヤング・マーブル・ジャイアンツ、元ウィークエンドのヴォーカリスト、アリソン・スタットンの歌声に何度と無く救われました。一度で良いから生で聴いてみたい声です。


林;うわ、ここにきてデヴァイン&スタットン! 僕も大好きでした。


09: Gustave Charpentier「Depuis le Jour」

影山;この映像は1987年に公開された映画「アリア」という映画の中の一遍です。「アリア」は10曲のオペラ・アリアに、このデレク・ジャーマンをはじめとする10人の監督が映像を付けた、とても美しいオムニバス作品です。この映画を初めて観た時、雷に打たれた様に胸が熱くなったのを今でも憶えています。若い時にこんな素敵な作品に出会えた事に感謝しています。


林;へえ。こういうのがあるんですね。また影山さんの違う一面を知ることが出来ました。


10: 伊藤ゴロー「Captain Coo with a Butterfly」

影山;思春期に聴いたビートルズ、ビーチボーイズ、XTC、素晴らしい音楽に人生が多少ならずとも影響を受けていると感じます。もし思春期にこの曲に出会っていたらどんな人生が待ち受けていたでしょうか。考えただけでワクワクします。


林;ああ、確かにビートルズ、ビーチボーイズ、XTCの先にある日本の音楽ですね。今でも思春期の影山さんに刺さる曲ですね。


影山さん、お忙しいところ今回はどうもありがとうございました。みなさんも是非、tico moonの新作、聴いてみてくださいね。


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■タイトル:『Arietta』
■アーティスト:tico moon
■発売日:2016年9月14
■レーベル: 333DISCS

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試聴はこちらになります。→http://www.e-onkyo.com/sp/album/rsc333d50/


tico moon HP

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影山敏彦 twitter


いつの間にか夏も終わり、もうしっかり秋ですね。この秋も良い音楽に出会えると良いですね。
それではまた来月もこちらのお店でお待ちしております。

bar bossa 林伸次


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【林 伸次 近著】

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■タイトル:『バーのマスターは「おかわり」をすすめない 飲食店経営がいつだってこんなに楽しい理由』
■著者:林 伸次
■発売日:2016年9月9日
■出版社: DU BOOKS
■金額:¥1,728 単行本

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「このビール、ぬるいんだけど」とお客さまに言われたら、あなたならどう対応しますか?
その都度悩んで、自ら回答を見つけてきた渋谷のバーのマスターの約20年。
楽しく経営を続けられたのには理由がある!

「バーの重たい扉の向こうには、お客さま、店主、お酒......その他たくさんの物語が詰まっています。ぜひ、あなたもその物語に参加してみてください。」
――本文より


「bar bossa」アーカイブ

vol.1 「モニカ・サウマーゾ」 ・vol.2 高木洋介 ・vol.3 「クリスマス・ソングのボサノヴァ」 ・vol.4 柳樂光隆 ・vol.5 「1960年代当時のブラジルのボサノヴァ女性シンガー特集」 ・vol.6 松原繁久 ・vol.7 「1970年代から1980年代までのブラジルのボサノヴァ女性シンガー特集」 ・vol.8 中村ムネユキ ・vol.9 「現代のブラジルのボサノヴァ女性シンガー特集」 ・vol.10 江利川侑介 ・vol.11 「エレンコ・レーベル」 ・vol.12 田仲昌之 ・vol.13 「ルミアール・ヂスコス」 ・vol.14 定成寛 ・vol.15 寺田俊彦 ・vol.16 白尾嘉規 ・vol.17 「畠山美由紀『rain falls』 プロデューサー中島ノブユキ インタビュー」 ・vol.18 山本勇樹 ・vol.19 「ジノンさん ルシッド・フォールについて」 ・vol.20 大場俊輔 ・vol.21 「ブラジル人と演奏しているアメリカのジャズ・ミュージシャン特集」 ・vol.22 武藤サツキ ・vol.23 「Lucid Fall (The Best of)」 ・vol.24 筒井奈々 ・vol.25 「THE PIANO ERA2013」 ・vol.26 山上周平 ・vol.27 ジノン ・vol.28 東野龍一郎 ・vol.29 林伸次 ・vol.30 中村智昭 ・vol.31 齊藤外志雄 ・vol.32 染谷大陽 ・vol.33 稲葉昌太 ・vol.34 小嶋佐和子 ・vol.35 石郷岡学 ・vol.36 原田雅之 ・vol.37 松本研二 ・vol.38 塚田耕司 ・vol.39 岩間洋介 ・vol.40 中村信彦&真理子 ・vol.41 白尾嘉規 ・vol.42 田仲昌之 ・vol.43 山本勇樹 ・vol.44 新川忠 ・vol.45 川嶋繁良 ・vol.46 田村示音 ・vol.47 山崎雄康 ・vol.48 上川大助 ・vol.49 町田和宏 ・vol.50 林下英治 ・vol.51 シュート・アロー ・vol.52 高橋悠 ・vol.53 沼田学 ・vol.54 庄野雄治 ・vol.55 山本のりこ ・vol.56 渡部徹 ・vol.57 小栗誠史 ・vol.58 相澤歩 ・vol.59 土田義周 ・vol.60 榎本善一郎 ・vol.61 町田洋子


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1969年徳島生まれ。
レコファン(中古レコード店)、バッカーナ&サバス東京(ブラジリアン・レストラン)、
フェアグランド(ショット・バー)を経た後、1997年渋谷にBAR BOSSAをオープンする。
2001年ネット上でBOSSA RECRDSをオープン。
著書に『ボサノヴァ(アノニマスタジオ)』。
選曲CD、CDライナー執筆多数。
連載『カフェ&レストラン(旭屋出版)』。

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bar bossa vol.61:bar bossa

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vol.61 - お客様:町田洋子さん(ワインバー・マチルダ)


【テーマ:20年聴き続け今でも店でかけたい曲10選】



いらっしゃいませ。
bar bossaへようこそ。

今月のお客さまは初台のワインバー・マチルダの町田洋子さんです。


林;いらっしゃいませ。早速ですがお飲物はどうされますか?


町田;ロゼワインのペティアンをお願いします。


林;さすが、カッコいい注文ですね。それではフランツソーモンのロゼ・ペティアンをお出ししますね。


町田;お願いします。


林;さて、プロフィール的なものを教えていただけますか?


町田;町田洋子です。1975年生まれ、生まれも育ちも群馬県です。会社員の父と専業主婦の母、3つ上の兄の4人家族で外飼いの柴犬がいました。


林;お兄さんがいるんですね。なんとなくわかります。小さい頃の音楽環境とかは?


町田;両親が音楽を好んで聴いているという環境ではありませんでしたし、遊びはもっぱら野外。いわゆる おてんばな女の子です。幼少期、自宅にオルガンがあったので見よう見まねで「ねこふんじゃった」を弾くくらいでしたが、兄の影響で5才からエレクトーンを習い始めました。土曜日の午後、先生が自宅に来てレッスンしてくれるのですが、レッスンが嫌で嫌で。特にソルフェージュが苦手でした。音符をドレミに発音変換が出来なかったんです。小学校6年生まで習っていたのですが、最終的に家に帰らなくなりました(笑)携帯電話のない時代で本当に良かった。


林;この「鍵盤ものを習う」のって日本中であったようですが、それぞれのリアクションが違って面白いですね。


町田;聞く音楽はテレビから流れる邦楽が中心でした。アイドル全盛期だったのですが、男性アイドルより女性アイドルが好きだったようで、低学年の頃は松田聖子や中森明菜など「8時だョ!全員集合」に出てくるアイドルが好きでした。それが、3年生のクリスマスに父からカセットテープウォークマンをプレゼントされたのをキッカケに、私の音楽に対する執着心が芽生え始めます。当時まだ目新しかったポータブルプレイヤーで、ずーっと音楽を聴いていました。友達と遊ぶ時にも持ち歩いていたので、今思うと変な子供だったと思います。お気に入りだったのが少女隊の「Bye-Byeガール」って曲なんですけど、曲調がね、モータウンっぽいですよ。今まで聴いてた曲と全然違ってなんか新しくてねぇ、ちょっと踊りだしたくなっちゃうような。ハンドクラップとかホーンセクションとか入ってて、純粋にカッコイイ!と思ってヘビロテしてました。今でも脳内再生させてるくらいです。


林;おおっと、良いですねえ。


町田;その次に入れ込んだのはレベッカでした。1985年に4thアルバム 『MAYBE TOMORROW』が発売になって、完璧に魂まで持って行かれるくらいに夢中になりました。これが自分で初めて買ったCDです。確か最初にカセットで買って、その後CDを買い直したんじゃなかったっけな。ちなみにこの頃から音の位相を意識していたのと、CDのクレジットに興味があってレコーディングエンジニアとか、録音スタジオなどすべてチェックしていました。


林;レベッカ登場。あれ? でも小学生ですよね。マセてますねえ。中学にいくとどうなりましたか?


町田;中学生になると吹奏楽部に入部して打楽器をやっていました。小学校の時に見た「ポニーテールは振り向かない」というドラマの影響でドラムに興味を持ったんです。ドラムを叩きたいが為に入部しました。聴いていた音楽は引き続き女性J-POPで、レベッカ、PRINCESS PRINCESS、渡辺美里、Dreams come true、松任谷由実なんかを聴いていました。


林;あ、もうとにかく音楽中心なんですね。


町田;高校に入学してからはいろんなジャンルの音楽に触れるようになります。事の成り行きで、学校終わりに毎日JAZZ喫茶(夜はJAZZ BARになる)に通うようになりました。そこで初めてJAZZに触れ合う訳ですが、誰の曲かとは全然分かっていませんでした。ただ、「あ、このアルバムいつもかかってるけどマスターのお気に入りなのかな?」とか「あのお客さんが来るとトランペットの曲をかけるな?」とか、その程度の認識でした。それがジョン・コルトレーンとマイルス・デイビスだと分かったのは随分先の事でした。


林;カッコいい...


町田;部活には入らなかったのですが、ドラムは引き続き叩いていました。同級生とガールズバンドのコピーをしたり、学校の先生とブルースをやったり、あとは、ドラムは需要があるので、友達のバンドサポートとして、ライブハウスに出演していたりしました。


林;なるほど。ドラムたたける可愛い女子って重宝されそうですね。


町田;愛読書はドラムマガジン。この雑誌で楽器メーカー主催のサマー・ドラムスクールというのがあるのを知ります。4泊5日の合宿で、現役のプロドラマーが講師で教えてくれる、というとっても魅力的なものでした。両親に行きたい旨を相談したところ反対されたので、アルバイトをしてお金を貯めて高校2年生の時に参加しましたが、16歳の私には衝撃的でした。今なら分かる、凄腕ドラマーが講師に来ているというのに、当時はそんな事全然知らずに参加してしまいました。なにせリムショットもゴーストノートも知りませんでしたから。帰省し、すぐに買ったアルバムはジェームス・ブラウンと、山下達郎さんのライブアルバム『JOY』とT-SQUAREでした。


林;おお、すごく正しいですね。高校2年生ですよね。カッコいい...


