台湾を代表するサックス奏者・謝明諺(シェ・ミンイェン)と日本のフリージャズ界を牽引してきた山崎比呂志、大友良英、須川崇志の4名によるライブアルバム『Punctum Visus -視角-』が7月2日にリリース。2024年6月に都内で行われたセッションをそのままパッケージ。即興の極限、激しくも繊細なインタープレイを聴くことができる作品です。
日本のミュージシャンと長きに渡り交流を続ける謝明諺。彼ならではの視点でインタビューにお答えいただきました。
■東京のジャズシーンの印象についてきかせてください。
【謝明諺】
東京のジャズスポットの多さ、そしてミュージシャンの数やスタイルもそれぞれ。違う世代でも共通点を持つ人たちがいる事がとても印象深いです。それぞれのスタイルは異なっていてもコミュニケーションを取り合うところが素晴らしいと思います。
また、オーディエンスも積極的にミュージシャンとコミュニケーションをとっています。これは、他の都市ではあまり見られないシーンです。観客とミュージシャンの交流が多いところも印象的です。
■東京はジャズスポットが多いと思います。お気に入りの場所があれば教えてください。
【謝明諺】
一つめは、新宿PIT INN。自分にとって殿堂的な場であり、聖地のような存在です。いつもここで演奏する機会を楽しみにしています。
二つめは、荻窪Velvet sun。東京に来るたびにライブをしています。スタッフさんも共演ミュージシャンも素晴らしくて、まるで自分のリビングルームで演奏しているような雰囲気がとても好きです。
三つめは、稲毛Jazz Spot Candy。民家の一階にあって、アットホームな雰囲気があります。オーディエンスも耳が肥えていて、お店の機材も充実していています。都心から離れていても、わざわざ足を運ぶ価値のある音楽愛のある場所だと感じます。
■初めて日本で演奏したのが2013年。日本での演奏を重ねる中で、特に印象に残ったミュージシャンを教えてください。
【謝明諺】
当時一番影響を受けたのは、ドラマーの豊住芳三郎(とよずみ よしさぶろう)さんです。
初めて日本に来る前に台湾で出会ったフリージャズの名手です。ドラムというメロディのない楽器にも関わらず、彼の音がもたらすパワー、深さ、ユニークさ、など、無限大の可能性を教えてくれた方です。
一緒に台湾でレコーディングした事もあり、その際にご自身の経験やアドバイスなど、様々なお話を伺えました。とても良い経験をさせていただきました。
■7/2に発売されたアルバム『Punctum Visus -視角-』について。
メンバーは山崎比呂志(drums)、大友良英(guitar)、須川崇志(bass)。日本のフリージャズやノイズシーンで知られる方々です。彼らの印象について教えてください。
【謝明諺】
ギターの大友さんは、2019年の新宿PIT INNでの大友良英スペシャル・ビッグバンドを観に行くなど、長らくファンだったのですが、2023年12月の来日時にピアノの遠藤ふみさん、ベースの千葉広樹さんと共に初めて共演をしました。今回のライブ録音は2度目の共演です。懐の広い方で、周りのミュージシャンをサポートする姿にも感心しています。
ベースの須川さんは、2015年の台湾のジャズフェスで一度お会いしていて、その時の演奏がとても印象深かったです。彼の精神的な部分からなる音の深さに感動しています。
ドラムの山崎さんは、以前からレジェンドとして存じていました。今まで聴いたことのないような音に驚愕し、感動しました。音楽に没入する姿も魅力的で、自分を導いてくれているようでした。彼もオープンマインドな方で、年齢の離れた自分とのライブも歓迎してくれました。嬉しかったですね。
■彼らと共演、ライブレコーディングをしてみていかがでしたか?
【謝明諺】
彼らと演奏することに、不安はありませんでした。それは彼らの音のイメージができていたからです。
素晴らしいメンバーの音の中に自分が入ることができ、ミュージシャンとして受け入れていただけたことが、とても嬉しかったです。
■この日の印象的なエピソードありますか?
