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Monthly Disc Reviewの最近のブログ記事

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Monthly Disc Review2017.8.15:Monthly Disc Review

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Title : 『世界はここにしかないって上手に言って』
Artist : ものんくる



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「ものんくる」といえば、管楽器やストリングスによる生楽器のアンサンブルと日本語の歌詞。そんなイメージを一新する3rdアルバム『世界はここにしかないって上手に言って』。

普段着のジャケット写真、切り貼りされたサンプリング音、幾重にも重ねられたボーカルトラックとシンセサイザーの電子音。これまでの「ものんくる」とは明らかに違う装いをまとったこの作品は、2人の頭の中をそのまま描き出したような作品だ。


メンバーはボーカルの吉田沙良と、ベーシストでありコンポーザーの角田隆太の2人。そこにゲストミュージシャンとして、黒田卓也や井上銘、石若駿、桑原あい、宮川純、渡辺ショータ、安藤康平など若手ジャズの気鋭から、大儀見元、FUYU、斎藤ネコ率いるストリングスなどベテラン勢まで、これまでのメンバーとは違った演奏家がならぶ。生楽器のアンサンブルに替わって楽曲を構築するのは、幾重にも重ねられたボーカルトラックやサンプリング音、シンセサイザーの電子音など。宅録をメインに作られたという事もあって、それらの素材を切り貼りしながら組み上げられていく楽曲達に「角田隆太の頭のなかにはこんな音が鳴っていたのか!」とまず驚く。そして緻密に構築されていながらも、随所に即興的なソロのコミュニケーションが散りばめられているバランス感覚にさらに驚く。ゲスト・ミュージシャンに演奏してもらうというよりも、頭の中の音を一番うまく鳴らせるミュージシャンを配置したといったほうが近いのかもしれない。なによりも歌をとりまくパーツが多くなった分、むしろメロディの透明感や歌詞のセンスがいっそう際立って聴こえたのが印象的だ。


作品を聴きながら、そういえば昨年ベーシストのエスペランサ・スポルディングがロックなサウンドへと大きく舵を切った『Emily's D+Evolution』の来日公演で、オールスタンディングのZepp DiverCity Tokyoの最前列にいた角田隆太に会ったことを思い出した。エスペランサ・スポルディングの作品や、ベッカ・スティーブンス『レジーナ』が、自分を何かに投影したりあるいは何かを自分に投影したある種の「仮装」的な作品であったのに対して、この作品は歌詞も含めてどこまでも普段着のカジュアルな装いに思えるところに、ものんくるの末恐ろしさを感じる。

昨年CRCK/LCKSにインタビューした時、角田隆太は「僕達が今やってる音楽にも後々何か名前が付いたらいいよね」と言っていたけれど、僕もまだこの音楽につける名前は見当たらないです。


文:花木洸 HANAKI hikaru


【ものんくる / ここにしかないって言って】



ものんくるOfficial



Recommend Disc

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Title : 『世界はここにしかないって上手に言って』
Artist : ものんくる
LABEL : Village Records
NO : VRCL10135
RELEASE : 2017.7.12



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【SONG LIST】
01. Driving Out Of Town
02. 空想飛行
03. SUNNYSIDE
04. 花火
05. Birthday Alone
06. ここにしかないって言って
07. 時止まる街
08. 二人
09. 透明なセイウチ
10. 最終列車 君を乗せて
11. the dawn will come


音楽ライター柳樂光隆氏による人気のムック『Jazz The New Chapter 』の第4弾が2017年3月8日に発売。今回も花木洸が選盤などを担当しています。

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■タイトル:『Jazz The New Chapter 4』
■監修:柳樂光隆
■発売日:2017年3月8日
■出版社: シンコーミュージック

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毎号重版を続ける話題のムック、第4弾が遂に登場!
今や現代の音楽シーンを左右する一大潮流となった"ジャズ"の最突端で今、何が起きているのかを、詳細なテキストと計150枚のディスク評で徹底検証。ジャズを活性化したネオソウルとの蜜月を改めて紐解く一方、ジャズを触媒として生まれた新たな潮流にも目を向け、脈打ち続けるジャズの「今」を深く掘り下げます。


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「Monthly Disc Review」アーカイブ花木 洸

2015.04 ・2015.05 ・2015.06 ・2015.07 ・2015.08 ・2015.09 ・2015.10 ・2015.11 ・2015.12 ・2016.01 ・2016.02 ・2016.03 ・2016.04 ・2016.05 ・2016.06 ・2016.07 ・2016.08 ・2016.09 ・2016.10 ・2016.11 ・2016.12 ・2017.01 ・2017.02 ・2017.03 ・2017.04 ・2017.05 ・2017.06 ・2017.07




Reviewer information

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花木 洸 HANAKI hikaru

東京都出身。音楽愛好家。
幼少期にフリージャズと即興音楽を聴いて育ち、暗中模索の思春期を経てジャズへ。
2014年より柳樂光隆監修『Jazz the New Chapter』シリーズ(シンコーミュージック)
及び関西ジャズ情報誌『WAY OUT WEST』に微力ながら協力。
音楽性迷子による迷子の為の音楽ブログ"maigo-music"管理人です。

花木 洸 Twitter
maigo-music

Monthly Disc Review2017.7.15:Monthly Disc Review

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Title : 『STEREO CHAMP』
Artist : 井上銘



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 最近井上銘をどこで見ただろう?と考えると、実はCRCK/LCKSでの活動のほうが多いかもしれない。あるいは石若駿のCleanup Trioか、本田珠也のトリオか。前作『Waiting For Sunrise』(2013年)まで、僕の中で井上銘というと、パット・マルティーノやカート・ローゼンウィンケルばりの16分音符で、どストレートなコンテンポラリー・ジャズを演奏するギタリストだった。ここ最近はライブによっていつものセミアコースティック・ギターを弾いていたり、ちょっと変形のストラト(MVでも確認できる)を弾いていたりする彼は、この数年僕がライブを見てきた中で物凄く変化したプレイヤーの一人だ。

