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JAZZ in NEW YORK#2 - ニューヨークのジャズ事情

ニューヨークを拠点に活動しているピアニスト、中原美野(なかはらよしの)さん。
5月23日にファーストアルバム『A Ray of Light』をリリース。
そしてその新作を引っさげての凱旋ライブが6月5日(金)渋谷JZ Bratで決定しています。

JJazz.Netでは、"JAZZ in New YORK"シリーズとして中原美野さんのコラムを連載。
ライブまでの約1ヵ月間、毎週金曜日に更新しています。

2回目となる今週は「ニューヨークのジャズ事情」。
ジャズの本場、NYのリアルな空気感が伝わってきます!
ジャズクラブやジャズの情報誌なども教えてくれているのでNYに行かれる際は参考にされてみては?


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■ニューヨークのジャズ事情
Jazz scene in New York



ニューヨーク。今はとても大好きな街。
ボストン在住のとき、何度かニューヨークに行ったことがあった。 2010年には、カーネギーホールへハービーハンコックのThe Imagine Projectを聴きに。またBarry Harrisのワークショップを受けに。2011年には、自由の女神に会い、B.B. King Blues ClubでMr. BIGを聴くために。そしてBlue NoteへハービーハンコックとチックコリアのDuoを聴きに。目的のコンサートはいずれもビッグイベント。素晴らしい経験だった。でも、いずれも日帰りで、早朝に出て深夜に戻った。片道4時間半のバスでの往復に疲れ、ニューヨークにまた行きたい!という気持ちにはあまりならなかった。 その頃、どこがメインのジャズシーンなのか私にはわかっていなかった。


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でも、やっぱりジャズの本場であるというニューヨーク。様子を知りたかった。卒業後すぐの12月に、アパート探しのために事前に1週間ほどNYへ滞在。運の良いことに、最初に見学しに行った アパートがよい印象で、そこに住むことが決まった。クリスマスイブの夜、ツリーを観ようと、ブルックリンの滞在先から一人でRockefeller Center駅まで電車で移動した。ところがなんとツリーにたどり着けず。いったいあの有名なツリーはどこに?と疑問だけが残った。そんなふうに何もわからない状態で、2012年の1月にNYへ引越した。しばらくボストンでのライブもあり行ったり来たりの生活。やっと落ち着いた3月中旬頃から、本格的にニューヨーク生活を始めることとなった。


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数ヶ月だけ住んで日本へ帰る予定だったから、ライブへ行けるだけ行こうと思っていた。 「Hot House Jazz Guide」 (http://hothousejazz.com/)、「The New York City Jazz Record」(http://www.nycjazzrecord.com/)、「Jazz Inside Magazine」(http://jazzinsidemagazine.com/)といった、ジャズクラブ等に置いてあり無料で配布されているジャズの情報誌を手に入れ、ジャズを聴けるところがたくさんあることを知る。そこに掲載されている1ヶ月間のスケジュールをチェックして、毎晩のように音楽を聴きに出かけた。最初の頃は自分が既に知っているアーティストが中心で、Blue Note、Village Vanguard、Birdlandといったジャズクラブへも度々行った。そういう有名なアーティストの演奏を頻繁にスケジュールの中に見つけることができるというのも、NYのすごい所。


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そのうちに足を運ぶジャズクラブの幅も広がっていった。ジャズにはあまり興味のない人々も訪れる、観光客も多い、超有名ジャズクラブだけではなく、ミュージシャンが集まるジャズクラブへ。(それについては来週また詳しく。) 友達のライブがあれば必ず駆けつけた。そこで出会ったのが今のバンドメンバーの一人でもある。ジャズクラブだけでなく、レストランや公園でも、めちゃくちゃレベルの高い人たちがジャズを演奏している。 至るところで多くのミュージシャンがライブをしていて、自分の憧れのアーティストの演奏を近くで、日本よりも低価格($10~25)で聴くことができ、また新たな素晴らしいミュージシャンにも次々と出会い、実際に話したりお友達になれたりもする。ジャズファン、ジャズを学ぶ人にとっては他では得難い経験のできる街だと思う。


