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Monthly Disc Reviewの最近のブログ記事

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Title : 『The Tony Bennett Bill Evans Album』
Artist : Tony Bennett / Bill Evans



みなさんこんにちは、トランペットとピアノの曽根麻央です。本日はデュオアルバムの最高峰とも言える『The Tony Bennett Bill Evans Album』をご紹介します。デュオはアンサンブルの形態としては最小なので、個の及ぼす影響力が大きいです。そのため集中力と高い音楽性、そして技術力が表現者に求められます。ジャズを志す人がアンサンブルを習得するのに最も適した形態であるとも言えます。数ある名作の中からこのアルバムをピックアップしたのは、アンサンブルの完璧とも言えるクオリティーの高さと、個々が持つ影響力が大きさゆえです。


本題に入る前に宣伝です。来月9日発売、曽根麻央のセカンドアルバム『Brightness of the Lives』がAmazon等で予約開始となりました。バークリー音楽時代からの仲間、井上銘 (guitar)、山本連 (bass)、木村紘 (drums)と作り上げて来たバンドサウンドが見事に収録されています。またキューバのパーカッションコンペでも優勝を果たしたNYで活動するパーカッショニスト二階堂貴文もゲスト参加しています。是非お手にとって聴いていただけると嬉しいです。


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Title : 『Brightness of the Lives』
Artist : 曽根麻央
LABEL : リボーンウッド
NUMBER : RBW-0022
RELEASE : 2022.2.9

アマゾン詳細ページへ


【SONG LIST】

01. Prelude
02. Luminous
03. Drum Hero
04. Home
05. Quiet Cinema
06. Air
07. Lives
08. You Are Not Alone
09. Gathering At Park Drive
10. Always And Forever





【デュオアルバムの最高峰】


さて、スタンダード曲9曲を収録した『The Tony Bennett/Bill Evans Album』は1975年の2人の偉大なアーティストのコラボ・アルバムです。アメリカの音楽史で最も偉大な歌手の一人であるTony Bennettと、ジャズピアノの常識を根底から変えたアーティストBill Evansの共演を楽しむことができます。この作品の2年後に発売された『Together Again』でこの二人は再度共にアルバムを制作しています。

Tony Bennettは特徴的な声質と豊かな声量を持ち、表現力も豊かなシンガーです。ささやくような声から、オペラのような響きを自由自在に使い分けられる達人です。音程ももちろん正確で各曲の持つメロディーや歌詞の美しさを最大限に表現しています。各テイクのダイナミックスを明確に示し、聴く人の耳と心を自然とキャッチします。

一方、Bill Evansは各曲へ自身のハーモニーの解釈を取り入れ、スタンダード曲をより洗練されたものへと進化させています。ピアノのタッチも美しいだけでなく、ピアノの鍵盤の端から端までを使いこなし、サステイン・ペダル(踏むことによって弦を解放し全ての音が伸びるようにするペダル)やソフト・ペダル(音を柔らかく、小さくするペダル)も効果的に使用することで、ピアノという楽器をまさに完璧に操っています。リズムも正確です。伴奏でありながら音楽全体の雰囲気や方向性を支配しています。

アンサンブル、特にデュオにおいてフォロー&リードの能力が大切です。リードするとは音楽やアンサンブルの主導権を握ることで、それに対してフォローはそのサポートや追随に回ることを指します。デュオではフォロー&リードの役割が結構な頻度で入れ替わり立ち替わってゆきます。どちらかがリードに徹すると、もう一人がフォローに回ります。またこの逆もしかりです。一見、歌とピアノでは歌が主導権を握りピアノが伴奏に徹すると思われがちですが、このEvansとBennettのデュオはそんなことありません。



Tony Bennett - vocal
Bill Evans - piano






01. Young and Foolish
僕らが今も若くて愚かだったらどんなに良かったことかという寂しげな曲。曲の出だしからピアノと歌のサウンドが素晴らしく、一瞬にして耳を鷲掴みにされてしまいます。Bennettの歌う完璧なメロディーラインとそれに対応するかのように変化を繰り返すEvansのヴォイシング。伴奏というよりかはもう一つのメロディーのようです。Evansの前半のソロは静かに何か秘めているような演奏ですが、徐々に後半に向けて情熱的になり曲をクライマックスへと導きます。


02. Touch Of Your Lips
今度はなんとも甘いタイトルのスタンダード曲。Chet Bakerの演奏でも有名ですね。この曲では少しアップテンポで演奏され、歌やハーモニーの間を縫うようにEvansの左手が低く小刻みにビートを心地よく奏でます。彼のソロピアニストとしての並外れたすごさがわかる音源でもあります。


03. Some Other Time
レナード・バーンスタインが音楽を作曲したミュージカル『On The Town(踊る大紐育)』の挿入歌。時間の過ぎ去るのはとても早く、やりたいことの半分もできていない、伝えたい言葉が多すぎる、だからまたいつかね、というラブソング。Evansは自身の楽曲「Peace Peace」やMiles Davisの「Flamenco Sketches」に使用したのと全く同じリフ(パターン)をイントロや伴奏に使用していて、基本このパターンの上でまるで時が流れるように曲が展開していきます。


04. When In Rome
Peggy Leeによるバージョンがオリジナルの曲。楽器の人が今となってはあまり取り扱わない楽曲なので、このアルバム以外で私は知りませんでした。少しブルージーなイントロから始まるこのバージョン。軽快な中庸なスウィングで演奏されています。


05. We'll Be Together Again
別れはサヨナラじゃない、いつかまた、一緒になれる、という悲しいラブソング。曲と歌詞がとても美しく、僕自身演奏するのも聴くのも大好きな曲です。ハーモニーの構成も見事で途中で暗い短調に転調するところなど見事です。  
 Bennettの枯れた声と、Evansの悲しいサウンドが曲をより一層、その悲しい物語の世界へと近づけています。イントロもEvansの訥々としたアルペジオがこの曲のストーリーを語ってくれています。


06. My Foolish Heart
Evansといえばこの曲を思い浮かべる方も多いでしょう。一番有名なのはScott LaFaroとPaul Motianとライブレコーディングしたアルバム『Waltz For Debby』の中に収録されているバージョンでしょう。
このバージョンではバース(メインメロディーの前に歌われる部分。ジャズでは省略されることが多いが、曲のストーリーを語る上で重要なパート。ミュージカルの曲に多くあります)も歌われ、我々がよく知るバージョンとはかなり異なります。この曲は他の曲に比べると淡々と歌われ弾かれている気がします。それが夜に騙されて踊らされてしまう「愚かな心」を表しているのかもしれませんね。









07. Waltz For Debby
Evans が姪に贈ったジャズ史を代表する名曲。今は幼くおとぎ話やぬいぐるみと共に暮らしている可愛らしい彼女が、いつかは大きくなって愛する人を見つけて家を出て行ってしまうことを私が一番悲しむだろう、という歌。原曲より全音低く演奏されていますが、まるでBennettの為に書かれたかのように彼の声にぴったりはまっていますね。Evansのソロやトリオバージョンより、さらにストーリーが見えてくると思います。曲が進むにつれてより段々とハーモニーが複雑になるのも彼女の成長を表しているのでしょうか?


08. But Beautiful
愛は悲しくも楽しく、また良しも悪しもあるが、それでも美しい、という名曲。ルバートで最初のテーマは演奏されますがお互いのリードとフォローが見事で、フレーズとフレーズの間が完璧ですね。またダイナミクスのつけ方も素晴らしく、愛というテーマに対してぴったりな壮大なバージョンに仕上がっています。


09. The Days Of Wine And Roses
誰もが知る名曲「酒とバラの日々」。Evansの通常の演奏ではスウィングで演奏されることが多いですが、このデュオでは1コーラスピアノソロ、次のコーラスでデュオのトータル2コーラスをルバートでメロディーを美しく演奏しています。よく知っている曲だからこそ、Evansの流れるようなハーモニーの構築力、タッチなどをよく聴き他のプレイヤーとの違いに気づくことができますし、Bennettの圧倒的歌唱力と豊かな表現にも驚かされます。是非聴いてみてください。


それではまた次回。


文:曽根麻央 Mao Soné





【曽根麻央LIVE INFO】

1/23 (Sun)
Open 15:00 | Start 16:00
MAO SONÉ Solo @ Cabin 本厚木
<出演>
​曽根麻央 - trumpet & piano
​<ご予約・お問い合わせ>
TEL: 046-221-0785


1/30 (SUN)
Start 16:30
MAO SONÉ Trio @ Velera 赤坂
<出演>
​曽根麻央 - trumpet & piano
伊藤勇司 - bass
木村紘 - drums
<ご予約・お問い合わせ>
TEL: 03-6277-8772


2/4 (Fri)
Open 18:30 | Start 19:30
MAO SONÉ & DAVID BRYANT @ Body & Soul 渋谷
<出演>
​曽根麻央 - trumpet
David Bryant - piano
<ご予約・お問い合わせ>
TEL: 03-6455-0088


2/12 (Sat)
20:00 ~ 21:00
映画「トランペット」上映, トーク & トランペット演奏
@ キネマ旬報シアター (柏高島屋ステーションモール S館隣り)
劇場公式サイト
<「ブライトネス・オブ・ザ・ライヴス」発売記念 曽根麻央トーク&演奏付き短編映画上映>
場所 : スクリーン③
料金 : 一般 1500円 / シニア 1100円 / 大学 1000円 / 高校生以下 500円
20 : 00 ~ 20 : 17 頃 映画『トランペット』上映
20 : 17 ~ 21 : 00 頃 曽根麻央の舞台挨拶・トランペット演奏
終了後、CD 購入者にサイン会予定


2/13 (Sun)
20:00 ~ 21:00
映画「トランペット」上映, トーク & トランペット演奏
@ キネマ旬報シアター (柏高島屋ステーションモール S館隣り)
劇場公式サイト
<「ブライトネス・オブ・ザ・ライヴス」発売記念 曽根麻央トーク&演奏付き短編映画上映>
場所 : スクリーン③
料金 : 一般 1500円 / シニア 1100円 / 大学 1000円 / 高校生以下 500円
20 : 00 ~ 20 : 17 頃 映画『トランペット』上映
20 : 17 ~ 21 : 00 頃 曽根麻央の舞台挨拶・トランペット演奏
終了後、CD 購入者にサイン会予定


2/15 (Tue)
20:00 ~ 21:00
映画「トランペット」上映, トーク & トランペット演奏
@ キネマ旬報シアター (柏高島屋ステーションモール S館隣り)
劇場公式サイト
<「ブライトネス・オブ・ザ・ライヴス」発売記念 曽根麻央トーク&演奏付き短編映画上映>
場所 : スクリーン③
料金 : 一般 1500円 / シニア 1100円 / 大学 1000円 / 高校生以下 500円
20 : 00 ~ 20 : 17 頃 映画『トランペット』上映
20 : 17 ~ 21 : 00 頃 曽根麻央の舞台挨拶・トランペット演奏
終了後、CD 購入者にサイン会予定


曽根麻央のその他情報はウェブサイトへ



Recommend Disc

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Title : 『The Tony Bennett Bill Evans Album』
Artist : Tony Bennett / Bill Evans
LABEL : Fantasy
発売年 : 1975年



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【SONG LIST】

01. Young And Foolish
02. The Touch Of Your Lips
03. Some Other Time
04. When In Rome
05. We'll Be Together Again
06. My Foolish Heart
07. Waltz For Debby
08. But Beautiful
09. Days Of Wine And Roses




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「Monthly Disc Review」アーカイブ曽根麻央

2020.04『Motherland / Danilo Perez』2020.05『Color Of Soil / タイガー大越』2020.06『Passages / Tom Harrell 』2020.07『Inventions And Dimensions / Herbie Hancock』2020.08『Birth Of The Cool / Miles Davis』2020.09『Chet Baker Sings / Chet Baker』2020.10『SFJAZZ Collective2 / SFJAZZ Collective』2020.11『Money Jungle: Provocative In Blue / Terri Lyne Carrington』2020.12『Three Suites / Duke Ellington』2021.01『Into The Blue / Nicholas Payton』2021.02『Ben And "Sweets" / Ben Webster & "Sweets" Edison』2021.03『Relaxin' With The MilesDavis Quintet / The Miles Davis Quintet 』2021.04『Something More / Buster Williams』2021.05『Booker Little / Booker Little』2021.06『Charms Of The Night Sky / Dave Douglas』2021.07『Play The Blues / Ray Bryant Trio』2021.08『The Sidewinder / Lee Morgan』2021.09『Esta Plena / Miguel Zenón』2021.10『Hub-Tones / Freddie Hubbard』2021.11『Concert By The Sea / Erroll Garner』2021.12『D・N・A Live In Tokyo / 日野皓正』




Reviewer information

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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

曽根麻央Official Site

曽根麻央 Monthly Disc Review2021.12_ 日野皓正_D・N・A Live In Tokyo:Monthly Disc Review

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Title : 『D・N・A Live In Tokyo』
Artist : 日野皓正



【トランペットとの一体感あるグルーヴィーなリズムセクション】


皆さんこんにちは。トランペッター&ピアニストの曽根麻央です。今日は日本を代表するミュージシャン、日野皓正さんのライブ音源『D・N・A Live In Tokyo』をご紹介します。本当に素晴らしいトランペットの演奏と、一体感あるグルーヴィーなリズムセクションがマッチして素晴らしいアルバムになっています。 


その前に一つ宣伝です。本日情報公開されました!
私、曽根麻央のセカンド・アルバム『Brightness of the Lives』が来年2月9日に発売決定いたしました!