町田;野外フェスといえばJAZZフェスで、駒ヶ根JAZZフェスティバルに行ったり、海外のJAZZフェスを深夜放送で熱心にリサーチしていました。当時お気に入りだったのはThe Rippingtons、パット・メセニー、マッコイ・タイナートリオ、ブレッカー・ブラザーズ、はにわオールスターズ、T-SQUARE。
チック・コリアに関しては 「トリオよりもエレクトリックバンドの方が好きなんだよね」などと吐かす生意気っぷり。誰か私を殴ってください。こうしてフュージョン女子高生に仕上がっていきました。ドラマーの青山純さんに憧れて、夢はスタジオミュージシャンでしたが「これ無理だわ~」となったのは高校3年生でした。


林;うわ、これは高校卒業後の展開が気になります。


町田;高校卒業後、東京の短大に進学して一人暮らしを始めました。東京最高でしたね。ライブもすぐに行けるしお芝居も沢山やっている。アルバイトでおこずかいを稼いでそういう娯楽を積極的に楽しんでいました。六本木PIT-INにはよく行きましたね。


林;90年代前半ですから東京が一番面白い頃ですよね。わかります。


町田;短大を卒業したら地元に戻って銀行員になる事を条件での上京でしたが、OLになるのが嫌で嫌で。第2次イヤイヤ期です。


林;(笑)


町田;就職せずに東京に居残りフリーターの時期が2年ありました。その間、ドラム合宿で知り合った人たちが続々とプロになっていきまして。友人がデビュー当初の平井堅さんのサポートミュージシャンをしていたので見に行ったり、打ち上げに参加してたりしてたんです。その延長線でレコード会社の人との接点が増えていきました。ほぼ毎晩、音楽関係者と新宿三丁目のBARに行く事になりまして、ガッツで朝まで飲んでいたら、レコード会社に拾って貰える事になりした。ちなみにこの頃BARで流れてたお気に入りは、キャロル・キング、カーラ・ボノフ、ドナルド・フェイゲン、クルセイダース、Billy mannなどです。現在MACHILDAでの選曲に大きく関わる時期です。


林;なるほど、新宿三丁目で飲んでたんですね。音楽も渋いはずです。レコード会社のことをもう少し詳しく教えてください。


町田;レコード会社での担当部署は新人発掘部で、オーディションやライブハウスで発掘した新人アーティストの育成がメインです。レコーディング音源を作ってプレゼンして、メジャーレーベルと契約をするところまでの仕事はとてもやりがいのあるものでした。大変な事も沢山ありましたが、冒険のチャンスを与えられた場所だったなと思います。その後、他のレコード会社に移ってプロモーターをやっていました。担当媒体はラジオ局で、新譜の宣伝をしていました。


林;すごくやりがいのある仕事ですね。さて、その後はもちろんお店へと向かうわけですが、そのあたりの経緯を教えてください。


町田;今はワインバーを生業としていますが、初めて独立した時は洋菓子店だったんです。レコード会社で働くうちに、私も物を作る仕事がしたいと強く思うようになって、当時個人的にケーキを作っていたのですが、それが知り合いの飲食店の人の目に止まって、その店にケーキを卸すようになりました。お酒のアテになるケーキとして評判を上げていくにつれ、洋菓子を本職にしようかという気持ちが大きくなってきました。
ただ、ひとつ問題があって、私は皮膚が弱くって手荒れトラブルが悩みの種だったんです。雇われの飲食店ではこの手じゃやっていけなそうなので、やるなら独立、という構図がすぐに思い浮かびました。


林;そこで独立を思いつく... 毎回、発想や展開がすごいんですね。


町田;いきなり独立するのも無謀なので2年後の独立を目標に掲げ、ケーキカフェでバイトを始めました。私、たぶん物件運が良いんだと思うんですけど、28歳の終わりにスルッと物件が見つかったんです。小田急線参宮橋駅徒歩2分。商店街沿い9坪10万円。


林;安い!


町田;ただし、とても古くて5年間限定の契約物件だったんです。そのかわりに家賃も破格。5年後店を続けたければ引越しをすればいい。新しい仕事をしたくなるかもしれない。という可能性もあるので契約することにしました。5年という条件も後押しさせるものでした。3年か5年続けるかで世間からの評価がかなり違います。次のステップに移る時重要になると思いました。それとどうしても20代で独立しておきたかった。当時女性での飲食店開業はまだ珍しく、しかも20代であればそれだけで何かしらの取材が来る、と踏みました。


林;すごい...


町田;おかげ様で、店の取材と個人の取材は半々くらいでありまして、この先自営業として生き延びさせるノリシロを作る事が出来たと思っています。若かったからこそ出来たこと、若いが為に足りなかったこと、どちらもありましたが、がむしゃらにしがみついてやるしかありませんでした。余裕なんて全然なかったな。経営者というものがこんなにも孤独なものなのかと愕然としました。そうこうしているうちに5年の終わりが見えてきまして、店を続けない決断をしました。経緯はいろいろあるのですが、もっといろんな人と関わりながら仕事がしたいようになったんです。


林;店って閉めた直後は「もうしたくない」って思うようですね。離婚後と似ているというか...


町田;それで、料理研究家とかフードスタイリストのような仕事をしていこうと東横線学芸大学駅に引っ越して小さな2階建の一軒家を借りました。そこの1階をアトリエとして撮影に使ったり、同時にケーキや料理の教室を始めました。ここでコケるんです。フリーランス向いてなかった!次に繋げる営業力が圧倒的に足りなかったんです。1年経って経営の見通しが立たず、精神的にも追い込まれていき、人生で一番辛い時期に陥りました。


林;フリーランスって営業努力が大きそうですね。


町田;そんな時に現在のMACHILDA物件の話が持ち掛けられます。ここから、ただただ流れに乗るだけの生き方になります。


林;(笑)


町田;一人で焼き菓子屋を営んでいた知人が妊娠しまして、産休期間の2年間、お菓子屋をやらないか?と誘われたんです。正直、お菓子からは暫く離れたかったし、お店は2度とやりたくない、という気持ちがありました。だけど、逆にお店ならできるという気持ちもあったりして。とにかく稼がないとご飯も食べられないし住まいも失う事になるので話を進める事にしました。初台駅から徒歩1分。人通りの少ない緑道沿いの3坪物件はちょっと特殊なんですが、酒場なら成り立つ物件だな。と密かに思っていました。焼菓子屋の彼女も店舗撤退する方向に話も変わったので、契約期限なく居抜き物件を借りられる事になったんです。やっぱり物件運は強いと思います(笑)


林;物件の運って本当に全てですよね。


町田;小さい物件なので、専門店が良いと選んだのがヴァンナチュールです。当時飲んでいて好きでしたし、周りの店舗と業態も被らないし、リサーチの結果、飲み屋難民の働き盛りの30代が多く存在する事が分かったので、そういう地元の人が入りやすい雰囲気の店にしようとおもいました。雑誌にも食べログにも乗らないようなお店がいいな、と。


林;良いですねえ。


町田;的が当たったのか、オープンしてすぐにお客様に恵まれました。オープン1ヶ月後には雑誌の取材依頼が来て、焦りました。「ちゃんとやらなくっちゃ」と覚悟を決めて本腰を入れたのはそこからですね。オープンして3ヶ月経つ頃に萎えていたメンタル面も健康を取り戻していました。


林;これ、お店をやりたいという方や飲食業界の人もたくさん読んでくれているのでもう少し詳しくお店の方針なんかを教えていただけますか?


町田;営業スタイルは人それぞれだとは思いますが、私はお客様とは一定の距離を保って接するように心がけています。基本的に定休日にお客さんと飲みに行ったり、お店主催の花見をやったりしないタイプですね。最近少しずつその仕切りを外してみたりもしてますが。


林;それって大切ですよね。


町田;そしてその日の出来事を翌日に引きずらないように気をつけています。あとはお客さんの秘密は守る。とか。「最近Aさん来てる?」なんて聞かれて、たとえ入れ違いだったとしても「はい、たまに」などとはぐらかしたりします。私もそうですが、バーテンと美容師さんにしか話せない事とかもあったりしますからね。仕事でも友達でもない誰かに話してガス抜きしたいとか。


林;大切ですよね。ところで女性一人でさらに町田さん可愛いし、男性のお客さまから色々と面倒くさいことってないですか? 


町田;何言ってるんですか!バーテンたるもの口説かれなくでどうするんですか(笑)お客さんはオフでお酒を飲んでいる。私はオンで仕事中。そりゃ素敵に見えてなくちゃ困ります。これがバーテンマジックです。でその代わり、外であったら2割減になってしまうんですよね。マイナス採点されがちな職種だなあ。と思ったりします。


林;(笑)


町田;オープン当初は「仕事終わりに飲みにいこうよ」なんて誘われたれしましたが「この後片付けがあるから2時に待ち合わせになっちゃうんだけどいい?」と聞くと、100%回避できましたよ。休みに飲みに行った事もあるんですが、その後店で、「俺の女節」を発揮してしまう方もいらして、二人きりの飲みは難しいな。と思いました。でもこういうの、女性に限らず男性バーテンにもあるんじゃないですか?ねぇ、林さん。


林;あの、僕は妻と娘がおりますので。エヘン(咳)。お店はずっと続けられますか?


町田;お店を続けるのは・・・、極論ですが辞めなければ続きます。辞めたらそこでお店は終了なんですよね。もう本当にいろんな都合がありますけど、辞めない。それにつきます。これが難しいんですけどね。


林;わかります。他に何かこの業界を目指している人たちにアドバイスはありますか?


町田;お酒を扱う仕事をカウンターでやるにはなんというかそれなりの覚悟がいります。目には見えませんが、酔ったお客さんのエネルギーというのはハイパワーですので、真っ向から食らっちゃうと、店主が滅びます。滅びる人を何人も見てきました。ただ、ワインを飲まれる方は温厚な方が多くて、変なトラブルが起こる事もほとんどないので、それに関してはワインを選んで本当に良かったとおもっています。


林;あ、僕も全く同じでワインを選んで良かったってよく思います。でも、町田さんいつも楽しそうですよね。


町田;お客さんに「こういうお店、楽そうでいいな。いつかお店やりたいな。」と思ってもらう事が出来たらラッキーとおもっています。そんなに楽じゃないんですけどね、楽そうに演出できてるのかなって。


林;ほんと、そんなに楽じゃないですけどね(笑)


町田;カウンターメインでの飲食店の仕事はお客さんとの心の距離が近いのが魅力的ですね。そして、毎日が違う夜なので飽きません。色んな職種の方がいらっしゃるので、困っている事も大抵は解決しますし楽しいですよ、うん。楽しい。嫌な事もあるけど、そういう事は翌日に持ち越さずに忘れましょう。


林;ほんとにそうです!(笑) さて、これみんなに聞いているのですが、これから音楽はどうなっていくと思いますか?


町田;スマホで育った世代って実は結構音楽を聴いてるんじゃないかな?って思ってるんです。MACHILDAに来店する若い世代の方は入店する瞬間までイヤホンをして何かしら聴いている人が多いんですよね。そして楽曲入手方法は配信で、オーディオ機材が自宅にないようなんです。ただ、音楽を聴いている割に、酒場で好きなアーティストについて語り合うシーンはあまり見た事がありません。


林;あ、そういえばそうですね。


町田;スマホ 対 自分、のような1対1の音楽ではなく、スピーカーから流れる音楽に関心を持って共有出来る日が来るといいな、というのは私の願いです。彼らがオーディオや真空管アンプなどの良質な音に触れる場が増えて、それをカッコイイ!と思えたら、そういう流行りがくるんじゃないかな、とも思っています。で、それを仕掛ける大人もそろそろ出てきてますよね?


林;僕もそこに可能性は感じています。さて、これからはどういう風にされるご予定でしょうか?


町田;MACHILDAはオープンして今年で7年目になりますが、今の店をでできる限り続けてみたいと思っています。長く続けるとなにが起こるのか、どんな心境の変化があるのかを知らないので経験してみたいですね。それと、目の前が青い海!なグッドロケーションでB&Bを経営するのが夢です。一階はテナントにして飲食店を入れたいですね。


林;青い海の前にビルを所有している独身男性はMACHILDAに急げ、ですね。さて、そろそろみんなが待っている選曲に移りたいのですが、テーマをまず教えていただけますか?


