JJazz.Net Blog Title

My First Jazz Vol.43-西山瞳:My First Jazz

Title : 『Now He Sings, Now He Sobs』
Artist : Chick Corea ‎

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「子供の頃からクラシック・ピアノを学んでいて、高校2年で挫折してやめ、ヘヴィメタルを聴くようになり、1年ほどピアノを全く弾いていませんでした。
アルバイトもしていて、ちょっと一瞬金銭的な余裕が出てきたところ、「何かジャズでも聴いてみるか」と思って手に取ったのがこのアルバム。帯に「名盤」と書いていたし、チック・コリアの名前ぐらいは聞いたことがあったからです。

子どもの頃から父親がジャズが好きで、よく家や車でジャズが流れてはいましたが、管楽器主体のもの、マイルスのマラソン・セッションのあたりなどで、あまりピアノの印象がなかったんです。そういうジャズしか知らなかったので、初めて触れるピアノ・トリオに興奮しました。

ピアノのジャズって、こんなに格好良くてソリッドで刺激的なものなのかと。アルバムを通して、とにかく何が起こっているかわからない。そのわからなさが格好良い。そんな感じで、当時の私にとって刺激物でした。

また、同時に買った『Undercurrent』ビル・エバンスで、内省的で繊細で情緒的なジャズに触れ、この2枚がきっかけでピアノに再度取り組むこととなり、現在に至ります。」西山瞳

西山瞳 Official









My First Jazz

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Title : 『Now He Sings, Now He Sobs』
Artist : Chick Corea ‎
LABEL : Solid State Records
発売年 : 1968年



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【SONG LIST】
01.Steps - What Was
02.Matrix
03.Now He Sings - Now He Sobs
04.Now He Beats The Drum - Now He Stops
05.The Law Of Falling And Catching Up





My First Jazz

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Title : 『Undercurrent』
Artist : Bill Evans / Jim Hall
LABEL : Cool Jazz
発売年 : 1962年



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【SONG LIST】
01.My Funny Valentine
02.I Hear A Rhapsody
03.Dream Gypsy
04.Romain
05.Skating In Central Park
06.Darn That Dream


曽根麻央 Monthly Disc Review2021.10_ Freddie Hubbard_Hub-Tones:Monthly Disc Review

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みなさんこんにちは。トランペッットとピアノの曽根麻央です。
今日はトランペットの名手フレディー・ハバードの名演奏が集約されたアルバム『Hub-Tones』をご紹介します。アルバムのタイトルでもあるハブ(ハバードのハブ)の音という言葉の通り、フレディー・ハバードの美しい音色、キレの良いタッチ、そしてユニークなアイディアが収録されていますので、ジャズファンだけでなく金管楽器全般に関わっている方々に聴いてほしい一枚でもあります。


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Title : 『Hub-Tones』
Artist : Freddie Hubbard



【ジャズ・トランペットを勉強するなら絶対に聴いておくべきアルバム】


僕とこのアルバムの出会いは小学5年生の頃。当時トランペットを習っていた原朋直さんに、ジャズ・トランペットを勉強するなら絶対に聴いておくべきアルバムとして教えてもらったのがきっかけでした。大学に入ってからはこのアルバムの中から「You Are My Everything」と「Hub-Tones」のフレディーのソロをしっかりと完コピしました。美しく構成されているソロなので、今でもよく覚えています。

さてメンバーを見ましょう



Freddie Hubbard - trumpet
James Spaulding - alto saxophone, flute
Herbie Hancock - piano
Reggie Workman - bass
Clifford Jarvis - drums




長きに渡ってフレディーと2管編成でアルトを担当したジェームス・スポルディングや、フレディーの1st albumからのドラマー、クリフォード・ジャーヴィスが参加しています。また、まだマイルス・バンドに加入前のハービー・ハンコックの演奏は、伴奏では正確なリズムとハーモニーを繰り出し、ソロでは若々しくも美しいタッチでユニークなソロを聴くことができます。名手レジー・ワークマンの鉄壁のサポートとグルーヴ力もこのアルバムの大事な肝になっています。