 バンドのメンバーも一新されて、福森康のゴスペルチョップスばり重くストレートなビート、渡辺ショータの多様な音色を適所に配置していくキーボード、山本連の楽曲ごとにしっかりとニュアンスを押さえたエレキ・ベース、そして類家心平のエフェクトを使ったトランペットが、より楽曲にダイナミクスを生んでいる。


 アルバムはエフェクト音が飛び交う中で、リバーブのかかったトランペットやピアノが怪しげなフレーズを投げ込んでいく「introduction」からスタート。そしてMVも作成されている「Comet 84」へとなだれ込む。スピード感のある16ビートで始まるテーマから、井上のギターはジャズのエッセンスよりも、ロックのような香りに満ちている。それは音色だけでなくフレーズそのものからも感じられる。スピード感のあるビートの上でギターとキーボードがフレーズを交換していくスリル溢れる場面も。リズムは一曲の中でも徐々にスローダウン、重たいビートに落ち着くかと思いきやふたたびもとの16ビートへと戻っていく。この2曲だけで、このアルバムのこれまでとは違う音楽性を充分に示してしまうから容赦がない。キーボードやギターには随所でエフェクトとパンが掛けられていて、ミックスにもかなりこだわっているようだ。ライブの定番であり井上銘の代表曲ともいえる「Taiji Song」も、アルバムのこのミックスによって生まれ変わったように思う。自分がソロを弾くだけでなく、キーボードやトランペットにメロディを委ねて自分はワウを踏んでみたりコードを弾くことに徹したりという場面が多々あるのも印象的だ。気づけばアルバムの中でいわゆる4ビートのストレートなジャズをやっている曲はラジオのような音色で曲間にインタールード的に挟まれる部分のみ。


 このアルバムを聴いて、というか最近の井上銘を見ていて真っ先に思い浮かぶのは、エスペランサ・スポルディングのバンドで活躍し、エフェクトに凝り尽くしたソロアルバムを発表した、マシュー・スティーブンス。CRCK/LCKSの楽曲に歪んだギターでコンテンポラリー・ジャズのフレーズをぶち込んでいく井上の姿は、エスペランサのバンドにおけるマシューの姿と重なっていた。けれどこのアルバムを聴いたらどうだろう。2人の断片は似ていても、まったく違うアプローチで自分の音楽を作り出していたように思う。そしてこの事が、ジュリアン・レイジやリオーネル・ルエケなど個性的なミュージシャンが溢れながらも、どこか共通項で繋がり合っている今のジャズギターをハブにした新しい音楽の拡がりを如実に表しているようだ。


 このアルバムから数週間で、CRCK/LCKS『Lighter』、ものんくる『世界はここにしかないって上手に言って』と注目作への参加がつづく井上銘。そのどれもで違ったアプローチの、しかし彼でしかないギターを聴かせてくれる。「俺達はジャズ・ミュージシャンじゃなく、ミュージシャンだ」と言ったロバート・グラスパーの言葉を借りれば、このアルバムはジャズ・ギタリストではない「ギタリスト井上銘」のデビューアルバムだ。


文:花木洸 HANAKI hikaru


【Comet 84 / MAY INOUE STEREO CHAMP】



【Heliotrope / MAY INOUE STEREO CHAMP】



井上銘 Official Blog

井上銘 Twitter

井上銘(リボーンウッド レーベル)



Recommend Disc

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Title : 『STEREO CHAMP』
Artist : 井上銘
LABEL : リボーンウッド
NO : RBW-0006
RELEASE : 2017.6.21



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【MEMBER】
MAY INOUE STEREO CHAMP:
井上銘:ギタリスト、コンポーザー
類家心平(Tp)
渡辺ショータ(Key/P)
山本連(B)
福森康(Ds)


【SONG LIST】
01. introduction
02. Comet 84
03. REMM
04. Heliotrope
05. Taiji Song 1
06. Taiji Song 2
07. Showtime Blues
08. 1 Year Later
09. Soldier"R"
10. Fu-linkazan

All Songs Written by MAY INOUE
Except for M-9,Soldier-"R"
Written by MAY INOUE & REN YAMAMOTO

REC Date:2017 年1/24~26、1/29、2/2
@リボーンウッドスタジオ


音楽ライター柳樂光隆氏による人気のムック『Jazz The New Chapter 』の第4弾が2017年3月8日に発売。今回も花木洸が選盤などを担当しています。

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■タイトル:『Jazz The New Chapter 4』
■監修:柳樂光隆
■発売日:2017年3月8日
■出版社: シンコーミュージック

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毎号重版を続ける話題のムック、第4弾が遂に登場!
今や現代の音楽シーンを左右する一大潮流となった"ジャズ"の最突端で今、何が起きているのかを、詳細なテキストと計150枚のディスク評で徹底検証。ジャズを活性化したネオソウルとの蜜月を改めて紐解く一方、ジャズを触媒として生まれた新たな潮流にも目を向け、脈打ち続けるジャズの「今」を深く掘り下げます。


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「Monthly Disc Review」アーカイブ花木 洸

2015.04 ・2015.05 ・2015.06 ・2015.07 ・2015.08 ・2015.09 ・2015.10 ・2015.11 ・2015.12 ・2016.01 ・2016.02 ・2016.03 ・2016.04 ・2016.05 ・2016.06 ・2016.07 ・2016.08 ・2016.09 ・2016.10 ・2016.11 ・2016.12 ・2017.01 ・2017.02 ・2017.03 ・2017.04 ・2017.05 ・2017.06




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花木 洸 HANAKI hikaru

東京都出身。音楽愛好家。
幼少期にフリージャズと即興音楽を聴いて育ち、暗中模索の思春期を経てジャズへ。
2014年より柳樂光隆監修『Jazz the New Chapter』シリーズ(シンコーミュージック)
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Monthly Disc Review2017.6.15:Monthly Disc Review

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Title : 『Blessing』
Artist : 安ヵ川大樹



