JJazz.Net Blog Title

My First Jazz Vol.36-市原ひかり:My First Jazz

Title : 『CANDY』
Artist : Lee Morgan

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「初めて聴いたジャズアルバムは、高校1年生の時に買った、リー・モーガンのキャンディでした。

ジャズという音楽を何も知らなかった時、池袋駅構内の特設CDショップで無作為に手に取った事をよく覚えています。

大当たりでした。

ただただ、カッコいい音楽だなぁ、と何度も何度も聴きました。

実際に自分でジャズを演奏するようになり、このアルバムの素晴らしさをまた違った角度からヒシヒシと感じている今日この頃です。」 市原ひかり

市原ひかりOfficial






My First Jazz

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Title : 『CANDY』
Artist : Lee Morgan
LABEL : Blue Note
発売年 : 1958年



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【SONG LIST】
01.Candy
02.Since I Fell For You
03.C.T.A.
04.All The Way
05.Who Do You Love I Hope
06.Personality

曽根麻央 Monthly Disc Review2021.03_ Relaxin' With The Miles Davis Quintet:Monthly Disc Review

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Title : 『Relaxin' With The Miles Davis Quintet』
Artist : The Miles Davis Quintet

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【Milesの「スペース」の魅力】

 マイルス・デイヴィスのソロには不思議な魅力があります。その魅力はもちろん彼の持つ音色、美しいフレーズ、そして完璧なタイム感があるのですが、今回特筆するのは彼のスペースについてです。

ジャズのアドリブにおいてスペースとは、実際に吹いている箇所ではなく、フレーズとフレーズの間のお休みのところをいいます。マイルス・デイヴィスのスペースは完璧に精査されていて、聴いていて心地よいどころか、びっくりさせられることがあります。今回はその理由(わけ)も徹底的に解説してみました。

 今回取り上げるのはマイルス・デイヴィスがPrestige Recordsに残したアルバム『Relaxin'』です。『Relaxin'』 は、マイルスがColumbiaへ移籍する際に、Prestige Recordsとの契約を消化するために4枚のアルバムを2日間で録音した「マラソン・セッション」と呼ばれる歴史的なレコーディング・セッションからの1枚です。1956年に録音され、58年にリリースされています。これは恐らく4枚のリリースのタイミングをずらすためでしょう。

メンバーを見ていきましょう。



Miles Davis - trumpet
John Coltrane - tenor saxophone
Red Garland - piano
Paul Chambers - bass
Philly Joe Jones - drums




 マイルス・デイヴィスの1955-59年まで続いた、"The First Great Quintet"と呼ばれることがあるクインテットです。元々はカフェ・ボヘミアという歴史的なジャズクラブで演奏するために結成されたクインテットで、結成された当時はソニー・ロリンズがサックスを担当していました。しかしロリンズがヘロイン中毒からの克服に時間がかかるため、ジョン・コルトレーンが抜擢され、有名なクインテットへとなりました。のちにキャノンボール・アダレイを迎えての3菅編成のセクステットへと変貌していきます。

 一連の「マラソン・セッション」はマイルス・デイヴィスが、強力なレギュラー・クインテットを手に入れ、メジャーレーベルに移籍するタイミングでもあり、50年代までのキャリアとしては絶頂にいた時のレコーディングであることは確かです。そんなマイルスのどこか落ち着いた、しかし堂々とした演奏の秘密にはスペースがあります。

 スペースとは、繰り返しになりますがフレーズとフレーズの間の演奏していない空間のことで、これを活かすには、どこでフレーズを始めどこで終わるかというのが肝になってきます。マイルスの(特にこの時代の)演奏にはフレーズのはじめ方、終わり方に一定の法則性があります。それはクラーベのリズムに沿ってフレーズをはじめ、そして終わるということです。

 クラーベというとラテン音楽のイメージがあります。クラーベとはラテン語で「鍵」という意味で、その名の通りリズムの鍵になっています。クラーベのリズムに沿って、ベースラインやメロディー、歌詞、ハーモニーが作られるのがラテン音楽の基本です。

 しかし、歴史を考えるとクラーベはジャズにも存在します。そもそもクラーベはアフリカの民俗音楽から派生しています。アフリカの音楽が奴隷船とともにアメリカ大陸周辺に運ばれ、キューバではキューバの宗教とキリスト教と融合しアフロ・キューバン音楽として、アメリカのニューオリンズではより白人のクラシカルな楽器や和声と結びつき、ニューオリンズ・ジャズ(2nd Line)として発展しました。要するにジャズの根本にもクラーベは存在するのです。