アルバム・タイトルでもる『Brightness of the Lives』とは、僕のバンド名でもあります。参加しているアーティスト、井上銘(ギター)、山本連(ベース)、木村紘(ドラムス)と共に育てて来たバンドサウンドが見事に凝縮された作品と なっています。

ゲストには世界的に活躍するパーカッショニスト二階堂貴文を迎えてワールドミュージック的な幅の広い音楽性になっております。また、トランペットの音色に合う様に選曲や曲作りにこだわりました。カヴァー・ソングにはマイケル・ジャクソンの「You Are Not Alone」や、パッと・メセニーの「Always And Forever」といった美しい曲をピックアップして、トランペットやフリューゲルホルンを駆使して収録しています。是非聴いていただきたい一枚です。宜しくお願いいたします。




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1. Prelude / 2. Luminous / 3. Drum Hero / 4. Home / 5. Quiet Cinema / 6. Air / 7. Lives / 8. You Are Not Alone (R. Kelly) / 9. Gathering At Park Drive / 10. Always And Forever (Pat Metheny)
All songs written by MAO SONÉ except where indicated


【リリース・スケジュール】
1/2 6 /2022 アルバム先行配信 「Luminous」 配信
2/9/ 2022 『Brightness of the Lives』発売 サブスク 配信 /CD 流通 開始

さて本日ご紹介する日野皓正さんのアルバム『D・N・A Live In Tokyo』は2001年10月9日にBunkamura オーチャードホールでライブ録音されたものです。
さてメンバーを見ましょう



日野皓正 - trumpet
Sir ローランド・ハナ - piano
ロン・カーター -bass
ジャック・ディジョネット - drums




最高に豪華な組み合わせです。
実際にリズムセクションはグルーヴのキープ力と、音楽的爆発力を併せ持っていて、聴いていてあまりのスリルに自然と耳が奪われて体が揺れていきます。ローランド・ハナのベースラインの音域まで侵入してまで低音を使う独特なヴォイシングの隙間を華麗に縫いつつ音楽を前進させるロン・カーター。ジャック・ディジョネットの持つ破壊力をピアノのはじからはじまで使ってより大きな世界観へと聴き手を誘うローランド・ハナ。ロン・カーターのベースと最高のコンビネーションを発揮するジャック・ディジョネットのグルーヴ感。

3人がお互いに支えあうことにより、他に類を見ないリズムセクションとなっています。またその上に乗っかる日野皓正さんのトランペットも明るくて迫力のある音色と高度なテクニック、そして歌心で圧倒してきます。日野さんの音色は全体を通して、全てを貫く光線の様に、他の楽器の音の壁を貫いてこちらの耳に届きます。まるでマイルスのミュートプレイの様な鋭さが、トランペットそのままの状態でもある感じとでも言えます。


01. It's There
日野皓正さんの弟、日野元彦さんの楽曲。原曲はファンキーな曲ですがここではスウィング・ヴァージョンでの演奏です。
イントロから出現するロン・カーターのベースラインとそれに呼応するローランド・ハナのフレーズが曲全体を支配しています。ロンのベースラインは毎回ちょっとずつ変化があり、半音と半音の間の音などもあり実際になんの音を弾いているのかわからない箇所が結構あるのですが、それがまた音楽全体で聴くと緊張感だったり無重力感だったりと言ったものを感じさせてくれます。まさにマエストロのなせる技でしょう。

日野さんの特徴のあるエネルギッシュな音色がメロディーと共に出現します。ソロセクションはBb7とDb7を交互に演奏するスタイルで、この繰り返しの中を日野さんはトランペットの上から下までの音域を自由自在に行き来してソロを撮ります。これはトランペッターから見て凄まじいテクニッックで、しかも通常こんなにこのエネルギー感を持続させて吹き続けることは困難ですがそれを楽々とやってのけてしまいます。続くローランド・ハナのソロもダイナミックなソロになっていてジャック・ディジョネットとの駆け引きが素晴らしいです。まるでピアノ・コンチェルトを聴いているかの様な迫力のある箇所も沢山ありピアノファンの必聴ソロです。


02. Lori
ゆったりしたスウィングの日野さんオリジナル曲。ロン・カーターのベースラインが全体を通してクリエイティブで素晴らしいものになっています。まるでブギウギピアノの左手の様なベースラインが奥出現します。ハーモニックス(元の倍音列を使用した奏法)で通常のベースの音域にはない高音もベースラインの一部として使用していてベースの特殊奏法の可能性を聴く事ができます。ベースソロも圧巻です。とてもインタラクティブなロンのベースラインとも相性が抜群なジャックのドラムがグルーヴをゆったりと支えます。


03. For Toddlers Only
ロン・カーターの軽快なスウィングのポスト・ビバップのスタイルの曲。日野さんの音を張った時のテンションと、それがリリースされた時の柔らかな音色の対比を聴くのが非常に楽しい曲です。


04. Black Jack
日野さんのオリジナル曲。3拍子の曲で、とても特徴的なトランペットのメロディー・ラインで始まります。私の小学生の頃は日野さんの演奏を聴きに行くと必ずこの曲を演奏していたのを覚えています。一度聴いたら忘れないインパクトがある曲だなと思います。この曲のソロでも日野さんの圧倒的な馬力とテクニックを聴く事ができ必聴テイクになっています。


05. Up Jumped Spring
トランペットとドラムだけの曲。日野さんとジャック・ディジョネットのフリー・インプロヴィゼーションから始まります。ジャックはアフリカのトーキング・ドラムの様なフレーズから始まり、日野さんもまるで民族楽器の様な音を出しています。二人ともダイナミックスのレンジが広いので聴いていてびっくりさせられると思います。その後フレディー・ハバードの「Up Jumped Spring」のメロディーが聴こえて来ますがここでは激しい高速スウィングのバージョン。フレディーのオリジナルは3拍子の少し可愛らしいスウィングの曲です。この演奏は9分を超えていますが日野さんは本当にずっと吹き続けて音楽をリードしていきます。ジャックも美しいドラムの音色と、独特なプレイで音楽に変化をつけさせデュオなのに人々を飽きさせません。


06. Candy
リー・モーガンの演奏でも有名なスタンダード曲。ここではゆったりとしたブルースっぽいフィーリングで演奏されています。


07. Autumn Leaves
言わずと知れたシャンソンの名曲「枯葉」。ある意味各演奏者の個性を一番出しているトラックかもしれません。日野さんの全てを貫く様な音色はもちろん、ローランド・ハナの独特なパーカッシブなピアノ・プレイ、その合間を縫う様に存在感を出すロン・カーター、そして全体を大きなビートで包みゆったり感を与えつつ「ここぞ」というタイミングで起爆剤に着火してゆくジャック・ディジョネット。この4人のライブにふさわしいエンディングですね。


さて2021年のDISC REVIEWもお楽しみいただけましたか?おかげさまでDISC REVIEのコーナーも21回目をこうして迎える事ができました。今後ともみなさんと共に音楽を楽しみ成長して参りますので、応援のほどよろしくお願いいたします。
それではまた次回。


文:曽根麻央 Mao Soné



【曽根麻央LIVE INFO】

12/22 (Wed)
Open 18:30 | Start 19:00
MAO SONÉ Trio @ Velera 赤坂
<出演>
​曽根麻央 - trumpet & piano
伊藤勇司 - bass
木村紘 - drums
<ご予約・お問い合わせ>
TEL: 03-6277-8772


12/29 (Wed)
Open 19:30 | Start 20:30
MAO SONÉ Trio @ Nardis 柏
<出演>
​曽根麻央 - trumpet & piano
伊藤勇司 - bass
木村紘 - drums
<ご予約・お問い合わせ>
TEL: 04-7164-9469


12/31 (Fri)
Open 14:00 | Start 15:00
MAO SONÉ Solo @ Cabin 本厚木
<出演>
​曽根麻央 - trumpet & piano
<ご予約・お問い合わせ>
TEL: 046-221-0785


1/10 (Mon)
Open 19:30 | Start 20:30
MAO SONÉ Trio @ Nardis 柏
<出演>
​曽根麻央 - trumpet & piano
伊藤勇司 - bass
木村紘 - drums
<ご予約・お問い合わせ>
TEL: 04-7164-9469


1/11 (Tue)
Open 18:30 | Start 19:30
MAO SONÉ TRIO @ Body & Soul 渋谷
<出演>
​曽根麻央 - trumpet & piano
伊藤勇司 - bass
木村紘 - drums
<ご予約・お問い合わせ>
TEL: 03-6455-0088


曽根麻央のその他情報はウェブサイトへ



Recommend Disc

DNA LIVE IN TOKYO200.jpg


Title : 『D・N・A Live In Tokyo』
Artist : 日野皓正
LABEL : ソニー・ミュージックレーベルズ
発売年 : 2002年



アマゾン詳細ページへ


【SONG LIST】

01. It's There
02. Lorl
03. For Toddlers Only
04. Black Jack
05. Up Jumped Spring
06. Candy
07. Autumn Leaves




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「Monthly Disc Review」アーカイブ曽根麻央

2020.04『Motherland / Danilo Perez』2020.05『Color Of Soil / タイガー大越』2020.06『Passages / Tom Harrell 』2020.07『Inventions And Dimensions / Herbie Hancock』2020.08『Birth Of The Cool / Miles Davis』2020.09『Chet Baker Sings / Chet Baker』2020.10『SFJAZZ Collective2 / SFJAZZ Collective』2020.11『Money Jungle: Provocative In Blue / Terri Lyne Carrington』2020.12『Three Suites / Duke Ellington』2021.01『Into The Blue / Nicholas Payton』2021.02『Ben And "Sweets" / Ben Webster & "Sweets" Edison』2021.03『Relaxin' With The Miles Davis Quintet / The Miles Davis Quintet 』2021.04『Something More / Buster Williams』2021.05『Booker Little / Booker Little』2021.06『Charms Of The Night Sky / Dave Douglas』2021.07『Play The Blues / Ray Bryant Trio』2021.08『The Sidewinder / Lee Morgan』2021.09『Esta Plena / Miguel Zenón』2021.10『Hub-Tones / Freddie Hubbard』2021.11『Concert By The Sea / Erroll Garner』




Reviewer information

maosona_A.png

曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

曽根麻央Official Site

曽根麻央 Monthly Disc Review2021.11_ Erroll Garner_Concert By The Sea:Monthly Disc Review

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Title : 『Concert By The Sea』
Artist : Erroll Garner



【圧倒的なカリスマ性を発揮するライブアルバム】


皆さんこんにちは、トランペットとピアノの曽根麻央です。
世の中には数え切れないほど素晴らしいライブ盤がありますが、1人のピアニストが圧倒的なカリスマ性を発揮し、一枚を通して聴き手を魅力し続ける音源は希少です。

エロール・ガーナーが1958年にライブ録音した音源『コンサート・バイ・ザ・シー』はそんな貴重な一枚で、決して優れた音質で記録されたわけではないが、彼のエンターテイナー的なキャラクターが目に浮かぶリズミカルでユーモラス、そしてリリカルなピアノを40分もの間、集中して楽しむことができます。

このライブ会場、現在のSunset Center(当時はSunset School)には私も訪れたことがありますが、カリフォルニア・モントレージャズフェスティバルの会場から車で30分ほど、少し南下すれば国立自然公園という美しい場所でした。


さてメンバーを見ましょう



Erroll Garner - piano
Eddie Calhoun - bass
Denzil Best - drums




正直、リーダーのガーナー以外のメンバーは、私も勉強不足で聞いたことがないのですが、調べてみると、ベーシストのエディ・カーホウンはアーマッド・ジャマルやビリー・ホリデイと演奏していて、その後キャリアの大半をガーナーのベーシストとしてツアーなど世界中旅をしていたようです。

