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曽根麻央 Monthly Disc Review2021.06_ Dave Douglas_Charms Of The Night Sky:Monthly Disc Review

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 みなさんこんにちは、曽根麻央です。
いよいよ僕が主演し、音楽を担当した映画「トランペット」の日本での上映が間近に迫りました。米国アカデミー賞公認、ショート・ショート・フィルムフェスティバルはスクリーンで6/18、オンラインでは6/11-21までご覧いただけます。なんとオーディエンス賞にみなさんも投票出来るということで、是非応援よろしくお願いいたします。





無料オンライン視聴▶︎https://www.shortshortsonline.org/videos/int-6-01-trumpet-cm

簡単なメールアドレス登録で見れます。

※オーディエンス賞投票はログイン後同リンクより左上のフェスのロゴをクリック、トップページへ。
「オーディエンス・アワードに投票しよう」へGo!その後登録フォームをクリック!


6/18(金) 15:40 - 17:30 二子玉川ライズiTSCOM STUDIO & HALL
▶︎https://shortshorts.org/2021/ja/int-6/
※無料チケット予約をお願いします。




Title : 『Charms Of The Night Sky』
Artist : Dave Douglas

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【ジャズの多様性を知ることができる美しい作品】


 ジャズは多様な音楽です。一言でジャズと言っても10人いれば10通りの思い描く「ジャズ」のサウンドがあります。なぜならジャズは異文化や自分にはない個性を受け入れ、さらに昇華させることができるからです。これはジャズという音楽の成り立ちがアフリカの音楽とヨーロッパの音楽が結びついたところから始まりました。

デューク・エリントンも「ジャズは様々な方向に沢山の枝を伸ばした木のようなもので、その枝の先は更に多くの細枝(しもと)に分かれています。それぞれの細枝は違う形の葉っぱや、色の違う花々を実らせます。枝は東西南北と様々な方向に向かい、各々の場所でその土地の影響を受けます。」と、この音楽の多様性を提言しています。

エリントンの言葉の締めくくりは「その木の幹に戻り、大地に根を這わした部分を見るとアフリカの土壌にあることがわかり、それはすべての基本でもあるビートです」となっています。このようにアフリカのビートを基盤とする音楽はすべてジャズの親戚とも言えるので、個々がこれこそジャズという枠に入れることは一生かかってもできないのです。


 今回紹介するアルバムは、いわゆる通常のジャズカルテットの編成でもなければ、サウンドも個性的なものです。ただただ美しい音楽で独創的。Dave Douglasという音楽家の異色作。でも根っこの部分はジャズの歴史を継承しているので、これもまたジャズと言えるでしょう。

 『Charms Of The Night Sky』はトランペット、ヴァイオリン、アコーディオン、ベースの4つの楽器のために作編曲された曲をアルバムとして集めたものです。この編成だけでもこのアルバムがかなり変わったものであることが伺えます。室内楽のような雰囲気があり、どこか現代クラシックの感じもしつつヨーロッパの民俗音楽的な香りもします。

ウェイン・ショーターも「ジャズはジャズらしいサウンドを要求されるべき音楽ではない」と言っていますが、まさにその言葉を彷彿とさせるアルバムの一つです。

 何より注目したいのがDave Douglasの作編曲能力の高さです。これだけ風変わりな編成を見事に活用した内容になっていて、ヴァイオリンとトランペットのやり取りは美しいですし、アコーディオンの低音の響の美しさ、和音の面白さまで使いこなしています。是非注目して聴いていただきたいポイントです。

 そしてトランペットの独特な音色にも注目してください。本来この編成だとトランペットの楽器の特性上、この楽器だけ突出しやすいのですが、見事にバランスを取っています。これはDaveの力量があるからとも言えますし、彼のそもそも持つ独特な音色がこの編成にフィットしているとも言えます。

 メンバーを見てみましょう。


Dave Douglas: trumpet
Mark Feldman: violin
Guy Klucevsek: accordion
Greg Cohen: acoustic bass







01. Charms Of The Night Sky
ベースのオスティナート(連続して繰り返されるパターン)の上に、アコーディオンが和音を弾くことで楽曲のカラーが見えてきます。そして、その上にトランペットとヴァイオリンがユニゾンで奏でる主旋律が入ってきて同じオスティナートの上に明るくなったり暗くなったりとカラーが動き始めます。

トランペットとヴァイオリンのユニゾンの音って不思議な魅力があります。このアルバムを象徴するサウンドでとても美しいアンサンブルだと思います。次のセクションはベースの動きも加わりさらなる色合いが見えてきます。その後オスティナートに戻り聴こえて来る「スーッ」という雰囲気のあるサウンドはおそらくトランペットに息を吹き込んでいるのを思いっきりマイクに近づいて集音しているのかと思います。ヴァイオリンソロからベースソロと続きますが、トランペットとアコーディオンがハーモニーパートを伴奏の役割として担っているのがとっても綺麗ですね。それに続くDave Douglasのトランペットソロも見事です。


02. Bal Masque
アコーディオンとトランペットのデュオ。フランス語で「仮面舞踏会」という意味のワルツ。録音としては右側からアコーディオンの左手の伴奏が、左側から右手の鍵盤の演奏が聞こえて来る録りになっています。Daveの持つ独特の音色と歌い方がこの曲の雰囲気を高めています。


03. Sea Change
こちらはゆったりとした明るめのワルツ。こちらもアコーディオンとのデュオ曲。僕はアコーディオンにそこまで詳しくないので正確に何が行われているのか言及できないのですが、こちらの曲はアコーディオンの特性を最大限活かしたものとい思います。中盤より特に左手の低音の響きを最大限に活かしていて、それに加え右手で作り出すハーモニーもとても豊かです。音色もダブルリード(コーラス効果がかかったようにいくつかの楽器で演奏しているかのような響きになるエフェクト)なども駆使していてサウンドもゴージャス。これがデュオかと驚かされます。必聴曲です。


04. Facing West
6+5の11拍子の活発な曲。こちらもアコーディオンとのデュオ曲。Daveのトランペットが絶好調の曲です。このアコーディオン奏者のGuy Klucevsekという方の素晴らしさと凄さも十二分に伝わることでしょう。ニューヨーク出身の現代音楽や即興演奏を行える数少ないアコーディオン奏者として、最も尊敬されているアコーディオン奏者の一人です。リーダーアルバムも相当な枚数を出しているので今後チェックしていきたいなと思います。


05. Dance In Thy Soul (for Charlie Haden)
ヴァイオリンのソロから導入される特徴的な楽曲。このアルバムで最長の尺となっていますが、構成としてはシンプルな主旋律が永遠に繰り返されながら発展していきます。その後アコーディオンとトランペットで主旋律が入り、徐々にアルコ(弓)で奏でられるベースが聴こえてきます。その上で自由にソロをとるヴァイオリン。クラシックだけでなくミドルイースタンのフレーズからも影響を受けているようなラインが聴き取れます。

しばらくルバートが続きますが、先ほどのトランペットとアコーディオンの主旋律がテンポで演奏され始めると徐々にベースが自由に動き出し、さらにヴァイオリンも重なり、トランペットも徐々に自由をえていきます。しかし曲の雰囲気が壊れることはなく誰かがアクティブな時は他が伴奏にいき、また別の人がアクティブになれば伴奏に行ってアンサンブルのバランスが見事に取れた演奏になっています。ジョー・ロヴァーノの言葉を借りれば「Follow and Lead」です。


06. Little One (Hancock)
ハービー・ハンコックの名曲です。それを3拍子でこのアンサンブルの持ち曲のように編曲されています。途中のDave Douglasのソロも素晴らしいです。


MUG SHORTS
ここからの3曲(7-9)は組曲になっていてアコーディオン奏者のGuy Klucevsek作品です。どれも映画のワンシーンのような特徴ある曲ばかりです。


07. Wild Coffee
インパクトのある現代クラシック、もしくは映画音楽のような曲です。トランペットとアコーディオン、ベースの組み合わせです。


08. The Girl With The Rose Hips
ハーマン・ミュート・トランペットとアコーディンの組み合わせが美しい一曲。


09. Decafinata
カップミュートをトランペットで使っていて、古いヨーロッパ・ジャズのようなコミカルな雰囲気の曲。


10. Poveri Fiori
イタリアのオペラ作曲家、フランシスコ・チレアの楽曲。物悲しくもどこかに熱さあるメロディー。やはりこういった楽曲は安直ですがゴッドファーザー感がありますよね。


11. Odyssey
トランペットとアコーディオンのデュオ。このアルバムではアコーディオンってこんなに多彩な楽器なのかと驚かされます。これもそんな一曲。漂う様な雰囲気の曲でゆっくりと時が流れていきます。


12. Twisted
最初5/8+7/8変拍子かと思えば実は軽快なワルツの曲。ベースとアコーディオンで細かいリズムを刻んで音楽を推し進めます。途中ヨーロッパのダンス文化の雰囲気が漂うワルツに突入し、また冒頭の激しい変拍子の様なテーマに戻り曲が終わります。


13. Codetta
とても美しいトランペットソロから導入されます。美しくどこか怪しいメロディーが心に残ります。


それではまた次回。

文:曽根麻央 Mao Soné







6月27日(日)MAO SONÉ - Brightness of the Lives supported by ブルーノート東京

高崎芸術劇場スタジオシアター

出演・曽根麻央(トランペット、ピアノ、キーボード)井上銘(ギター)山本連(ベース)木村紘(ドラムス)

主催・ 高崎芸術劇場(公益財団法人 高崎財団) 協力・BLUE NOTE JAPAN

▶︎詳細




Recommend Disc

CharmsOfTheNightSky200.jpg
Title : 『Charms Of The Night Sky』
Artist : Dave Douglas
LABEL : Winter & Winter
NO : 1070151
発売年 : 1998年



アマゾン詳細ページへ


【SONG LIST】

01. Charms Of The Night Sky
02. Bal Masqué
03. Sea Change
04. Facing West
05. Dance In Thy Soul
06. Little One
07. Wild Coffee
08. The Girl With the Rose Hips
09. Decafinata
10. Poveri Fiori
11. Odyssey
12. Twisted
13. Codetta



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Reviewer information

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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

曽根麻央Official Site

曽根麻央 Monthly Disc Review2021.05_ Booker Little_Booker Little:Monthly Disc Review

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Title : 『Booker Little』
Artist : Booker Little

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みなさんこんにちは、曽根麻央です。皆様いかがお過ごしでしょうか? 
季節もなんだか暖かく一段と過ごしやすくなり半袖のみで外出する事も増えました。

今回は僕の最も好きなトランペッターの一人、ブッカー・リトルを紹介できることを嬉しく思っています。その前に、以下のコンサートが決まりましたのでお知らせいたします。

MAO SONÉ - Brightness of the Lives supported by BLUE NOTE TOKYO
高崎芸術劇場スタジオシアター
出演・曽根麻央(トランペット、ピアノ、キーボード)井上銘(ギター)山本連(ベース)木村紘(ドラムス)
主催・ 高崎芸術劇場(公益財団法人 高崎財団) 協力・BLUE NOTE JAPAN
▶︎詳細


【馬力と歌心を兼ね備えた天才トランペッター唯一のワンホーンアルバム】


さて今回はブッカー・リトルの「Booker Little」というアルバムについてお話しします。直球すぎるトランペットの演奏と、現代的なテクニックの見事な融合を聴くことができます。豊かな音色と現代的な表現が絶妙なバランスで成り立っています。トランペッター目線ですが本当に見事です。というのもブッカー・リトルはクリフォード・ブラウンの影響をもろに受けた世代で、アルバム中もクリフォードのアーティキュレーションやフレーズが多々みられます。しかしそれは模倣ではなくブッカー・リトルの中で咀嚼され次の時代へ向かって音が放たれている印象を受けます。

ちなみにブッカー・リトルの同い年のトランペッターにフレディー・ハバードがいますが、フレディーの初期の演奏と聴き比べてみても面白いかもしれません。

 ブッカー・リトルはメンフィス・テネシーに1938年に生まれたトランペッターですが1961年には尿毒症で亡くなっている、23年のとても短い人生を歩んだトランペッターです。なので活動時期も非常に短く、彼の録音の多くは1958年から1961年の3年間の間に残されたものが多いです。

 メンフィス・テネシーではフィニアス・ニューボーンJrやジョージ・コールマンといった同郷のミュージシャンたちと腕を磨き、その後シカゴに大学入学のために拠点をシカゴへ移しました。同時期にソニー・ロリンズやマックス・ローチと出会い、クリフォード・ブラウンの後継者としてレコーディングに参加しますが、学生であったために継続的なバンド活動を当時は断念しました。大学卒業後の1958年からは拠点をニューヨークに移し、マックス・ローチのバンドで本格的に活動し始めます。その後3年間凄まじい勢いで活動し、多数のアルバムを残しています。