 マイルスがサルサを聴きにニューヨークのクラブへ通っていたのは有名な話ですし、マイルスの幼い頃はニューオリンズ・ジャズが流れていて、それを聴いていたことは容易に想像ができます。

 クラーベには何種類かあります。主にジャズで見かけるのは普通のソン・クラーベ、ルンバ・クラーベ、ニューオリンズ・クラーベです。


ソン・クラーベ
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ルンバ・クラーベ
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ニューオリンズ・クラーベ
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 『Relaxin'』の"If I Were A Bell"のマイルスのソロでは主に、ソン・クラーベとニューオリンズ・クラーベからフレーズが組み立てられています 。"If I Were A Bell"のソロのフレーズがクラーベを中心に組み立てられていることがわかるデモを用意してみましたので、以下のビデオを見てください。





 わかりやすくクラーベやカスカラと一致するところに線を引いてみましたが、ほとんどのフレーズがクラーベ、またはカスカラに合わせて始まり終わっていると思います。カスカラとはクラーベに対応して成り立っているリズムパターンのことで、ラテン音楽ではクラーベと同じぐらい重要なものです。このようにクラーベに沿ってフレーズを組み立てることで、スペースを効果的に、そしてより自然に流れるように活用することができると思います。

 またこの"If I Were A Bell"のレッド・ガーランドのソロがとても良いので注目してみてください。そして、ガーランドの後ろでベースを弾くポール・チェンバースもとってもスウィングしています。マイルスに「ポール・チェンバースはなんでも弾ける」と言わせたベーシストの技を聴くことができます。ちなみにこの逸話は以前のJJazz.Netの記事に書きましたのでぜひ読んでみてください (曽根麻央 Monthly Disc Review2020.7)。


 ちなみにこの一曲目の"If I Were A Bell"はマイルスが'I'll play then tell you what it is later'と「演奏した後になんの曲か教えるよ」といったエンジニアとのやりとりまで収録されています。こういう生のやりとりを少しだけ覗くことができるのも本アルバムの魅力の一つです。





さてここからは1曲ずつ聴いていきましょう。


02. Your're My Everything
 こちらも30秒ほどスタジオ内のやりとりが聞こえてきます。そしてレッド・ガーランド特有の左手で和音、右手でメロディーをオクターブで演奏する奏法でイントロが奏でられ曲が始まります。同じくトランペッターのフレディー・ハバードはこの曲を軽快なスウィングのリズムで、Cのキーで演奏していますが、こちらは落ち着いたバラードでBbのキーで演奏されています。

 この曲でも使用されていますが、マイルスのハーマン・ミュートの使い方はこれもフレディー・ハバードと真逆ですね。マイルスの柔らかい音色から推測して、かなりソフトにマイクの近くで吹いていると思います。マイルス・デイヴィスを象徴する音色です。こういうバラードではまるで女性ボーカリストが歌っているかのような表現だなといつも思っています。フレディー・ハバードは音量をMax状態でハーマンを吹くのがとても特徴的だと思います。その代わりよりチーっといったまた違った独自の音を持っていますね。


03. I Could Write A Book
早いスウィングのアレンジで演奏されています。レッド・ガーランドは一貫して自分のコンピング(伴奏)のスタイルを持っています。基本的に1小節に2つ和音が入ります。小節の4拍目の裏と、2拍目の裏に軽快にリズムと和音を刻んでいます。レッド・ガーランドはそもそもとても優秀なボクサーだったのですが、まるでジャブを打っているかのようなコンピングです。その上で右手は自由に転がってフレーズを操ります。

 ジョン・コルトレーンの演奏にも注目してみたいと思います。この録音はコルトレーンのキャリアの中でかなり初期のものです。コルトレーンのアーティキュレーションは年代によってかなり変わります。初期はかなり短く8分音符を激しめに区切ってタンギングしてアーティキュレートしています。中期になればその音価はギリギリまで伸ばされ、一つ一つのアーティキュレーション自体は穏やかになりますが、フレーズの持つエネルギーが増していますね。このように年代でプレイスタイルがここまで大きく異なるミュージシャンは少ないので、注目して聴いてみてください。