ドラマーのダンジル・ベストも50-60年代のビバップシーンを支えたドラマーで、サイドマンとして多くの共演歴がありました。またこのDISC REVIEWでも取り上げたマイルス・デイビスの『バース・オブ・クール』の「Move」という曲の作曲者の1人として名前を連ねています。

ガーナーのピアノスタイルで最も特徴的なのは、左手を四分音符で常に和音とリズムを刻んでいることでしょう。これにより独特の躍動感とグルーヴを音楽に与えて、踊りたくなるような楽しさを聴き手に与えます。また四分音符の羅列の間に挟むシンコペーションのアクセントがまた効果的です。

また右手はメロディーのフレーズとフレーズの間に、まるでビッグバンドのトランペット隊のような激しい和音で合いの手を入れます。また右手のオクターブ奏法も得意で、早い曲でも八分音符をオクターブで弾き、ピアノを響かせ独特のリズム感を与えてくれます。実際には右手の親指と小指でオクターブを奏で、余った指で和音も抑えているので、これを高速の曲でも行うので、こちらもビッグバンドを聴いているかのような聞き応えがあります。

アルバム全体を通してガーナー以外のソロパートなどは無く、メンバーはサイドメンとしての役割に徹底して留まっています。この様な状態で40分間聴き手を魅了するのは圧倒的なカリスマ性がなければ成り立ちません。





01. I'll Remember April

力強いソロピアノのイントロから始まり、自然にテーマに入っていきます。これもガーナーの特徴で、ライブでは恐らく即興演奏のイントロから自然にテーマ部分へと導入されていきます。

このテーマもオクターブで弾かれていて、ものすごいエネルギッシュな演奏となっています。この間も左手は四分音符を奏でているのでリズムが大きくはっきりと前へ進んでいく感じを出しています。アドリブの部分に入りようやく右手が単音の八分音符を奏でますが、これも揺るぎない正確で力強いものとなっています。


02. Teach Me Tonight
ソリッドで揺るぎない八分音符を右手で奏でるガーナーの早いスウィング曲と対照的に、バラードではスクエアな感じには全くならず、割り切れないぐらい大きくリズムをとり、まるで歌っているかのようにリリカルな演奏を聴かせてくれます。しかしその間も左手は正確に四分音符で拍を刻んでいるので、変に間延びしたり詰まったりする感じでは全くないのが素晴らしいところです。


03. Mambo Carmel
エロールの左手は四分音符でなく、この様なリズムの曲では付点四分音符を多めに使ったリズムを刻み、エロール風のラテンの感覚を表現しています。変則的なリズムを左手で刻んでいても、右手は自由にソリッドに演奏していて、両手の独立がしっかりとなされています。彼が左利きだったのも、このスタイルを確立する上で大きかったのかもしれませんね。


04. Autumn Leaves
ルバートの曲。先程の「Teach Me Tonight」では左手の正確なリズムに上を自由に歌い上げるスタイルでしたが、ルバートでは両手を自在に操り、見事なラインを形成しながらクラシカルな演奏に仕上げています。インテンポになってからは左手は四分音符に戻り、右手は自由自在というガーナーが特有のスタイルに戻ります。このアルバム随一の名演です。




05. It's All Right With Me
早いスウィングの曲。いわゆるガーナーの演奏スタイルを全面に押し出した演奏になっています。

ヴァイナルではここまでA面。


06. Red Top
ビブラフォン奏者、ライオネル・ハンプトンのユーモラスなブルースの作品。このぐらいのテンポだとガーナーのスタイル(左手の四分音符、右手のビッグバンド的要素)が聴き取りやすいかもしれません。またガーナーの人間味あふれる様子がこのトラックでは伝わってきますので是非聴いていただきたいです。


07. April In Paris
ルバートの演奏の曲。前半の「Autumn Leaves」の様にクラシカルな響きを奏でています。


08. They Can't Take That Away From Me
ガーシュウィンの有名な曲です。まるでビッグバンドのセクションで演奏されてるかのようなテーマが聴こえてきます。そして、倍のテンポのフィーリングで演奏されるソロも圧巻です。


09. How Could You Do The Thing Like ThatTo Me?
こちらのテーマも合いの手で入れてくるアクセントと和音がいかにもガーナーのスタイルですね。先程「Red Top」でもそうでしたが、ガーナーのスタイルはこれぐらいのテンポが一番聴いて分かりやすいかもしれませんね。


10.Where Or When
ガーナーの早いスウィングのスタイルと「Mambo Carmel」のスタイルが合わさったようなアレンジになっています。左手は付点四分音符で進んでいるときも右手がその自由を制限されない独立力は圧倒的です。


11.Eroll's Theme
ガーナーのエンディング・テーマの様なもの。

それにしてもガーナーのレパートリーの多さにはいつも驚かされます。演奏するキーも通常楽器では演奏しないものが多く、キーの選択もこの独特な演奏スタイルに影響しているのかとも思います。是非聴いてみてください。


それではまた次回。


文:曽根麻央 Mao Soné






【曽根麻央LIVE INFO】

11/18 (Thu)
Open 18:30 | Start 19:00
MAO SONÉ Trio @ Velera 赤坂
<出演>
​曽根麻央 - trumpet & piano
伊藤勇司 - bass
木村紘 - drums
<ご予約・お問い合わせ>
TEL: 03-6277-8772


11/27 (Sat)
Start 19:30
MAO SONÉ SOLO x 水墨画 (笠原 正嗣) @ Attic 銀座
<出演>
​曽根麻央 - trumpet & piano
笠原 正嗣 - 水墨画​​


11/28 (Sun)
Open 18:30 | Start 19:30
MAO SONÉ & DAVID BRYANT @ Body & Soul 渋谷
<出演>
​曽根麻央 - trumpet
David Bryant - piano
<ご予約・お問い合わせ>
TEL: 03-6455-0088


11/30 (Tue)
Open 19:30 | Start 20:30
MAO SONÉ Trio @ Nardis 柏
<出演>
​曽根麻央 - trumpet & piano
伊藤勇司 - bass
木村紘 - drums
<ご予約・お問い合わせ>
TEL: 04-7164-9469


12/10 (Fri)
Open 18:00 | Start 19:00
MAO SONÉ & 丈青 @ Cabin 本厚木
<出演>
​曽根麻央 - trumpet
丈青(from SOIL&"PIMP"SESSIONS) - piano
<ご予約・お問い合わせ>
TEL: 046-221-0785


曽根麻央のその他情報はウェブサイトへ



Recommend Disc

concertbythesea200.jpg


Title : 『Concert By The Sea』
Artist : Erroll Garner
LABEL : Columbia
発売年 : 1955年



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【SONG LIST】

01. I'll Remember April
02. Teach Me Tonight
03. Mambo Carmel-by-the-sea
04. Autumn Leaves
05. It's All Right With Me
06. Red Top
07. April In Paris
08. They Can't Take That Away From Me
09.How Could You Do A Thing Like That To Me
10. Where Or When
11. Erroll's Theme




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「Monthly Disc Review」アーカイブ曽根麻央

2020.04『Motherland / Danilo Perez』2020.05『Color Of Soil / タイガー大越』2020.06『Passages / Tom Harrell 』2020.07『Inventions And Dimensions / Herbie Hancock』2020.08『Birth Of The Cool / Miles Davis』2020.09『Chet Baker Sings / Chet Baker』2020.10『SFJAZZ Collective2 / SFJAZZ Collective』2020.11『Money Jungle: Provocative In Blue / Terri Lyne Carrington』2020.12『Three Suites / Duke Ellington』2021.01『Into The Blue / Nicholas Payton』2021.02『Ben And "Sweets" / Ben Webster & "Sweets" Edison』2021.03『Relaxin' With The Miles Davis Quintet / The Miles Davis Quintet 』2021.04『Something More / Buster Williams』2021.05『Booker Little / Booker Little』2021.06『Charms Of The Night Sky / Dave Douglas』2021.07『Play The Blues / Ray Bryant Trio』2021.08『The Sidewinder / Lee Morgan』2021.09『Esta Plena / Miguel Zenón』2021.10『Hub-Tones / Freddie Hubbard』




Reviewer information

Mao Sone600.jpg

曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

曽根麻央Official Site

曽根麻央 Monthly Disc Review2021.10_ Freddie Hubbard_Hub-Tones:Monthly Disc Review

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みなさんこんにちは。トランペッットとピアノの曽根麻央です。
今日はトランペットの名手フレディー・ハバードの名演奏が集約されたアルバム『Hub-Tones』をご紹介します。アルバムのタイトルでもあるハブ(ハバードのハブ)の音という言葉の通り、フレディー・ハバードの美しい音色、キレの良いタッチ、そしてユニークなアイディアが収録されていますので、ジャズファンだけでなく金管楽器全般に関わっている方々に聴いてほしい一枚でもあります。


hubtones500.jpg


Title : 『Hub-Tones』
Artist : Freddie Hubbard



【ジャズ・トランペットを勉強するなら絶対に聴いておくべきアルバム】


僕とこのアルバムの出会いは小学5年生の頃。当時トランペットを習っていた原朋直さんに、ジャズ・トランペットを勉強するなら絶対に聴いておくべきアルバムとして教えてもらったのがきっかけでした。大学に入ってからはこのアルバムの中から「You Are My Everything」と「Hub-Tones」のフレディーのソロをしっかりと完コピしました。美しく構成されているソロなので、今でもよく覚えています。

さてメンバーを見ましょう



Freddie Hubbard - trumpet
James Spaulding - alto saxophone, flute
Herbie Hancock - piano
Reggie Workman - bass
Clifford Jarvis - drums




長きに渡ってフレディーと2管編成でアルトを担当したジェームス・スポルディングや、フレディーの1st albumからのドラマー、クリフォード・ジャーヴィスが参加しています。また、まだマイルス・バンドに加入前のハービー・ハンコックの演奏は、伴奏では正確なリズムとハーモニーを繰り出し、ソロでは若々しくも美しいタッチでユニークなソロを聴くことができます。名手レジー・ワークマンの鉄壁のサポートとグルーヴ力もこのアルバムの大事な肝になっています。


01. You're My Everything




フレディーの迫力ある音が開始早々に響き渡り圧倒されます。そしてすぐにその音は「You Are My Everything」のメロディー だと気づきます。このバージョンのコード進行はリハモナイズ(メロディーは変えずにコードだけを変えて、雰囲気を原曲と変えるアレンジの手法)されていますが、今のジャズではこのコード進行の方が耳馴染みがあるかもしれません。ジャムセッションなどでもこの曲を演奏するときはこのアルバムのコード進行を使います。

フレディーのメロディーの吹き方は歌心がありとても心地よいです。ハービーは伴奏の名人ですから、こちらのテーマも美しいハーモニーとキレのあるリズムでサポートしています。たまに出てくるクリフォード・ジャーヴィスのアクセントも他のメンバーと会話しているようで、ベストのスポットにはまっていてとてもグルーヴィーです。フレディーのソロに入ってからはレジー・ワークマンが小刻みなベースラインやポルタメント(左手をスライドさせて音程と音程の間を滑らかに演奏すること)を駆使して音楽を根底から支えています。

フレディーの特徴は濁らないアーティキュレーション、完璧なピッチ、明確なアイディア、キレの良いリズム、低音から高音まで駆使する超絶技巧、そして何より唯一無二の迫力の音色。この曲ではフレディーのそんな魅力を余すことなく聴くことができます。


02. Prophet Jennings
フレディーのトランペットはカップ・ミュート、スポルディングはフルートという独特な2管編成の曲。独特といってもよくあるアレンジの手法ではあるのですが、一味変わった寂しげなサウンドになります。フレディーもテーマ中は優しく、マイク近くで吹くことによって木管楽器のようなまろやかな中音色を聴かせてくれています。

ソロに入った瞬間、ミュート・プレイではありますが、いつものフレディーのエネルギッシュなギアを全開に入れ替えます。このシフトチェンジがたまりません。マイルスミュートプレイとはまた違ったトランペットの魅力があります。

ちなみにフレディーが全編ハーマン・ミュート(マイルスがよく使う)でアルバム全編を構成している、『Topsy - Standard Book』も聴きごたえがありますので、興味のある方はぜひ聴いてみてください。




03. Hub-Tones




フレディーの書いた高速ブルースの曲。テーマの切れ味の良さは絶品ですが、完璧なソロを披露しています。チャーリー・パーカーのフレーズも垣間見ることができます。またソニー・ロリンズのように、何回も同じフレーズを繰り返し高速で演奏することで凄まじいエネルギーを作り出しているような感じもします。フレディー・ハバードのトランペットはテクニック的には木管楽器のフレーズを金管楽器に置き換えている様子もありますので、この曲はまさにその感じが伝わるかと思います。
続くハービーのソロも名演奏と言えるものですのでぜひ注目してください。


