その年を振り返りつつベストディスクを発表する、年末恒例企画!
「夜ジャズミーティング」
松浦俊夫さん、沖野修也さん、そして須永辰緒さん
ジャズDJの3人がそれぞれ選ぶ、2025年のベスト3作品をご紹介します。
詳しくは番組でお楽しみください!
■夜ジャズ.Net#207 - 夜ジャズミーティング2025
https://www.jjazz.net/programs/yorujazz/
配信期間:2025年12月17日(17:00)~2026年1月21日(17:00)

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selected by 沖野修也
『Mystic Journey / Josef Leimberg』
Kamasi WashigtonやHarvey Masonらのアルバムへの参加で知られるトランペット奏者の新作。
アフロ・フューチャリズムを音と映像で表現した現代の絵巻物語とでも呼べる壮大な作品。カマシ人気が定着した日本で、彼に関わりのあるMiguel Atwood-FergusonやJosef Leimbergが彼程支持されていないのが、僕には全く判らない。
『The Eternal Now / Chip Wickham』
マンチェスターのGondwana Recordsのレーベル・カラーに触発されながらも、ブレイクビーツやジャズ・ロックなどUKならではの音楽的継承を内在する力作。一聴すると鑑賞性の高いアルバムだが、来日公演を観てそのエネルギーの質の高さに驚かされた。GondwanaにとってMatthew HalsallとChipの二枚看板は心強い事だろう。日本での対バンの実現を望む。
『It's Always About Love / Ancient Infinity Orchestra』
同じくマンチェスターのGondwana Recordsからもう一枚。デビューアルバムRiver Of Lightも素晴らしかったAncient Infinity Orchestraの2枚目。基本路線は前作を踏襲しながらも作曲と演奏の質を上げ、期待を軽く超えて来た。激情&ダンス系ではない、抒情的で鎮静系のファラオ・サンダースの後継的アンビエント・ジャズの中では突出している。
| Years Best -沖野修也- |
Title : 『Mystic Journey』 Artist : Josef Leimberg LABEL : Ironworx creative recordings RELEASE : 2025.8.16
Title : 『The Eternal Now』 Artist : Chip Wickham LABEL : Gondwana Records RELEASE : 2025.9.5
Title : 『It's Always About Love』 Artist : Ancient Infinity Orchestra LABEL : Gondwana Records RELEASE : 2025.9.26 |
【沖野修也 (KYOTO JAZZ MASSIVE / KYOTO JAZZ SEXET)】
音楽プロデューサー/DJ/選曲家/作曲家/執筆家/ラジオDJ/The Roomオーナー。2000年にKYOTO JAZZ MASSIVE名義でリリースした「ECLIPSE」は、英国国営放送BBCラジオZUBBチャートで3週連続No.1の座を獲得。これまでDJ/アーティストとして世界40ヶ国140都市に招聘されただけでなく、CNNやBILLBOARD等でも取り上げられた本当の意味で世界標準をクリアできる数少ない日本人音楽家の一人。2006年、初のソロ・アルバム『United Legends』を発表。2009年にはインテンショナリーズが設計したユナイテッド・シネマ豊洲の音楽監修でGOOD DESIGN賞を受賞した。2015年、ジャズ・プロジェクトKYOTO JAZZ SEXTETを始動。名門をブルー・ノートよりアルバム『MISSION』を、2017年6月、KYOTO JAZZ SEXTETのセカンド・アルバム『UNITY』をリリース。同年フジ・ロック・フェスティバル~Field Of Hevenステージにも出演。2018年7月にはDJとして名門モントルー・ジャズ・フェスティバルにも出演を果たした。2021年にはKYOTO JAZZ MASSIVEの2ndアルバム『Message From A New Dawn』を19年振りに発表。2022年にはジャズ・レジェンド森山威男氏をフィーチャーしたKYOTO JAZZ SEXTETの3rdアルバム『SUCESSION』を発売し、5年ぶりにFUJI ROCK FESTIVALにも出演。2022年からは、KYOTO JAZZ MASSIVE with Echoes Of A New Dawn Orchestra名義でバンドとしてヨーロッパ・ツアーを敢行している。2024年にKYOTO JAZZ MASSIVEがデビュー30周年を迎え、6月には30周年記念EP、『KJM EOANDO』をリリース。iTunes Dance album chart No.1、収録曲'Impulisive Processionが、Traxsource Broken Beat/Nu-Jazz chartで、No.1を獲得した。12月には30周年記念コンピレーション、『KJM COVERS』を発表。2025年7月には、KYOTO JAZZ SEXETのニューシングル、「DOSOJIN NO UTA」をリリース。著書に、『DJ 選曲術』や『クラブ・ジャズ入門』、自伝『職業、DJ、25年』等がある。現在、Interfm『Tokyo Crossover Radio』にて番組ナビゲーターを担当中(毎週金曜日22時)。USEN I-12チャンネルにて"沖野修也 presents Music in The Room"を監修している。