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今月のレビューはベテランベーシスト安ヵ川大樹の新作『Blessing』。


メンバーは田窪寛之(pf)、橋本学(ds)というピアノ・トリオ。田窪は1981年生まれ、バークリー音楽大学を卒業後、2009年には横浜ジャズプロムナードのコンペティションで山田拓児クインテットのメンバーとしてグランプリを受賞。現在は東京を中心にライブを行っており、川嶋哲郎や小林陽一のバンドでサイドマンを勤め、今年5月には初のリーダーアルバムをリリースしている。橋本は長年安ヵ川がトリオのドラマーとして信頼を置く存在。西山瞳"NORHM"や、橋詰亮督グループでも活躍している。


一曲目から透明感のあるこのトリオの空気がよくとらえられている。オリジナル曲ではアルコで聞かせるバラードの「Blues For My Better Half」や、小気味良いスウィングの「Memories Of T」など様々なスタイルを見せながらも、その中にはジャズの伝統への真っ直ぐなリスペクトが感じられる。バラードに仕立てたスコットランド民謡の「Morning Has Broken」では三者のサウンドの混ざりあいかたにビル・エヴァンス・トリオのような雰囲気も感じられるし、続く「Dark Eyes」ではルバートの冒頭部からスリリングな4ビートへの転換にドキドキさせられる。アルバムラストの「Praise The Lord Hallelujah」ではビバップのフレーズを軽やかに連発していく田窪のプレイに釘付けになり、ベースソロでその中にハンドクラップが入ってくると、もうたまらなくなってしまう。


目を引くような新しさや、派手なサウンドメイクも無いけれど、このピアノ・トリオの素晴らしさが音からも内容からもひしひしと伝わってくる作品。


文:花木洸 HANAKI hikaru


安ヵ川大樹 Official Site



Recommend Disc

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Title : 『Blessing』
Artist : 安ヵ川大樹
LABEL : ダイキムジカ
NO : DNCD14
RELEASE : 2017.6.7



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【MEMBER】
安ヵ川 大樹 - bass
田窪 寛之 - piano
橋本 学 - drums



【SONG LIST】
01.Risen
02.Blues For My Better Half
03.Memories Of T
04.Merry Widow Waltz
05.Rejoice
06.Yara
07.After Glow
08.Morning Has Broken
09.Dark Eyes
10.Blessing
11.Praise The Lord Hallelujah

All Songs Composed by Daiki Yasukagawa (except 4,6,8,9,11)


音楽ライター柳樂光隆氏による人気のムック『Jazz The New Chapter 』の第4弾が2017年3月8日に発売。今回も花木洸が選盤などを担当しています。

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■タイトル:『Jazz The New Chapter 4』
■監修:柳樂光隆
■発売日:2017年3月8日
■出版社: シンコーミュージック

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毎号重版を続ける話題のムック、第4弾が遂に登場!
今や現代の音楽シーンを左右する一大潮流となった"ジャズ"の最突端で今、何が起きているのかを、詳細なテキストと計150枚のディスク評で徹底検証。ジャズを活性化したネオソウルとの蜜月を改めて紐解く一方、ジャズを触媒として生まれた新たな潮流にも目を向け、脈打ち続けるジャズの「今」を深く掘り下げます。


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「Monthly Disc Review」アーカイブ花木 洸

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花木 洸 HANAKI hikaru

東京都出身。音楽愛好家。
幼少期にフリージャズと即興音楽を聴いて育ち、暗中模索の思春期を経てジャズへ。
2014年より柳樂光隆監修『Jazz the New Chapter』シリーズ(シンコーミュージック)
及び関西ジャズ情報誌『WAY OUT WEST』に微力ながら協力。
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Monthly Disc Review2017.5.15:Monthly Disc Review

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Title : 『incomplete voices』
Artist : 橋爪亮督グループ



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橋爪亮督グループの久しぶりの新作。2012年の『ACOUSTIC FLUID』から不動のメンバーは、橋爪亮督(ts, ss)、市野元彦(g)、佐藤浩一(pf)、織原良次(b)、橋本学(ds)。彼らの特徴はなんといっても橋爪の作曲と演奏の透明感、そして完璧にコントロールされた音量で作られるハーモニー感覚だ。


このグループにしては珍しく、リズムとリフ的なコードワークが目を引く一曲目「Still」からアルバムはスタート。そこから繋がる「One Time Dream」や「Synesthesia」はいかにもこのバンドらしいサウンド。橋爪のサックスと市野のギター、そして佐藤の右手は、お互いがお互いの影になるようにうっすらと重なりあう。織原のベースはベースラインというよりも、一つのメロディラインを奏でているよう。主旋律と伴奏という構造ではなく、全員のメロディラインがポリフォニー的に重なりあっていく構造はこのバンドの最大の持ち味だ。
この構造はアンサンブル全体の協調を際立たせるだけでなく、「Line」のように比較的フリーな楽曲では自由度の高い対話へと姿を変える。全員がぴったりとそろうよりも、むしろ微細なずれが混ざることでリズムが動物的にうねっていく。

アルバムの中で印象的だったのは、決して全力で叩くことはなく、常に最適な音量に抑制されていながらも、残響音が消えるまでその弱音を表情豊かに響かせる佐藤のピアノ。そしてお互いの小さなサインを見逃さずに、ぴったりとよりそっていく織原と橋本のリズム隊のコンビネーションだ。アルバムを重ねるごとに橋爪のコンポジションが精美になっているように感じていくのは、メンバーが固定されている事も大きいように思う。イントロでは極めてクールな肌触りなのに、絡まり合うことでじわじわと熱を生み出していけるのは、バンドの練度のたまものだろう。


グループは今年で結成17年目。十分に日本のジャズの一側面を担うベテラングループと言ってもいいだろう。もはや「ECM的」という冠言葉は不要なほど、一つのジャンルを確立した彼らの新たな代表作となるだろう。


