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曽根麻央 Monthly Disc Review2023.5_Mel Torme : Songs Of New York

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みなさん、こんにちは。マルチインストゥルメンタリストの曽根麻央です。
今回は偉大なシンガー、メル・トーメがニューヨークの歌を集めた『Songs Of New York』(1982)をご紹介します。

その前にすこし宣伝します!6月、曽根麻央Brightness Of The Livesのツアーが決定しました。
6/2 ブルーノート東京
6/6 岡山SOHO
6/7 大阪梅田Mr. Kelly's
6/8 名古屋 Mr Kenny's
6/9 静岡 Life Time

Member: 曽根麻央 trumpet, piano and etc、井上銘 guitar、山本連 bass、木村紘 drums、
Patrick Bartley (6/2のみ参加)
https://maosone.com/tour2023


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Title : 『Songs Of New York』
Artist : Mel Torme



【偉大なシンガー、メル・トーメによるアメリカン・ソングブック】


メル・トーメは「The Christmas Song」の作曲家として有名ですが、改めてこの現在にも通ずる素晴らしい歌唱テクニックの持ち主であり、表現者であることを再認識できればと思います。

アレンジャーにあの映画音楽で有名なJohn WilliamsやShorty Rogers、Richard Hazardなど当時の一流作家を迎えていて、サウンドも名エンジニアのBill Putnamによって録られています。音楽的にも聴きやすく、サウンドも素晴らしい名盤なのでぜひ聴いてみてください。





01. Sunday In New York

John Williams のアレンジで、元々は1963年の同タイトルの映画の曲のようです。心地よいワイヤー・ブラシのサウンドとバリトン・サックスの音色がグルーヴを支えます。John Williamsの作品はオーケストラが多いので、ビッグバンド編成の、しかもスウィングの作品はなかなか聴いたことがありませんでした。完璧な3分間ミュージックで心地よい!の一言でしょう。あっという間に聴き終わるのもジャズのこの時代の歌ものの良いところです。

3分間ミュージックとまだ録音文化が浸透してまもない頃は、3分半ぐらいがレコーディングできる限界だったと言われています。逆にこの縛りが良い演奏を生んでいるのですが、これがビッグバンドの、特に歌ものでは現在まで心地よい尺の長さとして受け継がれていると思います。


02. Autumn In New York

ジャズの偉大なスタンダードです。メル・トーメは丁寧にVerse(イントロのようなパートですが、歌詞があり、曲のストーリーを説明する重要な部分。インストではほぼ省略される)を歌っています。Richard Hazardのアレンジで、こちらはピアノトリオがフィーチャーされたストリングス・オーケストラが中心のアレンジで、とてもゴージャズです。


03. Lullaby of Birdland

またアメリカの偉大なソングブックに入る名曲です。 トランペッターでもあるShorty Rogersのアレンジです。まるでGeorge Shearingを彷彿とさせるサウンドで、ピアノトリオにヴィブラフォン、ギター、そしてフルートを加えた編成で心地よく演奏されます。このピアノがブロック・ヴォイシングしてる上にメロディーをギターとヴィブラフォンでユニゾンするのはGeorge Shearingが発明したサウンドで今ではジャズのサウンド作りに欠かせない手法となっています。


04. Broadway

軽快なスウィングの曲で、ビッグバンド編成でJohn Williamsのアレンジに戻っています。


05. Brooklyn Bridge

Shorty Rogersのアレンジ。Verseはギターとのデュオですが、メル・トーメの歌唱がとても素晴らしいです。テンポに入ってからは基本George Shearingスタイルでアレンジされています。


06. Let Me Off Uptown

John Williamsのアレンジ。再びビッグバンド編成です。先にも述べたのですがJohn Williamsのビッグバンドアレンジは珍しいのですが、このような曲をアレンジするとどこかフランク・シナトラのアレンジャーとして有名なNelson Riddleの雰囲気も少しある気がします。このトラックはメル・トーメの声の伸びが素晴らしく大歌手らしい歌い方になっています。


07. 42nd Street

今までの曲と雰囲気がガラッと変わり、ラテン風の妖艶な雰囲気になっています。Richard Hazardによるストリングスアレンジです。


08. Sidewalks Of New York

John Williamsのアレンジによる、映画音楽かと思わせるイントロから始まりますが、一旦曲に入ると軽快なスウィングワルツでピアノがテンションの強い和音を弾き続けるおもしろいアレンジです。


09. Harlem Nocturne

Richard Hazard編曲。ピアノトリオとストリングスを中心にしたアレンジ。スローなスウィングでこちらも7曲目のような妖艶な雰囲気が漂う一曲になっています。マイナー6やマイナーmaj7といったコードがこのような独特な雰囲気を作り出します。曲の中盤はその雰囲気がガラッと変わりブルースのフィールになる構成でとても珍しいと思います。


10. New York, New York

レナード・バースタインが音楽を担当したミュージカル『踊るニューヨーク』のテーマソング。映画はジーン・ケリーやフランク・シナトラが出演していて名作なのでみなさんも是非見てみてください。僕は個人的にこの時代のミュージカルが子供の頃から大好きでたくさん見ているのでいつかそれにまつわるアルバムも紹介したいですね!
Shorty Rogersのアレンジで、基本、George Shearingスタイルのアレンジですが、リズムがスウィングになったりラテンになったりとても楽しい見事な編曲になっています。ミュージカルではロックフェラーセンターや五番街、自由の女神などニューヨークの名所が各コーラス切り替わりながら歌っています。そんな雰囲気を想像しながら聴いても楽しい曲です。