01. You're My Everything




フレディーの迫力ある音が開始早々に響き渡り圧倒されます。そしてすぐにその音は「You Are My Everything」のメロディー だと気づきます。このバージョンのコード進行はリハモナイズ(メロディーは変えずにコードだけを変えて、雰囲気を原曲と変えるアレンジの手法)されていますが、今のジャズではこのコード進行の方が耳馴染みがあるかもしれません。ジャムセッションなどでもこの曲を演奏するときはこのアルバムのコード進行を使います。

フレディーのメロディーの吹き方は歌心がありとても心地よいです。ハービーは伴奏の名人ですから、こちらのテーマも美しいハーモニーとキレのあるリズムでサポートしています。たまに出てくるクリフォード・ジャーヴィスのアクセントも他のメンバーと会話しているようで、ベストのスポットにはまっていてとてもグルーヴィーです。フレディーのソロに入ってからはレジー・ワークマンが小刻みなベースラインやポルタメント(左手をスライドさせて音程と音程の間を滑らかに演奏すること)を駆使して音楽を根底から支えています。

フレディーの特徴は濁らないアーティキュレーション、完璧なピッチ、明確なアイディア、キレの良いリズム、低音から高音まで駆使する超絶技巧、そして何より唯一無二の迫力の音色。この曲ではフレディーのそんな魅力を余すことなく聴くことができます。


02. Prophet Jennings
フレディーのトランペットはカップ・ミュート、スポルディングはフルートという独特な2管編成の曲。独特といってもよくあるアレンジの手法ではあるのですが、一味変わった寂しげなサウンドになります。フレディーもテーマ中は優しく、マイク近くで吹くことによって木管楽器のようなまろやかな中音色を聴かせてくれています。

ソロに入った瞬間、ミュート・プレイではありますが、いつものフレディーのエネルギッシュなギアを全開に入れ替えます。このシフトチェンジがたまりません。マイルスミュートプレイとはまた違ったトランペットの魅力があります。

ちなみにフレディーが全編ハーマン・ミュート(マイルスがよく使う)でアルバム全編を構成している、『Topsy - Standard Book』も聴きごたえがありますので、興味のある方はぜひ聴いてみてください。




03. Hub-Tones




フレディーの書いた高速ブルースの曲。テーマの切れ味の良さは絶品ですが、完璧なソロを披露しています。チャーリー・パーカーのフレーズも垣間見ることができます。またソニー・ロリンズのように、何回も同じフレーズを繰り返し高速で演奏することで凄まじいエネルギーを作り出しているような感じもします。フレディー・ハバードのトランペットはテクニック的には木管楽器のフレーズを金管楽器に置き換えている様子もありますので、この曲はまさにその感じが伝わるかと思います。
続くハービーのソロも名演奏と言えるものですのでぜひ注目してください。


04. Lament For Booker
フレディーの書いた美しいバラード曲。作曲家フレディー・ハバードとしての代表曲といって良いでしょう。フレディーと同い年でありながら、このアルバムの前年に亡くなったトランペッター、ブッカー・リトルに捧げた作品です。ブッカー・リトルの作品については以前の記事で書いたので是非読んでみてください。


Monthly Disc Review2021.05_ Booker Little_Booker Little



フルートとトランペットの組み合わせが美しい曲です。フレディーも前の3曲とは打って変わって柔らかいトランペットの音色で歌っています。フレディーのバラードプレイは、徹底して芯があるのに柔らかい音色で演奏されることが多いです。アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズとの「Skylark」もその例です。Bセクションは独特なディミニッシュのハーモニーが物悲しいサウンドを作り上げます。





05. For Spee's Sake
ブルージーなテイストのイントロで始まり、軽快なスウィングへとシフトしていきます。Gbのブルースの曲。Gbは誰にとっても演奏しにくい調なのですが、それを一切感じさせない鉄壁のプレイをフレディーは聞かせてくれます。調性は実は曲の雰囲気を決めるとても大事な要因であるのです。フレディーのGbの 名演は実はもう一曲あり、アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズとレコーディングした「Pensativa」でも素晴らしい演奏をしています。




それではまた次回。


文:曽根麻央 Mao Soné






【曽根麻央LIVE INFO】

曽根麻央のその他情報はウェブサイトへ



Recommend Disc

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Title : 『Hub-Tones』
Artist : Freddie Hubbard
LABEL : Blue Note
発売年 : 1962年



