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JAZZ in NEW YORKの最近のブログ記事

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JAZZ in NEW YORK#6 - What I got in New York:JAZZ in NEW YORK

ニューヨークを拠点に活動しているピアニスト、中原美野(なかはらよしの)さん。
5月23日にファーストアルバム『A Ray of Light』をリリース。
そしてその新作を引っさげての凱旋ライブが、6月5日(金)渋谷JZ Bratで行われます。


JJazz.Netでは、"JAZZ in New YORK"シリーズとして中原美野さんのコラムを連載。
ライブまでの(本日ですね)約1ヵ月間、毎週金曜日に更新してきました。

今週は遂に最終回。
「どんなにつらい思いをしても、それでもここにいたいと思えるNYという街。」
と中原さんは綴っているように、わたしたちも彼女のストーリーを追いながら、
ジャズの街、NYの空気感を知ることができました。

このコラムを読んでいても中原さんがどんどんタフになっていくのを感じられましたよね。

アメリカへ来てから6年と5ヶ月。
そして遂に完成したアルバム『A Ray of Light』。
アルバムに収録されているオリジナルは、勇敢に闘っている様子や、
迷いながらも進んでいく様子を表現したものだそうです。

その音を是非生で体感して下さい。
本日、6/5(金)渋谷JZ Bratにて、中原さんの凱旋ライブが行われます。


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■What I got in New York


2012年、1年間のOPT期間の終了が近づくまで悩み続けたものの、NYでの活動を続けるために、アーティストビザを申請することを決意。締切まであまり時間の残されていなかった2013年1月半ばから本格的に準備を始め、弁護士の指示を仰ぎながら2ヶ月強で提出書類を完成させた。5月に出演したかったショーがあったため急いだ。そしてちょうど間に合うタイミングで無事ビザを取得できた。その3年間のビザももう既に残り1年となってしまった。


2013年は自分のバンドでのライブもできるだけ多くやった。あるギタリストをゲストに迎えてのライブは、 イタリアからのフライトが天候不順で欠航になったとのことで、彼がリハに来られないままの本番だった。(余談ですが、そのライブには、日本から漫画家の方が聴きにいらしていた。ジャズをテーマにした漫画を書こうと調査に来られたとのこと。その後、本当にジャズ漫画を描かれているようですね。) 時間をかけてスケジュール調整や準備をしても、アクシデントがよくある。ライブ当日メンバーが来られなくなって、代わりの人にほぼ初見で弾いてもらったり。2時間のリハに2時間遅刻してくる人がいたり。


そうしているうちに、音楽活動の幅も広がり始め、ポップミュージックのバンドのライブにも出演したり、別のバンドでは70年代のR&Bを演奏したりした。


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2014年には、教会でも毎週日曜日に賛美歌やゴスペルの曲を演奏し始めた。そこでは初見が基本。何の打ち合わせもなく演奏することもある。コーラスの人たちがいきなり歌い出すので、初めて聴く歌でも、キーとコード進行を瞬時に判断してそれに合わせて伴奏していく。オルガンとドラムだけなので、責任重大。心の優しいコーラスの方、本番で歌いながら号泣されることも。いかに歌をサポートし、気持ちを盛り上げてもらえるかということを考えながら弾いている 。そういえば大好きだった映画「天使にラブ・ソングを」の世界だ。
毎週オルガンを弾くという機会をいただいたおかげで、オルガントリオでのライブに挑戦することもできた。


そして貴重な出会いもあった。ジャズクラブKitanoのジャムセッションで共演したシンガーMs. Blu。ブルージーでパワフルな彼女の歌、楽しく歌う姿、ブルーの衣装がとても印象的だった。私のライブにたまたまいらっしゃって、一曲バンドと一緒に歌っていただいた。その後まもなく、彼女のバンドのメンバーとして演奏を始めた。彼女はあたたかくピュアな心を持っていて、音楽をとても愛している。ライブ中のMCで、涙を流しながら話すMs. Bluを観ていると、このショーをいいものにしようという気持ちになる。信頼できる方で、"I'm here for you."と言ってくれるお友達。
つらいときに、

"I really want you to know that whatever is going on that upset you and keeps you sad from time to time you can confide in me. I am a good friend and I don't repeat anything that someone tells me in confidence I'm here for you."
"I feel like I've always known you. You have a beautiful heart!"

と支えてくれた。
私の名前「美野」ですが、「野」は"心"という意味も持つということで、美しい心を持ってほしいと両親がつけてくれた。本当にそうなりたい。


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[Ms Blu @ SOMEHIN' Jazz Club]


遡ってNY1年目。お世話になっていた方(Tさん)が、ご親戚の男性を連れてライブを聴きに来てくださった。そのご親戚の男性が演奏をとても気に入ってくださって、Tさんに直筆のお礼状を送られたとのこと。「彼女の演奏はDiana Krallを想起させる。アレンジも素晴らしい。とても特別な夜になった。誘ってくれてありがとう。」と、身に余るお言葉を頂戴した。Diana Krallファンの皆様から苦情が来るでしょう。でも、演奏している音楽は大分ちがうけど、Diana Krallは私の憧れ中の憧れ。(この間 Beacon Theaterで初めて彼女のライブを観られて、静かに大興奮だった。) 感激で、思わずバンドメンバーに手紙のことを報告してしまった。

その後、その男性はライブのご案内をすると必ずお返事をくださり、たびたび応援にいらしてくださった。あるライブでは、「ごめんね、あなたのピアノを聴きに来たんだけど他の楽器が僕にはうるさすぎるから」と1st setで帰られてしまったけど、また聴きに来たいと言ってくださった。

2014年の5月、Tさんから突然お電話があり、その方がお亡くなりになったとの知らせを受けた。びっくりした。その年の1月に新年のメッセージをお送りしたら、「次のライブに必ず行くから」とお返事をくださっていた。しばらく涙が止まらなかった。そのとき、こんなに悠長に過ごしていてはいけない、と強く思った。アルバムを作らなければ。早く活動の場を広げなければ。応援してくださっている方々の期待に応えたい、と。すぐにRiro MuzikのRozhanにメールをした。一緒にレコーディングをしたいメンバーに出会えていて、Sureと言ってもらえて、ラッキーだ。日程調整に時間がかかったものの、7月にレコーディングを実施することに決めた。


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メンバー全員の予定が空いていたのは一日だけ。真夏日、朝10時集合で夜9時まで、11曲を数テイクずつ録った。録音中はエアコンを止めなければならず、スタジオ内は暑く、ピアノを弾く手もすぐ汗ばんだ。唯一ブースに入っているサックスのChadが、なだれこむようにこちら側へ出て来て床で転がったりしていた。


その後、経済的事情で、録った音源がそのままになってしまった。本当にこれを世に出していいのか、という不安もあった。

そして同年の12月。ある出来事がやむなくまた私を動かした。「やばい。自分を支えられるのは自分しかいない。」と。その出来事を受け、父が、アルバムを完成させてほしい、と制作費のサポートをオファーしてくれた。以前にレコーディング音源を聴いていただくことをご相談していた、NY でプロデューサーとして長年ご活躍されているある方にやっと音源を送った。「今立て込んでいるから少しお時間をください」とのお返事。ところがその後すぐ、「聴きました」とのご連絡をいただいた。「なんで今までほっといたんですか、早く完成させて、世に出して下さい」と、叱咤激励のお言葉。

1ヶ月間廃人のようになっていた私はやる気を取り戻した。
そうしてアルバムを完成させる決意をした後も、色々なことがまた起こった。ようやく動き出せた3月から、息をつく暇もないようなスケジュールで制作を進め、3週間ほど前に出来上がりました。お電話をいただいた時からちょうど1年。


アメリカへ来てからの6年と5ヶ月。本当に色々あった。特にニューヨークでは、一難去らないうちにまた一難以上来た。NYで培ったことは、たぶん、強く生きること。ここでの生活は、常に戦っている感じ。約束が守られないことは日常茶飯事。What???と言いたくなるような信じられない出来事がいっぱい起こる。理不尽なことに対していかに負けずに闘えるか。特にジャズミュージシャンとして生活するのは苦労が絶えない。

でも、ここでは、小さい頃の夢だったことが知らない間にかなっていた。シンガーのバックで演奏したい。ピアノの先生になりたい。レストランでBGMを演奏したい。ウェディングでピアノを弾きたい...。色々な苦難やトラブルが絶えずあり、それに阻まれて、思うようにつき進んでいけないことがとてももどかしく、自分の目指しているところにはまだまだ達していない。けど、サポートしてくれる方々のおかげで問題を解決してこられて、今ここでミュージシャンとして少しずつ前に進んでいけていることをとても感謝しています。


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どんなにつらい思いをしても、それでもここにいたいと思えるNYという街。これまでの記事でも一部ご紹介させていただいたように、数えきれないほどたくさんの尊敬する憧れのミュージシャンの演奏を聴くことができた。本当に幸せなこと。ライブで、聴いている方がよい演奏にすぐに反応し、Yeahと言って盛り上がる雰囲気も好き。そして、もはや憧れというレベルの方でもないHerbie Hancockは、ライブ鑑賞だけでなく、書店Barnes & Nobleで行われた彼の書籍"Possibilities"の発売イベントにも参加できた。ご本人からMiles Davisとのエピソードや、"Watermelon Man"のリズム、フレーズができた過程などを聞けて、感動だった。そして、この冬にその本を読んでいたら、初期のNYでの生活など彼のストーリーにわくわくし、ミュージシャンとして生きる機会を得られていることを大事に思い、そうありつづけられるようにがんばろうという気持ちになれた。


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病気が見つかり、NYで手術を受けた2月のある日。気温マイナス13度の朝5時に電車で病院に向かうとき、なんとなく自分の曲を聴こうと思い、まだMix/Mastering前の"Take Five"と"Jay Street"を聴いた。不思議と元気が出てきた。バンドメンバーの演奏に励まされた。


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もしアルバムを聴いてくださる方がいらっしゃって、私の音楽で元気を出してもらえることがあったら、本当に嬉しいです。

タイトルの"A Ray of Light"は、直訳すると「一条の光」という意味ですが、自分の中で一本筋が通っている状態、目標に向かって一本光がまっすぐに伸びているイメージを表したいと思って付けました。収録されているオリジナル曲は、タイトル曲ほか、勇敢に闘っている様子や、迷いながらも進んでいく様子を表現したものなど。皆様にはどのように感じていただけるのか、感想をお聞きするのが楽しみです。ジャズのスタンダード曲も、オリジナルバージョンとはだいぶ違った雰囲気にアレンジしているので、ぜひ一度チェックしていただきたいです。アルバムを聴いたMs. Bluは、"The arrangements are Rocking! I have not heard any new jazz material that I could fall in love with until NOW!" とメッセージをくれて、すごく嬉しい。


