JJazz.Net Blog Title

My First Jazz Vol.27-西藤ヒロノブ:My First Jazz

Title : 『Bumpin'』
Artist : Wes Montgomery

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「この作品はストリングやオーケストレーションが入りつつもポップで、ウェスが縦横無尽にギターを弾いているんです。ポップに聴かせつつも、ジャズの無駄のない流れるようなフレーズがあり、音楽的にも素晴らしいです。それは僕が目指すところでもあって、兎に角聴いてしまうアルバムですね。

彼はフレットボードに対して低音の方から斜めに弾くんです。きっとホーン奏者やジャズの人を研究していたんでしょうね。」

西藤ヒロノブ

西藤ヒロノブ Official


【Bill Evans & Tony Bennett - Together Again】





My First Jazz

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Title : 『Bumpin'』
Artist : Wes Montgomery
LABEL : Verve Records ‎
発売年 : 1965年



Arranged By, Conductor - Don Sebesky
Bass - Bob Cranshaw
Bongos, Congas - Candido Camero*
Cello - Charles McCracken, George Ricci
Design [Cover] - Michael Malatak
Drums - Grady Tate, Helcio Milito*
Engineer - Rudy Van Gelder
Guitar - Wes Montgomery
Harp - Margaret Ross
Liner Notes - Chuck Taylor (4)
Photography By [Cover] - Charles Stewart*
Piano - Roger Kellaway
Producer - Creed Taylor
Viola - David Schwartz, Harold Coletta
Violin - Arnold Eidus, Gene Orloff, Harry Lookofsky, Jos. Malignaggi*, Julius Held, Lewis Eley, Louis Haber, Paul Gershman, Sol Shapiro


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【SONG LIST】
01. Bumpin'
02. Tear It Down
03. A Quiet Thing
04. Con Alma
05. Love Theme From "The Sandpiper" (The Shadow Of Your Smile)
06. Mi Cosa
07. Here's That Rainy Day
08. Musty

曽根麻央 Monthly Disc Review2020.6:Monthly Disc Review

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Title : 『Passages』
Artist : Tom Harrell

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みなさんいかがお過ごしでしょうか? 曽根麻央です。
世の中の自粛ムードが少しずつ解除され、ジャズクラブも「通常」を取り戻せそうな雰囲気が少し見えてきましたが、それでも夏以降のホールやフェスはキャンセル続きで、音楽活動が本格的にできるようになるまではまだまだ時間がかかりそうですね。そんな中でも自分の好きな音楽や影響を受けたアーティストを聴くとパワーとモチベーションをもらえます。今日も僕にとってのそんなアルバム、トム・ハレルの『Passages』を紹介したいと思います。


『Passages』はトランペットの名手、トム・ハレルの全曲オリジナルのアルバムです。トム・ハレルの徹底した過去のプレイヤーたちの研究から得たであろう美しいメロディーラインはもちろん、作曲家としての実力も聞くことができる名盤です。ゲストフルートを加えた3菅編成の曲では、各声部が美しく響き、見事なアレンジを聞くことができます。1991年の録音アルバムということは、時代背景としても、アコースティック・ジャズが再び注目を集め始めていました。なおかつその中で新しいサウンドを求めようとするトム・ハレルのアプローチが、Bebopやそれ以前のアコースティック・ジャズとは全然違ったものとなっています。


また70年代後半からのNYジャズの流派である「ロフトシーン」の拠点の一つともなったポール・モチアンのNYにあったロフトもこの時代は健在であったと記憶しています。T.ハレルの前作『Form』ではレコーディングの前にモチアンのロフトに夜中集まりリハーサルをしたと、メンバーのダニーロ・ペレスとジョー・ロバーノから以前話を聞きました。このアルバムではジャズの最も自由な時代だった「ロフトシーン」のエネルギーをどこか感じることもできます。


 メンバーは以下の通りです。トム・ハレルとジョー・ロバーノの鉄壁の2菅編成。この2人のサウンドは本当にブレンドしていて、ほとんど一つの楽器のようにも聞こえます。そこにシェリル・パイルのフルートを入れた3菅編成の曲も2曲ほど聞けます。3菅になっても各声部のダイナミックスがよく表現されているので、非常にゴージャズです。テナーがメインのジョー・ロバーノが、素晴らしいアルトのサウンドでのプレイが聞けるトラックもあるので、サックス奏者も要チェックなアルバム!ブラジリアン・パーカッショニストのカフェとポール・モチアンのリズムセクションのやりとりも聞きどころです。