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【SONG LIST】

01. You're My Everything
02. Prophet Jennings
03. Hub-Tones
04. Lament For Booker
05. For Spee's Sake




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「Monthly Disc Review」アーカイブ曽根麻央

2020.04『Motherland / Danilo Perez』2020.05『Color Of Soil / タイガー大越』2020.06『Passages / Tom Harrell 』2020.07『Inventions And Dimensions / Herbie Hancock』2020.08『Birth Of The Cool / Miles Davis』2020.09『Chet Baker Sings / Chet Baker』2020.10『SFJAZZ Collective2 / SFJAZZ Collective』2020.11『Money Jungle: Provocative In Blue / Terri Lyne Carrington』2020.12『Three Suites / Duke Ellington』2021.01『Into The Blue / Nicholas Payton』2021.02『Ben And "Sweets" / Ben Webster & "Sweets" Edison』2021.03『Relaxin' With The Miles Davis Quintet / The Miles Davis Quintet 』2021.04『Something More / Buster Williams』2021.05『Booker Little / Booker Little』2021.06『Charms Of The Night Sky / Dave Douglas』2021.07『Play The Blues / Ray Bryant Trio』2021.08『The Sidewinder / Lee Morgan』2021.09『Esta Plena / Miguel Zenón』




Reviewer information

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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

曽根麻央Official Site

音楽×朗読×失恋。

「失恋」をテーマに音楽と朗読でお届けするライブセッション。

演奏は歌詞の世界観も魅力の大和田慧さん、Michael Kanekoさん、
Ovallでも知られる関口シンゴ with スペシャルゲスト!
ショートストーリーは気鋭の作家、くどうれいんさん、映画監督としても知られる枝優花さん等。
そして、書きおろしのイラストは凪さん。

ちょっぴり切なくて愛おしい、そんな淡い物語を音楽と朗読で綴ります。

限られた席数のプレミアチケットです。この機会お見逃しなく。


スペシャルゲストに、坂本美雨、Hiro-a-key、さらさの出演決定!


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「READING JAZZ - Love Over Time -」

【日時】
2021年11月12日(金)
17:00開場   18:00開演 20:30終演予定


【会場】
渋谷JZ Brat
http://www.jzbrat.com
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・現在、東京都の制限で1グループ4名までとなっております。
・座席は指定席です。
・当日は1ドリンクオーダー制です。
※会場内でのご飲食は当日精算となります。(別途サービス料13%)
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【チケット料金】
¥6,000


【出演】
【LIVE】
・大和田慧
<宮川純(key)/越智俊介 [from CRCK/LCKS] (b)/吉田サトシ(g)伊吹文裕(d)Haruna(cho)>
・Michael Kaneko
・関口シンゴ


【Special Guest】
坂本美雨
Hiro-a-key
さらさ


【朗読】
後日発表


【エッセイ】
『よむ処方箋 01 失恋』、『失恋手帳』、『うたうおばけ / くどうれいん』より


【詳細】
音楽と朗読によるライブセッション。
ジャズやソウルミュージックに影響を受けたミュージシャンが気鋭の作家たちとコラボレーション。
朗読のテーマは「失恋」。失恋は誰もが体験する極めて私的なもの。
そこから何を学び自分とどう向き合っていくのか?
これはコロナ禍におけるこれからの生き方につながると考えます。
ちょっぴり切なくて愛おしい、そんな淡い物語を音楽と朗読で綴ります。
「あの恋は今につながる。そう、終わりははじまり。」


【イラスト】



【協力】
くどうれいん、枝優花、ERIMAKI inc.(襟巻編集室)、書肆侃侃房、「揺れる」編集部、origami PRODUCTIONS


【主催】
MUSIC ODYSSEY


【前売りチケット】
¥6,000
Peatixにて販売中
https://loveovertime.peatix.com


【有料配信チケット】
https://musicodyssey.zaiko.io/_item/343761
¥3,150
ZAIKO
視聴時間 : 2021年11月12日(金) 18:00〜
(アーカイブ配信期間 : 2021.11.19(金) 23:59まで )