 この『Booker Little』というアルバムは1960年に録音され、彼の短いキャリアの中では中期のものといってよいでしょう。おそらく僕が確認した限り唯一のワンホーン(サックスなど他のホーン奏者が入っていない)アルバムとなっています。

 メンバーを見てみましょう。



Booker Little - trumpet
Tommy Flanagan (tracks 1, 2, 5, 6), Wynton Kelly (tracks 3 & 4)
Scott LaFaro - bass
Roy Haynes (tracks 1-6)




 トミー・フラナガンが4曲、ウィントン・ケリーが2曲参加しています。そしてブッカー・リトルと同じく61年に25歳で亡くなったベーシスト、スコット・ラファロとの共演も聴くことができます。そしてアルバム全体を通して鉄壁のドラマー、ロイ・ヘインズが見事にサポート。ヘインズのライドシンバルは安定してリズムを繰り出し、スネアは他の演奏の音と音の間を紡いでいきます。

 録音に関しては、今では考えられないのですが、トランペットとピアノを完全に右、ベースとドラムを完全に左に寄せるというステレオでミックスされていて、イヤフォンで聞くと非常に違和感のある作品になっています。これはステレオがまだ新しい技術であったという問題もありますが、そもそもイヤフォンやヘッドフォンなど当時ないわけで、スピーカーから聴くことを想定しているからですね。イヤフォンで聴いて違和感があるからといって聴かないのは勿体無いので「そういうもの」だと思って聴いてみてください。多くのこの時代の素晴らしいジャズのレコーディングがこのようにミックスされています。





01. Opening Statement
 凄まじい勢いと音圧でトランペットのメロディーが聞こえてきたと思ったら、ラファロとヘインズの圧倒的なグルーブが曲を推進させます。どこまでがメロディーかインプロかわからないぐらい美しいラインを作り出すブッカー・リトルのソロ。それだけでなく見事な楽器コントロール。これだけのエネルギーをトランペットで一曲通して演奏するのは至難の技です。


02. Minor Sweet
 最初にヘインズとリトルによるルバート・イントロがあり、それが終わるとすかさず早いスウィングのテーマをリトルが吹き出し、アンサンブルが始まります。まっすぐなトランペットの音が見事に響いています。インプロ部分は特にこの曲はクリフォード・ブラウンの影響が濃くみられますね。とくに早い8分音符を全てタンギングしてフレーズを作っている部分などそっくりです(1:50など)。




03. Bee Tee's Minor Plea
 シンプルなマイナー・ブルースの曲。しかしこちらもテーマが異常に難しいリトル仕様になっています。ピアニストがウィントン・ケリーに変わっています。コンピング(伴奏)の仕方の違いも聴くと面白いと思います。とてもリズミックで明るめの音色になっていませんか? 


04. Life's a Little Blue
 ミディアム・スウィングの曲。これまでの4曲ともそうですが、リトルの楽曲は彼のトランペットの音色を聴かせるのに最適な音域、そして楽曲になっています。実際には通常の奏者には演奏するのに難しいメロディーラインではあるのですが、それをいとも簡単に、しかも凄まじい音圧で吹き切り、そのままそれに準ずるような美しいソロを展開するリトル。本当に素晴らしい奏者です。

それにプラスして、過去のトランペット奏者ができなかったインプロでのインタバリックな展開が特徴的です。つまり音程間の動きが激しい演奏になっています。トランペットは音程間の移動がとても大変な楽器なので、通常ビバップのように早い曲だと「ド」から「レ」の音のように隣り合った音同士を繋げてフレーズを作ることが多いです。しかし、リトルはこの常識を覆し、まるでサックスのようなソロを展開できることを証明した人ではないかなと思います。この音圧と異常なテクニックはソニー・ロリンズ的だなと聴いていて思いました。リトルは学生時代にロリンズからアドヴァイスを受けていたという話も聞いたことがあります。


05. The Grand Valse
 アルバム唯一のワルツ。ピアノがフラナガンに戻り、豊かな音色と安定したハーモニーで音楽全体を支えてくれます。こちらの曲も美しいメロディー、そして圧倒的なインプロはもちろんありますが、リズムセクションのクールな感じと、それに対するリトルの熱量が面白いバランスで存在していて、うまく成り立っています。


06. Who Can I Turn To
 アルバム唯一のスタンダード曲、そしてバラード。リトルの歌心を存分に味わえるテイクです。最後にリマインドしますが、このとき彼は22歳です。音楽史に「もし」は禁物ですが、もしリトルがさらに多くのアルバムに参加できたなら確実に歴史上もっとも重要なジャズトランペッターとしてあげられていたと確信しています。


それではまた次回。

文:曽根麻央 Mao Soné






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【曽根麻央が主演、音楽を担当した映画「トランペット」上映決定!
6月18日(金)についに僕・曽根麻央が主演、音楽を担当した映画「トランペット」が日本初上映決定!
別所哲也さんが代表を務めるShort Shorts Film Festival & Asia 2021というアカデミー賞公認のフィルムフェスティバルでの上映が決定しました。チケットはなんと無料です!

■上映スケジュール: 6/18 FRI 15:40 - 17:30
■上映会場: iTSCOM STUDIO & HALL 二子玉川ライズンライン会場
■インターナショナルプログラム6
第一弾予約期間:5/12(水)14時~5/24(月)第二弾予約期間:5/27(木)14時~

▼URL
https://shortshorts.org/2021/ja/int-6/?fbclid=IwAR1FayTutJ1QUMovwY9Jx-Z-gICsVYwfqIww06DvLb8Mlvt_ljnEBWhQZ3g






Recommend Disc

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Title : 『Booker Little』
Artist : Booker Little
LABEL : ITime Records
NO : 52011
発売年 : 1960年



アマゾン詳細ページへ


【SONG LIST】

01. Opening Statement
02. Minor Sweet
03. Bee Tee's Minor Plea
04. Life's A Little Blue
05. The Grand Valse
06. Who Can I Turn To




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Reviewer information

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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

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曽根麻央 Monthly Disc Review2021.04_ Buster Williams_Something More:Monthly Disc Review

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Title : 『Something More』
Artist : Buster Williams

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【「I Didn't Know What Time It Was」はジャズ・アンサンブルの最高到達地点】

 皆さんこんにちは、トランペットとピアノの曽根麻央です。3月の末からかなり過ごしやすい気候が続いていて、なんだかとっても穏やかですね。そんな春に先駆けて来週4/23(金)には僕のライブが夢の舞台・ブルーノート東京であります。是非、お誘い合わせの上聴きにきてください!皆さんの応援が励みです!

 そんなブルーノート出演メンバーとシングルを出しました!Apple Music、Spotify、Amazon Music, YouTube Musicなど各配信サイトで聴くことができます。是非ダンロードして聴いてください!

Title : Gathering at Park Drive
Artist : 曽根麻央
Rabel : Reborn Wood
Release : 2021.4.13
リンク▶︎ https://ultravybe.lnk.to/gatheringatparkdrive



 またまた、同じメンバーの1月のライブをJJazz.Net内の番組「Jazz Today」で約1ヶ月間聴くことができます!この機会をお聴き逃しなく!

「JazzToday - MAO SONÉ Brightness Of The Lives LIVE」
(放送期間2021年4月14日~2021年5月12日(17:00まで))
リンク▶︎ https://www.jjazz.net/programs/jazztoday


今週は1989年録音の、Buster Williamsの『Something More』というアルバムを取り上げていきます。この『Something More』で特に「I Didn't Know What Time It Was」はまさに歴史的な名演であると思います。14分30秒ほどに渡る長めの演奏ですが、メンバーの各々が完璧なソロ、タイム、グルーヴを僕らに聴かせてくれます。その上そのプレイには自由が感じられます。

まずはいつも通りメンバーを見ていきましょう



Buster Williams (b)
Herbie Hancock (p,key)
Wayne Shorter (ts,ss)
Shunzo Ohno (tp)
Al Foster (ds)




 このようなカルテットの面々。ただいまからお話しする「I Didn't Know What Time It Was」には トランペッター・大野俊三さんは参加しておらず、Buster Williams (b) Herbie Hancock (p,key) Wayne Shorter (ts,ss) Al Foster (ds)による演奏になっています。





 まずベースのvampがイントロとして聴こえてきます。Vampとはクラシック音楽ではostinatoとイタリア語で呼ばれ、音楽的なパターンを何度も繰り返すことを指します。Vampの場合はベースパターンの繰り返しが多いです。このアレンジではイントロやインタルード(間奏)としてvampが付いているので、オリジナルの曲のフォーム+vampという構成が特徴的です。

 Vampが使われるジャズの演奏については トム・ハレルの『Passages』を以前紹介しましたが、この時代のジャズでは曲のフォームでソロを回すだけでなくvampのセクションが付けてアレンジするのがやはり流行ったのかと思います。

 Busterの最高の音色で奏でられるベースのイントロに寄り添うように、Al Fosterが徐々に加わりドラムを演奏します。しばらくするとHerbieのユニークなハーモニーが加わり曲のカラーが見えてきます。少し遠くから聞こえるWayneのソプラノの音がゆっくりと力強くなり「I Didn't Know What Time It Was」のメロディーが聴こえてきます。Vampで使われていたベースラインはメロディーの後ろで徐々に変化し、聴く人の興味を引きつけます。

 この楽曲のメロディーはAABAフォームと言って、最初のメロディー(A)が二回、その後に続く違うメロディー(B、またはブリッジといわれる部分)が一回だけ演奏され、その後Aに戻るというジャズを代表する曲の形式です。「A列車で行こう」や「Nearness Of You」などの多くのスタンダード曲がAABAフォームで書かれています。

 ただこの最初のメロディー(A)は通常の倍の長さに拡張されて、16小節あります。オリジナルは8小節です。その後のBセクションは8小節のオリジナルのままです。BセクションではベースはOstinatoではなく、スウィングの弾き方になり一気に曲を推進させます。スピード感が出てきたかと思えば、その後のAセクションはまた倍の長さのメロディーとベースラインが出現し、ゆったりとした雰囲気が再び現れます。その後Aセクションが終わるとイントロで聴いたベースラインが再び現れソロへと突入していきます。

 最初のWayneのソロはまるで歌うような、一つ一つの音に何か魂を込めるような、一種の叫びを感じるソロです。女性の声に聴こえますね。3:48-4:09は、まだソロの途中なのにも関わらず16小節全く吹かないというのは本当にびっくりしますが、空白すらも音楽なのはWayneだからできることかと思います。その後はBusterのウォーキングベースとAl Fosterのライドシンバルが恐ろしいグルーヴを演奏し始めます。ウォーキングベースとは一小節に4つ音を鳴らすジャズの最も基本のベースの奏法です。Busterはそのウォーキングベースのマスターであることは間違い無いです。

 その後Herbieのソロに入ります。Herbieも素晴らしいソロをとりますが、彼のソロとAl Fosterのスネアのやりとりがユニークです。5:28や6:31、6:35の一瞬ランダムに聴こえるスネアの演奏はAl Fosterの独特な表現の一つで、覚えておくと聴いた時にジャズが楽しくなります。ランダムなのにソリストのHerbieに寄り添っているのがすごいですね。

ジャズのスウィングにおいてドラムの基本はライドシンバルで、ライドシンバルでグルーヴを出します。スネアはピアノの左手などと会話をするように合いの手を入れるので、音のバランスとしてライドの下にスネアがあるイメージだと理想的です。ロックではスネアのビートを強力に鳴らすので、そこがジャズとは演奏法が違いますね。ロックドラムの人がジャズにトライするときは気をつけるとよいと思います。Busterのウォーキンベースの合間に6:30のような、ベースを「ウーンッ」と言わせるような遊び心があるので聴いて楽しいです。

 続くBusterのソロもまるで喋っているかのようなソロを取っています。Busterのベースの特徴の一つとして、一音の長さがあると思います。アンプの誕生によってベースがリズム表現する楽器から、音程や細かいニュアンスを表現できる楽器に進化したと思います。例えばジャズの歴代初代天才ベーシストとも言えるJimmy Blantonなどの演奏を聴いても、アンプがないので音を伸ばすことに関しては楽器的に限界があると思います。音の減衰速度がはやいですよね。





Busterの時代にはベースアンプやピックアップがあるので音の減衰速度を落とすことができるようになりました。Busterは新しいベースの音と、伝統的なベースの役割のバランス感が素晴らしく、リズムの切れと一音一音の長さを共存させたベース奏者です。

 その後Al Fosterのソロがあり、エンディングテーマへと向かいます。メンバー全員が、この長尺アレンジされた「I Didn't Know It Was」を2コーラスずつ演奏しています。メロディーを演奏しに戻ったWayneは一層パワーアップしていて、曲をクライマックスへと導きます。是非、人生のどこかで14分時間をとって聴いてみてください。歴史的名演です。

 さてここからは一曲ずつ、短めに見ていきましょう。このアルバムは水が流れるように常に音楽が動いていて、一曲一曲はかなり長いのですが一瞬のようにも感じます。巨匠たちの全く力まない、自然体で臨むスタジオ・ワークを楽しんでください。


01. Air Dancing
 弓のベースの音からシンセの音、ミュート・トランペットとソプラノサックスが心地よくブレンドして導入されます。90年代に近づくにつれ、シンセサイザーが自然にアコースティック楽器にブレンドする音源が多くなりますね。Busterのソロはオーバーダブ(重ね録音)なのか、2人のBusterが心地よく絡まり合う感じに仕上がっています。このHerbieのソロの上でもAl Fosterのランダムなスネアの動きを多く聴くことができます。


02. Christina
 Busterのオリジナル曲で最も有名で美しい曲の一つです。メロディーの時のWayneの音色とHerbieのハーモニーが本当に美しいので聴いてみてください。


03. Fortune Dance
 ファンキーな曲一曲。大野俊三さん とWayneのテナーの2管が印象的です。Wayneの1コードの上でのソロが聴けますが、この人は本当に音を操る達人です。


04. Something More
 タイトルソングで落ち着いた雰囲気のワルツ。これもやはりWayneのサウンドに圧倒されるトラック。Wayneは本当に音域が上から下まで幅広く、しかも最高の音色で演奏するので、全ての音に意味があるように聴こえてきます。4:17からのエンディングでのAl Fosterのシンバルの使い方、びっくりします!