町田;はい。「20年聴き続け今でも店でかけたい曲10選」です。


林;おお、良いですねえ。楽しみです。


01. Brecker Brothers / Some Skunk Funk

町田;スタンダードジャズよりもこういったファンク寄りなものが好きなんです。初めて聴いた時は、まあ、ぶっ飛びましたね。スピード感とトリッキーな展開に夢中になった女子高生。1993年の来日ライブにはもちろん行きました。


林;カッコいいですねえ。町田さんそうとうヤンチャなのがお好きそうですね。え、93年のライブに行ってるんですか。すごい・・・。


02. Stevie Wonder / It's You feat. Dionne Warwick

町田;非常に申し上げにくいのですが、高校に入るまで、スティービー・ワンダーは亡くなっている方だと思っていました。だって名曲を作る人は皆、額縁に写真を入れられて音楽室に飾られているじゃないですか。こんな偉大音楽家が生きているなんて奇跡のように素晴らしい!It's Youはこの世で一番好きな曲です。二人の歌声はもちろん、ピアノから始まるイントロも、優しく響くホーンも、ハーモニカもすべてが愛おしい。「この曲が世界で一番好きなんだ」なんて言う人がいたら恋に落ちますね。


林;良い曲ですよねえ。僕はちょうど懐かしいなあって感じです。MACHILDAに行って、「この曲が世界で一番好き」という男性が続出しそうですが...


03. Crusaders / Scratch

町田;このアルバムを買った時、なんだか大人の階段を登ったような気がしました。オルガンの音色っていうのはなんでこうも隙間を魅力的に演出するんでしょう。主旋律のサックスよりも、オルガンばかり聴いてしまいます。LIVEならではのグルーヴも一流。


林;すごい渋い曲ですね。やっぱりドラムをやってたからこういう「ためとか隙間のある曲」がグッとくるのでしょうか。


04. Karla Bonoff / The Water Is Wide

町田;名曲は結婚式で流しにくい歌詞。の法則ですね。今は無き新宿3丁目のBAR MARTHAで夜明けが近くなるとよく流れていました。外の景色も明かりも届かない小さな店でこの曲が流れると、決まって「ああ。外は雪、って感じがする」と言う女性がいて、それがとても大人っぽくて憧れでした。なので、この曲を聴くとついつい、「外は雪」と思ってしまいます。


林;おお、そう言われてみれば確かに「外は雪」な感じですね。こういう音楽って「誰かとの会話やその時の状況の思い出」が心のどこかにしっかりと植えつけられますね。


05. Al Kooper / Jolie

町田;イントロのスネアの入りからして相当カッコイイ!こちらも3丁目仕入れ。血管から流れ込むような幸福な音色ですよね。無駄に酔って無駄に惚れそうです。1990年代後半の酒場では聞かない日はなかった。というほどみんな大好きJolie。


林;確かに90年代後半の酒場では定番でしたね。良い曲ですよねえ。無駄に惚れそうに乾杯です。


06. Chicago / Saturday in the Park

町田;ピアノで始まる曲がとにかく好きです。さらにホーンセクションが入っていれば大好物。MACHILDAは土曜日だけ15時オープンなので昼酒ができるのですが、この曲がかかると爽快。


林;MACHILDAさん、土曜日は15時オープンですよね。みなさん、是非! でも選曲が10歳くらい年上男性と付き合ってたとしか思えない、妙な「オジサン心」をくすぐりますね。


07: Donald Fagen / I.G.Y

町田;アルバム『The Night Fly』は、音質のバランスの良さからレコーディングやPAのエンジニアがシステムチェックに使っているというのは有名な話ですが、レコード会社時代、プレゼンライブの会場で朝イチにこの曲がかかるので、聞いたら自然と気合が入る一曲です。位相好きにはたまらないですね。


林;なるほど。これ、そういう風に使われるんですね。知りませんでした。


08: 古内東子 / Strength

町田;1995年発売。日本のアーティストでこんな豪華なスタジオミュージシャンでレコーディングできる人がいたのか、と感動を覚えたアルバム。ブレッカー・ブラザーズやデヴィット・サンボーン、ボブ・ジェームス、オマー・ハキムなど、憧れのミュージシャンが勢ぞろいで、嬉しいやら悔しいやら。コーラスアレンジも秀逸。


林;え、これってそんなすごいメンツなんですね。この時期ってそういうことが可能な頃だったんですね。すごい・・・。


09: 山下達郎 / Magic ways

町田;達郎さんは私のライフワークにすることにしました。今までもこれからもずっと聴き続けるであろうアーティスト。ここ数年、店を休んででもコンサートに行っています。基本的に音楽はレコーディング音源で聴くのが一番好きなのですが、達郎さんのコンサートは自分へのご褒美です。店で流れると私の機嫌が良くなるので、度々流れるのは気のせいではありません。


林;なるほど。この流れならもちろん山下達郎ですよね。「好き」って言い続けると、いつか誰かがMACHILDAに連れてきてくれるかもですよ。


10: Four Freshmen

町田;自分の好きな4声のコーラスの歴史を探っていったらたどり着きました。フォーフレッシュメンスタイル。と呼ばれるコーラススタイルの原型だったんですね。選曲の7,8,9のアーティスト音源でも多用されています。1950年代にこれをサラッとやってのけちゃった訳ですから、革命ですよね。最高です。


林;なるほど。このスタイルが後のコーラススタイルを作り出したわけですね。こういうの最後に持ってくるのが粋ですねえ。さすがです。


町田さん、お忙しいところどうもありがとうございました。なんだかすごい人生ですね。これを読んで女性たちが「私も町田さんみたいになろう」って思ってくれると良いですね。

みなさん、MACHILDAさんも良いお店ですので是非行ってみてくださいね。


MACHILDA HP

MACHILDA twitter


やっと9月ですね。まだまだ暑い日々が続きますが、良い音楽を聴いて乗り越えたいところですね。それではまたこちらのお店でお待ちしております。

bar bossa 林伸次


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「このビール、ぬるいんだけど」とお客さまに言われたら、あなたならどう対応しますか?
その都度悩んで、自ら回答を見つけてきた渋谷のバーのマスターの約20年。
楽しく経営を続けられたのには理由がある!

「バーの重たい扉の向こうには、お客さま、店主、お酒......その他たくさんの物語が詰まっています。ぜひ、あなたもその物語に参加してみてください。」
――本文より


「bar bossa」アーカイブ

vol.1 「モニカ・サウマーゾ」 ・vol.2 高木洋介 ・vol.3 「クリスマス・ソングのボサノヴァ」 ・vol.4 柳樂光隆 ・vol.5 「1960年代当時のブラジルのボサノヴァ女性シンガー特集」 ・vol.6 松原繁久 ・vol.7 「1970年代から1980年代までのブラジルのボサノヴァ女性シンガー特集」 ・vol.8 中村ムネユキ ・vol.9 「現代のブラジルのボサノヴァ女性シンガー特集」 ・vol.10 江利川侑介 ・vol.11 「エレンコ・レーベル」 ・vol.12 田仲昌之 ・vol.13 「ルミアール・ヂスコス」 ・vol.14 定成寛 ・vol.15 寺田俊彦 ・vol.16 白尾嘉規 ・vol.17 「畠山美由紀『rain falls』 プロデューサー中島ノブユキ インタビュー」 ・vol.18 山本勇樹 ・vol.19 「ジノンさん ルシッド・フォールについて」 ・vol.20 大場俊輔 ・vol.21 「ブラジル人と演奏しているアメリカのジャズ・ミュージシャン特集」 ・vol.22 武藤サツキ ・vol.23 「Lucid Fall (The Best of)」 ・vol.24 筒井奈々 ・vol.25 「THE PIANO ERA2013」 ・vol.26 山上周平 ・vol.27 ジノン ・vol.28 東野龍一郎 ・vol.29 林伸次 ・vol.30 中村智昭 ・vol.31 齊藤外志雄 ・vol.32 染谷大陽 ・vol.33 稲葉昌太 ・vol.34 小嶋佐和子 ・vol.35 石郷岡学 ・vol.36 原田雅之 ・vol.37 松本研二 ・vol.38 塚田耕司 ・vol.39 岩間洋介 ・vol.40 中村信彦&真理子 ・vol.41 白尾嘉規 ・vol.42 田仲昌之 ・vol.43 山本勇樹 ・vol.44 新川忠 ・vol.45 川嶋繁良 ・vol.46 田村示音 ・vol.47 山崎雄康 ・vol.48 上川大助 ・vol.49 町田和宏 ・vol.50 林下英治 ・vol.51 シュート・アロー ・vol.52 高橋悠 ・vol.53 沼田学 ・vol.54 庄野雄治 ・vol.55 山本のりこ ・vol.56 渡部徹 ・vol.57 小栗誠史 ・vol.58 相澤歩 ・vol.59 土田義周 ・vol.60 榎本善一郎


bar bossa information
林 伸次
1969年徳島生まれ。
レコファン(中古レコード店)、バッカーナ&サバス東京(ブラジリアン・レストラン)、
フェアグランド(ショット・バー)を経た後、1997年渋谷にBAR BOSSAをオープンする。
2001年ネット上でBOSSA RECRDSをオープン。
著書に『ボサノヴァ(アノニマスタジオ)』。
選曲CD、CDライナー執筆多数。
連載『カフェ&レストラン(旭屋出版)』。

bar bossa
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●東京都渋谷区宇田川町 41-23 第2大久保ビル1F
●TEL/03-5458-4185
●営業時間/月~土
18:00~24:00 bar time
●定休日/日、祝
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bar bossa vol.60:bar bossa

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vol.60 - お客様:榎本善一郎さん(Yama-bra東京支部)


【テーマ:山形に行き着く前の10曲】



いらっしゃいませ。
bar bossaへようこそ。

今回はYama-bra東京支部の榎本善一郎さんをゲストにお迎えしました。


林;こんばんは。早速ですが、お飲物はどうされますか?


榎本;こんばんは。では、アルザスのピノ・ノワールをお願いします。


林;おっと素敵なご注文ですね。ではセピランドマンの美味しいピノ・ノワールがありますので、こちらにしますね。ではお生まれと小さい頃の音楽環境の話なんかをお願いできますか?


榎本;1967年、埼玉県の久喜市というところに生まれました。子供の頃は主要道路以外はまだ舗装されていない道も多かったことを覚えています。そんな田舎でしたが家にはアップライトでしたがピアノがあって兄弟(姉と妹がいます)みんなピアノを習っていました。でも僕は本当に練習とか訓練が苦手で、バイエルの下巻終了時点で挫折しました。バイエルまでは姉と同じで、曲を知っていたので譜面を見なくても弾けたのですが、その後教則本が変わりまして、譜面を読むところからが嫌でやめてしまいました。


林;男の子ってみんな挫折してしまいますよね。どんな音楽を聴いてましたか? 初めて買ったレコードも教えてください。


榎本;普通にテレビやラジオから流れる歌謡曲を聴いていました。初めて買ったレコードは月並みで「泳げたいやきくん」だったと思うのですが、擦り切れる程聴いたのは「宇宙戦艦ヤマト・ドラマ編」だと思います。超有名なスキャットのテーマ曲はもちろん、全てのセリフ、効果音を完コピして空で再現していました。今ならエアヤマトですね(笑)。相手は主に妹で、LP1枚なので多分約50分付き合わせてました(笑)。


林;(爆笑)


榎本;それが小学4年から5年の頃で、同時に漫画にハマり出し、愛読書は「マカロニほうれん荘」と「すすめ!! パイレーツ」でした。今から考えると1977年は自分の核というか根っこが決まった年な気がします。ヤマトは何よりもストーリーのみならずメランコリックなオーケストレーションにしびれていましたし、マカロニとパイレーツで今以って変わらない自分のナンセンステイストは全て説明つきます。


林;ああ、「マカロニほんれん荘」お好きなんですね。なるほど、なんか納得です。中学はどうでしたか?


榎本;1980年に中学に上がるのですが、その年にYMOに出会いました。3つ上の姉がすでにハマっていたので家にはLPがありましたが、マイファーストYMOは同級生の高山君が作ってくれたオリジナルテープでした。彼の家のステレオは録音ができなかったようで、ステレオの前でラジカセで録音されたものでした。YMO以外の色々な音が紛れていましたが、お母さんが高山君を呼ぶ声「たーちゃん、ごはんだよ」が微かに入っていたことを覚えています。


林;(笑)


榎本;その後効果音のない「クリアな」YMOを聴いた時には違和感があって(笑)、しばらくそのおかしなオリジナル感覚が残っていました。
中学時代はみんなAMラジオに夢中になっていて、深夜放送ではオールナイト・ニッポン派が多い中、僕はミスDJリクエストパレードで対抗していました。千倉真里さんというDJが好きで、彼女がここ、という時にかけていたのが佐野元春です。「Someday」です。あとはラジオをつけたら必ず流れていたのが大滝詠一の「A Long Vacation」で、実はこの2枚のLPを買うのは随分後になってからなんです。


林;ミスDJ派というのもらしいですね。


榎本;月並みにビートルズを聴き出したのも中学時代で、初めて付き合った女の子に作ってあげたカセットも中身はビートルズでした。中学時代はお金がなかったので音楽ソースはFMやAMで、カセットテープにエアチェックしたものを繰り返し聴いていました。


林;エアチェックでしたよね。高校時代はどうでしたでしょうか?


