その年を振り返りつつベストディスクを発表するという年末恒例企画「夜ジャズミーティング」。
詳しくは番組でお楽しみ頂くとしまして、ここでは恒例、ジャズDJ3人が選ぶ年間ベスト。
松浦俊夫さん、沖野修也さん、そして須永辰緒さんによる2023年ベスト3作品をご紹介します。
■夜ジャズ.Net#183 - 夜ジャズミーティング2023
https://www.jjazz.net/programs/yorujazz/
配信期間:2023年12月20日(17:00)~2023年1月24日(17:00)
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【2023 年間BEST3アルバム】
selected by 沖野修也
2023年はおそらくコロナ禍に制作されたであろう作品が続々とリリースされた年ではなかったでしょうか?いい曲やアルバムが沢山リリースされましたが、僕が愛聴したのは、チルでクワイエットでビューティフルな作品でした。やはりコロナでリスナーだけでなくクリエーターも音楽に対する考え方が変わったんでしょうね。
『Les Jardins Mystiques, Vol. 1 / Miguel Atwood-Ferguson』
制作10年の三部作からまず一枚目がリリース。ジャズ、アンビエント、ポストクラシカルを混在させた荘厳で華麗な音絵巻。こんな作品を出されたらクリエーターとして手も足も出ません。先鋭的レーベル、Brain Feederから出た意味も大きいと思います。エッジとは何か?また、音楽とは何かを考えさせられました。個々の曲も良いのですが、DJという職業を離れて全体を楽しむ感覚は、2023年の個人的なモードでした。
『An Ever Changing View / Matthew Halsall』
次々と良質な作品をリリースするGondwana Recordsから、主宰者Matthew Halsallの待望の新作が登場。現行のスピリチュアル・ジャズと括られる事の多かったmatthewが、アンビエントを視野に入れ、よりチルアウトな方向にシフトした素晴らしい作品。牧歌的なコンポージングは、殺伐とした世界の現実と真逆に繰り広げられた理想郷のサウンド・トラック。聴く度に心洗われ、癒されました。
『Late Again / Sven Wunder』
サントラやラウンジ感覚を伴う音楽のリバイバルというだけでなく、まさに今の時代のチル感にフィットした作品。オーケストラ的なアレンジとフュージョン的な音使いが僕の好みにフィットしました。匿名的でありながら、ユニークなスタイルと盲点を突くようなオリジナリティーが、一部の愛好家に刺さったのではないでしょうか?決して大ブレイクしないのは残念ですが、密かな楽しみに耽る優越感を与えてくれましたね。
Years Best-沖野修也- |
Title : 『Les Jardins Mystiques, Vol. 1』 Title : 『An Ever Changing View』 Title : 『Late Again』 |
【沖野修也 プロフィール】
音楽プロデューサー/選曲家/作曲家/執筆家/ラジオDJ/The Roomオーナー。2000年にKYOTO JAZZ MASSIVE名義でリリースした「ECLIPSE」は、英国国営放送BBCラジオZUBBチャートで3週連続No.1の座を日本人として初めて射止めた。これまでDJ/アーティストとして世界40ヶ国140都市に招聘されただけでなく、CNNやBILLBOARD等でも取り上げられた本当の意味で世界標準をクリアできる数少ない日本人音楽家の一人。2015年、ジャズ・プロジェクトKYOTO JAZZ SEXTETを始動。名門をブルー・ノートよりリリース。2017年6月、KYOTO JAZZ SEXETのセカンド・アルバム『UNITY』を発表。同年フジ・ロック・フェスティバル〜Field Of Hevenステージにも出演。2018年7月にはDJとして名門モントルー・ジャズ・フェスティバルにも出演を果たした。2021年にはKyoto Jazz Massiveの2ndアルバム『Message From A New Dawn』を19年振りに発表。2022年にはジャズ・レジェンド森山威男氏をフィーチャーしたKyoto Jazz Sextetの3rdアルバム『SUCESSION』を引っ提げ、5年ぶりにFUJI ROCK FESTIVALにも出演。2022年から2023年にかけて、Kyoto Jazz Massive with Echoes Of A New Dawn Orchestra名義でバンドとしてヨーロッパツアーを敢行している。著書に、『DJ 選曲術』や『クラブ・ジャズ入門』、自伝『職業、DJ、25年』等がある。現在、InterFM『Tokyo Crossover Radio』にて番組ナビゲーターを担当中(毎週金曜日22時)。有線放送内I-12チャンネルにて"沖野修也 presents Music in The Room"を監修。2024年にKyoto Jazz Massiveがデビュー30周年を迎える。
http://www.kyotojazzmassive.com
https://ameblo.jp/shuya-okino
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selected by 松浦俊夫
「多種多様な音楽をいかに日々聴き続けることが出来るか」をテーマに過ごした2023年。
ステイホームが制限から必然に変容し、より深いところへ進むことが出来たような気がします。
2024年はさらにアウトプットを増やしていき、ふと耳にした音楽がその人の人生を大きく変えてしまうような事象が増えるようにしていこうと思います。
『The Omnichord Real Book / Meshell Ndegeocello』
名門ブルーノートに移籍し、5年ぶりに発表したミシェル・ンデゲオチェロのニューアルバム。コロナ禍に自宅の屋根裏部屋に80年代初期に開発された電子楽器"オムニコード"を持ち込んで曲作りをし、それをジェイソン・モラン、アンブローズ・アキンムシーレ、ジョエル・ロス、ジェフ・パーカー、ブランディ
ー・ヤンガー、ジュリアス・ロドリゲスらといった精鋭を迎えて作り上げた重量級の作品。必聴。