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私がニューヨークへ来てからの数年の間にもクローズしてしまうクラブがいくつかあったが、それでもジャズライブスポット(venue)は多いと思う。しかしそのヴェニューの数以上に、ミュージシャンの数が多い。非常に多い。そのレベルもものすごく高い。そして皆、どこかで演奏したいと思っている。

例えば、いわゆるモンクコンペティションと呼ばれる、Thelonious Monk Institute of Jazzが主催するインターナショナルなコンペティション。2013年はサックスの年だったが、そこで入賞した3人、Melissa Aldana、Tivon Pennicott、Godwin Louisはいずれも、ニューヨークで大活躍している人たち。


NYのジャズシーンで活躍しているミュージシャンには学生も多い。名高いミュージックスクール、Manhattan School of Music、New School、Julliard、NYU等の学生が、在学中からどんどんsmallsやDizzy's Club等のジャズクラブで演奏をし、有名なアーティストのバンドに雇われる。


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Smalls、Fat Catなどでは毎日深夜に、Zinc Barでは毎週火曜日にセッションが行われているが、そこへ行くと特に、若く勢いのあるミュージシャンがたくさん集まっていて、そのレベルの高さがわかる。上記の人々はもちろん、世界中から実力を持った人たちが集まっている。皆上手く、そして皆仕事が欲しい。英語では、「Intimidating」というけど、やはりそこには入りづらい雰囲気がものすごくある。すでに常連のミュージシャンでコミュニティは出来上がっているし、ピアノであれば、演奏中にこの人だめだ、と思われたら席をどかされることもある。打ち合わせもなく誰かが曲を演奏し始めれば他はそれについていかざるを得ないし、ついていけるのが当然。Cleopatra's Needleなどでは、日本人ミュージシャンがホストをされていることもあり、優しく招き入れてくれたりするので、すぐ入ることができたが、上記のジャズクラブでは、競い合うように皆がステージへと上がり、誰も譲らない。Zinc Barは記名制だが、ホストバンドと仲の良いミュージシャンが現れると優先的に通される。サックス等ホーンのソロが何人も続くこともあり、1曲は必然的に長くなり、1曲に一人しか弾けないピアニストは結局一晩で数人回るぐらい。そこに物怖じせずに入っていける人がやはり強い。


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セッションには、すでに名のあるミュージシャン、引っ張りだこのミュージシャンもふらっと立ち寄ったりする。Roy Hargrove(tp)、Joel Frahm(sax)、Ben Williams(bass)、Linda Oh(bass)、Eric Lewis (piano)、Beka Gochiashvili(piano)等々。彼らが直々に指導をしたり、励ましたり、刺激を与えたりしている。セッションの最初の1時間は、ホストバンドの演奏であることが多いが、それも素晴らしい。その演奏を聴き、セッションの様子をしばらく観たり聴いたりするのも勉強になった。でもそれだけでは足りないとわかっていた。けれども、その中に入っていくのに1年以上かかった。


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NYへ来てすぐ演奏の機会を得たが、それは元々友達がやっていた仕事。日本食レストランでの週1回の演奏。フード・ドリンクは提供してもらえたものの、ギャラはなし。チップジャーは置けたが、お客さんもあまりいなかったし、日本食を食べたくて来ている日本人がほとんどで、チップはほとんど入らなかった。NYにはそういうギグも多い。そしてその仕事をしていた間、ミュージックスクールでピアノとフルートを教え始めたが、他に自分のパフォーマンスの機会を獲得することができないでいた。数ヶ月で帰るなどという考えはいつの間にかなくなっていた。せっかくニューヨークに来たんだから、一度も演奏しないで帰るわけにはいかなかった。そのレストランも6月にはクローズし、いよいよ演奏の仕事がなくなる危機に。その後改めて気づくのだけど、友達から譲り受けた仕事、友達から紹介してもらった仕事、というのは、自分が得る仕事の中で、意外と大きな割合を占める。やはり人脈は重要だ。