【謝明諺】
山崎さんが立ってドラムを叩いたり、叫んだりしていました(笑)。立ち位置的に自分からは見えなかったのですが、その音からエネルギーや情熱が伝わってきて、それを受けて自分の演奏にも変化がありました。そんな循環が何度も起こっていたことが、強く心に残っています。
■ジャズ以外のシーンでも活動していますよね。
シンガーソングライター寺尾紗穂さんとの共演について教えてください。
【謝明諺】
彼女が2024年4月、自身のコンサートで台湾に来た際、現地のミュージシャンとコラボをしたいとの打診があり、主催者を通じてオファーを受けました。その時は数曲をコラボし、次回は東京で共演しましょうと約束をして、2024年12月にサントリーホールでの公演(「しゅー・しゃいん」リリースツアー)に招聘いただきました。
彼女のシンプルなメロディに対し、自分という存在がどういう役割を果たせるのか、あれこれ考えずに自然に音に身を任せられたことが、次の縁に繋がったと思います。音楽のスタイルは異なりますが、何かを伝えたいという芯の部分が共通していたように感じます。それは、彼女の音楽から充分伝わってきました。
■台湾に連れて行きたい日本のミュージシャンはいますか?
【謝明諺】
今年の10月に今回リリースをしたアルバムのミュージシャンと一緒に台湾でライブをする予定ですが、それ以外で考えると...ピアニストの遠藤ふみさん。若い世代の中でとても特別な存在です。それからベーシスト高橋陸さんも素晴らしいと思います。
台湾では、ドラマー石若駿さん、ギター井上銘さん、サックス馬場智章さんなどが日本のジャズミュージシャンとして名前が上がりますが、新しいアーティストの音楽も台湾のジャズファンに聴いていただきたいですね。
■今後やってみたいことがあれば教えてください。
【謝明諺】
様々なジャンルやスタイルのミュージシャンとご一緒したいですね、
ライブも今は東京がメインとなっていますが、もっと日本の様々な場所でライブできたら嬉しいと思っています。
■ありがとうございました!
NEW RELEASE |
![]() Title : 『『Punctum Visus -視角-』 Artist : 謝明諺 山崎比呂志 大友良英 須川崇志 LABEL : Point. RELEASE : 2025年7月2日 【SONG LIST】 01. Punctum Visus #1 02. Punctum Visus #2 03. Punctum Visus #3 04. Punctum Visus #4 05. 視角 #1 06. 視角 #2 07. 視角 #3 08. 視角 #4 09. encore piece *bandcampデジタルアルバムのみ収録 https://www.pointtenten.com/label |
曽根麻央 Monthly Disc Review2025.07_Nat King Cole / George Shearing : Nat King Cole Sings George Shearing Plays:Monthly Disc Review
こんにちは、ピアニスト/トランペッターの曽根麻央です。
いよいよ夏本番。皆さん、いかがお過ごしでしょうか? お出かけや音楽イベントを楽しみにされている方も多いかと思います。私自身も、いくつかのコンサートのディレクションとアレンジを担当しており、連日楽譜と向き合う日々です。素晴らしいアーティストたちと共に準備を進めていますので、いくつかご紹介させてください。
コンサートのお知らせ
7/21 <東京>浅野祥 三味線 "鼓動"
銀座・王子ホール
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2557618
8/1 <大阪> 曽根麻央 meets 三浦一馬 "Latin Tango"
あいおいニッセイ同和損保 ザ・フェニックスホール
https://t.pia.jp/en/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2456312
8/10 <東京>ドリアン・ロロブリジーダ×ビルマン聡平×曽根麻央
Hakuju Hall
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=2516897
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さて今日は2人の偉大なアーティスト、Nat King ColeとGeorge Shearingの共演アルバム
『Nat King Cole Sings/George Shearing Plays』(1962)をご紹介します。
Title : 『Nat King Cole Sings George Shearing Plays』
Artist : Nat King Cole / George Shearing
Nat King Coleといえば、ジャズの歴史に残る弾き語りの名手で、一般的には彼の独特な歌のスタイルで知られていますね。しかしジャズピアノの歴史においても、ジャズピアノの祖のような存在・Earl Hines直径のスタイルをColeは独自に発展させ、後世に多大な影響を与えた人物でもあります。
リズミカルで親しみやすいピアノのプレイ・スタイルの持ち主で、まさに名手です。
