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Monthly Disc Reviewの最近のブログ記事

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皆さんこんにちは。曽根麻央です。
今日はLee KonitzとBrad Mehldau、Charlie Hadenの3人の名手が1996年にライブレコーディングした作品を紹介したいと思います。
リリースは1997年にブルーノートから出ていますので、この作品は知っている音楽ファンの方も多いのではと思います。


その前に2つ宣伝させてください。

昨年リリースしたソロアルバム『PLAYS STANDARDS』
そのリリースライブからライヴレコーディングしたものが月末に配信開始になります。
3曲のメドレーとしての配信です。
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・Reflections in D / Serenade / Wave (LIVE at Keyaki No Hall)
 https://ultravybe.lnk.to/liveatkeyakinohall
7/30の20時にYouTubenで先行配信、そして7/31にはApple Music、8/6にはU-NEXTとと続々と配信します。お楽しみに!


そして、昨年プロデュースして好評いただいた作品『CITY POP RENDEZ-VOUS』の続編作品として、7インチアナログ盤『中央フリーウェイ/MUSIC BOOK』が8/3に発売されます。
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・中央フリーウェイ/MUSIC BOOK
 https://ultravybe.lnk.to/OTS-356
前作に引き続きAiriをヴォーカルに、私がピアノとトランペットはもちろん全ての楽器とアレンジ、ミックスを担当しました。
是非、アナログのサウンドで聴いてみてください。

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Title : 『Alone Together』
Artist : Lee Konitz, Brad Mehldau, Charlie Haden


さて今日お話しする『ALONE TOGETHER』というアルバムは3人の偉大なミュージシャンによってライヴ・レコーディングされました。
各トラックが長い作品になりますが、ジャズのスタンダードというプロ、アマチュア、ジャズファンと幅広い層に伝わる共通のテーマを、3人の名手が自由に解釈を広げていくこの作品は必聴盤と言えるでしょう。


コニッツが27年生まれ、ヘイデンが37年、メルドーが70年生まれと、ある意味3-4世代にわたる名手のコラボレーションで、それぞれが各々の特徴的なスタイルやサウンドを音楽史に刻んだ(メルドーに関しては今もなお刻み続けている)存在というのも覚えておきたい。
それぞれのスタイルがあまりにユニークで、そして主張がある。
しかしそれでいて共存できるジャズという音楽の多様性にも改めて注目したい。
また3人とも各々の楽器において最も美しい音を出せる奏者でもあります。
コニッツの優しく浮遊感があり、まるで話しているかのようなニュアンスのサックス、メルドーのタッチ、そしてヘイデンのぎっしりとコアが詰まったベース音、その3つがこの作品では音楽で会話をしています。


全体を通して音楽の要になっているのがヘイデンのベースラインです。
スウィングの曲でもほぼ4部音符を奏でることなく、ハーモニーで重要な音程を、ダウンビートなどリズムで重要な拍をしっかりと弾いています。


通常ジャズのベーシストはウォーキング・ベースといって1小節に4部音符を埋めることでビートとハーモニーを奏でるものです。
しかし、ヘイデンはこれをほとんどこのアルバムでしていません。おそらく、4部音符でこのアンサンブルに参加してしまうと、ビートをしっかりとロックしてしまい、尚且つハーモニーの方向性も明確に示すことになるので、メルドーやコニッツの自由を奪ってしまうのでしょう。
ヘイデンは、全音符や2部音符、付点4部音符などの通常より長めの音価を演奏することにより、他の二人に自由を与えながら、リズムの大枠の要になるダウンビートをしっかり抑え、アンサンブルが崩壊しないように支えていると思います。
なので3曲目のCherokeeのメルドーのソロの後ろで1コーラスだけウォーキング・ベースが登場した時には、その効果は絶大で、スウィングの持つ牽引力を音楽に与えて、通常だったら音楽が進行する上でずっと聞かされるサウンドであるはずのこのウォーキング・ベースを、まるでアクセントのように聴き手に錯覚させるほどです。



そのヘイデンのベースの上で、コニッツがストーリーを語っています。
コニッツは20年代生まれなので、それこそチャーリー・パーカー世代になります。音色としては「Take Five」を録音したポール・デスモンドやアート・ペッパーに近いと言えるかもしれません。
コニッツはビバップやクールジャズ、アヴァンギャルドと時代と共に幅広い音楽性を展開していています。そしてその独特の表現はピアニストのレニー・トリスターノとの作品でも多く聞くことができます。
トリスターノとコニッツは当時では(今でも)かなりユニークなリズムのアクセントやグルーピングを使ってメロディーやアドリブを展開していていました。
アルバムに参加しているメルドーもその影響は受けているはずです。
コニッツのサウンドを先ほど「浮遊館のある」と表現しましたが、しかしそれは圧倒的なリズム感があるからこそ成り立っています。


メルドーもそうです。コニッツに触発されたように、またヘイデンの強力なサポートもあり、ここではリズムをきちんとわかりやすく出すという一般的なジャズピアノの仕事からは解放されていて、伴奏ではコニッツに寄り添って一緒に世界を作るように演奏しています。
ソロではより一層、クラシカルな表現で左手と右手がバラバラのメロディーを演奏する対位法のようなものも用いつつ、和音の解釈も全然違うものに変えながら独自の世界を表現しています。
これはヘイデンが圧倒的にサポートに徹しているからこそできるのです。


すぐ他人のアイディアについてくるベーシストだと、ソリストはアイディアを自由に展開できなくなるのでジャズのアンサンブルにおいてそのバランスは非常に重要です。
ソリストもサポートする側も「Lead&Follow」の関係にいつもあってそのバランスの良い人がアンサンブルできる人といえます。


このアルバムはドラムがいない=音の情報量の少ない特殊な組み合わせで展開されるので、リズムやハーモニーの展開がより明確に聴こえ、ジャズ奏者のコミュニケーションを聴衆が体験しやすいアルバムになっていると思います。ぜひ聴いてみてください。


文:曽根麻央 Mao Soné



Recommend Disc

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Title :『Alone Together』
Artist : Lee Konitz, Brad Mehldau, Charlie Haden
LABEL : Blue Note
発売年 : 1997年



アマゾン詳細ページへ


【SONG LIST】

01.Alone Together
02.The Song Is You
03.Cherokee
04.What Is This Thing Called Love ?
05.Round Midnight
06.You Stepped Out Of A Dream




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「Monthly Disc Review」アーカイブ曽根麻央
2020.04『Motherland / Danilo Perez』2020.05『Color Of Soil /タイガー大越』2020.06『Passages / Tom Harrell 』2020.07『Inventions And Dimensions / Herbie Hancock』2020.08『Birth Of The Cool / Miles Davis』2020.09『Chet Baker Sings / Chet Baker』2020.10『SFJAZZ Collective2 / SFJAZZ Collective』2020.11『Money Jungle: Provocative In Blue / Terri Lyne Carrington』2020.12『Three Suites / Duke Ellington』2021.01『Into The Blue / Nicholas Payton』2021.02『Ben And "Sweets" / Ben Webster & "Sweets" Edison』2021.03『Relaxin' With The MilesDavis Quintet / The Miles Davis Quintet 』2021.04『Something More / Buster Williams』2021.05『Booker Little / Booker Little』2021.06『Charms Of The Night Sky / Dave Douglas』2021.07『Play The Blues / Ray Bryant Trio』2021.08『The Sidewinder / Lee Morgan』2021.09『Esta Plena / Miguel Zenón』2021.10『Hub-Tones / Freddie Hubbard』2021.11『Concert By The Sea / Erroll Garner』2021.12『D・N・A Live In Tokyo / 日野皓正』2022.1『The Tony Bennett Bill Evans Album / Tony Bennett / Bill Evans』2022.2『Quiet Kenny / Kenny Dorham』2022.3『Take Five / Dave Brubeck』・2022.4『Old And New Dreams / Old And New Dreams』2022.5『Ella Fitzgerald And Louis Armstrong / Ella And Louis』2022.6『Live from Miami / Nu Deco Ensemble & Aaron Parks』2022.7『Oscar Peterson Trio + One / Oscar Peterson Trio Clark Terry』2022.8『Ugetsu/ Art Blakey & The Jazz Messengers』2022.9『Sun Goddess / Ramsey Lewis』2022.10『Emergence / Roy Hargrove Big Band』2022.11『Speak No Evil / Wayne Shorter』2022.12『The Revival / Cory Henry』2023.1『Complete Communion / Don Cherry』2023.2『Your Mother Should Know: Brad Mehldau Plays The Beatles / Brad Mehldau』2023.3『Without a Net / Wayne Shorter』2023.4『LADY IN LOVE / 中本マリ』2023.5『Songs Of New York / Mel Torme』2023.6『Covers / James Blake』2023.7『Siembra / Willie Colón & Rubén Blades』2023.8『Undercover Live at the Village Vanguard / Kurt Rosenwinkel』2023.09『Toshiko Mariano Quartet / Toshiko Mariano Quartet』2023.10『MAINS / J3PO』2023.11『Knower Forever / Knower』2023.12『Ella Wishes You A Swinging Christmas / Ella Fitzgerald』2024.01『Silence / Charlie Haden with Chet Baker, Enrico Pieranunzi, Billy Higgins』2024.02『Rhapsody in Blue Reimagined / Lara Downes』2024.03『Djesse Vol. 4 / Jacob Collier』2024.04『Voyager / Moonchild』2024.05『Evidence with Don Cherry / Steve Lacy』2024.06『Quietude / Eliane Elias』



Reviewer information

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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

曽根麻央Official Site

曽根麻央 Monthly Disc Review2024.06_Eliane Elias : Quietude:Monthly Disc Review

みなさんこんにちは、曽根麻央です。
今日はブラジル、サンパウロが生んだ世界的ジャズアーティストEliane Eliasの『Quietude』という作品をご紹介します。
この作品はボサノヴァと彼女の歌にフォーカスを当てています。大変聴きやすく、あまりブラジリアン音楽やジャズに馴染みのない人にも大変おすすめのアルバムです。
もちろん演奏も歌も選曲もアレンジも素晴らしく音楽ファンにも満足してもらえる内容であります。しかし同時にドライヴ、カフェ、リヴィングルーム等、時間と場所を選ばず空間に溶け込むことができる、ある意味完璧なアルバムかもしれません。


その前に一つ宣伝させてください。
僕のレーベルclaudiaで制作したアナログ7インチ盤が、8/3から開催されるシティ・ポップに特化したイベント"City Pop on Vinyl"で発売されます。
昨年のレーベルで発売して好評をいただいた作品『City Pop Rendez-Vous』の続編として制作され、シンガーには引き続きAiriが「中央フリーウェイ」「MUSIC BOOK」とシティ・ポップの代表曲を歌っています。
僕は他すべての楽器を演奏してアレンジ、ミックス、プロデュースをしてます。Airiとこだわって制作しました。ぜひ買ってください!