榎本;1983年に高校に進学してJR(当時は国鉄)での電車通学が始まりました。この定期を持つという変化とお小遣いの増額が僕をレコード探しという行動に導きました(笑)。高校は北浦和というところにあったのですが、まずは埼玉県人の東京へのゲートウェイ、池袋に到達。埼京線はまだなく、京浜東北線から赤羽線に乗り継いでました。パルコ文化が時代をリードしていた頃でもありますが、池袋パルコにあったオンステージヤマノには憧れのレコードや見たことのないインディー盤があって田舎のレコード店との違いに心ときめきました。ここではピーターバラカンさん司会でジョン・ルーリー来日時のイベントが開催されて、挙手して質問したことを覚えています。僕のしどろもどろの質問を聞いたピーターさんは僕にウインクして、上手く翻訳してくれました。格好良かったな。


林;え、ジョン・ルーリーのイベント! さらにピーターバラカン司会!


榎本;程なく山手線に乗り継いで新宿まで行くようになりました。ALTAの中にCISCOがあった時期があって、スリッティ・ポリッティの「キューピッド&サイケ85」の英国初回盤(タイトルロゴが金色)が発売時に全面ディスプレイされていた鮮明な記憶があります(壁一面全てスリッティ・ポリッティ!)。でも新宿といえば西新宿でその名も新宿レコード等の中古も取り扱う店が沢山あり、XTCやエルビス・コステロの初回盤やシングルを随分発見しました。


林;なるほど。池袋が入り口で次は新宿という感じなんですね。


榎本;そして遂に渋谷に上陸します(笑)。当時一番通ったのはタワーレコードでしたが、まだ移転前で今のbar bossaの近くにあった時代です。自分にとってはある種のアメリカ文化の入り口的な場所でした。アメリカ盤は比較的安かったし、シュリンクとかステッカーにしびれていました。もちろんCISCO本店にも通いましたが、当時ダイエー資本のCSVというやたらニューウェーブなレコード店が公園通りを登りきった辺りにありました。ここはコンパクト・オーガニゼーションのBOXセットが山積みされていたりとか、夢のようなお店でしたが、当時の自分でもこれでやっていけるのだろうかと心配していました。やり過ぎたWAVEというか(笑)。果たして?事情は不明ですが3年程で閉店してしまいました。


林;おお! 伝説のCSVも行かれたんですか。羨ましいです。


榎本;埼玉に戻ります。高校からの帰りによく寄ったのが大宮にあった新星堂でした。当時は新星堂が独自にベルギーのクレプスキュール・レーベルのレコードを輸入、帯をつけて販売していて、ミカドとかアンテナのミニアルバム、所属アーティストのオムニバスLPなんかを買いました。また、ダイエーのようなスーパーにもレコード売り場があって、何故か輸入盤があったりして。トーキング・ヘッズのスピーキング・イン・タングスの特殊ピクチャーレコードはそこで買いました。


林;新星堂がやってましたよね。僕も買いました。


榎本;大学に入る前に浪人生活がありましたが、そこで、予備校のあった御茶ノ水が行き先に加わります。この辺で購入する形態もCDに移行しだしました。まだ新興だった頃のレコファンが駅並びにあってコンパクトXTCというベストCDを発見して嬉しかったことを記憶しています。


林;僕も当時XTCには夢中になりました。


榎本;埼玉の田舎出身の子供がレコード店を探す、ために都内に進出していったプロセスが以上なのですが、そもそも嗜好の中心には引き続きYMOがあって、彼らの関連盤や好きと言っているレコードを探す、というのが当時の行動規範(笑)でした。現在においても坂本龍一さんは最も好きなアーティストの1人ですが、高2の秋にリリースされた「音楽図鑑」は今だに心のベスト1候補です。これが1984年。また、細野さんの起こしたレーベル、ノン・スタンダードからリリースされた、ピチカートファイヴの「オードリー・ヘップバーン・コンプレックス」。小西康陽さんも今に至るまでその音楽に魅了され続けている1人で、スタートは1985年でした。確か坂本さんがFM番組「サウンド・ストリート」でかけていて、翌日慌ててレコード屋に買いに行ったと思います。ピチカートはその後CBSソニーに移籍して「カップルズ」という名盤をリリースします。本気で好きになったのはここからかもしれません。ヤマトで刷り込まれたオーケストレーション・ポップス好きの根っこがひきづりだされた、というのは後から強引に結びつけた自分史ですが、このアルバムでロジャー・ニコルズを初めて知りましたから、あながち嘘とも言えない気がします。

小西さんは当時「テッチー」という月刊誌でThe Best of Greatest Hitsという連載を持っていました。そこでピチカートは小西さんと高浪さんだけになり、新ボーカルを迎えてレコーディング中であることが語られていた筈です。別でそれがオリジナルラブというインディーバンドの田島貴男という人であることを知りますが「ベリッシマ」というこのアルバムのテーマはソウル。特にフィリーソウルやマービン・ゲイ、ボビー・ウーマックなど影響されたレコードを紹介した号は衝撃的でした。1988年9月21日、僕は青山にあったパイド・パイパー・ハウスに「ベリッシマ」を買いに行きます。当時長門さんがピチカートのマネージメントしていることを知っていたので、パイドで絶対買おうと決めていました。あと、何かオマケがつくかもしれない、という期待も大きかった。残暑の日差しの残る昼過ぎに店についてドアを開けると、ムード歌謡のような音楽が流れていて、あれっと思ったのですが、すぐにこれがピチカートの新作なんだと気付きました。3曲目の「聖三角形」という曲です。ドキドキしながらCDをレジに持っていく時にはスライ・マナーの「ワールド・スタンダード」が流れている。この時の高揚感は多分一生忘れないと思います。会計を済ませると、「これ、どうぞ」と宣伝用ポスターを渡されました。「ベリッシマ」のフロント・カバーは多分自分の持っているレコードの中でも1、2を争う程好みなのですが、このポスターはフレームに入れて今だに部屋に飾っています(笑)。


林;おおお、当時の一番正しい音楽少年ですね。さて、大学に入って何か状況は変わりましたか?


榎本;高校時代もバンドをやっていたのですが、浪人したりでしばらく楽器からは離れていました。でもとにかく音楽が好きなままでしたので、自然にバンド・サークルに入りました。自分が入った「リアル・マッコイズ」は先輩に竹内まりやさん、杉真理さんなんかがいることから想像できるような、良質のポップス、Jazzフュージョンなんかを得意とするサークルでした。当時は「イカ天」全盛でしたが、そういった音楽に対するアンチな感じでポップスを演奏していました。なんか逆に屈折している感じです(笑)。


林;イカ天のあのバンドブームな感じへのアンチでポップスという雰囲気があったんですね。さすが慶応ですね。


榎本;ここでもピチカートです。大学1年の6月、ニューアルバム「女王陛下のピチカートファイヴ」のレコ発ツアーが名古屋から始まりました。僕は6月25日に、当時六本木にあったインクスティックでのライブに一番仲の良かった同級生と2人で観に行きました。田島さんのライブを観たのはこの時が初めてだったのですが、クネクネしながら歌う姿にびっくりしたものの、ボーカリスト、パフォーマーとしての圧倒的な存在感に一発でノックアウトされました。その後定番となるアンコールでの「夜をぶっとばせ」の弾き語りは、この時がベストと僕は思っています。このライブを一緒に観た友人も同様に衝撃を受けていて、当時ベースを弾いていたものの上手くもならないし辞めようかぐらい悩んでいたのが、ピチカートみたいな音楽をやりたい、自分は歌う、と決心してくれました(笑)。自分もベースだったので、これで一緒にバンドを出来るようになった訳ですが、結局卒業まで彼とは一番好きな音楽を演奏し続けたので、そのきっかけとなった一夜だったと言えます。


林;良い話ですね。


榎本;彼とのバンドではほぼコピーを演っていましたが、ピチカートは勿論、全曲小坂忠のアルバム「ほうろう」からのライブをやったり(その後渋谷系で再度脚光を浴びるアルバムですが、当時の僕らはアングラロックと笑われていました)、後半はCDリイシューにより再度流行りだしていたAOR(スティーリー・ダン、ドナルド・フェイゲン、ボズ・スキャッグス等)を演奏していました。このバンド以外も色々演りましたが、メンバーがオリジナルを持ち寄る企画もありました。当時好きだった女の子が作曲、ボーカルのバンドで、僕はこのためにシーケンサー付きのシンセサイザーを購入し、自作曲を作りました。「翳りの朝」という曲で、当時はまったく意識していませんでしたがイメージ的には吉田美奈子に影響を受けていると思います。因みに曲自体はその女の子のキャラと全く合っていなくて、中間部に別の先輩女子にスキャットソロを入れてもらいました。これも美奈子風。ギターはこちらもずっと一緒に演っていた同級生で、上手く曲を聴けるものに昇華させてくれましたが、今だったら大村憲司を聴かせて、こんな感じで、とダイレクションすると思います。因みにこれをきかっけに彼女が自分に振り向いてくれることはありませんでした(笑)


林;(笑)


榎本;レコード店ではこの時代は自分的にはWAVE全盛期でした。六本木店は勿論のこと、渋谷店は渋谷に行ったら必ず寄っていました。何故かは分かりませんがピチカートなんかのプロモ盤がさりげなく売られていて、当時はネットなんてなかったので足繁く通ってゲットしていました。


林;え、プロモ盤売ってたんですか... さて、榎本さんと言えば、今でもほぼ音楽漬けの日々で有名ですが、大学卒業後は音楽の道に進もうとは思わなかったのでしょうか?


榎本;サークルはコピー中心の活動で、どちらかというと好きな曲を如何に正確に再現するかをテーマにやっていたことがあります。先輩でプロのスタジオミュージシャンになった方々もいましたが、僕は本番で人前で演奏するよりバンドでの練習が好きだったりで。音楽関連の道に、ということも周りでは当然意識されていましたが、就職活動が本格化していく中で、何故か僕は業界、マスコミなんかも含めて何か違うな、と思うようになりました。大学時代に遊びすぎたので、真っ当な大人になりたい、と思ったというか、当時の現実が続くなんて信じることができませんでした。


林;ああ、なんとなくわかります。僕も当時そういう気持ちでした。


榎本;渋谷系が始まったとされる1993年に社会人になり北海道(千歳市)に赴任しました。可処分所得は段々増えますから、当然CDやレコード購入は加速しました(笑)。当時は札幌での購入が中心でしたが、ピチカートファイブのアルバムの発売日(の週末)とライブの時は有給休暇も取りながら東京に帰ってました。映画「男と女」に出会ったのもこの頃です。多分サバービアの影響で知ったのですが、本当に衝撃を受けたことを覚えています。はい、月並みですがサバービアの影響は絶大です。1998年末に東京に戻ってきてからも、その後地方に転勤になっても(笑)、渋谷には通い続けていますので、もう30年以上渋谷に行き続けていると思います。渋谷在住者、あるいは渋谷で働く人以外の日本人での渋谷来訪回数はベスト100圏内だと自負しています(笑)


林;(笑)さて、これはみんなに聞いているのですが、これからの音楽はどうなると思いますか?