そんなKing ColeがGeorge Shearingという同い年のピアニストに伴奏とアレンジをまかせ、自身は歌に専念した作品が今回紹介するアルバムになっています。
Shearingも特徴のあるスタイルで知られています。彼のまるでビッグバンドのサックス・セクションのハーモニーを聴いているかのような、メロディーに対してハーモニーをピタッと合わせてくるスタイルと共に、ヴィブラフォンがピアノのメロディーと同じ音域で、ギターがオクターブ下で奏でる、バンドの一体感が非常に強く、その一体感のあるサウンドで作風が統一されているのが、いわゆるShearingシグネチャー・サウンドです。このアルバムでは、そもそもとてもゴージャスな響きのShearingサウンドにオーケストラが入り、より色彩感を高めています。
King Coleの歌はその濃厚な伴奏の上でさらに存在感を示しています。彼はの魅力はどちらかというと低音ヴォイスにあるのですが、それでもバンドの音を飛び越えてしっかりと我々の耳に届いてきます。アタックの強い音の切り出し方、しかしそれに続くハスキーでメローな声質がたまらなく、今だに世界中から愛されるキャラクターですね。
「September Song」のイントロ出だしからShearingサウンドが前回で、それに呼応するようにストリングスが絡んできます。そしてKing Coleが低音から歌い出すとスピーカーが震えるのがわかります。Shearingのサウンドとストリングスの伴奏のバランスもとてもよく、名演と言えるトラックです。
それに続く「Pick Yourself Up」はJerome Kernがフレッド・アステアのミュージカル映画『Swing Time』に書いた曲です。この映画では他に「The Way You Look Tonight」など他多数の名曲が披露されています。各セクション転調に転調を重ねるコミカルな曲で聴いていて楽しくなります。
続く「I Got It Bad (And That Ain't Good)」「Let There Be Love」はKing Coleの最も有名なヒットソングと言っていいでしょう。「Let There Be Love」でスウィンギーなピアノソロも楽しめる一曲になっています。
ここまで聴いて、おそらくこのアルバムのアレンジの素晴らしさに気付いた方は多いのではないでしょうか?クレジットを見るとShearingがアレンジャーとして書いてありますので、おそらくほとんどの曲は彼が大まかの方針とリズムセクションのアレンジを決めていて、もう一人のアレンジャーで指揮者のRalph Carmichaelがその上でオーケストラのアレンジを担ったのではないかと推測されます。
メンションし忘れましたが、Shearingは全盲のピアニストとして知られています。彼の聞こえているアイディアをメンバーやチームと共有して一つの作品を作る工程は、僕らの想像の範囲を超える努力があったのではないかと思います。そしてShearingのとんでもない記憶力にも圧倒されます。
「Azure-Te」は独特な不協和音が特徴的な曲で、これもShearingサウンドの良さを最大限引き出した曲になっています。
「Fly Me To The Moon」はみんながよく知るメロディーの前にあるverseという前奏部分がとても美しいのですが、このアルバムでもKing Coleが素晴らしい歌唱でverseから歌い上げてくれています。verseはDb、メロディーはBbという不思議なアレンジになっていますが、シームレスに転調して曲の雰囲気を変えていくアレンジ・テクニックも素晴らしいです。
ジャズ・ヴォーカル、そしてアンサンブル・アレンジの完成形とも言える名盤。ぜひこの夏、ゆったりとした時間の中でじっくりと味わってみてください。
文:曽根麻央 Mao Soné
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・2020.04『Motherland / Danilo Perez』・2020.05『Color Of Soil /タイガー大越』・2020.06『Passages / Tom Harrell 』・2020.07『Inventions And Dimensions / Herbie Hancock』・2020.08『Birth Of The Cool / Miles Davis』・2020.09『Chet Baker Sings / Chet Baker』・2020.10『SFJAZZ Collective2 / SFJAZZ Collective』・2020.11『Money Jungle: Provocative In Blue / Terri Lyne Carrington』・2020.12『Three Suites / Duke Ellington』・2021.01『Into The Blue / Nicholas Payton』・2021.02『Ben And "Sweets" / Ben Webster & "Sweets" Edison』・2021.03『Relaxin' With The MilesDavis Quintet / The Miles Davis Quintet 』・2021.04『Something More / Buster Williams』・2021.05『Booker Little / Booker