04. Oleo
 ソニー・ロリンズとレコーディングしたアルバム『Bag's Groove』のバージョンよりかなり早いテンポで収録しています。マイルスがメロディーを一人吹きはじめて曲が始まります。マイルスのリズムの良さがわかる瞬間です。
 コルトレーンのソロも、中期のいわゆる「コルトレーンサウンド」が少しだけ垣間見えますが、それがまだ若い頃のアーティキュレーションが同時に聴こえてくる面白いソロです。

 個人的にびっくりしたのは5:40からの後とテーマでのポール・チェンバースのカウンターポイントです。カウンターポイントについても別の記事でたくさん書きましたが、メロディーに対応し、時に逆行する第2のメロディーともいえるラインのことです。このカウンターラインが綺麗で改めて聞き直して感激しました。





05. It Could Happen To You
 有名なスタンダード曲。こちらのマイルス・デイヴィスのソロも見事に2-3クラーベに当てはまっているのがお分かりになると思います。リズムセクションのスウィングのグルーブもどちらかというとニューオリンズ・クラーベに影響を受けたin 2のスウィングで統一されています。In 2とはベースが2分音符で1小節に2つしか音を弾かない時のスウィングの呼び方です。通常はwalking bass と言って1小節に4つ音を鳴らし、グルーブを作ります。それはIn 4のスウィングとも言います。


06. Woody'n You
 トランペッター、ディジー・ガレスピーの曲です。このアルバムで唯一コルトレーンとマイルスが同時にメロディーを吹いていますね。2管編成のアルバムでここまで一緒にメロディーを吹かないアルバムは珍しいですが、マイルスっぽいと言えるでしょう。そして唯一マイルスのオープンサウンド(ミュートをしてない状態)が聴けます。素晴らしいオープンサウンドはまるでバンドの音を貫いて一つの筋で通しているかのようです。マイルスのハイノートも聴けて、少しディジーの影響が聴こえてきますが、それを自分のスタイルでやってのけるところもマイルスの魅力でしょう。
 このアルバムで唯一のフィリー・ジョー・ジョーンズのドラムソロも聴けます。ドラムソロ明けの第二メロディーのバンドの一体感も素晴らしいですね。


ぜひみなさんもこのアルバムを聴いてみてください。

それではまた次回。

文:曽根麻央 Mao Soné







【LIVE INFO】
曽根麻央3-4月演奏スケジュール


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【公演名】
MAO SONÉ - Brightness of the Lives - at Blue Note Tokyo

【日時】
2021 4.23 fri.
[1st]Open5:30pm Start6:30pm [2nd]Open8:30pm Start9:15pm
※2ndショウのみインターネット配信(有料)実施予定
※アーカイブ配信視聴期間:4.26 mon. 11:59pmまで
※アーカイブ配信の内容はライヴ配信と異なる場合がございます。
予めご了承ください。
※当初の開催日程(2021 1.21 thu.)から変更となっております。

【メンバー】
曽根麻央(トランペット、ピアノ、キーボード)
井上銘(ギター)
山本連(ベース)
木村紘(ドラムス)

★公演内容に関するお問い合わせ
ブルーノート東京 TEL:03-5485-0088

▼URL
http://www.bluenote.co.jp/jp/artists/mao-sone



Recommend Disc

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Title : 『Relaxin' With The Miles Davis Quintet』
Artist : The Miles Davis Quintet
LABEL : Prestige
NO : PRLP 7129
発売年 : 1958年



アマゾン詳細ページへ


【SONG LIST】

01. If I Were A Bell
02. You're My Everything
03. I Could Write A Book
04. Oleo
05. It Could Happen To You
06. Woody'n You




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Reviewer information

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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

曽根麻央Official Site

My First Jazz Vol.35-Sara Gazarek:My First Jazz

Title : 『Ella And Basie!』
Artist : Ella Fitzgerald / Count Basie

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「最初に聴いたのは15歳の時。1年くらい聴きこんで本当に全部覚えちゃったの。リリックの一つ一つからフレージングから息づかいから。ボーカルにしてもそうだけどスキャットから全部。私にとってそんな大切な1枚です。」

Sara Gazarek

Sara Gazarek Official






My First Jazz

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Title : 『Ella And Basie!』
Artist : Ella Fitzgerald / Count Basie
LABEL : Verve Records
発売年 : 1963年



