台湾を代表するサックス奏者・謝明諺(シェ・ミンイェン)と日本のフリージャズ界を牽引してきた山崎比呂志、大友良英、須川崇志の4名によるライブアルバム『Punctum Visus -視角-』が7月2日にリリース。2024年6月に都内で行われたセッションをそのままパッケージ。即興の極限、激しくも繊細なインタープレイを聴くことができる作品です。
日本のミュージシャンと長きに渡り交流を続ける謝明諺。彼ならではの視点でインタビューにお答えいただきました。
■東京のジャズシーンの印象についてきかせてください。
【謝明諺】
東京のジャズスポットの多さ、そしてミュージシャンの数やスタイルもそれぞれ。違う世代でも共通点を持つ人たちがいる事がとても印象深いです。それぞれのスタイルは異なっていてもコミュニケーションを取り合うところが素晴らしいと思います。
また、オーディエンスも積極的にミュージシャンとコミュニケーションをとっています。これは、他の都市ではあまり見られないシーンです。観客とミュージシャンの交流が多いところも印象的です。
■東京はジャズスポットが多いと思います。お気に入りの場所があれば教えてください。
【謝明諺】
一つめは、新宿PIT INN。自分にとって殿堂的な場であり、聖地のような存在です。いつもここで演奏する機会を楽しみにしています。
二つめは、荻窪Velvet sun。東京に来るたびにライブをしています。スタッフさんも共演ミュージシャンも素晴らしくて、まるで自分のリビングルームで演奏しているような雰囲気がとても好きです。
三つめは、稲毛Jazz Spot Candy。民家の一階にあって、アットホームな雰囲気があります。オーディエンスも耳が肥えていて、お店の機材も充実していています。都心から離れていても、わざわざ足を運ぶ価値のある音楽愛のある場所だと感じます。
■初めて日本で演奏したのが2013年。日本での演奏を重ねる中で、特に印象に残ったミュージシャンを教えてください。
【謝明諺】
当時一番影響を受けたのは、ドラマーの豊住芳三郎(とよずみ よしさぶろう)さんです。
初めて日本に来る前に台湾で出会ったフリージャズの名手です。ドラムというメロディのない楽器にも関わらず、彼の音がもたらすパワー、深さ、ユニークさ、など、無限大の可能性を教えてくれた方です。
一緒に台湾でレコーディングした事もあり、その際にご自身の経験やアドバイスなど、様々なお話を伺えました。とても良い経験をさせていただきました。
■7/2に発売されたアルバム『Punctum Visus -視角-』について。
メンバーは山崎比呂志(drums)、大友良英(guitar)、須川崇志(bass)。日本のフリージャズやノイズシーンで知られる方々です。彼らの印象について教えてください。
【謝明諺】
ギターの大友さんは、2019年の新宿PIT INNでの大友良英スペシャル・ビッグバンドを観に行くなど、長らくファンだったのですが、2023年12月の来日時にピアノの遠藤ふみさん、ベースの千葉広樹さんと共に初めて共演をしました。今回のライブ録音は2度目の共演です。懐の広い方で、周りのミュージシャンをサポートする姿にも感心しています。
ベースの須川さんは、2015年の台湾のジャズフェスで一度お会いしていて、その時の演奏がとても印象深かったです。彼の精神的な部分からなる音の深さに感動しています。
ドラムの山崎さんは、以前からレジェンドとして存じていました。今まで聴いたことのないような音に驚愕し、感動しました。音楽に没入する姿も魅力的で、自分を導いてくれているようでした。彼もオープンマインドな方で、年齢の離れた自分とのライブも歓迎してくれました。嬉しかったですね。
■彼らと共演、ライブレコーディングをしてみていかがでしたか?
【謝明諺】
彼らと演奏することに、不安はありませんでした。それは彼らの音のイメージができていたからです。
素晴らしいメンバーの音の中に自分が入ることができ、ミュージシャンとして受け入れていただけたことが、とても嬉しかったです。
■この日の印象的なエピソードありますか?
【謝明諺】
山崎さんが立ってドラムを叩いたり、叫んだりしていました(笑)。立ち位置的に自分からは見えなかったのですが、その音からエネルギーや情熱が伝わってきて、それを受けて自分の演奏にも変化がありました。そんな循環が何度も起こっていたことが、強く心に残っています。
■ジャズ以外のシーンでも活動していますよね。
シンガーソングライター寺尾紗穂さんとの共演について教えてください。
【謝明諺】
彼女が2024年4月、自身のコンサートで台湾に来た際、現地のミュージシャンとコラボをしたいとの打診があり、主催者を通じてオファーを受けました。その時は数曲をコラボし、次回は東京で共演しましょうと約束をして、2024年12月にサントリーホールでの公演(「しゅー・しゃいん」リリースツアー)に招聘いただきました。
彼女のシンプルなメロディに対し、自分という存在がどういう役割を果たせるのか、あれこれ考えずに自然に音に身を任せられたことが、次の縁に繋がったと思います。音楽のスタイルは異なりますが、何かを伝えたいという芯の部分が共通していたように感じます。それは、彼女の音楽から充分伝わってきました。
■台湾に連れて行きたい日本のミュージシャンはいますか?
【謝明諺】
今年の10月に今回リリースをしたアルバムのミュージシャンと一緒に台湾でライブをする予定ですが、それ以外で考えると...ピアニストの遠藤ふみさん。若い世代の中でとても特別な存在です。それからベーシスト高橋陸さんも素晴らしいと思います。
台湾では、ドラマー石若駿さん、ギター井上銘さん、サックス馬場智章さんなどが日本のジャズミュージシャンとして名前が上がりますが、新しいアーティストの音楽も台湾のジャズファンに聴いていただきたいですね。
■今後やってみたいことがあれば教えてください。
【謝明諺】
様々なジャンルやスタイルのミュージシャンとご一緒したいですね、
ライブも今は東京がメインとなっていますが、もっと日本の様々な場所でライブできたら嬉しいと思っています。
■ありがとうございました!
NEW RELEASE |
![]() Title : 『『Punctum Visus -視角-』 Artist : 謝明諺 山崎比呂志 大友良英 須川崇志 LABEL : Point. RELEASE : 2025年7月2日 【SONG LIST】 01. Punctum Visus #1 02. Punctum Visus #2 03. Punctum Visus #3 04. Punctum Visus #4 05. 視角 #1 06. 視角 #2 07. 視角 #3 08. 視角 #4 09. encore piece *bandcampデジタルアルバムのみ収録 https://www.pointtenten.com/label |