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リリース日の5月23日は、私の誕生日ですが、自分へのプレゼントではなく、アメリカへ来てから応援しつづけてくれた両親への感謝の気持ちとしてアルバムを送りたかった、という思いがあります。
本日6月5日のリリースライブ。フライヤーを作成していただいたのですが、それを置いてもらうために、両親が何日間もかけて、電車に乗って都内の34ヶ所の音楽教室を訪問してくれました。


昨年11月の東京での初ライブでは、約10年前、ライブで衝撃を与えてくださり、私がジャズミュージシャンを目指すきっかけともなったお一人、ドラムの大槻"KALTA"英宣さん、そして土井孝幸さん、西口明宏さんという素晴らしいミュージシャンの方々との演奏の夢が叶いました。


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本日渋谷JZ Bratでのライブでは、その10年前のライブのバンドリーダーであったサックスの太田剣さんとついに一緒に演奏させていただくことができます! 矢沢永吉さんのZ's Tourの最終公演を終えて駆けつけてくださいます。

会場の皆様に楽しんでいただける、またご協力くださった皆様にそうしてよかったと思っていただけるライブになりますように :)


今年の5月のNYは、爽やかな日が多かった印象です。深夜4時になってもまだ近隣から大音量でラテンミュージックが聴こえるWest Harlemのアパートで、Broadway沿いの小さなカフェで、Bryant Park横のNew York Public Libraryで、日本に向かう飛行機の中で、6回に渡るこのコラムを書きました。


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機内でたまたま観た映画、「Song One」。ニューヨークを舞台に、Anne Hathaway演じる主人公が、ミュージシャンの弟や彼の大好きなミュージシャンと関わっていくお話。自分がここで観ているものや、自分自身のことと重なった。

圧倒的に多いミュージシャンの数。ジャズだけではない。毎日数々のライブハウス、レストラン、地下鉄の駅、電車の中で演奏している。無名のミュージシャンが葛藤したり、逆に一気にジャズシーンに入り込んでいったりする様子を私も他人事ではなく傍で観ている。映画を観て改めて、数えきれない選択肢の中で、その人の演奏を聴きに行っている、というのはすごいことだと思った。 ライブに来てくださるお客様、お友達にはいつも心から「ありがとう」と思う。


コラムを読んでくださった皆様、本当にありがとうございました!
お会いできる日を楽しみにしています。


中原美野




【中原美野 "A Ray of Light" Release Tour 2015】

NYを拠点に活躍している新人ピアニスト/コンポーザー中原美野がJZ Brat初登場!1stアルバム『A Ray of Light』のリリースを記念して豪華メンバーが集結。ドラマ、映画、CMの音楽のアドバイザーを務めるなど、日本の音楽シーンへも活動の幅を広げている彼女から目が離せない。


<日時>
2015.6.5.Friday
1st:Open 17:30 Start 19:30
2nd:Open 21:00 Start 21:30
※時間が通常と異なります。

<出演>
中原美野(p)西口明宏(ts)土井孝幸(b)大槻"KALTA"英宣(ds)
Guest: 太田 剣(sax)

<場所>
JZ Brat(渋谷)
〒150-0031 東京都渋谷区桜丘町26-1 セルリアンタワー東急ホテル2階

<料金>
入替制¥4,000 2ステージ¥6,000

<予約・お問い合わせ>
JZ Brat
03-5728-0168(平日15:00~21:00)
予約はこちら

<詳細>
http://www.jzbrat.com/liveinfo/2015/06/#20150605(JZ Brat)


CD情報はこちら
※ライブ会場限定販売




【Pianist Yoshino Nakahara Album"A Ray of Light" EPK】




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Profile

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中原美野(Yoshino Nakahara)(ピアニスト/作曲家/編曲家/講師)

4歳でピアノを始め、ヤマハ音楽教室でクラシック演奏や作曲、アンサンブルを学び、幼少時代より作曲で多くの賞を獲得。大学を卒業後、趣味でアルトサックスを手にしたことをきっかけに、ジャズと出会う。
ジャズ・ライブに足繁く通う中、「ピアノでジャズ演奏を学びたい」と、ジャズ・ピアニスト今泉正明に師事する。バークリー音楽大学より奨学金を獲得後、2009年に渡米。2011年、「Professional Music Major Achievement Award」を受賞。ボストンで演奏活動を開始し、地元ラジオ局等に出演。多数の著名プレイヤーと共演する。ジャズだけでなく、クラシックのコンサートやミュージカルでも演奏。2011年卒業後、拠点をニューヨークに移し、北川潔、E.J. Strickland、Gilad Hekselmant等トップクラスのミュージシャンをバンドメンバーに迎え、ライブ活動を行う。2012年9月にはTomi Jazzの「Artist of the Month」に選ばれ、2013年1月には週刊NY生活に特集記事が掲載される。様々なジャンルのバンドでサイドマンとしても活躍。2014年4月には、所属するGregory McDowellバンドでの演奏の様子がNew York Timesに掲載される。その他、音楽学校でピアノやフルートの講師として、また教会でオルガン奏者としても活躍している。2013年、TBSドラマ「潜入探偵トカゲ」のサウンドトラックに、自身でアレンジしたソロピアノ演奏が収録される。日本テレビ音楽のミュージック・ライブラリーの楽曲、スマートフォンアプリのBGM等の演奏、またドラマ、映画、CMの音楽のアドバイザーを務めるなど、日本の音楽シーンへも活動の幅を広げる。2014年、初の帰国ライブを行い、大好評を博した。2015年、ニューヨークにて自己のバンドでレコーディングした1stアルバム「A Ray of Light」をリリースする。


Yoshino Nakahara Official Site

JAZZ in NEW YORK#5 - Japanese Jazz Musicians in New York:JAZZ in NEW YORK


ニューヨークを拠点に活動しているピアニスト、中原美野(なかはらよしの)さん。
5月23日にファーストアルバム『A Ray of Light』をリリース。
そしてその新作を引っさげての凱旋ライブが6月5日(金)渋谷JZ Bratで決定しています。

JJazz.Netでは、"JAZZ in New YORK"シリーズとして中原美野さんのコラムを連載。
ライブまでの約1ヵ月間、毎週金曜日に更新しています。


5回目となる今週はニューヨークで活動する日本人ジャズミュージシャンについて。
改めて沢山の日本人がニューヨークで活躍しているんだと気付かされます。
遠い異国での生活や仕事。悩みはつきものですよね。
そういう時にアドバイスしてくれる先輩達、頼もしいかぎりです。

さて、いよいよ来週6/5(金)は最終回。
そしてその日の夜に渋谷JZ Bratにて中原さんの凱旋ライブがあります。


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■Japanese Jazz Musicians in New York


アルバムを制作して改めて、「日本人、仕事できる!」と思った。ニューヨークで制作したものの、Mix/Mastering、ジャケットの撮影、衣装、メイク、デザイン、結果的に全部日本人にお願いした。

早い段階からCD制作について相談させていただいていたのは、ギタリストの高免信喜さん。いつも丁寧にアドバイスをくださった。Blue Note NY、Iridium Jazz Club等でも演奏され、ジャズフェスやご自身のツアーで頻繁に世界中を回られている。CDもコンスタントに制作され、昨年12月にリリースされた5枚目のソロギターのアルバムも、高い評価を得られている。先日の高免さんとのDuoでのライブ、リハーサルなしで私のちょっと複雑な曲を完璧に弾いてくださった。

というわけで、NYでご活躍の日本人ミュージシャンはたくさんいらっしゃいますが、僭越ながら何名かご紹介させていただきます!


ジャズシーンで最も活躍されている方のお一人は、先日の記事でも書かせていただいたベースの中村恭士さん。あらゆるバンドのサイドマンとして、まさに引っ張りだこ。Clarence Penn、Myron Walden、Rudy Royston、Joe Lovano、Dave Liebman...。Mark Whitfield-Extendedでは、私のバークリーの最初のアンサンブルの先生でもあったMark Whitfield (gtr)、Mark Whitfield Jr.(dr)、Davis Whitfield(piano)というWhitfieldファミリーの中でベースを弾かれている。Jazz at Lincoln Centerで開催された、2014 NEA Jazz Masters Awards Ceremony & ConcertにもJoe Lovano(sax)やKris Bowers(piano)等と共に出演されていた。一緒に演奏していただきたくてご連絡しても、必ず既に予定が埋まっている方。


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[中村恭士(bass)_Christian Sands(piano)]


ピアニスト早間美紀さん。先日5月7日に、Smoke Jazz and Supper Clubに、Mimi Jones(bass)のバンドでの演奏を聴きに行った。お二人が一緒に演奏されているのを観るのは、2004年のNHK セッション 505で早間美紀さんトリオ w/Mimi Jones (aka Miriam Sullivan), Kim Thompsonを聴いて以来。その年、CDショップで、美紀さんのDebut Album "Vibrant"のジャケットが目に入って試聴した。あまりのかっこよさに、生で聴きたい!と思った。(ニューヨークで活動されてるのかぁと思った記憶がある 。)その後すぐ日本ツアーに来られ、希望がかなった。2006年に発売された太田剣さんの1st Album "Swingroove"でピアノを弾かれているのも美紀さん。力強く、美しく、かっこよく。私の目標。96年横浜プロムナードコンペティションで早間美紀トリオで優勝されている。NYでのご活躍は、Biographyをご覧頂いた方が早そう。グラミー賞ノミネートボーカリストNnenna Freelonとも演奏されていて、私が在学中にお二人でバークリーに演奏にいらしたことがある。嬉しくてはしゃいでしまった。


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[早間美紀(piano)]


日本で初めてお話をして以来、来日の際メールをくださり、お会いするといつも優しく接していただいた。NYに来てからは特にとってもお世話になっている。何か悩み事があるときになぜかタイミングよくご連絡をくださったりして、ずっとくよくよ考えていたことについて瞬時にアドバイスをくださる。演奏もお人柄も、大ファン。私が今ここにいるきっかけにもなった方です。


オルガニスト敦賀明子さん。2012年にBrooklynのJazz 966で、Lou Donaldson Quartetで演奏されたときに初めてお会いした。お客さんはほとんど地元の方で、私はちょっと場違いっぽかった。休憩中に明子さんにご挨拶すると、"遠いのにありがとう"と関西弁で気さくに話してくださった。帰りには、"気をつけて帰ってね"と。それ以来、GarageやShowmansのライブ、昨年のCD "Commencement"のリリースショー等を聴きに伺っている。


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[敦賀明子(organ)]