文:花木洸 HANAKI hikaru


橋爪亮督 Official Site


【橋爪亮督グループ『incomplete voices』試聴動画】




Recommend Disc

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Title : 『incomplete voices』
Artist : 橋爪亮督グループ
LABEL : APOLLO SOUNDS
NO : APLS1704
RELEASE : 2017.4.26



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【MEMBER】
橋爪亮督: Tenor, Soprano Saxophones
市野元彦: Guitar
佐藤浩一: Piano
織原良次: Fretless Bass
橋本 学: Drums, Percussion


【SONG LIST】
01,Still
02,One Time Dream
03,Synesthesia
04,Song Unknown
05,Line
06,初月
07,4-18
08,July


音楽ライター柳樂光隆氏による人気のムック『Jazz The New Chapter 』の第4弾が2017年3月8日に発売。今回も花木洸が選盤などを担当しています。

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■タイトル:『Jazz The New Chapter 4』
■監修:柳樂光隆
■発売日:2017年3月8日
■出版社: シンコーミュージック

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毎号重版を続ける話題のムック、第4弾が遂に登場!
今や現代の音楽シーンを左右する一大潮流となった"ジャズ"の最突端で今、何が起きているのかを、詳細なテキストと計150枚のディスク評で徹底検証。ジャズを活性化したネオソウルとの蜜月を改めて紐解く一方、ジャズを触媒として生まれた新たな潮流にも目を向け、脈打ち続けるジャズの「今」を深く掘り下げます。


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「Monthly Disc Review」アーカイブ花木 洸

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花木 洸 HANAKI hikaru

東京都出身。音楽愛好家。
幼少期にフリージャズと即興音楽を聴いて育ち、暗中模索の思春期を経てジャズへ。
2014年より柳樂光隆監修『Jazz the New Chapter』シリーズ(シンコーミュージック)
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Monthly Disc Review2017.4.15:Monthly Disc Review

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Title : 『Part1』
Artist : .Push



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都内ジャズシーンを中心に、「ものんくる」でも活躍しているドラマー西村匠平のリーダーグループ「.Push」のデビュー作。


メンバーも西村と同世代、80年代から90年代生まれのミュージシャンが集まっている。大西順子や北川潔、土岐英史などベテランと共演する1992年生まれのサックス奏者、中島朱葉。西村と同じく「ものんくる」のサポートメンバーとしても活動し、楠井五月(b)、石若駿(ds)を率いた自身のトリオ作もリリースしているピアニストの魚返明未。同世代の若手からはもちろん、宮之上貴昭や守屋純子からの信頼も厚いベーシスト、大塚義将。さらにゲストには現在日野皓正バンドで活動し、自由奔放なスタイルで注目を集めるギタリスト、加藤一平が参加してる。


アルバムは半分が西村の楽曲、残りもメンバーによる作曲と気合が入っており、単なる寄せ集めのバンドではない雰囲気がただよう。一曲目から高速の4ビートに乗せてビバップ・フレーズが飛び出す。新世代の中でも正統派のシーンで頭角をあらわしているメンバーだけに、ジャズマナーにのっとった曲では流石の腕前を見せている。抜群の安定感のドラムとベースをバックに、魚返のピアノと中島のサックスは曲によって色を変え、反応しあいながら次々に新しい景色を見せてくれる。ゲストの加藤一平の参加もよいスパイスになっており、#3では加藤のエフェクターをまとったギターがジャズバンドの中を自由に駆け回り、#4ではディストーションギターとともにバンドがヒートアップしていく熱い展開も。

アルバム全編を通じて、メンバー間のコミュニケーションはまさに阿吽の呼吸。都内のジャズシーンで連日ライブに引っ張りだこの彼らの勢いがそのままパッケージされたような一枚だ。帯に書かれた「ジャズ・気合い・青春」という文字が少し恥ずかしくもあったが、聴き終わってからもう一度見てみると、青春パンクばりの熱量と愛が詰まったこの作品にはピッタリのコピーだと思った。


文:花木洸 HANAKI hikaru


.PUSH twitter


【.Pushアルバム『Part 1』告知動画】




Recommend Disc

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Title : 『Part1』
Artist : .Push(ドット・プッシュ)
LABEL : APOLLO SOUNDS
NO : APLS1703
RELEASE : 2017.3.22



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【MEMBER】
魚返明未 Ami Ogaeri (p)
西村匠平 Shohei Nishimura (drs)
中島朱葉 akiha nakashima(as.ss)
大塚義将 Yoshimasa Otsuka (b)
ゲストミュージシャン 加藤一平 Ippei Katou(g)


【SONG LIST】
01. Ora2 (Shohei Nishimura)
02. Lonely Bridge(Ami Ogaeri)
03. Town Work (Shohei Nishimura)
04. OMATSURI (Shohei Nishimura)
05. SAG~始発、朝焼け、5時散歩~ (Shohei Nishimura)
06. Rise & Fall(akiha nakashima)
07. Waltz for You(Yoshimasa Otsuka)
08. Part 1 (Ami Ogaeri)


音楽ライター柳樂光隆氏による人気のムック『Jazz The New Chapter 』の第4弾が2017年3月8日に発売。今回も花木洸が選盤などを担当しています。

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■タイトル:『Jazz The New Chapter 4』
■監修:柳樂光隆
■発売日:2017年3月8日
■出版社: シンコーミュージック

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毎号重版を続ける話題のムック、第4弾が遂に登場!
今や現代の音楽シーンを左右する一大潮流となった"ジャズ"の最突端で今、何が起きているのかを、詳細なテキストと計150枚のディスク評で徹底検証。ジャズを活性化したネオソウルとの蜜月を改めて紐解く一方、ジャズを触媒として生まれた新たな潮流にも目を向け、脈打ち続けるジャズの「今」を深く掘り下げます。


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「Monthly Disc Review」アーカイブ花木 洸

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花木 洸 HANAKI hikaru

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Monthly Disc Review2017.3.15:Monthly Disc Review

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Title : 『EPICH』
Artist : 蕪木光生



