みなさんこんにちは。トランペットとピアノの曽根麻央です。
まず最初にお知らせがあります。
先日7/13(水)より シングル「Days of Wine and Roses(酒とバラの日々)」が配信されました。
是非聴いてください!
これは私、曽根麻央が数々の名曲をピアノソロ中心に録音した"Plays Standards"シリーズの一環で、このシリーズは今月から12月までの間、毎月2曲ずつ配信していきます。注目しておいてください。
【Days of Wine and Roses / 曽根麻央】(各配信サイト)
https://ultravybe.lnk.to/thedaysofwineandroses
まだ一曲のみですが計12曲にも及ぶのでこちらのSpotifyプレイリストに随時まとめていく予定です。
そして東京の丸の内コットンクラブではこれに先駆けて配信を記念したライヴを開催します。
会場でお会いしましょう!
【MAO SONÉ "Plays Standards" with DAVID BRYANT & TAKANA MIYAMOTO】
"ジャズ二刀流"と称される若き才能と2人のピアニスト
スタンダード曲の数々を贅沢な内容で届ける一夜
【SCHEDULE】
2022 9.2 fri.
[1st.show] open 5:00pm / start 6:00pm
[2nd.show] open 7:45pm / start 8:30pm
【MEMBER】
曽根麻央 (p,tp)
【Guest】
デヴィッド・ブライアント (p,key)、 宮本貴奈 (p,key)
【詳細】
http://www.cottonclubjapan.co.jp/jp/sp/artists/mao-sone/
Title : 『Oscar Peterson Trio + One』
Artist : Oscar Peterson Trio Clark Terry
【オスカー・ピーターソン&クラーク・テリーによる巨匠の名演】
さて今回はピアノの名手オスカー・ピーターソンと、ジャズ・トランペットの神様、クラーク・テリーの共演した名盤『Oscar Peterson Trio + One』を聴いていきましょう。
このアルバムは1964年のもので、ピーターソンが39歳、クラーク・テリーが44歳と、丁度中堅に差し掛かり心地よいジャズを演奏するのにちょうど良い年齢に達した二人の巨匠の名演集ともいえる作品です。
クラーク・テリーという名前に馴染みがない方はすぐにでも覚えてほしい。この人ほどトランペットという楽器をここまで高度に操れた人は過去にはいないのです。
技術だけなのかというとそうではなく、この人ほどトランペットを自身の声として扱うことに長けていた人はいないでしょう。プレイヤーとしてでなく94歳で亡くなる2015年まで教育者としても尊敬されていた人です。
1920年に生まれ、カウント・ベイシーとデューク・エリントン・オーケストラというジャズ界の歴代2大ビッグバンドのソリストとして活躍し、ソロ活動も精力的に行なっていました。またマイルス・デイヴィスのメンター(ただの楽器の先生としての意味合いではなく生き様を見せることで後進の指導をするような人の意)として有名です。ウィントン・マルサリスやクインシー・ジョーンズといった一流のアーティストも彼のことをメンターとして挙げています。ジャズのシーンだけでなくNBCなどのTVミュージシャンとしても活躍したマルチ・タレントです。
そんな彼のトランペットの音は、立ち上がりがよく、艶やかでリズミカル。まるで彼自身の声を聴いているかのようです。このアルバムでも収録されている「Mumbles」でクラーク・テリー自身のスキャットも聴けます。ぜひ彼のトランペットと歌の共通点を見つけてみてください。
Clark Terry - trumpet, flugelhorn, vocal
Oscar Peterson - piano
Ray Brown - double bass
Ed Thigpen - drums
オスカー・ピーターソンの最も有名なトリオにクラーク・テリーが乗っかったアルバムです。このコラボはツアーなどで以後も続いていきます
01. Brotherhood of Man
