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曽根麻央 Monthly Disc Review2024.04_Moonchild : Voyager

みなさんこんにちは、マルチインストゥルメンタリストの曽根麻央です。
今日は現代のジャズ/オルタナティヴ/R&Bの名盤 "Voyager"を紹介しようと思います。

このアルバムは聴くとまず音色のクオリティーの高さに驚かされます。音が本当にいい。
みなさんにも是非体感してほしいアルバムです。


その前に一つお知らせです。
4/27(土)は千葉県野田市にある生涯学習センター3F 欅のホールでソロ・コンサートがあります。
昨年9月に発売された『Plays Standards』のリリースコンサートで、アルバムから沢山お届けしようと思います。
なんとそれだけでなく、ライブ収録も兼ねています!ぜひこの機会をお見逃しなく!
東京駅からも約1時間の距離なので都内のオーディエンスの方もぜひ来てみてください。街並みも昔ながらの面影があり、前回仕込みに行った時に観光気分になってしまいました。

チケットはオンラインで購入できます
https://www.gettiis.jp/event/detail/101060/vugPXS5L



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Title : 『Voyager』
Artist : Moonchild


さてMoonchildは2012年ごろから活動を開始した3人組のバンドで、リードボーカルのAmber Navran含めて全員がキーボードやピアノ、シンセサイザー、そしてサックスやフリューゲルホルンなどの吹奏楽器を演奏することができます。まさに多重録音時代に特化したバンドと言えると思います。


例えばアルバムのイントロ 1. Voyager (Intro) をとっても、短いトラックながらも
彼らのこだわりが詰まっていると感じます。
左右に美しく揺れるトレモロがかかったローズピアノの音を中心に、パッドやリードシンセ、ちょっとだけギター、アルペジエーターやシンセベースなどあらゆる楽器が素晴らしいバランスで共存しています。



曲はそのまま 2. Cure に続くのですが、パッドが弾き延ばされている中にギターがリズムを刻み始めます。このギターのリフも細かくパンが振られていて、オーディオ空間の作り方が本当に巧妙です。そしてドラムとシンセベースが入ってくるとグルーヴが一体となり曲が始まります。愛が心の痛みを治すことを見せてあげるという歌で、ふわりと歌っている様に一見すると聞こえるのですが、リズムとイントネーションが素晴らしく、曲全体を歌がリードしています。歌が全体をリードするのは本来あるべき姿ではあるのですがとても難しいことでもあり、シンガー単体でもとても表現力がある事を思い知らされます。



3. 6am
この曲は3-3-2拍子でリズムが構築されてる特徴あるリフの曲です。エンディングにはフルートソロもあります。ソロといってそのままアドリブを乗せているだけではなく、おそらく大枠のソロを録音したのち、必要な部分のハーモニーをオーバーダブしてる様です。楽器の部分にもボーカルの作品作りの様な手が込んだ作風になっています。



4. Every Part (For Linda)
クリスプなドラムビートから始まる楽曲。ボーカルが入ってきた時に急にリバーブが少なくなり乾いた感じになるのがたまらなく素敵です。



5. Hideaway
低音からビート感が強いローズピアノとシンセベースのリフが気持ちよく、しかし歌は囁くようで対照的なMoochildらしい一曲。



6. The List
ローファイなピアノイントロから始まる楽曲。このアルバムの有名曲の一つかなと思います。
その後に続くローズピアノのキックが心地よく、その上でボーカルのハーモニーも見事にアレンジされています。
トランペットとフルートでのホーンセクションアレンジも際立っています。



7. Doors Closing
電車のアナウンスから始まる一曲。カウベルのビートが特徴的。今までローズピアノメインでしたがこちらはウーリッツァーピアノの音色。



そして楽曲は続けて 8. Run Way に突入します。こちらはキックドラムをパッドやシンセベースにコンプレッサーのサイドチェーンというもので繋げて、キックが鳴ると他の楽器の音量が抑えられます。そのダイナミックスと抑揚が作るグルーヴが特徴的です。
最後はマリオのゲームに世界のようなリフに突入して、レコードの回転数を落とすかのようにフィニッシュ。



そしてそこから回転数をあげたようにスタートするのが 9. Think Back。こういった曲同士の繋ぎもとっても上手なアルバムですね。
この曲はドラムのリズムがトップにいて、ピアノとベースが大分重たく後ろの方にいるネオソウル的グルーヴの曲です。



10. Now And Then
16分音符を刻みながら作る3拍子のグルーヴの曲。ドラムとシンセベース、そして手拍子が作る独自のグルーヴで、手拍子がやたら生っぽいミックスになっているのが逆に聴き手を集中させます。



楽曲はそのまま 11. Change Your Mind に突入します。こちらは一気にトーンダウンしてバラードの曲です。



12. Show The Way
コンガやタンバリン、シェイカーといった楽器が加わり、少しだけセッション感の強い作品になっています。そんな中でもAメロがポップで記憶に残りやすい作品かもしれません。



13. Let You Go
おそらく流れるような水の音やシンセの音が絡み合い神秘的な出だしから始まります。こちらも特徴的な、美しいメロディーラインを繰り返し繰り返し、しかしアレンジは変わりながら演奏されるます。それがLet You Goっていうタイトルですが、頭にはしっかりメロディラインが残ってこのアルバムが幕を閉じます。