My First Jazz Vol.42-広瀬未来:My First Jazz

Title : 『The Atomic Mr. Basie』
Artist : Count Basie

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「甲南中学に入学し先輩たちの素晴らしい演奏に感動、その先輩たちが追求しているカウント・ベイシーの音楽に興味が湧いた。近所のCD屋に唯一あったこの一枚。1曲目の「Kid From Red Bank」から心を鷲掴みにされた。キャッチーなメロディと独特なスイング感の絶妙なバランス。未だにこのアルバムを聞くとジャズを初めて聞いた頃のワクワク感を思い出す。

色々なジャンルの音楽を演奏するが、やはり僕の根底にはこのサウンドがあるような気がします。」
広瀬未来

広瀬未来 Official






My First Jazz

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Title : 『The Atomic Mr. Basie』
Artist : Count Basie ‎
LABEL : Columbia
発売年 : 1958年



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【SONG LIST】
01.The Kid From Red Bank
02.Duet
03.After Supper
04.Flight Of The Foo Birds
05.Double-O
06.Teddy The Toad
07.Whirly-Bird
08.Midnite Blue
09.Splanky
10.Fantail
11.Lil' Darlin'

曽根麻央 Monthly Disc Review2021.09_ Miguel Zenón _Esta Plena:Monthly Disc Review

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みなさんこんにちは、曽根麻央です。僕がミュージシャンの視点からアルバムを解説するこのコーナー、今月はプエルトリコ出身のサックスフォン奏者で作曲家のMiguel Zenonのアルバム『Esta Plena』を紹介します。
 
Miguel Zenonの出身地でもあるプエルトリコのリズム「Plena (プレナ)」の独自のリズムを作品全体に取り入れ、このリズムの可能性を極限まで発展させたアルバムになっています。

本編の前に今月の重要なライブをお知らせいたします。お待ちしております!





【MAO SONÉ TRIO with Strings
丸の内コットンクラブ
2021. 9.23.thu
open 5:30pm / start 6:30pm / close 8:00pm
MEMBER 曽根麻央 (tp,p) 伊藤勇司 (b) 木村紘 (ds) SAYAKA (vln) 山田那央 (vla) 香月圭佑 (vc)
▶︎http://www.cottonclubjapan.co.jp/jp/sp/artists/mao-sone/



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Title : 『Esta Plena』
Artist : Miguel Zenón


【プエルトリコのリズム「Plena (プレナ)」の独自のリズムを取り入れた作品】

沢山のプエルトリコをルーツとするアフロ・プエルトリカン・ミュージックが存在するのですが、大きく2つがとても有名です。

プエルトリコ北部で400年前ほど前から発展してきたアフロ・プエルトリカンの音楽、Bomba。数人のパーカッショニストがコンガより大きめの太鼓を手で叩きダンサーが即興で踊ります。またソロ・パーカッショニストは太鼓をダンサーの動きに合わせて、ダンサーと協力して即興で演奏するのが特徴です。





首都San Juanでは未だに深夜のダンスバーや街中でこのような光景を目にすることが出来ます。私も夜中の3時ごろに友人に連れて行ってもらいました。日本ではとても経験することのできない、リズムがコミュニティーを作る文化ですので、訪れた際には絶対に見ていただきたい。ただ治安の良い地域ではないので安全には気をつけて、なるべく現地の人と一緒に行動することをお勧めします。

Bombaだけでsicá、cuembé、holandé、bámbula 、cocobalé、hoyomulaそしてyubáというリズムの種類があり正直区別がつきにくいのです。私もすべて記憶しているわけではないですが、sicáとholandéは代表的なので現地を訪れる前に覚えておいた方が良いリズムです。


プエルトリコの北部の音楽が野生的なダンスやリズムが中心なのに対し、南部の町、Ponce (ポンセ)の音楽、Plena (プレナ)は歌を中心とするためメロディアスな一面を持ったリズムです。3つの大中小のサイズで作られたパンディエロ(タンバリンのような楽器)と歌、そしてプエルトリコのギロなどで演奏されます。今では主にクリスマス・シーズンのパーティーなどで演奏されます。

一番低いパンディエロが4分音符でベースを刻み、それに呼応するかのように、中小のパンディエロが違うパターンを奏でます。小のパンディエロにも一応パターンはあるのですが、即興的な部分が多く入りますので、演奏するには数多くのレコーディングを聴く必要があります。大中のパンディエロは基本的にはこのパターンです。