http://www.kyotojazzmassive.com
https://ameblo.jp/shuya-okino
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selected by 松浦俊夫
朝から夜へ、夜からまた朝へ。
2025年も、耳は一日じゅう音を追っていた。
夏の江ノ島と葉山では開かれた場で、福岡ではひそやかに音楽会を開いた。
音に一切の妥協を許さず、細部まで神経を行き渡らせたそれらの場はすべて満席となり、
自分の選曲にも久しぶりに深くうなずくことができた。それは偶然ではない。積み重ねの結果だった。
肩を並べてくれた仲間たち、そして言葉を交わさずとも同じ方向を向いてくれる「共感者」たちに、
あらためて感謝したい。
音楽は説明を拒む。だが確かに、そこには手応えがあった。
言葉にできない「新しいなにか」を携えて、2026年へ。
音は、まだ止まらない。
『Ghosted III / Oren Ambarchi, Johan Berthling and Andreas Werliin』
シドニー出身のギタリスト/パーカッショニストにしてマルチ奏者、オーレン・アンバーチ。
そこにストックホルム出身のベーシスト、ヨアン・ベルトリング、ドラマーのアンドレアス・ヴェルリンが加わったコラボレーション・プロジェクト、GHOSTED。その三作目である。
ミニマルなグルーヴが静かに、しかし確かに脈を打つ。
ベースは回転するようにリズムを刻み、ギターは金属の弦が軽やかに跳ねる。
北アフリカの風を思わせる乾いた気配をまといながら、陽光を反射するような透明な響きで空気を満たしていく。
パーカッションは朝露のようなきらめきを添え、音と風景は抗うことなく、ゆるやかに溶け合っていく。
ストックホルムのセッションで生まれたこの音は、張りつめた静けさをたたえながらも、どこか優しい。
耳を澄ませば、風景の輪郭がわずかに揺らぐ。
『Open Up Your Senses/ Tyreek McDole』
2018年、リンカーン・センター・ジャズ主催のエッセンシャル・エリントン・コンペティションにおいてウィントン・マルサリスから最優秀ヴォーカリストに選ばれ、一躍注目を集めた。
デビュー・アルバムのタイトルトラックで歌われるホレス・シルヴァーの Won't You Open Up Your Senses、ファラオ・サンダースとレオン・トーマスの The Creator Has A Master Plan、The Sun Song (Precious Energy)。
その声には年齢を忘れさせるほどの奥行きと、すでに確かな風格が宿っている。
今年に入ってからもケニー・バロンやセオ・クローカーの作品に客演し、存在感をいっそう強めた。
2025年秋の来日公演も、まだ記憶に新しい。
この声は、まだ深くなる。
『We Insist 2025! / Terri Lyne Carrington & Christie Dashiell』
ドラマーのマックス・ローチが、オスカー・ブラウン、アビー・リンカーンらとともに1959年に着手し、1963年の奴隷解放宣言100周年記念公演に向けて発展させた組曲を収録した、1961年発表のアルバム『We Insist! Max Roach's Freedom Now Suite』。本作は、ブラック・アメリカンによる公民権運動を象徴する芸術的声明として知られる歴史的名盤である。
その作品をドラマー/プロデューサーのテリ・リン・キャリントンと、ヴォーカリストのクリスティ・ダシールが、マックス・ローチ生誕100年にあたって「We Insist 2025!」として蘇らせた。
バークリー音楽大学ジャズ&ジェンダー・ジャスティス研究所の創設者でもあるキャリントンの確かな視座と、ダシールのソウルフルな声が重なり合うことで、この再演は単なる回顧にとどまらない意味を帯びる。
音は過去をなぞるのではなく、いまを撃つ。重く、強く、オリジナルに一歩も引けを取らない。
| Years Best -松浦俊夫- |
Title : 『Ghosted III』 Artist : Oren Ambarchi, Johan Berthling and Andreas Werliin LABEL : DRAG CITY RELEASE : 2025.7.4
Title :『Open Up Your Senses』 Artist : Tyreek McDole LABEL : Artwork Records RELEASE : 2025.6.6
Title : 『We Insist 2025!』 Artist : Terri Lyne Carrington & Christie Dashiell LABEL : CANDID RELEASE : 2025.6.16 |
【松浦俊夫】
