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曽根麻央 Monthly Disc Review2024.01_Charlie Haden with Chet Baker, Enrico Pieranunzi, Billy Higgins : Silence

明けましておめでとうございます。マルチインストゥルメンタリストの曽根麻央です。

来月2/3と2/4に、恒例の「Mao Sone Plays Latin Jazz」公演が恵比寿Blue Note Placeであります。ぜひお越しください!
また4/12と4/13には福岡でソロ公演もあります。福岡の読者の皆様、お待ちしております!  
詳しくはウェブサイトのスケジュールを見てください。


さて、今日はCharlie Hadenの1989年のアルバム『Silence』をご紹介します。


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Title : 『Silence』
Artist : Charlie Haden with Chet Baker, Enrico Pieranunzi, Billy Higgins



レコーディングは1987年で、このアルバムにおいてゲスト的存在のChet Bakerが亡くなる6ヶ月前の演奏が収録されている、ということでも有名です。


メンバーはベーシストCharlie Hadenがリーダーとして、またはバンドのサウンドの中心的存在として素晴らしい演奏を披露しています。

イタリアのピアニストEnrico Pieranuziの限定的な和音と美しい旋律、タッチでも印象的なアルバムであります。

名ドラマーBilly Higginsも参加しています。私は彼のことを名盤製造人間だと思っているのですが、今回も的確で非常に綺麗なシンバル・レガートが全体を通して聴くことができます。

そしてChet Baker。私の大好きなトランペッターです。即興演奏ではまるで元々書かれているかのように、美しくもシンプルな旋律を組み立てる。そんな彼がゲスト的な立ち位置でアルバム全体に参加しています。

Hadenのベースはピッチが正確なのは言うまでもなく、音色に芯があり、この上ない美しい音色を奏でることができたジャズ・レジェンドの一人です。彼オンリーのユニークな音色だと思います。
Ornette Colemanとのフリージャズ演奏が最も有名かもしれません。Ornetteの一見ルールに縛られないように感じるフリージャズですが、実はその中には数多くの制約や、ユニークな作曲活動があってこその美があります。その根底を支えていたのがCharlie Hadenです。そのバンドでもバッテリーを組んでいたBilly Higginsとのコンビネーションがこのアルバムでも聴けるのは嬉しいですね。

またHadenはPat MethenyやMichael Breckerなどのフュージョン・サウンドとも相性が良く、数多くの名盤を残しています。
個人的にはBreckerのアルバム『Nearness of You』でもHadenの素晴らしさがキャプチャーされていると感じます。

この『Silence』はHaden1人が音色が美しい奏者というわけでではなく、参加している4人とも、楽器の音色をシンプルに美しく奏でることに長けたミュージシャンであると思います。
特にHigginsのシンバルワークは素晴らしく、彼の演奏動画を見るとその正確さと細やかなスティックの運びを見ることができます。
演奏内容は全然違うのですが、Charles Lloydととのデュオ動画は特に彼の特色を感じ取ることができるので、是非、番外編として見ていただけると嬉しいです。




さて、この『Silence』では最初の3曲(おそらくアナログのA面)が特に素晴らしく、各ミュージシャンの特色をよく捉えて、バラエティーに富んだ選曲。普段の演奏では聴けない参加ミュージシャンの一面を見ることができます。

1曲目の「Visa」はCharlie Pakerのビバップ曲。
しかしこのメンバーで演奏するとまるで違う、ウエスト・コースト・ジャズのようなサウンドで表現されています。
Chet Bakerのソロ中にはピアノが和音を伴奏してない時間が長く、まるでバリトンサックスのGerry MulliganとChet Bakerのカルテットでウエストコーストサウンドを築き上げた時代の演奏のように聞こえます。それに触発されたEnrico Pieranuziのソロ演奏も和音が少なくシンプルな中低音を使った旋律で表現されています。




2曲目の「Silent」はCharlie Hadenの有名なオリジナル・バラードです。この音色の美しい4人が奏でるのに相応しい曲と言えると思います。




3曲目の「Echi」はピアニストのEnrico Pieranuziのオリジナル曲。
このアルバムでは珍しくコンテンポラリーな作品になっています。ベースとピアノの左手で旋律のユニゾンがあったり、あまり古典的なジャズには見られない和音や構成です。
作品としてはこの同時期か少し後のTom Harrellのような雰囲気に近いかもしれません。こういったコンテンポラリーな作品をChetが吹くのは珍しい気がします。
Higginsのコンポジションの解釈も素晴らしくドラムセットで上手くオーケストレーションしています。スネアのサウンドもとても美しいです。