Tom Harrell - trumpet & flugelhorn
Joe Lovano - tenor, alto & soprano sax
Cheryl Pyle - flute
Danilo Perez - pinao
Peter Washington - bass
Paul Motian - drums
Café - percussions




この時代のジャズの特徴としては、ビバップの様にフォーム形式でソロを回しますが、フォームを構成するパーツとしてVampも登場します。


 どういうことかというと、ジャズの古くからあるソロ回し(インプロ部分)スタイルでは、ソロの尺は、そのテーマ部分によります。代表的な「A列車で行こう」や「コンファメーション」、「サテンドール」といった曲は最初の8小節がAだとしたら、A部分が二回繰り返されたあと、違うメロディーBが8小節つづき、そしてまたAに戻る、AABAフォームを採用しています。そしてこのAABAの一つのまとまった単位を1コーラスと呼び、ソロもコーラスのフォームを守りながら、何コーラスも続けて発展させます。



 一方、モードジャズやファンク/フュージョンなどではVamp呼ばれるものが出てきます。短い小節数(最低1〜4、長くて8小節ぐらい)のベースラインやコード進行を繰り返して、その上でソロを発展させることがあります。例えばHedhuntersの「Chameleon」では最初の2小節のベースラインを繰り返してその上でソロも曲も発展していきます。またVampのセクションは古くはサルサの曲や、ボサノバのエンディングなどでも使われます。



 
この時代トム・ハレルの作曲スタイルは、イントロにその曲のVampを提示して、曲はBebopやモードジャズの影響が感じ取れる美しいメロディーを軸にしながら、曲の終わりではVampを使い、従来のフォーム形式のジャズとVamp形式のフュージョン&ラテンからの流れを、形式的にも融合するものでした。このアルバムにはそんなトム・ハレルらしい手法で書かれた曲が多く収録されています。





1. Touch The Sky
いきなりVampらしきリズムパターンとともに始まります。ホーンの2菅は完全4度や5度を中心にサックスが綺麗な内声で動いています。曲自体はモードジャズやウッディー・ショーの様な4度の動きの影響がありますが、それを見事にトム・ハレル・サウンドで表現しています。


2. Suite Dreams
これもイントロ兼Vampのリズムパターンから発展している曲です。この曲は3菅ですがフルートはトランペットのオクターブ上を吹いているだけなので、実質2菅編成のアレンジだが、サウンドはとても良いです。トム・ハレルの柔らかい音色で展開するソロが素晴らしいトラックです。おそらくフリューゲルホルンかと思います。

ソロの後にシャウト・コーラス(コンポーザー・コーラスとも言う。テーマと同じ尺で違うメロディーが書かれている部分を指す。ビッグバンドなどで多くみられる)がきちんと書かれているのがいかにもトム・ハレルらしいです。


3. Papaya Holiday
ジョー・ロバーノのアルトが聞けるトラック。最高に良いアルトの音色です!
ビバップ風だがトム・ハレル・サウンド全開の曲。そしてこちらも毎コーラスの終わりにラテン風のVamp(この様な場合Tagともいう)が付いています。ポール・モチアンのドラムソロも聞けます。


4. Bell
 こちらもイントロ兼Vampから始まります。とてもリリカルで美しいメロディーがロバーノのソプラノサックスで聞くことができます。トム・ハレルのホーン・ライティングの特徴として、トランペット(フリューゲル)がサックスより下の声部を演奏することが多々ある。これもトム・ハレルの音楽を美しくするアレンジの特徴の一つです。


5. Passages
 アルバムのタイトルソング。ダニーロ・ペレスとトム・ハレルの即興デュオです。


6. Lakeside Drive
 これも4度のハーモニーを基盤としたホーン・アレンジがされている楽曲です。Peter Washingtonのソロを聞くことができます。このトム・ハレルのソロも実に見事です。そしてポール・モチアンとカフェのトレイド・ソロを聞くことができます。モチアンのソロ中よく聞くとドラムのフレーズを歌っているのがわかりますね。