04. Lament For Booker
フレディーの書いた美しいバラード曲。作曲家フレディー・ハバードとしての代表曲といって良いでしょう。フレディーと同い年でありながら、このアルバムの前年に亡くなったトランペッター、ブッカー・リトルに捧げた作品です。ブッカー・リトルの作品については以前の記事で書いたので是非読んでみてください。


Monthly Disc Review2021.05_ Booker Little_Booker Little



フルートとトランペットの組み合わせが美しい曲です。フレディーも前の3曲とは打って変わって柔らかいトランペットの音色で歌っています。フレディーのバラードプレイは、徹底して芯があるのに柔らかい音色で演奏されることが多いです。アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズとの「Skylark」もその例です。Bセクションは独特なディミニッシュのハーモニーが物悲しいサウンドを作り上げます。





05. For Spee's Sake
ブルージーなテイストのイントロで始まり、軽快なスウィングへとシフトしていきます。Gbのブルースの曲。Gbは誰にとっても演奏しにくい調なのですが、それを一切感じさせない鉄壁のプレイをフレディーは聞かせてくれます。調性は実は曲の雰囲気を決めるとても大事な要因であるのです。フレディーのGbの 名演は実はもう一曲あり、アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズとレコーディングした「Pensativa」でも素晴らしい演奏をしています。




それではまた次回。


文:曽根麻央 Mao Soné






【曽根麻央LIVE INFO】

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Recommend Disc

hubtones200.jpg


Title : 『Hub-Tones』
Artist : Freddie Hubbard
LABEL : Blue Note
発売年 : 1962年



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【SONG LIST】

01. You're My Everything
02. Prophet Jennings
03. Hub-Tones
04. Lament For Booker
05. For Spee's Sake




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「Monthly Disc Review」アーカイブ曽根麻央

2020.04『Motherland / Danilo Perez』2020.05『Color Of Soil / タイガー大越』2020.06『Passages / Tom Harrell 』2020.07『Inventions And Dimensions / Herbie Hancock』2020.08『Birth Of The Cool / Miles Davis』2020.09『Chet Baker Sings / Chet Baker』2020.10『SFJAZZ Collective2 / SFJAZZ Collective』2020.11『Money Jungle: Provocative In Blue / Terri Lyne Carrington』2020.12『Three Suites / Duke Ellington』2021.01『Into The Blue / Nicholas Payton』2021.02『Ben And "Sweets" / Ben Webster & "Sweets" Edison』2021.03『Relaxin' With The Miles Davis Quintet / The Miles Davis Quintet 』2021.04『Something More / Buster Williams』2021.05『Booker Little / Booker Little』2021.06『Charms Of The Night Sky / Dave Douglas』2021.07『Play The Blues / Ray Bryant Trio』2021.08『The Sidewinder / Lee Morgan』2021.09『Esta Plena / Miguel Zenón』




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Mao Sone600.jpg

曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

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曽根麻央 Monthly Disc Review2021.09_ Miguel Zenón _Esta Plena:Monthly Disc Review

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みなさんこんにちは、曽根麻央です。僕がミュージシャンの視点からアルバムを解説するこのコーナー、今月はプエルトリコ出身のサックスフォン奏者で作曲家のMiguel Zenonのアルバム『Esta Plena』を紹介します。
 
Miguel Zenonの出身地でもあるプエルトリコのリズム「Plena (プレナ)」の独自のリズムを作品全体に取り入れ、このリズムの可能性を極限まで発展させたアルバムになっています。

本編の前に今月の重要なライブをお知らせいたします。お待ちしております!





【MAO SONÉ TRIO with Strings
丸の内コットンクラブ
2021. 9.23.thu
open 5:30pm / start 6:30pm / close 8:00pm
MEMBER 曽根麻央 (tp,p) 伊藤勇司 (b) 木村紘 (ds) SAYAKA (vln) 山田那央 (vla) 香月圭佑 (vc)
▶︎http://www.cottonclubjapan.co.jp/jp/sp/artists/mao-sone/



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Title : 『Esta Plena』
Artist : Miguel Zenón


【プエルトリコのリズム「Plena (プレナ)」の独自のリズムを取り入れた作品】

沢山のプエルトリコをルーツとするアフロ・プエルトリカン・ミュージックが存在するのですが、大きく2つがとても有名です。

プエルトリコ北部で400年前ほど前から発展してきたアフロ・プエルトリカンの音楽、Bomba。数人のパーカッショニストがコンガより大きめの太鼓を手で叩きダンサーが即興で踊ります。またソロ・パーカッショニストは太鼓をダンサーの動きに合わせて、ダンサーと協力して即興で演奏するのが特徴です。





首都San Juanでは未だに深夜のダンスバーや街中でこのような光景を目にすることが出来ます。私も夜中の3時ごろに友人に連れて行ってもらいました。日本ではとても経験することのできない、リズムがコミュニティーを作る文化ですので、訪れた際には絶対に見ていただきたい。ただ治安の良い地域ではないので安全には気をつけて、なるべく現地の人と一緒に行動することをお勧めします。

Bombaだけでsicá、cuembé、holandé、bámbula 、cocobalé、hoyomulaそしてyubáというリズムの種類があり正直区別がつきにくいのです。私もすべて記憶しているわけではないですが、sicáとholandéは代表的なので現地を訪れる前に覚えておいた方が良いリズムです。


プエルトリコの北部の音楽が野生的なダンスやリズムが中心なのに対し、南部の町、Ponce (ポンセ)の音楽、Plena (プレナ)は歌を中心とするためメロディアスな一面を持ったリズムです。3つの大中小のサイズで作られたパンディエロ(タンバリンのような楽器)と歌、そしてプエルトリコのギロなどで演奏されます。今では主にクリスマス・シーズンのパーティーなどで演奏されます。

一番低いパンディエロが4分音符でベースを刻み、それに呼応するかのように、中小のパンディエロが違うパターンを奏でます。小のパンディエロにも一応パターンはあるのですが、即興的な部分が多く入りますので、演奏するには数多くのレコーディングを聴く必要があります。大中のパンディエロは基本的にはこのパターンです。





私がプエルトリコを訪れた12月にはParranda(パランダ)という行事が盛んに行われていました。お祭りというよりも各家庭で模様されるクリスマス・シーズンのホーム・パーティーのようなもので、あらゆる場所で開催されています。まずミュージシャンが車数十台に乗り込みターゲットの家まで並走させます。深夜の真っ暗闇の住宅街に降りて、突然大音量で演奏を開始します。ターゲットとなった家主は食事や酒を提供しないといけません。これは昔のルールで今ではきちんと約束をして行い、家の電気を消しておいて寝静まった感じを演出しているそうですが、ほぼほぼ毎日早朝まで続きます。ここで演奏されるのが主にプレナの音楽です。とは言っても12時過ぎの夜中の住宅街で大音量で演奏するなんて日本では再現性がないですね(笑)。

ここで演奏されるPlenaのメロディーは地元の人なら誰しも歌え、パンディエロを演奏でき、クラーベを把握して、踊れる音楽です。その歌詞はブルースのようにどんな社会や環境でも希望を持てる歌が多いそうです。

プレナのメロディーの多くはアフリカのチャントやキューバの歌に由来するところも多くありますが、Jíbaro(ヒバロ)と総称される山間部に住んでいたユダヤ系プエルトリコ人の独特な(中東の音楽のような)旋律の影響もたまに見受けられます。

こちらのBAILALAは最も有名なplenaの曲の一つです。





そんなプエルトリコの民族音楽Plenaを取り上げたMiguel Zenonのアルバム『Esta Plena』にはMiguelのレギュラークインテットの他に3人のパンディエロ奏者が参加しています。


さてメンバーを見ましょう



Miguel Zenón - Alto Saxophone, Background Vocals
Luis Perdomo - Piano
Hans Glawischnig - Acoustic Bass
Henry Cole - Drums
Hector "Tito" Matos - Lead Vocals, Percussion (Requinto)
Obanilu Allende - Background Vocals, Percussion (Segundo)
Juan Gutierrez - Background Vocals, Percussion (Seguidor)







01. Villa Palmeras
高速で展開が繰り広げられる一曲。早速3人のパンディエロとドラムでPlenaのリズムから始まり、そのリズムの上で成り立つように作曲されたピアノとベースがベースラインと複雑なハーモニーを奏でます。

Miguel Zenonの譜面の特徴的なところは、ベースにしろピアノにしろ、ほとんどパート譜で全ての音が書かれているところです。私が一緒に演奏する機会をもらった時、彼の新曲の譜面が送られてきて、それはFinaleという譜面作成ソフトで作られた全ての指示が書かれた事細かな譜面と、Finaleで作成されたMidi音源デモ(譜面に書かれたことをそのままプレイバックしてくれる機能がついている)がドラムグルーヴ、そしてフィルイン(即興的な部分)まで打ち込まれて送られて来たことです。彼の繊細で几帳面、完璧主義者の精神性が現れています。譜面に書かれたことは完璧にこなし、その中で自由を見つけるのがMiguelの音楽だと思います。


02. Esta Plena
タイトルソング。Plenaのリズムで歌詞が付いています。まるでトラディショナルの曲を聴いているかのような雰囲気で始まります。すると突然ピアノが意表をつくように9拍子のリズムを奏で始め曲が発展していきます。


03. Oyelo
先の2曲より少し落ち着いた雰囲気の曲。こちらもゆっくりなテンポのPlenaが元になっています。ボーカルのフィーチャー曲。途中で聞けるピアノとサックスのユニゾンも気持ちが良いです。


04. Residencial Llorens Torres
再び高速で展開される一曲。やはりピアノとサックスのユニゾンが素晴らしい。こちらもplenaのリズムが使われています。Miguelのソロが炸裂している一曲でもあります。


05. Pandero Y Pagode
プエルトリコのPlenaと同じくパンディエロを使うPagode(パゴジェ)というブラジリアン・サンバのリズムの一種を見事に融合させたグルーヴで成り立っています。ボーカルをフィーチャーしていて、曲自体もとても美しく、アルバムを通して最もメロディアスな作品です。

ちなみに、プエルトリカン・パンディエロには鈴はついていませんが、ブラジリアン・パンディエロはタンバリンのように周りに鈴がついているという楽器的な違いもあります。


06. Calle Calma
ベースソロから始まり、曲のVampを提示していく。ベースとパーカッションは一定のリズムをキープするが、メロディーはその上をルバートで進行していきます。ベースラインは何種類かあり、ベース譜にはそれぞれ番号が振ってあり、メロディーがその場所へ到達するとベースも次のラインへ移っていくという独特のシステムを使っていてユニークな作曲テクニックです。


07. Villa Coope
ピアノとサックスのルバートから始ますが、3小節のPlenaのパターンで構成されています。通常Plenaは2小節単位ですがこのように変化させることで、古典的な表現に変化を加えていくことができます。


08. Que Sera De Puerto Rico?
再びトラディショナルな雰囲気のメインテーマがボーカルとパーカッションによって奏でられます。それに反抗するようにベースとピアノがモダンな和音やベースラインを弾いています。Miguelのバンドを徹底的にサポートするHenry Coleのドラムソロもあります。


09. Progreso
アルバム唯一のバラード曲。長いピアノソロの後に続き、ベースとサックスがメロディーを奏でるコンテンポラリー・ラージ・アンサンブルのような雰囲気が出ている曲。


10. Despedida
まるでパランダに迷い込んだような「蛍の光」が聞こえてくる。その後こちらもプエルトリコの民謡のようなオリジナルに突入する。これはスペイン語を話す友人から昔聞いただけなので不確かなのですが、この歌詞では同じプエルトリコ出身の有名なサックス奏者David Sanchezをジョークで揶揄う一節がでてくるらしいです。MiguelとDavidは二人ともプエルトリコを代表するサックスプレイヤーで仲も良いので、そういったラテン・ジャズ・ファンへのユーモアでしょう。


それではまた次回。


文:曽根麻央 Mao Soné






【曽根麻央LIVE INFO】

9/15 (水) @ 柏 Nardis
 open 19:00 | start 20:30
 MAO SONÉ Trio w/ 伊藤勇司(b) 木村紘(ds)

9/17 曽根麻央&高橋佳輝
@ 関内アップル

9/19 ユッコミラー バンド
@ 浦部ジャズフェスティバル

9/23 (木・祝) @ 丸の内 Cotton Club
 [1st.show] open 16:00 | start 17:00 
 [2nd.show] open 18:45 | start 19:45
 MAO SONÉ Trio with Strings
 w/ 伊藤勇司(b) 木村紘(ds) SAYAKA (vln) 山田那央 (vla) 香月圭佑 (vc)