1990年、United Future Organization (U.F.O.)を結成。
5作のフルアルバムを世界32ヶ国で発表し高い評価を得る。
2002年のソロ転向後も国内外のクラブやフェスティバルでDJとして活躍。
またイベントのプロデュースやホテル、インターナショナル・ブランド、
星付き飲食店など、高感度なライフスタイル・スポットの音楽監修を手掛ける。
2013年、現在進行形のジャズを発信するプロジェクトHEXを始動させ、Blue Note
Recordsからアルバム『HEX』をワールドワイド・リリース。
2018年、イギリスの若手ミュージシャンらをフィーチャーした新プロジェクト、
TOSHIO MATSUURA GROUPのアルバムをワールドワイド・リリース。
2026年、同作品がイギリスのBrownswood Recordingsの20周年に際し、再リリース予定。
「TOKYO MOON」(interfm 金曜 23:00) 好評オンエア中。
http://www.toshiomatsuura.com
https://www.instagram.com/toshiomatsuura/
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selected by 須永辰緒
『Sparrow's Arrows Fly So High / すずめのティアーズ』
'25年の三枚も原則としてアナログからのチョイスです。こちらは'24年のリリースですが、
アナログのリリースは4月のRSDなので敢えて'25年のYear's Bestにいれさせてもらいました。フィジカルないしデジタル含めてのアルバムでいえば'24年のダントツ一位はこのアルバムだったので満を辞しての紹介ということになります。江州音頭をベースにブルガリア民謡の歌唱も取り入れたポリフォニックスタイルが素晴らしく新鮮で、邦楽洋楽問わず2年にまたがり聴き続けた。ここまで心を揺さぶられたアルバムは10年に一枚のレベルでした。
『Endlessness 終わりなき世界 / ナラ・シネフロ』
ポストクラシカル、ポスト・ジャズ、ポスト・エレクトロニカ、アンビエント等々、形容するジャンルは多岐に渡ってしまうけれどそのECM的世界観は全てのジャンルを横断し、更に進化を続けていくことでしょう。
パット・メセニーとスティーヴ・ライヒが作った傑作をも彷彿。かつてのロバート・グラスパーの様に、今後数年はナラ・シネフロを軸に周って行くのではないでしょうか?
こちらもリリースは'24年でしたがアナログは'25年でしたので今年の一枚として上げさせてもらいます。
『福島 / Shinsuke Fuhjieda Group』
'25年は何かと彼らと縁がありLIVEも何度も聴かせてもらいました。そのLIVEの熱狂と温度も凄まじいけど、そもそもがアルバムの完成度が世界中のリスナーの心を掴んでいたのだと思います。
何を持ってスピリチュアルなのかは分からないけど彼らのジャズにその冠を加えるなら、それは日本人のDNAと原体験を余すところなく楽曲に投入させたことだと思います。
ブラックネス然り欧州のフォークロア然り、我々の親しみやすい「スピリチュアル」はこのアルバムこそ相応しい。
| Years Best -須永辰緒- |
Title :『Sparrow's Arrows Fly So High』 Artist : すずめのティアーズ LABEL : Doyasa! Records RELEASE : 2025.4.12
Title : 『Endlessness』 Artist : Nala Sinephro (ナラ・シネフロ) LABEL : WARP RELEASE : 2024.9.6
Title :『福島』 Artist : Shinsuke Fuhjieda Group LABEL : プロダクションデシネ RELEASE : 2025.12.10 |
【須永辰緒 プロフィール】
Sunaga t experience =須永辰緒によるソロ・ユニット含むDJ/プロデューサー。 DJプレイでは国内47都道府県を全て踏破。また各国大使館と連動して北欧諸国=日本の音楽交流に尽力、欧州やアジア、アメリカなど世界各国での海外公演は多数。
MIX CDシリーズ『World Standard』は12作を数え、ライフ・ワークとも言うべきジャズ・コンピレーションアルバム 『須永辰緒の夜ジャズ』は20作以上を継続中。
国内や海外レーベルのコンパイルCDも多数制作。国内外の多数のリミックスワークに加え自身のソロ・ユニット"Sunaga t experience"としてアルバムは7作を発表。最新作は「STE with J.Lamotta Suzume/Re Blue」(Flower)。
主宰する音楽レーベル「DISC MINOR」からはヴァイナルのみの内外ライセンス作品のリリースも活発化させる。多種コンピレーションの 監修やプロデュース・ワークス、海外リミックス作品含め関連する作品は延べ250作を超えた。加えて企業ブランディングや商品開発、音楽や料理などの著作、連載も多数携わる。
また出身地である栃木県足利市の「あしかが輝き大使」として地域でも活動中。
http://sunaga-t.com
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