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『中央フリーウェイ/MUSIC BOOK』7' Analog
https://ultravybe.lnk.to/OTS-356


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『City Pop Rendez-Vous』CD
https://ultravybe.lnk.to/citypoprendez-vous




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Title : 『Quietude』
Artist : Eliane Elias


Eliane Eliasの存在は2000年に制作されたラテン・ジャズ・ドキュメンタリー映画『Calle 54』で知ったという人は多いのではないでしょうか?
リズミカルに、尚且つ繊細に力強くボサノヴァのスタイルでピアノを弾くElianeの素晴らしい演奏が収録されていますが、この映画には他にも、Michel Camilo、Chucho Valdés、Bebo Valdés、Cachao、Gato Barbieri、Tito Puente、Paquito D'Riveraといったラテン・ジャズのスターや巨匠が出演していて、たいへん内容の濃いものです。
ラテン・ジャズを知るのに当時最も適した映像資料であったなと思います。





僕自身、小学生の時にこのドキュメンタリー映画を見てEliane のファンになり、その時から彼女のボサノヴァの弾き方などを映像で見て勉強していました。


実は先月久しぶりにEliane Eliasが来日したので、ブルーノート東京で聴いてきました。
今回はLeandro Pellegrinoという僕のバークリー音楽大学時代の友人をギタリストとして帯同しての来日だったので、その友人との再会も大きな目的でした。
ドラムにはRafael Barataというブラジリアンの名手を、そしてベースには巨匠Marc Johnsonを連れてきてくれました。
Marc JohnsonはかのBill Evansのトリオのメンバーとして長年活躍した人ですが、私生活ではEliane Eliasと結婚していて、実質現在ではEliane Eliasバンド以外でMarcを聴くことはほぼできないでしょう。
それほどまでに、Eliane という存在と彼女の音楽にコミットしているMarcのベースとElianeは、素晴らしい息の合い方をするのはもちろんですが、そもそもブラジリアン音楽でベースはリズムやハーモニーを正しく機能させる上で非常に重要な役割をしています。

プログラムの序盤はステージ全体を使って、上手から下手にかけて、ギター、Eliane、ベース、ドラムと配置していました。
序盤も最高だったのですが、中盤で突如配置を上手側に移動して、グランドピアノの後ろにベースが近づき、ドラマーがElianeと背合わせになる形に舞台のセットアップを変えました。
ドラムセットではなく小さな太鼓とシンバルを組み合わせたパーカッションセットのようなものでした。

そこでElianeが「今からボサノヴァの誕生を再現したいと思います。ボサノヴァはリオデジャネイロの小さい部屋でギターと歌、パーカッション、ベース、ピアノといった楽器を合わせてセッションしていたところから始まりました。」と日本の聴衆に向けてボサノヴァという音楽の説明を少し入れてくれました。
そしてこのセッティングでレコーディングしたのがコロナ禍に発売したアルバム『Quietude』ですと、アルバムの紹介をして、アルバムから数曲、この小さなセットアップで最高のプレゼンテーションをしてくれました。
本当に一生聴いていたかったプログラムでした。

帰ってからはアルバムで収録されているのは幸運だと思い、何度も聴きました。


さて、ボサノヴァという音楽を正しく理解して演奏できるミュージシャンは少ないでしょう。
まず言葉がわからないと演奏する時リズムが合わないように出来ているのが、非常に演奏のハードルを上げています。
さらにそれに合わせて緻密なハーモニーと、世界的にも類を見ない、複雑かつ極上のメロディーを歌い上げるのは容易ではありません。

僕にとってはラテン音楽がそうですが、きちんと聴いて、そいてまた聴いて、研究してみて、現地に行ってみて、ようやく少し演奏できるようになるものです。
ブラジルは残念ながら行ったこともなければ、ポルトガル語は全くわからないのでこれから要勉強です。
もちろんラテン音楽とブラジリアン音楽は共通しているところも多くあるので、ラテン音楽として学んだニュアンスをそのまま活かせる時もあるのですが、やはり各国で独自の音楽のコミュニケーションがあります。

そういう詳細を感じたり気づくことが音楽の楽しさだったり、上達につながると思っています。
そしてこのアルバムは入門アルバムとしても優れているなと思いました。
オリジナルのレコーディングよりも新しいので色々なパートがクリアですし、モダンなので現代的なアプローチの仕方も聴いていてわかりやすいです。

ぜひブラジリアン音楽を楽しく聴いて、この夏を過ごしてみてください。

それではまた次回。


文:曽根麻央 Mao Soné



Recommend Disc

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Title :『Quietude』
Artist : Eliane Elias
LABEL : Candid
発売年 : 2022年





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【SONG LIST】

01.Você E Eu (You and I)
02.Marina
03.Bahia Com H (Bahia with H)
04.Só Tinha Que Ser Com Você (This Love That I've Found)
05.Olha (Look)
06.Bahia Medley: Saudade da Bahia / Você Já Foi á Bahia
07.Eu Sambo Mesmo (I Really Samba)
08.Bolinha de Papel (Little Paper Ball)
09.Tim-Tim Por Tim-Tim
10.Brigas Nunca Mais (No More Fighting)
11.Saveiros




曽根麻央『Expressions on the Melody of Kokiriko』
富山のこきりこ節をモチーフに展開した17分の作品がデジタルリリース!

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https://ultravybe.lnk.to/eotmok

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「Monthly Disc Review」アーカイブ曽根麻央
2020.04『Motherland / Danilo Perez』2020.05『Color Of Soil /タイガー大越』2020.06『Passages / Tom Harrell 』2020.07『Inventions And Dimensions / Herbie Hancock』2020.08『Birth Of The Cool / Miles Davis』2020.09『Chet Baker Sings / Chet Baker』2020.10『SFJAZZ Collective2 / SFJAZZ Collective』2020.11『Money Jungle: Provocative In Blue / Terri Lyne Carrington』2020.12『Three Suites / Duke Ellington』2021.01『Into The Blue / Nicholas Payton』2021.02『Ben And "Sweets" / Ben Webster & "Sweets" Edison』2021.03『Relaxin' With The MilesDavis Quintet / The Miles Davis Quintet 』2021.04『Something More / Buster Williams』2021.05『Booker Little / Booker Little』2021.06『Charms Of The Night Sky / Dave Douglas』2021.07『Play The Blues / Ray Bryant Trio』2021.08『The Sidewinder / Lee Morgan』2021.09『Esta Plena / Miguel Zenón』2021.10『Hub-Tones / Freddie Hubbard』2021.11『Concert By The Sea / Erroll Garner』2021.12『D・N・A Live In Tokyo / 日野皓正』2022.1『The Tony Bennett Bill Evans Album / Tony Bennett / Bill Evans』2022.2『Quiet Kenny / Kenny Dorham』2022.3『Take Five / Dave Brubeck』・2022.4『Old And New Dreams / Old And New Dreams』2022.5『Ella Fitzgerald And Louis Armstrong / Ella And Louis』2022.6『Live from Miami / Nu Deco Ensemble & Aaron Parks』2022.7『Oscar Peterson Trio + One / Oscar Peterson Trio Clark Terry』2022.8『Ugetsu/ Art Blakey & The Jazz Messengers』2022.9『Sun Goddess / Ramsey Lewis』2022.10『Emergence / Roy Hargrove Big Band』2022.11『Speak No Evil / Wayne Shorter』2022.12『The Revival / Cory Henry』2023.1『Complete Communion / Don Cherry』2023.2『Your Mother Should Know: Brad Mehldau Plays The Beatles / Brad Mehldau』2023.3『Without a Net / Wayne Shorter』2023.4『LADY IN LOVE / 中本マリ』2023.5『Songs Of New York / Mel Torme』2023.6『Covers / James Blake』2023.7『Siembra / Willie Colón & Rubén Blades』2023.8『Undercover Live at the Village Vanguard / Kurt Rosenwinkel』2023.09『Toshiko Mariano Quartet / Toshiko Mariano Quartet』2023.10『MAINS / J3PO』2023.11『Knower Forever / Knower』2023.12『Ella Wishes You A Swinging Christmas / Ella Fitzgerald』2024.01『Silence / Charlie Haden with Chet Baker, Enrico Pieranunzi, Billy Higgins』2024.02『Rhapsody in Blue Reimagined / Lara Downes』2024.03『Djesse Vol. 4 / Jacob Collier』2024.04『Voyager / Moonchild』2024.05『Evidence with Don Cherry / Steve Lacy』



Reviewer information

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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

曽根麻央Official Site

曽根麻央 Monthly Disc Review2024.04_Steve Lacy : Evidence with Don Cherry:Monthly Disc Review

みなさんこんにちは、曽根麻央です。
今日はソプラノサックス奏者としてとても有名な、Steve Lacyの1963年の作品
『Evidence with Don Cherry』を紹介します。

と、その前に今月新しいシングルをデジタル・リリースしました!
『Expressions on the Melody of Kokiriko』と言い、富山のこきりこ節をモチーフに展開した17分の作品です。
録音自体は8年前にボストンで行い、今年の3月にオーバーダブやミックスを都内のスタジオで行い完成させました。
LAを中心に活躍するピアニストIsaac Wilsonや、グラミー賞にノミネートされた素晴らしいヴァイオリニストLayth Sidiqをソリストに迎えました。
ミックスは私が行い、最後までこだわって作った作品になっています。
リンクからサブスクで視聴できますが、OTOTOYではハイレゾ版を購入できます。
https://ultravybe.lnk.to/eotmok
ぜひ聴いてください。



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Title : 『Evidence with Don Cherry』
Artist : Steve Lacy


さて、Steve Lacyは若い音楽家の中では教育者として有名なサックス奏者です。
晩年、ボストンにあるNew England Conservatoryで教えていたこともあり、ボストンで音楽を学んだ人は、Steveはこんなことを言っていた、これがSteveの考えた和音、なんて人づてに伝え聞いた話みたいなものを絶対にいくつか知っていると思います。またそんな話を統括すると、Steveよりもあとの世代の音楽家に尊敬されていた存在という事が見えてきます。
ダニーロ・ペレスやジョー・ロヴァーノはいつも授業で彼の話をしていました。

というように、私ですらもSteve Lacyは先生から伝え聞いただけの存在であまり聴いてこなかったので、そんな人も実際多いかと思います。ただ、やはり改めて素晴らしいミュージシャンであるだけでなく、他のアーティストに影響力のあった奏者ですので、ぜひこの機会に知ってもらえると嬉しいです。


Steve Lacyは1934年生まれ。音楽的にもう5-10年ほど後の人かと思っていましたが、実は世代としてはシダー・ウォルトンやシェリー・ホーン、日本の前田憲男と同い年だそうです。

キャリアの初めは、なんとレッド・アレンなどさらに世代が上のミュージシャンとデキシーランド・ジャズなどを演奏していたとか。その後、セシル・テイラーのアルバムに入るなどアバンギャルドなスタイルに傾倒しますが、Steveを有名にしたのはやはり彼の1958年のリーダー作『Reflections』でしょう。『Reflections』はセロニアス・モンクの曲集となっています。
今作の『Evidence』も同様にモンクの作品を中心に制作されたアルバムなので、この前進となった存在とも言えるでしょう。『Reflections』発売後には実際にモンクのバンドに入る機会もあったようです。


さて今作『Evidence』は、モンクとエリントンの作品をオーネット・コールマンのクァルテット編成で演奏した作品になっています。要するにサックスとトランペットの2ホーン、そしてベースとドラム。ピアノはいないのでコードはそれぞれのソリストとベースの音、またはホーンのアレンジによってのみ表現されます。
メンバーもコールマンのバンドを意識したものになっていて、今回見事なソロをアルバムを通して展開しているトランペットのDon Cherryは、本家コールマン・クァルテットのメンバーですし、またこのディスク・レビューでたびたび紹介している「名盤製造マシーン」ドラマーのBilly Higinsも同様です。
しかし、ベーシストのCarl Brownに関しては残念ながらそれほど多く知りませんでしたし、情報も集められませんでした。


選曲が実によく、モンクとエリントンの作品集ですが、前知識がなければどちらがどちらの作品かわからなくなります。
この二人は世代は違いますが作曲の方向性としては、メロディーの作り方や、大胆な不協和音の投入、ドミナント和音の使い方など、似ているところが多々ありますので親和性がありますね。
エリントン、チャールズ・ミンガス、セロニアス・モンクと50年代までのジャズシーンを牽引した3大作曲家とも言えるでしょう。


1 The Mystery Song
2 Evidence
3 Let's Cool One
4 San Francisco Holiday
5 Something To Live For
6 Who Knows


このうち1と5がエリントンの作品になっています。
「The Mystery Song」は1931年、「Something To Live For」が1933年の作品なので、モンクの上記の曲は15~20年近く前の作品ということになります。
現代ではさほど演奏されない2曲ですが、当時はミュージシャンの中ではスタンダードだったのでしょうか?
特に「The Mystery Song」は2ホーンのアレンジが素晴らしく、原曲よりもモンクが書いたような雰囲気が増している気がします。
1コーラス目と2コーラス目でソプラノはメロディーを取り続けるのですが、トランペットの音域が変わることで、和音をより一層明確にしています。



4の「San Francisco Holiday」ではモンクのピアノ・パートを忠実に2ホーンに置き換えただけですが、元々あった和音を多く削減して、この2音+ベースラインだけで表現する和音の世界がとてもユニークです。
ハーモニー楽器がないというのはミステリアスな雰囲気が増すのだと思います。金管奏者などのソロの時の自由度が増しますし、より幅広い音域を駆使して演奏することを求められるので、技術的にも挑戦が必要になります。



全体の録音としては左からソプラノ、右からトランペットとドラム、センターからベースと完全に隔離されたスタイルのステレオです。今では考えられないミックスですが、この時代の音源ではよくあります。
イヤフォンで聞くと違和感でしかないですが、スピーカーで聴いた時にその効果は発揮されます。

この録音もSteve Lacyのソプラノの音が息づかいまでリアルに収音されていて、彼のユニークな世界観とニュアンスを体感できます。
またDon Cherryのダークでそして明るい相反する性質を持った彼の音もよく取られていて、良いレコーディングだと思います。

パンが完全に分かれているからこそ、6「Who Knows」などでの同時インプロヴィゼーションでは聴いていてこちらの方がアツくなってしまう、そんな録音になっています。



是非、聴いてみてください。それではまた次回お会いしましょう。


文:曽根麻央 Mao Soné



Recommend Disc

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Title :『Evidence with Don Cherry』
Artist : Steve Lacy
LABEL : Carrere
発売年 : 1962年





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【SONG LIST】

1. The Mystery Song
2. Evidence
3. Let's Cool One
4. San Francisco Holiday
5. Something To Live For
6. Who Knows



曽根麻央『Expressions on the Melody of Kokiriko』
富山のこきりこ節をモチーフに展開した17分の作品がデジタルリリース!