9/28 A Tribute To Someone
@ 六本木アルフィー

その他情報はウェブサイトへ



Recommend Disc

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Title : 『Esta Plena』
Artist : Miguel Zenón
LABEL : Marsalis Music
発売年 : 2009年



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【SONG LIST】

01. Villa Palmeras
02. Esta Plena
03. Oyelo
04. Residencial Llorens Torres
05. Pandero y Pagode
06. Calle Calma
07. Villa Coope
08. Qué Será De Puerto Rico?
09. Progreso
10. Despedida




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「Monthly Disc Review」アーカイブ曽根麻央

2020.04『Motherland / Danilo Perez』2020.05『Color Of Soil / タイガー大越』2020.06『Passages / Tom Harrell 』2020.07『Inventions And Dimensions / Herbie Hancock』2020.08『Birth Of The Cool / Miles Davis』2020.09『Chet Baker Sings / Chet Baker』2020.10『SFJAZZ Collective2 / SFJAZZ Collective』2020.11『Money Jungle: Provocative In Blue / Terri Lyne Carrington』2020.12『Three Suites / Duke Ellington』2021.01『Into The Blue / Nicholas Payton』2021.02『Ben And "Sweets" / Ben Webster & "Sweets" Edison』2021.03『Relaxin' With The Miles Davis Quintet / The Miles Davis Quintet 』2021.04『Something More / Buster Williams』2021.05『Booker Little / Booker Little』2021.06『Charms Of The Night Sky / Dave Douglas』2021.07『Play The Blues / Ray Bryant Trio』2021.08『The Sidewinder / Lee Morgan』




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Mao Sone600.jpg

曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

曽根麻央Official Site

曽根麻央 Monthly Disc Review2021.08_ Lee Morgan _The Sidewinder:Monthly Disc Review

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 みなさんこんにちは、トランペッター&ピアニストの曽根麻央です。いつもご愛読ありがとうございます。ジャズの名盤、そして私・曽根麻央がお勧めするアルバムをミュージシャン視点で解説するこのディスク・レビューのコーナーもおかげさまで17回目となりました。

 現在のジャズは多様化し複雑になっていて、それはそれでいて美しいのですが、シンプルにカッコいいものをアーティストやリスナーのプライドが邪魔をして評価できない、というもったいない場面に遭遇することは多々あります。「カッコいい」となれる動物的な直感は、作り手、聴き手双方が磨いていくべきセンスです。ミーハーと思われてしまうかも、などと他者の目を気にするあまりそのセンスを鈍らせたり、カッコいい作品から遠ざかったりするのは人生の大きな機会損失といえます。

 今日はそんな今だからこそ、ジャズファンならば誰もが目にしたことがあるジャケットで、尚且つ相当な回数を聴いたことがあり、過去にも散々雑誌や記事に書かれてきたこのアルバムを改めてここで紹介しようと思います。このような内容は、ジャズファン歴の浅い読者にとっては非常に新鮮であるはずですし、従来のジャズファンの読者にも改めて聴き直す機会になると思います。何より新たなジャズファンになり得るであろう方には是非この最高にカッコいいアルバム、リー・モーガンの『The Sidewinder』を聴いていただきたいのです。


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Title : 『The Sidewinder』
Artist : Lee Morgan



【ジャズ史を代表する最もカッコいい一枚】

 『The Sidewinder』はトランペット奏者、リー・モーガンが1964年にブルーノートからリリースしたアルバムで、大ヒットしました。タイトルトラックの「The Sidewinder」という曲は今でもテレビのBGMなどで耳にしたことのある方も多いでしょう。





 リー・モーガンは18歳の時に先輩トランペッターでもあるディジー・ガレスピーのビッグバンドに参加しプロデビュー。同じ年にブルーノートより初リーダーアルバムもリリースしています。自身のアルバムを作りつつ、アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズというジャズ史上最も有名なバンドに参加し、さらに最も有名になったトラック「Moanin'」でフィーチャーされています。そんなキャリアを若くして積み上げている最中、ヘロイン中毒となり一時期ニューヨークを退きます。 その後63年のニューヨークのシーンへ復帰するタイミングでレコーディングされたのがこの『The Siderwinder』です。


 リーは過去の作品で、どこか荒削りだけどアツく心に響く歯切れの良い演奏を、ジャズのリズム「スウィング」の上でファンキーに魅せるスタイルで人気を博しましたが、この復帰作(彼のトランペットプレイはもちろんより一層磨きがかかったものになっているのだが)の 一曲目「The Sidewinder」ではロックンロールやR&Bのリズムを取り入れ、新たなブームをジャズシーンに起こしました。このころのビルボードのチャートを見ると、レイ・チャールズやエルヴィス・プレスリーといったR&Bやロックンロールの楽曲やアーティストがチャートインしているわけですから、ジャズがそれらのエッセンスとの融合を果たしたのは時代の流れと言えるでしょう。ジャズは多様性の音楽です。様々な人種や文化の音楽を取り込み発展させることで、言葉や文化の壁を超える独自のアイデンティティーを確立しました。このリー・モーガンのアルバムも歴史の大きな流れで言うと、その大事な役割を果たしたと言えるでしょう。

さてメンバーを見ましょう



Lee Morgan (tp)
Joe Henderson (sax)
Barry Harris (p)
Bob Cranshaw (b)
Billy Higgins (d)




 いわゆるジャズの名手揃いですね。個人的な好みはビリー・ヒギンズです。彼の入っているブルーノート時代のアルバムはほとんどハズレがないといっても良いでしょう。


01. The Sidewinder
 タイトルトラック。R&B風のリズムとベースライン、そして「タッッタ、タッッタ」というシンプルなピアノの伴奏が聞こえてきます。このピアノの伴奏パターンをモチーフにした有名なメロディーがトランペットとサックスによって演奏されます。
「タッッタ、タッッタ」に応答するファンキーなメロディー。ちなみにこのメロディーをトランペットで演奏するのはそもそもとても難しいのですが、このように歌心のある、聴き手の耳をかっさらうような吹き方はまさに名手です。曲の構成は24小節に拡大されたブルース。通常ブルースは12小節ですがこの曲では倍になっています。

ビリー・ヒギンズのシンバルはまるでスウィングを演奏しているかのようなライドパターンを演奏、でもそれでいて左手で演奏されているスネアは普段よりスクエアーで強めにアクセントが入っていてそれがR&B感を強めます。
 バリー・ハリスは自身のソロ以外では、終始シンプルなモチーフをピアノで演奏し続け、ボブ・クランシューもシンプルだが躍動感のあるベースラインをキープし続けています。


02. Totem Pole
 軽快なラテン調の曲。AABA構成の曲で真ん中のBセクションはスウィングで演奏されています。

 こちらのリーのソロも絶好調で、ものすごいエネルルギーと圧を感じることができます。独特のハーフバルブ(トランペットのピストンを途中まで下ろして、ニュアンスをあえてあやふやにする奏法)なども駆使してまるで喋っているかのような、メッセージが聞こえてくるようなソロになっています。特にピアノソロが終わってリーがソロに戻ってくるタイミングなど必聴です!





03. Gary's Notebook
 軽快なスウィングワルツの曲。緊張感のあるイントロに続く、こちらも「The Sidewinder」と同じく24小節に拡大されたブルースフォームの曲。ドラマー、ビリー・ヒギンズのお得意とするテンポ感ではないでしょうか? 彼の美しいライドシンバルにバンド全体が牽引されて素晴らしい演奏を全員が披露しています。


04. Boy, What A Night
 さらに軽快なスウィングワルツの曲。こちらも「The Sidewinder」と前曲「Gary's Notebook」と同じく24小節に拡大されたブルースフォームの曲。メロディーの最初の3フレーズはリズムが複合的になっていて拍子がとらえにくい独特のメロディーになっています。

ちなみに、このように3拍子の中に、さらに大きな枠組みの3拍子を感じさせ、複合的なリズムを作り出す作曲テクニックを「ヘミオラ」と言ったりします。メロディーはトランペットの音域ほぼ全て使うように書かれていて、トランペットの良さが出る楽曲ではないかなと思います。こちらのトランペットソロもいわゆるリー・モーガン節が満載で、彼の特徴ある演奏の良い部分を収録してあると思います。


05. Hocus-Pocus
ミディアム・スウィングのAABA構成でポスト・ビバップ調の曲。こちらもヒギンズのスウィング演奏がさすがとしか言いようがないほど、淀みがなく、全員を完璧にリードしています。
 そして、これぐらいのテンポ感でリー・モーガンは本領を発揮すると思っています。決して長いソロではないのですが、フレーズもとても説得力があり、テクニックも完璧です。これだけエネルギッシュにこの演奏を完走できる人も他にいないでしょう。このアルバムの隠れた名演と言えます。

皆さんも是非、聴いてみてください。

それではまた次回。


文:曽根麻央 Mao Soné






【曽根麻央LIVE INFO】

8/24 (火) @ 柏 Nardis
 open 19:00 | start 20:30
 MAO SONÉ Trio w/ 伊藤勇司(b) 木村紘(ds)

8/29 (日) @ 下北沢No Room For Squares
 open 17:30 | start 18:00
 曽根麻央 (Fender Rhodes & tp), 高橋佳輝 (b), 木村紘 (ds)

9/1 (水) @ 表参道 Body And Soul
 Open 18:30 | Start 19:30
 曽根麻央 (tp) & David Bryant (p)

9/12 (日) @ 厚木Cabin
 Open 15:00 | Start 16:00
 曽根麻央ソロ - piano & trumpet

9/15 (水) @ 柏 Nardis
 open 19:00 | start 20:30
 MAO SONÉ Trio w/ 伊藤勇司(b) 木村紘(ds)

9/23 (木・祝) @ 丸の内 Cotton Club
 [1st.show] open 16:00 | start 17:00 
 [2nd.show] open 18:45 | start 19:45
 MAO SONÉ Trio with Strings
 w/ 伊藤勇司(b) 木村紘(ds) SAYAKA (vln) 山田那央 (vla) 香月圭佑 (vc)

その他情報はウェブサイトへ



Recommend Disc

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Title : 『The Sidewinder』
Artist : Lee Morgan
LABEL : Blue Note
発売年 : 1964年



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【SONG LIST】

01. The Sidewinder
02. Totem Pole
03. Gary's Notebook
04. Boy, What A Night
05. Hocus-Pocus




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「Monthly Disc Review」アーカイブ曽根麻央

2020.04『Motherland / Danilo Perez』2020.05『Color Of Soil / タイガー大越』2020.06『Passages / Tom Harrell 』2020.07『Inventions And Dimensions / Herbie Hancock』2020.08『Birth Of The Cool / Miles Davis』2020.09『Chet Baker Sings / Chet Baker』2020.10『SFJAZZ Collective2 / SFJAZZ Collective』2020.11『Money Jungle: Provocative In Blue / Terri Lyne Carrington』2020.12『Three Suites / Duke Ellington』2021.01『Into The Blue / Nicholas Payton』2021.02『Ben And "Sweets" / Ben Webster & "Sweets" Edison』2021.03『Relaxin' With The Miles Davis Quintet / The Miles Davis Quintet 』2021.04『Something More / Buster Williams』2021.05『Booker Little / Booker Little』2021.06『Charms Of The Night Sky / Dave Douglas』2021.07『Play The Blues / Ray Bryant Trio』




Reviewer information

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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

曽根麻央Official Site

曽根麻央 Monthly Disc Review2021.07_ Ray Bryant Trio_Play The Blues:Monthly Disc Review

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 みなさんこんにちは、曽根麻央です。今日は、小学生の僕が一番影響を受け、今でも尊敬しているピアニスト、レイ・ブライアントの作品『プレイ・ザ・ブルース』を紹介したいと思います。ブルースピアノといえば、なんだか土臭くガチャガチャしているジャズ初期の音楽な印象もありますが、レイ・ブライアントのピアノはこのジャンルのイメージを完全に覆し、上品で洗練されたものへと昇華していますので是非一緒に聴いていきましょう。

本題の前にお知らせです。昨日情報公開されました!