Little』・2021.06『Charms Of The Night Sky / Dave Douglas』・2021.07『Play The Blues / Ray Bryant Trio』・2021.08『The Sidewinder / Lee Morgan』・2021.09『Esta Plena / Miguel Zenón』・2021.10『Hub-Tones / Freddie Hubbard』・2021.11『Concert By The Sea / Erroll Garner』・2021.12『D・N・A Live In Tokyo / 日野皓正』・2022.1『The Tony Bennett Bill Evans Album / Tony Bennett / Bill Evans』・2022.2『Quiet Kenny / Kenny Dorham』・2022.3『Take Five / Dave Brubeck』・2022.4『Old And New Dreams / Old And New Dreams』・2022.5『Ella Fitzgerald And Louis Armstrong / Ella And Louis』・2022.6『Live from Miami / Nu Deco Ensemble & Aaron Parks』・2022.7『Oscar Peterson Trio + One / Oscar Peterson Trio Clark Terry』・2022.8『Ugetsu/ Art Blakey & The Jazz Messengers』・2022.9『Sun Goddess / Ramsey Lewis』・2022.10『Emergence / Roy Hargrove Big Band』・2022.11『Speak No Evil / Wayne Shorter』 ・2022.12『The Revival / Cory Henry』・2023.1『Complete Communion / Don Cherry』・2023.2『Your Mother Should Know: Brad Mehldau Plays The Beatles / Brad Mehldau』・2023.3『Without a Net / Wayne Shorter』・2023.4『LADY IN LOVE / 中本マリ』・2023.5『Songs Of New York / Mel Torme』・2023.6『Covers / James Blake』・2023.7『Siembra / Willie Colón & Rubén Blades』・2023.8『Undercover Live at the Village Vanguard / Kurt Rosenwinkel』・2023.09『Toshiko Mariano Quartet / Toshiko Mariano Quartet』・2023.10『MAINS / J3PO』・2023.11『Knower Forever / Knower』・2023.12『Ella Wishes You A Swinging Christmas / Ella Fitzgerald』・2024.01『Silence / Charlie Haden with Chet Baker, Enrico Pieranunzi, Billy Higgins』・2024.02『Rhapsody in Blue Reimagined / Lara Downes』・2024.03『Djesse Vol. 4 / Jacob Collier』・2024.04『Voyager / Moonchild』2024.05『Evidence with Don Cherry / Steve Lacy』・2024.06『Quietude / Eliane Elias』2024.07『Alone Together / Lee Konitz, Brad Mehldau, Charlie Haden』2024.08『The Rough Dancer And The Cyclical Night (Tango Apasionado) / Astor Piazzolla』2024.09『Potro De Rabia Y Miel / Camarón De La Isla』2024.10『Calle 54 / Various』・2024.11『Trumpets Of Michel-ange / Ibrahim Maalouf』・2024.12『Sings for Only the Lonely / Frank Sinatra』・2025.01『Hero Worship / Hal Crook』・2025.02『Undercurrent / Kenny Drew』・2025.03『Live In Toronto 1952 / Lennie Tristano Quintet』・2025.04『Antidote / Chick Corea & The Spanish Heart Band』・2025.05『Hot Five & Hot Seven / Louis Armstrong』・2025.06『Panamonk / Danilo Pérez』
Reviewer information |