(ジャズ)オルガニスト、本当に尊敬する。左手で安定してウォーキングしたりベースラインをキープしたりしながら右手でインプロヴィゼーションをするのってかなり難しい。それをもちろんなんなくされてしまう明子さん、演奏の盛り上げ方も、すごい。 羨望。昨年末、落ち込んでいて、明子さんの演奏を聴きたくなりGarageに行った。そのとき新年のハウスパーティーにお誘いいただいた。パーティーに参加されていた、ご活躍中の先輩女性ミュージシャンの方々は、まさに人生の師匠でした。


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[Me&Akikoさん]


海野雅威さん。日本でご存じない方はいらっしゃらないはず。私がジャズを聴き始めた頃にはまだ日本にいらっしゃった。NYでは、Jimmy Cobb(dr)トリオでVillage Vanguardに出演、Winard Harper(dr)グループでもご活躍。Junior Mance(piano)のレギュラーのギグの代わりも務められていた。Arturo's でほぼ毎週弾いていらっしゃり、度々聴きに行った。トリオもソロも素晴らしくてうっとりしてしまう。NYに来た年に、レッスンを受けさせていただいた、尊敬するピアニスト。


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[海野雅威(piano)]




ここで、共演させていただいた日本人ミュージシャンと、その時のお話を!
2013年8月には、ベーシスト北川潔さんに私のライブで演奏していただけました。


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[北川潔(bass)]


ご紹介するまでもなく、Kenny Barronのバンドのレギュラーベーシストとしてもご活躍の大ベテランで恐れ多い方。リハの後、オリジナル曲をナイスだと言ってくださり、ライブも楽しく演奏できたとおっしゃっていただいて、とても感激でした。その時のSaxは、ニューヨークでは知らない人はいない、Tivon Pennicott。この夏に1ヶ月半だけ借りていたBrooklynのリハーサルスタジオで、意気込んで練習した。"Jay Street"は、そのスタジオで作った曲。スタジオから徒歩11分(猛暑で大変だった)の最寄り駅の名前です。24時間利用できるとのことで、気合いを入れてスタジオに近いところへ短期移住したのですが、そこで大騒動。この時から私の引越地獄は始まりました。その話は長くなるのでやめておきます。


9、11月には、イタリア出身の女性シンガーのライブで、ベーシスト脇義典さんと共演させていただくこともできました。Comping(伴奏)の仕方のアドバイスをくださったり、シンガーのために楽譜を作ってあげられたり、優しい方です。


2013年秋から半年間ほど毎週行われていた、シンガー霧生ナブ子さんがホストを務められたVocal Jam Sessionで演奏させていただいたおかげで、日本人の素晴らしいシンガーの方ともたくさんお近づきになれた。古賀マリさん、平麻美子さん、あかある 星野らぶれ~すさん、山田あけみさん、ERIKAさん、いとうゆうこさん... 新しいアルバムをリリースされたばかりの方や、近日中に発売される方ばかり。 2013年の冬はありえない程厳しく、雪もたびたび降り、キーボードをかついでの往復の移動(うち徒歩40分ほど)は本当につらくていつも半泣きだったものの、ここでの演奏はとてもよい経験になった。シンガーの皆様には個人的にもすごくお世話になったり、励ましていただいたりしている。


あるギタリストのバンドでのライブ。着いてみたら、ハウスドラムのBass Drumのペダルが壊れていることが発覚。とりあえず、手ぶらで来ているであろうドラマーに電話した。「えぇ!?」って。当たり前の反応だ。ラッキーなことに、近くに住んでいらっしゃったドラマー山田かおりさん(ある素敵なシンガーのライブで1曲ご一緒させていただいた)と連絡がとれ、たまたまご在宅で、ご自身のペダルを届けに駆けつけてくださった。かおりさんは引越問題のときも親身に相談に乗ってくださり、まさに救世主です。


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[Me&mikiさん&kaoriさん]


Duoの演奏でも、バークリーからの友人を中心に、たくさんのミュージシャンとご一緒している。ボストンで、何度かHal Crookの個人レッスンを受け("How to Improvise"、"How to Comp"の著者として有名だと思う)、彼のアドバイスですぐ実行したのはDuoで練習をすること。演奏相手として何名か学生の名前をリストアップしてくださった。そのうちのお一人、金澤悠人さんほか、ギタリストのお友達とは特に、NYでよく共演させていただいている。

同時期にバークリーにいた方々、みんなものすごくがんばっています。

ご紹介しきれないけど、たくさんの尊敬するミュージシャンと一緒に演奏する機会をいただいていて、本当に嬉しい。まだまだご一緒したい方がいっぱい。


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[百々徹(piano)]


演奏もそのユーモアもとっても大好きなピアニスト百々徹さん、脇義典さん、平麻美子さん、高免信喜さんが主催される、日本人ジャズミュージシャンの新年会、通称「どどわき新年会」というものが存在する。居酒屋に数十名集まるその会に、昨年から2回参加させていただいて、新年早々とっても楽しい気分になります。


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[新年会(photo by Mamiko san)]


さて、最後にあとお二方、触れずにはいられない、日本人ミュージシャンで超活躍されているピアニスト/キーボーディストをご紹介します。(結果的に、鍵盤奏者をたくさんご紹介することになってしまいました!)

BIGYUKIとして知られているYuki Hiranoさん。完全にローカルのミュージシャンと同化している感じ。 ボストン時代に噂に聞いていた"デカユキ"さんの存在。ニューヨークで私がレストランで演奏していたときに初めて会った。その時はその方がデカユキさんとは知らず、後から、今会ったのはもしや??と思い返した。そのときは、「僕ジャズじゃないんよ〜」と半分酔っぱらいながら言っていた。初めて聴いたのは、Winter Jazz FestでのMarcus Strickland(sax)のグループMarcus Strickland's Twi-Lifeのキーボーディストとしての演奏。初対面のときと演奏中のかっこよさとのギャップ。ジャズではないけど、ジャズミュージシャンともよく演奏され、ジャズクラブでの演奏も多い。


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[BIGYUKI(Keyboard)]


Revive Musicの主催したBlue Noteでの彼のグループでのライブも満員。ギターRandy RunyonとドラムDaru Jones。ベーシストなしで、彼が左手でベースを弾く。彼の曲はとてもかっこ良くインパクトがあり、耳に残る。キーボードやシンセで様々な音を使いこなして弾く姿には、同じ鍵盤奏者としてとても憧れる。彼のライブは、NYで聴いて最も楽しかったものの一つ。
そんなBIGYUKIさんがよく出演しているRockwood Music Hallで、7月に私のNYでのCDリリースショーをすることが決まった。嬉しい!


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[BIGYUKI(Keyboard)]


私がアルバムをレコーディングした。Riro Muzikは、Beyoncéのツアーで活躍されているキーボーディスト/ピアニスト辻利恵さんと、ベーシストでありエンジニアでもある旦那さんのRozhanが一緒に立ち上げられたスタジオ。(利恵さんご自身もインタビューで語られています。) 下見に行ったときも、たまたまツアーの合間で利恵さんがNYに戻られていて、その素敵なお人柄で和ませてくださった。初めての本格的な自分自身のレコーディング。わからないことしかなかったが、Rozhanのサポーティブな姿勢で、ここでのレコーディングを決めた。BIGYUKIさんのライブでたまたま彼に初めて会って(利恵さんにはボストンでお会いしたことがあって旦那さんのお話も聞いていたけど、実際に会ったことがなかった)、そのときにスタジオを立ち上げたことや、今度Steinwayのピアノが来るという話を聞いて、今度詳しく聞かせて、と話していた。まさかその7ヶ月後に本当にそこでレコーディングすることになるとは。


中原美野




【中原美野 "A Ray of Light" Release Tour 2015】

NYを拠点に活躍している新人ピアニスト/コンポーザー中原美野がJZ Brat初登場!1stアルバム『A Ray of Light』のリリースを記念して豪華メンバーが集結。ドラマ、映画、CMの音楽のアドバイザーを務めるなど、日本の音楽シーンへも活動の幅を広げている彼女から目が離せない。


<日時>
2015.6.5.Friday
1st:Open 17:30 Start 19:30
2nd:Open 21:00 Start 21:30
※時間が通常と異なります。

<出演>
中原美野(p)西口明宏(ts)土井孝幸(b)大槻"KALTA"英宣(ds)
Guest: 太田 剣(sax)

<場所>
JZ Brat(渋谷)
〒150-0031 東京都渋谷区桜丘町26-1 セルリアンタワー東急ホテル2階

<料金>
入替制¥4,000 2ステージ¥6,000

<予約・お問い合わせ>
JZ Brat
03-5728-0168(平日15:00~21:00)
予約はこちら

<詳細>
http://www.jzbrat.com/liveinfo/2015/06/#20150605(JZ Brat)


CD情報はこちら
※ライブ会場限定販売




【Pianist Yoshino Nakahara Album"A Ray of Light" EPK】




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Profile

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中原美野(Yoshino Nakahara)(ピアニスト/作曲家/編曲家/講師)

4歳でピアノを始め、ヤマハ音楽教室でクラシック演奏や作曲、アンサンブルを学び、幼少時代より作曲で多くの賞を獲得。大学を卒業後、趣味でアルトサックスを手にしたことをきっかけに、ジャズと出会う。
ジャズ・ライブに足繁く通う中、「ピアノでジャズ演奏を学びたい」と、ジャズ・ピアニスト今泉正明に師事する。バークリー音楽大学より奨学金を獲得後、2009年に渡米。2011年、「Professional Music Major Achievement Award」を受賞。ボストンで演奏活動を開始し、地元ラジオ局等に出演。多数の著名プレイヤーと共演する。ジャズだけでなく、クラシックのコンサートやミュージカルでも演奏。2011年卒業後、拠点をニューヨークに移し、北川潔、E.J. Strickland、Gilad Hekselmant等トップクラスのミュージシャンをバンドメンバーに迎え、ライブ活動を行う。2012年9月にはTomi Jazzの「Artist of the Month」に選ばれ、2013年1月には週刊NY生活に特集記事が掲載される。様々なジャンルのバンドでサイドマンとしても活躍。2014年4月には、所属するGregory McDowellバンドでの演奏の様子がNew York Timesに掲載される。その他、音楽学校でピアノやフルートの講師として、また教会でオルガン奏者としても活躍している。2013年、TBSドラマ「潜入探偵トカゲ」のサウンドトラックに、自身でアレンジしたソロピアノ演奏が収録される。日本テレビ音楽のミュージック・ライブラリーの楽曲、スマートフォンアプリのBGM等の演奏、またドラマ、映画、CMの音楽のアドバイザーを務めるなど、日本の音楽シーンへも活動の幅を広げる。2014年、初の帰国ライブを行い、大好評を博した。2015年、ニューヨークにて自己のバンドでレコーディングした1stアルバム「A Ray of Light」をリリースする。