7. A Good Bye Wave
 3菅でフルートをリードにフリューゲルとテナーサックスが美しいバランスでハーモニーを吹きます。トム・ハレルの見事なアレンジ力を聞くことができます。この時ダニーロのピアノがきちんと内声とメロディーをピアノでもユニゾンしているのがホーンのサウンドをさらに一層はっきりとクリアなものにしていますね。ピアニストが伴奏をする時、メロディーを弾いてくれない方が多いのですが、ホーン奏者的には弾いてユニゾンして欲しい場合が結構多いです(笑)。


8. Expresso Bongo
 このアルバムでトム・ハレルのベストソロを選ぶとしたらこの曲!素晴らしいソロで僕自身耳コピして練習もした曲です。全部聞く時間がない方にはこの曲をお勧めします。


9. Madrigal
 ここで注目したいのはポール・モチアンのオリジナルソングに対するユニークなアプローチとそのセンスの良さです。まずダウンビートは絶対はっきりと出しながらの、メロディーとメロディーの間を紡ぐ様なフレーズは本当に素晴らしい。決してヒットが書かれていない場所にクラッシュを入れたり、あえてヒットを他のパートと揃えていなかったり、でもそれがカウンターポイント(対位法)となって完成された音楽を形作っています。突拍子もないことを叩くのにグルーブとリズムは自然に流れ、ダウンビートもはっきりしているから重みのある安定したグルーブもあります。ワンアンドオンリーのドラマーであることを再確認できるトラック。


10. Madrigal
 少し今までの曲とは雰囲気が違うが、前作「Form」のタイトルソングな様な雰囲気も少しありますね。このアルバムは「passages」以外は全部、スウィングの曲にもボンゴが入っています。ドラムとパーカッションのスウィングの楽曲での共存は長い間、ジャズマンの課題なのですが、このアルバムでは非常によくブレンドしています。ぜひ参考にしていただきたいなと思います。










さて、話題がこのアルバム『Passages』から反れるのですが、最初のレビュー『Motherland』のダニーロ・ペレスと、2回目のレビュー『Color Of Soil』のTiger Okoshiと少し電話&Zoom越しで話す機会がありました。


『Motherland』の記事で、このアルバムではブライアン・ブレイド、ジョン・パティトゥッチ、ダニーロ・ペレスのウェイン・ショーター・カルテット結成当初の3人の演奏が聴けると書きましたが、実際は3人の共演はこの録音が最初だそうです。時系列が逆でした。「Motherland」のレコーディングから翌年のウェインの『Alegria』レコーディング、からのカルテット結成だそうです。
 そして、Tiger Okoshiの『Color Of Soil』は直接2Mixで録音したそうです。つまり、一発勝負の録り直しなしの録音!すごいとしか言いようがない...


以前の記事の追記も含めて今回は書かせていただきました。
また来月をお楽しみに!!

文:曽根麻央 Mao Soné

Recommend Disc

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Title : 『Passages』
Artist : Tom Harrell
LABEL : Chesky Records
NO : Chesky JD64
発売年 : 1992年



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【SONG LIST】
01.Touch The Sky
02.Suite Dreams
03.Papaya Holiday
04.Bell
05.Passages
06.Lakeside Drive
07.A Good Bye Wave
08.Expresso Bongo
09.Madrigal
10.It's Up To Us




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「Monthly Disc Review」アーカイブ曽根麻央

2020.04『Motherland / Danilo Perez』2020.05『Color Of Soil / タイガー大越』




Reviewer information

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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

曽根麻央Official Site

My First Jazz Vol.26-須田晶子:My First Jazz

Title : 『Together Again』
Artist : Tony Bennett & Bill Evans

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「印象に残る作品がありすぎて一枚に絞るのは難しいのですねっ!沢山の女性ボーカリストのアルバムを聴いていた時期の後、チェット・ベイカーに出会って、男性のボーカリストに魅力を感じていた時期に出会った作品です。

Jazzの歴史から見たら、これは最近の作品ではあるかもしれませんが、この2人のアルバムはもしかしたらDuoの原点なんじゃないかなと感じます。こんなにもお互いが無理なく絶妙なバランスで交わっている、特にバラードの曲などでは正確なテンポが無いにもかかわらず(Rubato)、同じ足並みで一つの絵や物語を描いてゆくような2人の音楽表現は、言葉にならないほどです。それらの音は彼らの曲に対しての壮大な愛が、美しさとともに伝わってきます。

『The Tony Bennet Bill Evans』というアルバムもあり、2人の素晴らしさを引き立たせ合う音がたっぷり堪能できると思います。」

須田晶子

須田晶子 Official


【Bill Evans & Tony Bennett - Together Again】





My First Jazz

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Title : 『Together Again』
Artist : Tony Bennett & Bill Evans
LABEL : DRG Records ‎
発売年 : 1977年



Piano - Bill Evans
Vocals - Tony Bennett
Recorded at Columbia Studios, San Francisco, California, September 27-30, 1976.