![]() 曽根麻央 Mao Soné 曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。 |
Masabumi Kikuchi 10th Memorial Concert 2025.7.5 SAT&7.6 SUN@BAROOM:ライブ情報 / LIVE INFO
2015年7月に亡くなられたジャズピアニスト、菊地雅章さん(Pooさん)の音楽的な功績を讃え偲ぶイベントが命日である7/5と7/6の2日間に渡り開催されます。
企画したのはPooさんのNYの自宅に通い交流を深め、多大なる影響を受けたベーシスト、須川崇志。
日本を代表する錚々たるジャズミュージシャン総勢10名以上が出演します。
また演奏はもちろん、手書きの譜面、貴重な写真、未発表音源や映像(ピアノ・ソロ、ゲイリー・ピーコックとのDuo、晩年のトリオでのリハーサル映像など)を、菊地あびさん監修の元、大公開する予定です。
会場は南青山のBAROOM(バルーム)。
音響にこだわった円形シアターで至近距離でライブを体験できます。
そしてライブ配信も決定しました。
この貴重な機会をお見逃しなく。
■Masabumi Kikuchi 10th Memorial Concert■
【日時】
2025.7.5 SAT
OPEN 17:00|START 18:00
2025.7.6 SUN
OPEN 16:00|START 17:00
※両日とも開場/開演時間が異なりますのでご注意ください
【出演】
Banksia Trio
須川崇志 (bass)
林正樹 (piano, 7/6のみ)
石若駿 (drums)
峰厚介 (tenor sax)
渋谷毅 (piano, 7/5のみ)
遠藤ふみ (piano, 7/5のみ)
大友良英 (guitar, 7/5のみ)
鈴木良雄 (bass, 7/6のみ)
杉本智和 (bass)
菊地雅晃 (bass)
本田珠也 (drums)
村上寛 (drums)
定村史朗 (violin)
※各日で出演者が異なります。タイムテーブルは後日発表いたします。
※都合により出演者が変更になる場合がございます。予めご了承ください。
【場所】
BAROOM | バルーム
https://baroom.tokyo/
東京都港区南青山6-10-12 1F
◎六本木通り南青山七丁目交差点角
・「表参道」B1,B3出口より 徒歩約10分
・「渋谷」東口/都バス01系統「新橋」行き青山学院中等部前バス停下車 徒歩約3分
【TICKET】
・1日券│1 Day Ticket
前売 ¥8,800 │ 当日 ¥9,900
・2日通し券│2 Day Ticket
前売 ¥16,500
※全席指定 / 1ドリンク別
※「2日通し券」は限定30枚および前売のみの販売です
ご予約&詳細はこちら(BAROOM)
協力::菊地あび, マーク・ラパポート, 上原基章, 原雅明
企画:須川崇志
共催:須川崇志 / 株式会社フェイス
My First Jazz Vol.87-守屋純子:My First Jazz
Title : 『Basie-Straight Ahead』
Artist : Count Basie
皆さまこんにちは。ジャズピアニストの守屋純子です。
私がジャズに出会ったきっかけは、高校3年生の時に四ツ谷のジャズ喫茶「いーぐる」に勤めている女性にたまたま出会って、彼女にいーぐるに連れて行ってもらった事がきっかけです。
その彼女が「守屋さん、早稲田大学に入学するのであれば、絶対にジャズをやったほうがいいよ。」と言ってくれました。それで早稲田大学では、名門ビッグバンド、ハイ・ソサエティ・オーケストラに所属しました。このハイ・ソサエティ・オーケストラで初めて演奏したジャズの曲が『Basie-Straight Ahead』の中の「The Queen Bee」だったんですね。
1968年発表の『Basie-Straight Ahead』は、Count Basie と Sammy Nestico が初めて組んだアルバムで、これはもう学生バンドにとってはバイブルと言われているアルバムです。私も学生時代、このアルバムのほとんどの曲を演奏しました。
「The Queen Bee」の優雅さ、「Magic Flea」の爽快さ、「Fun Time」のあたたかさ、「Lonely Street」の美しさなど、ジャズ、ビッグバンドの楽しさと魅力のすべてがぎゅっと凝縮されて詰まっているアルバムだと思います。
私は6/25に守屋純子オーケストラ、7枚目のCD『Moving Onward』を発表します。
こうやって未だにビッグバンドを続けているのもこのアルバムが原点になっているのではないかと思います。
このアルバムを全て作編曲している Sammy Nestico は、たった一度だけ、しかも旭川にだけ来日したことがあります。
私はとても幸運なことにその数日間、彼と行動することが出来ました。
その時、彼の書く作編曲そのものの、謙虚で優しく、思いやりがあり、温かい人柄に触れて
"良いメロディを書くためには、良い人間にならなければならない" ということを強く悟りました。
守屋純子

ジャズの分野で最も権威のある米国セロニアス・モンク・コンペティション作曲部門で優勝を果たすなど、輝かしい実績を持つピアニスト/作・編曲家の守屋純子。
今年で結成27周年を迎える日本ジャズ界屈指のアンサンブル、守屋純子オーケストラが新作『Moving Onward』をリリース!