榎本;今だにどうも配信とか、YouTubeでさえ馴染めないのでCDやアナログでの販売はなくなって欲しくないです。ただ僕は制作者サイドの事情は正確には分からないので、林さんのレストラン話ではありませんが、とにかく買い続けることしか出来ません。
ところでライブ全盛ですよね、今。僕は「ものんくる」に出会って以来、都内を中心に若手のJazzミュージシャンのライブに行く機会が増えたのですが、やがて、センスが良く技術水準の高い20代を中心とした若手ミュージシャンの層があることに気づきました。先日音楽評論家の柳樂さんとお話した時、今の若者は過去の音楽を遡って勉強する、というか聴くことをしないのだけど、Jazzというジャンルだけはまだそういった伝統が残っていると思う、と伺いました。Jazzだから、みたいです。確かに彼らはJazzの過去を共通言語として話します。一方、今までのミュージシャンと明らかに違う育ち方(JTNC的かもです)も感じて、僕はそういった彼らを観ることによってまだまだ音楽の未来が楽しみだな、と素朴に思っています。例えば、ドラマーの石若駿さん。本当に毎日どこかで叩いているので、試しに彼を追ってみるとすぐに理解できるのではないかと思います。


林;なるほど。この質問への答え、人によってそれぞれなのですが、現場に足を運び続けている榎本さんらしい前向きなお話ですね。さて、榎本さん、これからはどうされるご予定ですか? カフェをやりたいなんて話も以前、カウンターでされていましたが。


榎本;「これからの人生。」の方が短いことを思うと何か世の中に恩返しできないかな、と考えることが多くなりました。カフェだとかbar bossaのような空間を僕が好むのは出会いとか、そこから始まる人間関係があるからです。あるいはストレートにライブハウスとか。あのアーティストのあのライブをあの時に、なんていう体験から起こる何かってロマンチックですよね。音楽を共通項に何か残せることはないか、結構真剣になってます。


林;おお、榎本さんの今後が楽しみです。では、そろそろみんなが待っている選曲に移りますが、テーマは何でしょうか?


榎本;「山形に行き着く前の10曲」です。以前このコラムにも登場された石郷岡さんのYama-braへの出会いは、僕にとってはひょっとしてここに行き着くために色々な音楽を聴いてきたのでは、と思うぐらいの出来事でした。Yama-braで紹介されるようなブラジルやアルゼンチンの音楽の中でも自分が心惹かれるのは、最近の言い方ではメランコリーといった感覚だと思っています。その源流を辿ったらこんな感じになりましたが果たして繋がっているのか・・・。


林;楽しみですね。では聴いてみましょうか。


01. 宇宙戦艦ヤマト「無限に広がる大宇宙」

榎本;いきなりアニメも何ですが、このメロディー、アレンジが自分のルーツの1つです。最近のリメイクはプロデューサーの西崎義展さん、音楽の宮川泰さんの息子さん達が手がけていて、見事なクオリティでした。必ずこのメロディーは流れますから、一瞬で心鷲掴みにされちゃいます(笑)。


林;最初にアニメ、もちろんです。ちなみに僕は銀河鉄道999でした。


02. 高橋幸宏「今日、恋が」

榎本;スネークマンショーの2nd収録曲ですが、「男と女」のサントラ以上に「男と女」ですが本物に出会う前に刷り込まれたロマンの感覚がこれです。高橋幸宏さんの初期の代表作に「サラヴァ」がありますが、それは坂本龍一さんがクラウス・オガーマン風のストリングスアレンジを付けた傑作で、60周年記念ライブでもラストに歌われていました。


林;おお、今聴くとまたすごく良いですねえ。


03. Pizzicato Five「聖三角形」

榎本;ピチカート・ファイヴの2ndフルアルバムは、冒頭から畳み込むように3曲、新加入の田島貴男さんの曲が続くのですが、いかにこの時期が作曲の部分においても伸び盛りであったか感じさせる煌めきというか奇跡感があります。1曲目「惑星」は自分的にはヤマト~マービン・ゲイ「What's going on」からつながるスキャット三部作の1曲です(笑)。


林;ピチカートはどの曲でくるのかと思ってたらこれですか。榎本さん、僕が想像してたより「男っぽい」ですね。


04. Peirre Barouh「Samba Saravah」

榎本;bar bossaの定番、そしてこのビデオも定番ですね。多くの人がそうなのかもしれませんが、サンバ、ボサノヴァの巨人達の名が語られるこの名シーン、特に「サラヴァ」の声の響きによって、一発でブラジルへの幻想が擦り込まれました。ブラジル音楽が特別なものになった瞬間です。ピエール・バルーは永遠の憧れで、時々、渋谷のサラヴァ東京でBBAサポートのライブなんかに参加する時には特別な気持ちになります。「男と女」、今年50周年だそうですね。自分はその半分ぐらいしか付き合っていませんが。


林;ほんと、名シーンですよね。そうですか、50周年なんですね。


05. Antonio Carlos Jobim「Chovendo na Roseira」

榎本;ジョビンのレコードは学生時代にJTのプレゼントで「Wave」のCDに当選したものが最初です。緑です。ジョビン、有名過ぎて手元に置きたいと思っていなかったのですが、真剣に聴いていくと自分のボサノヴァへの知識が偏狭なものだったと反省しきりでした。この曲が一番好きです。クラウス・オガーマンのストリングスが効いてますよね。


林;ジョビンはこの曲ですか。いやあ、榎本さん、ほんと嬉しいです。この曲ですよね。


06. 坂本龍一「The Last Emperor (Theme)」

榎本;あまりに有名過ぎて誰も挙げないと思うのですが(笑)。坂本龍一さんのサントラは勿論「戦メリ」を擦り切れる程聴きましたが、この曲はいつ聴いても涙がでますね。イントロからメインテーマに進むところのアレンジ(1分35秒から20秒程)は聴く度にはっとします。


林;おお、僕もその個所で今鳥肌がきました。


07: 中島ノブユキ「八重、新たなる決意~覚馬の正義」

榎本;中島さんの音楽との出会いは当時渋谷パルコのB1にあったアプレミディ・セレソンで購入した「エテパルマ」です。橋本さんPushしてました。2013年はNHK大河「八重の桜」のサントラを担当されました。坂本さんのメインテーマが号泣を誘うものであったとしたら、中島さんの楽曲達は正にメランコリーで、僕は映像を思い出しては一人じんわりと涙しています(笑)この頃は結構定期的に馬喰町のフクモリで楽曲を披露してくれていました。


林;中島さん、今、世界へとはばたいていますね。


08: Maria Schneider Jazz Orchestra「Choro Dancado」

榎本;マリア・シュナイダー、僕にとっては絶対的な存在で昨年はN.Y.までライブを観に行ってしまいました。最近のフォロアーの続出ぶりが影響の大きさを実感させます。アルゼンチンの「Nadis」とかN.Y.の「Christopher Zuar Orchestra」とか、今年も傑作が続いています。日本の挾間美帆さんなんかも最高です。


林;なるほど。榎本さん、マリア・シュナイダーお好きなんですね。なるほど、すごく納得です。ショーロですね。良いですねえ。


09: ものんくる「南へ」

榎本;明治大学のビックバンドに在籍していた角田隆太さんが吉田沙良さんというボーカリストに出会って構想した音楽がこういったジャズとポップスのハイブリッド=ラージアンサンブル的アレンジということだったようです。同世代のミュージシャンが皆シンパシーを感じ、参加することの喜びを僕に語ってくれました。これはアルバムの告知映像ですが、彼らの音楽の高揚感が良く出ていると思います。角田隆太さんは間違いなくこの世代を代表する才能であり、これからの日本の音楽の中心にいて欲しい存在です。


林;榎本さん、大プッシュのものんくる。榎本さんのツイッターを見ていると本当に惚れ込んでいるんだなって。榎本さんの常に現場主義な感じもらしいですね。


10: Tatiana Parra & Andres Beeuwsaert「Milonga Gris」

榎本;最後にYama-bra的楽曲を1曲。昨年のピアノ・エラでの奇跡の共演も記憶に新しいですが、タチアナとかアンドレスの音楽を考えると何故かいつも切なくなります。また、僕には今まで聴いてきた音楽とは別物のような新鮮な感覚と、今まで聴いてきて惹かれてきた音楽との共通性というか連続性というか、その2つが同居する不思議な感覚を覚えます。世界にはまだまだ素晴らしい音楽があるんだ、と信じさせてくれる音楽です。


林;衝撃的な楽曲ですよね。何度聞いてもハッとさせられます。


榎本善一郎twitter


榎本さん、お忙しいところどうもありがとうございました。今回は色々とお話を聞いて、音楽って本当にいろんなものや人や記憶がつながっていくものだなあと思いました。世界の音楽がこのまま美しいままでいてほしいものですね。

みなさん、夏が本格的になってきましたね。この夏も素敵な音楽に出会えると良いですね。それではまたこちらのお店でお待ちしております。

bar bossa 林伸次


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【林 伸次 近著】

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■タイトル:『ワイングラスのむこう側』
■著者:林 伸次
■発売日:2016年3月26日
■出版社: KADOKAWA
■金額:¥1,404 単行本

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東京・渋谷で20年、カウンターの向こうからバーに集う人たちの姿を見つめてきた、ワインバー「bar bossa(バールボッサ)」の店主・林伸次さん。バーを舞台に交差する人間模様。バーだから漏らしてしまう本音。ずっとカウンターに立ち続けている林さんだから知っているここだけの話。


「bar bossa」アーカイブ

vol.1 「モニカ・サウマーゾ」 ・vol.2 高木洋介 ・vol.3 「クリスマス・ソングのボサノヴァ」 ・vol.4 柳樂光隆 ・vol.5 「1960年代当時のブラジルのボサノヴァ女性シンガー特集」 ・vol.6 松原繁久 ・vol.7 「1970年代から1980年代までのブラジルのボサノヴァ女性シンガー特集」 ・vol.8 中村ムネユキ ・vol.9 「現代のブラジルのボサノヴァ女性シンガー特集」 ・vol.10 江利川侑介 ・vol.11 「エレンコ・レーベル」 ・vol.12 田仲昌之 ・vol.13 「ルミアール・ヂスコス」 ・vol.14 定成寛 ・vol.15 寺田俊彦 ・vol.16 白尾嘉規 ・vol.17 「畠山美由紀『rain falls』 プロデューサー中島ノブユキ インタビュー」 ・vol.18 山本勇樹 ・vol.19 「ジノンさん ルシッド・フォールについて」 ・vol.20 大場俊輔 ・vol.21 「ブラジル人と演奏しているアメリカのジャズ・ミュージシャン特集」 ・vol.22 武藤サツキ ・vol.23 「Lucid Fall (The Best of)」 ・vol.24 筒井奈々 ・vol.25 「THE PIANO ERA2013」 ・vol.26 山上周平 ・vol.27 ジノン ・vol.28 東野龍一郎 ・vol.29 林伸次 ・vol.30 中村智昭 ・vol.31 齊藤外志雄 ・vol.32 染谷大陽 ・vol.33 稲葉昌太 ・vol.34 小嶋佐和子 ・vol.35 石郷岡学 ・vol.36 原田雅之 ・vol.37 松本研二 ・vol.38 塚田耕司 ・vol.39 岩間洋介 ・vol.40 中村信彦&真理子 ・vol.41 白尾嘉規 ・vol.42 田仲昌之 ・vol.43 山本勇樹 ・vol.44 新川忠 ・vol.45 川嶋繁良 ・vol.46 田村示音 ・vol.47 山崎雄康 ・vol.48 上川大助 ・vol.49 町田和宏 ・vol.50 林下英治 ・vol.51 シュート・アロー ・vol.52 高橋悠 ・vol.53 沼田学 ・vol.54 庄野雄治 ・vol.55 山本のりこ ・vol.56 渡部徹 ・vol.57 小栗誠史 ・vol.58 相澤歩 ・vol.59 土田義周


bar bossa information
林 伸次
1969年徳島生まれ。
レコファン(中古レコード店)、バッカーナ&サバス東京(ブラジリアン・レストラン)、
フェアグランド(ショット・バー)を経た後、1997年渋谷にBAR BOSSAをオープンする。
2001年ネット上でBOSSA RECRDSをオープン。
著書に『ボサノヴァ(アノニマスタジオ)』。
選曲CD、CDライナー執筆多数。
連載『カフェ&レストラン(旭屋出版)』。

bar bossa
bar bossa
●東京都渋谷区宇田川町 41-23 第2大久保ビル1F
●TEL/03-5458-4185
●営業時間/月~土
18:00~24:00 bar time
●定休日/日、祝
お店の情報はこちら

bar bossa vol.59:bar bossa

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vol.59 - お客様:土田義周さん(ダウンタウンレコード)


【テーマ:当店のレコード在庫から選んだ10曲】



いらっしゃいませ。
bar bossaへようこそ。

今回はダウンタウンレコードの土田義周さんをゲストにお迎えしました。


林;いらっしゃいませ。早速ですが、お飲物はどうされますか?


