Miles Davis - trumpet
John Coltrane - tenor saxophone
Red Garland - piano
Paul Chambers - bass
Philly Joe Jones - drums
マイルス・デイヴィスの1955-59年まで続いた、"The First Great Quintet"と呼ばれることがあるクインテットです。元々はカフェ・ボヘミアという歴史的なジャズクラブで演奏するために結成されたクインテットで、結成された当時はソニー・ロリンズがサックスを担当していました。しかしロリンズがヘロイン中毒からの克服に時間がかかるため、ジョン・コルトレーンが抜擢され、有名なクインテットへとなりました。のちにキャノンボール・アダレイを迎えての3菅編成のセクステットへと変貌していきます。
『Relaxin'』の"If I Were A Bell"のマイルスのソロでは主に、ソン・クラーベとニューオリンズ・クラーベからフレーズが組み立てられています 。"If I Were A Bell"のソロのフレーズがクラーベを中心に組み立てられていることがわかるデモを用意してみましたので、以下のビデオを見てください。
またこの"If I Were A Bell"のレッド・ガーランドのソロがとても良いので注目してみてください。そして、ガーランドの後ろでベースを弾くポール・チェンバースもとってもスウィングしています。マイルスに「ポール・チェンバースはなんでも弾ける」と言わせたベーシストの技を聴くことができます。ちなみにこの逸話は以前のJJazz.Netの記事に書きましたのでぜひ読んでみてください (曽根麻央 Monthly Disc Review2020.7)。
ちなみにこの一曲目の"If I Were A Bell"はマイルスが'I'll play then tell you what it is later'と「演奏した後になんの曲か教えるよ」といったエンジニアとのやりとりまで収録されています。こういう生のやりとりを少しだけ覗くことができるのも本アルバムの魅力の一つです。
さてここからは1曲ずつ聴いていきましょう。
02. Your're My Everything
こちらも30秒ほどスタジオ内のやりとりが聞こえてきます。そしてレッド・ガーランド特有の左手で和音、右手でメロディーをオクターブで演奏する奏法でイントロが奏でられ曲が始まります。同じくトランペッターのフレディー・ハバードはこの曲を軽快なスウィングのリズムで、Cのキーで演奏していますが、こちらは落ち着いたバラードでBbのキーで演奏されています。
03. I Could Write A Book
早いスウィングのアレンジで演奏されています。レッド・ガーランドは一貫して自分のコンピング(伴奏)のスタイルを持っています。基本的に1小節に2つ和音が入ります。小節の4拍目の裏と、2拍目の裏に軽快にリズムと和音を刻んでいます。レッド・ガーランドはそもそもとても優秀なボクサーだったのですが、まるでジャブを打っているかのようなコンピングです。その上で右手は自由に転がってフレーズを操ります。
05. It Could Happen To You
有名なスタンダード曲。こちらのマイルス・デイヴィスのソロも見事に2-3クラーベに当てはまっているのがお分かりになると思います。リズムセクションのスウィングのグルーブもどちらかというとニューオリンズ・クラーベに影響を受けたin 2のスウィングで統一されています。In 2とはベースが2分音符で1小節に2つしか音を弾かない時のスウィングの呼び方です。通常はwalking bass と言って1小節に4つ音を鳴らし、グルーブを作ります。それはIn 4のスウィングとも言います。
06. Woody'n You
トランペッター、ディジー・ガレスピーの曲です。このアルバムで唯一コルトレーンとマイルスが同時にメロディーを吹いていますね。2管編成のアルバムでここまで一緒にメロディーを吹かないアルバムは珍しいですが、マイルスっぽいと言えるでしょう。そして唯一マイルスのオープンサウンド(ミュートをしてない状態)が聴けます。素晴らしいオープンサウンドはまるでバンドの音を貫いて一つの筋で通しているかのようです。マイルスのハイノートも聴けて、少しディジーの影響が聴こえてきますが、それを自分のスタイルでやってのけるところもマイルスの魅力でしょう。
このアルバムで唯一のフィリー・ジョー・ジョーンズのドラムソロも聴けます。ドラムソロ明けの第二メロディーのバンドの一体感も素晴らしいですね。
Title : 『Ella And Basie!』
Artist : Ella Fitzgerald / Count Basie
LABEL : Verve Records
発売年 : 1963年
【SONG LIST】
01.Honeysuckle Rose
02.'Deed I Do
03.Into Each Life Some Rain Must Fall