7曲のオリジナルと、定番スタンダード「Moon River」「Embraceable You」、クラシックに題材をとった「Golliwog's Cakewalk」から成る、バラエティーに富んだ11曲を収録。
Michel Petruccianiに捧げた「Michel」、"令和のThe Sidewinder"とも言える「Soulful,Mr.Morgan」、三浦按針の人生をジャズで描写した「Anjin,the Pilot」と、"tribute" をテーマとした意欲的な作品です。
守屋純子オーケストラ Moving Onward Release Live at COTTON CLUB
2025 6.25 wed.
[1st.show] open 4:00pm / start 5:00pm
[2nd.show] open 7:00pm / start 8:00pm
https://www.cottonclubjapan.co.jp/jp/sp/artists/junko-moriya-orchestra/
【守屋純子】 ピアニスト、作・編曲家
早稲田大学ハイソサエティーオーケストラでジャズを始め、ニューヨークのマンハッタン音楽院修士課程修了。アメリカ・ヨーロッパ各地で演奏活動を行う。
2000年より、"守屋純子オーケストラ"が芸術文化振興基金の助成対象事業となり、毎年定期公演を行っている。2004年、自己のカルテットでインド公演。
2005年に CD"Points Of Departure"が、第18回ミュージック・ペンクラブ賞を受賞する。同年9月、ジャズでは最も権威のあるセロニアス・モンク・コンペティション作曲部門で、東洋人としてまた女性として初優勝の栄誉に輝き、ワシントンのケネディーセンターでの授賞式に招聘されて受賞曲を演奏し、日米で話題を呼ぶ。
2008年 9月、米"モンタレージャズフェスティバル"に自己のカルテットで出演、その後、サンフランシスコ・ロサンゼルスでも公演を行う。2008・09年フランス・ツアー。2014-16年、毎年オーストラリア・パースにてビッグバンド指導。2014年より2019年まで、7回にわたり、ロシア・サンクトペテルブルク、ウラジオストクで公演。
これまでに9枚のリーダーCD(内6枚はビッグバンド作品)を発表。2018年7月、安土桃山時代の画伯<長谷川等伯>を題材としたジャズ組曲を収録した最新ビッグバンド作<Art In Motion>を発表する。
教育活動にも熱心で、 "山野ビッグバンドコンテスト""浅草ジャズコンテスト""ヤマハエレクトーンコンクール"等の審査員や、全国の小中高生のためのビッグバンドの指導、講演なども行なっている。2013年以降は、米国・モンタレー、オーストラリア・パースなど、海外でも学生を指導している。昭和音楽大学・尚美学園大学非常勤講師。早稲田大学エクステンションセンター講師。
守屋純子オフィシャル・サイト
【KKBOX Podcast「My First Jazz」】
JJazz.Netとの連動によるオリジナルコンテンツ。
ジャズ・ミュージシャン本人の音声コメントをお届けしています。
KKBOX Podcast
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500以上のメジャー・ローカル音楽レーベル様や権利者様と提携し、9,000万曲の楽曲を配信。
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2022年より日本でも音声コンテンツ/ポッドキャストの提供がスタート!