05. Decepticon
 早いスウィングの曲でベース、トランペット、サックスなどでユニゾンしながら曲を展開します。Busterのアーティキュレーションがよく、ベース奏者として最高のテクニックをも持ち合わせているのがわかります。こちらのソロもWayneの異常さを体感できます。リズムのキレの良さ、楽器コントロール、アイディア、全てにおいて完璧です。


06. Sophisticated Lady
 Herbieの美しいイントロに続き、Busterがメロディーを弾きます。一曲目のソロの時のように、一人のBusterは伴奏に徹し、もう一人がメロディーを弾くように重ね録音されています。Busterのように音程の良いベーシストでなければ困難な技でしょう。Herbieのシンセの音色のチョイスも挑戦的で興味深いです。


それではまた次回。

文:曽根麻央 Mao Soné







【LIVE INFO】
曽根麻央演奏スケジュール


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【公演名】
MAO SONÉ - Brightness of the Lives - at Blue Note Tokyo

【日時】
2021 4.23 fri.
[1st]Open5:30pm Start6:30pm [2nd]Open8:30pm Start9:15pm
※2ndショウのみインターネット配信(有料)実施予定
※アーカイブ配信視聴期間:4.26 mon. 11:59pmまで
※アーカイブ配信の内容はライヴ配信と異なる場合がございます。
予めご了承ください。
※当初の開催日程(2021 1.21 thu.)から変更となっております。

【メンバー】
曽根麻央(トランペット、ピアノ、キーボード)
井上銘(ギター)
山本連(ベース)
木村紘(ドラムス)

★公演内容に関するお問い合わせ
ブルーノート東京 TEL:03-5485-0088

▼URL
http://www.bluenote.co.jp/jp/artists/mao-sone



Recommend Disc

somethingmore200.jpg
Title : 『Something More』
Artist : Buster Williams
LABEL : In+Out Records
NO : 7004-2
発売年 : 1989年



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【SONG LIST】

01. Air Dancing
02. Christina
03. Fortune Dance
04. Something More
05. Decepticon
06. Sophisticated Lady
07. I Didn't Know What Time It Was




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Reviewer information

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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

曽根麻央Official Site

曽根麻央 Monthly Disc Review2021.03_ Relaxin' With The Miles Davis Quintet:Monthly Disc Review

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Title : 『Relaxin' With The Miles Davis Quintet』
Artist : The Miles Davis Quintet

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【Milesの「スペース」の魅力】

 マイルス・デイヴィスのソロには不思議な魅力があります。その魅力はもちろん彼の持つ音色、美しいフレーズ、そして完璧なタイム感があるのですが、今回特筆するのは彼のスペースについてです。

ジャズのアドリブにおいてスペースとは、実際に吹いている箇所ではなく、フレーズとフレーズの間のお休みのところをいいます。マイルス・デイヴィスのスペースは完璧に精査されていて、聴いていて心地よいどころか、びっくりさせられることがあります。今回はその理由(わけ)も徹底的に解説してみました。

 今回取り上げるのはマイルス・デイヴィスがPrestige Recordsに残したアルバム『Relaxin'』です。『Relaxin'』 は、マイルスがColumbiaへ移籍する際に、Prestige Recordsとの契約を消化するために4枚のアルバムを2日間で録音した「マラソン・セッション」と呼ばれる歴史的なレコーディング・セッションからの1枚です。1956年に録音され、58年にリリースされています。これは恐らく4枚のリリースのタイミングをずらすためでしょう。

メンバーを見ていきましょう。



Miles Davis - trumpet
John Coltrane - tenor saxophone
Red Garland - piano
Paul Chambers - bass
Philly Joe Jones - drums




 マイルス・デイヴィスの1955-59年まで続いた、"The First Great Quintet"と呼ばれることがあるクインテットです。元々はカフェ・ボヘミアという歴史的なジャズクラブで演奏するために結成されたクインテットで、結成された当時はソニー・ロリンズがサックスを担当していました。しかしロリンズがヘロイン中毒からの克服に時間がかかるため、ジョン・コルトレーンが抜擢され、有名なクインテットへとなりました。のちにキャノンボール・アダレイを迎えての3菅編成のセクステットへと変貌していきます。

 一連の「マラソン・セッション」はマイルス・デイヴィスが、強力なレギュラー・クインテットを手に入れ、メジャーレーベルに移籍するタイミングでもあり、50年代までのキャリアとしては絶頂にいた時のレコーディングであることは確かです。そんなマイルスのどこか落ち着いた、しかし堂々とした演奏の秘密にはスペースがあります。

 スペースとは、繰り返しになりますがフレーズとフレーズの間の演奏していない空間のことで、これを活かすには、どこでフレーズを始めどこで終わるかというのが肝になってきます。マイルスの(特にこの時代の)演奏にはフレーズのはじめ方、終わり方に一定の法則性があります。それはクラーベのリズムに沿ってフレーズをはじめ、そして終わるということです。

 クラーベというとラテン音楽のイメージがあります。クラーベとはラテン語で「鍵」という意味で、その名の通りリズムの鍵になっています。クラーベのリズムに沿って、ベースラインやメロディー、歌詞、ハーモニーが作られるのがラテン音楽の基本です。

 しかし、歴史を考えるとクラーベはジャズにも存在します。そもそもクラーベはアフリカの民俗音楽から派生しています。アフリカの音楽が奴隷船とともにアメリカ大陸周辺に運ばれ、キューバではキューバの宗教とキリスト教と融合しアフロ・キューバン音楽として、アメリカのニューオリンズではより白人のクラシカルな楽器や和声と結びつき、ニューオリンズ・ジャズ(2nd Line)として発展しました。要するにジャズの根本にもクラーベは存在するのです。

 マイルスがサルサを聴きにニューヨークのクラブへ通っていたのは有名な話ですし、マイルスの幼い頃はニューオリンズ・ジャズが流れていて、それを聴いていたことは容易に想像ができます。

 クラーベには何種類かあります。主にジャズで見かけるのは普通のソン・クラーベ、ルンバ・クラーベ、ニューオリンズ・クラーベです。


ソン・クラーベ
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ルンバ・クラーベ
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ニューオリンズ・クラーベ
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 『Relaxin'』の"If I Were A Bell"のマイルスのソロでは主に、ソン・クラーベとニューオリンズ・クラーベからフレーズが組み立てられています 。"If I Were A Bell"のソロのフレーズがクラーベを中心に組み立てられていることがわかるデモを用意してみましたので、以下のビデオを見てください。





 わかりやすくクラーベやカスカラと一致するところに線を引いてみましたが、ほとんどのフレーズがクラーベ、またはカスカラに合わせて始まり終わっていると思います。カスカラとはクラーベに対応して成り立っているリズムパターンのことで、ラテン音楽ではクラーベと同じぐらい重要なものです。このようにクラーベに沿ってフレーズを組み立てることで、スペースを効果的に、そしてより自然に流れるように活用することができると思います。

 またこの"If I Were A Bell"のレッド・ガーランドのソロがとても良いので注目してみてください。そして、ガーランドの後ろでベースを弾くポール・チェンバースもとってもスウィングしています。マイルスに「ポール・チェンバースはなんでも弾ける」と言わせたベーシストの技を聴くことができます。ちなみにこの逸話は以前のJJazz.Netの記事に書きましたのでぜひ読んでみてください (曽根麻央 Monthly Disc Review2020.7)。


 ちなみにこの一曲目の"If I Were A Bell"はマイルスが'I'll play then tell you what it is later'と「演奏した後になんの曲か教えるよ」といったエンジニアとのやりとりまで収録されています。こういう生のやりとりを少しだけ覗くことができるのも本アルバムの魅力の一つです。





さてここからは1曲ずつ聴いていきましょう。


02. Your're My Everything
 こちらも30秒ほどスタジオ内のやりとりが聞こえてきます。そしてレッド・ガーランド特有の左手で和音、右手でメロディーをオクターブで演奏する奏法でイントロが奏でられ曲が始まります。同じくトランペッターのフレディー・ハバードはこの曲を軽快なスウィングのリズムで、Cのキーで演奏していますが、こちらは落ち着いたバラードでBbのキーで演奏されています。

 この曲でも使用されていますが、マイルスのハーマン・ミュートの使い方はこれもフレディー・ハバードと真逆ですね。マイルスの柔らかい音色から推測して、かなりソフトにマイクの近くで吹いていると思います。マイルス・デイヴィスを象徴する音色です。こういうバラードではまるで女性ボーカリストが歌っているかのような表現だなといつも思っています。フレディー・ハバードは音量をMax状態でハーマンを吹くのがとても特徴的だと思います。その代わりよりチーっといったまた違った独自の音を持っていますね。


03. I Could Write A Book
早いスウィングのアレンジで演奏されています。レッド・ガーランドは一貫して自分のコンピング(伴奏)のスタイルを持っています。基本的に1小節に2つ和音が入ります。小節の4拍目の裏と、2拍目の裏に軽快にリズムと和音を刻んでいます。レッド・ガーランドはそもそもとても優秀なボクサーだったのですが、まるでジャブを打っているかのようなコンピングです。その上で右手は自由に転がってフレーズを操ります。

 ジョン・コルトレーンの演奏にも注目してみたいと思います。この録音はコルトレーンのキャリアの中でかなり初期のものです。コルトレーンのアーティキュレーションは年代によってかなり変わります。初期はかなり短く8分音符を激しめに区切ってタンギングしてアーティキュレートしています。中期になればその音価はギリギリまで伸ばされ、一つ一つのアーティキュレーション自体は穏やかになりますが、フレーズの持つエネルギーが増していますね。このように年代でプレイスタイルがここまで大きく異なるミュージシャンは少ないので、注目して聴いてみてください。


04. Oleo
 ソニー・ロリンズとレコーディングしたアルバム『Bag's Groove』のバージョンよりかなり早いテンポで収録しています。マイルスがメロディーを一人吹きはじめて曲が始まります。マイルスのリズムの良さがわかる瞬間です。
 コルトレーンのソロも、中期のいわゆる「コルトレーンサウンド」が少しだけ垣間見えますが、それがまだ若い頃のアーティキュレーションが同時に聴こえてくる面白いソロです。

 個人的にびっくりしたのは5:40からの後とテーマでのポール・チェンバースのカウンターポイントです。カウンターポイントについても別の記事でたくさん書きましたが、メロディーに対応し、時に逆行する第2のメロディーともいえるラインのことです。このカウンターラインが綺麗で改めて聞き直して感激しました。





05. It Could Happen To You
 有名なスタンダード曲。こちらのマイルス・デイヴィスのソロも見事に2-3クラーベに当てはまっているのがお分かりになると思います。リズムセクションのスウィングのグルーブもどちらかというとニューオリンズ・クラーベに影響を受けたin 2のスウィングで統一されています。In 2とはベースが2分音符で1小節に2つしか音を弾かない時のスウィングの呼び方です。通常はwalking bass と言って1小節に4つ音を鳴らし、グルーブを作ります。それはIn 4のスウィングとも言います。