Yoshino Nakahara Official Site

JAZZ in NEW YORK#4 - Musician Friends in New York:JAZZ in NEW YORK

ニューヨークを拠点に活動しているピアニスト、中原美野(なかはらよしの)さん。
5月23日にファーストアルバム『A Ray of Light』をリリース。
そしてその新作を引っさげての凱旋ライブが6月5日(金)渋谷JZ Bratで決定しています。

JJazz.Netでは、"JAZZ in New YORK"シリーズとして中原美野さんのコラムを連載。
ライブまでの約1ヵ月間、毎週金曜日に更新しています。


4回目となる今週はバンドメンバーの探し方について。
世界で一番ジャズミュージシャンが多い街、NYならではのエピソード満載です。

中原さんがレコーディングメンバーとどうやって出会ったのか?
タイミングや人柄も重要かと思いますが、何よりもこの人とやりたい!という想いを感じます。

こういう出会いがあって生まれた彼女のファーストアルバム『A Ray of Light』は、5月23日リリースです。


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■Musician Friends in New York


NYで、バンドメンバーはどうやって見つけるの?と聞かれることが多いので、ご紹介したいと思います!まずはレコーディングメンバー。皆Blue Note、Jazz Standard、Dizzy's、Smoke、Smallsなど一流のジャズクラブや国内外のジャズフェスティバルで演奏する大活躍中のミュージシャンです。


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[Leon(bass)]


最初に出会ったのはベースのLeon Boykins。先週の記事でもご紹介したのですが、シンガーAllan Harrisのバンド、またそのサイドマン3人で結成したトリオ、"King Pony"や、自己のトリオ、その他サイドマンとして忙しく活動している。

日本でもそうだと思うけど、ジャズミュージシャンの中で「ベーシスト」は特に忙しい。NYに来て最初の頃は、知り合いもほとんどいないし、ベーシストを見つけるのに本当に苦労した。次のライブで弾いてくれる人がどうしても見つからなかったとき、QueensにあるBlackbirdというお店のジャムセッションに行ってみた。(ほぼ毎週日曜日にセッションがあり、家から徒歩30分くらいだったけど一度も行ったことがなかった。) そこにたまたま来ていたSax Playerと仲良くなり、ベーシストを探していることを伝えたら、早速数日後に紹介してくれたのがLeonだった。忙しい彼。リハーサルの時間がないとのことで、いきなり本番で共演することに。彼のmyspace(だったと思う)の音源だけが頼り。そのときはギターとベースとのトリオ。ドラムなしのトリオが初めてということもあり、不安だった。けど当日、直前にLeonと軽く打ち合わせして、不安が飛んだ。めちゃくちゃ初見が強い。お店が暗い中、楽譜に書き込んだエンディングのアレンジを、本番も忘れることなくばっちり弾いてくれた。そして、なんという安定感。ベース一つでしっかり支えてくれた。彼のWalkingはとっても合わせやすかった。この人ともっと演奏したい!と思った。次回のライブもその場でお願いしたし、その後、ライブをブッキングするときは、まず彼の予定を聞いて日程を調整することも多くなった。彼の作る曲も好きで、私のライブでも演奏させてもらった。

Leonは一見クールだけど、とっても心が優しい。いつもさりげなくアドバイスをくれる。わからないことを度々彼に相談した。誰もはっきり教えてくれなくて悩んでいた「演奏してくれたメンバーにギャラをいくら払うのが適当なのか」という疑問とか、レコーディングのことや、英語のことなど。今年から、高校でフルタイムで教え始めたそう。面倒見のいい彼、ユーモアのセンスで人気者でもあるし、いい先生になりそう。


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[Peter(drum)]


ドラムのPeter Kronreifは、Leonが出演していたライブで共演していたドラマー。二人は長い付き合いだそう。彼もLe Boeuf Brothers、Nuf Saidなど色んなバンドを掛け持ちし、日に2つ3つライブがあることも稀ではない。ジャズ、ファンク、ロックなんでもできる。オーストリア出身で、ヨーロッパへもよく演奏しに行っている。そんなPeterも、もっとも信頼しているバンドメンバーの一人。Leonと同様、彼の初見の強さにはびっくりした。拍子が変わり、キックも多い私の曲「Composition 1...」と「E-Funk」をリハの1回目でほとんど完璧に演奏した。本番で、彼と一緒に演奏するのがすごく楽しい!と感じた。久しぶりのライブでも、彼は私の曲を忘れることなく、バンドを支えてくれ、演奏中の私の判断にちゃんと着いて来てくれる。ヨーロッパツアーで帰って来た日、空港から直接私のライブに駆けつけてくれたときもそうだった。体力もすごい。そして自分の判断基準も持ち、いい加減な人が多い中で、彼はちゃんとしている。性格もいい。彼自身のバンドのライブで、作曲とアレンジの才能にもびっくりさせられた。


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[Chad(sax)]


サックスのChad Lefkowitz-Brown。Clarence Penn(drums)、グラミーを受賞したArturo O'Farrill's Afro Latin Jazz Orchestra等で活躍する他、Taylor Swiftのバックバンドのメンバーとしても演奏、TVにも出演する。アメリカ中、世界中で毎日のように演奏している。彼は今25歳。おそるべし。彼とは、友達とのセッションで出会った。リハーサルスタジオを借りているドラマーが、Chadに声をかけた。(ジャズクラブで行われているセッションに行くのではなく、友達同士でスタジオや誰かのアパート(音を出しても大丈夫なところ)でセッションをするのもすごくいい。待ち時間もなく、時間いっぱい、やりたい曲を演奏できる。) Chadは、ちゃんと約束を守る。「Sounds greatだったよ、また演奏しようよ」と言うのはミュージシャンの間では社交辞令みたいなものだけど、Chadはすごく忙しいにもかかわらず、ちゃんと実現することができた。すごく性格がよくて明るくて、レコーディングのときも励ましてくれた。程よくレイドバックもしている。ある土曜日、地下鉄の不通や遅延で仕事に遅れそうになっていたとき、乗り換えの駅でChadに偶然会い、数駅一緒に電車に乗って話していたら、彼のリラックスした空気にとりこまれ、自然とあせりが消えていた。
ところで、ニューヨークのSubwayの運行状況はひどいものがあり(特に週末)、それにやられたエピソードもたくさんある。


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[Jeff(guitar)]


レコーディングには参加していないけど、私のバンドにとって重要な、ギタリストのJeff Miles。NYに来て数ヶ月後に聴きに行った、バークリーからのドラマーの友達のライブでフロントを務めていたのが彼。 2008年Gibson Montreux Jazz Guitar Competitionで優勝する実力の持ち主だけど、技術の高さだけではなく、弾いている姿が観客を惹きつける。私はそのとき、彼の演奏はなぜかセクシーだと感じた。もちろんセクシーな服を着ていたわけでもないし、本人はセクシーさをアピールしようとしてはいない。話してみたら、そんな性格ではないことがすぐわかる。ミュージシャンにはステージ上でのセクシーさが必要だな!と思った。

私の曲はJeffに合っていると思い、ぜひ弾いてもらいたくて、最初のTomi JazzのライブでJeffにお願いした。声をかけてくれてありがとう!と、とっても優しいメールで返事をくれた。リハーサルに来てくれたとき、すごく嬉しかったのを覚えてる。そのときベースもドラムも日本人。日本人のクオーターであるという彼は、なじんでいるようでもあったし浮いているようでもあった。それ以来何度も一緒に演奏している。彼はI love teachingと自ら言う程教えるので忙しいけど、ある日、急遽連絡が来たライブ演奏の依頼で、Jeffにすぐ声をかけたところ、「Brooklynの下の方で夜まで教えてるから、終わったらタクシーで駆けつけるよ」と言ってくれた。そのギグは彼の行ったことがなかったジャズクラブだったけど、場所はHarlem。タクシーを使ったらギャラがほとんどなくなると予想できたのに、「I don't mind.」と。結局タクシーを使っても開始時間に間に合わないことがわかったので、そのときは一緒に演奏しなかったけど、声をかけるといつも、「I'm down.」と快く受けてくれる。男女問わず、私のライブを観てJeffのファンになる人は多い。私を差し置いて。Jeff自身のバンドより、私のバンドでの彼の方が格好良さが引き立つと勝手に思っています。


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[Me & Taylor]


ピアニスト、Taylor Eigsti。ボストンで1年目の夏、Studio Apartmentに一人で住んでいた時、くらーい部屋の中で音楽を聴いていたときに初めて名前を知った。その後まもなくScullers Jazz Clubに彼の演奏を聴きに行った。CDで聴いて圧倒された彼のテクニックの凄さを目の当たりにした。ただそのときは、Becca Stevens(vo)がたくさんフィーチャーされていて、もっと彼の演奏が聴きたいなと思った。

NYに来てすぐ相談に乗ってくれた友達が、彼からプライベートレッスンを受けられるかも、と教えてくれたので、早速連絡してみた。お返事来ないかなと思ったけど、すぐに快諾のお返事をくれた。今思えば彼のいつもの明るい話し方が想像できるような文章だった。時間がとれるのは3ヶ月先だった。そこまで予定が埋まっていて、でもちゃんとその遠い日にレッスンの予定を入れてくれるってすごいな、と思った。彼はレッスンでデモンストレーションを沢山してくれ、教え方は優しく、先生としても素晴らしかった。次回のレッスンではオリジナルを持って来て、とのことで、「E-Funk」「Composition 1...」を持参した。その場で楽譜を見て、この部分がすごく好き、などと言ってくれながら笑顔で演奏してくれるTaylor。彼が弾くととてもきらきらしてかっこいい曲に聴こえた。その際にもらったアドバイスを取り入れてアレンジし直したものが、アルバムに収録されています。まさにSpecial thanks to Taylorです。TaylorがNYでライブをするときは大体聴きに行っている。最も尊敬する、憧れのピアニストの一人。




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[Me & E.J.]