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2024.5.8 (Wed) Out
https://ultravybe.lnk.to/eotmok

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「Monthly Disc Review」アーカイブ曽根麻央
2020.04『Motherland / Danilo Perez』2020.05『Color Of Soil /タイガー大越』2020.06『Passages / Tom Harrell 』2020.07『Inventions And Dimensions / Herbie Hancock』2020.08『Birth Of The Cool / Miles Davis』2020.09『Chet Baker Sings / Chet Baker』2020.10『SFJAZZ Collective2 / SFJAZZ Collective』2020.11『Money Jungle: Provocative In Blue / Terri Lyne Carrington』2020.12『Three Suites / Duke Ellington』2021.01『Into The Blue / Nicholas Payton』2021.02『Ben And "Sweets" / Ben Webster & "Sweets" Edison』2021.03『Relaxin' With The MilesDavis Quintet / The Miles Davis Quintet 』2021.04『Something More / Buster Williams』2021.05『Booker Little / Booker Little』2021.06『Charms Of The Night Sky / Dave Douglas』2021.07『Play The Blues / Ray Bryant Trio』2021.08『The Sidewinder / Lee Morgan』2021.09『Esta Plena / Miguel Zenón』2021.10『Hub-Tones / Freddie Hubbard』2021.11『Concert By The Sea / Erroll Garner』2021.12『D・N・A Live In Tokyo / 日野皓正』2022.1『The Tony Bennett Bill Evans Album / Tony Bennett / Bill Evans』2022.2『Quiet Kenny / Kenny Dorham』2022.3『Take Five / Dave Brubeck』・2022.4『Old And New Dreams / Old And New Dreams』2022.5『Ella Fitzgerald And Louis Armstrong / Ella And Louis』2022.6『Live from Miami / Nu Deco Ensemble & Aaron Parks』2022.7『Oscar Peterson Trio + One / Oscar Peterson Trio Clark Terry』2022.8『Ugetsu/ Art Blakey & The Jazz Messengers』2022.9『Sun Goddess / Ramsey Lewis』2022.10『Emergence / Roy Hargrove Big Band』2022.11『Speak No Evil / Wayne Shorter』2022.12『The Revival / Cory Henry』2023.1『Complete Communion / Don Cherry』2023.2『Your Mother Should Know: Brad Mehldau Plays The Beatles / Brad Mehldau』2023.3『Without a Net / Wayne Shorter』2023.4『LADY IN LOVE / 中本マリ』2023.5『Songs Of New York / Mel Torme』2023.6『Covers / James Blake』2023.7『Siembra / Willie Colón & Rubén Blades』2023.8『Undercover Live at the Village Vanguard / Kurt Rosenwinkel』2023.09『Toshiko Mariano Quartet / Toshiko Mariano Quartet』2023.10『MAINS / J3PO』2023.11『Knower Forever / Knower』2023.12『Ella Wishes You A Swinging Christmas / Ella Fitzgerald』2024.01『Silence / Charlie Haden with Chet Baker, Enrico Pieranunzi, Billy Higgins』2024.02『Rhapsody in Blue Reimagined / Lara Downes』2024.03『Djesse Vol. 4 / Jacob Collier』2024.04『Voyager / Moonchild』

Reviewer information

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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

曽根麻央Official Site

曽根麻央 Monthly Disc Review2024.04_Moonchild : Voyager:Monthly Disc Review

みなさんこんにちは、マルチインストゥルメンタリストの曽根麻央です。
今日は現代のジャズ/オルタナティヴ/R&Bの名盤 "Voyager"を紹介しようと思います。

このアルバムは聴くとまず音色のクオリティーの高さに驚かされます。音が本当にいい。
みなさんにも是非体感してほしいアルバムです。


その前に一つお知らせです。
4/27(土)は千葉県野田市にある生涯学習センター3F 欅のホールでソロ・コンサートがあります。
昨年9月に発売された『Plays Standards』のリリースコンサートで、アルバムから沢山お届けしようと思います。
なんとそれだけでなく、ライブ収録も兼ねています!ぜひこの機会をお見逃しなく!
東京駅からも約1時間の距離なので都内のオーディエンスの方もぜひ来てみてください。街並みも昔ながらの面影があり、前回仕込みに行った時に観光気分になってしまいました。

チケットはオンラインで購入できます
https://www.gettiis.jp/event/detail/101060/vugPXS5L



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Title : 『Voyager』
Artist : Moonchild


さてMoonchildは2012年ごろから活動を開始した3人組のバンドで、リードボーカルのAmber Navran含めて全員がキーボードやピアノ、シンセサイザー、そしてサックスやフリューゲルホルンなどの吹奏楽器を演奏することができます。まさに多重録音時代に特化したバンドと言えると思います。


例えばアルバムのイントロ 1. Voyager (Intro) をとっても、短いトラックながらも
彼らのこだわりが詰まっていると感じます。
左右に美しく揺れるトレモロがかかったローズピアノの音を中心に、パッドやリードシンセ、ちょっとだけギター、アルペジエーターやシンセベースなどあらゆる楽器が素晴らしいバランスで共存しています。



曲はそのまま 2. Cure に続くのですが、パッドが弾き延ばされている中にギターがリズムを刻み始めます。このギターのリフも細かくパンが振られていて、オーディオ空間の作り方が本当に巧妙です。そしてドラムとシンセベースが入ってくるとグルーヴが一体となり曲が始まります。愛が心の痛みを治すことを見せてあげるという歌で、ふわりと歌っている様に一見すると聞こえるのですが、リズムとイントネーションが素晴らしく、曲全体を歌がリードしています。歌が全体をリードするのは本来あるべき姿ではあるのですがとても難しいことでもあり、シンガー単体でもとても表現力がある事を思い知らされます。



3. 6am
この曲は3-3-2拍子でリズムが構築されてる特徴あるリフの曲です。エンディングにはフルートソロもあります。ソロといってそのままアドリブを乗せているだけではなく、おそらく大枠のソロを録音したのち、必要な部分のハーモニーをオーバーダブしてる様です。楽器の部分にもボーカルの作品作りの様な手が込んだ作風になっています。



4. Every Part (For Linda)
クリスプなドラムビートから始まる楽曲。ボーカルが入ってきた時に急にリバーブが少なくなり乾いた感じになるのがたまらなく素敵です。



5. Hideaway
低音からビート感が強いローズピアノとシンセベースのリフが気持ちよく、しかし歌は囁くようで対照的なMoochildらしい一曲。



6. The List
ローファイなピアノイントロから始まる楽曲。このアルバムの有名曲の一つかなと思います。
その後に続くローズピアノのキックが心地よく、その上でボーカルのハーモニーも見事にアレンジされています。
トランペットとフルートでのホーンセクションアレンジも際立っています。



7. Doors Closing
電車のアナウンスから始まる一曲。カウベルのビートが特徴的。今までローズピアノメインでしたがこちらはウーリッツァーピアノの音色。



そして楽曲は続けて 8. Run Way に突入します。こちらはキックドラムをパッドやシンセベースにコンプレッサーのサイドチェーンというもので繋げて、キックが鳴ると他の楽器の音量が抑えられます。そのダイナミックスと抑揚が作るグルーヴが特徴的です。
最後はマリオのゲームに世界のようなリフに突入して、レコードの回転数を落とすかのようにフィニッシュ。



そしてそこから回転数をあげたようにスタートするのが 9. Think Back。こういった曲同士の繋ぎもとっても上手なアルバムですね。
この曲はドラムのリズムがトップにいて、ピアノとベースが大分重たく後ろの方にいるネオソウル的グルーヴの曲です。



10. Now And Then
16分音符を刻みながら作る3拍子のグルーヴの曲。ドラムとシンセベース、そして手拍子が作る独自のグルーヴで、手拍子がやたら生っぽいミックスになっているのが逆に聴き手を集中させます。



楽曲はそのまま 11. Change Your Mind に突入します。こちらは一気にトーンダウンしてバラードの曲です。



12. Show The Way
コンガやタンバリン、シェイカーといった楽器が加わり、少しだけセッション感の強い作品になっています。そんな中でもAメロがポップで記憶に残りやすい作品かもしれません。



13. Let You Go
おそらく流れるような水の音やシンセの音が絡み合い神秘的な出だしから始まります。こちらも特徴的な、美しいメロディーラインを繰り返し繰り返し、しかしアレンジは変わりながら演奏されるます。それがLet You Goっていうタイトルですが、頭にはしっかりメロディラインが残ってこのアルバムが幕を閉じます。



それではまた次回。


文:曽根麻央 Mao Soné



Recommend Disc

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Title :『Voyager』
Artist : Moonchild
LABEL : Tru Thoughts
発売年 : 2017年





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【SONG LIST】

01.Voyager (Intro)
02.Cure
03.6am
04.Every Part (for Linda)
05.Hideaway
06.The List
07.Doors Closing
08.Run Away
09.Think Back
10.Now and Then
11.Change Your Mind
12.Show The Way
13.Let You Go
14.Cure (instrumental)
15.The List (instrumental)



曽根麻央『プレイズ・スタンダード』

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トランペット/ピアノの"ジャズ二刀流"として話題の曽根麻央がソロピアノで紡ぐスタンダードソング集が全国発売決定!
往年のジャズの名曲をフレッシュな感性で解釈。
抒情性と気品に彩られた曽根のジャズ・ミュージシャン、ピアニストとしてのアティテュードが表現されている作品に仕上がった。


曽根麻央『プレイズ・スタンダード』


1.Reflections in D
2.Serenade
3.In Your Own Sweet Way
4.The Star-Crossed Lovers
5.Wave
6.Stella by Starlight
7.All The Things You Are
8.Luminous (Piano Solo Ver.)
9.I Loves You, Porgy
10.Lady Luck11.Danny Boy
12.Home (Piano Solo Ver.)
13.Some Other Time
14.Ask Me Now
15.The Days of Wine And Roses
16.What A Wonderful World

Mao Soné (piano, trumpet)