続く3曲はスタンダードで構成されており、「My Funny Valentine」ではChetの歌も収録されています。
「Conception」はGeorge Shearing の書いたいわゆるジャズの難曲の一つですが、このメンバーにかかると難しさは感じられずただひたすら美しく心地よい演奏になっています。




それではまた次回。


文:曽根麻央 Mao Soné



Recommend Disc

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Title :『Silence』
Artist : Charlie Haden with Chet Baker, Enrico Pieranunzi, Billy Higgins
LABEL : Soul Note
発売年 : 1989年



アマゾン詳細ページへ

【SONG LIST】

01.Visa
02.Silence
03.Echi
04.My Funny Valentine
05.'Round About Midnight
06.Conception



曽根麻央『プレイズ・スタンダード』

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トランペット/ピアノの"ジャズ二刀流"として話題の曽根麻央がソロピアノで紡ぐスタンダードソング集が全国発売決定!
往年のジャズの名曲をフレッシュな感性で解釈。
抒情性と気品に彩られた曽根のジャズ・ミュージシャン、ピアニストとしてのアティテュードが表現されている作品に仕上がった。


曽根麻央『プレイズ・スタンダード』


1.Reflections in D
2.Serenade
3.In Your Own Sweet Way
4.The Star-Crossed Lovers
5.Wave
6.Stella by Starlight
7.All The Things You Are
8.Luminous (Piano Solo Ver.)
9.I Loves You, Porgy
10.Lady Luck11.Danny Boy
12.Home (Piano Solo Ver.)
13.Some Other Time
14.Ask Me Now
15.The Days of Wine And Roses
16.What A Wonderful World

Mao Soné (piano, trumpet)


曽根麻央のその他情報はウェブサイトへ

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「Monthly Disc Review」アーカイブ曽根麻央
2020.04『Motherland / Danilo Perez』2020.05『Color Of Soil /タイガー大越』2020.06『Passages / Tom Harrell 』2020.07『Inventions And Dimensions / Herbie Hancock』2020.08『Birth Of The Cool / Miles Davis』2020.09『Chet Baker Sings / Chet Baker』2020.10『SFJAZZ Collective2 / SFJAZZ Collective』2020.11『Money Jungle: Provocative In Blue / Terri Lyne Carrington』2020.12『Three Suites / Duke Ellington』2021.01『Into The Blue / Nicholas Payton』2021.02『Ben And "Sweets" / Ben Webster & "Sweets" Edison』2021.03『Relaxin' With The MilesDavis Quintet / The Miles Davis Quintet 』2021.04『Something More / Buster Williams』2021.05『Booker Little / Booker Little』2021.06『Charms Of The Night Sky / Dave Douglas』2021.07『Play The Blues / Ray Bryant Trio』2021.08『The Sidewinder / Lee Morgan』2021.09『Esta Plena / Miguel Zenón』2021.10『Hub-Tones / Freddie Hubbard』2021.11『Concert By The Sea / Erroll Garner』2021.12『D・N・A Live In Tokyo / 日野皓正』2022.1『The Tony Bennett Bill Evans Album / Tony Bennett / Bill Evans』2022.2『Quiet Kenny / Kenny Dorham』2022.3『Take Five / Dave Brubeck』・2022.4『Old And New Dreams / Old And New Dreams』2022.5『Ella Fitzgerald And Louis Armstrong / Ella And Louis』2022.6『Live from Miami / Nu Deco Ensemble & Aaron Parks』2022.7『Oscar Peterson Trio + One / Oscar Peterson Trio Clark Terry』2022.8『Ugetsu/ Art Blakey & The Jazz Messengers』2022.9『Sun Goddess / Ramsey Lewis』2022.10『Emergence / Roy Hargrove Big Band』2022.11『Speak No Evil / Wayne Shorter』2022.12『The Revival / Cory Henry』2023.1『Complete Communion / Don Cherry』2023.2『Your Mother Should Know: Brad Mehldau Plays The Beatles / Brad Mehldau』2023.3『Without a Net / Wayne Shorter』2023.4『LADY IN LOVE / 中本マリ』2023.5『Songs Of New York / Mel Torme』2023.6『Covers / James Blake』2023.7『Siembra / Willie Colón & Rubén Blades』2023.8『Undercover Live at the Village Vanguard / Kurt Rosenwinkel』2023.09『Toshiko Mariano Quartet / Toshiko Mariano Quartet』2023.10『MAINS / J3PO』2023.11『Knower Forever / Knower』2023.12『Ella Wishes You A Swinging Christmas / Ella Fitzgerald』

Reviewer information

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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

曽根麻央Official Site

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