06. Woody'n You
 トランペッター、ディジー・ガレスピーの曲です。このアルバムで唯一コルトレーンとマイルスが同時にメロディーを吹いていますね。2管編成のアルバムでここまで一緒にメロディーを吹かないアルバムは珍しいですが、マイルスっぽいと言えるでしょう。そして唯一マイルスのオープンサウンド(ミュートをしてない状態)が聴けます。素晴らしいオープンサウンドはまるでバンドの音を貫いて一つの筋で通しているかのようです。マイルスのハイノートも聴けて、少しディジーの影響が聴こえてきますが、それを自分のスタイルでやってのけるところもマイルスの魅力でしょう。
 このアルバムで唯一のフィリー・ジョー・ジョーンズのドラムソロも聴けます。ドラムソロ明けの第二メロディーのバンドの一体感も素晴らしいですね。


ぜひみなさんもこのアルバムを聴いてみてください。

それではまた次回。

文:曽根麻央 Mao Soné







【LIVE INFO】
曽根麻央3-4月演奏スケジュール


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【公演名】
MAO SONÉ - Brightness of the Lives - at Blue Note Tokyo

【日時】
2021 4.23 fri.
[1st]Open5:30pm Start6:30pm [2nd]Open8:30pm Start9:15pm
※2ndショウのみインターネット配信(有料)実施予定
※アーカイブ配信視聴期間:4.26 mon. 11:59pmまで
※アーカイブ配信の内容はライヴ配信と異なる場合がございます。
予めご了承ください。
※当初の開催日程(2021 1.21 thu.)から変更となっております。

【メンバー】
曽根麻央(トランペット、ピアノ、キーボード)
井上銘(ギター)
山本連(ベース)
木村紘(ドラムス)

★公演内容に関するお問い合わせ
ブルーノート東京 TEL:03-5485-0088

▼URL
http://www.bluenote.co.jp/jp/artists/mao-sone



Recommend Disc

relaxin200.jpg
Title : 『Relaxin' With The Miles Davis Quintet』
Artist : The Miles Davis Quintet
LABEL : Prestige
NO : PRLP 7129
発売年 : 1958年



アマゾン詳細ページへ


【SONG LIST】

01. If I Were A Bell
02. You're My Everything
03. I Could Write A Book
04. Oleo
05. It Could Happen To You
06. Woody'n You




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Reviewer information

Mao Sone600.jpg

曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

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曽根麻央 Monthly Disc Review2021.02_ Ben Webster & "Sweets" Edison_Ben And "Sweets":Monthly Disc Review

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Title : 『Ben And "Sweets"』
Artist : Ben Webster & "Sweets" Edison

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【スウィングのコンピング】

みなさんこんにちは、曽根麻央です。
今日はBen WebsterとHarry "Sweets" Edison の2フロントのアルバム、Ben and "Sweets"について解説していきます。このアルバムではBen WebsterとHarry Edisonのいわゆるジャズのテナー&トランペットの王道サウンドを楽しむことができます。2人のイントネーション、強弱、アーティキュレーションの付け方など、細かい表現の一致が美しいアンサンブルを作り上げています。

さらにそれだけではなく、今回はHank Jonesのコンピングにも視点を当ててみましょう。コンピングとは、ジャズにおけるピアノやギターの伴奏の事で、リズムとハーモニーの掛け渡しを担う大切な要素です。特に5曲目のDid You Call Her TodayはHank Jonesのコンピングも光り、ジャズ史上最もスウィングしているテイクの一つではないかなと考えています。是非一緒に楽しんでいきましょう。

また、bebop以前に活躍したミュージシャン達が1962年に録音しているのも注目してください。僕らはジャズの歴史を語る時にどうしてもその時その時の新しい流派のことを多く語ってしまいす。その方が歴史の流れの説明が楽だからです。だからそれまでの昔ながらのスタイルが絶滅したかのように学びます。しかし実はそうではなくて、このアルバムのようにbebop以前のミュージシャンも活躍してアルバムを出し続けていました。


Ben Webster (ts)
Harry "Sweets" Edison (tp)
Hank Jones (p)
George Duvivier (b)
Clarence Johnson (d)

録音: 1962年6月6日&7日




ベースのGeorge Duvivierと、ドラムのClarence Johnsonについては、僕自身あまり知らなかったのでどの様な人物なのか調べてみました。


George Duvivier (1920-1985) はサイドメンとしてかなり活躍していたベーシストな様です。クラシカル・ヴァイオリンでキャリアをスタートして、the Central Manhattan Symphony Orchestraのアシスタント・コンサートマスターを16歳で務めた人物。NYU(ニューヨークユニバーシティ)でベースを始めて、Coleman HawkinsやLena Horne、Count Basie、Frank Sinatra、Bud Powell、Benny Goodmanなど幅広い音楽性を持つアーティスト達のサイドメンを務めた人物だそうです。


Clarence Johnson (1924-2018)もドラマーとしてJames Moodyの信頼を得て活動していた様です。Sonny Stittのアルバムにも多く参加しています。本アルバムでは、グルーヴに集中していて手数を多くを叩く事はないが、それによって生み出されるステディーなテンポが、このアルバムを強力なものとしています。

ここからはジャズファンならよく知る3人を、確認を兼ねて紹介します。


Hank Jones (1918-2010) は皆さんもよく知るジャズの歴史を代表するピアニスト。強力なタッチとリズムを奏でるピアノですが、そのサウンドは優しさに包まれていて、聴衆の心を癒してくれる存在だと思っています。Earl Hines, Fats Waller, Teddy Wilson, Art Tatumなどの最古のジャズピアノの影響を直に受けつつ、Hank Jones独自のサウンドを創りあげました。未だに彼のジャズピアノへ影響は絶大です。弟にはトランペッターのThad JonesとドラマーのElvin Jonesがいます。このアルバムでは彼の持つ強力なリズムとタッチから成る、これぞ至上のスウィング・コンピングを聴くことが出来ます。ピアニストの皆さんは必聴です。


Ben Webster (1909-1973) はColeman Hawkins, Lester Youngと同じく、ジャズサックスの歴史において最も重要な初期を代表する奏者で、その後の全てのサックス奏者に影響を与えています。Duke Ellington Big BandのAlto奏者Johnny Hodges に影響を受けました。そんなWebsterも40年台のエリントン楽団においてソリストとして活躍しました。とてもリリカルで特徴的なヴィブラート、Hodgesに影響を受けたであろう歌う様に滑らかなサックスプレイは、Websterのシグネチャーですし、いわゆるテナーサックスの在り方と言って良いでしょう。


Harry Sweets Edison (1915-1999) もマイルス以前にミュート・トランペットの音を確立しました。主にNelson RiddleのメンバーとしてFrank Sinatraの多くのアレンジでソロを吹いています。初期のキャリアの30年代にはCount Basieのビッグバンドへ入り活躍。余談ですが当時余りにもモテたために"Sweets"というあだ名がついたそう(笑)。

"Did You Call Her Today

さて、今回メインの話題のコンピンングについて5曲目の"Did You Call Her Today"を聴いていきましょう。




そもそもこのトラックは、先にも言いましたが、僕がジャズ史上最もスウィングしているテイクだと考えていて、それはもちろんリーダー2人のフロントの歌い回しによるものでもあるのですが、ステディーなベースとドラムが織りなす完璧な四分音符の上で、自由にリズムを操るHank Jonesのコンピングによる功績が大きいです。

以下のビデオ僕が楽譜ソフトに入力したプレイバック音源ですが、Hank Jonesのリズムが8分音符だったり、3連音符だったり、またまた16分音符だったり、縦横無尽に変化しているのがわかると思います。これでもメロディーや歌の邪魔にならないのは、うまいこと自分のスペースを見つけているからです。サックスやトランペットの譜面と見比べると、Hankのコンピングは必ずメロディーとメロディーの間の休みに強力なリズムを提示していることがわかるでしょう。特に途中の0:46からの16分音符はとても特徴的で、彼の弟のElvin Jonesのスネアのパターンにも出てくることがあります。





このように8分音符だったり、3連音符だったり、またまた16分音符だったり、リズムが複合的であることがジャズのリズムを実際に演奏して見た時に難しい理由でしょう。スクエアーに全てが揃っているとニセモノ感が出てしまいます。これは複合リズムの音楽でもあるアフリカ音楽にジャズの起源がある所以でしょう。

この演奏ではHarry Sweets Edisonは終始バケットミュートと呼ばれる弱音器を使用しています。ジャケットの写真で使用しているミュートですね。名前の通りバケツのような形をしていて、中にわたが詰められているため少しモコモコしたサウンドになります。

曲はBen Websterのものですが、コード進行は"In A Mellow Tone"と同じコード進行です。このように既存の曲のコード進行を使いその上に新たなメロディーを描く手法をContrafactといいます。おもにbebop期に流行った手法でチャーリーパーカーが"Donna Lee"を"Indiana"という曲の進行を使っていたり、Sonny Rollinsが"Oleo"を"I Got Rhythm"の進行を使っているのが代表的なContrafactですね。

EdisonもWebsterも実に彼ららしい見事な歌心溢れるソロを展開しています。ぜひソロ中の彼らフロントマンとHank Jonesのソロとコンピングの駆け引きもよく聴いていただきたいです。Hank Jonesのソロもコンピングで見せるリズム感をそのままに8分音符だったり、3連音符だったり、またまた16分音符だったり、ソロフレーズも自由自在にリズムを操ります。それにしても見事なタッチです。

そこに続くシャウトコーラスもメロディーラインとピアノの駆け引きが非常によくできています。シャウトコーラスとは、以前の記事でもなんども書きましたが、アレンジャーコーラスとも呼ばれていて、編曲家が自由に書き足して良い部分です。通常ビッグバンドのアレンジ向けに書かれることが多いです。


ここからは他の収録曲を簡単に解説します。1曲目の"Better Go"はEbのブルース曲でWebsterが作曲しました。ここではHarry Edisonのハーマンミュート(Miles Davisがよく使った)でのソロが聴けます。Websterのリラックスしたスタイルもサックスの王道といった感じです。もちろんこのトラックでもHank Jonesのコンピングに耳を傾けてみてください。



"How Long Has This Been Going"OnはGeorge Gershwinの曲。WebsterとHank Jonesのデュオから始まります。終始Websterをフューチャーしていてワンホーンのテイクです。落ち着いた雰囲気はジャズのバラードのあり方そのものですね。


"Kitty"はHarry Sweets Edisonのブルージーなオリジナル曲。EdisonとWesterの2ホーンが心地良いですね。こちらもソロはEdisonのプランジャーミュートを全閉じでサウンドが聴けます。Websterの喋りかけているようなソロは圧巻です。


"My Romance"はRichard RodgersとLorenz Hartが書いたバラード曲。これもWebsterをフィーチャーしています。


"Embraceable You"はガーシュウィンが書いた曲です。こちらはEdisonのハーマンミュートでのバージョンになっています。Hank Jonesとのデュオから始まり、まるで歌詞を読んでいるかのような雰囲気でトツトツと、しかし美しく演奏してくれています。Harry Sweets Edisonの音色はよどみがなく美しくて、トランペットの良さを前面に引き出してくれている奏者だと思います。


ぜひこの素晴らしいアルバムを皆さんも聴いてみて下さいね。
それではまた次回。

文:曽根麻央 Mao Soné







【LIVE INFO】

2/17 (水) @ Velera, 赤坂
MAO SONÉ [曽根麻央] Trio + Tomoaki Baba [馬場智章]
https://velera.tokyo/

2/24 (水) @ Alfie, 六本木
MAO SONÉ [曽根麻央] Brightness Of The Lives
http://alfie.tokyo/

2/27 (土) @ Studio WUU, 柏
MAO SONÉ [曽根麻央] Trio + Tomoaki Baba [馬場智章]
https://www.wuu.co.jp/

4/23 (金) @ Blue Note Tokyo, 表参道
MAO SONÉ [曽根麻央] Brightness Of The Lives
http://www.bluenote.co.jp/jp/


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【公演名】
MAO SONÉ - Brightness of the Lives - at Blue Note Tokyo

【日時】
2021 4.23 fri.
[1st]Open5:30pm Start6:30pm [2nd]Open8:30pm Start9:15pm
※2ndショウのみインターネット配信(有料)実施予定
※アーカイブ配信視聴期間:4.26 mon. 11:59pmまで
※アーカイブ配信の内容はライヴ配信と異なる場合がございます。
予めご了承ください。
※当初の開催日程(2021 1.21 thu.)から変更となっております。

【メンバー】
曽根麻央(トランペット、ピアノ、キーボード)
井上銘(ギター)
山本連(ベース)
木村紘(ドラムス)

★公演内容に関するお問い合わせ
ブルーノート東京 TEL:03-5485-0088

▼URL
http://www.bluenote.co.jp/jp/artists/mao-sone



Recommend Disc

ben_sweets200.jpg
Title : 『Ben And "Sweets"』
Artist : Ben Webster & "Sweets" Edison
LABEL : Columbia
NO : CS 8691
発売年 : 1962年



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【SONG LIST】

01. Better Go
02. How Long Has This Been Going On
03. Kitty
04. My Romance
05. Did You Call Her Today
06. Embraceable You




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Reviewer information

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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

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曽根麻央 Monthly Disc Review2021.01_Nicholas Payton_Into The Blue:Monthly Disc Review

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Title : 『Into The Blue』
Artist : Nicholas Payton

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【リラックスした無理のないトランペットプレイを楽しめる現代では珍しい1枚】


あけましておめでとうございます。トランペッター・ピアニストの曽根麻央です。新年から演奏やコンサートの延期の連絡が相次いでいますが、今年も頑張っていきますので、よろしくお願いいたします。なんと僕のDISC REVIEWもこれで10回目!早いものです!

