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曽根麻央 Monthly Disc Review2023.7_Willie Colón & Rubén Blades : Siembra

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こんにちは、曽根麻央です。
この一年、恵比寿に新しくできたBlue Note Placeで週末のラテン・ジャズの枠を持たせてもらっています。それもあり自分の音楽ルーツの一つであるラテンの音楽を日本でも演奏する機会が増えてとても充実した日々が続いています。

日本では南アメリカの音楽を総合して「ラテン」と一口に呼びますがラテンの中にも色々あり、1日でそのカテゴリーを網羅するのは不可能でしょう。ジャズの中にもニューオリンズがあり、スウィングがあり、ビバップがあり、ハードバップがあり、モードジャズがあり...また地域ごとにもニューヨークのコミュニティー、デトロイトのコミュニティー、DCのコミュニティーと特色が違いますよね。というようにラテン音楽にもたくさんの種類があり、また国ごとにリズムが違ったりします。今日はそんな中でもサルサの名盤を紹介したいなと思います。夏に聞くのにぴったりの作品ではないかと思います。

その前に一つお知らせがあります。
先月もお知らせしましたが、City Popの名曲12選をジャズ&ラテン・カバーした『City Pop Rendez-Vous』が僕が立ち上げた新レーベルclaudiaより発売されました。ぜひお手にとって聴いてみてください。
JJazz.Netの番組「PICK UP」でも紹介されています!


Airi - City Pop Rendez-Vous500.jpg


【CD販売/配信リンク】
https://ultravybe.lnk.to/citypoprendez-vous


JJazz.Net「PICK UP - JULY」
放送期間:2023.7/5(水)-8/2(水)17:00まで

https://www.jjazz.net/programs/pick-up/


サルサは70年代にラテン音楽がニューヨークを中心としたアメリカで、よりポピュラー音楽へと変貌を遂げた時の名称です。当時ニューヨークに住んでいたキューバやプエルトリコ出身のミュージシャンによって、キューバのSon montunoのやmambo、プエルトリコのPlenaやBombaと言ったリズムが元にして出来上がった総合文化音楽とでも言えるものです。

もちろん1940~50年代にDizzy GillepieやChan Pozo、Mongo Santamaría、Tito Puente、そしてCachaoといったアーティストの作り上げたラテンジャズの影響も濃くあり、ジャズ、ファンク、R&B、そしてラテン特有の土着的なメロディーやリズムが複合して完成したジャンルと言えるでしょう。


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Title : 『Siembra』
Artist : Willie Colón & Rubén Blades

今日紹介するのはWillie Colón & Rubén Bladesというサルサを代表するアーティストの2人名義のアルバム『Siembra』(1978)です。サルサを代表するアルバムにも関わらず、一時期はアメリカで入手が困難だったアルバムなのですが、近年ではサブスクも解禁されました。

Willie Colónはトロンボーン奏者、アルバム・プロデューサー、アレンジャーで、Rubén Bladesがリード・シンガー兼ソングライターです。Rubén Bladesは「プレデター2」に出演するなど俳優としての活躍もあるので、そちらのイメージが強い方もいるかもしれません。

このアルバムはホーンセクションが基本的に4つのトロンボーンのみで構成されていて、通常トランペットとトロンボーンの混合セクションで演奏されるサルサにしては珍しいアルバムです。

僕がこのアルバムに出会ったのはパナマの旧市街のカフェで偶然流れていて、友達にこれは何?と聞いたら「Rubenだよ、生まれた家はそこっ!」と指をさして教えてくれました。そのおかげで僕の中で強烈にインパクトに残っているアルバムです。


【サルサを代表するアーティストの2人名義のアルバム】




01. Plastico

ファンキーなディスコ・グルーヴで始まったかと思えば急展開してそのままラテンのトゥンバオへと流れていくインパクトの強い曲です。


02. Buscando Guayab

シンプルに土着的なSonのリズムの流れを感じることのできる曲。2-3クラーべで始まりますが、Coroというコーラスが加わるパートは3-2になるラテンの基本でもあるクラーベを感じるのにものすごく適切な曲です。またトロンボーンのユニゾンやティンバレスソロが展開されるマンボ・セクションでは2-3に戻ります。