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【SONG LIST】
01. The Bad And The Beautiful
02. Lucky To Be Me
03. Make Someone Happy
04. You're Nearer
05. A Child Is Born
06. The Two Lonely People
07. You Don't Know What Love Is
08. Maybe September
09. Lonely Girl
10. You Must Believe In Spring

曽根麻央 Monthly Disc Review2020.5:Monthly Disc Review

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Title : 『Color Of Soil』
Artist : タイガー大越

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みなさんこんにちは、曽根麻央です。自粛生活も二ヶ月目に突入し、生活スタイルもガラッと変わったでしょう。大変お疲れ様です。

僕はこの生活によって自分の今までの生活に不必要な部分を見直したり、また新たな価値観も得たりして、しかし、その中でも変わらずに素晴らしいと信じ、自分に多大な影響を与え続けている思想や音楽もあることに気づきます。その一つに、考え方や人生の歩み方までも大尊敬する僕の先生・Tiger Okoshiの「Color Of Soil」(1998 JVC)があります。


このアルバムと僕の出会いは、タイガー先生と僕の出会いに遡ります。2008年の3月、まだ高校1年生だった僕は、当時のクラシック・トランペットの先生、杉木峯夫先生の勧めで、来日していたTiger Okoshiの日本トランペット協会主催のマスタークラスを受講することになりました。

タイガー先生のマスタークラスでは今まで体験したことがないユニークなアプローチで、目から鱗でした。すぐさまファンになったのを覚えています。その会場でこのCDを買い、何回もリピートして聴きました。そして、自分のトランペット・プレイやアレンジ、アルバムの構成などで最も大きな影響を与えた一枚となりました。
しかも、トランペットのテクニックは圧倒的で、金管奏者は必聴のアルバムだと確信しています。



Tiger Okoshi - trumpet & flugelhorn
Kenny Barron - piano
Hank Roberts - cello
Jay Anderson - bass
Mino Cinelu - percussion

ドラムがおらず、Mino Cineluのパーカッションが全体のカラーを司っているのが特徴のグループです。




1. Color Of Soil

 Kenny Barronを除いた4人のコードレスの演奏。28小節の3拍子のスウィングの曲、とてもリリカルなメロディーが特徴です。Tiger Okoshiの特徴的な輝かしい音色と立体的な歌い方、圧倒的なトランペット・テクニックで、あっという間に彼の世界観に引き込まれます。Tiger Okoshiの特徴にテンポを縦横無尽に行ったり来たりする吹き方をするのですが、この曲ではまさにそんなソロを聞くことができます。


2. Wings, We All Have
ここでKenny Barronが登場します。この曲でもTiger Okoshiのトランペット・アプローチは他の奏者とは一線を置くものとなっています。Tiger OkoshiとチェリストHank Robertsとのトレードのインプロを聞くことができる上、このアップテンポの上で聴けるKenny BarronとMino Cineluのデュオも緊張感があり最高に盛り上がります。



3. Kagome, Kagome
Tiger Okoshiが今もレパートリーとして演奏する曲の一つで、僕自身、ワシントンDCのブルースアレーで共演した時や、去年7月の中国ツアーで一緒に演奏する機会を得た曲です。日本の民謡「かごめかごめ」をアレンジしたもので、日本のスケールとスパニッシュな雰囲気が入り混じる独特なカラーをアルバムに添えています。


 恐らくここまでの3曲でTiger Okoshiがトランペットを使って空気に色を塗ることの出来る、類を見ないアーティストだということがお分かりいただけると思います。バークリー音楽大学でのタイガー先生のレッスンやアンサンブルでは、彼の練習方法や音楽の組み立て方などを間近に見ることができて、本当に勉強になりました。バンドに参加させていただいた時にも、リハーサル後には何回も何回もスコアの書き直しが送られてきて、練り上げていくスタイルは、見て勉強させていただきました。


