
Title : 『Sonny Side Up』
Artist : Dizzy Gillespie, Sonny Rollins, Sonny Stitt
みなさんこんにちは、曽根麻央です。
今日は1957年にVerveからノーマン・グランツのプロデュースで録音された『Sonny Side Up』というアルバムを紹介します。
このアルバムは、トランペット奏者でありビバップの創始者の一人でもあるディジー・ガレスピーがリーダーなのですが、タイトルの通り2人の"ソニー"たちがガレスピーの両隣に立ち、テナーサックスで熱いソロを繰り広げる作品になります。
この2人の"ソニー"たちは、40年代後半に圧倒的なリズムとテクニックで即興演奏を展開するスタイル(ビバップ)を築いたチャーリー・パーカーの意志を継いだ2人であることはもちろん、パーカーの死後、そこから各々のスタイルを確立していった人物たちだというのが重要なポイントです。
そのうちの一人、ソニー・スティットは、パーカーが演奏していた内容をより洗練させ、ポスト・ビバップの発展に貢献した人物です。アルトサックスの名手でもありますが、あまりにもパーカーと音色が酷似していたため、テナーに転向したという有名な逸話があります。
そしてもう一人、ソニー・ロリンズ。先月5月に95歳でこの世を去ったレジェンドですが、もちろんパーカーのリズム感やビバップのハーモニー感覚はそのままに、コード進行よりも演奏している曲のテーマやモチーフを深く追い求め、その形を変え、リズムを変えて展開していく、より熟考されたスタイルを持っています。
それまでのジャズ奏者にはなかったソロのアプローチを行い、モダン・ジャズの巨頭としてその名を残しました。
テナーサックスを代表する二人の演奏を、なかなか別の曲や異なるミックスで聴き比べても特徴がわかりにくかったりしますが、同じ曲、同じテンポ、同じミックスで演奏しているからこそ、その違いを鮮明に楽しむことができます。「今はどっちが演奏しているのかな?」と、人物ごとの特徴を思い浮かべながら聴くのもジャズの楽しみ方の一つ。このアルバムはそんな聴き方を教えてくれます。
また、アルバム3曲目(アナログ盤のB面1曲目)では、ピアニストであるレイ・ブライアントのピアノとアレンジをフィーチャーして、ブルースの定番曲「After Hours」を演奏しているのも興味深いです。このアレンジは、以前当レビューでも紹介したブライアントの晩年のアルバム『Plays Blues』にも収録されていて、彼のピアニスト人生を通して演奏されていたアレンジと言えるでしょう。
ブライアントのアレンジはピアノの音域が広く、ベーシストも自由に弾きすぎると音がぶつかってしまうため、そのアレンジをしっかりと理解して動く必要があります。
この『Sonny Side Up』では、実の兄であり「レイ・ブライアント・トリオ」のベーシストでもあるトミー・ブライアントが参加しているため、彼らの阿吽の呼吸の音楽が大きくフィーチャーされているのも嬉しいところです。
1. On the Sunny Side of the Street
1コーラス目のメロディの演奏の仕方が特徴的なアレンジです。G7(13, b9)のコードが吹き伸ばされると、ディジーのキュー(合図)でビバップ化された「On the Sunny Side of the Street」が始まります。オリジナルやルイ・アームストロングの有名なバージョンにはない細かい装飾音符や、8分音符とその裏拍のアクセントがアレンジされていて、パーカーの意志を継いだ人たちの、この時代ならではの演奏になっています。
ソロはスティット、ガレスピー、ロリンズの順番で演奏されていて、最後にガレスピーが歌って締めくくります。ただ歌うのではなく、オリジナルの歌詞を尊重しつつ、よりリズミカルに歌えるように言葉数を増やして韻を踏み、こちらも見事にビバップ化しているのがとても面白いです。ほとんどラップの原型に聞こえるような箇所もあります。
大好きな歌詞なのですが、調べてみても意外ときちんと書き起こしてくれている人が少ないので、ここに載せておきますね。
Grabbing up your hats, coats, boots and everything
Leave your worries on the doorstep 'cause we're going by and by
Just direct your feet, you look neat
On the sunny side of the street
Can't you hear the pitter and the patter
Of the raindrops trickling down your fire escape ladder?
Life could be so fine
Fine as mm... wine
I used to walk, walk in the shade
With my blues on parade
But, I'm not afraid
It's over, Casanova
If I never have one cent
I'll be rich as Rocky-feller
Gold dust at my feet
On the sunny, on the shady, on the sunny side of the street
2. The Eternal Triangle
こちらはガレスピーの書いた曲で、ジャズミュージシャンの共通言語的なフォームである「リズム・チェンジ」(ガーシュウィンの『I Got Rhythm』のコード進行が元になったもの)で書かれています。
ロリンズ、スティットが各々ソロを吹いたのち、二人が交互にソロを回す熱いトレードへと突入します。その後ガレスピーとブライアントがソロを演奏し、さらに最後にはガレスピーとドラムのチャーリー・パーシップのトレードもあるという、ジャズファン必聴の長尺・熱演ジャムセッションです。
ディジーのソロの特徴である、歯切れの良い明るいサウンドとリズムの中に、どこか喋っているかのような、ある意味では不安定なピッチのアンニュイなニュアンスが混ざる唯一無二の圧倒的な演奏が聴けるトラックでもあります。
ベースのトミー・ブライアントとドラムのチャーリー・パーシップが、伴奏としての役割の中でビートの"Follow and Lead"(追いかけ、引っ張る)の駆け引きをしている様子にも注目して聴くとさらに楽しいです。
3. After Hours
言わずと知れたブルースの名曲で、先述の通りブライアントのアレンジです。「スローブルース(スウィング)というのは、ゆっくりな4拍子とも言えるし、速い3拍子とも言える」というドラムの名手メル・ルイスとマックス・ローチのインタビューを以前リズムの歴史に調べていた時に見つけましたが、まさにその言葉を体感できるようなトラックです。
4. I Know That You Know
スティット、ガレスピー、ロリンズの順でソロをとっています。こちらも「The Eternal Triangle」と同様に、3者の特徴が実によく捉えられたトラックです。
特にガレスピーのソロは圧巻で、エンディングまで一瞬も隙のない華やかさがあります。
文:曽根麻央 Mao Soné
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![]() 曽根麻央 Mao Soné 曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。 |


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