03. Pedro Navaja

トゥンバオのコンガ・パターンとベースラインの上で展開される曲です。


04. Maria Lionza

ボレロのようなバラードのリズムですが、様々なエレメントが混ざり合っているグルーヴから始まり徐々にmamboのリズムが混ざり強くなり軽快な曲へ変化していきます。


05. Ojosr

ここまでの曲に比べるとかなり、いわゆる一般的なサルサの曲になります。クラーベはルンバ3-2です。


06. Dime


07. Siembra
タイトルソングであり、サルサの代表曲の一つです。ラテン音楽の肝はもちろんリズムでパーカッションであり、ピアノであるんですが、音楽全体を引っ張っていく役目を持っているのがベースです。名手Salvador Cuevasのリズミカルなプレイに耳を傾けても楽しいトラックだと思います。


それではまた次回のレビューで!


文:曽根麻央 Mao Soné




Recommend Disc

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Title : 『Siembra』
Artist : Willie Colón & Rubén Blades
LABEL : Fania Records
発売年 : 1978年

アマゾン詳細ページへ

【SONG LIST】

01.Plástico
02.Buscando Guayaba
03.Pedro Navaja
04.María Lionza
05.Ojos
06.Dime
07.Siembra




【曽根麻央LIVE INFO】


曽根麻央のその他情報はウェブサイトへ

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「Monthly Disc Review」アーカイブ曽根麻央
2020.04『Motherland / Danilo Perez』2020.05『Color Of Soil /タイガー大越』2020.06『Passages / Tom Harrell 』2020.07『Inventions And Dimensions / Herbie Hancock』2020.08『Birth Of The Cool / Miles Davis』2020.09『Chet Baker Sings / Chet Baker』2020.10『SFJAZZ Collective2 / SFJAZZ Collective』2020.11『Money Jungle: Provocative In Blue / Terri Lyne Carrington』2020.12『Three Suites / Duke Ellington』2021.01『Into The Blue / Nicholas Payton』2021.02『Ben And "Sweets" / Ben Webster & "Sweets" Edison』2021.03『Relaxin' With The MilesDavis Quintet / The Miles Davis Quintet 』2021.04『Something More / Buster Williams』2021.05『Booker Little / Booker Little』2021.06『Charms Of The Night Sky / Dave Douglas』2021.07『Play The Blues / Ray Bryant Trio』2021.08『The Sidewinder / Lee Morgan』2021.09『Esta Plena / Miguel Zenón』2021.10『Hub-Tones / Freddie Hubbard』2021.11『Concert By The Sea / Erroll Garner』2021.12『D・N・A Live In Tokyo / 日野皓正』2022.1『The Tony Bennett Bill Evans Album / Tony Bennett / Bill Evans』2022.2『Quiet Kenny / Kenny Dorham』2022.3『Take Five / Dave Brubeck』・2022.4『Old And New Dreams / Old And New Dreams』2022.5『Ella Fitzgerald And Louis Armstrong / Ella And Louis』2022.6『Live from Miami / Nu Deco Ensemble & Aaron Parks』2022.7『Oscar Peterson Trio + One / Oscar Peterson Trio Clark Terry』2022.8『Ugetsu/ Art Blakey & The Jazz Messengers』2022.9『Sun Goddess / Ramsey Lewis』2022.10『Emergence / Roy Hargrove Big Band』2022.11『Speak No Evil / Wayne Shorter』2022.12『The Revival / Cory Henry』2023.1『Complete Communion / Don Cherry』2023.2『Your Mother Should Know: Brad Mehldau Plays The Beatles / Brad Mehldau』2023.3『Without a Net / Wayne Shorter』2023.4『LADY IN LOVE / 中本マリ』2023.5『Songs Of New York / Mel Torme』2023.6『Covers / James Blake』



Reviewer information

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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

曽根麻央Official Site

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