4. Tone Of Your Voice
 この曲は僕の記憶が正しければ、Tiger Okoshiが阪神淡路大震災を経験したために書いた曲だとリハーサルの時に聞いたことがあります。アルバムではKenny Barronとのデュオ演奏です。


5. Grandma's Eyes
 このアルバムではDominant 7 (b9)のコードが多用された曲やアレンジが見受けられるが、これもそんな一曲です。このコードは Tiger Okoshiのサウンドには欠かせないコードの一つで、このアルバム全体のカラーの一つでもあります。


6. Tales Of 5 Peasants
 ベーシストJay Andersonのメロディーから始まるラテン調の曲。この曲ではHank Robertsはお休み、Tiger Okoshiのワンホーンとなっています。ドラムがいないこの作品では、アルバムを通してMino Cineluのパーカッションが色彩を統一していますが、ここではその彼のソロも聞くことができます。


7. Bootsman's Little House
 数あるタイガー先生の曲の中でも僕の大好きな曲の一つです。去年の中国ツアーではオープニング曲として演奏しました。今のライブで演奏されるバージョンではアレンジが拡張され、長尺のコンポジションへと変貌を遂げましたが、このアルバムのバージョンはとてもシンプル。しかも歌いやすいメロディーが頭の中でなり続けると思います。


8. World To Me
 Tiger Okoshiの美しいトランペットの音が活きるバラード調の曲。Tiger Okoshiはシンプルにメロディーを吹き、ソロで他のメンバーをフューチャーしています。


9. A Night In Tunisia
 アルバム唯一のジャズ・スタンダード曲で、1曲目同様にKenny Barron以外のメンバーで、コードレスで演奏されています。


 アルバムを通して、トランペットの音色が活き活きとしていて、トランペットという楽器の良さを聞くことができます。トランペット奏者の多くが、ヘビー・ウェイトのダークなトランペットを求め、ジャズではそちらが主流になっていく中で、明るい音色がいかにトランペットらしい音楽を奏でることができるか証明しています。

演奏されるフレーズ一つ一つが立体的で、他に類を見ません。まるで筆の先に絵の具をつけて、根元からドバッと描いた様な勢いのある音や、ブラシの先で描いた細い線、薄めた絵の具で塗られた淡い色のように、様々なトランペットの表現を聞くことができる一枚です。Tiger Okoshiが トランペットで空間というキャンバスに描く世界観をぜひ一度体感してください!

最後になりますが今月のJJazz.Netの「PICK UP」で僕の新譜も紹介されているので、ぜひ聞いてください。
「PICK UP - MAY」
【放送期間2020.5/6-2020.6/3】

ではまた来月!

文:曽根麻央 Mao Soné


Recommend Disc

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Title : 『Color Of Soil』
Artist : タイガー大越
LABEL : JVC
NO : JVC-2071-2
発売年 : 1998年



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【SONG LIST】
01.Color Of Soil
02.Wings, We All Have
03.Kagome, Kagome
04.Tone Of Your Voice
05.Grandma's Eyes
06.Tales Of 5 Peasants
07.Bootsman's Little House
08.World To Me
09.A Night In Tunisia




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「Monthly Disc Review」アーカイブ曽根麻央

2020.04『Motherland / Danilo Perez』2020.05『Color Of Soil / タイガー大越』




Reviewer information

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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

曽根麻央Official Site

曽根麻央 Monthly Disc Review2020.4:Monthly Disc Review

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Title : 『Motherland』
Artist : Danilo Perez

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みなさんこんにちは。今月から始まりました、私・曽根麻央がJJazz.Netで毎月、様々な年代からアルバムをセレクトし、ミュージシャン目線から音楽を解説していくこのコーナー! 楽しんでいただけるようにこれから頑張りたいと思います!


 さて記念すべき第一回目のレビューは...僕の師匠の1人でもあるDanilo PerezのVerveからのアルバム「Motherland」(2000年)を紹介します。このアルバムではDaniloのピアニストとしての実力を十分に味わえるだけではなく、リーダーとして、作曲家として、アーティストとしての顔を見れるおすすめのアルバムです。


 まずDanilo Perezはどういった人なのでしょう? 最近では2年前のChildren Of The Night (D. Perez, John Patitucci, Brian Blade)の東京ブルーノートでの公演が最後の来日だったかなと思います。その時の楽屋での一枚です。

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Daniloはミュージシャンとして尊敬されているだけではなく、教育の分野やPanamaでの慈善活動でも有名です。貧困層が集まるPanamaのOld CityにDanilo Perez Foundation という音楽教育施設を作り、街の安全化に貢献しました。また、その生徒たちとパナマ市民、そして国際的に一流の音楽家の交流・発表の場としてPanama Jazz Festivalやpanama International Percussion Festivalなどを設立しました。


