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曽根麻央 Monthly Disc Review2022.4_Old And New Dreams_Old And New Dreams

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Title : 『Old And New Dreams』
Artist : Old And New Dreams






みなさんこんにちは、曽根麻央です。今日はオーネット・コールマンのサイドメン達が集まり結成したバンド「Old and New Dreams」の2枚目のアルバムを紹介したいと思います。


【オーネット・コールマンの音楽を受け継ぐバンド】

「Old and New Dreams」は1976-87年まで活動したバンドで、Dewey Redman、Don Cherry、Charlie Haden、Ed Blackwellといった名手達の演奏を聴くことができます。またメンバー全員が偉大なOrnette Colemanの音楽を受け継いでいて、60年代のfree jazzから、70年代のNYロフトシーンへの繋がりも感じ取れます。

ロフトシーンとはNYマンハッタン、特にSohoなどの今では最高級エリアに、ジャズミュージシャンが多く広いロフトを持っていた時代のことで、そこで夜な夜な集まり実験的なセッションを重ね、音楽的高まりを見ることができました。ロフトを持つミュージシャンはリハーサルやセッションなどに多く利用され、ロフトに集まる仲間はバンドメンバーとして音楽的、人間的繋がりが強固なものになりました。

この『Old and New Dreams』もそんなアツい時代を感じられる一枚です。



Charlie Haden (bass)
Ed Blackwell (drums)
Dewey Redman (Tenor Saxophone, Musette)
Don Cherry (Trumpet, Piano)




01. Lonely Woman
ヘイデンのベースソロが重音を奏で不思議な和音を奏でます。そこからブラックウェルの最高に綺麗なシンバルワークが聞こえてきたと思えば、チェリーとレッドマンのユニゾンで有名な「Lonely Woman」のメロディーが聴こえてきます。「Lonely Woman」はコールマンの59年の代表曲で、『Shape of Jazz to Come』の中に収録されています。ヘイデンとチェリーがオリジナルのレコーディングにも参加しているので聞き比べると面白いでしょう。






オリジナルよりもゆったりと、自由に演奏されて、リズムやハーモニーに関する解釈が20年かけて拡大されていますね。また録音状態も良いのでそういった意味でも楽しめる音源と思います。

ソロに入るとブラックウェルは早いスウィングのパターンを分解し、大きく捉え音楽に隙間を与えてソリストに間を与えています。ヘイデンもそのスペースを利用しベースでハーモニーを作り出しています。チェリーのソロ途中でブラックウェルがマレットに持ち替えてテンポやフィールをガラッと変えているのもとても素晴らしいです。

 Lead and Followというコンセプトがロフトジャズ以降のフリージャズでは大事になっています。もちろんそれ以前のジャズでも大事なのですが。誰かが音楽をリードする時もあれば、サポートに回ることもあるということです。Lead and Followの役回りをうまく立ち回れるかがアンサンブル能力に直結します。


02. Togo
ドラマーのブラックウェルの曲。インディアンやアフリカのリズムに影響を受けて書いたのがわかる一曲です。ブラックウェルのカウベルを導入したドラムがフィーチャーされます。


03. Guinea
ドン・チェリーの曲。ギニアは西アフリカの国の名前です。この時代よりチェリーは多くの民俗音楽に影響を受けた作品を多く残していますのでこれもそんな曲なのかもしれません。特徴的な5音階で書かれたベースラインがとてもかっこいいですね。この5音階はアフリカの音楽でよく歌われるものです。レッドマンのソロで急にピアノが演奏されていますが、おそらくチェリーが衝動的に弾いている音と思われます。


04. Open Or Close
オーネット・コールマンの曲。やはり彼の曲はスタイルがあり聴くだけでわかりますね!早いスウィングの上に2管編成で演奏される独特のメロディーライン。まるで興味深いおしゃべりや雑談を聞かされているかのような雰囲気があります。このオーネットスタイルを作り上げた人たちが、このスタイルをオーネット抜きで再構築している様はとても興味深いですね。