曽根麻央のその他情報はウェブサイトへ

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「Monthly Disc Review」アーカイブ曽根麻央
2020.04『Motherland / Danilo Perez』2020.05『Color Of Soil /タイガー大越』2020.06『Passages / Tom Harrell 』2020.07『Inventions And Dimensions / Herbie Hancock』2020.08『Birth Of The Cool / Miles Davis』2020.09『Chet Baker Sings / Chet Baker』2020.10『SFJAZZ Collective2 / SFJAZZ Collective』2020.11『Money Jungle: Provocative In Blue / Terri Lyne Carrington』2020.12『Three Suites / Duke Ellington』2021.01『Into The Blue / Nicholas Payton』2021.02『Ben And "Sweets" / Ben Webster & "Sweets" Edison』2021.03『Relaxin' With The MilesDavis Quintet / The Miles Davis Quintet 』2021.04『Something More / Buster Williams』2021.05『Booker Little / Booker Little』2021.06『Charms Of The Night Sky / Dave Douglas』2021.07『Play The Blues / Ray Bryant Trio』2021.08『The Sidewinder / Lee Morgan』2021.09『Esta Plena / Miguel Zenón』2021.10『Hub-Tones / Freddie Hubbard』2021.11『Concert By The Sea / Erroll Garner』2021.12『D・N・A Live In Tokyo / 日野皓正』2022.1『The Tony Bennett Bill Evans Album / Tony Bennett / Bill Evans』2022.2『Quiet Kenny / Kenny Dorham』2022.3『Take Five / Dave Brubeck』・2022.4『Old And New Dreams / Old And New Dreams』2022.5『Ella Fitzgerald And Louis Armstrong / Ella And Louis』2022.6『Live from Miami / Nu Deco Ensemble & Aaron Parks』2022.7『Oscar Peterson Trio + One / Oscar Peterson Trio Clark Terry』2022.8『Ugetsu/ Art Blakey & The Jazz Messengers』2022.9『Sun Goddess / Ramsey Lewis』2022.10『Emergence / Roy Hargrove Big Band』2022.11『Speak No Evil / Wayne Shorter』2022.12『The Revival / Cory Henry』2023.1『Complete Communion / Don Cherry』2023.2『Your Mother Should Know: Brad Mehldau Plays The Beatles / Brad Mehldau』2023.3『Without a Net / Wayne Shorter』2023.4『LADY IN LOVE / 中本マリ』2023.5『Songs Of New York / Mel Torme』2023.6『Covers / James Blake』2023.7『Siembra / Willie Colón & Rubén Blades』2023.8『Undercover Live at the Village Vanguard / Kurt Rosenwinkel』2023.09『Toshiko Mariano Quartet / Toshiko Mariano Quartet』2023.10『MAINS / J3PO』2023.11『Knower Forever / Knower』2023.12『Ella Wishes You A Swinging Christmas / Ella Fitzgerald』2024.01『Silence / Charlie Haden with Chet Baker, Enrico Pieranunzi, Billy Higgins』2024.02『Rhapsody in Blue Reimagined / Lara Downes』2024.03『Djesse Vol. 4 / Jacob Collier』

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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

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曽根麻央 Monthly Disc Review2024.03_Jacob Collier : Djesse Vol. 4:Monthly Disc Review

みなさんこんにちは。ジャズ二刀流ことマルチインストゥルメンタリストの曽根麻央です。
今日は、つい先月末にリリースされたばかりのジェイコブ・コリアーの超大作アルバム
『Djesse Vol. 4』をみなさんにご紹介できることが本当に嬉しいです。

私の肌感からして恐らく音楽史においても最高傑作の一つになってしまったのではないかと思っています。本当に興奮を抑えることができません。彼と同じ時代に生きれたこと、その世界観を見ることができたのに感謝しているぐらいです。
ジェイコブ自身もアーティストとして、一人の人間がコントロールできる範囲を大幅に超えて、現時点での最高地点に到達したと感じました。
また、ジャンルや国境を超えた作品としてもかつてない広大なアプローチを展開しています。


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Title : 『Djesse Vol. 4』
Artist : Jacob Collier


Djesseシリーズは今作で4作品目、そして最終作ということらしいですが、私は自身これまでジェイコブのアルバムはノーマークでしたので、この作品が出会いとなりました。もちろんYouTubeなどでこの素晴らしい存在がいることは十分承知していたのですが、「天才すぎる」音楽故に敬遠していた部分があったのかもしれません。
この作品においても素晴らしい15曲と1曲のカバーアレンジを生み出しただけでなく、ボーカリスト、マルチインストゥルメンタリスト、アレンジャー、録音エンジニア、プロデューサー、そしてミックスエンジニアとしての多彩な才能を見せてくれています。

作品の特徴としてはほぼ全ての楽曲にフィチャーリング・アーティストがいて、その一人一人(またはグループ)のキャラクターが最も引き立つ形で曲が書かれています。
その中でも最も特徴的だったのは「Over You」でした。
この曲では、フィーチャーリングアーティストであるChris Martinが歌う場所ではゴスペル、Aespaという人気K-Popユニットが登場する場面ではK-Popらしいサウンドとなっていて、その変化と多様な音楽への理解は常識を超えています。

またプロデューサー、トラックメーカーとしてのジェイコブの実力も見事で、全体を通して最高のMixを体感できると思います。
低音から高音まで全ての場面で整頓されていて、不必要な音が何一つない状態が常にキープされています。
また楽器の音だけでなくレンガが転がる音や、映画の予告編で使われるような音、ガラスの割れる音など、そういったインパクトを拾ってきてはミックスで上手に使っていて、聴き手を飽きさせることがありません。

シンプルに作曲家、ソングライターとしても素晴らしく、名曲となるであろう曲が何曲も量産されています。ジャズのインストで演奏しても良さそうです。



M1. 100,000 Voices
これはOverture的な存在でさまざまな音楽や環境音、そしてAudience Choirなどが混ざり合いここから始まる広大な世界を提示してくれます。



M2. She Put Sunshine
先ほどのM1から続けて登場するこの曲は少しボリュームはダウンするチルなポップソング。最後の1分で誰にも気づかれないように一度半音上に転調し、最後にまるでDJがレコードの回転速度を下げて遅くしたかのような転調をするのが見事なアレンジとなっています。



M3. Little Blue
美しいバラード曲。静けさの中に時折聞こえる低音のエフェクトが美しく、ジェイコブのこういった音色のチョイスのセンスが光る作品です。



M4. WELLLL
少し、QueenやBeatlesを彷彿とさせるハードロックでコーラスが美しい曲。



M5. Cinnamom Crush
特徴的な音色で始まり終始それがバックグラウンドのように曲の後ろで鳴り続ける面白いサウンドの曲。インタビューでは最初の効果音はレンガがぶつかる音をインターネットで見つけてミックスに入れたといっていました。 



M6. Wherever I Go
Wurlitzer という特徴的な電気ピアノの音でスタートするR&B調の曲。ホーンのアレンジが際立つ作品の一つ。 



M7. Summer Rain
見事なバラード曲です。本来であれば禁じ手とも言えるようなハーモニーを重ねていルバ面もあるのですが、それが緊張を高め、この曲から観客を飽きさせない、アテンションを逃さない素晴らしいスパイスになっています。



M8. A Rock Somewhere
こちらはシタールをフィーチャーした珍しい曲。M7から流れが繋がっていて構成も美しいです。



M9. Mi Corazón
ラテンポップ調の曲。コーラスの間をシンセベースが縫ってベースライン構築してるのですが、こういったディテールも聞いていきたい名曲です。



M10. Witness Me
ゴスペルのような雰囲気を纏った曲。ラップのフィーチャリングもあります。



M11. Never Gonna Be Alone
ジョン・メイヤーをギターソロに迎えた作品。



M12. Bridge Water Troubled Water
唯一のカヴァー曲。至上のコーラスアレンジと、低音から高音まで駆使するジェイコブのコーラス隊に乗っかって、にJohn LedgenとTori Kellyという最高の歌声をフィーチャーしています。



M13. Over You
K-popやR&Bといった世界の音楽のニュアンスを取り入れた、新しい形のワールドミュージックです。



M14-15 Box of Stars Pt. 1 & 2
こちらもワールドミュージックのコラージュのような楽曲になっています。M1で使われた音なども登場するのでストーリー性を感じることもできます。ゴスペル、サンバ、モロッコ、キューバ、ロック、ミドルイースト、インド、レゲトン、EDM、クラシカル、ラップなどの音楽がコラージュされています。




M16. World O World
一曲を通してコーラスのみで構成されていて、古典の讃美歌のようで、しかしハーモニーのセンスは常識を覆すもので、それがスパイスとして人間の耳の栄養となることをあらためて証明してくれる曲です。クラシカル的な讃美歌っぽい曲なのかなと思いきや、ゴスペル風の歌い方も登場し、ジェイコブの独特の歌の世界へと聴衆を引き入れます。



それではまた次回。


文:曽根麻央 Mao Soné



Recommend Disc

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Title :『Djesse Vol. 4』
Artist : Jacob Collier
LABEL : DECCA
発売年 : 2024年





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【SONG LIST】

01.100,000 Voices
02.She Put Sunshine
03.Little Blue (feat. Brandi Carlile)
04.WELLLL
05.Cinnamon Crush (feat. Lindsey Lomis)
06.Wherever I Go (feat. Lawrence & Michael McDonald)
07.Summer Rain (feat. Maddison Cunningham & Chris Thile)
08.A Rock Somewhere (feat. Anoushka Shankar & Varijashree Venugopal)
09.Mi Corazón (feat. Camilo)
10.Witness Me (feat. Shawn Mendes, Stormzy & Kirk Franklin)
11.Never Gonna Be Alone (feat. Lizzy McAlpine & John Mayer)
12.Bridge Over Troubled Water (feat. John Legend & Tori Kelly)
13.Over You (feat. aespa & Chris Marin)
14.Box Of Stars Pt. 1 (feat. Kirk Franklin, CHIKA, D Smoke, Sho Madjozi, Yelle & Kanyi Mavi)
15.Box Of Stars Pt. 2 (feat. Metropole Orkest, Suzie Collier, Steve Vai & VOCES8)
16.World O World



曽根麻央『プレイズ・スタンダード』

71CCYhwTYzL._AC_SL1281_.jpg


トランペット/ピアノの"ジャズ二刀流"として話題の曽根麻央がソロピアノで紡ぐスタンダードソング集が全国発売決定!
往年のジャズの名曲をフレッシュな感性で解釈。
抒情性と気品に彩られた曽根のジャズ・ミュージシャン、ピアニストとしてのアティテュードが表現されている作品に仕上がった。


曽根麻央『プレイズ・スタンダード』


1.Reflections in D
2.Serenade
3.In Your Own Sweet Way
4.The Star-Crossed Lovers
5.Wave
6.Stella by Starlight
7.All The Things You Are
8.Luminous (Piano Solo Ver.)
9.I Loves You, Porgy
10.Lady Luck11.Danny Boy
12.Home (Piano Solo Ver.)
13.Some Other Time
14.Ask Me Now
15.The Days of Wine And Roses
16.What A Wonderful World

Mao Soné (piano, trumpet)


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「Monthly Disc Review」アーカイブ曽根麻央
2020.04『Motherland / Danilo Perez』2020.05『Color Of Soil /タイガー大越』2020.06『Passages / Tom Harrell 』2020.07『Inventions And Dimensions / Herbie Hancock』2020.08『Birth Of The Cool / Miles Davis』2020.09『Chet Baker Sings / Chet Baker』2020.10『SFJAZZ Collective2 / SFJAZZ Collective』2020.11『Money Jungle: Provocative In Blue / Terri Lyne Carrington』2020.12『Three Suites / Duke Ellington』2021.01『Into The Blue / Nicholas Payton』2021.02『Ben And "Sweets" / Ben Webster & "Sweets" Edison』2021.03『Relaxin' With The MilesDavis Quintet / The Miles Davis Quintet 』2021.04『Something More / Buster Williams』2021.05『Booker Little / Booker Little』2021.06『Charms Of The Night Sky / Dave Douglas』2021.07『Play The Blues / Ray Bryant Trio』2021.08『The Sidewinder / Lee Morgan』2021.09『Esta Plena / Miguel Zenón』2021.10『Hub-Tones / Freddie Hubbard』2021.11『Concert By The Sea / Erroll Garner』2021.12『D・N・A Live In Tokyo / 日野皓正』2022.1『The Tony Bennett Bill Evans Album / Tony Bennett / Bill Evans』2022.2『Quiet Kenny / Kenny Dorham』2022.3『Take Five / Dave Brubeck』・2022.4『Old And New Dreams / Old And New Dreams』2022.5『Ella Fitzgerald And Louis Armstrong / Ella And Louis』2022.6『Live from Miami / Nu Deco Ensemble & Aaron Parks』2022.7『Oscar Peterson Trio + One / Oscar Peterson Trio Clark Terry』2022.8『Ugetsu/ Art Blakey & The Jazz Messengers』2022.9『Sun Goddess / Ramsey Lewis』2022.10『Emergence / Roy Hargrove Big Band』2022.11『Speak No Evil / Wayne Shorter』2022.12『The Revival / Cory Henry』2023.1『Complete Communion / Don Cherry』2023.2『Your Mother Should Know: Brad Mehldau Plays The Beatles / Brad Mehldau』2023.3『Without a Net / Wayne Shorter』2023.4『LADY IN LOVE / 中本マリ』2023.5『Songs Of New York / Mel Torme』2023.6『Covers / James Blake』2023.7『Siembra / Willie Colón & Rubén Blades』2023.8『Undercover Live at the Village Vanguard / Kurt Rosenwinkel』2023.09『Toshiko Mariano Quartet / Toshiko Mariano Quartet』2023.10『MAINS / J3PO』2023.11『Knower Forever / Knower』2023.12『Ella Wishes You A Swinging Christmas / Ella Fitzgerald』2024.01『Silence / Charlie Haden with Chet Baker, Enrico Pieranunzi, Billy Higgins』2024.02『Rhapsody in Blue Reimagined / Lara Downes』

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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

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曽根麻央 Monthly Disc Review2024.02_Lara Downes : Rhapsody in Blue Reimagined:Monthly Disc Review

みなさんこんにちは、ジャズ二刀流ことマルチインストゥルメンタリストの曽根麻央です。

今日はみなさんに、ガーシュウィンの初演100年を記念して今年発表された『Rhapsody in Blue Reimagined』というデジタルリリースのアルバムを紹介します。
ジョージ・ガーシュウィンが当時のアメリカ社会を映し出す作品として完成させた「Rhapsody in Blue」。
1924年にポール・ホワイトマン・オーケストラと自身のピアノのためのジャズ協奏曲としてガーシュウィン自身が初演して以来、世界各国で愛されてきた名曲を、100年を記念して、2024年を生きるアーティストたちがどのようにReimagined=再解釈したのか見ていきたいと思います。
聴くだけでまるで世界旅行をしたかのような作品作りに驚くでしょう。

その前に宣伝です。
4月は福岡にソロで二ヶ所伺います!
ソロアルバム『プレイズ・スタンダード』のリリースライブです。
お近くの方はぜひきてください!詳しくはウェブサイトで!