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【SONG LIST】
01.Honeysuckle Rose
02.'Deed I Do
03.Into Each Life Some Rain Must Fall
04.Them There Eyes
05.Dream A Little Dream Of Me
06.Tea For Two
07.Satin Doll
08.I'm Beginning To See The Light
09.Shiny Stockings
10.My Last Affair
11.Ain't Misbehavin'
12.On The Sunny Side Of The Street

西口明宏さんコメント届きました:jazz UNITED

西口明宏さんからコメントが届きました。


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「このコロナ渦で個人での時間が多くなりました。そして音楽の持つエネルギーを再確認した時期でもありました。
こういう状況だからこそ音で繋がる個々のパワーをみなさんにも感じてもらえればと思います。新技術を駆使したニューヨークのトップミュージシャンとのセッションに未来を感じます。とても楽しみです!」

西口明宏


西口明宏Official Site



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【タイトル】
jazz UNITED -JAZZ LIVE FROM TOKYO & NEW YORK-

【概要】
NYと東京で活動する新世代のジャズ・ミュージシャンがリアルタイムでつながり演奏/共演する有料配信企画。コンセプトは「jazz UNITED」。

【出演】
NY : ハリシュ・ラガヴァン(b) / ジョエル・ロス(Vib) / アーロン・パークス(p)
東京 : 黒田卓也(tp) / 大林武司(p) / 中林薫平(b) / 菅野知明(d) / 西口明宏(sax)
MC : 挾間美帆

【配信日時】
2021年2月17日(水)20:00〜

【チケット料金】
¥2,500(税込)
チケットはこちらより(ZAIKO)

【アーカイブ期間】
2021年2月17日(水)20:00〜2月24日(水)23:59

jazz UNITED特別ページ


曽根麻央 Monthly Disc Review2021.02_ Ben Webster & "Sweets" Edison_Ben And "Sweets":Monthly Disc Review

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Title : 『Ben And "Sweets"』
Artist : Ben Webster & "Sweets" Edison

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【スウィングのコンピング】

みなさんこんにちは、曽根麻央です。
今日はBen WebsterとHarry "Sweets" Edison の2フロントのアルバム、Ben and "Sweets"について解説していきます。このアルバムではBen WebsterとHarry Edisonのいわゆるジャズのテナー&トランペットの王道サウンドを楽しむことができます。2人のイントネーション、強弱、アーティキュレーションの付け方など、細かい表現の一致が美しいアンサンブルを作り上げています。

さらにそれだけではなく、今回はHank Jonesのコンピングにも視点を当ててみましょう。コンピングとは、ジャズにおけるピアノやギターの伴奏の事で、リズムとハーモニーの掛け渡しを担う大切な要素です。特に5曲目のDid You Call Her TodayはHank Jonesのコンピングも光り、ジャズ史上最もスウィングしているテイクの一つではないかなと考えています。是非一緒に楽しんでいきましょう。

また、bebop以前に活躍したミュージシャン達が1962年に録音しているのも注目してください。僕らはジャズの歴史を語る時にどうしてもその時その時の新しい流派のことを多く語ってしまいす。その方が歴史の流れの説明が楽だからです。だからそれまでの昔ながらのスタイルが絶滅したかのように学びます。しかし実はそうではなくて、このアルバムのようにbebop以前のミュージシャンも活躍してアルバムを出し続けていました。


Ben Webster (ts)
Harry "Sweets" Edison (tp)
Hank Jones (p)
George Duvivier (b)
Clarence Johnson (d)

録音: 1962年6月6日&7日




ベースのGeorge Duvivierと、ドラムのClarence Johnsonについては、僕自身あまり知らなかったのでどの様な人物なのか調べてみました。


George Duvivier (1920-1985) はサイドメンとしてかなり活躍していたベーシストな様です。クラシカル・ヴァイオリンでキャリアをスタートして、the Central Manhattan Symphony Orchestraのアシスタント・コンサートマスターを16歳で務めた人物。NYU(ニューヨークユニバーシティ)でベースを始めて、Coleman HawkinsやLena Horne、Count Basie、Frank Sinatra、Bud Powell、Benny Goodmanなど幅広い音楽性を持つアーティスト達のサイドメンを務めた人物だそうです。