先月の記事でお伝えした1/21の僕のブルーノート東京での公演ですが、緊急事態宣言を受け、4/23(金)に延期することになりました。詳しくは以下よりお確かめください。


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【公演名】
MAO SONÉ - Brightness of the Lives - at Blue Note Tokyo

【日時】
2021 4.23 fri.
[1st]Open5:30pm Start6:30pm [2nd]Open8:30pm Start9:15pm
※2ndショウのみインターネット配信(有料)実施予定
※アーカイブ配信視聴期間:4.26 mon. 11:59pmまで
※アーカイブ配信の内容はライヴ配信と異なる場合がございます。
予めご了承ください。
※当初の開催日程(2021 1.21 thu.)から変更となっております。

【メンバー】
曽根麻央(トランペット、ピアノ、キーボード)
井上銘(ギター)
山本連(ベース)
木村紘(ドラムス)

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ブルーノート東京 TEL:03-5485-0088

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 今回は僕が高校生の時に聞いて影響を受けたアルバムをご紹介します。

現代のジャズトランペッターの作品、特にウィントン・マルサリス以降の創造的なトランペッターの作品は音楽的にも素晴らしいのだが、非常に技巧的でリラックスして聴くことの対象にあるものが多いと感じます。しかし技術的にも音楽的にも成熟したNicholas Paytonが、一切テクニックをひけらかさずに非常にリラックスした雰囲気で録音した『Into The Blue』ほど純粋に「音楽」を楽しめるトランペッターのアルバムはなかなかないと思います。

まるで漂流する様に自然に存在するトランペットソロは、Paytonの技術や経験、音楽力があってこそのなせる技。録音の音質も部屋の音が感じられ、ライブ感があり、リアルな音が聴けます。全体的にNicholas Paytonのソロが多めで、多少のKevin Haysのソロはあるものの、Paytonのカリスマ感もあるアルバムに仕上がっています。


Nicholas Payton - Trumpet, Vocals, Synthesizer
Kevin Hays - Piano, Fender Rhodes
Vicente Archer - bass
Marcus Gilmore - drums
Daniel Sadownick - percussion

Released in 2008







1. Drucilla (Walter Payton)
 このアルバムの冒頭は「Drucilla」というNicholas Paytonのお父さんでベーシスト/スーザホンニストであるWalter Paytonの作品から始まります。最初は3拍子のバラードで1コーラスメロディーが演奏されます。おそらく原曲に沿っているのかと思います。その後スィングになりKevin Hays→Nicholas Paytonのソロへと流れていきます。

 このアルバムを通して注目したいのが当時まだ22歳のドラマーMarcus Gilmoreです。3拍子のバラードでのマレットでの空気感の作り方はもちろんのこと、その後のスウィングに突入した時の演奏方法が実にユニークです。

通常ドラマーは一定の店舗でグルーブに突入すると一定のパターンを叩き音楽を推進させます。ジャズであったらライドシンバルのパターンが通常一定で保たれています。しかし、このMarcus Gilmoreの場合、シンバルパターンがまるで音楽の一部であるかのように自在に現れては消えて、強弱をつけていく、しかしそれでいてグルーブ感は失われない独特の奏法をしています。まるでソリストの間を縫うようにグルーブさせていくのがとても印象的。

ベースのVicente Archerもそんなドラマーとの駆け引きを楽しむかのようにいわゆるウォーキングベース(4拍きちんと演奏するジャズの基本的スタイル)を演奏せずに音楽に緊張感を持たせています。
4:10にようやくベースとドラムが安定的なグルーブを演奏し、今までの緊張からとき離れてリリースされるのがとてもカッコ良いですね。


2. Let It Ride
 Evenのストレートフィールの曲だが、その上でMarcus Gilmoreは早いスウィングの様なフィールを叩いている1曲。Kevin Haysはピアノからローズに変わり独特な雰囲気を与えています。


3. Triptych
 特徴的なVamp(繰り返し奏でられるベースパターンとそのコード進行)が繰り返される一曲です。今でもPaytonのライブでは重要なレパートリーの一曲になっています。D, G, B, Eのベース音とは全く別にDb, D, Eb, Dの3和音が行ったり来たりする独特のサウンドです。そのVampの上で見事なソロをPaytonは繰り広げています。トランペッターは必聴の演奏だと思います。グルーブもニューオリンズ・ジャズを基盤としているファンクグルーブでとても聞いていて楽しい曲の一つです。


4. Chinatown
 Jerry Goldsmith作曲の、ピアノの弦のサウンドから始まる特徴的なバラード曲。もともと映画音楽で原曲もトランペットで吹かれている曲の様ですが、ここではNicholas Paytonが彼なりのメロディーの吹き方でストーリーを語ってくれます。


5. The Crimson Touch
 Paytonのトランペットとピアノのユニゾンが特徴的な、いかにも現代のブラックミュージックテイストの曲です。このPaytonのトランペットソロも圧巻なので聴いていただきたいです。おそらくバンドでの録音後にPayton自らシンセサイザーで重ねている様子です。トランペットソロ後のトランペットとピアノのユニゾン(シャウトコーラス)も見事に作曲されていて、美しい作品です。


6. The Backward Step
 トランペットがメロディーを奏でて始まりますが、この曲は現在でもPaytonの重要なライブ・レパートリーで、ライブによっては歌詞がついて歌われているバージョンもあります。ちなみに今のライブではPayton自らがピアノ(ローズ)を弾き、同時にトランペットを吹いている場合が多いです。僕もこの曲をなんども生で聞きましたが、毎回驚愕のプレイを目の当たりにしました。


7. Nida
 またもやPaytonのお父さん、Walter Paytonの曲から。特徴的なMarcus Gilmoreのニューオリンズスタイルに影響を受けた独自のドラムパターンが印象的です。メロディーもシンプルでとっても覚えやすく、ユニークな作品です。


8. Blue
 Paytonのハーマンミュートでの演奏と、ボーカルを聞けるバラード曲です。


9. Fleur De Lis
 ニューオリンズ・テイストのグルーブから始まる曲。やはりPaytonは自身のルーツを非常に大事にしていますね。メロディーもトランペットとローズ・ピアノのハーモニーがとっても美しく響きます。Kevin Haysはローズのビブラートを非常に心地よく設定していて、魅力的なサウンドを引き立てています。


10. The Charleston Hop (The Blue Steps)
 このアルバム唯一のラテン調の曲。テーマが終わった後のKevin Haysのソロの入り方がしびれます。注目してみてください。そしてここにきてPaytonも熱量のあるトランペット・ソロをようやく聞かせてくれるという構成。このソロは相変わらず圧巻の技術とスタミナを惜しみなく店、それでなおかつ音楽としての魅力を損なわない素晴らしいソロを展開してくれています。


いかがでしたでしたか? 
また次のDisc Reviewでお会いするのを楽しみにしております。

文:曽根麻央 Mao Soné










Recommend Disc

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Title : 『Into The Blue』
Artist : Nicholas Payton
LABEL : Nonesuch
NO : 7559-79942-4
発売年 : 2008年



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【SONG LIST】

01. Drucilla
02. Let It Ride
03. Triptych
04. Chinatown
05. The Crimson Touch
06. The Backward Step
07. Nida
08. Blue
09. Fleur De Lis
10. The Charleston Hop (The Blue Steps)




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Reviewer information

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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

曽根麻央Official Site

曽根麻央 Monthly Disc Review2020.12_Duke Ellington_Three Suites:Monthly Disc Review

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Title : 『Three Suites』
Artist : Duke Ellington

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【クリスマスに聴きたいジャズアルバム】


今日はクリスマスに聴きたいジャズのアルバムとしてデューク・エリントンの『Three Suites』というアルバムを紹介します。このアルバムはエリントンが誰でも聞いたことのあるチャイコフスキーの名作「くるみ割り人形」などのクラシックの組曲をエリントンサウンドに編曲したアルバムです。よく知っているこのメロディーを楽しんでいただくと共にエリントンの特徴を探って生きましょう。


本題に入る前に一つ宣伝があります。来年2021年の1月21日に私・曽根麻央が憧れの舞台、Blue Note Tokyoへ初出演します。 メンバーは大信頼、大活躍の仲間たち。彼らと共にどこまででも行ける気がします。


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 メンバーの井上銘くん、山本連くん、木村紘くんとはバークリー音楽大学時代の仲間で、全米桜祭りとBlues Alley(ワシントンDC)への出演を機に2014年に結成しました。当時はまだみんな学生で1日7時間リハーサルを毎日行ったり、またプライベートではルームメイトだったりもして同じ時間を過ごしたりもしました。リスペクトし合えるこのメンバーでブルーノートの舞台に挑むことができて嬉しいです! メンバー一同お待ちしております。

【公演名】
MAO SONÉ - Brightness of the Lives - at Blue Note Tokyo

【日時】
2021 1.21 thu.
[1st]Open5:30pm Start6:30pm [2nd]Open8:30pm Start9:15pm
※2ndショウのみインターネット配信(有料)実施予定
※アーカイブ配信視聴期間:1.24 sun. 11:59pmまで
※アーカイブ配信の内容はライヴ配信と異なる場合がございます。 予めご了承ください。

【メンバー】
曽根麻央(トランペット、ピアノ、キーボード)
井上銘(ギター)
山本連(ベース)
木村紘(ドラムス)

★公演内容に関するお問い合わせ
ブルーノート東京 TEL:03-5485-0088

★配信プラットフォーム各社のチケット購入/視聴方法、お問合せフォームなどはこちら

"ぴあ" をご利用のお客様
https://t.pia.jp/pia/events/pialivestream
TEL:017-718-3572

"イープラス" をご利用のお客様
https://eplus.jp/sf/guide/streamingplus-userguide

"ZAIKO" をご利用のお客様
https://zaiko.io/support

▼URL
http://www.bluenote.co.jp/jp/artists/mao-sone






 話が逸れてしまいましたがここからはいつも通りアルバムを聴いていきましょう!

 「Three Suites = 3組曲」というタイトルの通り、このアルバムには3つの組曲が収録されています。組曲とはいくつかの曲を組み合わせて大きな作品を構成する作曲法で、ビゼーの「カルメン組曲」やホルストの「惑星」を代表するように、ストーリや一貫した主題に沿って曲が配列(構成)されています。特にこのアルバムにも収録されているチャイコフスキーの「くるみ割り人形」はクリスマスのお話であるのでこれからの1週間、お家で楽しく聴いていただきたい名演奏、名アレンジとなっています。今回はこのくるみ割り人形のアレンジを聴きながら、エリントン・サウンドの特徴についてみていきましょう。

ちなみにこのアルバムのアレンジはエリントンとビリー・ストレイホーンの2人によってなされています。





Overture - 序曲
 ベースとドラムのスウィングのリズムに乗って、我々がよく知っているあのメロディーがトロンボーンの音で聴こえてきます。ここにはすでにエリントンのアレンジの手法が見えます。

 トロンボーン3本によって作られるハーモニー(今回はメロディーを奏でていますが、0:36の様にバック・グラウンドとしてヒットだけ演奏していることもある)はエリントン・サウンドの代表的な手法です。このサウンドが聴こえてきたらエリントンだと言って良いほどに。またそのカウンターライン(対位法)としてサックス・セクションがユニゾンで主旋律に応えています。これもエリントン・サウンドの特徴です。その後も見事にトランペットなどの管楽器が増え、メロディーも様々な楽器を行き交います。


Toot TooT Tootie Toot (Dance of the Reed-Pipes) - 葦笛の踊り
 この曲ではまずサックス・セクションがアルト、テナー、バリトンの3本に加え、クラリネットが2本という、これもエリントン・ビッグバンドの独特のサウンドを出すインストゥルメンテーション(楽器の指定)になっています。

 またトランペットやトロンボーン・セクションは「プランジャー」と呼ばれるミュートを使って、独特な、しゃべっているようなサウンドを出しています。プランジャーはもともとトイレのスッポンの持ち手の部分を取ったもので、そのゴムの部分で楽器のベルを閉じたり開けたりするため、こもった音色とオープンな音色、またはその2つを混ぜたり色々なカラーを出せます。もともとはソロで使われることが多かったこのミュートをセクションで使ったのもエリントン・サウンドです。