2012年12月Metropolitan Roomでのライブの話。 ある世界的ジャズドラマーをスペシャルゲストとしてブッキングしていたところ、直前でキャンセルされてしまった。私の尊敬するピアニストも、同じドラマーから同じ目にあっていたし、彼だけでなくニューヨークのミュージシャンは、迷いなくこういうことをするようだ。宣伝用のフライヤーやポストカードも全部作ってすでに出来上がっていた状態。途方にくれてしまったが、代わりのドラマーを見つけなければいけない。数日間途方にくれた後のある日の深夜1時。Zinc Barで憧れのドラマー、E.J. Stricklandがバンドメンバーとして演奏していることを知り、家を出る。着くといつも入り口で案内をしているAnselがいた。あまり話したことはなかったが、その時間バーのカウンターには、お客さんは私を含めて4人くらいで、自然に彼と会話が始まった。E.J.に、自分のライブで演奏してもらえるか聞きたい、と事情を話した。演奏の終わったミュージシャンに話しかけるのは、そんなに勇気を出さなくてもできるけど、さすがに、ほとんど面識のない方にライブで一緒に演奏してください、とお願いするのは少し緊張した。運良くE.J.と挨拶するチャンスが来たとき、先ほどのAnselが、私が話すより先に、彼女がライブで演奏してもらいたいんだって、と切り出してくれた。そしてE.J.。すぐ自分のスケジュールをチェックして、「Yeah, I'm free.」と。私の演奏を聴いたことがないにもかかわらず、その場で承諾してくれた。嬉しくて、普段はほとんどお酒に酔わないのに、ふらっとしてカウンターの高い椅子から落ちそうになった。大丈夫か?と慌てて手を差し伸べてくれたE.J.。そして迎えたライブは、大成功。火曜日の深夜11:30スタート。誰が来るか、と思っていた。当日は前の出演者の影響で、さらに押して0時近くに始まったにもかかわらず、会社員の方々も含むほとんどの方が最後まで聴いてくださった。一生懸命お友達に声をかけて連れて来てくださった方、NYで初めての大きなライブにお花を持って駆けつけてくれたお友達、1回のリハで完璧に演奏してくれたE.J.、素晴らしい演奏をしてくれたバンドメンバー、皆に感謝の気持ちでいっぱいの夜だった。


アルバム収録曲"Days"は、このライブに向けて前月の11月に作曲したものの、結局そのときは完成せず、レコーディングまで演奏されなかった曲です。


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次回は、NYで活躍されている日本人ミュージシャンについてご紹介します!


中原美野




【中原美野 "A Ray of Light" Release Tour 2015】

NYを拠点に活躍している新人ピアニスト/コンポーザー中原美野がJZ Brat初登場!1stアルバム『A Ray of Light』のリリースを記念して豪華メンバーが集結。ドラマ、映画、CMの音楽のアドバイザーを務めるなど、日本の音楽シーンへも活動の幅を広げている彼女から目が離せない。


<日時>
2015.6.5.Friday
1st:Open 17:30 Start 19:30
2nd:Open 21:00 Start 21:30
※時間が通常と異なります。

<出演>
中原美野(p)西口明宏(ts)土井孝幸(b)大槻"KALTA"英宣(ds)
Guest: 太田 剣(sax)

<場所>
JZ Brat(渋谷)
〒150-0031 東京都渋谷区桜丘町26-1 セルリアンタワー東急ホテル2階

<料金>
入替制¥4,000 2ステージ¥6,000

<予約・お問い合わせ>
JZ Brat
03-5728-0168(平日15:00~21:00)
予約はこちら

<詳細>
http://www.jzbrat.com/liveinfo/2015/06/#20150605(JZ Brat)


CD情報はこちら
※ライブ会場限定販売




【Pianist Yoshino Nakahara Album"A Ray of Light" EPK】




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Profile

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中原美野(Yoshino Nakahara)(ピアニスト/作曲家/編曲家/講師)

4歳でピアノを始め、ヤマハ音楽教室でクラシック演奏や作曲、アンサンブルを学び、幼少時代より作曲で多くの賞を獲得。大学を卒業後、趣味でアルトサックスを手にしたことをきっかけに、ジャズと出会う。
ジャズ・ライブに足繁く通う中、「ピアノでジャズ演奏を学びたい」と、ジャズ・ピアニスト今泉正明に師事する。バークリー音楽大学より奨学金を獲得後、2009年に渡米。2011年、「Professional Music Major Achievement Award」を受賞。ボストンで演奏活動を開始し、地元ラジオ局等に出演。多数の著名プレイヤーと共演する。ジャズだけでなく、クラシックのコンサートやミュージカルでも演奏。2011年卒業後、拠点をニューヨークに移し、北川潔、E.J. Strickland、Gilad Hekselmant等トップクラスのミュージシャンをバンドメンバーに迎え、ライブ活動を行う。2012年9月にはTomi Jazzの「Artist of the Month」に選ばれ、2013年1月には週刊NY生活に特集記事が掲載される。様々なジャンルのバンドでサイドマンとしても活躍。2014年4月には、所属するGregory McDowellバンドでの演奏の様子がNew York Timesに掲載される。その他、音楽学校でピアノやフルートの講師として、また教会でオルガン奏者としても活躍している。2013年、TBSドラマ「潜入探偵トカゲ」のサウンドトラックに、自身でアレンジしたソロピアノ演奏が収録される。日本テレビ音楽のミュージック・ライブラリーの楽曲、スマートフォンアプリのBGM等の演奏、またドラマ、映画、CMの音楽のアドバイザーを務めるなど、日本の音楽シーンへも活動の幅を広げる。2014年、初の帰国ライブを行い、大好評を博した。2015年、ニューヨークにて自己のバンドでレコーディングした1stアルバム「A Ray of Light」をリリースする。


Yoshino Nakahara Official Site

JAZZ in NEW YORK#3 - Jazz clubs, events, and musicians in New York:JAZZ in NEW YORK

ニューヨークを拠点に活動しているピアニスト、中原美野(なかはらよしの)さん。
5月23日にファーストアルバム『A Ray of Light』をリリース。
そしてその新作を引っさげての凱旋ライブが6月5日(金)渋谷JZ Bratで決定しています。

JJazz.Netでは、"JAZZ in New YORK"シリーズとして中原美野さんのコラムを連載。
ライブまでの約1ヵ月間、毎週金曜日に更新しています。


3回目となる今週はニューヨークのジャズクラブやイベント、そしてミュージシャンについて。

中原さん本当に沢山のジャズスポットに足を運ばれています!
ガイド本だと、ハコの特徴や雰囲気が伝わりづらいですが、その辺りのニュアンスなんかもよく分かります。

NYのリアルなジャズ情報を知ることが出来るという意味でも、今回のコラムは保存版といえます。


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■Jazz clubs, events, and musicians in New York


新しくできたお友達に、おすすめのジャズクラブは?と聞かれたら、いつも答えているのがJazz Standard。 大ベテランばかりではなく、今注目されているようなアーティストも出演していて、CDリリースライブも多く、新鮮な音楽も聴ける。お料理も美味しいし、席から演奏者が見えないということもほとんどなく(ステージを横から見る席でないかぎり)、音楽を気分よく聴きやすい環境だと思う。初めて行ったとき、チキンウィングのあまりの美味しさに衝撃を受けた。Warm Barbecue Potato Chipsも最高。


ライブで印象に残っているのは、Benny Green Trio。彼のピアノの演奏は、内容が素晴らしいのはもちろんのこと、椅子から腰を浮かせたり踊っているような感じで動いたり、体全体で表現されるので、観ていてとても引き込まれたし、楽しい気分になれた。びっくりしたのは、終わった後Bennyにご挨拶に行ったとき、彼が逆に私に、「一番前でにこにこして聴いてくれていたでしょ?それですごい気分よく演奏できたよ」って言ってくれた。ますます彼のファンになった。対照的だったのはある女性シンガー。ライブはすごく魅力的で、彼女はステージから近かった私に歌いながら微笑みかけてくれて、いやー素敵だわ〜と思いながら聴いていたのに、終わった後その感動を彼女に伝えに行ったら、ものすごくそっけなくて、がーん、てなった。何このギャップ!でもこれがアーティストなのね、と納得もした。


話はそれるけど、演奏後ミュージシャンに「素晴らしかった!」とお伝えするとき、私もミュージシャンであることを知ると、特にアメリカ人のミュージシャンは、「I wanna hear you playing sometime.」とか「Hope to play with you sometime.」と言ってくれることが多い。本当にそう思ってるわけではなさそうだけど、とりあえず会ったら「How are you?」って聞くけど特に答えは求めてない、という感じの会話と同じ種類のもののようで、不思議な心境だけど、それもまた好き。


その他、Terence Blanchard(tp)のライブでは、バンド全体の演奏の素晴らしさに加え、そこで初めて聴いたFabian Almazan(piano)の創作的な演奏に目と耳を奪われ、Clayton Brothers QuintetでのJohn Clayton(bass)とGerald Clayton(piano)の親子の共演も素敵で、ジャズっていいなと思えたし、Dr. Lonnie Smith (organ) Trioにも身を乗り出すぐらい魅了された。Mulgrew Millerの、何でもないように自然にピアノを弾く姿も強く印象に残っている。


次に、Smalls Jazz Club。ジャズミュージシャンが集まる場所。


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SmallsのあるWest VillageエリアにはBlue NoteやVillage Vanguard等ジャズクラブが多くあり、そのどこかでライブを観終わった後には自然に、じゃあsmalls寄って行こうかってなる。今日は誰が演奏してるのかな?って気軽に立ち寄る。ちょっと時間が空いたなってsmallsに行く。ジャズミュージシャンから、今夜はハングアウトするの?って聞かれたら、大体今日smalls行くの?っていう意味だったりする。ここでできた友達も多く、行くと必ず誰か知り合いのミュージシャンに会える。ひきかえに、場所が狭くすぐいっぱいになってしまう上に、ミュージシャン同士近況を語りあったり盛り上がったりするし、お客さんもお酒で気分よくなって大声で話したりするから、結構うるさくて音楽があんまり聴こえないこともあるものの、必ずここに戻りたくなってしまう。毎晩のように通っている人も多い。ニューヨークでジャズを発信している場所、といっても過言ではないはず。


数年で数えきれないほどのライブを観た。Jonny O'neal、Jean-Michel Pilc、Ari Hoenig、Taylor Eigsti、Gerald Clayton、Aaron Parks、Joe Sanders、Joe Martin、Lage Lund、Sullivan Fortner、Emmet Cohenなど...
Smallsで最初に聴いたのは、Peter Bernsteinのソロギターだったけど、何故か一番前の席で、そこから猫がステージ付近を歩いているのが見えたし、なんだ、この小さな不思議な空間は、と思った。まさかそんなに重要な場所で、頻繁に訪れることになろうとは。