Clarence Johnson (1924-2018)もドラマーとしてJames Moodyの信頼を得て活動していた様です。Sonny Stittのアルバムにも多く参加しています。本アルバムでは、グルーヴに集中していて手数を多くを叩く事はないが、それによって生み出されるステディーなテンポが、このアルバムを強力なものとしています。

ここからはジャズファンならよく知る3人を、確認を兼ねて紹介します。


Hank Jones (1918-2010) は皆さんもよく知るジャズの歴史を代表するピアニスト。強力なタッチとリズムを奏でるピアノですが、そのサウンドは優しさに包まれていて、聴衆の心を癒してくれる存在だと思っています。Earl Hines, Fats Waller, Teddy Wilson, Art Tatumなどの最古のジャズピアノの影響を直に受けつつ、Hank Jones独自のサウンドを創りあげました。未だに彼のジャズピアノへ影響は絶大です。弟にはトランペッターのThad JonesとドラマーのElvin Jonesがいます。このアルバムでは彼の持つ強力なリズムとタッチから成る、これぞ至上のスウィング・コンピングを聴くことが出来ます。ピアニストの皆さんは必聴です。


Ben Webster (1909-1973) はColeman Hawkins, Lester Youngと同じく、ジャズサックスの歴史において最も重要な初期を代表する奏者で、その後の全てのサックス奏者に影響を与えています。Duke Ellington Big BandのAlto奏者Johnny Hodges に影響を受けました。そんなWebsterも40年台のエリントン楽団においてソリストとして活躍しました。とてもリリカルで特徴的なヴィブラート、Hodgesに影響を受けたであろう歌う様に滑らかなサックスプレイは、Websterのシグネチャーですし、いわゆるテナーサックスの在り方と言って良いでしょう。


Harry Sweets Edison (1915-1999) もマイルス以前にミュート・トランペットの音を確立しました。主にNelson RiddleのメンバーとしてFrank Sinatraの多くのアレンジでソロを吹いています。初期のキャリアの30年代にはCount Basieのビッグバンドへ入り活躍。余談ですが当時余りにもモテたために"Sweets"というあだ名がついたそう(笑)。

"Did You Call Her Today

さて、今回メインの話題のコンピンングについて5曲目の"Did You Call Her Today"を聴いていきましょう。




そもそもこのトラックは、先にも言いましたが、僕がジャズ史上最もスウィングしているテイクだと考えていて、それはもちろんリーダー2人のフロントの歌い回しによるものでもあるのですが、ステディーなベースとドラムが織りなす完璧な四分音符の上で、自由にリズムを操るHank Jonesのコンピングによる功績が大きいです。

以下のビデオ僕が楽譜ソフトに入力したプレイバック音源ですが、Hank Jonesのリズムが8分音符だったり、3連音符だったり、またまた16分音符だったり、縦横無尽に変化しているのがわかると思います。これでもメロディーや歌の邪魔にならないのは、うまいこと自分のスペースを見つけているからです。サックスやトランペットの譜面と見比べると、Hankのコンピングは必ずメロディーとメロディーの間の休みに強力なリズムを提示していることがわかるでしょう。特に途中の0:46からの16分音符はとても特徴的で、彼の弟のElvin Jonesのスネアのパターンにも出てくることがあります。





このように8分音符だったり、3連音符だったり、またまた16分音符だったり、リズムが複合的であることがジャズのリズムを実際に演奏して見た時に難しい理由でしょう。スクエアーに全てが揃っているとニセモノ感が出てしまいます。これは複合リズムの音楽でもあるアフリカ音楽にジャズの起源がある所以でしょう。

この演奏ではHarry Sweets Edisonは終始バケットミュートと呼ばれる弱音器を使用しています。ジャケットの写真で使用しているミュートですね。名前の通りバケツのような形をしていて、中にわたが詰められているため少しモコモコしたサウンドになります。

曲はBen Websterのものですが、コード進行は"In A Mellow Tone"と同じコード進行です。このように既存の曲のコード進行を使いその上に新たなメロディーを描く手法をContrafactといいます。おもにbebop期に流行った手法でチャーリーパーカーが"Donna Lee"を"Indiana"という曲の進行を使っていたり、Sonny Rollinsが"Oleo"を"I Got Rhythm"の進行を使っているのが代表的なContrafactですね。