05. Orbit of La-Ba
レッドマンの曲。いわゆる中国の楽器、チャルメラをレッドマンが吹いています。チャルメラというと我々日本人にはラーメンフレーズしか出てきませんが、こんなにも沢山のクリエイティブなフレーズが出てくるものなのかと楽器の価値を再認識させてくれるトラックになっています。曲の途中、トランペットとチャルメラのみのパートもあり、かなり意外なサウンドになっていると思います。またベースも特殊なチューニングでノイズの乗るようなサウンドにしていて、それが楽曲全体の大きなカラーとなっています。


06. Song For The Whales
ヘイデンの曲。かなりアンビエント色の強いトラックです。ヘイデンは終始アルコ(弓)でイルカの鳴き声のようにベースを演奏しています。そこに呼応するようにチェリーも参加してきます。5分ぐらい経過してようやくテーマが演奏されます。早いスウィングのフレーズをブラックウェルが奏で、その後ろでヘイデンは強烈な弓のサウンドを終始連打しています。メロディーは「Lonely Woman」のようにリズムとは関係なくルバートで展開されています。

バンドでの一体感のある音楽を、各々の興味のある題材を取り入れながら自由に作っていてとても良いですね。私曽根も来月は自分のバンドで全国のみなさんの元に行きます!各地でお会いできると嬉しいです!


それではまた次回。


文:曽根麻央 Mao Soné


【曽根麻央LIVE INFO】

【Brightness of the Lives Release Tour】
5/17(火) 蔭凉寺 岡山
5/18(水)ビルボード・ライブ大阪
5/19(木) ミスター・ケニーズ 名古屋
5/20(金) ライフタイム 静岡

【Member】
曽根麻央 - trumpet, piano & keybord
井上銘 - guitar
山本連 - bass
木村紘 - drums
全国各地の皆様にお目にかかれるのをメンバー一同心より楽しみにしております。是非お近くの会場まで足をお運びください。待ってます!


曽根麻央のその他情報はウェブサイトへ



Recommend Disc

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Title : 『Old And New Dreams』
Artist : Old And New Dreams
LABEL : ECM Records
発売年 : 1979年



アマゾン詳細ページへ


【SONG LIST】

01.Lonely Woman
02.Togo 
03.Guinea
04.Open Or Close
05.Orbit Of La-Ba
06.Song For The Whales




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「Monthly Disc Review」アーカイブ曽根麻央

2020.04『Motherland / Danilo Perez』2020.05『Color Of Soil /タイガー大越』2020.06『Passages / Tom Harrell 』2020.07『Inventions And Dimensions / Herbie Hancock』2020.08『Birth Of The Cool / Miles Davis』2020.09『Chet Baker Sings / Chet Baker』2020.10『SFJAZZ Collective2 / SFJAZZ Collective』2020.11『Money Jungle: Provocative In Blue / Terri Lyne Carrington』2020.12『Three Suites / Duke Ellington』2021.01『Into The Blue / Nicholas Payton』2021.02『Ben And "Sweets" / Ben Webster & "Sweets" Edison』2021.03『Relaxin' With The MilesDavis Quintet / The Miles Davis Quintet 』2021.04『Something More / Buster Williams』2021.05『Booker Little / Booker Little』2021.06『Charms Of The Night Sky / Dave Douglas』2021.07『Play The Blues / Ray Bryant Trio』2021.08『The Sidewinder / Lee Morgan』2021.09『Esta Plena / Miguel Zenón』2021.10『Hub-Tones / Freddie Hubbard』2021.11『Concert By The Sea / Erroll Garner』2021.12『D・N・A Live In Tokyo / 日野皓正』2022.1『The Tony Bennett Bill Evans Album / Tony Bennett / Bill Evans』2022.2『Quiet Kenny / Kenny Dorham』2022.2『Take Five / Dave Brubeck』




Reviewer information

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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

曽根麻央Official Site

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