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今月のレビューはピアニスト・コンポーザーの蕪木光生のデビューアルバム『EPICH』。
これまでの参加作品には、松井秋彦『GROOVE X』(2012年)、ヴァイオリニスト・式町水晶『流木's Ballad』(2014年)がある。


アナログとデジタルが入り混じったようなジャケットが象徴するように、ジャズピアノらしさと何処か力の抜けたようなリラックスした雰囲気が同居する心地よいアルバムだ。
メンバーは都内を中心に活動中の若手ベーシスト古木佳祐、ドラマーにコトリンゴのバンドでも活躍する鈴木カオルという編成。ピアノと反応しつつもバッキングにとどまらないメロディを生み出していく古木のベースと、タイトなプレイからアグレッシブなプレイまで自由自在に行き来する鈴木のドラムは、バンドの自由度をグッと高めている。4ビートのスウィング感、8ビートのグルーヴ感、アコースティックベースとエレキベースといった、近年のジャズで必修科目となっているような様々な要素をメンバーの3人で網羅しつつも、アルバム全体にまとまりがあるのは、蕪木の楽曲の強さをあらわしているように思う。


エフェクトの掛かったベースが印象的な「Lotus」では、単体で派手な音色が重なり合ってもぶつかりあうことなくアンサンブルに上手く馴染ませ、むしろ丁寧にレイヤーを重ねていくことで浮かび上がってくる景色が美しい。「Sun Good True」は一転して、キメと4ビートで疾走するコンテンポラリージャズ。「Winter Morning」では後半に派手なシンセサイザー使いも見せる。全編に渡って登場するキーボードと生のピアノのバランス感覚には、ポップスも経験したプレイヤーならではのセンスを感じる。

なによりキーボードのスウィートスポットを知り尽くしているような音色選びがたまらなく気持ちよく、気づけば何周もリピートしてしまうアルバムだ。


文:花木洸 HANAKI hikaru


蕪木光生 Official Site


【蕪木光生Mitsuo Kabuki 「Epich」】




Recommend Disc

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Title : 『EPICH』
Artist : 蕪木光生(カブキ・ミツオ)
LABEL : BOURGEON RECORDS
NO : BGR001
RELEASE : 2017.2.15



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【MEMBER】
蕪木光生(p,key)
古木佳祐(ba)
鈴木カオル(dr)


【SONG LIST】
01,Mr.P(intro)
02,Yakumo
03,Lotus
04,Sun Good True
05,Winter Morning
06,Siva
07,A Good Fellows
08,Akita
09,霖
10,11/3
11,Mr.P(outro)

Recorded TSUKASA OKAMOTO
Mixed AKIHITO YOSHIKAWA(STUDIO DEDE)
Masterd AKIHITO YOSHIKAWA(STUDIO DEDE)
Recorded at PASTORAL SOUND


音楽ライター柳樂光隆氏による人気のムック『Jazz The New Chapter 』の第4弾が2017年3月8日に発売。今回も花木洸が選盤などを担当しています。

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■タイトル:『Jazz The New Chapter 4』
■監修:柳樂光隆
■発売日:2017年3月8日
■出版社: シンコーミュージック

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毎号重版を続ける話題のムック、第4弾が遂に登場!
今や現代の音楽シーンを左右する一大潮流となった"ジャズ"の最突端で今、何が起きているのかを、詳細なテキストと計150枚のディスク評で徹底検証。ジャズを活性化したネオソウルとの蜜月を改めて紐解く一方、ジャズを触媒として生まれた新たな潮流にも目を向け、脈打ち続けるジャズの「今」を深く掘り下げます。


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「Monthly Disc Review」アーカイブ花木 洸

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花木 洸 HANAKI hikaru

東京都出身。音楽愛好家。
幼少期にフリージャズと即興音楽を聴いて育ち、暗中模索の思春期を経てジャズへ。
2014年より柳樂光隆監修『Jazz the New Chapter』シリーズ(シンコーミュージック)
及び関西ジャズ情報誌『WAY OUT WEST』に微力ながら協力。
音楽性迷子による迷子の為の音楽ブログ"maigo-music"管理人です。

花木 洸 Twitter
maigo-music

Monthly Disc Review2017.2.15:Monthly Disc Review

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Title : 『CONTRAST&FORM』
Artist : ケイ赤城



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今月とりあげるのは、1953年生まれのピアニスト、ケイ赤城による最新作。
いわずもがな、1979年にアイアート・モレイラ&フローラ・プリムグループに参加、その後アル・ディメオラのグループなどを経て、1989年から1991年までマイルス・ディビスグループのメンバーとして活動したピアニストだ。現在はカリフォルニア大学芸術学部教授として講義を行っている。


メンバーは2014年の『CIRCLEPOINT』に続いて、若井俊也(b)と本田珠也(ds)によるピアノトリオ。この世代の入り混じったメンバーが、トリオの音楽をぐっと新しく聴こえさせる要因になっているように思う。


「IN THE FOLD」では、メロディに対するハーモニーとリズムの実験が行われ、「PLAYGROUND ー THE DOG AND THE SNAKE」の7拍子の上でモチーフを交差させていく。組曲的に展開する「AME TO KAERU (THE RAIN AND THE FROG)」では、少しずつテーマを変えながらオープンなインプロヴィゼーションを展開していく。この始めの三曲で、現代のピアノトリオ・スタイルをほとんど説明してしまっているんじゃないかと思うくらい、濃厚な内容になっている。総計15分ほどの組曲で、アルバムのタイトルにもなっている「CONTRAST & FORM」では、ピアノ内部で反射する響きまで聴こえるようなピアノ・ソロの静寂から、バンドインしてヒートアップするまでの流れが実にスリリングだ。最後の「WHERE YOU MAY BE」では、スローテンポのバラードに全員の歌心が光っている。