ニューヨークに来て1年目、2年目の誕生日の夜は、どちらもsmallsで過ごした。1年目には、初代オーナーであるMitch Borden(私は当時スタッフの一人だと思っていた)が、初対面の私にHappy Birthdayを即興の歌詞付きで歌ってくれた。予想外に長くて周りの目がちょっと気になったけど、すごく嬉しかった。2年目には、私の憧れのピアニストであり、現オーナーSpike Wilnerの学生時代の同期でもあるBrad Mehldauがライブを聴きにいらしていて、10秒くらいお話をすることができ、感激だった。


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ミュージシャンが集まるという意味では、Fat Catもそう。Cover Charge(入場料)が3ドル。深夜4時までミュージシャンがセッションをしたり、様子を伺ったりしている。ここは、同じ空間にビリアードやピンポンをしたり、ただ飲んで盛り上がっている人たちも共存していて面白い。金曜、土曜はとくにとっても騒がしくてほとんど音楽が聴こえないけど。


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Village Vanguardは、紹介するまでもなく、超一流のミュージシャンが出演する老舗のジャズクラブ。 ローテーションのように、毎年決まったミュージシャンが似たような時期に出演している印象もある。私が実際に観たライブも、生で聴けることにどきどきしてしまうようなミュージシャンばかり。Brad Mehldau Trio、Brian Blade Fellowship、Kenny Barron Trio、Barry Harris Trio... Christian McBride Trioは、ピアノのChristian Sandsに圧倒された。23歳でこんな演奏ができるんだ、と。翌年も迷わず聴きに行った。Joshua Redman Trioは色々な意味ですごくかっこ良かった。もともとJoshua Redmanの曲が大好きだったけど、彼のミュージシャンシップにより惹かれることになった。ピアノなしだったけど、ピアニストとして聴いていて物足りないこともなく、Matt PenmanとGregory Hutchinsonとの3人の演奏から目が離せなかった。Rudy Royston(drums)のSextetは、中村恭士さんとMimi JonesのTwin Bassで、Rudyの演奏も曲もかっこよくて美しく、すごく好きだった。


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Dizzy's Club Coca-Colaも、好きなジャズクラブの一つ。バンドが演奏している後ろの一面の窓から夜景が見えて美しく、雰囲気がよいのでリラックスして演奏を聴ける。ここでは、Cedar Walton Quintetを聴く機会にも恵まれた。先日は、レコーディングメンバーLeonが参加しているシンガーAllan Harrisのバンド、その翌日にChadが参加しているClarence Penn(drums)のバンドの演奏を聴き、すっかり癒された。


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そして最近注目しているのは、2013年9月にオープンした新しいヴェニュー、SubCulture。内装も美しく落ち着いた雰囲気で、バーもあり、コンサートホールとクラブの中間みたいな感じ。6番線Bleeker Street stationとB, D, F, MラインのBroadway/Lafayette stationの出口からすぐで便利。Steinwayのピアノの存在感がすごい。オープンしたての頃開催された、Piano Festival。2日間で、Aaron Goldberg、Gerald Clayton、Taylor Eigstiのソロピアノをゆっくり聴くことができた。 Gretchen Parlato, Becca Stevens, Alan Hamptonをvocalに迎えたプロジェクト、Taylor Eigsti's Free Agencyの演奏はここで2回観たけど、最高だった。


他にも、何か聴きたいなと思ったらスケジュールをチェックしているジャズクラブはいっぱいある。お料理が美味しいと評判で、大体いつも満席の、HarlemにあるSmoke Jazz and Supper Club。


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ギタリスト、シンガー、オルガニストが多く出演している55 Barでは、Mike Stern(gtr)、Ferenc Nemeth(drums) 等の演奏を聴いた。新しいプロジェクトのコンサートを聴ける印象のあるThe Jazz Gallery。昨年末参加させていただいた忘年会は、今をときめくミュージシャンだらけでした。
などなどご紹介しきれません!


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NYには、ジャズクラブだけでなく、魅力的なジャズイベントもたくさん。
1月に行われるWinter Jazz Fest。金曜日と土曜日の夕方6時から深夜2時まで、Greenwich Villageとその周辺に位置する10箇所のジャズクラブやライブハウスで、合計100以上のグループが代わる代わる演奏するもの。1日券または両日券を買って、自由にクラブを行き来して自分の聴きたいアーティストの演奏をキャッチする。私は2012年から毎年行っている。とっても魅力的なラインアップです。


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公園のフリーコンサートも数多くある。
2012年、2013年の秋、紅葉の時期に開催された、"Jazz & Colors Festival"と題されたCentral parkでのジャズイベント。公園内のあちこちでバンドが演奏していて、地図を観ながら移動。場所が離れているから、たどり着くのが大変なときもあるけど、それよりも、ニューヨークでは、11月はかなりの寒さ。演奏するミュージシャンの方が大変。もちろん防寒着だけど、演奏中は手が冷たくなってつらそう。お友達も、演奏し終わった後、寒い寒いと言っていた。聴く方は、綺麗な景色とともにジャズを楽しめて、あ~よかったーと帰りました。でも、この企画は、Metropolitan Museum of Artで、Indoorのイベントとして2015年1月に復活したみたいだから、Cenral parkではもう開催されないのかな。
http://jazzandcolors.com


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夏にはMadison Square Parkでのフリーコンサート。2012年のGrechen Parlatoのバンド、2013年のAnat Cohenのバンド、どちらも素晴らしく、いい天気で気持ちがよかった。
http://www.madisonsquarepark.org/tag/jazz


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もう一つはBryant Park。普段からとても大好きな公園の一つで、隣接するNew York Public Libraryも通る度に美しいなと思う。


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初夏から数ヶ月間、これから来る!というバンドやソロピアノの演奏を聴くことができる。2013年は、もう一人のレコーディングメンバー、ドラマーPeter Kronreifが参加しているバンド、Le Boeuf Brothersがフィーチャーされていた。


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長くなっちゃった。
さて私自身は、Tomi JazzでのNY初ライブをきっかけに、少しずつ自分のバンドでの演奏機会を増やしていった。Berkleeに同時期に通っていたお友達、同じ頃にボストンから引っ越してきたミュージシャンに連絡をとり、またニューヨークで出会ってすごい!と思った人たちにもすぐに声をかけ、バンドメンバーとして演奏してもらった。


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Somethin' Jazz Clubも度々演奏させていただいたジャズクラブの一つ。池袋のSomethin' Jazz Clubには、私がまだジャズピアノを習い始めた頃に2回ほど行ったことがあった。NYで再会したオーナーSteveさんにその話をしたら、喜んでくださり、応援してくださった。若手に演奏機会を提供してくれるジャズクラブだったと思う。でも、意外なミュージシャンも出演していた。前述のピアニストChristian SandsがNYに引越し、自身のトリオで最初にライブをしたのもここだった。メンバーは中村恭士さんとRodney Green。ブルージーでセクシーで、ノックアウトでした。そのSomethin' Jazz Club NYは、2015年3月でクローズしてしまい、寂しい限りですが、ライブ演奏とは別の場面で事件もあり、とても思い出深い場所となりました。


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中原美野




【中原美野 "A Ray of Light" Release Tour 2015】

NYを拠点に活躍している新人ピアニスト/コンポーザー中原美野がJZ Brat初登場!1stアルバム『A Ray of Light』のリリースを記念して豪華メンバーが集結。ドラマ、映画、CMの音楽のアドバイザーを務めるなど、日本の音楽シーンへも活動の幅を広げている彼女から目が離せない。


<日時>
2015.6.5.Friday
1st:Open 17:30 Start 19:30
2nd:Open 21:00 Start 21:30
※時間が通常と異なります。

<出演>
中原美野(p)西口明宏(ts)土井孝幸(b)大槻"KALTA"英宣(ds)
Guest: 太田 剣(sax)

<場所>
JZ Brat(渋谷)
〒150-0031 東京都渋谷区桜丘町26-1 セルリアンタワー東急ホテル2階

<料金>
入替制¥4,000 2ステージ¥6,000

<予約・お問い合わせ>
JZ Brat
03-5728-0168(平日15:00~21:00)
予約はこちら

<詳細>
http://www.jzbrat.com/liveinfo/2015/06/#20150605(JZ Brat)


CD情報はこちら
※ライブ会場限定販売




【Pianist Yoshino Nakahara Album"A Ray of Light" EPK】




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Profile

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中原美野(Yoshino Nakahara)(ピアニスト/作曲家/編曲家/講師)

4歳でピアノを始め、ヤマハ音楽教室でクラシック演奏や作曲、アンサンブルを学び、幼少時代より作曲で多くの賞を獲得。大学を卒業後、趣味でアルトサックスを手にしたことをきっかけに、ジャズと出会う。
ジャズ・ライブに足繁く通う中、「ピアノでジャズ演奏を学びたい」と、ジャズ・ピアニスト今泉正明に師事する。バークリー音楽大学より奨学金を獲得後、2009年に渡米。2011年、「Professional Music Major Achievement Award」を受賞。ボストンで演奏活動を開始し、地元ラジオ局等に出演。多数の著名プレイヤーと共演する。ジャズだけでなく、クラシックのコンサートやミュージカルでも演奏。2011年卒業後、拠点をニューヨークに移し、北川潔、E.J. Strickland、Gilad Hekselmant等トップクラスのミュージシャンをバンドメンバーに迎え、ライブ活動を行う。2012年9月にはTomi Jazzの「Artist of the Month」に選ばれ、2013年1月には週刊NY生活に特集記事が掲載される。様々なジャンルのバンドでサイドマンとしても活躍。2014年4月には、所属するGregory McDowellバンドでの演奏の様子がNew York Timesに掲載される。その他、音楽学校でピアノやフルートの講師として、また教会でオルガン奏者としても活躍している。2013年、TBSドラマ「潜入探偵トカゲ」のサウンドトラックに、自身でアレンジしたソロピアノ演奏が収録される。日本テレビ音楽のミュージック・ライブラリーの楽曲、スマートフォンアプリのBGM等の演奏、またドラマ、映画、CMの音楽のアドバイザーを務めるなど、日本の音楽シーンへも活動の幅を広げる。2014年、初の帰国ライブを行い、大好評を博した。2015年、ニューヨークにて自己のバンドでレコーディングした1stアルバム「A Ray of Light」をリリースする。


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JAZZ in NEW YORK#2 - ニューヨークのジャズ事情:JAZZ in NEW YORK

ニューヨークを拠点に活動しているピアニスト、中原美野(なかはらよしの)さん。
5月23日にファーストアルバム『A Ray of Light』をリリース。
そしてその新作を引っさげての凱旋ライブが6月5日(金)渋谷JZ Bratで決定しています。

JJazz.Netでは、"JAZZ in New YORK"シリーズとして中原美野さんのコラムを連載。
ライブまでの約1ヵ月間、毎週金曜日に更新しています。

2回目となる今週は「ニューヨークのジャズ事情」。
ジャズの本場、NYのリアルな空気感が伝わってきます!
ジャズクラブやジャズの情報誌なども教えてくれているのでNYに行かれる際は参考にされてみては?