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9/23(木・祝) @ 丸の内コットンクラブ
曽根麻央トリオ with ストリングス

詳細▶︎http://www.cottonclubjapan.co.jp/jp/sp/artists/mao-sone/

僕とメンバーの3人で長年かけて育ててきたこのサウンドがついに憧れの舞台、COTTON CLUBのステージへ! ストリングスを迎えた新たなアンサンブルを初披露します! 是非、お誘い合わせの上お立ち寄りください。お待ちしております。
[予約受付開始日] 2021/7/24(土)


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Title : 『Play The Blues』
Artist : Ray Bryant Trio



【洗練されたブルースピアノの真髄を聴く】


レイ・ブライアントを僕が初めて聴いたのは小学3年生の頃。当時、僕の地元の柏にお住まいだった元スウィングジャーナル編集長、児山紀芳先生の主催により、柏のジャズクラブでレイを間近に見る機会があり、初めてその演奏を目にしました。

力強いタッチと安定したグルーヴでピアノが横に揺れるのです。こんな揺れは通常ありえないのですが、レイが弾くとそれが現実に起きました。その演奏に衝撃を受けた僕は次の日からこの『Play The Blues』を聴いてトランスクライブ(耳コピ)を始めました。その甲斐あって、児山先生のお力添えもあり、5年生の時に再び柏にやってきたレイの前座で彼のレパートリーを数曲弾き、アンコールではトランペットで共演させていただきました。その時にレイから言われた言葉は「Keep Swing! Always, Keep Swing!」。さらに2年後にも当時秋葉原にあったTokyo TUCというジャズクラブで、アンコールに参加させていただいたのも貴重な思い出です。

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(柏クレストホテルのディナーショー)


そんな個人的にとても思い入れのあるピアニスト、レイ・ブライアントですが、まずは彼のキャリアをみていきましょう。

1931年にフィラデルフィアで生まれたレイは、14歳で地元・フィラデルフィアのプロ・ミュージシャンとして早くから活動を開始していました。その後、フィラデルフィアのブルー・ノートのハウスピアニストとして、チャーリー・パーカーやマイルス・デイヴィス、ソニー・スティットなどと共演しています。このキャリアは彼が20代後半でニューヨークへ拠点を移した時に、現地のミュージシャンの信頼をいち早く獲得するきっかけとなりました。

このころからビバップやそれ以前のジャズのスタイルでサイドマンを勤めると同時に、エラ・フィッツジェラルドやアレサ・フランクリンなどの一流シンガーのピアニストも務めました。1960年には最初のヒットシングル「リトル・スージー」をリリースしてビルボードチャートのR&B部門で12位を獲得するなど作曲家としてのセンスも発揮します。1972年には準備不足を理由にソロでの出演を突然キャンセルしたオスカー・ピーターソンの代役として、レイがモントルー・ジャズ・フェスティバルに出演、大成功へと導きます。
この様子は有名な「Alone at Montreux」に収録されています。こうしてソロ・ピアニストとしての地位をも確かなものにしました。その後も活動を継続し、2011年に亡くなっています。

次に彼のピアノスタイルを見ていきましょう。


■ピアノの88鍵、全部の音域を使う豊かなサウンド
レイ・ブライアントはソロ、トリオに限らず、低音から高音までをしっかりと使い曲を演奏します。そのため、どっしりとした重厚な和音、ヘヴィーなグルーヴが生み出されます。


■ブギウギ
ブルースピアノの基本テクニックの一つブギウギ。左手で8分音符を曲中ずっと連打しグルーヴを作り出します。そのため通常は荒々しく、土着的な雰囲気をまとうのですが、レイはそこにジャズ・ピアノの洗練された雰囲気を融合させることに成功しています。レイの持つダイナミックな深いタッチと、ジャズのハーモニーがそうさせるのでしょう。
初期のいわゆるブギウギスタイルの曲をこちらに載せておきます。聴き比べてみてください。




■ストライド
左手を低音・中音和音・低音・中音和音のように幅広く移動させることでベースとギターの役割を担う弾き方で、カバーする音域の広さからオーケストラ・ピアノとも呼ばれています。レイもオスカー・ピーターソン同様このスタイルの名手でもあります。


■完成された構成
レイのソロは即興ではなく決められた部分が多く、完璧なソロ・ピアノを日々求められたレイならではのスタイルではないかと思います。

さて肝心なアルバムを見ていきましょう。



Ray Bryant (p)
Ray Drummond (b)
Kenny Washington (ds)
Special Guest: Hugh McCracken (harmonica)




アルバムの特徴としては、レイはソロ・ピアノを弾いているかのようなピアノ・プレイを貫き、ベースとドラムは終始それに寄り添う形で成り立っています。ピアノの録音も美しく、レイのタッチを十二分に浴びることができます。





01. Gotta Travel On
「Alone at Montreux」でも一曲目に演奏されたレイの代表曲。フィニアス・ニューボーンJr.の「ハーレム・ブルース」と同じメロディーですが調が違います。左手のパターンが電車に乗って旅に出るかのように曲のテンポ感とグルーヴを前進させます。ハーモニカとの掛け合いソロを聴くことができます。


02. I'm A Just Lucky So & So
最初のコーラスはレイのソロ・ピアノで始まり、彼のピアノの音色の美しさと地鳴りのような響きを聴くことができます。バンドが入ってきてゆったりとしたスウィングを演奏。このようにベースがウォーキング・ベース(ジャズの典型的なベースパターン)で演奏する時、通常ピアニストはベース音域を弾かないでベーシストに任せるのですが、レイの場合はがっつりベース音域でハーモニーを弾き、ベーシストもピアノとぶつからないようにしていて、このトリオのチームワークが見受けられます。


03. Slow Freight
ミディアム・テンポのブルース。レイの左手は終始ブギウギスタイルをキープしています。ドラム、ベース共にそれに寄り添うように最低限の音数でグルーヴをキープします。トリオにブルース・ハーモニカが入りより、一層ブルースの魅力を感じることができます。


04. C Jam Blues
軽快なスウィングで演奏される、デューク・エリントンのシンプルなブルース曲。ソロ中にデューク・エリントンの「Very Special」のソロのフレーズがオマージュされアレンジに組み込まれています。探してみてください。これも聴いている雰囲気からすると即興演奏はほとんどなくアレンジされた内容だと思います。


05. Stick With It
Even Feel (8ビート)の洗練されたマイナーブルース。レイの優しいタッチの一面を聴くことができる曲です。


06. St. Louis Blues
レイの重要なレパートリーで、「ブルースの父」W. C. ハンディーの書いたアメリカの歴史的名曲です。ルバートで始まるヴァース部分、そしてブルースのパートはストライドとブギウギをミックスしてどっしりスウィングさせます。曲はエンディングに向けて力強いルバートパートに再び入り、高速ブギウギで終わるという大胆なアレンジ。聞き応えある一曲です。


07. C. C. Rider
レイの巨大な左手で奏でられる独特なブギウギスタイルで演奏されるブルース曲。左手をめいいっぱい広げることで、豊かなサウンドのブギウギを披露しています。


08. Please Send Someone To Love
ソロで弾くジャズ・ピアノのお手本のような演奏から始まるこの曲。綺麗なヴォイス・リーディング、重厚なサウンド、ちょうど良いペダルの使い方、名ソロ・ピアニストとしての技量も聴くことができる落ち着いた雰囲気のバラードです。


09. After Hours
有名なブルース・ソング。こちらも ブギウギでグルーヴをキープして、右手は自由自在にリズムの枠にとらわれることなく縦横無尽に駆け回ります。素晴らしい演奏内容になっています。必聴曲です。


10. Things Ain't What They Used To Be
マーサー・エリントンが書いた有名なブルース曲。レイはよくこれをコンサートのアンコールで演奏していました。アルバムの最後にふさわしい曲だと思います。


それではまた次回。

文:曽根麻央 Mao Soné









Recommend Disc

raybrown_playtheblues200.jpg
Title : 『Play The Blues』
Artist : Ray Bryant Trio
LABEL : M & I
NO : MYCJ-30628
発売年 : 2013年



アマゾン詳細ページへ


【SONG LIST】

01. Gotta Travel On
02. I'm A Just Lucky So&So
03. Slow Freight
04. C Jam Blues
05. Stick With It
06. St.Louis Blues
07. C.C. Rider
08. Please Send Me Someone To Love
09. After Hours
10. Things Ain't What They Used To Be



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「Monthly Disc Review」アーカイブ曽根麻央

2020.04『Motherland / Danilo Perez』2020.05『Color Of Soil / タイガー大越』2020.06『Passages / Tom Harrell 』2020.07『Inventions And Dimensions / Herbie Hancock』2020.08『Birth Of The Cool / Miles Davis』2020.09『Chet Baker Sings / Chet Baker』2020.10『SFJAZZ Collective2 / SFJAZZ Collective』2020.11『Money Jungle: Provocative In Blue / Terri Lyne Carrington』2020.12『Three Suites / Duke Ellington』2021.01『Into The Blue / Nicholas Payton』2021.02『Ben And "Sweets" / Ben Webster & "Sweets" Edison』2021.03『Relaxin' With The Miles Davis Quintet / The Miles Davis Quintet 』2021.04『Something More / Buster Williams』2021.05『Booker Little / Booker Little』2021.06『Charms Of The Night Sky / Dave Douglas』




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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

曽根麻央Official Site

曽根麻央 Monthly Disc Review2021.06_ Dave Douglas_Charms Of The Night Sky:Monthly Disc Review

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 みなさんこんにちは、曽根麻央です。
いよいよ僕が主演し、音楽を担当した映画「トランペット」の日本での上映が間近に迫りました。米国アカデミー賞公認、ショート・ショート・フィルムフェスティバルはスクリーンで6/18、オンラインでは6/11-21までご覧いただけます。なんとオーディエンス賞にみなさんも投票出来るということで、是非応援よろしくお願いいたします。





無料オンライン視聴▶︎https://www.shortshortsonline.org/videos/int-6-01-trumpet-cm

簡単なメールアドレス登録で見れます。

※オーディエンス賞投票はログイン後同リンクより左上のフェスのロゴをクリック、トップページへ。
「オーディエンス・アワードに投票しよう」へGo!その後登録フォームをクリック!


6/18(金) 15:40 - 17:30 二子玉川ライズiTSCOM STUDIO & HALL
▶︎https://shortshorts.org/2021/ja/int-6/
※無料チケット予約をお願いします。




Title : 『Charms Of The Night Sky』
Artist : Dave Douglas

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【ジャズの多様性を知ることができる美しい作品】


 ジャズは多様な音楽です。一言でジャズと言っても10人いれば10通りの思い描く「ジャズ」のサウンドがあります。なぜならジャズは異文化や自分にはない個性を受け入れ、さらに昇華させることができるからです。これはジャズという音楽の成り立ちがアフリカの音楽とヨーロッパの音楽が結びついたところから始まりました。

デューク・エリントンも「ジャズは様々な方向に沢山の枝を伸ばした木のようなもので、その枝の先は更に多くの細枝(しもと)に分かれています。それぞれの細枝は違う形の葉っぱや、色の違う花々を実らせます。枝は東西南北と様々な方向に向かい、各々の場所でその土地の影響を受けます。」と、この音楽の多様性を提言しています。

エリントンの言葉の締めくくりは「その木の幹に戻り、大地に根を這わした部分を見るとアフリカの土壌にあることがわかり、それはすべての基本でもあるビートです」となっています。このようにアフリカのビートを基盤とする音楽はすべてジャズの親戚とも言えるので、個々がこれこそジャズという枠に入れることは一生かかってもできないのです。


 今回紹介するアルバムは、いわゆる通常のジャズカルテットの編成でもなければ、サウンドも個性的なものです。ただただ美しい音楽で独創的。Dave Douglasという音楽家の異色作。でも根っこの部分はジャズの歴史を継承しているので、これもまたジャズと言えるでしょう。

 『Charms Of The Night Sky』はトランペット、ヴァイオリン、アコーディオン、ベースの4つの楽器のために作編曲された曲をアルバムとして集めたものです。この編成だけでもこのアルバムがかなり変わったものであることが伺えます。室内楽のような雰囲気があり、どこか現代クラシックの感じもしつつヨーロッパの民俗音楽的な香りもします。

ウェイン・ショーターも「ジャズはジャズらしいサウンドを要求されるべき音楽ではない」と言っていますが、まさにその言葉を彷彿とさせるアルバムの一つです。

 何より注目したいのがDave Douglasの作編曲能力の高さです。これだけ風変わりな編成を見事に活用した内容になっていて、ヴァイオリンとトランペットのやり取りは美しいですし、アコーディオンの低音の響の美しさ、和音の面白さまで使いこなしています。是非注目して聴いていただきたいポイントです。

 そしてトランペットの独特な音色にも注目してください。本来この編成だとトランペットの楽器の特性上、この楽器だけ突出しやすいのですが、見事にバランスを取っています。これはDaveの力量があるからとも言えますし、彼のそもそも持つ独特な音色がこの編成にフィットしているとも言えます。

 メンバーを見てみましょう。


Dave Douglas: trumpet
Mark Feldman: violin
Guy Klucevsek: accordion
Greg Cohen: acoustic bass