アルバムを通して、一瞬一瞬の細部まで聴き込むことで、どんどん深みにハマってしまいそうな作品。


文:花木洸 HANAKI hikaru


ケイ赤城 Official Site
『CONTRAST&FORM』詳細


現在販売しているのは「TIME & STYLE MIDTOWN」(六本木)と「TIME & STYLE PRIDENCE」(二子玉川)の2店となります。
http://www.timeandstyle.com
 
またディクスユニオンで発売中です。
http://diskunion.net/jazz/ct/detail/1007304320



Recommend Disc

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Title : 『CONTRAST&FORM』
Artist : ケイ赤城
LABEL : RED CASTLE MUSIC
NO : MAK3454
RELEASE : 2017.1.20

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【MEMBER】
KEI AKAGI (piano)
SHUNYA WAKAI (bass)
TAMAYA HONDA (drums)

RECORDED BY: YOSHIAKI MASUO AT KAKINOKI STUDIO , AUGUST 2016
MIXED BY: TALLEY SHERWOOD
MASTERED BY: PAUL CARMAN
COVER ART BY: EIGHTABLISH CO.LTD
ILLUSTRATION & GRAPHIC DESIGN: AKIKO KAWAMURA
ART DIRECTION: REIKO KIYONO
PHOTOGRAPHY: MASASHI KAGEYAMA

Tamaya Honda plays Bosphorous Cymbals.


【SONG LIST】
1.IN THE FOLD
2.PLAYGROUND ー THE DOG AND THE SNAKE
3.AME TO KAERU (THE RAIN AND THE FROG)
4.LIMBO (WAYNE SHORTER) MIYAKO MUSIC (BMI)
5.SIMPLY FIVE
6.CONTRAST & FORM PT.Ⅰ
7.CONTRAST & FORM PT.Ⅱ
8.CONTRAST & FORM PT.Ⅲ
9.COUNT NINE
10.WHERE YOU MAY BE


この連載の筆者、花木洸が先日発売になりました『Jazz The New Chapter 3』で編集・選盤・レビュー記事などを担当。ブラック・ミュージックの最先端からUKジャズ、ネクスト・ジャズ・ファンク、ラージアンサンブル等ここにしかない記事・インタビューが盛り沢山となっています。


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■タイトル:『Jazz The New Chapter 3』
■監修:柳樂光隆
■発売日:2015年9月10日
■出版社: シンコーミュージック

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今日においてはジャズこそが時代を牽引し、ディアンジェロやフライング・ロータスなど海外の最先端アーティストから、ceroなど日本のポップ・シーンにも大きな影響を与えている。この状況を予言し、新時代の到来を告げた「Jazz The New Chapter(ジャズ・ザ・ニュー・チャプター)」の第3弾がいよいよ登場。2014年の刊行時より刷数を重ね、SNS上でも未だ話題沸騰中の第1弾・第2弾に続き、2015年9月末に〈Blue Note JAZZ FESTIVAL in JAPAN〉が開催されるなど、かつてない活況を迎えているジャズの次なる未来は、ニューチャプターが切り拓く!


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花木 洸 HANAKI hikaru

東京都出身。音楽愛好家。
幼少期にフリージャズと即興音楽を聴いて育ち、暗中模索の思春期を経てジャズへ。
2014年より柳樂光隆監修『Jazz the New Chapter』シリーズ(シンコーミュージック)
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Monthly Disc Review2017.1.15:Monthly Disc Review

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Title : 『NOLA REVISITED』
Artist : THE NEW ORLEANS FUNK ALL-STARS



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大阪を拠点に世界を股にかけるレーベルMFA Recordsによる新録アルバムの第2弾。

前作のマーク・ジュリアナやジャリール・ショウなどNYのコンテンポラリー・シーンを捉えたアルバム『Melting Point』はこの連載でも取り上げた。その中でも特に若手の収録ミュージシャン、ニア・フェルダーやサリバン・フォートナー、ジャミソン・ロスのその後の人気の上り調子はもはや説明の必要が無いくらいだ。一人のミュージシャンに着目するのではなく、シーンをまるっと紹介してしまうこの大胆な方法にはびっくりしてしまう。


今回のテーマは、ニューオーリンズのファンク。ニューオーリンズといえば、ジャズ誕生の地とされているだけでなく、歴史的にも人種や文化が混ざり合う土地。新世代のトランペッター:クリスチャン・スコットがニューオーリンズで育ち、ドナルド・ハリソンに師事していたこともこの土地を象徴するようなエピソードだ。


総勢17名の参加ミュージシャンには、大ベテランのドナルド・ハリソン、ブラスバンド:ダーティ・ダズン・ブラス・バンドのメンバーや、パパ・グロス・ファンクの面々など、ジャンルを超えたニューオーリンズのミュージシャンだけでなく、ギタリストの山岸潤史、そしてMFA Recordsのこのプロジェクトの鍵とも言えるベーシスト/プロデューサーのノリ・ナラオカが参加している。


蓋を開けてみると、黒人音楽特有のドロっとしたブルースの香りから、スリル溢れるファンク、豪快なブラスまで、ニューオーリンズという土地の濃厚な音楽シーンを凝縮したような空気感が溢れてくる。セッションのような作りになっている事で、MFA Recordsを主宰する20代のプロデューサー:ダイチ・タカセが現地で肌で感じたような、ヒリヒリするスリルをそのまま届けてくれる。

この一枚から、前作同様に次なるスターが生まれる事は間違いない。


文:花木洸 HANAKI hikaru


MFA RECORDS
THE NEW ORLEANS FUNK ALL-STARS "NOLA REVISITED"(インパートメント)



Recommend Disc

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Title : 『NOLA REVISITED』
Artist : THE NEW ORLEANS FUNK ALL-STARS
LABEL : MFA RECORDS
NO : MFAR-1002
RELEASE : 2017.1.19