4/12 (Fri) border -live music & drinks- <福岡>
Mao Sone "Plays Standards" CDリリースライブ in 福岡
Artist: Mao Sone (piano & trumpet)
open 18:30 / start 19:30
【料金】
全席自由 4,000円(税込)※当日は+500円(ご飲食代別※要2オーダー制)
【border 電話予約】
TEL: 092-406-8448 <16:00~22:00(月曜定休日)>


4/13 (Sat) 音楽館Twilight<北九州>
Mao Sone "Plays Standards" CDリリースライブ in 北九州
Artist: Mao Sone (piano & trumpet)
18:30 開場|19:00 開演
【チケット】
前売 ¥3,000 | 当日 ¥3,500
【お問い合わせ】
Office ミスマル 080-6467-1115 または 080-5256-6971
【会場】
〒803-0841 福岡県北九州市小倉北区清水2-10-15 2F
TEL: 093-562-2311 (マックスオーディオ小倉店2F)

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Title : 『Rhapsody in Blue Reimagined』
Artist : Lara Downes


ジョージ・ガーシュウィンは言わずと知れたアメリカを代表する偉大な作曲家で、ジャズスタンダードとなった数多くのミュージカル・ソングだけでなく、アメリカ・クラシックの代表的な作品をいくつも残した人です。すでにブロードウェイの人気のミュージカル作家であったガーシュウィンが、世界的な一流作曲家の仲間入りを果たすきっかけとなった作品がこの「Rhapsody in Blue」です。
ガーシュウィン自身が「巨大なるつぼ = アメリカを写す万華鏡のような音楽」と評したこの作品。
1924年に当時オーケストラを率いていて有名なバンドリーダーであったポール・ホワイトマンのジャズ・コンチェルトを書いて欲しいという依頼から始まりました。期限は5週間。ガーシュウィンはそれまでそのような音楽を書いたことがなく最初は困惑しましたが、ラッキーなことにインスピレーションがすぐ降りてきて、ガーシュウィンは2台ピアノのアレンジでこの作品を書きました。そしてファーディ・グローフェというホワイトマンの専属アレンジャーによってあの有名な、みんなが耳にするオーケストラバージョンに仕立て上げられました。


さて今回の『Rhapsody in Blue Reimagined』は、当時の人種や文化のるつぼ=アメリカを投影した「Rhapsody in Blue 」を、初演100年を記念し、改めて2024年を生きるピアニスト Lara Downesと、サックス奏者でありアレンジャーのEdmar Colonが再解釈をしたプロジェクトです。


Lara Downesはアメリカのアフリカ系女性クラシック・ピアニストとして活躍しているだけでなく、社会活動化として女性やアフリカ系の作品に焦点を当てる活動もしています。
今回の作品では流暢なクラシカルなテクニックや表現だけでなく、アフリカ的なリズム、ラテン的な情熱、またアジア的な表現も必要な作品ですので、彼女のさまざまな文化への理解の深さが表れています。インタビューを聞く限りではジャマイカ系の家族の出身だそうです。


Edmar Colonはプエルトリコ出身のジャズ・サックス奏者として世界的に活躍するだけでなく、エスペランザ・スパルディングのグラミー賞受賞作品『12 Little Spells』やテリ・リン・キャリントンのアルバム『Waiting Game』でもオーケストラのアレンジを務めたり、ボストン・ポップスや、DCのナショナル・オーケストラに委嘱作品を提供するなど、作曲家としても幅広く活躍しています。
私、曽根麻央とは実は、16歳の時からの親友で、いまだに月に30-40分は電話をする仲です。お互いの実家に何度も行ったことがあります。数多くのステージも一緒に演奏してきました。


現在私たちは、100年前とは形は違うけれども、さまざまな社会問題の中に生きています。『Rhapsody in Blue Reimagined』ではそんな現在の社会を投影するかのように再構築されました。


1. Rhapsody in Blue





有名なクラリネットのトリルが聴こえるかと思えば、ここではグリッサンドで駆け上がらずに、全く新しいイントロがこのReimaginedの世界に連れて行ってくれます。長3和音が短3度で降りてくる、ジョン・ウィリアムズのような、ウェイン・ショーターのような世界観で幕を開けます。
ガーシュウィンは「Rhapsody in Blue」ではドミナント7コードと短3度で動かすことで独特のブルージーな雰囲気を作り出していますが、7度の音がなくなるだけでとても斬新な響きになります。
>もう一度トリルがあらゆる楽器から聴こえてくると、ようやくみんなが知るイントロが、しかしオープニングの世界観を残すオリジナルのイントロが展開されます。

ピアノが登場してからしばらくは原曲の再現を行いますが、すぐに中東の雰囲気を予感させるモチーフも登場し始めます。
有名なピアノのフレーズでは同時にボンゴが登場し、ラテンアメリカの音楽が少しずつ顔を見せます。その後ゆったりとしたソンのリズムが現れ、ダニーロ・ペレスやダヴィ・サンチェスのような現代のラテンジャズのセクションが登場します。その上でウェイン・ショーターのオーケストラ作品のような細やかなフレーズが登場し始めます。と思うとリズムは急にさっていき、徐々に次の世界へと向かいます。

ピアノの原曲パートをインタルードとしてを挟み、そのあとは中東の世界観へ一気に観客を連れていきます。

そのあともう一度舞台はラテンジャズに戻ります。繰り返されるベースラインとグルーヴが特徴的です。マイケル・ブレッカーの『Wild Angle』を思わせる曲想が聴こえてきます。

その後、アレンジャーであるEdmar Colonのソプラノ・サックスソロに移ります。
彼のソロはウェイン・ショーター的でありながら、音色やフレーズは私とColonの共通の師である、デイヴ・リーブマンを思わせてくれます。彼のソロで一旦曲は第一クライマックスを迎えます。
と同時にキューバのリズムLulabancheが演奏されます。その上で西洋的なマーチのようなリズムが重なり原曲のモチーフが演奏されます。そのモチーフはさらに複雑なハーモニーへ誘導します。原曲の減5度のピアノフレーズも聞こえてきます。原曲のピアノ譜をもとに展開させた見事なアレンジです。さらに原曲にもある短3度の音形も入れつつ音楽を展開します。

そしてまた一つの区切りがくると原曲のピアノソロに入ります。
このト調のピアノソロの部分は、原曲の中でもピアノの聴かせどころなので、そのままというのは原曲ファンとしてもとても嬉しいですね。そのパートもところどころ中東の鼓笛隊が顔を出します。

そしてピアノパートを終えると通常であれば有名なホ調のバラードのテーマですが、なんと中国の1弦ヴァイオリンと琴によって奏でられる大胆なアレンジになっています。
そのあとに続く原曲オーケストラによる、ホ調のメロディーの提示部にも中国のサウンドがプラスされることで、この曲の新たな魅力と世界観を追加してくれています。

その後の原曲中最も難関と言われるピアノのリズミカルなパートは、Edmarの故郷であるプエルトリコ南部のリズムPlenaになっています。そのままPlenaのリズムの上でPlenaのリズムを奏でながら登場するEdmarのソプラノサックスソロがあります。そのモチーフをフルートが引き継ぎ音楽を原曲に引き戻します。そして音楽は一気に最終局面に向かいます。
原曲に忠実にありつつ独自のハーモニーとPlenaやプエルトリコのもう一つのリズム、Bombaのリズムが加わります。
そして、フィナーレでは原曲と、このバージョンのイントロをの再現を見事に合体させ、クライマックスを迎えます。


2. Study in Blue

これはショパンの夜想曲とガーシュウィンのラプソディーを掛け合わせてアレンジしなおしたものでLara DownesとEdmar Colonのデュオとなっています。
ショパンとガーシュウィンが混じり合う繋ぎのぶぶんはまるでモリコーネの映画音楽のようでとても美しいのでぜひ聴いてみてください。


それではまた次回。


文:曽根麻央 Mao Soné



Recommend Disc

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Title :『Rhapsody in Blue Reimagined』
Artist : Lara Downes
LABEL : Pentatone
発売年 : 2024年



【SONG LIST】

01.Rhapsody in Blue (arr. Edmar Colón)
02.Study in Blue (arr. Edmar Colón)
03.Commentary Track



曽根麻央『プレイズ・スタンダード』

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トランペット/ピアノの"ジャズ二刀流"として話題の曽根麻央がソロピアノで紡ぐスタンダードソング集が全国発売決定!
往年のジャズの名曲をフレッシュな感性で解釈。
抒情性と気品に彩られた曽根のジャズ・ミュージシャン、ピアニストとしてのアティテュードが表現されている作品に仕上がった。


曽根麻央『プレイズ・スタンダード』


1.Reflections in D
2.Serenade
3.In Your Own Sweet Way
4.The Star-Crossed Lovers
5.Wave
6.Stella by Starlight
7.All The Things You Are
8.Luminous (Piano Solo Ver.)
9.I Loves You, Porgy
10.Lady Luck11.Danny Boy
12.Home (Piano Solo Ver.)
13.Some Other Time
14.Ask Me Now
15.The Days of Wine And Roses
16.What A Wonderful World

Mao Soné (piano, trumpet)


曽根麻央のその他情報はウェブサイトへ

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「Monthly Disc Review」アーカイブ曽根麻央
2020.04『Motherland / Danilo Perez』2020.05『Color Of Soil /タイガー大越』2020.06『Passages / Tom Harrell 』2020.07『Inventions And Dimensions / Herbie Hancock』2020.08『Birth Of The Cool / Miles Davis』2020.09『Chet Baker Sings / Chet Baker』2020.10『SFJAZZ Collective2 / SFJAZZ Collective』2020.11『Money Jungle: Provocative In Blue / Terri Lyne Carrington』2020.12『Three Suites / Duke Ellington』2021.01『Into The Blue / Nicholas Payton』2021.02『Ben And "Sweets" / Ben Webster & "Sweets" Edison』2021.03『Relaxin' With The MilesDavis Quintet / The Miles Davis Quintet 』2021.04『Something More / Buster Williams』2021.05『Booker Little / Booker Little』2021.06『Charms Of The Night Sky / Dave Douglas』2021.07『Play The Blues / Ray Bryant Trio』2021.08『The Sidewinder / Lee Morgan』2021.09『Esta Plena / Miguel Zenón』2021.10『Hub-Tones / Freddie Hubbard』2021.11『Concert By The Sea / Erroll Garner』2021.12『D・N・A Live In Tokyo / 日野皓正』2022.1『The Tony Bennett Bill Evans Album / Tony Bennett / Bill Evans』2022.2『Quiet Kenny / Kenny Dorham』2022.3『Take Five / Dave Brubeck』・2022.4『Old And New Dreams / Old And New Dreams』2022.5『Ella Fitzgerald And Louis Armstrong / Ella And Louis』2022.6『Live from Miami / Nu Deco Ensemble & Aaron Parks』2022.7『Oscar Peterson Trio + One / Oscar Peterson Trio Clark Terry』2022.8『Ugetsu/ Art Blakey & The Jazz Messengers』2022.9『Sun Goddess / Ramsey Lewis』2022.10『Emergence / Roy Hargrove Big Band』2022.11『Speak No Evil / Wayne Shorter』2022.12『The Revival / Cory Henry』2023.1『Complete Communion / Don Cherry』2023.2『Your Mother Should Know: Brad Mehldau Plays The Beatles / Brad Mehldau』2023.3『Without a Net / Wayne Shorter』2023.4『LADY IN LOVE / 中本マリ』2023.5『Songs Of New York / Mel Torme』2023.6『Covers / James Blake』2023.7『Siembra / Willie Colón & Rubén Blades』2023.8『Undercover Live at the Village Vanguard / Kurt Rosenwinkel』2023.09『Toshiko Mariano Quartet / Toshiko Mariano Quartet』2023.10『MAINS / J3PO』2023.11『Knower Forever / Knower』2023.12『Ella Wishes You A Swinging Christmas / Ella Fitzgerald』2024.01『Silence / Charlie Haden with Chet Baker, Enrico Pieranunzi, Billy Higgins』