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そんなとき、ちょうどよいタイミングで、以前にメールで連絡をとっていたTomi Jazzから、ライブのブッキングのお返事が来て、そこでのライブが私のバンドのニューヨークでの初の演奏となった。それが2012年7月のこと。

中原美野




【中原美野 "A Ray of Light" Release Tour 2015】

NYを拠点に活躍している新人ピアニスト/コンポーザー中原美野がJZ Brat初登場!1stアルバム『A Ray of Light』のリリースを記念して豪華メンバーが集結。ドラマ、映画、CMの音楽のアドバイザーを務めるなど、日本の音楽シーンへも活動の幅を広げている彼女から目が離せない。


<日時>
2015.6.5.Friday
1st:Open 17:30 Start 19:30
2nd:Open 21:00 Start 21:30
※時間が通常と異なります。

<出演>
中原美野(p)西口明宏(ts)土井孝幸(b)大槻"KALTA"英宣(ds)
Guest: 太田 剣(sax)

<場所>
JZ Brat(渋谷)
〒150-0031 東京都渋谷区桜丘町26-1 セルリアンタワー東急ホテル2階

<料金>
入替制¥4,000 2ステージ¥6,000

<予約・お問い合わせ>
JZ Brat
03-5728-0168(平日15:00~21:00)
予約はこちら

<詳細>
http://www.jzbrat.com/liveinfo/2015/06/#20150605(JZ Brat)


CD情報はこちら
※ライブ会場限定販売




【Pianist Yoshino Nakahara Album"A Ray of Light" EPK】




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Profile

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中原美野(Yoshino Nakahara)(ピアニスト/作曲家/編曲家/講師)

4歳でピアノを始め、ヤマハ音楽教室でクラシック演奏や作曲、アンサンブルを学び、幼少時代より作曲で多くの賞を獲得。大学を卒業後、趣味でアルトサックスを手にしたことをきっかけに、ジャズと出会う。
ジャズ・ライブに足繁く通う中、「ピアノでジャズ演奏を学びたい」と、ジャズ・ピアニスト今泉正明に師事する。バークリー音楽大学より奨学金を獲得後、2009年に渡米。2011年、「Professional Music Major Achievement Award」を受賞。ボストンで演奏活動を開始し、地元ラジオ局等に出演。多数の著名プレイヤーと共演する。ジャズだけでなく、クラシックのコンサートやミュージカルでも演奏。2011年卒業後、拠点をニューヨークに移し、北川潔、E.J. Strickland、Gilad Hekselmant等トップクラスのミュージシャンをバンドメンバーに迎え、ライブ活動を行う。2012年9月にはTomi Jazzの「Artist of the Month」に選ばれ、2013年1月には週刊NY生活に特集記事が掲載される。様々なジャンルのバンドでサイドマンとしても活躍。2014年4月には、所属するGregory McDowellバンドでの演奏の様子がNew York Timesに掲載される。その他、音楽学校でピアノやフルートの講師として、また教会でオルガン奏者としても活躍している。2013年、TBSドラマ「潜入探偵トカゲ」のサウンドトラックに、自身でアレンジしたソロピアノ演奏が収録される。日本テレビ音楽のミュージック・ライブラリーの楽曲、スマートフォンアプリのBGM等の演奏、またドラマ、映画、CMの音楽のアドバイザーを務めるなど、日本の音楽シーンへも活動の幅を広げる。2014年、初の帰国ライブを行い、大好評を博した。2015年、ニューヨークにて自己のバンドでレコーディングした1stアルバム「A Ray of Light」をリリースする。


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