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曽根麻央 Monthly Disc Review2023.1_Don Cherry : Complete Communion

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こんにちはトランペットとピアノの曽根麻央です。2023年もよろしくお願いいたします。
今年最初のDisc ReviewはトランペッターDon Cherryによる1966年のアルバムです。
高い作曲能力と演奏技術、そしてコレクティヴなフリー・インプロヴィゼーションが絶妙なバランスで収録された名盤です。


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Title : 『Complete Communion』
Artist : Don Cherry

【高い作曲能力と演奏技術、そしてコレクティヴなフリー・インプロヴィゼーション】

僕とこのアルバムの出会いはまだバークリーの学生の頃でした。デイヴィッド・リーブマンとケニー・ワーナーを宿泊先のボストンのホテルまで送って行った時、ホテルのバーで二人の音楽談義を聞く機会がありました。僕はひたすら黙って二人の会話を聞いていたのですが、その中で最も印象に残ったのがリーブマンの「Complete CommunionのLeandro "Gato" Barbieriはサックスの未来だ!」といった言葉でした。

その会話で初めて僕はこのアルバムの存在を知ったのですが、気になってその場でメモを取り、CDを図書館へ借りに行ったのをよく覚えています。みなさんも是非その言葉の真意を考えながら聴いてみてください!




Don Cherry - cornet
Leandro "Gato" Barbieri - tenor saxophone
Henry Grimes - bass
Edward Blackwell - drums




01. Complete Communion

この楽曲は複数の、7つのテーマ(曲)の組曲だと思います。あくまで私が聴いて「ここからここまでが1主題だろう」と行った具合に予想して区切ったものですので、もしかすると作曲者からは間違いだと指摘されてしまうかもしれませんが、下記にまとめてみました。
見ながら聴いていただくと曲がわかりやすいかもしれません。それぞれの主題はとてもユニークで雰囲気が違います。Complete Comunionという曲は初めて聞くと長いですし、常に流れていて取り止めがない感じがしますので難しく聞こえてしまうかもしれませんが、是非短い曲の集合だと考えて聴いてみてください。





0:00 Theme 1
こちらはルバートの主題になっていて、イントロとして考えても良いパートになっています。このトラック全体の雰囲気をよく表している曲で、Don CherryのトランペットとLeandro "Gato" Barbieriのサックスが完璧なチームワークを果たしていてお互いがリードしフォローし合い、音楽を推進させていきます。


0:52 Theme 2
序盤のメインの曲です。Gマイナーとメジャーを交互に行き来するリズミックな曲です。テーマを2ホーンで吹き2ホーンでソロを回し、ドラムソロも挟みつつ、再びテーマに戻ります。


4:32~ Theme 3
短いテーマが演奏され徐々に曲がTheme 4へと移行していきます。間奏としての役割を果たすパートです。


5:20~ Theme 4
こちらもテーマが演奏されトランペットとサックスのソロがフィーチャーされます。


6:57~ Theme 5A
Theme 5Aのラインがルバートで提示されると、すぐに軽快なスウィングのテンポに移行してメロディーを演奏します。


7:43~ Theme 5B
その後すぐに5Bに移行します。5Aと5Bの雰囲気は全く違う別のテーマなのですが交互に演奏されるので番号は揃えました。5Aはブルース的な、アフリカ音楽的な旋律に対して、5Bはどこか日本的な旋律、中東の旋律を思い浮かばせます。
5B移行後もこの旋律でDon Cherryがソロを取っているあいだ、ベーシストは5Aのテーマをベースラインとして使用していたりするので、この2曲は密接な関係にあると言えます。
中盤のメインの曲です。


12:55~ Interlude
どこまでが即興か、書いてあるのか、一概に判断できないのがこのアルバムの特徴でもあるのですが、おそらくinterlude前半は即興、徐々に作曲してある旋律に移行し次の曲に入ります。


13:38~ Theme 6
Ed Blackwellが名称不明の音程のあるパーカッションを使って演奏している、16小節のミディアムスウィングの曲です。後半のメインの楽曲になっています。