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■ニューヨークのジャズ事情
Jazz scene in New York



ニューヨーク。今はとても大好きな街。
ボストン在住のとき、何度かニューヨークに行ったことがあった。 2010年には、カーネギーホールへハービーハンコックのThe Imagine Projectを聴きに。またBarry Harrisのワークショップを受けに。2011年には、自由の女神に会い、B.B. King Blues ClubでMr. BIGを聴くために。そしてBlue NoteへハービーハンコックとチックコリアのDuoを聴きに。目的のコンサートはいずれもビッグイベント。素晴らしい経験だった。でも、いずれも日帰りで、早朝に出て深夜に戻った。片道4時間半のバスでの往復に疲れ、ニューヨークにまた行きたい!という気持ちにはあまりならなかった。 その頃、どこがメインのジャズシーンなのか私にはわかっていなかった。


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でも、やっぱりジャズの本場であるというニューヨーク。様子を知りたかった。卒業後すぐの12月に、アパート探しのために事前に1週間ほどNYへ滞在。運の良いことに、最初に見学しに行った アパートがよい印象で、そこに住むことが決まった。クリスマスイブの夜、ツリーを観ようと、ブルックリンの滞在先から一人でRockefeller Center駅まで電車で移動した。ところがなんとツリーにたどり着けず。いったいあの有名なツリーはどこに?と疑問だけが残った。そんなふうに何もわからない状態で、2012年の1月にNYへ引越した。しばらくボストンでのライブもあり行ったり来たりの生活。やっと落ち着いた3月中旬頃から、本格的にニューヨーク生活を始めることとなった。


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数ヶ月だけ住んで日本へ帰る予定だったから、ライブへ行けるだけ行こうと思っていた。 「Hot House Jazz Guide」 (http://hothousejazz.com/)、「The New York City Jazz Record」(http://www.nycjazzrecord.com/)、「Jazz Inside Magazine」(http://jazzinsidemagazine.com/)といった、ジャズクラブ等に置いてあり無料で配布されているジャズの情報誌を手に入れ、ジャズを聴けるところがたくさんあることを知る。そこに掲載されている1ヶ月間のスケジュールをチェックして、毎晩のように音楽を聴きに出かけた。最初の頃は自分が既に知っているアーティストが中心で、Blue Note、Village Vanguard、Birdlandといったジャズクラブへも度々行った。そういう有名なアーティストの演奏を頻繁にスケジュールの中に見つけることができるというのも、NYのすごい所。


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そのうちに足を運ぶジャズクラブの幅も広がっていった。ジャズにはあまり興味のない人々も訪れる、観光客も多い、超有名ジャズクラブだけではなく、ミュージシャンが集まるジャズクラブへ。(それについては来週また詳しく。) 友達のライブがあれば必ず駆けつけた。そこで出会ったのが今のバンドメンバーの一人でもある。ジャズクラブだけでなく、レストランや公園でも、めちゃくちゃレベルの高い人たちがジャズを演奏している。 至るところで多くのミュージシャンがライブをしていて、自分の憧れのアーティストの演奏を近くで、日本よりも低価格($10~25)で聴くことができ、また新たな素晴らしいミュージシャンにも次々と出会い、実際に話したりお友達になれたりもする。ジャズファン、ジャズを学ぶ人にとっては他では得難い経験のできる街だと思う。


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私がニューヨークへ来てからの数年の間にもクローズしてしまうクラブがいくつかあったが、それでもジャズライブスポット(venue)は多いと思う。しかしそのヴェニューの数以上に、ミュージシャンの数が多い。非常に多い。そのレベルもものすごく高い。そして皆、どこかで演奏したいと思っている。

例えば、いわゆるモンクコンペティションと呼ばれる、Thelonious Monk Institute of Jazzが主催するインターナショナルなコンペティション。2013年はサックスの年だったが、そこで入賞した3人、Melissa Aldana、Tivon Pennicott、Godwin Louisはいずれも、ニューヨークで大活躍している人たち。


NYのジャズシーンで活躍しているミュージシャンには学生も多い。名高いミュージックスクール、Manhattan School of Music、New School、Julliard、NYU等の学生が、在学中からどんどんsmallsやDizzy's Club等のジャズクラブで演奏をし、有名なアーティストのバンドに雇われる。


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Smalls、Fat Catなどでは毎日深夜に、Zinc Barでは毎週火曜日にセッションが行われているが、そこへ行くと特に、若く勢いのあるミュージシャンがたくさん集まっていて、そのレベルの高さがわかる。上記の人々はもちろん、世界中から実力を持った人たちが集まっている。皆上手く、そして皆仕事が欲しい。英語では、「Intimidating」というけど、やはりそこには入りづらい雰囲気がものすごくある。すでに常連のミュージシャンでコミュニティは出来上がっているし、ピアノであれば、演奏中にこの人だめだ、と思われたら席をどかされることもある。打ち合わせもなく誰かが曲を演奏し始めれば他はそれについていかざるを得ないし、ついていけるのが当然。Cleopatra's Needleなどでは、日本人ミュージシャンがホストをされていることもあり、優しく招き入れてくれたりするので、すぐ入ることができたが、上記のジャズクラブでは、競い合うように皆がステージへと上がり、誰も譲らない。Zinc Barは記名制だが、ホストバンドと仲の良いミュージシャンが現れると優先的に通される。サックス等ホーンのソロが何人も続くこともあり、1曲は必然的に長くなり、1曲に一人しか弾けないピアニストは結局一晩で数人回るぐらい。そこに物怖じせずに入っていける人がやはり強い。


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セッションには、すでに名のあるミュージシャン、引っ張りだこのミュージシャンもふらっと立ち寄ったりする。Roy Hargrove(tp)、Joel Frahm(sax)、Ben Williams(bass)、Linda Oh(bass)、Eric Lewis (piano)、Beka Gochiashvili(piano)等々。彼らが直々に指導をしたり、励ましたり、刺激を与えたりしている。セッションの最初の1時間は、ホストバンドの演奏であることが多いが、それも素晴らしい。その演奏を聴き、セッションの様子をしばらく観たり聴いたりするのも勉強になった。でもそれだけでは足りないとわかっていた。けれども、その中に入っていくのに1年以上かかった。


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NYへ来てすぐ演奏の機会を得たが、それは元々友達がやっていた仕事。日本食レストランでの週1回の演奏。フード・ドリンクは提供してもらえたものの、ギャラはなし。チップジャーは置けたが、お客さんもあまりいなかったし、日本食を食べたくて来ている日本人がほとんどで、チップはほとんど入らなかった。NYにはそういうギグも多い。そしてその仕事をしていた間、ミュージックスクールでピアノとフルートを教え始めたが、他に自分のパフォーマンスの機会を獲得することができないでいた。数ヶ月で帰るなどという考えはいつの間にかなくなっていた。せっかくニューヨークに来たんだから、一度も演奏しないで帰るわけにはいかなかった。そのレストランも6月にはクローズし、いよいよ演奏の仕事がなくなる危機に。その後改めて気づくのだけど、友達から譲り受けた仕事、友達から紹介してもらった仕事、というのは、自分が得る仕事の中で、意外と大きな割合を占める。やはり人脈は重要だ。


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そんなとき、ちょうどよいタイミングで、以前にメールで連絡をとっていたTomi Jazzから、ライブのブッキングのお返事が来て、そこでのライブが私のバンドのニューヨークでの初の演奏となった。それが2012年7月のこと。

中原美野




【中原美野 "A Ray of Light" Release Tour 2015】

NYを拠点に活躍している新人ピアニスト/コンポーザー中原美野がJZ Brat初登場!1stアルバム『A Ray of Light』のリリースを記念して豪華メンバーが集結。ドラマ、映画、CMの音楽のアドバイザーを務めるなど、日本の音楽シーンへも活動の幅を広げている彼女から目が離せない。


<日時>
2015.6.5.Friday
1st:Open 17:30 Start 19:30
2nd:Open 21:00 Start 21:30
※時間が通常と異なります。

<出演>
中原美野(p)西口明宏(ts)土井孝幸(b)大槻"KALTA"英宣(ds)
Guest: 太田 剣(sax)

<場所>
JZ Brat(渋谷)
〒150-0031 東京都渋谷区桜丘町26-1 セルリアンタワー東急ホテル2階

<料金>
入替制¥4,000 2ステージ¥6,000

<予約・お問い合わせ>
JZ Brat
03-5728-0168(平日15:00~21:00)
予約はこちら

<詳細>
http://www.jzbrat.com/liveinfo/2015/06/#20150605(JZ Brat)


CD情報はこちら
※ライブ会場限定販売




【Pianist Yoshino Nakahara Album"A Ray of Light" EPK】




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Profile

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中原美野(Yoshino Nakahara)(ピアニスト/作曲家/編曲家/講師)

4歳でピアノを始め、ヤマハ音楽教室でクラシック演奏や作曲、アンサンブルを学び、幼少時代より作曲で多くの賞を獲得。大学を卒業後、趣味でアルトサックスを手にしたことをきっかけに、ジャズと出会う。
ジャズ・ライブに足繁く通う中、「ピアノでジャズ演奏を学びたい」と、ジャズ・ピアニスト今泉正明に師事する。バークリー音楽大学より奨学金を獲得後、2009年に渡米。2011年、「Professional Music Major Achievement Award」を受賞。ボストンで演奏活動を開始し、地元ラジオ局等に出演。多数の著名プレイヤーと共演する。ジャズだけでなく、クラシックのコンサートやミュージカルでも演奏。2011年卒業後、拠点をニューヨークに移し、北川潔、E.J. Strickland、Gilad Hekselmant等トップクラスのミュージシャンをバンドメンバーに迎え、ライブ活動を行う。2012年9月にはTomi Jazzの「Artist of the Month」に選ばれ、2013年1月には週刊NY生活に特集記事が掲載される。様々なジャンルのバンドでサイドマンとしても活躍。2014年4月には、所属するGregory McDowellバンドでの演奏の様子がNew York Timesに掲載される。その他、音楽学校でピアノやフルートの講師として、また教会でオルガン奏者としても活躍している。2013年、TBSドラマ「潜入探偵トカゲ」のサウンドトラックに、自身でアレンジしたソロピアノ演奏が収録される。日本テレビ音楽のミュージック・ライブラリーの楽曲、スマートフォンアプリのBGM等の演奏、またドラマ、映画、CMの音楽のアドバイザーを務めるなど、日本の音楽シーンへも活動の幅を広げる。2014年、初の帰国ライブを行い、大好評を博した。2015年、ニューヨークにて自己のバンドでレコーディングした1stアルバム「A Ray of Light」をリリースする。


Yoshino Nakahara Official Site

JAZZ in NEW YORK#1:JAZZ in NEW YORK

ニューヨークを拠点に活動しているピアニスト、中原美野(なかはらよしの)さん。
5月23日にファーストアルバム『A Ray of Light』をリリース。
そしてその新作を引っさげての凱旋ライブが6月5日(金)渋谷JZ Bratで決定しています。

そんな中原美野さんが、ライブまでの約1ヵ月間、
"JAZZ in New YORK"シリーズとして毎週JJazz.Netにコラムを届けてくれることになりました!