 またBeklee College Of Musicの資本で、Berklee Global Jazz Instituteを設立し、「アーティストの創造力の拡張」「音楽の社会的貢献」「自然と音楽の関係性」の三つの柱を軸に後進の指導にあたっています。筆者やサックスの松丸契、ニューヨークで活躍するピアニスト、大林武などが出身者です。


 国境を超える活動を続けるDaniloから生まれてくるスケールの大きな音楽 - "Globnal Jazz"。出身地でもあるパナマの音楽とジャズ音楽の融合から生まれる世界観はもちろん有名ですが、その他のあらゆる民族音楽のエッセンスが混じり合ったDaniloの音楽を表現するために様々な奏者がこのアルバムに参加しています。まずはミュージシャンを見ていきましょう。



Danilo Pérez - piano, compose, arrange
Carlos Henríquez - acoustic bass
Antonio Sanchez - drums
Luisito Quintero Caja - percussions (cajon, chimes, congas, drums, maracas, tamborim)

John Patitucci - acoustic bass (guest artist)
Brian Blade - drums (guest artist)

Richard Bona - electric bass & vocal (guest artist)
Claudia Acuña - vocal
Luciana Souza - chant, vocal

Diego Urcola - trumpet
Chris Potter - alto & soprano sax
Regina Carter - violin
Kurt Rosenwinkel -electric guitar
Aquiles Baez - cuatro & acoustic guitar

Greg Askew - chant
Louis Bauzo - bata drums, chant
Richard Byrd - chant, okonkolo




1. Intro

 これは短いピアノソロで、アルバム全体のイントロダクションですが、2曲目の"Suite For Americas"のモチーフが聞こえてきます。左手の伴奏のパターンはパナマの伝統音楽Tambor norteが元になっています。

Tambor norteのリズムパターンはこんな感じです。

 このリズムパターンはDaniloの音楽を研究すると絶対に出てくるパターンで、ドラムパターンをピアノに置き換えるのがいかにもDaniloらしいです。


2. Suite For Americas - Part 1
 おそらくこのアルバムのメインの楽曲です。曲全体がスルーコンポジション(一般的なジャズの楽曲のように繰り返しや曲のフォームがなく、曲の初めから最後までがすべて作曲されている楽曲のこと)で書かれています。

 この曲は、Daniloの偉大な音楽的発明の一つと言われている変拍子のクラーベが使われています。クラーベとはラテンのリズムの基礎となり、アンサンブル全体を統一させる鍵のようなものです(クラーベにつての詳しい説明は僕のYouTubeを見てみてください 。クラーベは歴史的には4拍子なのですが、このクラーベの持つアンサンブル全体を統一させる力をDaniloは変拍子に応用して、自由を得ることに成功しています。




 例えばほかのDaniloの作品、『Panamonk』の「Think Of One」や『Live At The Jazz Showcase』の「We See~Epilogo」、『Central Avenue』の「Impressions」では5拍子のクラーベを使うことに成功しました。(10拍子ともいえる)

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この「Suite For America」の前半部分はさらに発展して、7拍子のクラーベが使われています。このリズムを鍵として曲が成りたっています。(14拍子ともいえる)

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アルバムの構成も面白くPart 1では曲をインプロなしでさらっと終わらせているのですが、7曲目のPart 2では早めのテンポで各セクションを引き延ばし、ソロを加えてロングバージョンになっています。クラーベを使ったインタープレイの魅力を十分に味わえるでしょう。


3. Elegant Dance
 この曲ではCuatroというラテンの伝統的なギターが使われています。Venezuelaの民族音楽Joropoをゆったりとさせたようなリズムを基にとてもリリカルなメロディーが奏でられます。Danilのソロもとてもユニークで際立っています。Danilo独特の拍子を行ったり来たりするプレイが本当に美しいです。


4. Panafrica
 Richard Bonaのベースと歌をフューチャーしています。ピアノは終始バックグラウンドのはずなのですが、ここで気づくのがDanilo自身がアコースティックピアノと共にオーバーダブ(多重録音)しているFender Rhodesがとても良く、耳が傾いてしまいます! 両者がうまいこと混ざり合い、会話しているかのような演奏になっています。ちなみにDaniloは全体的にFender Rhodesをオーバーダブしているので、聞きどころの一つです。