ちなみにこのトラックにも3本のトロンボーンのバックグラウンドがいたるところで出てきますので良く聴いてみてください。





Peanut Brittle Brigade (March) - 行進曲
 もともとチャイコフスキーは美しい3和音を基盤に書いたこの曲ですが、エリントンはトランペット&トロンボーン・セクションの4度のボイシングの重なりで独特なサウンドを最初から聴かせてくれます。

 先ほどメロディーが色々な楽器を推移している話をしました。エリントンはオリジナルのメロディーやカウンターポイントなどの要素を適切な楽器に与えることで、長い旋律を一つのセクションや特定の楽器だけに止めることはせずに、書く旋律をジャズのリズムに違和感なく乗せることができています。


Sugar Rum Cherry (Dance Of The Sugar Plum Fairy) - 金平糖の精の踊り
 アフロビートの上でサックスが少し怪しげにメロディーを奏でるこのアレンジ。テナーソロの後ろではやはりトランペットx2とトロンボーンx1の3本で和音を、しかもプランジャーを使用してバックグラウンドを奏でているのがとても効果的ですね。


Entr'acte
Overtureと同じフレーズやオーケストレーションが出てきます。Overtureのソロ部分だと思っていただいていいと思います。


The Volga Vouty (Russian Dance) -ロシアの踊り
トランペットとトロンボーンの印象的なハイノートのイントロに続き、サックスの高音でのクラスター和音(音と音が乖離しておらず、密なサウンドがする)が特徴的なアレンジ。サックスの高音クラスター和音もエリントン楽団独特のサウンドです。その後はトランペットx2とトロンボーンx1の3本で和音を、しかもプランジャーを使用してバックグラウンドを奏でているのも以前登場したテクニックですね。そしてそれに応えるサックスのユニゾンもあります。ここまでくると大分エリントンのビッグバンドの特徴が見えてきたのではないでしょうか?


Chinoserie (Chinese Dance) - 中国の踊り
他のアレンジに比べると小編成のアレンジです。基本的には少しボレロのようなドラムのリズムに、重音を使った独特のベースラインが繰り返し演奏されています。その上に、クラリネットの主旋律とそれに呼応するテナーの主旋律が またこれも長いこと繰り返します。トロンボーンがバックグラウンドを演奏している箇所もあります。1:35からのエリントンの四発のみの強力な和音も印象的です。


Danse of the Floreadores (Waltz of the Flowers) - 花のワルツ
原曲は華やかで軽やかなワルツを、スウィングのアレンジにしています。力強くフルオーケストラで奏でられるメロディーとその複雑なハーモニーはまさにエリントン・サウンドを象徴するものです。まるでブラス・シンセサイザーのように、ブラスの塊のサウンドはこのバンド唯一無二のトレンドではないでしょうか?


Arabesque Cookie (Arabian Dance) - アラビアの踊り
原曲はGのペダルの上で美しい旋律と、自然に移り変わる和音を聞くことができる。ペダルの技法はベースの音を同じ音でキープしているのに、上に乗っている和音が変化することを言います。
エリントンのアレンジもベースの一定のオスティナート(パターン)の上で徐々に変化するようになっています。バンブーフルートとベースクラリネットの組み合わせが独自の雰囲気を作り上げていてとても異色の面白いサウンドです。

このアルバムにはグリークの「ペールギュント」やエリントンとストレイホーンの「木曜日」といった組曲が収められています。

他にも『Far East Suite』や『The Ellington Suites』など自身で作曲した組曲を収録しているアルバムも大変オススメです。『Far East Suite』には名曲「Isfahan」も収録されています。『The Ellington Suites』はエリザベス女王に捧げられた組曲も入っていてその中の「Sunset And The Mocking Bird」という曲もいかにもエリントンらしい美しさのある曲で大好きです。是非聴いてみてください。





いかがでしたでしたか? 
また次のDisc Reviewでお会いするのを楽しみにしております。

文:曽根麻央 Mao Soné






【曽根麻央ライブ情報】
12/25 (金) @ 赤坂Velera
曽根麻央 (trumpet & piano)、伊藤勇司 (bass)、木村紘 (drums)
https://velera.tokyo/



Recommend Disc

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Title : 『Three Suites』
Artist : Duke Ellington
LABEL : Columbia
NO : CK46825
発売年 : 1961年



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【SONG LIST】

01. バレエ組曲「くるみ割り人形」 序曲
02. バレエ組曲「くるみ割り人形」 トゥート・トゥート・トゥーティ・トゥート(あし笛の踊り)
03. バレエ組曲「くるみ割り人形」 ピーナッツ・ブリットル・ブリゲイド(行進曲)
04. バレエ組曲「くるみ割り人形」 シュガー・ラム・チェリー(こんぺい糖の精の踊り)
05. バレエ組曲「くるみ割り人形」 間奏曲
06. バレエ組曲「くるみ割り人形」 ザ・ボルガ・ボウティ(ロシアの踊り)
07. バレエ組曲「くるみ割り人形」 中国の踊り
08. バレエ組曲「くるみ割り人形」 花のワルツ
09. バレエ組曲「くるみ割り人形」 アラベスク・クッキー(アラビアの踊り)
10. 組曲「ペール・ギュント」第1、第2 朝の気分
11. 組曲「ペール・ギュント」第1、第2 山の魔王の洞窟にて
12. 組曲「ペール・ギュント」第1、第2 ソルヴェイグの歌
13. 組曲「ペール・ギュント」第1、第2 オーゼの死
14. 組曲「ペール・ギュント」第1、第2 アニトラの踊り
15. 組曲「木曜日」 ミスフィット・ブルース
16. 組曲「木曜日」 スウィフティ
17. 組曲「木曜日」 ズイート・ザーズデイ
18. 組曲「木曜日」 レイ-バイ




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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

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Title : 『Money Jungle: Provocative In Blue』
Artist : Terri Lyne Carrington

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【リファレンス音源】


みなさんこんにちは、曽根麻央です。いかがお過ごしでしょうか?


 ジャズのアルバムの中には、不思議なことに多くの人に愛されるにも関わらず、必ずしも良い音質やミックスである、というわけでは決してありません。これは、ジャズを聴く際、演奏者の魅力というのが音楽の良し悪しを判断する上でもっとも重要な要因となるからだと思うのです。

時代的にレコーディング技術が追いついていなかったり、そんな中でのライブ録音だったりと、皆さんが愛してやまない名盤の中にもどこか「もう少しレコーディングクオリティーがよかったらなあ...」と思われることもしばしあるかもしれません。それでもその音源に魅力があるのは、その一瞬一瞬に魂を込めた当時の名手たちの魅力を感じ取れるからではないでしょうか?また、様々なレコーディングの技術が、録音されたその時期にリアルタイムで発明されているわけですから、おそらくエンジニアも試行錯誤をしていた(もちろん現在でもしている)、そんな事情もあると予測ができます。

 しかし昔から「良い録音」をされたジャズの名盤もたくさんあります。ブルー・ノートやインパルスやその他の名盤と言われるシリーズには、現在においても尚「ジャズ・サウンド」のリファレンス(参考)となりうるものです。また、「何でこの時代の機材でこんなに良い音で録れているの?」だとか、「何でモノラル録音なのにこんなに空間が感じられるの?」だとか、色々と考えさせられるすごい音というのが歴史上沢山存在します。それらを聴いて体感して見るのもジャズの楽しみ方の一つです。

 このように「良い音」で録られた音源は、次の世代のアーティストが制作活動をする上でリファレンスとして、サウンドの基準として用いられる場合が多いです。例えば僕がスタジオに入ると、リスニング・ブースに自分が良いと思うリファレンスの音源を持っていって再生してもらいます。これによって、そのスタジオのモニターや部屋の鳴りかたなど「音の癖」を把握して、エンジニアに注文を出したりして理想の音に自分の作品を近づけていきます。リファレンス音源を持っていないで、特によく知らないスタジオでその日録音した音源のみを聴き良い音だと思っていても、家に持ち帰った時にがっかりする音質だった、なんて悲しい事件が起こったりもします。レコーディングの怖いところです。

 そこで今日は僕が思う現在のジャズのレコーディングのリファレンスとして最適な音源とアルバム、Terri Lyne Carringtonの『Money Jungle: Provocative in Blue』をご紹介しようと思います。


 僕は6曲目の「Grass Roots」をリファレンスにすることが多いです。ジャズの基本でもあるピアノトリオとしてのミックスが綺麗で、バンドとしてもバランスがとてもよくとれています。ドラムが全体を包み込むように空間を支配していてとても気持ちいです。ベースもリズムとピッチがよく聞こえるのに、ベース的な太さを残しています。ピアノも高音から低音までバランスよく綺麗に収録されているのでこれを聴きながら自分の録音の音を調整してもらうと理想に近くなります。もちろんそれはテリやクリスチャン・マクブライド、ジェラルド・クレイトンなどのモンスター級のプレイヤーが揃っているのも大前提としてあるのですが...




 ちなみにトランペットの音は理想の音が常に頭にあるので、あまりリファレンスは持っておらず、その時の直感に頼ることが多いです。


 テリ・リン・キャリントンは女性として初めてジャズ・インストゥルメント部門でグラミーを受賞したこともあり、女性ドラマーとして注目を浴びることが多いのですが、アメリカで様々な一流ドラマーを見てきた僕からすると、彼女こそダントツで現在のトップドラマーだと信じています。スウィングからファンク、フュージョン、ロック、ラテンまでありとあらゆるグルーブを自在に、そしてどんなダイナミックスでも表現できるマスターです。

 Money Jungleという言葉はそもそも、デューク・エリントン、チャールズ・ミンガス、マックス・ローチの1962年のアルバムですが、今回はテリがそこに独自の解釈を加えたアレンジと、オリジナルで構成されています。

メンバーを見てみましょう。


Terri Lyne Carrington - drums
Gerald Clayton - piano
Christian McBride - bass

[ゲスト]
Clark Terry - trumpet, vocals (track 2)
Robin Eubanks - trombone (tracks 2, 9)
Antonio Hart - flute (tracks 2, 9)
Tia Fuller - flute (track 2), alto saxophone (track 9)
Nir Felder - guitar (track 3)
Arturo Stabile - percussion (track 8)
Lizz Wright - vocals (track 3)
Shea Rose - vocals (track 11)
Herbie Hancock - vocals (track 11)




1. Money Jungle
 「現在の規範では命を救うことや地球のバランスをとること、正義や平和を語ることに何の利益もありません。利益を産むためには問題を起こさねばならない。

(There is no profit under the current paradigm in saving lives, putting balance on this planet, having justice and peace or anything else. You have to create problems to create profit.)」

という朗読に合わせてテリがドラムソロを演奏しています。

 ちなみにテリはこのような朗読と音楽をコラボさせるのが得意で、僕自身も彼女のTed Talkでのパフォーマンスで参加させてもらっています。是非見てください。3:41ぐらいからです。




2. Fleurette Africain
 クラーク・テリーがボーカルとトランペットで参加しています。クラークはトレードマークでもあるスキャットを聴かせてくれます。彼のスキャットは歌詞自体には全く意味がないのに、言葉や意味が聴こえてくる感じがして本当に圧巻ですね。


3. Backward Country Boy Blues
 古いブルース調の雰囲気から始まり、徐々にコンテンポラリーの要素が増しています。ギターの名手、ニア・フェルダーが参加。ゴスペルシンガーのリズ・ライトも参加しています。


4. Very Special
 元祖Money Jungleでも重要なレパートリーでもあるブルース曲。テリ、マクブライド、クレイトンのトリオでもスウィングの直球演奏を聴くことができます。テリの美しいライドシンバルのグルーブはドラマー必聴かと思います。マクブライドとのコンビネーションも最高のグルーブを出しています。かなりリズミックなソロのクレイトンに、完璧にベースをコントロールするマクブライドを聴くことができます。


5. Wig Wise
こちらも元祖Money Jungleより。原曲は4拍子のスウィングですが、6拍子のイーブン・フィールで演奏されているため、かなり原曲とはかけ離れています。単純にトリオだけの演奏になっていて、こちらもかなり聴き応えのあるテイクだと思います。


6.Grass Roots
 先に書いたように僕がアコースティックのジャズのレコーディングの際リファレンス音源として持っていくテイクです。テリのオリジナルなようです。先ほども言ったように、ドラムの全体を包み込むような空気感が好きなのですが、もちろんこれはレコーディング・エンジニアだけで成し遂げられることではなく、ドラムのチューニング、タッチなど色々なことが合わさってこの音が録れています。特にこのアルバムはジャズのアコースティックのアルバムにしてはベースドラムのチューニングが高すぎず、ドシッと中身の詰まった音色なのがとても気持ちいです。ドラマーにとって自分のチューニング、そのバンドに最適のチューニングを見つけることは全体のサウンドに関わってくるので、是非チューニングの勉強をしてみてください。これだけでドラムの演奏レベルと一緒に演奏しやすさがかなり上がります。