Reviewer information

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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

曽根麻央Official Site

明けましておめでとうございます。マルチインストゥルメンタリストの曽根麻央です。

来月2/3と2/4に、恒例の「Mao Sone Plays Latin Jazz」公演が恵比寿Blue Note Placeであります。ぜひお越しください!
また4/12と4/13には福岡でソロ公演もあります。福岡の読者の皆様、お待ちしております!  
詳しくはウェブサイトのスケジュールを見てください。


さて、今日はCharlie Hadenの1989年のアルバム『Silence』をご紹介します。


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Title : 『Silence』
Artist : Charlie Haden with Chet Baker, Enrico Pieranunzi, Billy Higgins



レコーディングは1987年で、このアルバムにおいてゲスト的存在のChet Bakerが亡くなる6ヶ月前の演奏が収録されている、ということでも有名です。


メンバーはベーシストCharlie Hadenがリーダーとして、またはバンドのサウンドの中心的存在として素晴らしい演奏を披露しています。

イタリアのピアニストEnrico Pieranuziの限定的な和音と美しい旋律、タッチでも印象的なアルバムであります。

名ドラマーBilly Higginsも参加しています。私は彼のことを名盤製造人間だと思っているのですが、今回も的確で非常に綺麗なシンバル・レガートが全体を通して聴くことができます。

そしてChet Baker。私の大好きなトランペッターです。即興演奏ではまるで元々書かれているかのように、美しくもシンプルな旋律を組み立てる。そんな彼がゲスト的な立ち位置でアルバム全体に参加しています。

Hadenのベースはピッチが正確なのは言うまでもなく、音色に芯があり、この上ない美しい音色を奏でることができたジャズ・レジェンドの一人です。彼オンリーのユニークな音色だと思います。
Ornette Colemanとのフリージャズ演奏が最も有名かもしれません。Ornetteの一見ルールに縛られないように感じるフリージャズですが、実はその中には数多くの制約や、ユニークな作曲活動があってこその美があります。その根底を支えていたのがCharlie Hadenです。そのバンドでもバッテリーを組んでいたBilly Higginsとのコンビネーションがこのアルバムでも聴けるのは嬉しいですね。

またHadenはPat MethenyやMichael Breckerなどのフュージョン・サウンドとも相性が良く、数多くの名盤を残しています。
個人的にはBreckerのアルバム『Nearness of You』でもHadenの素晴らしさがキャプチャーされていると感じます。

この『Silence』はHaden1人が音色が美しい奏者というわけでではなく、参加している4人とも、楽器の音色をシンプルに美しく奏でることに長けたミュージシャンであると思います。
特にHigginsのシンバルワークは素晴らしく、彼の演奏動画を見るとその正確さと細やかなスティックの運びを見ることができます。
演奏内容は全然違うのですが、Charles Lloydととのデュオ動画は特に彼の特色を感じ取ることができるので、是非、番外編として見ていただけると嬉しいです。




さて、この『Silence』では最初の3曲(おそらくアナログのA面)が特に素晴らしく、各ミュージシャンの特色をよく捉えて、バラエティーに富んだ選曲。普段の演奏では聴けない参加ミュージシャンの一面を見ることができます。

1曲目の「Visa」はCharlie Pakerのビバップ曲。
しかしこのメンバーで演奏するとまるで違う、ウエスト・コースト・ジャズのようなサウンドで表現されています。
Chet Bakerのソロ中にはピアノが和音を伴奏してない時間が長く、まるでバリトンサックスのGerry MulliganとChet Bakerのカルテットでウエストコーストサウンドを築き上げた時代の演奏のように聞こえます。それに触発されたEnrico Pieranuziのソロ演奏も和音が少なくシンプルな中低音を使った旋律で表現されています。




2曲目の「Silent」はCharlie Hadenの有名なオリジナル・バラードです。この音色の美しい4人が奏でるのに相応しい曲と言えると思います。




3曲目の「Echi」はピアニストのEnrico Pieranuziのオリジナル曲。
このアルバムでは珍しくコンテンポラリーな作品になっています。ベースとピアノの左手で旋律のユニゾンがあったり、あまり古典的なジャズには見られない和音や構成です。
作品としてはこの同時期か少し後のTom Harrellのような雰囲気に近いかもしれません。こういったコンテンポラリーな作品をChetが吹くのは珍しい気がします。
Higginsのコンポジションの解釈も素晴らしくドラムセットで上手くオーケストレーションしています。スネアのサウンドもとても美しいです。




続く3曲はスタンダードで構成されており、「My Funny Valentine」ではChetの歌も収録されています。
「Conception」はGeorge Shearing の書いたいわゆるジャズの難曲の一つですが、このメンバーにかかると難しさは感じられずただひたすら美しく心地よい演奏になっています。




それではまた次回。


文:曽根麻央 Mao Soné



Recommend Disc

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Title :『Silence』
Artist : Charlie Haden with Chet Baker, Enrico Pieranunzi, Billy Higgins
LABEL : Soul Note
発売年 : 1989年



アマゾン詳細ページへ

【SONG LIST】

01.Visa
02.Silence
03.Echi
04.My Funny Valentine
05.'Round About Midnight
06.Conception



曽根麻央『プレイズ・スタンダード』

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トランペット/ピアノの"ジャズ二刀流"として話題の曽根麻央がソロピアノで紡ぐスタンダードソング集が全国発売決定!
往年のジャズの名曲をフレッシュな感性で解釈。
抒情性と気品に彩られた曽根のジャズ・ミュージシャン、ピアニストとしてのアティテュードが表現されている作品に仕上がった。


曽根麻央『プレイズ・スタンダード』


1.Reflections in D
2.Serenade
3.In Your Own Sweet Way
4.The Star-Crossed Lovers
5.Wave
6.Stella by Starlight
7.All The Things You Are
8.Luminous (Piano Solo Ver.)
9.I Loves You, Porgy
10.Lady Luck11.Danny Boy
12.Home (Piano Solo Ver.)
13.Some Other Time
14.Ask Me Now
15.The Days of Wine And Roses
16.What A Wonderful World

Mao Soné (piano, trumpet)


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「Monthly Disc Review」アーカイブ曽根麻央
2020.04『Motherland / Danilo Perez』2020.05『Color Of Soil /タイガー大越』2020.06『Passages / Tom Harrell 』2020.07『Inventions And Dimensions / Herbie Hancock』2020.08『Birth Of The Cool / Miles Davis』2020.09『Chet Baker Sings / Chet Baker』2020.10『SFJAZZ Collective2 / SFJAZZ Collective』2020.11『Money Jungle: Provocative In Blue / Terri Lyne Carrington』2020.12『Three Suites / Duke Ellington』2021.01『Into The Blue / Nicholas Payton』2021.02『Ben And "Sweets" / Ben Webster & "Sweets" Edison』2021.03『Relaxin' With The MilesDavis Quintet / The Miles Davis Quintet 』2021.04『Something More / Buster Williams』2021.05『Booker Little / Booker Little』2021.06『Charms Of The Night Sky / Dave Douglas』2021.07『Play The Blues / Ray Bryant Trio』2021.08『The Sidewinder / Lee Morgan』2021.09『Esta Plena / Miguel Zenón』2021.10『Hub-Tones / Freddie Hubbard』2021.11『Concert By The Sea / Erroll Garner』2021.12『D・N・A Live In Tokyo / 日野皓正』2022.1『The Tony Bennett Bill Evans Album / Tony Bennett / Bill Evans』2022.2『Quiet Kenny / Kenny Dorham』2022.3『Take Five / Dave Brubeck』・2022.4『Old And New Dreams / Old And New Dreams』2022.5『Ella Fitzgerald And Louis Armstrong / Ella And Louis』2022.6『Live from Miami / Nu Deco Ensemble & Aaron Parks』2022.7『Oscar Peterson Trio + One / Oscar Peterson Trio Clark Terry』2022.8『Ugetsu/ Art Blakey & The Jazz Messengers』2022.9『Sun Goddess / Ramsey Lewis』2022.10『Emergence / Roy Hargrove Big Band』2022.11『Speak No Evil / Wayne Shorter』2022.12『The Revival / Cory Henry』2023.1『Complete Communion / Don Cherry』2023.2『Your Mother Should Know: Brad Mehldau Plays The Beatles / Brad Mehldau』2023.3『Without a Net / Wayne Shorter』2023.4『LADY IN LOVE / 中本マリ』2023.5『Songs Of New York / Mel Torme』2023.6『Covers / James Blake』2023.7『Siembra / Willie Colón & Rubén Blades』2023.8『Undercover Live at the Village Vanguard / Kurt Rosenwinkel』2023.09『Toshiko Mariano Quartet / Toshiko Mariano Quartet』2023.10『MAINS / J3PO』2023.11『Knower Forever / Knower』2023.12『Ella Wishes You A Swinging Christmas / Ella Fitzgerald』

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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

曽根麻央Official Site

みなさんこんにちは、ジャズ二刀流ことマルチインストゥルメンタリストの曽根麻央です。
今日、私はBlue Note Beijingへのソロ出演のため北京へ来ています。こちらは氷点下続きでとても寒いです。
こんなに寒いですが、心温まるホリデーシーズンにぴったりなジャズアルバムがあります。今日はそのアルバムを皆さんにご紹介しようと思います。


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Title : 『Ella Wishes You A Swinging Christmas』
Artist : Ella Fitzgerald


『Ella Wishes You a Swinging Christmas』は、ジャズの歴史に永遠にその名を刻むエラ・フィッツジェラルドと名プロデューサー、ノーマン・グランツとのコンビが生んだ名作です。
アレンジはFrank De Volという作曲家・アレンジャー(俳優という肩書きもある方)が書いていています。
彼はナット・キング・コールやトニー・ベネットと行ったアメリカを代表するシンガーたちのアレンジを担当していたことで有名です。「Nature Boy」のアレンジが彼の代表的なアレンジです。

 
このアルバムでメロディーの歌い回しとアレンジが密接に関わっていますのでアレンジャーとエラで念密な打ち合わせと練習があったことが予想されます。

最初の2曲「Jingle Bell」や『Santa Claus Is Coming To Town」は子供から大人まで誰でも知っているクリスマスソングなので、自分の知っているメロディーと、ジャズシンガーであるエラが歌う歌い回しの違いに注目しても面白いかもしれません。
そしてその変更されたメロディーが伴奏のアレンジにも大きく関わっていて、使い回されたホリデーソングを新鮮なものにしてくれます。





エラの歯切れよいリズムと、ライトにシャウトするかの様な高音が心地よく本当に楽しい気分にさせてくれます。そしてビブラートが本当に美しい。
おそらくこの時代ですとバンドと一緒に一発録音でしょうし、シンガーとして技量がとにかく必要だった時代です。

「The Christmas Song」などはそもそも跳躍が激しので歌唱が難しい曲ですが、そう言った難しさは一切聴衆に感じさせずただただ美しく完璧、そしてその中に彼女の人生があり抑揚がしっかりとあります。