曽根麻央 Monthly Disc Review2025.06_Danilo Pérez : Panamonk :Monthly Disc Review
Title : 『Panamonk』
Artist : Danilo Pérez
こんにちは、曽根麻央です。今回は、1996年にインパルス・レーベルからリリースされたアルバム『Panamonk』をご紹介します。
このアルバムは、パナマ出身のピアニスト、ダニーロ・ペレスが、セロニアス・モンクの楽曲を中心に、ラテン音楽のテイストを織り交ぜながらソロを展開しているのが特徴です。
ダニーロ・ペレスというと、Wayne Shorter Quartetでの演奏が有名ですが、『Panamonk』はそれ以前、1996年の作品です。彼は当時、トランペッターのディジー・ガレスピー(ビバップやラテンジャズの確立者の一人)のバンドに参加したほか、トム・ハレル、ジョー・ロヴァーノ、そしてジャズドラムの神様的存在ロイ・ヘインズのバンドなどでも演奏し、トッププレイヤーたちから高く信頼されていた存在でした。
中でも、ガレスピーから受けた影響は非常に大きかったようで、ペレス自身が「自分のルーツをもっと勉強しなさい」(実際はもっとキツい言い回しだったそうですが...笑)と叱咤されたというエピソードを話してくれたことがあります。そうした葛藤や模索の末に生まれたのが、この『Panamonk』。ジャズという自分が追い求めてきた音楽と、自身のルーツの融合を目指したアルバムだと言えるでしょう。
メンバー
Danilo Pérez - Piano
Avishai Cohen - Bass
Terri Lyne Carrington または Jeff "Tain" Watts - Drums
※どの曲でCarringtonかWattsが演奏しているかはCDクレジットにも明記されていないため、スタイルからの推測になります。
アルバムは、ペレスによるピアノソロ「Monk's Mood (Take 1)」で幕を開け、すぐにオリジナル曲「PanaMonk」が始まります。これは当時のレギュラー・トリオ(Cohen & Watts)による演奏と考えられます。Wattsならではの、付点4分音符を一拍と捉えたようなライド・シンバルの演奏が聴けます。これはWynton Marsalisのカルテットでも見られた彼の象徴的なスタイルで、それを前提にペレスが書いた曲なのではないかと推測できます。
「Bright Mississippi」はモンク作曲の楽曲ですが、ここではキューバの舞曲 Danzón のリズムで演奏されます。フレーズが常に4拍目から始まるのが特徴で、これも非常に面白いアレンジです。こちらはCarringtonがドラムを担当していると考えられます。
「Think of One」もモンクの楽曲で、ここでは5拍子の2-3クラーベを用いたアレンジになっています。この変拍子クラーベはペレスが提唱したコンセプトの一つで、後のラテンジャズに大きな影響を与えました。Carrington本人がこのトラックは自分の演奏だと言っていたのを直接本人から聞いたことがあります。
その後には、ペレスのオリジナル・バラード「Mercedes' Mood」や、ファンク調の「Hot Bean Strut」が続きます。さらに、モンクのバラード「Reflections」が6/8拍子のアフロ調でアレンジされるなど、創意に満ちた展開が続きます。
「September in Rio」ではスペイン出身のシンガー、Olga Románが参加。複雑なラインを含みつつも美しい流れをもった、ペレスらしい楽曲です。
その後は、スタンダード「Everything Happens to Me」のラテンアレンジ、そしてモンクの名曲「'Round Midnight」が続きます。
11曲目では、モンクの「Evidence」と「Four in One」という2曲を左右の手で同時に演奏するという大胆な試みがなされており、モンク楽曲に対するペレスのユニークな解釈力が光っています。このトラックのドラムは、間違いなくWattsでしょう。
そして最後に、「Monk's Mood (Take 2)」が短く演奏され、アルバムは静かに幕を閉じます。
アルバム全体としては聴きやすく、ジャズ好きには非常に刺さる内容だと思います。音楽的には相当に攻めたアレンジも多いのですが、それでも音楽が崩壊することなく、しっかりとジャズの楽しさを伝えてくれる作品です。
ぜひ一度聴いてみてください。
文:曽根麻央 Mao Soné
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・2020.04『Motherland / Danilo Perez』・2020.05『Color Of Soil /タイガー大越』・2020.06『Passages / Tom Harrell 』・2020.07『Inventions And Dimensions / Herbie Hancock』・2020.08『Birth Of The Cool / Miles Davis』・2020.09『Chet Baker Sings / Chet Baker』・2020.10『SFJAZZ Collective2 / SFJAZZ Collective』・2020.11『Money Jungle: Provocative In Blue / Terri Lyne Carrington』・2020.12『Three Suites / Duke Ellington』・2021.01『Into The Blue / Nicholas Payton』・2021.02『Ben And "Sweets" / Ben Webster & "Sweets" Edison』・2021.03『Relaxin' With The MilesDavis Quintet / The Miles Davis Quintet 』・2021.04『Something More / Buster Williams』・2021.05『Booker Little / Booker Little』・2021.06『Charms Of The Night Sky / Dave Douglas』・2021.07『Play The Blues / Ray Bryant Trio』・2021.08『The Sidewinder / Lee Morgan』・2021.09『Esta Plena / Miguel Zenón』・2021.10『Hub-Tones / Freddie Hubbard』・2021.11『Concert By The Sea / Erroll Garner』・2021.12『D・N・A Live In Tokyo / 日野皓正』・2022.1『The Tony Bennett Bill Evans Album / Tony Bennett / Bill Evans』・2022.2『Quiet Kenny / Kenny Dorham』・2022.3『Take Five / Dave Brubeck』・2022.4『Old And New Dreams / Old And New Dreams』・2022.5『Ella Fitzgerald And Louis Armstrong / Ella And Louis』・2022.6『Live from Miami / Nu Deco Ensemble & Aaron Parks』・2022.7『Oscar Peterson Trio + One / Oscar Peterson Trio Clark Terry』・2022.8『Ugetsu/ Art Blakey & The Jazz Messengers』・2022.9『Sun Goddess / Ramsey Lewis』・2022.10『Emergence / Roy Hargrove Big Band』・2022.11『Speak No Evil / Wayne Shorter』 ・2022.12『The Revival / Cory Henry』・2023.1『Complete Communion / Don Cherry』・2023.2『Your Mother Should Know: Brad Mehldau Plays The Beatles / Brad Mehldau』・2023.3『Without a Net / Wayne Shorter』・2023.4『LADY IN LOVE / 中本マリ』・2023.5『Songs Of New York / Mel Torme』・2023.6『Covers / James Blake』・2023.7『Siembra / Willie Colón & Rubén Blades』・2023.8『Undercover Live at the Village Vanguard / Kurt Rosenwinkel』・2023.09『Toshiko Mariano Quartet / Toshiko Mariano Quartet』・2023.10『MAINS / J3PO』・2023.11『Knower Forever / Knower』・2023.12『Ella Wishes You A Swinging Christmas / Ella Fitzgerald』・2024.01『Silence / Charlie Haden with Chet Baker, Enrico Pieranunzi, Billy Higgins』・2024.02『Rhapsody in Blue Reimagined / Lara Downes』・2024.03『Djesse Vol. 4 / Jacob Collier』・2024.04『Voyager / Moonchild』2024.05『Evidence with Don Cherry / Steve Lacy』・2024.06『Quietude / Eliane Elias』2024.07『Alone Together / Lee Konitz, Brad Mehldau, Charlie Haden』2024.08『The Rough Dancer And The Cyclical Night (Tango Apasionado) / Astor Piazzolla』2024.09『Potro De Rabia Y Miel / Camarón De La Isla』2024.10『Calle 54 / Various』・2024.11『Trumpets Of Michel-ange / Ibrahim Maalouf』・2024.12『Sings for Only the Lonely / Frank Sinatra』・2025.01『Hero Worship / Hal Crook』・2025.02『Undercurrent / Kenny Drew』・2025.03『Live In Toronto 1952 / Lennie Tristano Quintet』2025.04『Antidote / Chick Corea & The Spanish Heart Band』2025.05『Hot Five & Hot Seven / Louis Armstrong』
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![]() 曽根麻央 Mao Soné 曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。 |
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