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【MEMBER】
参加アーティスト・楽器・所属バンド等
・Nori Naraoka - BASS/ PRODUCER・from (Allen Toussaint) (The Wild Magnolias)
・George Porter Jr. - BASS・ from (The Meters / Funky Meters)
・Bo Dollis Jr. - VOCALS・from (Bo Dollis Jr. & The Wild Magnolias)
・Donald Harrison Jr. - SAXOPHONE・(Big Chief of The Congo Square Nation)
・John "Papa" Gros - B3 ORGAN・from (Papa Grows Funk)
・BIG SAM WILLIAMS - TROMBONE・from (BIG SAM' S FUNKY NATION)
・Andrew Baham - TRUMPET・from (BIG SAM' S FUNKY NATION)
・Kirk Joseph - SOUSAPHONE・from (Dirty Dozen Brass Band)
・Aaron Fletcher - SAXOPHONE・from (Terence Blanchard and more)
・June Yamagishi - GUITAR・from (Papa Grows Funk) (The Wild Magnolias)
・Seizo Shibayama - GUITAR・from (BIG SAM' S FUNKY NATION)
・Alexey Marti - CONGA・from (Alexey Marti & Urban Minds)
・Khris Royal - SAXOPHONE/KEYBOARD・from (George Porter Jr. & the Runnin' Pardners)
・Larry Sieberth - KEYBOARD・ from (Lawrence Sieberth Quartet)
・Julian Addison - DRUMS・ from (Dirty Dozen Brass Band)
・Terence Houston - DRUMS・ from (George Porter Trio) (Funky Meters)
・Eddie Christmas - DRUMS・ from (Gerald Levert and more)


【SONG LIST】
01. Leading in/Intro
02. Here We Come Again
03. Everybody Get Up (On Dat Dance Floor)
04. Anybody Got a Cold Drink?
05. Red Beans & Rice
06. Havana Blues
07. Two Bass Hit
08. I'm Goin' Miss You


この連載の筆者、花木洸が先日発売になりました『Jazz The New Chapter 3』で編集・選盤・レビュー記事などを担当。ブラック・ミュージックの最先端からUKジャズ、ネクスト・ジャズ・ファンク、ラージアンサンブル等ここにしかない記事・インタビューが盛り沢山となっています。


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■タイトル:『Jazz The New Chapter 3』
■監修:柳樂光隆
■発売日:2015年9月10日
■出版社: シンコーミュージック

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今日においてはジャズこそが時代を牽引し、ディアンジェロやフライング・ロータスなど海外の最先端アーティストから、ceroなど日本のポップ・シーンにも大きな影響を与えている。この状況を予言し、新時代の到来を告げた「Jazz The New Chapter(ジャズ・ザ・ニュー・チャプター)」の第3弾がいよいよ登場。2014年の刊行時より刷数を重ね、SNS上でも未だ話題沸騰中の第1弾・第2弾に続き、2015年9月末に〈Blue Note JAZZ FESTIVAL in JAPAN〉が開催されるなど、かつてない活況を迎えているジャズの次なる未来は、ニューチャプターが切り拓く!


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花木 洸 HANAKI hikaru

東京都出身。音楽愛好家。
幼少期にフリージャズと即興音楽を聴いて育ち、暗中模索の思春期を経てジャズへ。
2014年より柳樂光隆監修『Jazz the New Chapter』シリーズ(シンコーミュージック)
及び関西ジャズ情報誌『WAY OUT WEST』に微力ながら協力。
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Monthly Disc Review2016.12.15:Monthly Disc Review

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Title : 『Songbook』
Artist : 石若駿



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ジャズ・ドラマー、そしてCRCK/LCKSのドラマーとして活躍する石若駿の最新作。ゲストのボーカルを中心に置き、ドラム、ピアノ、シンセまでを多重録音してのセルプロデュースによって制作されたこの作品は、昨年のリーダーバンドによるジャズ作品『CLEANUP』とはうってかわって、というよりジャズドラマー石若駿のイメージをそのものを覆す作品となった。


ゲストとして参加しているのは、石若と同じく東京藝術大学の打楽器専攻出身の角銅真実、CRCK/LCKSに参加する小西遼と小田朋美、けもののボーカリスト青羊とベーシスト織原良次、ジャズボーカルのサラ・レクター。石若がキャリアの中で共演してきたミュージシャンが並んでいる。

 
少しぼやけて滲んだピアノとドラムの上にクリアなボーカルが乗る「Asa」からアルバムはスタート。ウィスパー気味のボーカルと背景の楽器のバランスが、良い意味で豪華すぎない優しい空間を演出している。


「Asa」、「10℃」、「the voice」で聴ける小学校に上る前から学んでいたという石若のピアノは、ここではジャズ的というよりもクラシック的。縦にリズムを割っていくのではなく、沢山のラインが並行してそれぞれのラインと歌との間を交差して折り重なっていく。一方でシンセベースや打ち込みの音源で作り込まれた「Christmas Song」は、既にCRCK/LCKSで演奏している曲ということもあり、ひねくれたリズムとカラフルな音色が複雑に絡み合う曲、さらにシンプルなリズムの上を織原のベースが歌の隙間を縫うように自由に走る「ジョゼ」と、それぞれの曲が違った表情を見せている。その中でも、小節の縦線をまたいで滑らかに繋がっていくメロディラインや、そこに寄り添うオブリガードには『CLEANUP』から一貫した石若の作家性が伺えるのが面白い。


スウィングも超絶テクニックも表には出さずに仕上げられたこの一枚が、あるいはドラムを叩いている時以上に作曲家としての石若駿をくっきりと浮き彫りにしている気がしてならない。


文:花木洸 HANAKI hikaru


石若駿インタビュー(JJazz.Net 2015.12.15)

石若駿 Official


【Shun Ishiwaka『Songbook』】




Recommend Disc

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Title : 『Songbook』
Artist : 石若駿(Shun Ishiwaka)
LABEL : YoungS'tonesRecords/APOLLO SOUNDS
NO : YS-0001
RELEASE : 2016.12.14

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【MEMBER】
石若駿セルフプロデュース


【SONG LIST】
01. Asa feat.角銅真実
02. Christmas Song feat.小西遼 (from CRCK/LCKS)&小田朋美 (from CRCK/LCKS)
03. 10℃ feat.角銅真実
04. ジョゼ feat.青羊(from けもの)&織原良次(from 透明な家具、miD)
05. the voice feat.Sara Rector