エラのピッチ感は全体的にややフラット(やや低め)なのですが、それが本当に気持ち良いのです。人間味があるというか、暖かさがあるというか、ナチュラルというか。全てを完璧にしてしまう現代のレコーディングではなかなか聴くことができない持ち味ですね。
特に「Sleigh Ride」ではエラの絶妙に低いピッチ感が心地よく味わえるトラックだと思います。





アレンジの幅は広く、ベイシー風とホリデーを思わせるコーラスがかけ合わさった様なアレンジから、「Good Morning Blues」ではブルース風のアレンジもあったりします。
「Have Yourself A Merry Little Christmas」はクリスマスの名バラード曲ですがここでは心地よいゆったりとしたスウィングで演奏されています。ジョージ・シアリング風のアレンジがとても良いです。





「What Are You Doing New Year's Eve?」はピアノからのデュオで始まるバラード曲です。
現代のレコーディングと比べるとピアノが小さいのかなと思うのですが、小さい音量でもはきり聴こえてくるので絶妙なバランス感覚だなと驚きました。
長時間聴いても耳が疲れない的音量とバランスになっているアルバムです。





録音としては全体的にとてもよいバランスで収められていると思いました。
特にエラがきちんとフロントでフィーチャーされるのに十分な音量でいるためにオケやコーラスやドラムが若干小さめにミックスされていますが、それであっても物足らなさはなく、それどころかエレガントに聴こえます。車や部屋で流して聴いていて最高に心地よいミックスです。
執筆するために本気で集中リスニングをするのにオーディオスピーカーで聴くと、ベースとドラムのパンが右側に極端によっており、この時代のステレオ・ミックスにありがちではありますが、私はモノラル・ボタンをこちらのプレイヤーで押してモノラル再生で聴く方が好みでした。

ただ先程も言った通り、もっと広い空間や部屋で流して聴くのには最高の音でしたので、音楽の用途とミックスはとても親密な関係にあって興味深いなと改めて思いました。


『Ella Wishes You a Swinging Christmas』この冬是非皆さんに聴いていただきたい一枚です。
SpotifyやApple Musicにもありますので、慌ただしい年の瀬ではありますが、アルバムを聴く50分、ひとときの息抜きをこの時期に暖かい部屋の中で得られるのはとても幸せなことではないかなと思います。


それでは今年も沢山CD Reviewを読んでいただきありがとうございました。また来年もよろしくお願いいたします。

良いお年をお迎えください。



文:曽根麻央 Mao Soné



Recommend Disc

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Title :『Ella Wishes You A Swinging Christmas』
Artist : Ella Fitzgerald
LABEL : Verve Records
発売年 : 1960年



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【SONG LIST】

01.Jingle Bells
02.Santa Claus Is Coming To Town
03.Have Yourself A Merry Little Christmas
04.What Are You Doing New Year's Eve?
05.Sleigh Ride
06.The Christmas Song
07.Good Morning Blues
08.Let It Snow, Let It Snow, Let It Snow
09.Winter Wonderland
10.Rudolph, The Red-Nosed Reindeer
11.Frosty The Snow Man
12.White Christmas



曽根麻央『プレイズ・スタンダード』

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トランペット/ピアノの"ジャズ二刀流"として話題の曽根麻央がソロピアノで紡ぐスタンダードソング集が全国発売決定!
往年のジャズの名曲をフレッシュな感性で解釈。
抒情性と気品に彩られた曽根のジャズ・ミュージシャン、ピアニストとしてのアティテュードが表現されている作品に仕上がった。


曽根麻央『プレイズ・スタンダード』


1.Reflections in D
2.Serenade
3.In Your Own Sweet Way
4.The Star-Crossed Lovers
5.Wave
6.Stella by Starlight
7.All The Things You Are
8.Luminous (Piano Solo Ver.)
9.I Loves You, Porgy
10.Lady Luck11.Danny Boy
12.Home (Piano Solo Ver.)
13.Some Other Time
14.Ask Me Now
15.The Days of Wine And Roses
16.What A Wonderful World

Mao Soné (piano, trumpet)


曽根麻央のその他情報はウェブサイトへ

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「Monthly Disc Review」アーカイブ曽根麻央
2020.04『Motherland / Danilo Perez』2020.05『Color Of Soil /タイガー大越』2020.06『Passages / Tom Harrell 』2020.07『Inventions And Dimensions / Herbie Hancock』2020.08『Birth Of The Cool / Miles Davis』2020.09『Chet Baker Sings / Chet Baker』2020.10『SFJAZZ Collective2 / SFJAZZ Collective』2020.11『Money Jungle: Provocative In Blue / Terri Lyne Carrington』2020.12『Three Suites / Duke Ellington』2021.01『Into The Blue / Nicholas Payton』2021.02『Ben And "Sweets" / Ben Webster & "Sweets" Edison』2021.03『Relaxin' With The MilesDavis Quintet / The Miles Davis Quintet 』2021.04『Something More / Buster Williams』2021.05『Booker Little / Booker Little』2021.06『Charms Of The Night Sky / Dave Douglas』2021.07『Play The Blues / Ray Bryant Trio』2021.08『The Sidewinder / Lee Morgan』2021.09『Esta Plena / Miguel Zenón』2021.10『Hub-Tones / Freddie Hubbard』2021.11『Concert By The Sea / Erroll Garner』2021.12『D・N・A Live In Tokyo / 日野皓正』2022.1『The Tony Bennett Bill Evans Album / Tony Bennett / Bill Evans』2022.2『Quiet Kenny / Kenny Dorham』2022.3『Take Five / Dave Brubeck』・2022.4『Old And New Dreams / Old And New Dreams』2022.5『Ella Fitzgerald And Louis Armstrong / Ella And Louis』2022.6『Live from Miami / Nu Deco Ensemble & Aaron Parks』2022.7『Oscar Peterson Trio + One / Oscar Peterson Trio Clark Terry』2022.8『Ugetsu/ Art Blakey & The Jazz Messengers』2022.9『Sun Goddess / Ramsey Lewis』2022.10『Emergence / Roy Hargrove Big Band』2022.11『Speak No Evil / Wayne Shorter』2022.12『The Revival / Cory Henry』2023.1『Complete Communion / Don Cherry』2023.2『Your Mother Should Know: Brad Mehldau Plays The Beatles / Brad Mehldau』2023.3『Without a Net / Wayne Shorter』2023.4『LADY IN LOVE / 中本マリ』2023.5『Songs Of New York / Mel Torme』2023.6『Covers / James Blake』2023.7『Siembra / Willie Colón & Rubén Blades』2023.8『Undercover Live at the Village Vanguard / Kurt Rosenwinkel』2023.09『Toshiko Mariano Quartet / Toshiko Mariano Quartet』2023.10『MAINS / J3PO』2023.11『Knower Forever / Knower』

Reviewer information

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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

曽根麻央Official Site

曽根麻央 Monthly Disc Review2023.11_Knower : Knower Forever :Monthly Disc Review

みなさんこんにちは、マルチインストゥルメンタリストの曽根麻央です。

今、僕がプロデュースしたアルバムCity Pop Rendez-Vousのツアー中で、昨日岡山公園が無事終了し、本日15日は名古屋Mr. Kenny's、そして明日16日は浜松Hermit Dolphinで公演があります。
詳しくは僕のウェブサイトをチェックしていただきたいのですが、このCity Pop Rendez-Vousをまだ聴いていない方も是非、アルバムを聴いて欲しいです!


曽根麻央スケジュール
https://maosone.com/gigs.jp


CITY POP RENDEZ-VOUS
https://amzn.asia/d/9LyV113



さて、今日は僕の大好きなjazz/popユニット、Knowerの今年リリースされたアルバム
『Knower Forever』を紹介したいなと思います。


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Title : 『Knower Forever』
Artist : Knower



Knowerはドラマー、ルイス・コールとシンガー、ジェネヴィーヴ・アルターディの2人からなるLAのユニットで、2010年ごろからYouTubeに音楽をアップロードし始め、すぐにその知名度をあげました。
ちょうど2010年からアメリカに留学していた私もその頃から彼らの音楽に夢中でした。
特にこのトラックは音大生の間でも話題になりました。





今のサウンドに比べるとかなり打ち込み色が強くクリーンなサウンドかなと思います。


それに比べ、『Knower Forever』を含む近年のサウンドは、あえて宅レコ感とドラムのモノラルレコード感が強くなり、昔のゲームボーイのビットシンセの様な音色など、チープな音を最大限に効果的に使用することにより、Knowerサウンドを確率したものになっている気がします。
それがホームビデオの様な粗めのMV映像と上手く一体化しており、素晴らしい作品になっています。


レコーディング風景も実はアップされており、基本自宅で同時録音でした。
こちらはM2の「I'm The President」の映像ですが、このレコーディングスタイルが今のKnowerサウンドを作り上げてるといってよいでしょう。





1. Knower Forever
オーケストラオンリーの映画音楽の様なルイス・コールの作品。
シンプルなテーマに半音階の伴奏で始まり、半音階がテーマになったりしているうちに徐々に混沌となり、それがピークに達し曲が終わります。


2. I'm The President
Knowerのユーモラスな面とタイトなグルーヴが見事に合わさった楽曲。
このアルバムのリードトラックに当たる曲かと思います。
Paul Cornishの見事なアップライトピアノソロが収録されています。
このソロはトランスクライブがYouTubeに上がっていました。




3. The Abyss
ベースにMononeon、キーボードにRai Thistlethwayteを迎えた最高にファンキーな楽曲。
途中ルイス・コールのドラムソロと、Rai Thistlethwayteのキーボードソロがフィーチャーされています。


4. Real Nice Moment
アナログシンセの様な不安定なピッチの音色で幕を開ける、ポップな作品。
Paul Cornishのジャズ的なボイシングを思いっきり使い、レイドバックして少し気だるさもある雰囲気のピアノソロが素晴らしです。


5. It's All Nothing Until It's Everything
激しいビートが初めから展開されます。
Rai Thistlethwayteのソロが途中フィーチャーされていて、このアルバムのクライマックスの一つになっています。
このソロはトランスクライブがYouTubeに上がっていました。
素晴らしくタイトでアイディアも豊富です。僕も来週のお休みで練習しようと思います(笑)。




6. Nightmare
シンセブラスのサウンドと、Mononeonが作り出すグルーヴが特徴的なトラック。
こちらも途中のclavi solo(恐らくJacob Mann?)が素晴らしいです。


7. Same Smile, Different Face
ジェネヴィーヴ・アルターディの素晴らしい歌唱が聞けるトラックで、このアルバム随一の美しいpopバラードとなっています。
ルイス・コールの作曲で本人はピアノで参加しています。


8. Do Hot Girls Like Chords
このアルバム一のロックなトラックで、Adam Ratnerのギターソロがフィーチャーされています。


9. Ride That Dolphin
こちらもポップな作品の一つ。途中2:12過ぎからコーラスとキーボードのアレンジが素晴らしく心つかまれます。




10. It Will Get Real
このアルバムに僕が出会うきっかけを作ってくれた曲で、素晴らしいトラックです。
J-WAVEで偶然流れていて、これはなんだ!となりました。
こちらもRai Thistlethwayteのキーボードソロがフィーチャーされていて、シンセの波形が少しずつソロ中に変化していて、音色へのこだわりも素晴らしいソロになっています。Sam Gendelのサックスもフィーチャーされています。
彼のサックスソロは金管と言うより、リードシンセなのかなと一瞬耳を疑うほど、Knowerとの親和性が高いサックス奏者です。


11. Crash The Car
美しいバラード曲。こちらもジェネヴィーヴ・アルターディの素晴らしい歌唱が聴けます。
名ジャズ・サックス奏者David Binneyがフィーチャーされています。



それではまた次回。


文:曽根麻央 Mao Soné



Recommend Disc

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Title :『Knower Forever』
Artist : Knower
LABEL : BEAT RECORDS
発売年 : 2023年



アマゾン詳細ページへ

【SONG LIST】

01.Knower Forever
02.I'm The President
03.The Abyss
04.Real Nice Moment
05.It's All Nothing Until It's Everything
06.Nightmare
07.Same Smile, Different Face
08.Do Hot Girls Like Chords?
09.Ride That Dolphin
10.It Will Get Real
11.Crash The Car
12.Bonus Track



曽根麻央『プレイズ・スタンダード』

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トランペット/ピアノの"ジャズ二刀流"として話題の曽根麻央がソロピアノで紡ぐスタンダードソング集が全国発売決定!
往年のジャズの名曲をフレッシュな感性で解釈。
抒情性と気品に彩られた曽根のジャズ・ミュージシャン、ピアニストとしてのアティテュードが表現されている作品に仕上がった。