私がプエルトリコを訪れた12月にはParranda(パランダ)という行事が盛んに行われていました。お祭りというよりも各家庭で模様されるクリスマス・シーズンのホーム・パーティーのようなもので、あらゆる場所で開催されています。まずミュージシャンが車数十台に乗り込みターゲットの家まで並走させます。深夜の真っ暗闇の住宅街に降りて、突然大音量で演奏を開始します。ターゲットとなった家主は食事や酒を提供しないといけません。これは昔のルールで今ではきちんと約束をして行い、家の電気を消しておいて寝静まった感じを演出しているそうですが、ほぼほぼ毎日早朝まで続きます。ここで演奏されるのが主にプレナの音楽です。とは言っても12時過ぎの夜中の住宅街で大音量で演奏するなんて日本では再現性がないですね(笑)。

ここで演奏されるPlenaのメロディーは地元の人なら誰しも歌え、パンディエロを演奏でき、クラーベを把握して、踊れる音楽です。その歌詞はブルースのようにどんな社会や環境でも希望を持てる歌が多いそうです。

プレナのメロディーの多くはアフリカのチャントやキューバの歌に由来するところも多くありますが、Jíbaro(ヒバロ)と総称される山間部に住んでいたユダヤ系プエルトリコ人の独特な(中東の音楽のような)旋律の影響もたまに見受けられます。

こちらのBAILALAは最も有名なplenaの曲の一つです。





そんなプエルトリコの民族音楽Plenaを取り上げたMiguel Zenonのアルバム『Esta Plena』にはMiguelのレギュラークインテットの他に3人のパンディエロ奏者が参加しています。


さてメンバーを見ましょう



Miguel Zenón - Alto Saxophone, Background Vocals
Luis Perdomo - Piano
Hans Glawischnig - Acoustic Bass
Henry Cole - Drums
Hector "Tito" Matos - Lead Vocals, Percussion (Requinto)
Obanilu Allende - Background Vocals, Percussion (Segundo)
Juan Gutierrez - Background Vocals, Percussion (Seguidor)







01. Villa Palmeras
高速で展開が繰り広げられる一曲。早速3人のパンディエロとドラムでPlenaのリズムから始まり、そのリズムの上で成り立つように作曲されたピアノとベースがベースラインと複雑なハーモニーを奏でます。

Miguel Zenonの譜面の特徴的なところは、ベースにしろピアノにしろ、ほとんどパート譜で全ての音が書かれているところです。私が一緒に演奏する機会をもらった時、彼の新曲の譜面が送られてきて、それはFinaleという譜面作成ソフトで作られた全ての指示が書かれた事細かな譜面と、Finaleで作成されたMidi音源デモ(譜面に書かれたことをそのままプレイバックしてくれる機能がついている)がドラムグルーヴ、そしてフィルイン(即興的な部分)まで打ち込まれて送られて来たことです。彼の繊細で几帳面、完璧主義者の精神性が現れています。譜面に書かれたことは完璧にこなし、その中で自由を見つけるのがMiguelの音楽だと思います。


02. Esta Plena
タイトルソング。Plenaのリズムで歌詞が付いています。まるでトラディショナルの曲を聴いているかのような雰囲気で始まります。すると突然ピアノが意表をつくように9拍子のリズムを奏で始め曲が発展していきます。


03. Oyelo
先の2曲より少し落ち着いた雰囲気の曲。こちらもゆっくりなテンポのPlenaが元になっています。ボーカルのフィーチャー曲。途中で聞けるピアノとサックスのユニゾンも気持ちが良いです。


04. Residencial Llorens Torres
再び高速で展開される一曲。やはりピアノとサックスのユニゾンが素晴らしい。こちらもplenaのリズムが使われています。Miguelのソロが炸裂している一曲でもあります。


05. Pandero Y Pagode
プエルトリコのPlenaと同じくパンディエロを使うPagode(パゴジェ)というブラジリアン・サンバのリズムの一種を見事に融合させたグルーヴで成り立っています。ボーカルをフィーチャーしていて、曲自体もとても美しく、アルバムを通して最もメロディアスな作品です。