01. Charms Of The Night Sky
ベースのオスティナート(連続して繰り返されるパターン)の上に、アコーディオンが和音を弾くことで楽曲のカラーが見えてきます。そして、その上にトランペットとヴァイオリンがユニゾンで奏でる主旋律が入ってきて同じオスティナートの上に明るくなったり暗くなったりとカラーが動き始めます。

トランペットとヴァイオリンのユニゾンの音って不思議な魅力があります。このアルバムを象徴するサウンドでとても美しいアンサンブルだと思います。次のセクションはベースの動きも加わりさらなる色合いが見えてきます。その後オスティナートに戻り聴こえて来る「スーッ」という雰囲気のあるサウンドはおそらくトランペットに息を吹き込んでいるのを思いっきりマイクに近づいて集音しているのかと思います。ヴァイオリンソロからベースソロと続きますが、トランペットとアコーディオンがハーモニーパートを伴奏の役割として担っているのがとっても綺麗ですね。それに続くDave Douglasのトランペットソロも見事です。


02. Bal Masque
アコーディオンとトランペットのデュオ。フランス語で「仮面舞踏会」という意味のワルツ。録音としては右側からアコーディオンの左手の伴奏が、左側から右手の鍵盤の演奏が聞こえて来る録りになっています。Daveの持つ独特の音色と歌い方がこの曲の雰囲気を高めています。


03. Sea Change
こちらはゆったりとした明るめのワルツ。こちらもアコーディオンとのデュオ曲。僕はアコーディオンにそこまで詳しくないので正確に何が行われているのか言及できないのですが、こちらの曲はアコーディオンの特性を最大限活かしたものとい思います。中盤より特に左手の低音の響きを最大限に活かしていて、それに加え右手で作り出すハーモニーもとても豊かです。音色もダブルリード(コーラス効果がかかったようにいくつかの楽器で演奏しているかのような響きになるエフェクト)なども駆使していてサウンドもゴージャス。これがデュオかと驚かされます。必聴曲です。


04. Facing West
6+5の11拍子の活発な曲。こちらもアコーディオンとのデュオ曲。Daveのトランペットが絶好調の曲です。このアコーディオン奏者のGuy Klucevsekという方の素晴らしさと凄さも十二分に伝わることでしょう。ニューヨーク出身の現代音楽や即興演奏を行える数少ないアコーディオン奏者として、最も尊敬されているアコーディオン奏者の一人です。リーダーアルバムも相当な枚数を出しているので今後チェックしていきたいなと思います。


05. Dance In Thy Soul (for Charlie Haden)
ヴァイオリンのソロから導入される特徴的な楽曲。このアルバムで最長の尺となっていますが、構成としてはシンプルな主旋律が永遠に繰り返されながら発展していきます。その後アコーディオンとトランペットで主旋律が入り、徐々にアルコ(弓)で奏でられるベースが聴こえてきます。その上で自由にソロをとるヴァイオリン。クラシックだけでなくミドルイースタンのフレーズからも影響を受けているようなラインが聴き取れます。

しばらくルバートが続きますが、先ほどのトランペットとアコーディオンの主旋律がテンポで演奏され始めると徐々にベースが自由に動き出し、さらにヴァイオリンも重なり、トランペットも徐々に自由をえていきます。しかし曲の雰囲気が壊れることはなく誰かがアクティブな時は他が伴奏にいき、また別の人がアクティブになれば伴奏に行ってアンサンブルのバランスが見事に取れた演奏になっています。ジョー・ロヴァーノの言葉を借りれば「Follow and Lead」です。


06. Little One (Hancock)
ハービー・ハンコックの名曲です。それを3拍子でこのアンサンブルの持ち曲のように編曲されています。途中のDave Douglasのソロも素晴らしいです。


MUG SHORTS
ここからの3曲(7-9)は組曲になっていてアコーディオン奏者のGuy Klucevsek作品です。どれも映画のワンシーンのような特徴ある曲ばかりです。


07. Wild Coffee
インパクトのある現代クラシック、もしくは映画音楽のような曲です。トランペットとアコーディオン、ベースの組み合わせです。


08. The Girl With The Rose Hips
ハーマン・ミュート・トランペットとアコーディンの組み合わせが美しい一曲。


09. Decafinata
カップミュートをトランペットで使っていて、古いヨーロッパ・ジャズのようなコミカルな雰囲気の曲。


10. Poveri Fiori
イタリアのオペラ作曲家、フランシスコ・チレアの楽曲。物悲しくもどこかに熱さあるメロディー。やはりこういった楽曲は安直ですがゴッドファーザー感がありますよね。


11. Odyssey
トランペットとアコーディオンのデュオ。このアルバムではアコーディオンってこんなに多彩な楽器なのかと驚かされます。これもそんな一曲。漂う様な雰囲気の曲でゆっくりと時が流れていきます。


12. Twisted
最初5/8+7/8変拍子かと思えば実は軽快なワルツの曲。ベースとアコーディオンで細かいリズムを刻んで音楽を推し進めます。途中ヨーロッパのダンス文化の雰囲気が漂うワルツに突入し、また冒頭の激しい変拍子の様なテーマに戻り曲が終わります。


13. Codetta
とても美しいトランペットソロから導入されます。美しくどこか怪しいメロディーが心に残ります。


それではまた次回。

文:曽根麻央 Mao Soné







6月27日(日)MAO SONÉ - Brightness of the Lives supported by ブルーノート東京

高崎芸術劇場スタジオシアター

出演・曽根麻央(トランペット、ピアノ、キーボード)井上銘(ギター)山本連(ベース)木村紘(ドラムス)

主催・ 高崎芸術劇場(公益財団法人 高崎財団) 協力・BLUE NOTE JAPAN

▶︎詳細




Recommend Disc

CharmsOfTheNightSky200.jpg
Title : 『Charms Of The Night Sky』
Artist : Dave Douglas
LABEL : Winter & Winter
NO : 1070151
発売年 : 1998年



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【SONG LIST】

01. Charms Of The Night Sky
02. Bal Masqué
03. Sea Change
04. Facing West
05. Dance In Thy Soul
06. Little One
07. Wild Coffee
08. The Girl With the Rose Hips
09. Decafinata
10. Poveri Fiori
11. Odyssey
12. Twisted
13. Codetta



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Reviewer information

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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

曽根麻央Official Site

曽根麻央 Monthly Disc Review2021.05_ Booker Little_Booker Little:Monthly Disc Review

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Title : 『Booker Little』
Artist : Booker Little

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みなさんこんにちは、曽根麻央です。皆様いかがお過ごしでしょうか? 
季節もなんだか暖かく一段と過ごしやすくなり半袖のみで外出する事も増えました。

今回は僕の最も好きなトランペッターの一人、ブッカー・リトルを紹介できることを嬉しく思っています。その前に、以下のコンサートが決まりましたのでお知らせいたします。

MAO SONÉ - Brightness of the Lives supported by BLUE NOTE TOKYO
高崎芸術劇場スタジオシアター
出演・曽根麻央(トランペット、ピアノ、キーボード)井上銘(ギター)山本連(ベース)木村紘(ドラムス)
主催・ 高崎芸術劇場(公益財団法人 高崎財団) 協力・BLUE NOTE JAPAN
▶︎詳細


【馬力と歌心を兼ね備えた天才トランペッター唯一のワンホーンアルバム】


さて今回はブッカー・リトルの「Booker Little」というアルバムについてお話しします。直球すぎるトランペットの演奏と、現代的なテクニックの見事な融合を聴くことができます。豊かな音色と現代的な表現が絶妙なバランスで成り立っています。トランペッター目線ですが本当に見事です。というのもブッカー・リトルはクリフォード・ブラウンの影響をもろに受けた世代で、アルバム中もクリフォードのアーティキュレーションやフレーズが多々みられます。しかしそれは模倣ではなくブッカー・リトルの中で咀嚼され次の時代へ向かって音が放たれている印象を受けます。

ちなみにブッカー・リトルの同い年のトランペッターにフレディー・ハバードがいますが、フレディーの初期の演奏と聴き比べてみても面白いかもしれません。

 ブッカー・リトルはメンフィス・テネシーに1938年に生まれたトランペッターですが1961年には尿毒症で亡くなっている、23年のとても短い人生を歩んだトランペッターです。なので活動時期も非常に短く、彼の録音の多くは1958年から1961年の3年間の間に残されたものが多いです。

 メンフィス・テネシーではフィニアス・ニューボーンJrやジョージ・コールマンといった同郷のミュージシャンたちと腕を磨き、その後シカゴに大学入学のために拠点をシカゴへ移しました。同時期にソニー・ロリンズやマックス・ローチと出会い、クリフォード・ブラウンの後継者としてレコーディングに参加しますが、学生であったために継続的なバンド活動を当時は断念しました。大学卒業後の1958年からは拠点をニューヨークに移し、マックス・ローチのバンドで本格的に活動し始めます。その後3年間凄まじい勢いで活動し、多数のアルバムを残しています。

 この『Booker Little』というアルバムは1960年に録音され、彼の短いキャリアの中では中期のものといってよいでしょう。おそらく僕が確認した限り唯一のワンホーン(サックスなど他のホーン奏者が入っていない)アルバムとなっています。

 メンバーを見てみましょう。



Booker Little - trumpet
Tommy Flanagan (tracks 1, 2, 5, 6), Wynton Kelly (tracks 3 & 4)
Scott LaFaro - bass
Roy Haynes (tracks 1-6)




 トミー・フラナガンが4曲、ウィントン・ケリーが2曲参加しています。そしてブッカー・リトルと同じく61年に25歳で亡くなったベーシスト、スコット・ラファロとの共演も聴くことができます。そしてアルバム全体を通して鉄壁のドラマー、ロイ・ヘインズが見事にサポート。ヘインズのライドシンバルは安定してリズムを繰り出し、スネアは他の演奏の音と音の間を紡いでいきます。

 録音に関しては、今では考えられないのですが、トランペットとピアノを完全に右、ベースとドラムを完全に左に寄せるというステレオでミックスされていて、イヤフォンで聞くと非常に違和感のある作品になっています。これはステレオがまだ新しい技術であったという問題もありますが、そもそもイヤフォンやヘッドフォンなど当時ないわけで、スピーカーから聴くことを想定しているからですね。イヤフォンで聴いて違和感があるからといって聴かないのは勿体無いので「そういうもの」だと思って聴いてみてください。多くのこの時代の素晴らしいジャズのレコーディングがこのようにミックスされています。





01. Opening Statement
 凄まじい勢いと音圧でトランペットのメロディーが聞こえてきたと思ったら、ラファロとヘインズの圧倒的なグルーブが曲を推進させます。どこまでがメロディーかインプロかわからないぐらい美しいラインを作り出すブッカー・リトルのソロ。それだけでなく見事な楽器コントロール。これだけのエネルギーをトランペットで一曲通して演奏するのは至難の技です。


02. Minor Sweet
 最初にヘインズとリトルによるルバート・イントロがあり、それが終わるとすかさず早いスウィングのテーマをリトルが吹き出し、アンサンブルが始まります。まっすぐなトランペットの音が見事に響いています。インプロ部分は特にこの曲はクリフォード・ブラウンの影響が濃くみられますね。とくに早い8分音符を全てタンギングしてフレーズを作っている部分などそっくりです(1:50など)。




03. Bee Tee's Minor Plea
 シンプルなマイナー・ブルースの曲。しかしこちらもテーマが異常に難しいリトル仕様になっています。ピアニストがウィントン・ケリーに変わっています。コンピング(伴奏)の仕方の違いも聴くと面白いと思います。とてもリズミックで明るめの音色になっていませんか? 