7. No Boxes (Nor Words)
 こちらもテリのオリジナル。ピアノの左手とベースでユニゾンラインが演奏される上で、右手が自由に動き回るイントロを経て、スウィングのテーマ部分に入って行きます。3:01ぐらいのテーマからソロに入ったタイミングのドライブ感(グルーブが前に躍進していく感じ)が凄まじいです。やはりこのレベルのプレイヤーはグルーブに対する瞬時の集中力(もはや集中を超えてナチュラルに演奏してるのでしょうが...)が他と一線を画していますね。




8. A Little Max
 5拍子のイーブンの曲。以前の記事でもお話しした5拍子のクラーベ(変拍子クラーベ)が随所で聴き取れます。こういったクラーベを用いた演奏では、クラーベを体に取り込んでそこに肉付けをしているので、ぱっと聴いた際にクラーベが無いように聴こえてしまいますが、よく聴くと中心にはどこかいるものです。3:50からはまさに5拍子クラーベのテリ流のパターンを叩いているのでドラマーの方は是非練習してみてください。




9. Switch Blade
 マクブライドのベースソロから入る、スローブルースの曲。ビヨンセのバンドのサックスも務めるティア・フラーがサックスを、前回取り上げたSFJazz Collectiveにも参加しているロビン・ユーバンクスがトロンボーンを演奏しています。


10. Cut Off
 エリントンのソリチュードのような導入のジェラルド・クレイトンのオリジナルバラード。


11. Rem Blues/Music
 何とハービー・ハンコックも朗読に参加しているこのトラック。クレイトンのフェンダー・ローズが静かに雰囲気を作り、徐々にグルーブが聴こえてきて、シーア・ローズという方がエリントンの詩を朗読しています。「人気を得ることはお金を得ること、だけどそれは音楽ではない」というハンコックの言葉で締めくくられます。




いかがでしたでしたか? 
また次のDisc Reviewでお会いするのを楽しみにしております。

文:曽根麻央 Mao Soné






【曽根麻央ライブ情報】
11/17 (火) @ 六本木サテンドール
Brightness Of The Lives [曽根麻央 (tp&keys)、井上銘(gt)、山本連(eb)、木村紘(ds)]
https://www.satin-doll.jp/

11/20 (金) @ 赤坂Velera
曽根麻央 (trumpet & piano)、伊藤勇司 (bass)、木村紘 (drums)
https://velera.tokyo/

12/13 (日) @ 六本木サテンドール
曽根麻央 (tp) & David Bryant (p)
https://www.satin-doll.jp/

12/25 (金) @ 赤坂Velera
曽根麻央 (trumpet & piano)、伊藤勇司 (bass)、木村紘 (drums)
https://velera.tokyo/



Recommend Disc

moneyjungle200.jpg
Title : 『Money Jungle: Provocative In Blue』
Artist : Terri Lyne Carrington
LABEL : Concord Jazz ‎
NO : CJA-34026-02
発売年 : 2013年



アマゾン詳細ページへ


【SONG LIST】

01. Money Jungle
02. Fleurette Africain
03. Backward Country Boy Blues
04. Very Special
05. Wig Wise
06. Grass Roots
07. No Boxes (Nor Words)
08. A Little Max (Parfait)
09. Switch Blade
10. Cut Off
11. Rem Blues/Music




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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

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曽根麻央 Monthly Disc Review2020.10_現代・中規模編成ジャズの名盤:Monthly Disc Review

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Title : 『SFJAZZ Collective 2』
Artist : SFJAZZ Collective

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【現代・中規模編成ジャズの名盤】


みなさんこんにちは、トランペット&ピアノの曽根麻央です。気温もだいぶ低くなり、都内では秋物のコートが手放せなくなりました。COVID-19の影響で未だ活動は小規模ではありますが、温かいお客様に囲まれ、音楽的にも充実した日常が戻ってきつつあります。みなさんはいかがお過ごしでしょうか?


 さて今回は現代の中規模編成のジャズの名盤ということで、SFJAZZ Collectiveの『2』というアルバムを取り上げます。このアルバムのアレンジや演奏を聴いていきましょう。また中規模編成の歴史的なアルバム『Birth Of Cool』については以前書きましたので、そういった過去の類似作品と現代の作品の違いも感じ取っていただけると嬉しいです。


SFJAZZ Collectiveは2004年から現在も活動する続く8人編成のジャズアンサンブルで、非営利団体のSF Jazzや毎年開催されるサンフランシスコ・ジャズ・フェスティバルによって運営されています。毎年、ジャズの代表的なレジェンド・アーティストのレパートリーのカヴァーと、メンバーの新作とを50:50にして演目を構成しています。


例えば2004年はオーネット・コールマン、2005年はコルトレーン、2006年はハービー・ハンコックといった感じです。 メンバーは入れ替わったりしていますが、ブライアン・ブレイドやジョー・ロヴァーノといった今のジャズシーンを代表するメンバーが常に参加しています。2004年からの活動ということで、僕ら30歳手前の世代のミュージシャンにとっては、当時、ヒーローの集まりのような夢のアンサンブルでした。


2000年代のジャズの流れとして印象深いのは、2001年のウエイン・ショーター・カルテットの結成や、2008年のアンブロース・アキンムシーレのモンク・コンペティション優勝からのデビューなどですが、それと並んで、SFJAZZ Collectiveの活動も話題となりました。


 では早速この『2』のメンバーを見ていきましょう。トランペッターの皆さんは、ニコラス・ペイトンの圧倒的なトランペット・プレイを聴くことができるので、このアルバムは必聴です!


MIGUEL ZENON(as,fl)
JOSHUA REDMAN(ts,ss)
NICHOLAS PAYTON(tp)
ISAAC SMITH(tb)
BOBBY HUTCHERSON(vib,marimba)
RENEE ROSNES(p)
MATT PENMAN(b)
ERIC HARLAND(ds)

GIL GOLDSTEIN (arranger on Coltrane's Songs)




1. Moment's Notice




 ジョン・コルトレーンの代表曲をギル・ゴールドスタインのアレンジで聴くことができます。インパクトのあるホーンの呼びかけにエリック・ハーランドのドラムが応えるイントロ。やっぱりイントロやアルバムの出だしというのは人の心を掴む重要な部分なので、インパクトはどの時代でも大事ですね! 
その後、あの有名なメロディーが聴こえてきます。それに続きニコラス・ペイトンの圧倒的なソロを聴くことができます。このアルバムではペイトンは4曲ソロを取っていますが、どれも圧巻です。


2. Naima
 コルトレーンの美しいバラード曲。こちらもゴールドスタインのアレンジ。原曲は4拍子のバラードだが、こちらでは3拍子に編曲されています。ベースとピアノの低音オスティナート(ある種の音楽的なパターンを続けて何度も繰り返す部分)の上で、名手ボビー・ハッチャーソンがヴァイブラフォンでメロディーを奏でます。終始ハッチャーソンがフィーチャリングされていて、彼は自身の持つ美しい歌い方とテクニックで、クライマックスに向けてゆっくりと音楽を発展させていきます。ホーンは基本的にバックグラウンドでハーモニーを奏でるにとどまっていますが、各楽器のバランスの取り方がさすがですね。


3. Scrambled Eggs
 ニコラス・ペイトン作曲。その名前の通り卵をかき混ぜるように、徐々に早くなるように聴こえる不思議な曲。ですがリズムの柱が全音符2分音符3連、4分音符、2拍3連、8分音符、3連符とどんどん短くなっているだけで、実は全体は一定の4拍子でずっと進んでいます。そんな変わったリズムの柱の上で自由自在にソロを吹くペイトンのソロに続き、ピアニスト、リニー・ロスネスもアヴァンギャルドのようにピアノをグリッサンドさせるソロから徐々に美しいフレーズが聴こえてきてスウィングさせます。


4. Half Full

 ジョシュア・レッドマン作曲。このアルバム一番の大曲かもしれません。イントロとしてベースの伴奏の上にヴァイブラフォンのメロディーが聴こえてきます。その後フルートが入り、その後トロンボーンにトランペット、サックスと少しずつ盛り上げて、ルバート(テンポのない)セクションに一瞬入ります。ルバート部分には少しだけコルトレーンの要素がある気がしますね。メインのメロディーがルバートでトランペット、アルト、テナー、トロンボーンと受け継がれながら聴こえてきて、ようやく心地よい早めのスウィングでメインテーマに入ります。メインテーマは最初ピアノだけで演奏されていますが、その後ホーンセクションが入ってきて徐々に盛り上げていきます。

メロディーは色々な楽器を受け継がれていきます。例えばトランペットがメロディーを一瞬吹いたかと思えば、次のフレーズではハーモニーパートに転じ、テナーがメロディーを取っています。リード(メインのライン)の受け継ぎがうまいのはアンサンブル能力の高さです。メロディーを殺すことなくちょうど良いバランスで自分のパートを吹き分けるのは流石の技術です。

そして、今まで触れてこなかったのですが、これはライブ盤ですので、完全一発録りという意味でも、技量の高さを感じることができます。その後、リニー・ロスネスのソロになり、一旦彼女のソロで曲はクライマックスを迎えます。一旦曲が終わったかと思えば違う雰囲気で、よりリズミックなモチーフで曲が再構築されていきます。その後、作曲者のジョシュア・レッドマンがソロを吹きます。このソロも本当に素晴らしいので是非聴いてほしいです。その後コーダにむけてホーンが入り、本当のクライマックスを迎えます。ニコラス・ペイトンの全体のリード力も、音色が輝いていて聞き応えがあります。


5. 2 And 2
 ミゲル・セノン作曲。不思議な感じのするヴァイブラフォンとピアノのイントロから、エリック・ハーランドによってグルーブが提示されます。オリジナルの譜面がどう書いてあるのかわからないのですが、おそらく6/4+9/8拍子の繰り返しです。ミゲル・セノンのソロもこの拍子の上で成り立っています。ミゲル・セノンは僕が最も好きなアーティストの1人なのです。この人は楽器のテクニックやサックスの音色はもちろんですが、リズムに関するアイディアは他の追随を許さない才能の持ち主です。

 話が逸れますが、ミゲル・セノン・ビッグバンドの2014年の作品『Identities Are Changeable』では、リズムのアイディアをさらに発展させて、ポリリズムを使って、非常に複雑な関係性のある違う拍子やテンポを行ったり来たりすることで、独自の世界を突き進んでいます。
 続くジョシュアのソロは(変拍子は何通りも書き方や捉え方があるため、実際の記譜はわかりませんが)4/4+3/4+4/4 ×3回 4/4+6/4 の拍子で進行していきます。その後のエリックのドラムソロは元の6/4+9/8。


6. Crescent
 ジョン・コルトレーン作曲、ギル・ゴールドスタイン編曲。ニコラス・ペイトンがフィーチャーされていて、これでも恐ろしいほどに完璧なソロを取っています。トランペッター、トランペットファンは必聴です。


7. Africa
 ジョン・コルトレーン作曲、ギル・ゴールドスタイン編曲。こちらはジョシュア・レッドマンのフィーチャー曲。ボビー・ハッチャーソンのいかにもアフリカらしいマリンバの演奏から入ります。マリンバの演奏が最高潮に達して「Africa」のグルーブが聴こえてきます。ジョシュアのソロも聴いていてワクワクします 。いわゆるモード曲ですが、その中でジョシュアがフレーズを発展させている様がとても素晴らしいです。
それに続くエリック・ハーランドのドラムソロも、エリックの独特の歯切れ良い心地の良い音色が体に入ってきてとても気持ち良いです。エンディングはまたボビー・ハッチャーソンがイントロと似た雰囲気を作って終わります。ボビーのアフリカのようなマリンバから始まって終わるこのスタイルは、実は「SFJAZZ Collective」の1枚目の「Lingala」という曲でも聴けます。全然違う雰囲気になっているので、面白いので聴き比べてみてください。


8. Development
 エリック・ハーランド作曲。このアルバムで僕が個人的に一番好きなのはこの曲かもしれないです。リリカルなメロディーで歌いやすく、とてもポップです。Aセクションは4拍子なのですが、Bセクションは7拍子となっています。Bセクションはあくまで個人的な感想ですが、Geri Allenの「Drummer's Song」に似た雰囲気がありますね。



最初のミゲル・セノンのソロはフォーム通りになっています。ミゲル・セノンらしい美しいアルトのサウンドとリズム感のあるラインが聞けるソロになっています。
 次のニコラスのソロは全く違うフォームで11小節のコード進行になっています。一小節ごとにBb7sus, A7sus, Ab7sus...半音ずつ降りる...Db7sus, C7susというコード進行の上でニコラス・ペイトンが縦横無尽に駆け回ります。まさに縦横無尽という言葉通りだと思うので、どういうことだと思った方は是非聴いてみてください!