大学卒業後、一般企業に就職していた彼女が何故今NYでジャズを演奏しているのか?
このコラムではNYのジャズ事情と共に、彼女のストーリーも紹介してもらいます。
毎週金曜日の更新をお楽しみ下さい。


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■NYに渡った理由
The reason why I moved to New York (the US)



大学を卒業後、何年か会社員をしていたんです。
それがなぜかこんなことに。


4歳(5歳になる2ヶ月前)からYAMAHAでピアノを習い始め、小学校に入ってからは専門科コースというところに所属し、週3回レッスンに通い、アンサンブルや音楽理論を学び、頻繁にコンサートや作曲の課題をこなした。学校では部活等でフルートやトロンボーンなど色んな楽器を演奏したし、合唱団で歌も伴奏もしたし、ポップスも大好きで、「ミュージックステーション」も「Hey!Hey!Hey!」も「Countdown TV」も毎週楽しみにしていた。


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受験する高校を選ぶときに、音大付属を受けることも考えた。けど、音楽の道は厳しいからやめといたら、というアドバイスを受け、そうですね、とあっさりあきらめた。そのとき私の選択肢には「クラシックのピアニスト」しかなく、コンクールに向けて毎日何時間も一人で練習練習、プレッシャーとの闘い、というイメージしかなかったから。苦しいだけだろうと思った。受験のためしばらくピアノを中断したが、高校入学後、ピアノを再開。その後、就職活動のタイミングでまたピアノから遠のいた。就職後しばらく経ち、また音楽をやりたくなった。せっかくだから新しい楽器をやってみようと思い、アルトサックスを習い始めた。


先生のライブに行って初めて、ジャズってかっこいいな!と思った。ジャズの「バンド」の演奏に魅力を感じ、先生のライブでピアノを弾かれていた今泉正明さんが参加されていた、別のバンドのライブにも行ってみた。御茶ノ水NARUで、そのライブにめちゃくちゃ衝撃を受ける。なんだこのエネルギーと迫力は!!!そこで演奏されていたのは太田剣さんのバンド。ドラムが大槻カルタ英宣さん。それ以来、剣さんのバンド、カルタさんのバンドに何度も足を運び、ほかのミュージシャンの方々のライブへも行った。曲のかっこよさ、メンバーの一体感、楽しく演奏されている様子に、仕事で疲れたり落ち込んだりしていても、元気をもらえた。週4回くらいジャズのライブに行っていた時期もあったのでは。母に心配されたくらい。


慶応義塾大学に通っていたものの、在学中はジャズに興味を持っておらず、ジャズ研に入ろうというアイディアも全くなかった。働き始めてから、やっとジャズに出会いました。オーディエンスとして、かっこいい!!楽しい!という思いが持続すると同時に、私もジャズをちゃんと学んで上手くなって、あの方々と一緒に演奏したい!!という気持ちがどんどん強くなっていった。


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ジャズだったら楽しく演奏できそうな気がした。始めたばかりのサックスでは無理だ、とピアノにまた戻って来た。前述のピアニスト今泉さんに直接連絡をし、レッスンを受け始めた。週一回会社の後にメーザーハウスに通ってジャズ理論も勉強した。ですが、会社に行きながらのレッスン。まったく練習をせず、いつも今泉さんに申し訳ない気持ちでいっぱいだった。音楽だけに集中できる環境に身を置きたい、と思い始めた。年齢関係なく学生としてなじめそうだったこと、父が海外で単身赴任をしていたこともあり、海外の生活にずっと憧れがあったこと、そしてその学校の評判から、バークリー音楽大学入学を考えた。同校を卒業されている今泉さんからの、音楽を仕事とする、という点に関しての反対も押し切って、同校の奨学金オーディションを受けた。反対されながらも、オーディションに向けての準備に全面的にご協力くださった今泉さんに、とても感謝しています。


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そして無事オーディションに受かったのですが、すぐに渡米せず、マーケティングを学べるという理由で、あるベンチャー企業に転職した。働きながらもずっとバークリーのことは頭にあったが、本当に経済的に安定した生活を捨てていいのだろうか、いったんやめたら戻って来て再就職したいと思っても難しいのではないか、など現実的な恐怖がいっぱいだった。(もともと渡米するなら1年間だけ音楽を勉強して日本に戻ろうと思っていた。) でも、音楽に挑戦したかった。挑戦せずにあきらめるのは嫌だった。一方、仕事の方は、転職前は営業のサポートや経営管理といった仕事だったので、営業職がまったくうまくいかずなかなか成績が出なかった。ただ負けず嫌いな性格で、いったん営業という仕事を始めてしまったからには、結果を出さずにやめるのは不本意だった。心配してくださっていた先輩から、せっかく受かったんだからバークリーに行った方がいいよ、という説得を何度か受け、その度に葛藤があった。結局、1年半程でやっとそれなりの成績を出すことができ、それをきっかけに入学を決意した。
でも結果的に、このタイミングで渡米できて本当に良かったと思っている。そして、働いた二つの会社で鍛えられたことが、ミュージシャンとして生きるのに十分役立っている気がする。営業、プロモーション、さまざまな手配、事務処理、税金の申請などの手続、全部自分でやらないといけないので。


日本で音大や専門学校に行っていたわけではなく、オーディションも入学の手続きも自分で行ったのですが、手続に関しては、学校とのやりとりが全くスムーズに行かなかった。今となっては「アメリカなら普通のこと」ですが。もうこのときからこのアメリカの文化との終わりのない戦いが始まっていたのですね。


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そして2009年の1月に無事ボストンに渡った。予定の1年間なんて、あっという間に過ぎた。アメリカの生活や学校のシステム、英語に慣れること、人間関係の問題(最大の敵)。そういったことをクリアするのに大半の力を使った。ジャズには足を踏み入れられてもいない、くらいのレベルだった。


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こんな段階で帰れない、とすぐ悟った。幸い働いて貯めたお金、奨学金なども手伝って、結果的には3年間、泣きながら(本当に泣きながら)学生生活を送り、無事卒業に至ることに。


アメリカで海外の学生が大学を卒業するとその後1年間、OPTという職業訓練のためのビザを申請することができる。バークリーを卒業したら、そのビザを利用して、数ヶ月間だけジャズの本場のニューヨークを味わって帰ろう、と思った。在学中から、プロフェッサーからニューヨークは競争が激しい、優秀な卒業生も苦労して悩んでる、と聞いていたので、そのシーンで戦える気は正直していなかった。バークリーはとんでもなく才能あるミュージシャンだらけでその人たちでさえ苦戦しているのだから。


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そんな予定が、今ニューヨークに来て4年目。ちょっと味わおうなんて、とんでもない!!
すみませんでした!!この続きはまた。

中原美野




【中原美野 "A Ray of Light" Release Tour 2015】

NYを拠点に活躍している新人ピアニスト/コンポーザー中原美野がJZ Brat初登場!1stアルバム『A Ray of Light』のリリースを記念して豪華メンバーが集結。ドラマ、映画、CMの音楽のアドバイザーを務めるなど、日本の音楽シーンへも活動の幅を広げている彼女から目が離せない。


<日時>
2015.6.5.Friday
1st:Open 17:30 Start 19:30
2nd:Open 21:00 Start 21:30
※時間が通常と異なります。

<出演>
中原美野(p)西口明宏(ts)土井孝幸(b)大槻"KALTA"英宣(ds)
Guest: 太田 剣(sax)

<場所>
JZ Brat(渋谷)
〒150-0031 東京都渋谷区桜丘町26-1 セルリアンタワー東急ホテル2階

<料金>
入替制¥4,000 2ステージ¥6,000

<予約・お問い合わせ>
JZ Brat
03-5728-0168(平日15:00~21:00)
予約はこちら

<詳細>
http://www.jzbrat.com/liveinfo/2015/06/#20150605(JZ Brat)


CD情報はこちら
※ライブ会場限定販売




【Pianist Yoshino Nakahara Album"A Ray of Light" EPK】




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Profile

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中原美野(Yoshino Nakahara)(ピアニスト/作曲家/編曲家/講師)

4歳でピアノを始め、ヤマハ音楽教室でクラシック演奏や作曲、アンサンブルを学び、幼少時代より作曲で多くの賞を獲得。大学を卒業後、趣味でアルトサックスを手にしたことをきっかけに、ジャズと出会う。
ジャズ・ライブに足繁く通う中、「ピアノでジャズ演奏を学びたい」と、ジャズ・ピアニスト今泉正明に師事する。バークリー音楽大学より奨学金を獲得後、2009年に渡米。2011年、「Professional Music Major Achievement Award」を受賞。ボストンで演奏活動を開始し、地元ラジオ局等に出演。多数の著名プレイヤーと共演する。ジャズだけでなく、クラシックのコンサートやミュージカルでも演奏。2011年卒業後、拠点をニューヨークに移し、北川潔、E.J. Strickland、Gilad Hekselmant等トップクラスのミュージシャンをバンドメンバーに迎え、ライブ活動を行う。2012年9月にはTomi Jazzの「Artist of the Month」に選ばれ、2013年1月には週刊NY生活に特集記事が掲載される。様々なジャンルのバンドでサイドマンとしても活躍。2014年4月には、所属するGregory McDowellバンドでの演奏の様子がNew York Timesに掲載される。その他、音楽学校でピアノやフルートの講師として、また教会でオルガン奏者としても活躍している。2013年、TBSドラマ「潜入探偵トカゲ」のサウンドトラックに、自身でアレンジしたソロピアノ演奏が収録される。日本テレビ音楽のミュージック・ライブラリーの楽曲、スマートフォンアプリのBGM等の演奏、またドラマ、映画、CMの音楽のアドバイザーを務めるなど、日本の音楽シーンへも活動の幅を広げる。2014年、初の帰国ライブを行い、大好評を博した。2015年、ニューヨークにて自己のバンドでレコーディングした1stアルバム「A Ray of Light」をリリースする。


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