『Nova / Terrace Martin』
2023年、BMGとパートナーシップを結み、自身のレーベルSounds Of Crenshawでから立て続けに作品を発表し続ける八面六臂の活躍を見せたマルチ奏者/プロデューサー、テラス・マーティン。どの作品もクオリティが高く、いよいよグラミー獲りか。その中でもSSW/プロデューサーJames Fauntleroyと共演した『Nova 』に収録の「Sir Fauntleroy」は旅情を誘う90年代の空気感があるダンサブルなトラ
ック。
『Children Of The Sun / Andy Hay』
サックス奏者ナット・バーチャルへの作品への参加でも知られるイングランド・チェスターのドラマー、アーティスト 、アンディ・ヘイの4作目。ハンドペインティングによるアートワークのスリーヴに収録された「I Believe in Love」を始めとする楽曲群はまさに現代のスピリチュアル・ジャズ。
Years Best-松浦俊夫- |
Title : 『The Omnichord Real Book』 Title : 『Nova』 Title : 『Children Of The Sun』 |
【松浦俊夫 プロフィール】
1990年、United Future Organization (U.F.O.)を結成。
5作のフルアルバムを世界32ヶ国で発表し高い評価を得る。
2002年のソロ転向後も国内外のクラブやフェスティバルでDJとして活躍。
またイベントのプロデュースやホテル、インターナショナル・ブランド、星付き飲食店など、高感度なライフスタイル・スポットの音楽監修を手掛ける。
2013年、現在進行形のジャズを発信するプロジェクトHEXを始動させ、Blue Note Recordsからアルバム『HEX』をワールドワイド・リリース。2018年、イギリスの若手ミュージシャンらをフィーチャーした新プロジェクト、TOSHIO MATSUURA GROUPのアルバムをワールドワイド・リリース。2024年にはGilles Petersonが主宰するBrownswood Recordingsより再リリース予定。
2023年にラジオ番組「TOKYO MOON」(interfm 金曜 23:00) の3作目となるコンピレイションをリリースした。
https://linktr.ee/toshiomatsuura
http://www.toshiomatsuura.com
https://www.mixcloud.com/toshiomatsuura
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selected by 須永辰緒
2023年は(ようやく"現場"が戻ってきたなぁ)と感じる年でもあったと同時に、様々なベニューで音楽を鳴らせるようになった事、更には音楽との向き合い方のスタイルの変化によって、我々DJは必ずしも踊らせなくてはいけないという呪縛から物理的に解放された年でもあったと思います。よりキュレーター的な役割が求められるというか。そういう意味で今年色んな現場でプレイした決して踊る事を目的としないアルバムから女性ボーカルをテーマに選んでみました。
『Bewitched / LAUFEY』
サブスクで聴いた瞬間からずっと頭の中をリフレインしていた「From the start」という曲が白眉ですが、全体がコンセプトアルバムのような流暢な組み立てになっていて結果2023年のベストアルバムとして選出しました。会う人全てに勧めていたような気がします。
『Crisis & Opportunity / MYELE MANZANZA』
ニュージーランド出身でロンドンで活躍するドラマーによる3部作からの一枚。ネオ・ソウルやエレクトロ、ヒップホップを消化したジャズ、といういまどきの紹介はどうでもいいとして大事なのはアルバムにfeat.されているRosie Frater-Taylorという女性ボーカリスト。昨年リリースしたソロアルバムも好きで今でもレコードバッグに入っています。現在は形を変えつつあるいわゆるSSWですがこのアルバムでも素晴らしいパフォーマンスを披露しています。
『Drunk On A Flight / ELOISE』
日本在住の友人ロシア人でマリア・ゴロミトバという女性カメラマンが居ますが(多くのミュージシャンは皆さん知り合いの筈です)ジャケット映る被写体の女性が彼女にしか見えず、というか本人かと思ったくらい似ていて思わずジャケ買いしたところ、内容も最高のネオソウル。クレバーなシンガーなのでしょう。世界観やトラックメイキングも今年の空気感に寄り添っていた。
Years Best-須永辰緒- |
Title : 『Bewitched』 Title : 『Crisis & Opportunity』 Title : 『Drunk On A Flight』 |
【須永辰緒 プロフィール】
Sunaga t experience =須永辰緒によるソロ・ユニット含むDJ/プロデューサー。 DJプレイでは国内47都道府県を全て踏破。また各国大使館と連動して北欧諸国=日本の音楽交流に尽力、欧州やアジア、アメリカなど世界各国での海外公演は多数。 MIX CDシリーズ『World Standard』は12作を数え、ライフ・ワークとも言うべきジャズ・コンピレーションアルバム 『須永辰緒の夜ジャズ』は20作以上を継続中。国内や海外レーベルのコンパイルCDも多数制作。国内外の多数のリミックスワークに加え自身のソロ・ユニット"Sunaga t experience"としてアルバムは7作を発表。最新作は「STE with J.Lamotta Suzume/Re Blue」(Flower)。主宰する音楽レーベル「DISC MINOR」からはヴァイナルのみの内外ライセンス作品のリリースも活発化させる。多種コンピレーションの 監修やプロデュース・ワークス、海外リミックス作品含め関連する作品は延べ250作を超えた。加えて企業ブランディングや商品開発、音楽や料理などの著作、連載も多数携わる。また出身地である栃木県足利市の「あしかが輝き大使」として地域でも活動中。
http://sunaga-t.com
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