曽根麻央『プレイズ・スタンダード』


1.Reflections in D
2.Serenade
3.In Your Own Sweet Way
4.The Star-Crossed Lovers
5.Wave
6.Stella by Starlight
7.All The Things You Are
8.Luminous (Piano Solo Ver.)
9.I Loves You, Porgy
10.Lady Luck11.Danny Boy
12.Home (Piano Solo Ver.)
13.Some Other Time
14.Ask Me Now
15.The Days of Wine And Roses
16.What A Wonderful World

Mao Soné (piano, trumpet)


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「Monthly Disc Review」アーカイブ曽根麻央
2020.04『Motherland / Danilo Perez』2020.05『Color Of Soil /タイガー大越』2020.06『Passages / Tom Harrell 』2020.07『Inventions And Dimensions / Herbie Hancock』2020.08『Birth Of The Cool / Miles Davis』2020.09『Chet Baker Sings / Chet Baker』2020.10『SFJAZZ Collective2 / SFJAZZ Collective』2020.11『Money Jungle: Provocative In Blue / Terri Lyne Carrington』2020.12『Three Suites / Duke Ellington』2021.01『Into The Blue / Nicholas Payton』2021.02『Ben And "Sweets" / Ben Webster & "Sweets" Edison』2021.03『Relaxin' With The MilesDavis Quintet / The Miles Davis Quintet 』2021.04『Something More / Buster Williams』2021.05『Booker Little / Booker Little』2021.06『Charms Of The Night Sky / Dave Douglas』2021.07『Play The Blues / Ray Bryant Trio』2021.08『The Sidewinder / Lee Morgan』2021.09『Esta Plena / Miguel Zenón』2021.10『Hub-Tones / Freddie Hubbard』2021.11『Concert By The Sea / Erroll Garner』2021.12『D・N・A Live In Tokyo / 日野皓正』2022.1『The Tony Bennett Bill Evans Album / Tony Bennett / Bill Evans』2022.2『Quiet Kenny / Kenny Dorham』2022.3『Take Five / Dave Brubeck』・2022.4『Old And New Dreams / Old And New Dreams』2022.5『Ella Fitzgerald And Louis Armstrong / Ella And Louis』2022.6『Live from Miami / Nu Deco Ensemble & Aaron Parks』2022.7『Oscar Peterson Trio + One / Oscar Peterson Trio Clark Terry』2022.8『Ugetsu/ Art Blakey & The Jazz Messengers』2022.9『Sun Goddess / Ramsey Lewis』2022.10『Emergence / Roy Hargrove Big Band』2022.11『Speak No Evil / Wayne Shorter』2022.12『The Revival / Cory Henry』2023.1『Complete Communion / Don Cherry』2023.2『Your Mother Should Know: Brad Mehldau Plays The Beatles / Brad Mehldau』2023.3『Without a Net / Wayne Shorter』2023.4『LADY IN LOVE / 中本マリ』2023.5『Songs Of New York / Mel Torme』2023.6『Covers / James Blake』2023.7『Siembra / Willie Colón & Rubén Blades』2023.8『Undercover Live at the Village Vanguard / Kurt Rosenwinkel』2023.09『Toshiko Mariano Quartet / Toshiko Mariano Quartet』2023.10『MAINS / J3PO』

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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

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曽根麻央 Monthly Disc Review2023.10_J3PO : MAINS :Monthly Disc Review

こんにちは。マルチインストゥルメンタリストことジャズ二刀流の曽根麻央です。みなさんいかがお過ごしでしょうか? 
私は先月9月に初のアコースティック・ソロ・アルバム『Plays Standards』をリリースさせていただいたばかりです。
これからリリースライブの海外公演も控えていますし、サポートのお仕事でツアーもあり、年内はスケジュールがみっちり組まれています。


Mao Sone Plays Standards Release Live


10/29 (Sun) 水戸(茨城) Girl Talk
Open 16:00, Start 17:00 (2 sets)
https://www.girltalk.co.jp/index.shtml


12/10(Sun) 柏(千葉) Studio WUU
Open 17:30, Start 18:00
https://www.wuu.co.jp/


さて、アコースティック・ピアノを中心に置いたアルバムをリリースしたばかりなのですが、実は今年、Sequentialというメーカーのフラグシップとも言えるアナログ・シンセサイザー「Prophet 6」を年始に手に入れることができました。
私の音楽人生では初の本格的アナログ・シンセで、レコーディングやライヴでの実用化に向けて毎日挑戦中なのです。
最初は一回のレコーディングに必要で購入しようと決意したのですが、その無限の可能性に気づき研究の日々を重ねています。


そんな中、Prophet 6のあらゆる使い方を模索するのにネットサーフィンをしていたところ出会ったのが、今回紹介する「J3PO」ことJulian Waterfall Pollackというアーティストです。

Mains.jpg

Title : 『MAINS』
Artist : J3PO

彼はYouTubeで、演奏動画だけでなく、シンセサイザーの使い方やトラックの作り方までも、とても素晴らしいコンテンツを配信しています。


最初は私も勉強材料として彼の動画を見続けていたのですが、徐々にJ3POが実はただのシンセマニアではなく、素晴らしい鍵盤奏者だったことに気づきました。
この人がどんな音楽を作るのか気になり、今回のアルバムに出会いました。


J3POことJulian Waterfall Pollack。
本名名義ではアコースティック・ピアノを中心にジャズ・アルバムを出していて、J3PO名義ではシンセサイザーを中心にエレクトロ・ミュージックを製作しているようです。


アコースティック・ピアニストとしての作品を聴くと、ブラッド・メルドーやケニー・ワーナー、アーロン・パークスといったアーティストの影響を色濃く感じ取れます。
キーボーディスト/ピアニストとして、そもそも、マーカス・ミラーやクリス・ボッティーといった世界的アーティストのツアーに参加するなどしていますので、ジャズ奏者としての経験は十分にある人物といってよいでしょう。



J3PO名義のキーボードやシンセの音色作りがとても綺麗で私はすごく好みで、彼の動画を参考に、耳コピで自分のシンセサイザーで音を再現しようと試みていました。
どうして彼の音色はそこまで魅力的なのか?とずっと疑問に思っていましたが、今回ご紹介するのに彼の経歴を調べてみると、どうやら私が実際にレコーディングやライヴで使っているシンセ音源、SpectrasonicsのOmnisphereやKeyscapeといったプログラムの開発に携わっているようで、実際に私が使っているキーボードNord Stage 3のパッチ(音色)の開発にも携わっているようです。
なるほど、実際に使っている機材の音の開発に携わった人物か...見事にツボを抑えられていたといった感じですね。


さてJ3POの『Mains』は2021年のアルバムで、全ての曲が彼の打ち込みによる作品になっています。
打ち込みといってもシンセサイザーを多用した多重録音作品で、ジャズの即興演奏やソロの要素は十分に残されています。
シンプルなテーマやコードを展開させていくスタイルの曲が多く、39分間に14曲という短いトラックで構成されていることもありかなり聴きやすいアルバムになっています。BGMとして軽い気持ちで聴くもおしゃれで良い。また、しっかり聴いても構成が複雑かつ巧妙なのなので飽きないアルバムになっていると思います。


シンセサイザーは、彼の音作りの動画を見る限り、ProphetだけでなくMoogやNordなどヴィンテージから現代のシンセまで総合的に使っていると思います。それが時代を超越して現代的なニュアンスを出しているのかもしれません。
またシンセサイザーだけでなく、フェンダーローズの音色が所々顔を見せる(M2のStart SumpthinやM12のPoppy Seedなど)のが音に暖かさをプラスしていて、とても心地よいですね。


またアコースティック・ピアノもソロなどで使われていて(M11 Silver Liningなど)、見事にブレンドされています。


ジャズのエッセンスを持ちながら、エレクトロやK-POPイッシュのセンスも掛け合わせることができる次世代アーティストとして、今後とも注目され続けるべきアーティストだと思います。
またジャズリスナーが高齢化する中で、これからの世代にも通用するサウンドで音楽をクリエイトできる表現者でもあると思うので、是非聴いていただけると嬉しいです!


それではまた次回。


文:曽根麻央 Mao Soné



Recommend Disc

Mains_200.jpg
Title :『MAINS』
Artist : J3PO
LABEL : WATERFALL TONED MUSIC
発売年 : 2021年


【SONG LIST】

01.intro - line check
02.Start Sumpthin Up
03.100 Degrees
04.Right Now
05.I've Changed My Mind
06.interlude - preheat
07.Night Sky
08.Breaktime
09.interlude - onions
10.Oof
11.Silver Lining
12.Poppy Seed
13.Quiet Place
14.outro - just a thought



曽根麻央『プレイズ・スタンダード』

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トランペット/ピアノの"ジャズ二刀流"として話題の曽根麻央がソロピアノで紡ぐスタンダードソング集が全国発売決定!
往年のジャズの名曲をフレッシュな感性で解釈。
抒情性と気品に彩られた曽根のジャズ・ミュージシャン、ピアニストとしてのアティテュードが表現されている作品に仕上がった。


曽根麻央『プレイズ・スタンダード』


1.Reflections in D
2.Serenade
3.In Your Own Sweet Way
4.The Star-Crossed Lovers
5.Wave
6.Stella by Starlight
7.All The Things You Are
8.Luminous (Piano Solo Ver.)
9.I Loves You, Porgy
10.Lady Luck11.Danny Boy
12.Home (Piano Solo Ver.)
13.Some Other Time
14.Ask Me Now
15.The Days of Wine And Roses
16.What A Wonderful World

Mao Soné (piano, trumpet)


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「Monthly Disc Review」アーカイブ曽根麻央
2020.04『Motherland / Danilo Perez』2020.05『Color Of Soil /タイガー大越』2020.06『Passages / Tom Harrell 』2020.07『Inventions And Dimensions / Herbie Hancock』2020.08『Birth Of The Cool / Miles Davis』2020.09『Chet Baker Sings / Chet Baker』2020.10『SFJAZZ Collective2 / SFJAZZ Collective』2020.11『Money Jungle: Provocative In Blue / Terri Lyne Carrington』2020.12『Three Suites / Duke Ellington』2021.01『Into The Blue / Nicholas Payton』2021.02『Ben And "Sweets" / Ben Webster & "Sweets" Edison』2021.03『Relaxin' With The MilesDavis Quintet / The Miles Davis Quintet 』2021.04『Something More / Buster Williams』2021.05『Booker Little / Booker Little』2021.06『Charms Of The Night Sky / Dave Douglas』2021.07『Play The Blues / Ray Bryant Trio』2021.08『The Sidewinder / Lee Morgan』2021.09『Esta Plena / Miguel Zenón』2021.10『Hub-Tones / Freddie Hubbard』2021.11『Concert By The Sea / Erroll Garner』2021.12『D・N・A Live In Tokyo / 日野皓正』2022.1『The Tony Bennett Bill Evans Album / Tony Bennett / Bill Evans』2022.2『Quiet Kenny / Kenny Dorham』2022.3『Take Five / Dave Brubeck』・2022.4『Old And New Dreams / Old And New Dreams』2022.5『Ella Fitzgerald And Louis Armstrong / Ella And Louis』2022.6『Live from Miami / Nu Deco Ensemble & Aaron Parks』2022.7『Oscar Peterson Trio + One / Oscar Peterson Trio Clark Terry』2022.8『Ugetsu/ Art Blakey & The Jazz Messengers』2022.9『Sun Goddess / Ramsey Lewis』2022.10『Emergence / Roy Hargrove Big Band』2022.11『Speak No Evil / Wayne Shorter』2022.12『The Revival / Cory Henry』2023.1『Complete Communion / Don Cherry』2023.2『Your Mother Should Know: Brad Mehldau Plays The Beatles / Brad Mehldau』2023.3『Without a Net / Wayne Shorter』2023.4『LADY IN LOVE / 中本マリ』2023.5『Songs Of New York / Mel Torme』2023.6『Covers / James Blake』2023.7『Siembra / Willie Colón & Rubén Blades』2023.8『Undercover Live at the Village Vanguard / Kurt Rosenwinkel』2023.09『Toshiko Mariano Quartet / Toshiko Mariano Quartet』



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曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

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