ちなみに、プエルトリカン・パンディエロには鈴はついていませんが、ブラジリアン・パンディエロはタンバリンのように周りに鈴がついているという楽器的な違いもあります。


06. Calle Calma
ベースソロから始まり、曲のVampを提示していく。ベースとパーカッションは一定のリズムをキープするが、メロディーはその上をルバートで進行していきます。ベースラインは何種類かあり、ベース譜にはそれぞれ番号が振ってあり、メロディーがその場所へ到達するとベースも次のラインへ移っていくという独特のシステムを使っていてユニークな作曲テクニックです。


07. Villa Coope
ピアノとサックスのルバートから始ますが、3小節のPlenaのパターンで構成されています。通常Plenaは2小節単位ですがこのように変化させることで、古典的な表現に変化を加えていくことができます。


08. Que Sera De Puerto Rico?
再びトラディショナルな雰囲気のメインテーマがボーカルとパーカッションによって奏でられます。それに反抗するようにベースとピアノがモダンな和音やベースラインを弾いています。Miguelのバンドを徹底的にサポートするHenry Coleのドラムソロもあります。


09. Progreso
アルバム唯一のバラード曲。長いピアノソロの後に続き、ベースとサックスがメロディーを奏でるコンテンポラリー・ラージ・アンサンブルのような雰囲気が出ている曲。


10. Despedida
まるでパランダに迷い込んだような「蛍の光」が聞こえてくる。その後こちらもプエルトリコの民謡のようなオリジナルに突入する。これはスペイン語を話す友人から昔聞いただけなので不確かなのですが、この歌詞では同じプエルトリコ出身の有名なサックス奏者David Sanchezをジョークで揶揄う一節がでてくるらしいです。MiguelとDavidは二人ともプエルトリコを代表するサックスプレイヤーで仲も良いので、そういったラテン・ジャズ・ファンへのユーモアでしょう。


それではまた次回。


文:曽根麻央 Mao Soné






【曽根麻央LIVE INFO】

9/15 (水) @ 柏 Nardis
 open 19:00 | start 20:30
 MAO SONÉ Trio w/ 伊藤勇司(b) 木村紘(ds)

9/17 曽根麻央&高橋佳輝
@ 関内アップル

9/19 ユッコミラー バンド
@ 浦部ジャズフェスティバル

9/23 (木・祝) @ 丸の内 Cotton Club
 [1st.show] open 16:00 | start 17:00 
 [2nd.show] open 18:45 | start 19:45
 MAO SONÉ Trio with Strings
 w/ 伊藤勇司(b) 木村紘(ds) SAYAKA (vln) 山田那央 (vla) 香月圭佑 (vc)

9/28 A Tribute To Someone
@ 六本木アルフィー

その他情報はウェブサイトへ



Recommend Disc

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Title : 『Esta Plena』
Artist : Miguel Zenón
LABEL : Marsalis Music
発売年 : 2009年



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【SONG LIST】

01. Villa Palmeras
02. Esta Plena
03. Oyelo
04. Residencial Llorens Torres
05. Pandero y Pagode
06. Calle Calma
07. Villa Coope
08. Qué Será De Puerto Rico?
09. Progreso
10. Despedida




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「Monthly Disc Review」アーカイブ曽根麻央

2020.04『Motherland / Danilo Perez』2020.05『Color Of Soil / タイガー大越』2020.06『Passages / Tom Harrell 』2020.07『Inventions And Dimensions / Herbie Hancock』2020.08『Birth Of The Cool / Miles Davis』2020.09『Chet Baker Sings / Chet Baker』2020.10『SFJAZZ Collective2 / SFJAZZ Collective』2020.11『Money Jungle: Provocative In Blue / Terri Lyne Carrington』2020.12『Three Suites / Duke Ellington』2021.01『Into The Blue / Nicholas Payton』2021.02『Ben And "Sweets" / Ben Webster & "Sweets" Edison』2021.03『Relaxin' With The Miles Davis Quintet / The Miles Davis Quintet 』2021.04『Something More / Buster Williams』2021.05『Booker Little / Booker Little』2021.06『Charms Of The Night Sky / Dave Douglas』2021.07『Play The Blues / Ray Bryant Trio』2021.08『The Sidewinder / Lee Morgan』




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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

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