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曽根麻央 Monthly Disc Review2026.3_Cory Henry : Live at the Piano

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Title : 『Live at the Piano』
Artist : Cory Henry


みなさんこんにちは、ジャズピアニスト、トランペッターの曽根麻央です。
今日は2023年にリリースされた、オルガンの名手Cory Henry(コーリー・ヘンリー)の『Live at the Piano』をご紹介します。
第66回グラミー賞(2024年)の「Best Alternative Jazz Album」部門にノミネートされたことでも話題になりましたが、今日はその魅力をお伝えできればと思います。


オルガンの名手である彼が、あえてオルガンを封印。ピアノとボーカルマイク、そして右足にバスドラム(キックドラム)を配置した独自のセッティングで挑んだソロ・ライブの様子が、生々しくも大迫力で記録されています。
収録はロサンゼルスのApogee Studiosで、観客を入れた公開収録スタイルで行われました。この時のライブ映像は、ApogeeのオフィシャルYouTubeチャンネルでも見ることができます。
Apogee(アポジー)とは、我々音楽家の間で名高いオーディオインターフェースのメーカーです。オーディオインターフェースというのは、音というアナログ信号をデジタル信号に変える機器のことで、パソコンでのレコーディングが一般的な現在のミュージシャンには必需品です。この機材がないと録音ができないと言っても過言ではありません。 僕自身、学生時代からずっとApogeeの製品を愛用しているファンなのですが、このアルバムが最新機材のPRも兼ねて制作されたと聞き、そのバックグラウンドを知るだけでワクワクしました。
音響機器メーカーが主導した録音ですから、とにかく音がクリアです。ピアノの響きも鮮明ですし、ボーカルマイクから聞こえてくる息遣いまでもがグルーヴィー。そういったささやかな「声」にまで耳を澄ませてしまいます。そして、右足のバスドラムがしっかり低いところで鳴り響き、全体のサウンドのコア(核)となっています。


このアルバムでは、ソリストとしてのCory Henryを純粋に体験することができます。
普段は完成されたバンドサウンドの作品が多い彼ですが、今回は素のままのCory Henryといえます。InstagramなどのSNSでふと見かける、あの圧倒的に格好いい演奏の断片が、そのまま最高峰の音質でパッケージされたようなイメージです。
音楽性も、彼のルーツである教会音楽からジャズ、さらにはキース・ジャレットのようなモダンな響きまでを感じさせるクロスオーバーな世界観が素晴らしく、この密度をソロで聴かせていることに驚かされます。ピアニストとしての卓越した技術、拍を突っ込んだり遅らせたりといった自由自在な駆け引き、遊び心のあるフレーズ、そしてソウルフルな歌声......彼の魅力が凝縮されています。


特に注目したいのは、彼がオルガニストとして培ってきた「足が自由に動く」という利点を活かし、バスドラムをピアノ演奏に組み込んでいる点です。
ピアノを弾きながら、ここまで正確にペダルを踏み込むのは至難の業です。単に4分音符を刻むだけでなく、「Our Affairs」では裏拍で踏み込んだり、「Switch」では複雑な左手のリズムパターンを補完するようにベースドラムがグルーヴの基盤を作っています。手と足の独立(インデペンデンス)をここまで高精度に実現できるのは、まさにオルガニストとしての身体特性をピアノに落とし込んだ、素晴らしい工夫だと言えるでしょう。

収録曲は古い教会音楽や、自身の過去のアルバムからのセルフカバーが中心です。
1曲目の「Testimony」では、まるで日曜日の礼拝での告白(Testimony)のように、「今日目が覚めたら......」という自然な語りから始まります。音楽が常に生活のすぐそばにある、そんな彼の歩みを感じ取れるアルバムです。
ぜひ聴いてみてください。


文:曽根麻央 Mao Soné



Recommend Disc

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Title :『Live at the Piano』
Artist : Cory Henry
LABEL : Philips
発売年 : 2023年



https://ingrv.es/live-at-the-piano-du1-s


【SONG LIST】

1. Testimony
2. Down Through the Years
3. Dreaming Of
4. Icarus
5. Happy Days
6. Switch
7. Our Affairs
8. No Guns
9. Dedicated




<<曽根麻央 公演情報>>
2026年3月21日(土)
会場:The Moment Jazz Club
和田明 (Vocal) & 曽根麻央 (Piano & Trumpet)
アルバム『Sings & Plays』の世界を、気鋭のヴォーカリスト和田明と共に。


2026年4月2日(木)
曽根麻央:Cinema Jazz -Love Story-
会場:東京・Hakuju Hall(渋谷)
ピアノ、ヴァイオリン、チェロによるピアノ・トリオ編成で贈る、映画音楽とジャズの夕べ。
出演:曽根麻央(p)、ビルマン聡平(vl)、西谷牧人(vc) 
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=2603267


2026年4月17日(金)
KOBUSHI TRIO
会場:東京・浜離宮朝日ホール
文化の枠を超えたクロスカルチャー・プロジェクト。
出演:三浦一馬(bn)、浅野祥(三味線,歌)、曽根麻央(p,tp)、KAN(per) 
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=2603078