5. Baile
 Daniloのピアノソロによるインタルード的存在。これもどことなく「Suite For Americas」や「Elegant Dance」のモチーフが使われているようです。アルバム全体を通して、鍵となるものが存在することが伺えます。


6. Song To The Land
 静かなチャントから始まるこの曲。Mejoranera(パナマのフォークミュージク)とジャズを混ぜたことで98年の『Central Avenue』の「Panama Blues」でグラミーとラテン・グラミーのノミネートを受けているDaniloだが、この曲はそのアイディアの発展系だと感じます。
 後半のバタドラムが出てくるところはLalubancheというキューバの伝統的なバタ音楽のリズムです。


7. Suite For Americas - Part 2
 すでに2曲目で説明済みです。


8. Prayer
 これは再びRichard Bonaをフューチャーしての美しいバラード演奏。Bonaはメロディーを歌い、ベースでそれユニゾン、アコースティック・ベースとドラムはサウンドからして恐らく、John PatitucciとBrian Bladeだと思います。Daniloは本当に人の声を使ったアレンジが素晴らしいことを再認識できる一曲です。


9. Overture
 サックスとトランペットが加わり、コーラスと混じり合い、今までとは雰囲気の違う一曲。Afro 12/8やペルーやキューバなどのラテン地域の3拍子系のグルーブが一体となり進んでいく独特の楽曲。


10. Rio To Panama
 ここでミドルイースタン系のグルーブに乗っかって楽しげな曲が一曲加わります。


11. Panama Libre
 Daniloの93年のデビューアルバムにも収録されているdaniloのオリジナル曲です。93年のバジョーデンではDavid Sanchezなどと、ゴリゴリのラテン調の曲だが、今回はとてもボーカライズされたリリカルな曲調に変貌しています。Kurt Rosenwinkelがゲストに参加しています。KurtとDaniloのインタープレイが聞き逃せない。


12. Panama 2000
 これも94年の2作目のアルバム『Journey』に収録されているので再レコーディングとなります。これもパナマの伝統的なリズムTambor Norteが基盤となっています。エスニックだがブルージーな唯一無二の雰囲気を持つ曲。ホーンセクションの美しいカウンターポイントとDaniloのハーモニーセンスが素晴らしいです。


13. And Then...
 Daniloのピアノソロによるエンディングです。


 このアルバムはDaniloのとてもリリカルでメロディアスな、ソングライターに近い一面と、各楽器の緻密なオーケストレーションから作曲的技量も聞くことができます。


 というのもDaniloの音楽も転換期で、2000年はWayne Shorter Quartet (Danilo Perez, John Patitucci, Brian Blade)の結成の年でした。 アルバムはこの時点では未だ出てはいませんが、アルバム『Alegria』のレコーディングや、ツアーなどが開始され始めていたでしょう。Wayne Shorterの音楽的影響は計り知れません。


 彼自身のトリオも転換期でした。ドラマーがJeff Tain WattsからAntonio Sanchez、ベースもAvishi CohenからJohn Patitucciへ代わりはじめ軌道に乗り始めたが、AntonioのPat Metheny Groupへの加入でその後のTrio脱退。そんなDaniloの怒涛の日々が生み出した、アメリカ大陸を舞台に繰り広げる壮大な作品がMother Landです。


 その後の作品はDanilo Perez - Ben Street - Adam Cruzのレギュラートリオ、またはChildren Of The Light Trio (Danilo Perez - John Patitucci - Brian Blade) などのトリオ音楽を中心に展開されています。Mother Landはそんな数あるDaniloの作品の中でも異色の存在と言えるでしょう。


文:曽根麻央 Mao Soné


【Danilo Pérez - Song to the Land (feat. Claudia Acuña)】




Recommend Disc

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Title : 『Motherland』
Artist : Danilo Perez
LABEL : Verve Records
NO : 314 543 904-2
発売年 : 2000年



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【SONG LIST】
01.Intro
02.Suite For The Americas - Part 1 
03.Elegant Dance
04.Panafrica
05.Baile
06.Song Of The Land
07.Suite For The Americas - Part 2
08.Prayer
09.Overture
10.Rio To Panama
11.Panama Libre
12.Panama 2000
13.And Then...




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「Monthly Disc Review」アーカイブ曽根麻央

2020.04




Reviewer information

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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

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