それではまた次回。


文:曽根麻央 Mao Soné



Recommend Disc

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Title :『Voyager』
Artist : Moonchild
LABEL : Tru Thoughts
発売年 : 2017年





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【SONG LIST】

01.Voyager (Intro)
02.Cure
03.6am
04.Every Part (for Linda)
05.Hideaway
06.The List
07.Doors Closing
08.Run Away
09.Think Back
10.Now and Then
11.Change Your Mind
12.Show The Way
13.Let You Go
14.Cure (instrumental)
15.The List (instrumental)



曽根麻央『プレイズ・スタンダード』

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トランペット/ピアノの"ジャズ二刀流"として話題の曽根麻央がソロピアノで紡ぐスタンダードソング集が全国発売決定!
往年のジャズの名曲をフレッシュな感性で解釈。
抒情性と気品に彩られた曽根のジャズ・ミュージシャン、ピアニストとしてのアティテュードが表現されている作品に仕上がった。


曽根麻央『プレイズ・スタンダード』


1.Reflections in D
2.Serenade
3.In Your Own Sweet Way
4.The Star-Crossed Lovers
5.Wave
6.Stella by Starlight
7.All The Things You Are
8.Luminous (Piano Solo Ver.)
9.I Loves You, Porgy
10.Lady Luck11.Danny Boy
12.Home (Piano Solo Ver.)
13.Some Other Time
14.Ask Me Now
15.The Days of Wine And Roses
16.What A Wonderful World

Mao Soné (piano, trumpet)


曽根麻央のその他情報はウェブサイトへ

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「Monthly Disc Review」アーカイブ曽根麻央
2020.04『Motherland / Danilo Perez』2020.05『Color Of Soil /タイガー大越』2020.06『Passages / Tom Harrell 』2020.07『Inventions And Dimensions / Herbie Hancock』2020.08『Birth Of The Cool / Miles Davis』2020.09『Chet Baker Sings / Chet Baker』2020.10『SFJAZZ Collective2 / SFJAZZ Collective』2020.11『Money Jungle: Provocative In Blue / Terri Lyne Carrington』2020.12『Three Suites / Duke Ellington』2021.01『Into The Blue / Nicholas Payton』2021.02『Ben And "Sweets" / Ben Webster & "Sweets" Edison』2021.03『Relaxin' With The MilesDavis Quintet / The Miles Davis Quintet 』2021.04『Something More / Buster Williams』2021.05『Booker Little / Booker Little』2021.06『Charms Of The Night Sky / Dave Douglas』2021.07『Play The Blues / Ray Bryant Trio』2021.08『The Sidewinder / Lee Morgan』2021.09『Esta Plena / Miguel Zenón』2021.10『Hub-Tones / Freddie Hubbard』2021.11『Concert By The Sea / Erroll Garner』2021.12『D・N・A Live In Tokyo / 日野皓正』2022.1『The Tony Bennett Bill Evans Album / Tony Bennett / Bill Evans』2022.2『Quiet Kenny / Kenny Dorham』2022.3『Take Five / Dave Brubeck』・2022.4『Old And New Dreams / Old And New Dreams』2022.5『Ella Fitzgerald And Louis Armstrong / Ella And Louis』2022.6『Live from Miami / Nu Deco Ensemble & Aaron Parks』2022.7『Oscar Peterson Trio + One / Oscar Peterson Trio Clark Terry』2022.8『Ugetsu/ Art Blakey & The Jazz Messengers』2022.9『Sun Goddess / Ramsey Lewis』2022.10『Emergence / Roy Hargrove Big Band』2022.11『Speak No Evil / Wayne Shorter』2022.12『The Revival / Cory Henry』2023.1『Complete Communion / Don Cherry』2023.2『Your Mother Should Know: Brad Mehldau Plays The Beatles / Brad Mehldau』2023.3『Without a Net / Wayne Shorter』2023.4『LADY IN LOVE / 中本マリ』2023.5『Songs Of New York / Mel Torme』2023.6『Covers / James Blake』2023.7『Siembra / Willie Colón & Rubén Blades』2023.8『Undercover Live at the Village Vanguard / Kurt Rosenwinkel』2023.09『Toshiko Mariano Quartet / Toshiko Mariano Quartet』2023.10『MAINS / J3PO』2023.11『Knower Forever / Knower』2023.12『Ella Wishes You A Swinging Christmas / Ella Fitzgerald』2024.01『Silence / Charlie Haden with Chet Baker, Enrico Pieranunzi, Billy Higgins』2024.02『Rhapsody in Blue Reimagined / Lara Downes』2024.03『Djesse Vol. 4 / Jacob Collier』

Reviewer information

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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

曽根麻央Official Site

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