EdisonもWebsterも実に彼ららしい見事な歌心溢れるソロを展開しています。ぜひソロ中の彼らフロントマンとHank Jonesのソロとコンピングの駆け引きもよく聴いていただきたいです。Hank Jonesのソロもコンピングで見せるリズム感をそのままに8分音符だったり、3連音符だったり、またまた16分音符だったり、ソロフレーズも自由自在にリズムを操ります。それにしても見事なタッチです。

そこに続くシャウトコーラスもメロディーラインとピアノの駆け引きが非常によくできています。シャウトコーラスとは、以前の記事でもなんども書きましたが、アレンジャーコーラスとも呼ばれていて、編曲家が自由に書き足して良い部分です。通常ビッグバンドのアレンジ向けに書かれることが多いです。


ここからは他の収録曲を簡単に解説します。1曲目の"Better Go"はEbのブルース曲でWebsterが作曲しました。ここではHarry Edisonのハーマンミュート(Miles Davisがよく使った)でのソロが聴けます。Websterのリラックスしたスタイルもサックスの王道といった感じです。もちろんこのトラックでもHank Jonesのコンピングに耳を傾けてみてください。



"How Long Has This Been Going"OnはGeorge Gershwinの曲。WebsterとHank Jonesのデュオから始まります。終始Websterをフューチャーしていてワンホーンのテイクです。落ち着いた雰囲気はジャズのバラードのあり方そのものですね。


"Kitty"はHarry Sweets Edisonのブルージーなオリジナル曲。EdisonとWesterの2ホーンが心地良いですね。こちらもソロはEdisonのプランジャーミュートを全閉じでサウンドが聴けます。Websterの喋りかけているようなソロは圧巻です。


"My Romance"はRichard RodgersとLorenz Hartが書いたバラード曲。これもWebsterをフィーチャーしています。


"Embraceable You"はガーシュウィンが書いた曲です。こちらはEdisonのハーマンミュートでのバージョンになっています。Hank Jonesとのデュオから始まり、まるで歌詞を読んでいるかのような雰囲気でトツトツと、しかし美しく演奏してくれています。Harry Sweets Edisonの音色はよどみがなく美しくて、トランペットの良さを前面に引き出してくれている奏者だと思います。


ぜひこの素晴らしいアルバムを皆さんも聴いてみて下さいね。
それではまた次回。

文:曽根麻央 Mao Soné







【LIVE INFO】

2/17 (水) @ Velera, 赤坂
MAO SONÉ [曽根麻央] Trio + Tomoaki Baba [馬場智章]
https://velera.tokyo/

2/24 (水) @ Alfie, 六本木
MAO SONÉ [曽根麻央] Brightness Of The Lives
http://alfie.tokyo/

2/27 (土) @ Studio WUU, 柏
MAO SONÉ [曽根麻央] Trio + Tomoaki Baba [馬場智章]
https://www.wuu.co.jp/

4/23 (金) @ Blue Note Tokyo, 表参道
MAO SONÉ [曽根麻央] Brightness Of The Lives
http://www.bluenote.co.jp/jp/


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【公演名】
MAO SONÉ - Brightness of the Lives - at Blue Note Tokyo

【日時】
2021 4.23 fri.
[1st]Open5:30pm Start6:30pm [2nd]Open8:30pm Start9:15pm
※2ndショウのみインターネット配信(有料)実施予定
※アーカイブ配信視聴期間:4.26 mon. 11:59pmまで
※アーカイブ配信の内容はライヴ配信と異なる場合がございます。
予めご了承ください。
※当初の開催日程(2021 1.21 thu.)から変更となっております。

【メンバー】
曽根麻央(トランペット、ピアノ、キーボード)
井上銘(ギター)
山本連(ベース)
木村紘(ドラムス)

★公演内容に関するお問い合わせ
ブルーノート東京 TEL:03-5485-0088

▼URL
http://www.bluenote.co.jp/jp/artists/mao-sone



Recommend Disc

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Title : 『Ben And "Sweets"』
Artist : Ben Webster & "Sweets" Edison
LABEL : Columbia
NO : CS 8691
発売年 : 1962年



アマゾン詳細ページへ


【SONG LIST】

01. Better Go
02. How Long Has This Been Going On
03. Kitty
04. My Romance
05. Did You Call Her Today
06. Embraceable You




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Reviewer information

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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

曽根麻央Official Site

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