この連載の筆者、花木洸が先日発売になりました『Jazz The New Chapter 3』で編集・選盤・レビュー記事などを担当。ブラック・ミュージックの最先端からUKジャズ、ネクスト・ジャズ・ファンク、ラージアンサンブル等ここにしかない記事・インタビューが盛り沢山となっています。


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■タイトル:『Jazz The New Chapter 3』
■監修:柳樂光隆
■発売日:2015年9月10日
■出版社: シンコーミュージック

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今日においてはジャズこそが時代を牽引し、ディアンジェロやフライング・ロータスなど海外の最先端アーティストから、ceroなど日本のポップ・シーンにも大きな影響を与えている。この状況を予言し、新時代の到来を告げた「Jazz The New Chapter(ジャズ・ザ・ニュー・チャプター)」の第3弾がいよいよ登場。2014年の刊行時より刷数を重ね、SNS上でも未だ話題沸騰中の第1弾・第2弾に続き、2015年9月末に〈Blue Note JAZZ FESTIVAL in JAPAN〉が開催されるなど、かつてない活況を迎えているジャズの次なる未来は、ニューチャプターが切り拓く!


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花木 洸 HANAKI hikaru

東京都出身。音楽愛好家。
幼少期にフリージャズと即興音楽を聴いて育ち、暗中模索の思春期を経てジャズへ。
2014年より柳樂光隆監修『Jazz the New Chapter』シリーズ(シンコーミュージック)
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Monthly Disc Review2016.11.15:Monthly Disc Review

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Title : 『Manhattan』
Artist : 大林武司トリオ



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今月のレビューはピアニスト大林武司の新作『Manhattan』。近年はJose JamesのバンドやNew Century Jazz Quintet、最近ではトランペッター黒田卓也の新作『ジグザガー』、そして「報道ステーション」のテーマ曲を手掛けた在NY日本人ジャズマンのスペシャルバンド「J-Squad」のメンバーでも活躍している。


アルバムは8曲を2つのトリオで均等に分けており、一方が大林の師でもあるベテランTerri Lyne Carrington(ds)とTamir Shmerling(b)によるトリオ、もう一方がJose JamesバンドのNate Smith(ds)とNew Century~で活動を共にする中村恭士(b)によるトリオだ。Tamir Shmerlingとの組み合わせは、この連載で6月に紹介した森智大『Grand Slam』でも聴くことが出来る。


シンプルなビートの上に様々な音色のレイヤーを重ねていく「WORLD PEACE」からアルバムは始まる。2曲目から続くエレクトリックな質感の曲をテリ・リンとタミアが、そして5曲目「In Walked Bim」から始まるオーソドックスなピアノ・トリオ・スタイルの曲をグルーヴの印象の強いネイト・スミスが担当しているのも興味深い。どんなスタイルでも当たり前にフィットしていくというのは、もはや現代のジャズ・ミュージシャンにとっては当たり前のことになっている。一方でグルーヴする最先端のビートであっても、スウィングする4ビートであっても大林のピアノのスタイルは一貫してとてもなめらかで、独特のタッチの中に彼より一世代上のロバート・グラスパーが、そしてそのさらに上の世代のマルグリュー・ミラーが見え隠れする。音色やリズムの質感が違っていても、核となるスタイルが彼の中で確立されているから、大林のピアノには説得力があるのだろう。


Jose Jamesや黒田卓也のバンドではシンセサイザーを豪快に操ってネオ・ソウルやヒップホップの空気を演出する一方で、New Century Jazz QuintetやJ-Squadでは流麗なストレート・アヘッドなジャズのピアノを聴かせたりと、大林の持つ2つの側面、その間にピッタリとハマるピースがこのアルバムだと感じた。


文:花木洸 HANAKI hikaru


大林武司Facebook


【Takeshi Ohbayashi Trio "Manhattan" TRIAL (SOUNDCLOUD)】
https://soundcloud.com/somethincool/manhattan



Recommend Disc

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Title : 『Manhattan』
Artist : 大林武司トリオ (Takeshi Ohbayashi Trio)
LABEL : SOMETHIN' COOL
NO : SCOL-1016
RELEASE : 2016.11.9

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【MEMBER】
大林武司 Takeshi Ohbayashi (p, synth)
テリ・リン・キャリントン Terri Lyne Carrington (ds)
ネイト・スミス Nate Smith (ds)
タミヤ・シュマーリング Tamir Shmerling (b)
中村恭士 Yasushi Nakamura (b)


【SONG LIST】
01. World Peace
02. Cill My Landlord
03. Heart
04. Cyclic Ridge 2
05. In Walked Bim
06. One For Sonny
07. Untitled Bossa
08. Steal Heel


この連載の筆者、花木洸が先日発売になりました『Jazz The New Chapter 3』で編集・選盤・レビュー記事などを担当。ブラック・ミュージックの最先端からUKジャズ、ネクスト・ジャズ・ファンク、ラージアンサンブル等ここにしかない記事・インタビューが盛り沢山となっています。


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■タイトル:『Jazz The New Chapter 3』
■監修:柳樂光隆
■発売日:2015年9月10日
■出版社: シンコーミュージック

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今日においてはジャズこそが時代を牽引し、ディアンジェロやフライング・ロータスなど海外の最先端アーティストから、ceroなど日本のポップ・シーンにも大きな影響を与えている。この状況を予言し、新時代の到来を告げた「Jazz The New Chapter(ジャズ・ザ・ニュー・チャプター)」の第3弾がいよいよ登場。2014年の刊行時より刷数を重ね、SNS上でも未だ話題沸騰中の第1弾・第2弾に続き、2015年9月末に〈Blue Note JAZZ FESTIVAL in JAPAN〉が開催されるなど、かつてない活況を迎えているジャズの次なる未来は、ニューチャプターが切り拓く!


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