17:46~ Interlude


17:55 Theme 7 (Medium Swing ~ Fast Swing)
少し今までとは雰囲気の違うコミカルな旋律の楽曲です。


19:06 Theme 2 (再現)
楽曲が最後に近づき再現部に移行します。

20:09 Theme 1(再現)
エンディングとしてイントロでもあったTheme1を再び演奏して曲を締めています。


02. Elephantasy

こちらの曲はComplete Communionより前後のテーマ同士が複雑に絡み合いなかなかセクションを分けて考えるのは難しいですが大まかに下記に分けて見ました。後半以降は何度も以前使われたテーマが再現されているのがわかるでしょう。Theme1は特にDon Cherryの作曲能力の高さ、旋律の対する美意識がよく現れた曲だと思うのでぜひ注目して聴いてみてください。
またTheme2のDon Cherryのソロは絶品です。





0:00 Theme 1
3:36 Interlude
4:21 Interlude 2 (転調が始まります)
5:31 Theme 2 (fast swing)
10:55 Theme 3
11:58 Theme 4
12:11 Theme 5
12:30 Theme 6
13:04 Theme 5
15:28 Theme 6 (bass)
16:44 Theme 5
16:48 Theme 4
17:21 Theme 6
17:58 Theme 1 (再現)


それではまた次回。


文:曽根麻央 Mao Soné



Recommend Disc

Complete Communion200.jpg

Title : 『Complete Communion』
Artist : Don Cherry
LABEL : Blue Note
発売年 : 1966年

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【SONG LIST】

01.Complete Communion
02.Elephantasy




【曽根麻央LIVE INFO】

1/20 (金) @ Body & Soul (渋谷)
w/ 伊藤勇司、木村紘

2/17 (金) Nardis (柏)
w/ 伊藤勇司、木村紘

2/18 (土) -19 (日) TBA

2/28 (火) @ Mr. Kenny's (名古屋・金山)
Mao Sone Plays Standards (solo)

3/3 (金) @ Body and Soul (渋谷)
w/ シンサカイノ、苗代尚寛、小田桐和寛

3/10 (金) @ The Moment (成城学園前)
w/ 高橋佳輝、山崎隼

曽根麻央のその他情報はウェブサイトへ

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「Monthly Disc Review」アーカイブ曽根麻央
2020.04『Motherland / Danilo Perez』2020.05『Color Of Soil /タイガー大越』2020.06『Passages / Tom Harrell 』2020.07『Inventions And Dimensions / Herbie Hancock』2020.08『Birth Of The Cool / Miles Davis』2020.09『Chet Baker Sings / Chet Baker』2020.10『SFJAZZ Collective2 / SFJAZZ Collective』2020.11『Money Jungle: Provocative In Blue / Terri Lyne Carrington』2020.12『Three Suites / Duke Ellington』2021.01『Into The Blue / Nicholas Payton』2021.02『Ben And "Sweets" / Ben Webster & "Sweets" Edison』2021.03『Relaxin' With The MilesDavis Quintet / The Miles Davis Quintet 』2021.04『Something More / Buster Williams』2021.05『Booker Little / Booker Little』2021.06『Charms Of The Night Sky / Dave Douglas』2021.07『Play The Blues / Ray Bryant Trio』2021.08『The Sidewinder / Lee Morgan』2021.09『Esta Plena / Miguel Zenón』2021.10『Hub-Tones / Freddie Hubbard』2021.11『Concert By The Sea / Erroll Garner』2021.12『D・N・A Live In Tokyo / 日野皓正』2022.1『The Tony Bennett Bill Evans Album / Tony Bennett / Bill Evans』2022.2『Quiet Kenny / Kenny Dorham』2022.3『Take Five / Dave Brubeck』・2022.4『Old And New Dreams / Old And New Dreams』2022.5『Ella Fitzgerald And Louis Armstrong / Ella And Louis』2022.6『Live from Miami / Nu Deco Ensemble & Aaron Parks』2022.7『Oscar Peterson Trio + One / Oscar Peterson Trio Clark Terry』2022.8『Ugetsu/ Art Blakey & The Jazz Messengers』2022.9『Sun Goddess / Ramsey Lewis』2022.10『Emergence / Roy Hargrove Big Band』2022.11『Speak No Evil / Wayne Shorter』2022.12『The Revival / Cory Henry』

Reviewer information

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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

曽根麻央Official Site

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