2026年5月8日(金)
Marty Friedman Plays Piazzolla And More Concert Hall 2026
会場:東京・浜離宮朝日ホール
世界的ギタリスト、マーティ・フリードマンを迎えた異色のコラボレーション。
出演:マーティ・フリードマン(g)、三浦一馬(bn)、曽根麻央(p)  
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=2533736


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「Monthly Disc Review」アーカイブ曽根麻央
2020.04『Motherland / Danilo Perez』2020.05『Color Of Soil /タイガー大越』2020.06『Passages / Tom Harrell 』2020.07『Inventions And Dimensions / Herbie Hancock』2020.08『Birth Of The Cool / Miles Davis』2020.09『Chet Baker Sings / Chet Baker』2020.10『SFJAZZ Collective2 / SFJAZZ Collective』2020.11『Money Jungle: Provocative In Blue / Terri Lyne Carrington』2020.12『Three Suites / Duke Ellington』2021.01『Into The Blue / Nicholas Payton』2021.02『Ben And "Sweets" / Ben Webster & "Sweets" Edison』2021.03『Relaxin' With The MilesDavis Quintet / The Miles Davis Quintet 』2021.04『Something More / Buster Williams』2021.05『Booker Little / Booker Little』2021.06『Charms Of The Night Sky / Dave Douglas』2021.07『Play The Blues / Ray Bryant Trio』2021.08『The Sidewinder / Lee Morgan』2021.09『Esta Plena / Miguel Zenón』2021.10『Hub-Tones / Freddie Hubbard』2021.11『Concert By The Sea / Erroll Garner』2021.12『D・N・A Live In Tokyo / 日野皓正』2022.1『The Tony Bennett Bill Evans Album / Tony Bennett / Bill Evans』2022.2『Quiet Kenny / Kenny Dorham』2022.3『Take Five / Dave Brubeck』・2022.4『Old And New Dreams / Old And New Dreams』2022.5『Ella Fitzgerald And Louis Armstrong / Ella And Louis』2022.6『Live from Miami / Nu Deco Ensemble & Aaron Parks』2022.7『Oscar Peterson Trio + One / Oscar Peterson Trio Clark Terry』2022.8『Ugetsu/ Art Blakey & The Jazz Messengers』2022.9『Sun Goddess / Ramsey Lewis』2022.10『Emergence / Roy Hargrove Big Band』2022.11『Speak No Evil / Wayne Shorter』2022.12『The Revival / Cory Henry』2023.1『Complete Communion / Don Cherry』2023.2『Your Mother Should Know: Brad Mehldau Plays The Beatles / Brad Mehldau』2023.3『Without a Net / Wayne Shorter』2023.4『LADY IN LOVE / 中本マリ』2023.5『Songs Of New York / Mel Torme』2023.6『Covers / James Blake』2023.7『Siembra / Willie Colón & Rubén Blades』2023.8『Undercover Live at the Village Vanguard / Kurt Rosenwinkel』2023.09『Toshiko Mariano Quartet / Toshiko Mariano Quartet』2023.10『MAINS / J3PO』2023.11『Knower Forever / Knower』2023.12『Ella Wishes You A Swinging Christmas / Ella Fitzgerald』2024.01『Silence / Charlie Haden with Chet Baker, Enrico Pieranunzi, Billy Higgins』2024.02『Rhapsody in Blue Reimagined / Lara Downes』2024.03『Djesse Vol. 4 / Jacob Collier』2024.04『Voyager / Moonchild』2024.05『Evidence with Don Cherry / Steve Lacy』2024.06『Quietude / Eliane Elias』2024.07『Alone Together / Lee Konitz, Brad Mehldau, Charlie Haden』2024.08『The Rough Dancer And The Cyclical Night (Tango Apasionado) / Astor Piazzolla』2024.09『Potro De Rabia Y Miel / Camarón De La Isla』2024.10『Calle 54 / Various』2024.11『Trumpets Of Michel-ange / Ibrahim Maalouf』2024.12『Sings for Only the Lonely / Frank Sinatra』2025.01『Hero Worship / Hal Crook』2025.02『Undercurrent / Kenny Drew』2025.03『Live In Toronto 1952 / Lennie Tristano Quintet』2025.04『Antidote / Chick Corea & The Spanish Heart Band』2025.05『Hot Five & Hot Seven / Louis Armstrong』2025.06『Panamonk / Danilo Pérez』2025.07『Nat King Cole Sings/George Shearing Plays / Nat King Cole、George Shearing』2025.08『Clifford Brown and Max Roach / Clifford Brown and Max Roach』2025.09『Montreux '77 / Ray Bryant』2025.10『Crystal Silence / Gary Burton & Chick Corea』2025.11『North Sea Jazz Legendary Concerts / Wayne Shorter』2025.12『Merry Christmas / Bing Crosby』2026.01『銀界/山本邦山』2026.02『Flugel / Andris Mattson』

Reviewer information

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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

曽根麻央Official Site

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