早速、心地よい快速なスウィングの曲で始まります。クラーク・テリーはプランジャー・ミュートという、いわゆるトイレのスッポンのゴム部分を使用しており、これをトランペットのベルのところで開けたり閉めたりすることで、まるで喋るような、歌詞を歌っているかのような演奏を聴かせてくれます。エリントン・ビッグバンドのアレンジによく登場する奏法です。このプランジャーを使った演奏は彼の得意技で、他の追随を許しません。ぜひ楽しんで聴いてください。
02. Jim
少しゆったりとしたスウィングの曲。ピーターソントリオで1コーラステーマを演奏し、テリーに引き継がれます。テリーに引き継がれると、トランペットの音を変化させ彼がまるで二人に分身したかのように掛け合いで演奏を始めます。実は右手にフリューゲルホルン、左手にハーマン・ミュートをつけたトランペットを持っていて、それをパートによって吹き分けています。これもテリーの芸の一つで、トランペットを左手でも持てるように取り外し式のピンキーフックを楽器に装着し使っています。2人のジャズの巨匠が掛け合いをしてるようでとても楽しいトラックです。ちなみにクラーク・テリーのハーマン・ミュートの音が後にマイルス・デイヴィスに影響を与えたと言われています。
03. Blues For Smedley
Abのシンプルなブルース。一曲目と同じくプランジャー・ミュートを駆使しています。テリーの音は全てのレンジで立ち上がりが素晴らしく、ハリのある音色でジューシーです。そして何よりスウィングしますね!特にこのトラックではピーターソンだけでなくレイ・ブラウンのソロも聴くことができます。
04. Roundalay
ようやくテリーのオープンなトランペットサウンドが聴けます。今までと少し毛色の違う寂しげな曲。オープンなトランペットサウンドでとても真のある音にも関わらず、柔らかく人々の耳を決して痛めることのない優しさのある音だと思います。彼の速いフレーズを吹くときに注目すれば、彼のトランペットが恐ろしくクリーンでクリアであることに気づかされます。なぜ他のジャズ・トランペッターが憧れたかがわかるでしょう。
05. Mumbles
テリーの「芸」はプランジャーやフリューゲルとの持ち替えだけではありません。ここでは巧みなスキャットを披露します。" Mumbles"と人々が呼ぶそれはまるで南部訛りの男性が話しているかのように展開されます。しかし言葉に意味はありません。そこにはただソウルとリズムがあり、その全てがテリーのトランペット演奏に反映されています。
06. Mack The Knife
有名なジャズスタンダード。ここでテリーはバケットミュートという棉の詰まったミュートを使用しています。このアルバムには様々なミュートが登場します。この時代はエフェクターがないのでミュートを変えたりフリューゲルに持ち変えることで曲調に合う音色を探していたことがわかりますね。正直この曲のテリーのソロは神業です。歯切れ良い丁寧な3連音符。それと対となるようなスピード感ある16分音符。世界最高のトランペッターの軽い本気が聴けます。
07. They Didn't Believe Me
ピーターソンのソロから始まるバラードの曲。この曲ではテリーはフリューゲルを使用しています。実はテリーは稀に見るフリューゲルの名手としても有名で、ハイノートや激しい演奏など、通常フリューゲルでは難しいとされていることも何気なくこなしてしまいます。そのテイクではテクニカルな一面は封印して、歌心あるメロディープレイに集中しています。
08. Squeaky's Blues
速いテンポのブルースの曲。こちらもバケットミュートを使用しています。テリーのアーティキュレーションの綺麗さが際立つ一曲です。このタイプの演奏スタイルは現在ではウィントン・マルサリスが継承していて、彼の演奏を聴きに行けば今でも体感することができます。このテンポはピーターソンも得意とするところで輝くようなタッチで軽やかに演奏しています。
09. I Want A Little Girl
プランジャーを使ったバラード曲。通常プランジャーを使う場合左手はプランジャー操作で忙しくなるので楽器自体は右手のみで持つことになります。このためとても楽器の演奏自体が困難になるのですが、テリーはダイナミックスまでも見事につけてトランペットを完璧に操っています。4:37以降のエンディングは圧巻です!