 通常のアルバムだったら1アルバム、1リーダーだと思うのですが、このバンドではみんなが曲を持ち寄っているため、ミュージシャンたちの普段とは違うとても楽しげで活き活きとした様子が伝わってきますね。全員がソロを回しているだけのセッションとは違い、あくまでバンドとしてまとまりのある中規模編成のバンドとしては超一流です。是非アルバムを聴いてみてください。


いかがでしたでしたか? 
また次のDisc Reviewでお会いするのを楽しみにしております。

文:曽根麻央 Mao Soné






【曽根麻央ライブ情報】
10/21 (水) @ 赤坂Velera
曽根麻央 (trumpet & piano)、伊藤勇司 (bass)、木村紘 (drums)
https://velera.tokyo/

10/30 (金) @ 柏Nardis
曽根麻央 (trumpet & piano)、伊藤勇司 (bass)、木村紘 (drums)
http://knardis.com/knardis.com/Welcome.html

11/17 (火) @ 六本木サテンドール
Brightness Of The Lives [曽根麻央 (tp&keys)、井上銘(gt)、山本連(eb)、木村紘(ds)]
https://www.satin-doll.jp/

11/20 (金) @ 赤坂Velera
曽根麻央 (trumpet & piano)、伊藤勇司 (bass)、木村紘 (drums)
https://velera.tokyo/

12/13 (日) @ 六本木サテンドール
曽根麻央 (tp) & David Bryant (p)
https://www.satin-doll.jp/

12/25 (金) @ 赤坂Velera
曽根麻央 (trumpet & piano)、伊藤勇司 (bass)、木村紘 (drums)
https://velera.tokyo/



Recommend Disc

SFJAZZ COLLECTIVE 2_200.jpg
Title : 『SFJAZZ Collective 2』
Artist : SFJAZZ Collective
LABEL : Nonesuch
NO : 7559-79930-2
発売年 : 2006年



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【SONG LIST】

01. Moment's Notice
02. Naima
03. Scrambled Eggs
04. Half Full
05. 2 And 2
06. Crescent
07. Africa
08. Development




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Reviewer information

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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

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曽根麻央 Monthly Disc Review2020.9:Monthly Disc Review

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Title : 『Chet Baker Sings』
Artist : Chet Baker

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 みなさんこんにちは、曽根麻央です。僕が影響を受けたアルバムを、ミュージシャンの視点で紹介して解説していくこの連載も、早いもので第6回目となりました。半年が過ぎようとしているのですね。


 今回はChet Bakerの『Sings』というアルバムを解説・紹介していきます。RCAの44のマイクに向かって歌うChetの姿が特徴的なカッコいいジャケットですね。このアルバムは管楽器奏者ならば一度はトランスクライブ(耳コピ)して練習するべきだと考えています。僕は生徒によくこのアルバムのトランスクライブをするか、『The Last Great Concert』の「Look For The Silver Lining」という曲をトランスクライブするように宿題を出します。その理由として、これらの演奏からは完璧な美しいライン、揺るがない8分音符、安定したトランペットのサウンドを聴くことができ、そこからジャズ演奏に必要な技術をたくさん学べるからです。





 また、『Chet Baker Sings』はインストのミュージシャン(楽器を演奏する人)が歌詞を覚えるのに最適なアレンジと選曲となっています。歌い方もシンプルなのでとても聴きやすい。なので、これらのスタンダード曲の真意に迫ることができます。多くのインスト奏者は、曲をリード・シートや楽譜から学んでしまうため、曲の持つ本来の雰囲気や意味合いを理解していないことがあります。曲本来のストーリーから解離した演奏になりがちです。曲の本来の意味を知り、心から曲を好きになることで、より深い演奏ができるようになります。このアルバムは、そこに到達する手助けになるでしょう。


 また、全体を通して曲のアレンジも素晴らしいので注目していただきたいです。イントロ、アウトロが演奏曲本編に勝るほど美しく完璧です。コード進行もとても考えられていて、美しい。単にスタンダード演奏を聴かされるのではなく、Chet Bakerとこのアルバムメンバーの世界観を魅せてくれています。


 ピアニストの伴奏もチェットの歌やトランペットを決して邪魔することなく堅実なサポートに徹しています。その上でピアニストは自分のスペースを見つけ、美しいカウンターポイントやソロを展開しているで、そちらも注目です。

ではクレジットを見ていきましょう。


Chet Baker Sings
録音・1954&56年
Chet Baker - vocals, trumpet
Russ Freeman - piano, celesta
Carson Smith - double bass
Joe Mondragon - double bass
Bob Neel - drums
Jimmy Bond - double bass
Larance Marable - drums
Peter Littman - drums





 先ほど少し述べたようにRuss Freemanのピアノは、トランペットと歌を一切邪魔することなく完璧なサポートを聴かせてくれています。しかし存在感がない訳では一切なく、それどころか耳はピアノに持っていかれるという不思議な演奏です。


Russ Freemanのアレンジが多いこのアルアムは、ある意味彼の世界観の上にChet Bakerが乗っかっていると言っても過言ではないかもしれません。「チェット・ベイカー その生涯と音楽」の第4章「天才の響き チェットとラス・フリーマン」では、Russ Freemanが当時を振り返るインタビュー形式で書かれていて読む事ができます。それによるとRuss Freemanは当時のChetカルテットの音楽監修兼ツアーマネージャーだったそうで、移動の手配、ホテルの手配、経理も任されていたそうです。またこの本には、このアルバムの最初のレコーディングが、Chetが初めて歌った瞬間だった事や、歌うことになった理由が歯の問題によりトランペットの演奏が困難だったため、など興味深い事が書かれています。Chetは薬物関連のトラブルで歯を折られるという、トランペッターとして本来は再起不能の事件に巻き込まれています。









1. That Old Feeling

 このアルバムを代表する構成の曲。美しいイントロ、シンプルな歌い回し、完璧なピアノとトランペット・ソロ、そして、短いショート・エンディング。

 トランペット・カルテットで演奏される16小節の美しいイントロは完全にこのアルバムの為にアレンジされたもの。しかしあまり突飛ではなく、あくまで曲の一部として存在できるようにうまく書かれています。それに続くChet Bakerの歌によるテーマ部分。何度も言っていますが、このアルバムは一緒に歌えるようになるととてもとても楽しいので是非トライしてみてください。それに続くRuss FreemanとChet Bakerのソロは曲のストーリーを壊すことなく、まるで書かれたメロディーのように美しい。このアルバムをさらに楽しむならChetのソロを覚えてスキャットでユニゾンしてみるのも面白い。トランペットも歌のようにソロを吹いているので、実際一緒にスキャットをしやすい。なので、楽器を演奏する人は歌えることがどう演奏に影響を与えるのか体験でき、とても勉強になります。


2. It's Always You
 Chet の歌い方が本当に美しい一曲。Russ Freemanによる美しいイントロと、歌とトランペット・ソロの間の緊張感ある短い間奏が肝のアレンジ。ハーモニーの流れもよく編曲されています。注目しながら聴いてください。


3. Like Someone In Love
 テーマへの導入の仕方がお洒落ですね。Russ Freemanのイントロの特徴は、あまりにも自然に流れているので、気づいたらテーマに入っているという事が起こります。シンプルに、トランペット・ソロなしで歌だけのテイク。


4. My Ideal
 チェレスタとアルコ(弓)でのベースの伴奏で歌われるバース部分があります。バースとはテーマではないのですがイントロでもないセクションです。バースはきちんと歌詞があり、メイン・テーマの世界観を前もって説明して、聴き手により深い理解をさせてくれる大事なパートです。バースは楽器だけのジャズで演奏されることは稀ですが、こうして歌とともに聴けるのはとても嬉しいですね。


5. I've Never Been In Love Before
 Chetが最初1人で歌い出し、ベースとピアノのユニゾンのカウンターポイントが聴こえてきます。ピアノは徐々にハーモニーへと移行して曲にさらにカラーを足していきます。見事なアレンジです。カウンターポイントについては以前の「Birth Of Cool」の紹介記事でも書きましたが、主旋律に対して演奏される副旋律の事です。この曲はChetを描いた映画「Born To Be Blue」でも重要な場面で演奏されていましたね!あの映画はあくまでフィクションですが、個人的にはChetの人となりが見る事ができて良い映画だと思っています。


6. My Buddy
 Chetのハーマン・ミュートの演奏が聴けます。ハーマンといえば、マイルス・デイヴィスやクラーク・テリー、ディジー・ガレスピーといった人たちの音色が有名ですが、Chetの音色も独特で良いですね。1コーラス目のミュート演奏と歌の間に8小節の間奏がアレンジされていて、転調しているのも雰囲気がガラッと変わってよいですね。


7. But Not For Me
 24小節の見事なイントロがトランペットによって奏でられた後に、有名なメロディーが歌われます。マイルス・デイヴィスの演奏が有名でそちらのコード進行で演奏されることが多いですが、こちらの方がガーシュウィンのオリジナルに近い進行になっています。歌に続くChetのソロもまるで書いたかのような綺麗なソロです。このソロは名演なので覚えておくと良いでしょう!


8. Time After Time
こちらもシンプルに2コーラスだけの構成。1コーラス歌からの半分だけのトランペット・そして、その後の歌で終わります。

9. I Get Along Without You Very Well
 名曲ですね!是非覚えておいていただきたい曲です。Russ Freemanのチェレスタが再び登場して、Chetが歌います。こちらの曲も映画「Born To Be Blue」で重要な役を果たしましたね。この曲はChetの「The Last Great Concert」でも「Live In Tokyo」ではChetの晩年の歌も聴く事ができます。Chetにとって重要なレパートリーだった事がわかります。こちらもシンプルに歌1コーラスだけという構成です。


10. My Funny Valentine
 歌で1コーラスだけシンプルな構成。是非Chetの歌い回しでこの曲は覚えていただきたい。


11. There Will Never Be Another You
 いきなりトランペットだけのイントロから、バンドが入り1コーラスソロをとります。その後8小節の間奏で歌のキーに転調するこちらも見事なアレンジ!歌の後のソロはChetとRuss Freemanが同時にするというサプライズがあります。Chetのキャリアの初期はジェリー・マリガンとの、ピアノなしの2菅編成カルテットでした。トランペットとバリトン・サックスのソロを同時にとり、ピアノがいなくてもハーモニーを感じさせるサウンドを作り上げ、ウエスト・コースト・ジャズのブランディングに成功しました。この曲のソロはChetのバックグラウンドを思い出させてくれますね。


12. The Thrill Is Gone
 なんとも寂しい曲。Chetの歌とトランペットの多重録音が聴けます。Chetが自分の歌に伴奏をしている様子は、トランペットの歌の伴奏はこうするべきだ!というお手本のようでとても参考になります。


13. I Fall In Love To Easily
 イントロは無いが、エンディングはちゃんとアレンジされていますね。やはりこのアルバムを通してジャズ・ミュージシャンが学ぶべきが、シンプルでいいので、スタンダードを演奏するときはきちんと自分のアレンジを持つべきという事。聴き手へ与えるインパクトが違います。そして良いエンディングがあれば途中何があっても全体がまとまって聴こえます。僕は自分のアレンジを持つ事で、曲に対して、まるで自分の曲のような愛情をもって接する事ができています。


14. Look For A Silver Lining
 こちらもChetの十八番ですね。曲の最後に一瞬だけ多重録音しているのがお洒落ですね。この曲に関しては、関にも述べましたが是非「The Last Great Concert」のバージョンも合わせて聴いてみてください!Chetというアーティストがいかに音楽への、美しいものへの情熱にあふれていたか感じる事ができるでしょう。トランペッターは「The Last Great Concert」のLook For A Silver Liningのソロは要トランスクライブです!







いかがでしたでしたか? 
また次のDisc Reviewでお会いするのを楽しみにしております。

文:曽根麻央 Mao Soné




Recommend Disc

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Title : 『Chet Baker Sings』
Artist : Chet Baker
LABEL : Pacific Jazz
NO : PJ-1222
発売年 : 1956年



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【SONG LIST】

01.That Old Feeling
02.It's Always You
03.Like Someone In Love
04.My Ideal
05.I've Never Been In Love Before
06.My Buddy
07.But Not For Me
08.Time After Time
09.I Get Along Without You Very Well
10.My Funny Valentine
11.There Wil Never Be Another You
12.The Thrill Is Gone
13.I Fall In Love Too Easily
14.Look For The Silver Lining




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Reviewer information

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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

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