11. There Is A Broken Heart For Every Light On Broadway

Shorty Rogersのアレンジ。楽しさのあとの寂しい雰囲気の曲。スウィングなのですが、それに対抗するようにメロディーは基本ストレートで奏でられていて、少し3連音符によったりそのバランスが素晴らしいです。


12. Manhattan

Richard Hazardの編曲。とても印象的なストリングスのイントロから始まり、ミュージカルを見ているような曲作りをしています。


13. My Time Of Day

1:22と、とても短いトラックですが、美しいアレンジと、素晴らしい歌唱が聴けるバラードのトラックになっています。アルバムの締めくくりとなるようなエンディングです。


前回ご紹介したアルバム『Lady In Love』の中本マリさんの10数年ぶりの新作が6/8に発売されることが決定しました。私・曽根麻央がプロデューサー/アレンジャーを担当し、マリさんの70~80年代の名盤『Lady In Love』『Aphrodite』『Moods Of A Lady』から11曲をセレクト!セルフ・カヴァー・アルバムとなっています。

ツアーもしますのでお近くの会場まで見に来てください!


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中本マリ『Muse 1』 
6/8発売
Mari Nakamoto - vocal
Mao Sone - piano, fender rhodes, wurlitzer, clavinet, organ, prophet 6, trumpet & harpejji
Yuji Ito - bass
Kan - percussions






それではまた次回。


文:曽根麻央 Mao Soné



Recommend Disc

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Title : 『Songs Of New York』
Artist : Mel Torme
LABEL : Atlantic Jazz
発売年 : 1964年

アマゾン詳細ページへ

【SONG LIST】

01.Sunday In New York
02.Autumn In New York
03.Lullaby Of Birdland
04.Broadway
05.The Brooklyn Bridge
06.Let Me Off Uptown
07.42nd Street
08.Sidewalks Of New York
09.Harlem Nocturne
10.New York, New York
11.There's A Broken Heart For Every Light On Broadway
12.Manhattan
13.My Time Of Day




【曽根麻央LIVE INFO】

6/6 (tue.) [岡山] Cafe SOHO
Member: 曽根麻央(tp, pf & keys) 井上銘(gt) 山本連(b) 木村紘(ds)
・岡山市北区今4-4-8
・お問い合わせ 086-368-8455​


6/7 (wed.) [大阪] Mr. Kelly's
Member: 曽根麻央(tp, pf & keys) 井上銘(gt) 山本連(b) 木村紘(ds)
・大阪市北区曽根崎新地2-4-1 ホテルマイステイズプレミア堂島1F
・TEL: 06-6342-5821


​6/8 (thu.) [名古屋] Mr. Kenny's
Member: 曽根麻央(tp, pf & keys) 井上銘(gt) 山本連(b) 木村紘(ds)
・愛知県名古屋市中区金山5-1-5 満ビル2F
・TEL: 052-881-1555
・mrkennys.kuratani@gmail.com

​6/9 (fri.) [静岡] Life Time
Member: 曽根麻央(tp, pf & keys) 井上銘(gt) 山本連(b) 木村紘(ds)
・静岡県静岡市葵区紺屋町 11-1
・TEL: 054-250-0131


曽根麻央のその他情報はウェブサイトへ

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「Monthly Disc Review」アーカイブ曽根麻央
2020.04『Motherland / Danilo Perez』2020.05『Color Of Soil /タイガー大越』2020.06『Passages / Tom Harrell 』2020.07『Inventions And Dimensions / Herbie Hancock』2020.08『Birth Of The Cool / Miles Davis』2020.09『Chet Baker Sings / Chet Baker』2020.10『SFJAZZ Collective2 / SFJAZZ Collective』2020.11『Money Jungle: Provocative In Blue / Terri Lyne Carrington』2020.12『Three Suites / Duke Ellington』2021.01『Into The Blue / Nicholas Payton』2021.02『Ben And "Sweets" / Ben Webster & "Sweets" Edison』2021.03『Relaxin' With The MilesDavis Quintet / The Miles Davis Quintet 』2021.04『Something More / Buster Williams』2021.05『Booker Little / Booker Little』2021.06『Charms Of The Night Sky / Dave Douglas』2021.07『Play The Blues / Ray Bryant Trio』2021.08『The Sidewinder / Lee Morgan』2021.09『Esta Plena / Miguel Zenón』2021.10『Hub-Tones / Freddie Hubbard』2021.11『Concert By The Sea / Erroll Garner』2021.12『D・N・A Live In Tokyo / 日野皓正』2022.1『The Tony Bennett Bill Evans Album / Tony Bennett / Bill Evans』2022.2『Quiet Kenny / Kenny Dorham』2022.3『Take Five / Dave Brubeck』・2022.4『Old And New Dreams / Old And New Dreams』2022.5『Ella Fitzgerald And Louis Armstrong / Ella And Louis』2022.6『Live from Miami / Nu Deco Ensemble & Aaron Parks』2022.7『Oscar Peterson Trio + One / Oscar Peterson Trio Clark Terry』2022.8『Ugetsu/ Art Blakey & The Jazz Messengers』2022.9『Sun Goddess / Ramsey Lewis』2022.10『Emergence / Roy Hargrove Big Band』2022.11『Speak No Evil / Wayne Shorter』2022.12『The Revival / Cory Henry』2023.1『Complete Communion / Don Cherry』2023.2『Your Mother Should Know: Brad Mehldau Plays The Beatles / Brad Mehldau』2023.3『Without a Net / Wayne Shorter』2023.4『LADY IN LOVE / 中本マリ』

Reviewer information

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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

曽根麻央Official Site

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