10. Incoherent Blues
再びテリーの"mumbles"をスローブルースで聴くことができます。よりしゃべっている感覚が伝わってくると思います。これが実にジャズという音楽でアートなのです。
それではまた次回。
文:曽根麻央 Mao Soné
Recommend Disc |
![]() Title : 『Oscar Peterson Trio + One』 【SONG LIST】 01.Brotherhood Of Man |
【曽根麻央LIVE INFO】
7/20 (Wed) @ Body & Soul, Shibuya
Takana Miyamoto & Mao Sone
7/22 (Fri) @ Cotton Club, Tokyo
Saku Yanagawa "Time To Standup at COTTON CLUB Tokyo"
7/23 (Sat) @ Kanze Nohgakudo, Ginza
Edo Jazz
7/24 (Sun) @ Cabin, Honatsugi
Mao Sone SOLO
7/25 (Mon) @ Apple, Yokohama
Yuya Wakai & Mao Sone
7/26 (Tue) @ 104.5, Ochanomizu
Good Jam Session
7/27 (Wed) @ TBA
Secret Event
7/28 (Thu) @ Alfie, Roppongi
SkyFloor (feat. Hiro Suzuki, Shota Watanabe, Shunya Wakai & Mao Sone)
8/6(Sat) @ Naru, Yoyogi
Ayana, Mao Sone, Nori Shiota
8/11(Thu) @ Nardis, Kashiwa
Mao Sone Trio (feat. Yuji Ito & Hiro Kimura)
8/12 (Fri) @ Body & Soul, Shibuya
Mao Sone, Taka Nawashiro, Shin Sakaino, Kazu Odagiri
8/14 (Sun) @ No Room For Squares, Shimokitazawa
Ryo Miyachi
8/20 (Sat) @ Nagareyama-city Shogai Gakushu Center
Mizuki Shikimachi & Mao Sone
8/21 (Sun) @ Cabin, Hon-atsugi
Mao Sone, Yoshiki Takahashi, Hayato Yamazaki
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・2020.04『Motherland / Danilo Perez』・2020.05『Color Of Soil /タイガー大越』・2020.06『Passages / Tom Harrell 』・2020.07『Inventions And Dimensions / Herbie Hancock』・2020.08『Birth Of The Cool / Miles Davis』・2020.09『Chet Baker Sings / Chet Baker』・2020.10『SFJAZZ Collective2 / SFJAZZ Collective』・2020.11『Money Jungle: Provocative In Blue / Terri Lyne Carrington』・2020.12『Three Suites / Duke Ellington』・2021.01『Into The Blue / Nicholas Payton』・2021.02『Ben And "Sweets" / Ben Webster & "Sweets" Edison』・2021.03『Relaxin' With The MilesDavis Quintet / The Miles Davis Quintet 』・2021.04『Something More / Buster Williams』・2021.05『Booker Little / Booker Little』・2021.06『Charms Of The Night Sky / Dave Douglas』・2021.07『Play The Blues / Ray Bryant Trio』・2021.08『The Sidewinder / Lee Morgan』・2021.09『Esta Plena / Miguel Zenón』・2021.10『Hub-Tones / Freddie Hubbard』・2021.11『Concert By The Sea / Erroll Garner』・2021.12『D・N・A Live In Tokyo / 日野皓正』・2022.1『The Tony Bennett Bill Evans Album / Tony Bennett / Bill Evans』・2022.2『Quiet Kenny / Kenny Dorham』・2022.3『Take Five / Dave Brubeck』・2022.4『Old And New Dreams / Old And New Dreams』・2022.5『Ella Fitzgerald And Louis Armstrong / Ella And Louis』・2022.6『Live from Miami / Nu Deco Ensemble & Aaron Parks』
Reviewer information |
![]() 曽根麻央 Mao Soné 曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。 |