04.Them There Eyes
05.Dream A Little Dream Of Me
06.Tea For Two
07.Satin Doll
08.I'm Beginning To See The Light
09.Shiny Stockings
10.My Last Affair
11.Ain't Misbehavin'
12.On The Sunny Side Of The Street
Title : 『Ben And "Sweets"』
Artist : Ben Webster & "Sweets" Edison
【スウィングのコンピング】
みなさんこんにちは、曽根麻央です。
今日はBen WebsterとHarry "Sweets" Edison の2フロントのアルバム、Ben and "Sweets"について解説していきます。このアルバムではBen WebsterとHarry Edisonのいわゆるジャズのテナー&トランペットの王道サウンドを楽しむことができます。2人のイントネーション、強弱、アーティキュレーションの付け方など、細かい表現の一致が美しいアンサンブルを作り上げています。
さらにそれだけではなく、今回はHank Jonesのコンピングにも視点を当ててみましょう。コンピングとは、ジャズにおけるピアノやギターの伴奏の事で、リズムとハーモニーの掛け渡しを担う大切な要素です。特に5曲目のDid You Call Her TodayはHank Jonesのコンピングも光り、ジャズ史上最もスウィングしているテイクの一つではないかなと考えています。是非一緒に楽しんでいきましょう。
George Duvivier (1920-1985) はサイドメンとしてかなり活躍していたベーシストな様です。クラシカル・ヴァイオリンでキャリアをスタートして、the Central Manhattan Symphony Orchestraのアシスタント・コンサートマスターを16歳で務めた人物。NYU(ニューヨークユニバーシティ)でベースを始めて、Coleman HawkinsやLena Horne、Count Basie、Frank Sinatra、Bud Powell、Benny Goodmanなど幅広い音楽性を持つアーティスト達のサイドメンを務めた人物だそうです。
Clarence Johnson (1924-2018)もドラマーとしてJames Moodyの信頼を得て活動していた様です。Sonny Stittのアルバムにも多く参加しています。本アルバムでは、グルーヴに集中していて手数を多くを叩く事はないが、それによって生み出されるステディーなテンポが、このアルバムを強力なものとしています。
ここからはジャズファンならよく知る3人を、確認を兼ねて紹介します。
Hank Jones (1918-2010) は皆さんもよく知るジャズの歴史を代表するピアニスト。強力なタッチとリズムを奏でるピアノですが、そのサウンドは優しさに包まれていて、聴衆の心を癒してくれる存在だと思っています。Earl Hines, Fats Waller, Teddy Wilson, Art Tatumなどの最古のジャズピアノの影響を直に受けつつ、Hank Jones独自のサウンドを創りあげました。未だに彼のジャズピアノへ影響は絶大です。弟にはトランペッターのThad JonesとドラマーのElvin Jonesがいます。このアルバムでは彼の持つ強力なリズムとタッチから成る、これぞ至上のスウィング・コンピングを聴くことが出来ます。ピアニストの皆さんは必聴です。
Ben Webster (1909-1973) はColeman Hawkins, Lester Youngと同じく、ジャズサックスの歴史において最も重要な初期を代表する奏者で、その後の全てのサックス奏者に影響を与えています。Duke Ellington Big BandのAlto奏者Johnny Hodges に影響を受けました。そんなWebsterも40年台のエリントン楽団においてソリストとして活躍しました。とてもリリカルで特徴的なヴィブラート、Hodgesに影響を受けたであろう歌う様に滑らかなサックスプレイは、Websterのシグネチャーですし、いわゆるテナーサックスの在り方と言って良いでしょう。
Harry Sweets Edison (1915-1999) もマイルス以前にミュート・トランペットの音を確立しました。主にNelson RiddleのメンバーとしてFrank Sinatraの多くのアレンジでソロを吹いています。初期のキャリアの30年代にはCount Basieのビッグバンドへ入り活躍。余談ですが当時余りにもモテたために"Sweets"というあだ名がついたそう(笑)。
"Did You Call Her Today
さて、今回メインの話題のコンピンングについて5曲目の"Did You Call Her Today"を聴いていきましょう。