04. Life's a Little Blue
 ミディアム・スウィングの曲。これまでの4曲ともそうですが、リトルの楽曲は彼のトランペットの音色を聴かせるのに最適な音域、そして楽曲になっています。実際には通常の奏者には演奏するのに難しいメロディーラインではあるのですが、それをいとも簡単に、しかも凄まじい音圧で吹き切り、そのままそれに準ずるような美しいソロを展開するリトル。本当に素晴らしい奏者です。

それにプラスして、過去のトランペット奏者ができなかったインプロでのインタバリックな展開が特徴的です。つまり音程間の動きが激しい演奏になっています。トランペットは音程間の移動がとても大変な楽器なので、通常ビバップのように早い曲だと「ド」から「レ」の音のように隣り合った音同士を繋げてフレーズを作ることが多いです。しかし、リトルはこの常識を覆し、まるでサックスのようなソロを展開できることを証明した人ではないかなと思います。この音圧と異常なテクニックはソニー・ロリンズ的だなと聴いていて思いました。リトルは学生時代にロリンズからアドヴァイスを受けていたという話も聞いたことがあります。


05. The Grand Valse
 アルバム唯一のワルツ。ピアノがフラナガンに戻り、豊かな音色と安定したハーモニーで音楽全体を支えてくれます。こちらの曲も美しいメロディー、そして圧倒的なインプロはもちろんありますが、リズムセクションのクールな感じと、それに対するリトルの熱量が面白いバランスで存在していて、うまく成り立っています。


06. Who Can I Turn To
 アルバム唯一のスタンダード曲、そしてバラード。リトルの歌心を存分に味わえるテイクです。最後にリマインドしますが、このとき彼は22歳です。音楽史に「もし」は禁物ですが、もしリトルがさらに多くのアルバムに参加できたなら確実に歴史上もっとも重要なジャズトランペッターとしてあげられていたと確信しています。


それではまた次回。

文:曽根麻央 Mao Soné






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【曽根麻央が主演、音楽を担当した映画「トランペット」上映決定!
6月18日(金)についに僕・曽根麻央が主演、音楽を担当した映画「トランペット」が日本初上映決定!
別所哲也さんが代表を務めるShort Shorts Film Festival & Asia 2021というアカデミー賞公認のフィルムフェスティバルでの上映が決定しました。チケットはなんと無料です!

■上映スケジュール: 6/18 FRI 15:40 - 17:30
■上映会場: iTSCOM STUDIO & HALL 二子玉川ライズンライン会場
■インターナショナルプログラム6
第一弾予約期間:5/12(水)14時~5/24(月)第二弾予約期間:5/27(木)14時~

▼URL
https://shortshorts.org/2021/ja/int-6/?fbclid=IwAR1FayTutJ1QUMovwY9Jx-Z-gICsVYwfqIww06DvLb8Mlvt_ljnEBWhQZ3g






Recommend Disc

Bookerlittle200.jpg
Title : 『Booker Little』
Artist : Booker Little
LABEL : ITime Records
NO : 52011
発売年 : 1960年



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【SONG LIST】

01. Opening Statement
02. Minor Sweet
03. Bee Tee's Minor Plea
04. Life's A Little Blue
05. The Grand Valse
06. Who Can I Turn To




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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

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曽根麻央 Monthly Disc Review2021.04_ Buster Williams_Something More:Monthly Disc Review

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Title : 『Something More』
Artist : Buster Williams

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【「I Didn't Know What Time It Was」はジャズ・アンサンブルの最高到達地点】

 皆さんこんにちは、トランペットとピアノの曽根麻央です。3月の末からかなり過ごしやすい気候が続いていて、なんだかとっても穏やかですね。そんな春に先駆けて来週4/23(金)には僕のライブが夢の舞台・ブルーノート東京であります。是非、お誘い合わせの上聴きにきてください!皆さんの応援が励みです!

 そんなブルーノート出演メンバーとシングルを出しました!Apple Music、Spotify、Amazon Music, YouTube Musicなど各配信サイトで聴くことができます。是非ダンロードして聴いてください!

Title : Gathering at Park Drive
Artist : 曽根麻央
Rabel : Reborn Wood
Release : 2021.4.13
リンク▶︎ https://ultravybe.lnk.to/gatheringatparkdrive



 またまた、同じメンバーの1月のライブをJJazz.Net内の番組「Jazz Today」で約1ヶ月間聴くことができます!この機会をお聴き逃しなく!

「JazzToday - MAO SONÉ Brightness Of The Lives LIVE」
(放送期間2021年4月14日~2021年5月12日(17:00まで))
リンク▶︎ https://www.jjazz.net/programs/jazztoday


今週は1989年録音の、Buster Williamsの『Something More』というアルバムを取り上げていきます。この『Something More』で特に「I Didn't Know What Time It Was」はまさに歴史的な名演であると思います。14分30秒ほどに渡る長めの演奏ですが、メンバーの各々が完璧なソロ、タイム、グルーヴを僕らに聴かせてくれます。その上そのプレイには自由が感じられます。

まずはいつも通りメンバーを見ていきましょう



Buster Williams (b)
Herbie Hancock (p,key)
Wayne Shorter (ts,ss)
Shunzo Ohno (tp)
Al Foster (ds)




 このようなカルテットの面々。ただいまからお話しする「I Didn't Know What Time It Was」には トランペッター・大野俊三さんは参加しておらず、Buster Williams (b) Herbie Hancock (p,key) Wayne Shorter (ts,ss) Al Foster (ds)による演奏になっています。





 まずベースのvampがイントロとして聴こえてきます。Vampとはクラシック音楽ではostinatoとイタリア語で呼ばれ、音楽的なパターンを何度も繰り返すことを指します。Vampの場合はベースパターンの繰り返しが多いです。このアレンジではイントロやインタルード(間奏)としてvampが付いているので、オリジナルの曲のフォーム+vampという構成が特徴的です。

 Vampが使われるジャズの演奏については トム・ハレルの『Passages』を以前紹介しましたが、この時代のジャズでは曲のフォームでソロを回すだけでなくvampのセクションが付けてアレンジするのがやはり流行ったのかと思います。

 Busterの最高の音色で奏でられるベースのイントロに寄り添うように、Al Fosterが徐々に加わりドラムを演奏します。しばらくするとHerbieのユニークなハーモニーが加わり曲のカラーが見えてきます。少し遠くから聞こえるWayneのソプラノの音がゆっくりと力強くなり「I Didn't Know What Time It Was」のメロディーが聴こえてきます。Vampで使われていたベースラインはメロディーの後ろで徐々に変化し、聴く人の興味を引きつけます。

 この楽曲のメロディーはAABAフォームと言って、最初のメロディー(A)が二回、その後に続く違うメロディー(B、またはブリッジといわれる部分)が一回だけ演奏され、その後Aに戻るというジャズを代表する曲の形式です。「A列車で行こう」や「Nearness Of You」などの多くのスタンダード曲がAABAフォームで書かれています。

 ただこの最初のメロディー(A)は通常の倍の長さに拡張されて、16小節あります。オリジナルは8小節です。その後のBセクションは8小節のオリジナルのままです。BセクションではベースはOstinatoではなく、スウィングの弾き方になり一気に曲を推進させます。スピード感が出てきたかと思えば、その後のAセクションはまた倍の長さのメロディーとベースラインが出現し、ゆったりとした雰囲気が再び現れます。その後Aセクションが終わるとイントロで聴いたベースラインが再び現れソロへと突入していきます。

 最初のWayneのソロはまるで歌うような、一つ一つの音に何か魂を込めるような、一種の叫びを感じるソロです。女性の声に聴こえますね。3:48-4:09は、まだソロの途中なのにも関わらず16小節全く吹かないというのは本当にびっくりしますが、空白すらも音楽なのはWayneだからできることかと思います。その後はBusterのウォーキングベースとAl Fosterのライドシンバルが恐ろしいグルーヴを演奏し始めます。ウォーキングベースとは一小節に4つ音を鳴らすジャズの最も基本のベースの奏法です。Busterはそのウォーキングベースのマスターであることは間違い無いです。

 その後Herbieのソロに入ります。Herbieも素晴らしいソロをとりますが、彼のソロとAl Fosterのスネアのやりとりがユニークです。5:28や6:31、6:35の一瞬ランダムに聴こえるスネアの演奏はAl Fosterの独特な表現の一つで、覚えておくと聴いた時にジャズが楽しくなります。ランダムなのにソリストのHerbieに寄り添っているのがすごいですね。

ジャズのスウィングにおいてドラムの基本はライドシンバルで、ライドシンバルでグルーヴを出します。スネアはピアノの左手などと会話をするように合いの手を入れるので、音のバランスとしてライドの下にスネアがあるイメージだと理想的です。ロックではスネアのビートを強力に鳴らすので、そこがジャズとは演奏法が違いますね。ロックドラムの人がジャズにトライするときは気をつけるとよいと思います。Busterのウォーキンベースの合間に6:30のような、ベースを「ウーンッ」と言わせるような遊び心があるので聴いて楽しいです。

 続くBusterのソロもまるで喋っているかのようなソロを取っています。Busterのベースの特徴の一つとして、一音の長さがあると思います。アンプの誕生によってベースがリズム表現する楽器から、音程や細かいニュアンスを表現できる楽器に進化したと思います。例えばジャズの歴代初代天才ベーシストとも言えるJimmy Blantonなどの演奏を聴いても、アンプがないので音を伸ばすことに関しては楽器的に限界があると思います。音の減衰速度がはやいですよね。





Busterの時代にはベースアンプやピックアップがあるので音の減衰速度を落とすことができるようになりました。Busterは新しいベースの音と、伝統的なベースの役割のバランス感が素晴らしく、リズムの切れと一音一音の長さを共存させたベース奏者です。

 その後Al Fosterのソロがあり、エンディングテーマへと向かいます。メンバー全員が、この長尺アレンジされた「I Didn't Know It Was」を2コーラスずつ演奏しています。メロディーを演奏しに戻ったWayneは一層パワーアップしていて、曲をクライマックスへと導きます。是非、人生のどこかで14分時間をとって聴いてみてください。歴史的名演です。

 さてここからは一曲ずつ、短めに見ていきましょう。このアルバムは水が流れるように常に音楽が動いていて、一曲一曲はかなり長いのですが一瞬のようにも感じます。巨匠たちの全く力まない、自然体で臨むスタジオ・ワークを楽しんでください。


01. Air Dancing
 弓のベースの音からシンセの音、ミュート・トランペットとソプラノサックスが心地よくブレンドして導入されます。90年代に近づくにつれ、シンセサイザーが自然にアコースティック楽器にブレンドする音源が多くなりますね。Busterのソロはオーバーダブ(重ね録音)なのか、2人のBusterが心地よく絡まり合う感じに仕上がっています。このHerbieのソロの上でもAl Fosterのランダムなスネアの動きを多く聴くことができます。


02. Christina
 Busterのオリジナル曲で最も有名で美しい曲の一つです。メロディーの時のWayneの音色とHerbieのハーモニーが本当に美しいので聴いてみてください。


03. Fortune Dance
 ファンキーな曲一曲。大野俊三さん とWayneのテナーの2管が印象的です。Wayneの1コードの上でのソロが聴けますが、この人は本当に音を操る達人です。


04. Something More
 タイトルソングで落ち着いた雰囲気のワルツ。これもやはりWayneのサウンドに圧倒されるトラック。Wayneは本当に音域が上から下まで幅広く、しかも最高の音色で演奏するので、全ての音に意味があるように聴こえてきます。4:17からのエンディングでのAl Fosterのシンバルの使い方、びっくりします!


05. Decepticon
 早いスウィングの曲でベース、トランペット、サックスなどでユニゾンしながら曲を展開します。Busterのアーティキュレーションがよく、ベース奏者として最高のテクニックをも持ち合わせているのがわかります。こちらのソロもWayneの異常さを体感できます。リズムのキレの良さ、楽器コントロール、アイディア、全てにおいて完璧です。


06. Sophisticated Lady
 Herbieの美しいイントロに続き、Busterがメロディーを弾きます。一曲目のソロの時のように、一人のBusterは伴奏に徹し、もう一人がメロディーを弾くように重ね録音されています。Busterのように音程の良いベーシストでなければ困難な技でしょう。Herbieのシンセの音色のチョイスも挑戦的で興味深いです。


それではまた次回。

文:曽根麻央 Mao Soné







【LIVE INFO】
曽根麻央演奏スケジュール


maosone_bluenote.png


【公演名】
MAO SONÉ - Brightness of the Lives - at Blue Note Tokyo

【日時】
2021 4.23 fri.
[1st]Open5:30pm Start6:30pm [2nd]Open8:30pm Start9:15pm
※2ndショウのみインターネット配信(有料)実施予定
※アーカイブ配信視聴期間:4.26 mon. 11:59pmまで
※アーカイブ配信の内容はライヴ配信と異なる場合がございます。
予めご了承ください。
※当初の開催日程(2021 1.21 thu.)から変更となっております。

【メンバー】
曽根麻央(トランペット、ピアノ、キーボード)
井上銘(ギター)
山本連(ベース)
木村紘(ドラムス)

★公演内容に関するお問い合わせ
ブルーノート東京 TEL:03-5485-0088

▼URL
http://www.bluenote.co.jp/jp/artists/mao-sone



Recommend Disc

somethingmore200.jpg
Title : 『Something More』
Artist : Buster Williams
LABEL : In+Out Records
NO : 7004-2
発売年 : 1989年



アマゾン詳細ページへ


【SONG LIST】

01. Air Dancing
02. Christina
03. Fortune Dance
04. Something More
05. Decepticon
06. Sophisticated Lady
07. I Didn't Know What Time It Was




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Reviewer information

Mao Sone600.jpg

曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

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