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曽根麻央 Monthly Disc Review2023.9_Toshiko Mariano Quartet : Toshiko Mariano Quartet

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こんにちは、トランペット&ピアノの曽根麻央です。
今日は秋吉敏子さんの61年のアルバム『Toshiko Mariano Quartet』をご紹介しようと思います。

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Title : 『Toshiko Mariano Quartet』
Artist : Toshiko Mariano Quartet


【グルーヴィーでエネルギッシュ、それでいてユニークな作品】


このアルバムは前半が前半がCharlie Marianoの作品、後半が秋吉敏子さん(当時はToshiko Mariano)の作品で構成されていて、「Deep River」というスピリットの讃美歌のカバーを入れた5曲で構成されています。

全体を通してグルーヴィーでエネルギッシュな作品になっていて、秋吉さんのピアノのタイムの正確さ、ユニークなアイディア、音楽への情熱を感じることができます。ピアニストとしての秋吉敏子さんを存分に堪能できる作品でありながら、代表曲「Long Yellow Road」のコンボバージョンも聴くことができる嬉しい作品です。
Charlie Marianoの音色も素晴らしく、彼の音色も生々しく鮮明に力強く収録されています。


01. When You Meet Her
Charlie Marianoの作品で3拍子と4拍子忙しく入れ替わるユニークな早いスウィングの曲。秋吉敏子さんはビバップにフレーズの基礎をおきながらも、ブルージーな歌い回しを展開します。


02. Little T.
Charlie Marianoのミディアムテンポの曲。イントロはサックスとベースの2声のカウンターラインに挟まれて、ピアノが印象派的なサウンドを展開して始まる曲。
ドラムのスネアとピアノの攻撃的なパンチが強力に記憶に残ります。一度テーマに入るとリズムセクションが強力にスウィングします。秋吉敏子さんのピアノの伴奏(コンピング)にも注目したいです。ビッグバンドのサウンドのようにパワフルに、リズミカルに演奏をサポートしているのがわかるでしょう。


03. Toshiko's Elegy
アルバムも後半に突入して、ここからは秋吉敏子さんの作品。こちらもリズミカルで軽快なスウィング曲。
ビバップにその根源はあることは感じ取れる作品ですがより複雑な構成になっていています。

A-10小節、B-(Latin) 4小節+(swing)2小節
A-10小節、B-(Latin) 4小節
C-10小節
A-10小節、B-(Latin) 4小節+(swing)2小節

というかなり奇妙な構成の曲になっていて、秋吉作品の演奏の難しさを感じ取れます。聴いていると普通に4小節区切りの自然な感じに聞こえてしまうのが不思議です。


04. Deep River
アフリカ系アメリカ人の礼拝音楽、スピリチュアルの有名曲をリハモニゼーション(メロディーはそのまま和音のみを変えるアレンジ方法)してブルージーなジャズヴァージョンに仕上げています。
Charlie Marianoの歌心あるサックスでのメロディーが印象的です。


05. Long Yellow Road
秋吉さんの代表曲。当時のアメリカ社会で日本人女性ミュージシャンとして生きる長い道のりが表現されている曲です。
ビッグバンドで耳にしたことがあるジャズファンが多いはずですがここではコンボバージョンで、ピアノとサックスをフィーチャーしています。我々がよく知るビッグバンドヴァージョンよりかなりゆったりしたテンポで演奏されています。




それではまた次回。


文:曽根麻央 Mao Soné




Recommend Disc

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Title :『Toshiko Mariano Quartet』
Artist : Toshiko Mariano Quartet
LABEL : Candid
発売年 : 1961年



アマゾン詳細ページへ


【SONG LIST】

01.When You Meet Her
02.Little T
03.Toshiko's Elegy
04.Deep River
05.Long Yellow Road



9/6(水)発売!曽根麻央『プレイズ・スタンダード』

私、曽根麻央の新しいアルバムが発売されました!
今回は16曲のジャズスタンダードとピアノに焦点をあて、初のソロアルバムとなっています! 
是非手に取ってみてください!

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トランペット/ピアノの"ジャズ二刀流"として話題の曽根麻央がソロピアノで紡ぐスタンダードソング集が全国発売決定!
往年のジャズの名曲をフレッシュな感性で解釈。
抒情性と気品に彩られた曽根のジャズ・ミュージシャン、ピアニストとしてのアティテュードが表現されている作品に仕上がった。


曽根麻央『プレイズ・スタンダード』


1.Reflections in D
2.Serenade
3.In Your Own Sweet Way
4.The Star-Crossed Lovers
5.Wave
6.Stella by Starlight
7.All The Things You Are
8.Luminous (Piano Solo Ver.)
9.I Loves You, Porgy
10.Lady Luck11.Danny Boy
12.Home (Piano Solo Ver.)
13.Some Other Time
14.Ask Me Now
15.The Days of Wine And Roses
16.What A Wonderful World

Mao Soné (piano, trumpet)


曽根麻央のその他情報はウェブサイトへ

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「Monthly Disc Review」アーカイブ曽根麻央
2020.04『Motherland / Danilo Perez』2020.05『Color Of Soil /タイガー大越』2020.06『Passages / Tom Harrell 』2020.07『Inventions And Dimensions / Herbie Hancock』2020.08『Birth Of The Cool / Miles Davis』2020.09『Chet Baker Sings / Chet Baker』2020.10『SFJAZZ Collective2 / SFJAZZ Collective』2020.11『Money Jungle: Provocative In Blue / Terri Lyne Carrington』2020.12『Three Suites / Duke Ellington』2021.01『Into The Blue / Nicholas Payton』2021.02『Ben And "Sweets" / Ben Webster & "Sweets" Edison』2021.03『Relaxin' With The MilesDavis Quintet / The Miles Davis Quintet 』2021.04『Something More / Buster Williams』2021.05『Booker Little / Booker Little』2021.06『Charms Of The Night Sky / Dave Douglas』2021.07『Play The Blues / Ray Bryant Trio』2021.08『The Sidewinder / Lee Morgan』2021.09『Esta Plena / Miguel Zenón』2021.10『Hub-Tones / Freddie Hubbard』2021.11『Concert By The Sea / Erroll Garner』2021.12『D・N・A Live In Tokyo / 日野皓正』2022.1『The Tony Bennett Bill Evans Album / Tony Bennett / Bill Evans』2022.2『Quiet Kenny / Kenny Dorham』2022.3『Take Five / Dave Brubeck』・2022.4『Old And New Dreams / Old And New Dreams』2022.5『Ella Fitzgerald And Louis Armstrong / Ella And Louis』2022.6『Live from Miami / Nu Deco Ensemble & Aaron Parks』2022.7『Oscar Peterson Trio + One / Oscar Peterson Trio Clark Terry』2022.8『Ugetsu/ Art Blakey & The Jazz Messengers』2022.9『Sun Goddess / Ramsey Lewis』2022.10『Emergence / Roy Hargrove Big Band』2022.11『Speak No Evil / Wayne Shorter』2022.12『The Revival / Cory Henry』2023.1『Complete Communion / Don Cherry』2023.2『Your Mother Should Know: Brad Mehldau Plays The Beatles / Brad Mehldau』2023.3『Without a Net / Wayne Shorter』2023.4『LADY IN LOVE / 中本マリ』2023.5『Songs Of New York / Mel Torme』2023.6『Covers / James Blake』2023.7『Siembra / Willie Colón & Rubén Blades』2023.8『Undercover Live at the Village Vanguard / Kurt Rosenwinkel』



Reviewer information

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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

曽根麻央Official Site

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