土田;辛口の白ワインをお願いします。


林;確か土田くんはシャルドネが美味しいって言ってたような気がするからブルゴーニュ・ブランにしますね。


土田;じゃあそれでお願いします。


林;お生まれは?


土田;1969年東京の下町、江東区東陽町生まれです。私が育った深川地区は江戸時代から材木の町として栄えた場所で、父方の祖父が製材業、母方の祖父の家も材木問屋を営んでいました。父はサラリーマンですが、自分を含め三代続いた深川っ子です。


林;やっぱり材木関係なんですね。小さい頃の音楽環境と最初に買ったレコードを教えてください。


土田;実家には家具調の大きなステレオセットがありましたが、幼少の僕はもっぱらてんとう虫のポータブル・プレイヤーでアニメソングのレコードを聴くのが好きでした。そのとき初めて買ったレコードは...忘れてしまいました。
当時の興味の中心は漫画やアニメで、将来は漫画家を目指し友達と二人で藤子不二雄気取りでノートにマンガを連載していました。


林;同い年としては、漫画家志望って多かったように思います。中学はどうでしたか?


土田;中学は越境して千代田区神保町の中学に通いました。本屋や編集者の子弟が多くて、地元の友達と比べると皆大人びた印象で刺激をうけました。町中がレコードと本だらけで、一気に興味が音楽や文学へ移ったのがこの時期です。


林;神保町の中学! 良いですねえ。


土田;中一で大滝詠一さんのLPレコード「ロング・バケイション」を手に入れて、それから一年くらいは毎日欠かさず聴き続けました。ロンバケがまちがいなく僕の人生で一番聴いたレコードであり、その音像はいまだ体の隅々までしみこんでいます。


林;僕も全く同じ時期に聞き込みました。


土田;飯田橋に佳作座という二本立ての名画座があって、千円で入場料とホットドッグ、コーラを買っておつりがくるお気に入りの場所でした。その佳作座である日、中二の僕は「アメリカン・グラフィティ」と出会います。劇中ノンストップでかかるロックンロール・ナンバーに強い衝撃を受けました。1983年は'70年代末に興ったロックンロール・リヴァイヴァルも終焉し、たぶん「ロックンロール」は当時一番イケてないジャンルだった。でも「これがオレの音楽だ!」という直感がした。すぐに秋葉原の石丸電機レコード館でサントラLPを購入しました。


林;なるほど。前から気になっていたのは都会っ子って、早い段階で「自分だけの聞き方」みたいなのを見つけますね。じゃあ高校はどうなんでしょうか。


土田;高校も御茶ノ水や秋葉原に近かったので、放課後はたいていレコード屋廻りをしていました。


林;あんまり今と変わらない(笑)高校卒業後は?


土田;大学在学中の'89年にはじめてニューヨークを訪れました。東京のレコード店で壁に飾ってあるレア盤が、蚤の市や中古レコード店の格安コーナーで数ドル出せば手に入るのにビックリしました。

当時はバブル最盛期で、日給一万五千円になる海賊盤CD販売のアルバイトで稼いでは外国へレコードを買いに出かけるという学生生活を過ごしました。


林;それもあんまり今と変わらない(笑)大学卒業後は?


土田;学校を卒業する際、将来は中古レコード店を開業したいと考えました。まずはノウハウを知るために、同業大手のレコードチェーン店レコファンに勤めました。
ここで林君と出会うことになります。


林;ですね。


土田;レコファンでは本部で仕入れをしながら、海外買付にも連れて行って頂きました。すごく良い経験を積ませてもらったし、楽しかった思い出しかありません。


林;うわ、レコファンの人たち、この箇所を読んだら泣きますね。


土田;当時 実家住まいだったので財形貯蓄を頑張り、10余年勤務ののち2005年、35歳でダウンタウンレコードをオープンしました。当初から店の在庫はレコードが100%、CDは取り扱わないと決めていました。


林;なるほど。


土田;2005年の時点でCDには衰退の兆しが見えていて未来がないと思ったのと、やっぱり自分はアナログレコードが好きだったので、これで勝負しようと考えた結果です。

開業から今迄、スタイルは変えていません。大量に仕入れて大量にさばくという、大手のやり方と張り合っても勝負にはならないので、ウチはどんなレコードにもコメントを書き、試聴も自由にできるスタイルで一枚一枚を丁寧に売っていこうという考えです。

あと、インターネット販売はやらないぞ、とも決めていました。もし自分がお客さんなら、HPで在庫がわかってしまう店舗に行ってみようとは思わない。ツイッターで日々オススメレコードはつぶやきますが、全体としてはブラックボックス化して、来てくださるお客さんだけにわかるようにしたいんです。


林;それは他の店とのすごい差別化ですね。


土田;お客さんと会話しながら商売ができる対面販売が好きだし、これからもこのスタイルに拘っていこうと思います。


林;これ、みんなに聞いているのですが、これからの音楽はどうなると思いますか?


土田;「これからの音楽」と聞くと、すごく壮大な感じがしてイメージがわきません。
ただ、アナログレコードのこと、中古レコード店の未来については日々考えています。

アナログレコードがブームと言われてますが、まだまだ実感として物足りません。これからも中古レコード店を続けていくには流通量が重要だと思います。過去生産されたレコードだけでなく、これから市場に出回るレコードの数が多くないとダメなんです。最近、国内に2社目のレコードプレスメーカーができて話題になりましたが、それでもほぼ寡占状態。国内新品レコード価格は高止まり、若い人たちには手が届かない状況です。参入する企業が増え競争力が働き、新しい技術が導入され低コストで作られた新品レコードの値段が三千円を切る状況になれば、恒常的にレコード業界は繁栄すると思うのですが。
僕にもし余裕があれば、絶対レコードプレス工場を作って参入したいですね。


林;え、土田くん、プレス工場、参入したいんだ。でも、それも一つの方法かもしれませんね。さて、これからはどうするご予定でしょうか?


土田;死ぬまでずっと、このままレコード店を続けていきたいと思っています。
この業界は知識と体験の蓄積がモノを言うので、歳をとればとるほど成熟して良い仕事ができるんです。
レコードを持ち運びできる体力を維持しながら頑張ります!


林;カッコいいですねえ。それではみんなが待っている選曲に移りましょうか。どんなテーマで選曲をしましたか?


土田;当店のレコード在庫から10曲選びました。


林;お、この10曲はダウンタウンレコードで買えるわけですね。レコード屋っぽくて良いですねえ。それでは1曲目は?


01. robert mitchum - jean and dinah

1_写真 2016-05-18 17 05 56.jpg
US盤LP ¥5,800


土田;当店カリプソコーナーからご紹介します。米国のタフガイ俳優ロバート・ミッチャムがマイティ・スパロウ作品を歌った「ジーン・アンド・ダイナ」。トリニダード・トバゴでの撮影でカリプソに魅了された彼が直々に制作した本格カリプソ・ヴォーカル・アルバム「カリプソ・イズ・ライク・ソー...」からのゴキゲンなナンバーです。


林;おお、さすがレコード屋店主って感じのところから面白い曲でせめてきますねえ。


02. steve alaimo - i don't know

2_写真 2016-05-18 17 32 58.jpg
US盤LP レアステレオ盤 ¥5,800


土田;続いてスカコーナーから、'60年代にマルチタレントとして活躍した米国のアイドル・シンガー、スティーヴ・アライモ'65年のスカ・アルバム「スターリング・スティーヴ・アライモ」から。ジャマイカンR&Bデュオ、ブルース・バスターズ「アイ・ドント・ノウ」トースティングが楽しいポップコーン・スカ・カヴァー。


林;これ、カッコいいですね。アメリカ人アイドルがスカって、僕としては全くわからないジャンルなのですが、レコード屋店主をやってるとこういうのがいくらくらいなのか把握しておくっていうのが鍵ですよね。


03. henry mancini - free! caterina valente singers

9_写真 2016-05-20 15 24 22.jpg
US盤LP ¥1,600


土田;サントラコーナーから、ヘンリー・マンシーニが音楽を担当したパティ・デューク主演'69年公開の青春映画「ナタリーの朝」OSTより挿入曲「フリー!」。清涼感溢れる男女スキャット・コーラスをフィーチャーしたマンシーニ・タッチのソフトロック・インスト。


林;実はマンシーニのアルバムを集めてたのですが、これ、意外と見つからないんですよね。¥1600! でもマンシーニってそのくらいなんですよね...。


04. caterina valente singers - moon river

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UK盤LP  ¥4,500


土田;ヴォーカルグループコーナーから、カテリーナ・ヴァレンテ率いる男女混成ヴォーカル・カルテットによるヘンリー・マンシーニ作品「ムーン・リヴァー」カヴァー。華麗なスキャット・ワーク、弦のピチカートの響きがキュートなゆるめのラウンジ・ヴォーカル曲。


林;カテリーナ・ヴァレンテのこういう可愛いムーン・リヴァーがあるんですね。うーん、これは高そうな音がします。


05. marisol - bossa nova junto a ti

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スペイン盤4曲入りEP ¥2,000 UK盤LP


土田;サントラコーナーから、'60年代に一世を風靡したスペインのアイドル、マリソルが主演したミュージカル映画「ルンボ・ア・リオ」からアウグスト・アルグエロが手掛けた軽妙洒脱なスパニッシュボサ曲。


林;へええ。マリソルのボサノヴァ。「ルンボ・ア・リオ」っていうミュージカル映画があるんですね。


06. genevieve grab - le gendarme de saint-tropez

7_写真 2016-05-20 15 09 59.jpg
国内盤EP ¥1,600


土田;サントラコーナーから、'64年のフレンチ喜劇映画「大混戦」主題歌をヒロインのジュヌヴィエーヴ・グラが歌った「サントロペのお嬢さん」。弾けるリズム、溌剌とした歌声に胸躍るビッグバンドツイスト。


林;うわ、こういうの見つけるのって「レコード屋冥利」につきるというか、たまんないですね。¥1600!


07: jeanne moreau - embrasse moi

5_写真 2016-05-19 19 50 35.jpg
フランス盤5曲入りEP ¥3,000


土田;サントラコーナーから、ジャン=ポール・ベルモンドとジャンヌ・モローが主演した'63年公開の犯罪コメディ映画「バナナの皮」OST。スウィングル・シンガーズのワード・スウィングルが作編曲を担当、ジャンヌ・モローが歌うキュートな4ビート・ジャズ。


林;土田くんのコメントが「思わず買いたくなるような」もう、それが最高です!


08: everly brothers - walk right back

3_写真 2016-05-18 18 23 33.jpg
US盤LP ¥1,400


土田;ロックコーナーから、米国ナッシュビルの兄弟デュオ、エヴァリー・ブラザーズの黄金期ワーナー・レーベル音源ベスト収録曲「ウォーク・ライト・バック」。大滝詠一が松田聖子へ提供した楽曲「冬の妖精」でイントロを引用した、クロース・ハーモニーが美しい名曲。


林;うわ、本当に松田聖子の「冬の妖精」のイントロですね。エヴァリー・ブラザーズなんだ。大瀧詠一ならではですね。でも土田くん、ほんと詳しい...


