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曽根麻央 Monthly Disc Review2021.10_ Freddie Hubbard_Hub-Tones

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みなさんこんにちは。トランペッットとピアノの曽根麻央です。
今日はトランペットの名手フレディー・ハバードの名演奏が集約されたアルバム『Hub-Tones』をご紹介します。アルバムのタイトルでもあるハブ(ハバードのハブ)の音という言葉の通り、フレディー・ハバードの美しい音色、キレの良いタッチ、そしてユニークなアイディアが収録されていますので、ジャズファンだけでなく金管楽器全般に関わっている方々に聴いてほしい一枚でもあります。


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Title : 『Hub-Tones』
Artist : Freddie Hubbard



【ジャズ・トランペットを勉強するなら絶対に聴いておくべきアルバム】


僕とこのアルバムの出会いは小学5年生の頃。当時トランペットを習っていた原朋直さんに、ジャズ・トランペットを勉強するなら絶対に聴いておくべきアルバムとして教えてもらったのがきっかけでした。大学に入ってからはこのアルバムの中から「You Are My Everything」と「Hub-Tones」のフレディーのソロをしっかりと完コピしました。美しく構成されているソロなので、今でもよく覚えています。

さてメンバーを見ましょう



Freddie Hubbard - trumpet
James Spaulding - alto saxophone, flute
Herbie Hancock - piano
Reggie Workman - bass
Clifford Jarvis - drums




長きに渡ってフレディーと2管編成でアルトを担当したジェームス・スポルディングや、フレディーの1st albumからのドラマー、クリフォード・ジャーヴィスが参加しています。また、まだマイルス・バンドに加入前のハービー・ハンコックの演奏は、伴奏では正確なリズムとハーモニーを繰り出し、ソロでは若々しくも美しいタッチでユニークなソロを聴くことができます。名手レジー・ワークマンの鉄壁のサポートとグルーヴ力もこのアルバムの大事な肝になっています。


01. You're My Everything




フレディーの迫力ある音が開始早々に響き渡り圧倒されます。そしてすぐにその音は「You Are My Everything」のメロディー だと気づきます。このバージョンのコード進行はリハモナイズ(メロディーは変えずにコードだけを変えて、雰囲気を原曲と変えるアレンジの手法)されていますが、今のジャズではこのコード進行の方が耳馴染みがあるかもしれません。ジャムセッションなどでもこの曲を演奏するときはこのアルバムのコード進行を使います。

フレディーのメロディーの吹き方は歌心がありとても心地よいです。ハービーは伴奏の名人ですから、こちらのテーマも美しいハーモニーとキレのあるリズムでサポートしています。たまに出てくるクリフォード・ジャーヴィスのアクセントも他のメンバーと会話しているようで、ベストのスポットにはまっていてとてもグルーヴィーです。フレディーのソロに入ってからはレジー・ワークマンが小刻みなベースラインやポルタメント(左手をスライドさせて音程と音程の間を滑らかに演奏すること)を駆使して音楽を根底から支えています。

フレディーの特徴は濁らないアーティキュレーション、完璧なピッチ、明確なアイディア、キレの良いリズム、低音から高音まで駆使する超絶技巧、そして何より唯一無二の迫力の音色。この曲ではフレディーのそんな魅力を余すことなく聴くことができます。


02. Prophet Jennings
フレディーのトランペットはカップ・ミュート、スポルディングはフルートという独特な2管編成の曲。独特といってもよくあるアレンジの手法ではあるのですが、一味変わった寂しげなサウンドになります。フレディーもテーマ中は優しく、マイク近くで吹くことによって木管楽器のようなまろやかな中音色を聴かせてくれています。

ソロに入った瞬間、ミュート・プレイではありますが、いつものフレディーのエネルギッシュなギアを全開に入れ替えます。このシフトチェンジがたまりません。マイルスミュートプレイとはまた違ったトランペットの魅力があります。

ちなみにフレディーが全編ハーマン・ミュート(マイルスがよく使う)でアルバム全編を構成している、『Topsy - Standard Book』も聴きごたえがありますので、興味のある方はぜひ聴いてみてください。




03. Hub-Tones




フレディーの書いた高速ブルースの曲。テーマの切れ味の良さは絶品ですが、完璧なソロを披露しています。チャーリー・パーカーのフレーズも垣間見ることができます。またソニー・ロリンズのように、何回も同じフレーズを繰り返し高速で演奏することで凄まじいエネルギーを作り出しているような感じもします。フレディー・ハバードのトランペットはテクニック的には木管楽器のフレーズを金管楽器に置き換えている様子もありますので、この曲はまさにその感じが伝わるかと思います。
続くハービーのソロも名演奏と言えるものですのでぜひ注目してください。


04. Lament For Booker
フレディーの書いた美しいバラード曲。作曲家フレディー・ハバードとしての代表曲といって良いでしょう。フレディーと同い年でありながら、このアルバムの前年に亡くなったトランペッター、ブッカー・リトルに捧げた作品です。ブッカー・リトルの作品については以前の記事で書いたので是非読んでみてください。


Monthly Disc Review2021.05_ Booker Little_Booker Little



フルートとトランペットの組み合わせが美しい曲です。フレディーも前の3曲とは打って変わって柔らかいトランペットの音色で歌っています。フレディーのバラードプレイは、徹底して芯があるのに柔らかい音色で演奏されることが多いです。アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズとの「Skylark」もその例です。Bセクションは独特なディミニッシュのハーモニーが物悲しいサウンドを作り上げます。





05. For Spee's Sake
ブルージーなテイストのイントロで始まり、軽快なスウィングへとシフトしていきます。Gbのブルースの曲。Gbは誰にとっても演奏しにくい調なのですが、それを一切感じさせない鉄壁のプレイをフレディーは聞かせてくれます。調性は実は曲の雰囲気を決めるとても大事な要因であるのです。フレディーのGbの 名演は実はもう一曲あり、アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズとレコーディングした「Pensativa」でも素晴らしい演奏をしています。




それではまた次回。


文:曽根麻央 Mao Soné






【曽根麻央LIVE INFO】

曽根麻央のその他情報はウェブサイトへ



Recommend Disc

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Title : 『Hub-Tones』
Artist : Freddie Hubbard
LABEL : Blue Note
発売年 : 1962年



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【SONG LIST】

01. You're My Everything
02. Prophet Jennings
03. Hub-Tones
04. Lament For Booker
05. For Spee's Sake




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「Monthly Disc Review」アーカイブ曽根麻央

2020.04『Motherland / Danilo Perez』2020.05『Color Of Soil / タイガー大越』2020.06『Passages / Tom Harrell 』2020.07『Inventions And Dimensions / Herbie Hancock』2020.08『Birth Of The Cool / Miles Davis』2020.09『Chet Baker Sings / Chet Baker』2020.10『SFJAZZ Collective2 / SFJAZZ Collective』2020.11『Money Jungle: Provocative In Blue / Terri Lyne Carrington』2020.12『Three Suites / Duke Ellington』2021.01『Into The Blue / Nicholas Payton』2021.02『Ben And "Sweets" / Ben Webster & "Sweets" Edison』2021.03『Relaxin' With The Miles Davis Quintet / The Miles Davis Quintet 』2021.04『Something More / Buster Williams』2021.05『Booker Little / Booker Little』2021.06『Charms Of The Night Sky / Dave Douglas』2021.07『Play The Blues / Ray Bryant Trio』2021.08『The Sidewinder / Lee Morgan』2021.09『Esta Plena / Miguel Zenón』




Reviewer information

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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

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