09: arther alexander - where have you been

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US盤EP ¥1,000


土田;ソウルコーナーから、ビートルズがカヴァーした「アンナ」作者として知られる米国カントリーソウルSSWアーサー・アレキサンダー'62年作「ホエア・ハヴ・ユー・ビーン」。大滝詠一が「恋するカレン」でまんまサビメロを使用した、バリー・マン&シンシア・ワイル作の甘く切ないバラード。


林;あ、ほんとだ。「恋するカレン」ですね。あ、ほんとだ...


10: petula clark - downtown

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こちらは非売品です。


土田;最後はペトゥラ・クラーク'64年の代表曲「恋のダウンタウン」。"寂しかったり悩み事を抱えていたらダウンタウンに出かけなさい、街の賑わいがあなたを幸せにしてくれるはず"と歌った当店の聖歌です。開店当初売上が伸びず苦戦している時、このレコードを聴いて元気をもらいました。


林;名曲ですよね。でも、どのお店にも「売り上げが悪い時の曲」ってありますよね。ほんと、あるんですよねえ。


土田くん、今回はお忙しいところどうもありがとうございました。

みなさん、ダウンタウンレコード、是非、行ってみてください。現代美術館も近くにあるし、いろんな下町の美味しいお店もあるから、デートコースにぴったりですよ。


●公式HP
http://www.downtownrecords.jp/
●twitter
https://twitter.com/dtr_tokyo


やっと夏が始まりましたね。今年の夏はどんな音楽を片手に過ごす予定ですか? 
良い音楽に出会えると良いですね。
それではまたこちらのお店でお待ちしております。


bar bossa 林伸次


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【林 伸次 近著】

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■タイトル:『ワイングラスのむこう側』
■著者:林 伸次
■発売日:2016年3月26日
■出版社: KADOKAWA
■金額:¥1,404 単行本

アマゾン詳細ページへ


東京・渋谷で20年、カウンターの向こうからバーに集う人たちの姿を見つめてきた、ワインバー「bar bossa(バールボッサ)」の店主・林伸次さん。バーを舞台に交差する人間模様。バーだから漏らしてしまう本音。ずっとカウンターに立ち続けている林さんだから知っているここだけの話。


「bar bossa」アーカイブ

vol.1 「モニカ・サウマーゾ」 ・vol.2 高木洋介 ・vol.3 「クリスマス・ソングのボサノヴァ」 ・vol.4 柳樂光隆 ・vol.5 「1960年代当時のブラジルのボサノヴァ女性シンガー特集」 ・vol.6 松原繁久 ・vol.7 「1970年代から1980年代までのブラジルのボサノヴァ女性シンガー特集」 ・vol.8 中村ムネユキ ・vol.9 「現代のブラジルのボサノヴァ女性シンガー特集」 ・vol.10 江利川侑介 ・vol.11 「エレンコ・レーベル」 ・vol.12 田仲昌之 ・vol.13 「ルミアール・ヂスコス」 ・vol.14 定成寛 ・vol.15 寺田俊彦 ・vol.16 白尾嘉規 ・vol.17 「畠山美由紀『rain falls』 プロデューサー中島ノブユキ インタビュー」 ・vol.18 山本勇樹 ・vol.19 「ジノンさん ルシッド・フォールについて」 ・vol.20 大場俊輔 ・vol.21 「ブラジル人と演奏しているアメリカのジャズ・ミュージシャン特集」 ・vol.22 武藤サツキ ・vol.23 「Lucid Fall (The Best of)」 ・vol.24 筒井奈々 ・vol.25 「THE PIANO ERA2013」 ・vol.26 山上周平 ・vol.27 ジノン ・vol.28 東野龍一郎 ・vol.29 林伸次 ・vol.30 中村智昭 ・vol.31 齊藤外志雄 ・vol.32 染谷大陽 ・vol.33 稲葉昌太 ・vol.34 小嶋佐和子 ・vol.35 石郷岡学 ・vol.36 原田雅之 ・vol.37 松本研二 ・vol.38 塚田耕司 ・vol.39 岩間洋介 ・vol.40 中村信彦&真理子 ・vol.41 白尾嘉規 ・vol.42 田仲昌之 ・vol.43 山本勇樹 ・vol.44 新川忠 ・vol.45 川嶋繁良 ・vol.46 田村示音 ・vol.47 山崎雄康 ・vol.48 上川大助 ・vol.49 町田和宏 ・vol.50 林下英治 ・vol.51 シュート・アロー ・vol.52 高橋悠 ・vol.53 沼田学 ・vol.54 庄野雄治 ・vol.55 山本のりこ ・vol.56 渡部徹 ・vol.57 小栗誠史 ・vol.56 渡部徹 ・vol.57 小栗誠史 ・vol.58 小栗誠史


bar bossa information
林 伸次
1969年徳島生まれ。
レコファン(中古レコード店)、バッカーナ&サバス東京(ブラジリアン・レストラン)、
フェアグランド(ショット・バー)を経た後、1997年渋谷にBAR BOSSAをオープンする。
2001年ネット上でBOSSA RECRDSをオープン。
著書に『ボサノヴァ(アノニマスタジオ)』。
選曲CD、CDライナー執筆多数。
連載『カフェ&レストラン(旭屋出版)』。

bar bossa
bar bossa
●東京都渋谷区宇田川町 41-23 第2大久保ビル1F
●TEL/03-5458-4185
●営業時間/月~土
18:00~24:00 bar time
●定休日/日、祝
お店の情報はこちら

bar bossa vol.58:bar bossa

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vol.58 - お客様:相澤歩さん


【テーマ:うたいまわしがグっとくる10曲】



いらっしゃいませ。
bar bossaへようこそ。

今日は最近CDを出したばかりの相澤歩さんをゲストにお迎えしました。


林;こんばんは。お飲み物はどうされますか?


相澤;あの季節の果物のお酒いただけますか。


林;今、ちょうど時期的に難しくて、ギリギリ青森のリンゴがあるのでそれにいたしますね。


相澤;はい。あと、これ、林さん、おみやげ。庭でとれたラベンダーを瓶に詰めてきました。よろしければ奥様に。


林;うわ。庭でですか。すごく濃厚な良い香りですね。さて、プロフィールと音楽環境みたいなものを教えていただけますか?


相澤;生まれたのは、1968年。場所は、山梨の山のふもとです。小学校にあがるまで、山梨の祖父母の家にいたのですが、この場所が、わたしの小さい頃の音楽環境そのものですね。というのも、その家には、かなり広い庭があって、そこには、大木の樹々や、果物の樹、花畑、野菜畑があって庭というより森みたいなところでした。夏は、家の脇の用水路から、庭中に蛇行する小川に水をひいていた。大きな樹々が風に騒ぐ音、小川の水の音、豪雨のような蝉時雨、冬の上空でうねる木枯らし、結局そういうものを再現したくて自分はうたや庭をつくってるんだな、と最近わかりました。あと、祖母がとても面白いひとでうたが大好きで、よくうたを歌っていて祖母の子守うたや、はなうたもルーツですね。


林;ああ、そうなんですね。東京育ちだと思っていたので、原体験はそこにあるんですか。初めて買ったレコードは?


相澤;初めて買った、というか、買ってもらったレコードは、ハイジの物語の朗読のレコード、昔、そういうのありましたよね。朗読とかラジオドラマとかって録音がデッドで、無音が気持ちいい。これもかなりの自分のルーツかも。


林;ありました。アニメの朗読ものありましたね。その後、音楽はどういう風に?


相澤;小学校からいまに至るまでは、湘南の海のちかくで暮らしてます。だから、今度の音楽環境は、海ですね。海鳴り、荒々しい潮風、倍音だらけの波。だけど、そういうのはとくに意識にせず身体に浴びながら、中学高校は、ひたすら洋楽邦楽問わず、むさぼるように聞いていました。高校時代は、ヘビメタやレベッカとかが全盛だったんですけど、同級生に、フリッパーズギターの小山田さんがいて、学祭で、アズテックカメラとか、キュアーとか、ペイルファウンテンズとか、やっていて、なんじゃこりゃと、思って、急いでそのあたりも聴き始めました。


林;小山田さんは高校生の頃からそのあたりを学祭でやってたんですか。やっぱり違うんですね。その後は?


相澤;大学時代は、バンドを組んで、都内のいろいろなライブハウスに出てました。このころは、聴く音楽も、ロックから、ソウル、ファンク、キューバ、ブラジル、と、どんどんひろがっていたけど、網羅的に聴くというより、ぴったりくる音楽を探していたみたいです。多分、樹のさざめきとか、木枯らしとか、海鳴りみたいな音楽を探してた。その頃、そうは気づいてなかったけど。
で、なんとなくいろいろ聴いていて、これはかなり自分に近いな、と思ったのが、ブライアン・ウイルソン、カーティス・メイフィールド、ダイナソーJr、あと、トニーニョ・オルタ。彼らの音楽に共通して感じていたのは、海のひろがりのある残響と山のひんやりとした宗教性。そういう風景をつくりたくて、オリジナルをつくりはじめました。週2でスタジオ入って、月2でライブしてたから音楽のことしか考えてなかったです。


林;週2スタジオ、月2ライブ! 音楽方面の職につこうとは思わなかったんですか?


相澤;そうやってどっぷり音楽につかっていたら、大学卒業の頃、音楽づくりやバンド内の関係に疲れてしまって、ぱたりとやめてしまった。そしたらあろうことか、ほっとしたんですよね。で、就活しました。かなりいろいろな職種の面接を受けたのですが、こちらも、ぜひとも、というほどやりたい仕事もなかったので試行錯誤しましたが、なんとかコピーライターとして雇ってくれる会社と出会って、働きはじめました。職選びって消去法ですよね。あれもできない、これもできないで、残るはこれか、と。だから続くのかも。


林;消去法ですね。わかります。


相澤;あと、コピーは、キレのある曲のタイトルをつけるようなところもあるし、デザイナーと表現を詰めてゆくところはバンドみたいだし、なにより、広告やプロモーション構築って、そのブランドや商品の世界観や、風景をつくるようなものなんですよね。バンドやってたときと、同じじゃん、と思いました。うーん、結局、職のジャンルじゃなくて、どんなことをやりたいかかもですね。「消防士」になりたい、じゃなくて、ひとを助けたい、的な。これ、リリーフランキーさんのパクリなんですけど。だから曲をつくってもつくってなくても、自分の音楽のようなものづくり、風景づくりは続いているというか。ま、きれいに言うとですけどね。(ため息)(笑)


林;(笑)


相澤;で、ある時、広告の会社で出会ったデザイナーの友人に誘われて絵本をつくったんです。友人の果敢な売り込みによって、講談社さんから出版させていただきました。友人のペンギンの絵を見て世界観や風景、ストーリーが思い浮かんだので多分、これも音楽のようなものづくりの続きなんでしょうね。講談社さんは、この本、「すましたペンギンさんきょうだい」を幼児向けに設定していましたが、作者としては、完全に大人向けで、非常にロックのスピリット濃厚な作品です。なので、これも音楽活動かもです。


林;あの絵本は確かにロックを感じますね。


相澤;それから、30代は、ばりばり仕事して、ばりばり旅行に行ってました。好きな風景を見に行きたかった。キューバ、フランス、スペイン、メキシコ、イタリア、ポルトガル、ハワイ、京都、奄美。旅行熱が高まって、海外で暮らしていたかっこいい20代の女の子とブログを通して知り合いになりました。シャルロット・ゲンズブールのコンサートに行って、終演後、あ、あの子とバンド組もう、ってひらめいて、そしたら、曲がどんどん出来るようになったんです。なにもかも遅いタイミングかもですけどね。40代だし。で、直後に3.11があって、いつ死ぬかわからない切迫感もあり、瀕死のシャケみたいに、曲をたくさん生み続けて、いまでも生み続けています。経験期を経て収穫期に入ったというか。うたをつくるのは、自分の人生の時間の庭で育った花を活けてるような感じだし、自分の損なわれた原風景や好きな風景を埋め合わせているようなものなので、これで、嫌われるならしかたないな、でも、ひとによっては気に入ってくれるかも、なにより、自分にはその埋め合わせが必要だったので自信とあきらめが良い案配でつくってます。


林;なるほど。最初にbar bossaにいらっしゃっていた頃は、僕は相澤さんは「音楽が好きな業界人」というイメージだったんですけど、曲が生まれ始めたのは、3.11以降のことなんですね。これ、みんなに聞いているのですが、これからの音楽はどうなると思いますか?


相澤;今、広告の仕事では、極端に言うとコピーライターというのは、蔑称ですね。昔はスターだったけど。いまって、コピーライターが書いた文章っていわれると、つくりものって感じでしらけません? アマゾンとかのレビューの方が面白い。忌野清志郎は、「プロってプロの音しか出せないんだよ、かわいそうにさ」って言ってたけど。あと、家の近くに信念があって、定型のお洒落じゃない、でもとんでもなくお洒落な、パン屋さんカフェが出来て、東京の有名店より全然好きなんです。人間味、独自のこだわり、土着、センス、あたりが時代のキーワードかもと思っていて音楽もそうなっていくと楽しい、と思います。個人が自分の庭みたいにつくってる音楽を目利きのひとが選んで紹介してゆく、みたいなことになって欲しい。定番の東京のレストランがあきてるように定番の音楽だけではない、生々しい音楽の評価軸がそろそろできてもよいかなと思います。


林;なるほど。


相澤;ただ、自然体の時代かというとそうでもなくて、演劇の根本宗子さんや、講談の神田松之丞さんの舞台を見ると、命がけで強いものは良いな、と思います。ジャンルで語るのではなくて人で語られてゆく時代かもしれませんね。


林;そうですね。そう思います。 これからのご予定は?


相澤;これからの予定は、庭に夏から秋にかけて茂らせる植物の種まき。5年、15年先を見据えた庭のレイアウトの考察。音楽は、遅ればせながら、やっといろいろわかってきたのでうたわせていただけるところを探してうたっていきたいです。
ものづくりに関しては、あの、先日母が商店街の仲のいい魚屋さんに庭でとったふきを煮て、差し入れしたんですね、そしたら、魚屋さんのおかみさんが、自家製のキムチをお返しにくれたんです。そういうの、最強だな、と思って、そういううたをつくりたいです。


林;最強ですね(笑)。


相澤;それから、行きつけの美容院にわたしの絵本を置いていただいていて、あるとき髪を切ってもらっていたら、後ろで、お母さんが小さな娘さんに、その絵本を読み聞かせはじめて、うわ、作者、ここでシャンプーしてもらってるんだけど、って思いつつ聞いていたら、そのお母さんの読み聞かせの抑揚がものすごくよくて、これ、娘さんにとっては究極の音楽だろうなと思って。そういううたをうたいたいですね。なにか、地に足がついたものでないと面白くないし、それから、まだまだうたにされてないものや感情はたくさんあるので、それをかたちにしたい。朝の風の湿度が違えば曲ができる。地に足がついたいろいろな風景をつくっていきたいです。
ま、でも、基本はうたが好き、でしかないので、好きなことを続けていきたいです。


林;ありがとうございます。それではみんなが待っている選曲のコーナーですが、まずテーマをお願いいたします。


相澤;うたいまわしがグっとくる10曲、うたが好きでしかない者ゆえの10曲。節回し、歌詞の乗り方、歌唱法、声質、いろいろな意味でのうたいまわしが、グっとくる曲を選びました。


林;うたいまわし、ですね。期待します。


01. César Portillo De La Luz「Contigo En La Distancia」

相澤;セサル・ ポルティージョ・デ・ラ・ルスは、カエターノヴェローゾとかもカバーしているキューバのソングライターで、69歳のときのハバナのホテルで弾き語っているCDが大好きで。南米の歌手の声には、圧倒的に海がありますよね。


林;これカエターノやってましたね。海、感じますね。波の音、聞こえてきますね。


02. 「イン・ザ・サマータイム(魅惑のチキルーム)」

相澤;ディズニーランドのアトラクションでかかっていた音楽なんですけど、「いかしたサウンドで」の「サウンド」のところのメロディーと歌詞の乗り方が最高。あと、ディズニーものは、うたを喜んでうたっているから好きです。


林;確かにすごいわかりやすい日本語がおしよせますね。


03. 萩原健一「ラストダンスは私に」

相澤;2番の「ロクロ〜〜〜〜ルは」というところ最高。ロックンロールというジャンルではない、なにか別の音楽のことをうたっているみたいで最高なんです。


林;おお、確かに。この日本語感、不思議ですねえ。カッコいいです。


04. 和田アキ子「悲しいうた」

相澤;冒頭「とても悲しい」でふりしぼるように歌って「うたができた」の「た」が弱くて最高。演技で言ったら名演技。強い人間の弱さと孤独をこの「た」の一言に感じます。


林;ああ、そう言われてみれば「た」がそうですね。僕、そういう聴き方しないんで納得です。


05. juliette greco「la javanaise」

相澤;Bメロの歌い方が、まるで、空中にあるなにか目に見えない美しいもののかたちを手のひらでたしかめているようで好きです。


林;こういう世界観、お好きそうですね。わかります。


06. 美空ひばり「港町十三番地」

相澤;出だし、「航海終えて」の「こ〜〜お〜〜かい」の「かい」に航海を終えた疲れと安堵が。その後の「船が港にとまる」の「とおまある」のところもヤバい。


林;やっぱり聴き方が全然違いますね。毎日「言葉」を職業にしているとそういう風に言葉と接してしまうのでしょうか。


07: 大森靖子「お茶碗」

相澤;現代の美空ひばり。現代のエディット・ピアフ。大森靖子。歌い出しの節回しと声のテンションも凄いし、「遠いまっちいいいの君のお部屋ダンボおおおおお~~~ルのテーブルで」のところを聞くと、大抵のことはどうでもよくなります。


林;大森靖子のこと、よくツイートされてますよね。うわ、すごいですね。


08: 榎本健一「私の青空」

相澤;池辺葵さんの傑作「どぶがわ」で効果的に使われています。このひとも喜んでうたってる。存在が節回し。


林;「喜んでうたってる」って良いコピーですね。確かにそうです。


09: ジョナサン・リッチマン「that's summer feeling」

相澤;この歌唱も、そのものが独自のうたいまわし。なさけなくて誇り高くて素晴らしいです。バックコーラスの抑揚がずっと一定でうたいまわさない、ところも素晴らしい。


林;ここでジョナサン・リッチマンで、ついに相澤さんの言うところの「うたいまわし」の意味が納得できました。なさけなくて誇り高いですね。


10: melancolia storytelling「左ききのソングライター」

相澤;「カンテラの」の「テラあ〜〜の〜〜」というところが好きでいつも、そこだけなんども歌いたくなります。左ききのソングライターというのは、ポール・マッカートニーのことですね。彼が最晩年か、来世に、犬と山奥で暮らしてる様子です。ちなみにこの映像の庭は、うちの庭です。のんびりランチ会とかしてるので、林さん遊びに来てくださいね。


林;今まで9曲聞いてきて、相澤さんのこれを聞くと不思議と響き方が違いますね。本当に誰にもない世界観です。さて、このCDのことをお話していただけますか?


相澤;CDは、『vinter』と『var』というのを部屋のとりっぱなし録音でつくりました。鎌倉にスワニーっていういかした生地屋さんがあるんですけど、そこで買った布をミシンでタタタと縫って手触りのいいCDケースをつくりました。ディスクはそれに入っています。
流通しないですよね、すみません。無人野菜売り場とかに置きたい。なぜか、聞いているととても眠くなるとよくいわれます。不眠の方などいらしたらぜひ。このサイトに書かれているメールアドレスでオーダー承ります。


http://melancolia.exblog.jp/


また、うたわせていただけるところなどございましたら、ぜひ、オーダーください。よろしくお願いします。


林;僕、個人的に、もういい年になってしまってから、ここまで自分の世界観をもって表現し始める人ってすごく好きなんです。「相澤さん、これ流通難しいです」とか「音、もっとカチッとしたのにしないんですか?」とか色々と言ってしまったのですが、こういう風に全部、手作りでやるのが相澤さんらしいんだなあと。


相澤;今日は、ありがとうございました。


林;こちらこそどうもありがとうございました。


相澤歩note
相澤歩twitter


相澤さん、詩集も出せば良いのにと思います。ご興味ある方は是非アクセスしてみてください。
そろそろ梅雨が始まりますね。雨、良いですよね。それではまたこちらのお店でお待ちしております。


bar bossa 林伸次


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【林 伸次 近著】

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■タイトル:『ワイングラスのむこう側』
■著者:林 伸次
■発売日:2016年3月26日
■出版社: KADOKAWA
■金額:¥1,404 単行本

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東京・渋谷で20年、カウンターの向こうからバーに集う人たちの姿を見つめてきた、ワインバー「bar bossa(バールボッサ)」の店主・林伸次さん。バーを舞台に交差する人間模様。バーだから漏らしてしまう本音。ずっとカウンターに立ち続けている林さんだから知っているここだけの話。


「bar bossa」アーカイブ

vol.1 「モニカ・サウマーゾ」 ・vol.2 高木洋介 ・vol.3 「クリスマス・ソングのボサノヴァ」 ・vol.4 柳樂光隆 ・vol.5 「1960年代当時のブラジルのボサノヴァ女性シンガー特集」 ・vol.6 松原繁久 ・vol.7 「1970年代から1980年代までのブラジルのボサノヴァ女性シンガー特集」 ・vol.8 中村ムネユキ ・vol.9 「現代のブラジルのボサノヴァ女性シンガー特集」 ・vol.10 江利川侑介 ・vol.11 「エレンコ・レーベル」 ・vol.12 田仲昌之 ・vol.13 「ルミアール・ヂスコス」 ・vol.14 定成寛 ・vol.15 寺田俊彦 ・vol.16 白尾嘉規 ・vol.17 「畠山美由紀『rain falls』 プロデューサー中島ノブユキ インタビュー」 ・vol.18 山本勇樹 ・vol.19 「ジノンさん ルシッド・フォールについて」 ・vol.20 大場俊輔 ・vol.21 「ブラジル人と演奏しているアメリカのジャズ・ミュージシャン特集」 ・vol.22 武藤サツキ ・vol.23 「Lucid Fall (The Best of)」 ・vol.24 筒井奈々 ・vol.25 「THE PIANO ERA2013」 ・vol.26 山上周平 ・vol.27 ジノン ・vol.28 東野龍一郎 ・vol.29 林伸次 ・vol.30 中村智昭 ・vol.31 齊藤外志雄 ・vol.32 染谷大陽 ・vol.33 稲葉昌太 ・vol.34 小嶋佐和子 ・vol.35 石郷岡学 ・vol.36 原田雅之 ・vol.37 松本研二 ・vol.38 塚田耕司 ・vol.39 岩間洋介 ・vol.40 中村信彦&真理子 ・vol.41 白尾嘉規 ・vol.42 田仲昌之 ・vol.43 山本勇樹 ・vol.44 新川忠 ・vol.45 川嶋繁良 ・vol.46 田村示音 ・vol.47 山崎雄康 ・vol.48 上川大助 ・vol.49 町田和宏 ・vol.50 林下英治 ・vol.51 シュート・アロー ・vol.52 高橋悠 ・vol.53 沼田学 ・vol.54 庄野雄治 ・vol.55 山本のりこ ・vol.56 渡部徹 ・vol.57 小栗誠史


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林 伸次
1969年徳島生まれ。
レコファン(中古レコード店)、バッカーナ&サバス東京(ブラジリアン・レストラン)、
フェアグランド(ショット・バー)を経た後、1997年渋谷にBAR BOSSAをオープンする。
2001年ネット上でBOSSA RECRDSをオープン。
著書に『ボサノヴァ(アノニマスタジオ)』。
選曲CD、CDライナー執筆多数。
連載『カフェ&レストラン(旭屋出版)』。

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●東京都渋谷区宇田川町 41-23 第2大久保ビル1F
●TEL/03-5458-4185
●営業時間/月~土
18:00~24:00 bar time
●定休日/日、祝
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