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曽根麻央 Monthly Disc Review2023.10_J3PO : MAINS

こんにちは。マルチインストゥルメンタリストことジャズ二刀流の曽根麻央です。みなさんいかがお過ごしでしょうか? 
私は先月9月に初のアコースティック・ソロ・アルバム『Plays Standards』をリリースさせていただいたばかりです。
これからリリースライブの海外公演も控えていますし、サポートのお仕事でツアーもあり、年内はスケジュールがみっちり組まれています。


Mao Sone Plays Standards Release Live


10/29 (Sun) 水戸(茨城) Girl Talk
Open 16:00, Start 17:00 (2 sets)
https://www.girltalk.co.jp/index.shtml


12/10(Sun) 柏(千葉) Studio WUU
Open 17:30, Start 18:00
https://www.wuu.co.jp/


さて、アコースティック・ピアノを中心に置いたアルバムをリリースしたばかりなのですが、実は今年、Sequentialというメーカーのフラグシップとも言えるアナログ・シンセサイザー「Prophet 6」を年始に手に入れることができました。
私の音楽人生では初の本格的アナログ・シンセで、レコーディングやライヴでの実用化に向けて毎日挑戦中なのです。
最初は一回のレコーディングに必要で購入しようと決意したのですが、その無限の可能性に気づき研究の日々を重ねています。


そんな中、Prophet 6のあらゆる使い方を模索するのにネットサーフィンをしていたところ出会ったのが、今回紹介する「J3PO」ことJulian Waterfall Pollackというアーティストです。

Mains.jpg

Title : 『MAINS』
Artist : J3PO

彼はYouTubeで、演奏動画だけでなく、シンセサイザーの使い方やトラックの作り方までも、とても素晴らしいコンテンツを配信しています。


最初は私も勉強材料として彼の動画を見続けていたのですが、徐々にJ3POが実はただのシンセマニアではなく、素晴らしい鍵盤奏者だったことに気づきました。
この人がどんな音楽を作るのか気になり、今回のアルバムに出会いました。


J3POことJulian Waterfall Pollack。
本名名義ではアコースティック・ピアノを中心にジャズ・アルバムを出していて、J3PO名義ではシンセサイザーを中心にエレクトロ・ミュージックを製作しているようです。


アコースティック・ピアニストとしての作品を聴くと、ブラッド・メルドーやケニー・ワーナー、アーロン・パークスといったアーティストの影響を色濃く感じ取れます。
キーボーディスト/ピアニストとして、そもそも、マーカス・ミラーやクリス・ボッティーといった世界的アーティストのツアーに参加するなどしていますので、ジャズ奏者としての経験は十分にある人物といってよいでしょう。



J3PO名義のキーボードやシンセの音色作りがとても綺麗で私はすごく好みで、彼の動画を参考に、耳コピで自分のシンセサイザーで音を再現しようと試みていました。
どうして彼の音色はそこまで魅力的なのか?とずっと疑問に思っていましたが、今回ご紹介するのに彼の経歴を調べてみると、どうやら私が実際にレコーディングやライヴで使っているシンセ音源、SpectrasonicsのOmnisphereやKeyscapeといったプログラムの開発に携わっているようで、実際に私が使っているキーボードNord Stage 3のパッチ(音色)の開発にも携わっているようです。
なるほど、実際に使っている機材の音の開発に携わった人物か...見事にツボを抑えられていたといった感じですね。


さてJ3POの『Mains』は2021年のアルバムで、全ての曲が彼の打ち込みによる作品になっています。
打ち込みといってもシンセサイザーを多用した多重録音作品で、ジャズの即興演奏やソロの要素は十分に残されています。
シンプルなテーマやコードを展開させていくスタイルの曲が多く、39分間に14曲という短いトラックで構成されていることもありかなり聴きやすいアルバムになっています。BGMとして軽い気持ちで聴くもおしゃれで良い。また、しっかり聴いても構成が複雑かつ巧妙なのなので飽きないアルバムになっていると思います。


シンセサイザーは、彼の音作りの動画を見る限り、ProphetだけでなくMoogやNordなどヴィンテージから現代のシンセまで総合的に使っていると思います。それが時代を超越して現代的なニュアンスを出しているのかもしれません。
またシンセサイザーだけでなく、フェンダーローズの音色が所々顔を見せる(M2のStart SumpthinやM12のPoppy Seedなど)のが音に暖かさをプラスしていて、とても心地よいですね。


またアコースティック・ピアノもソロなどで使われていて(M11 Silver Liningなど)、見事にブレンドされています。


ジャズのエッセンスを持ちながら、エレクトロやK-POPイッシュのセンスも掛け合わせることができる次世代アーティストとして、今後とも注目され続けるべきアーティストだと思います。
またジャズリスナーが高齢化する中で、これからの世代にも通用するサウンドで音楽をクリエイトできる表現者でもあると思うので、是非聴いていただけると嬉しいです!


それではまた次回。


文:曽根麻央 Mao Soné



Recommend Disc

Mains_200.jpg
Title :『MAINS』
Artist : J3PO
LABEL : WATERFALL TONED MUSIC
発売年 : 2021年


【SONG LIST】

01.intro - line check
02.Start Sumpthin Up
03.100 Degrees
04.Right Now
05.I've Changed My Mind
06.interlude - preheat
07.Night Sky
08.Breaktime
09.interlude - onions
10.Oof
11.Silver Lining
12.Poppy Seed
13.Quiet Place
14.outro - just a thought



曽根麻央『プレイズ・スタンダード』

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トランペット/ピアノの"ジャズ二刀流"として話題の曽根麻央がソロピアノで紡ぐスタンダードソング集が全国発売決定!
往年のジャズの名曲をフレッシュな感性で解釈。
抒情性と気品に彩られた曽根のジャズ・ミュージシャン、ピアニストとしてのアティテュードが表現されている作品に仕上がった。


曽根麻央『プレイズ・スタンダード』


1.Reflections in D
2.Serenade
3.In Your Own Sweet Way
4.The Star-Crossed Lovers
5.Wave
6.Stella by Starlight
7.All The Things You Are
8.Luminous (Piano Solo Ver.)
9.I Loves You, Porgy
10.Lady Luck11.Danny Boy
12.Home (Piano Solo Ver.)
13.Some Other Time
14.Ask Me Now
15.The Days of Wine And Roses
16.What A Wonderful World

Mao Soné (piano, trumpet)


曽根麻央のその他情報はウェブサイトへ

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「Monthly Disc Review」アーカイブ曽根麻央
2020.04『Motherland / Danilo Perez』2020.05『Color Of Soil /タイガー大越』2020.06『Passages / Tom Harrell 』2020.07『Inventions And Dimensions / Herbie Hancock』2020.08『Birth Of The Cool / Miles Davis』2020.09『Chet Baker Sings / Chet Baker』2020.10『SFJAZZ Collective2 / SFJAZZ Collective』2020.11『Money Jungle: Provocative In Blue / Terri Lyne Carrington』2020.12『Three Suites / Duke Ellington』2021.01『Into The Blue / Nicholas Payton』2021.02『Ben And "Sweets" / Ben Webster & "Sweets" Edison』2021.03『Relaxin' With The MilesDavis Quintet / The Miles Davis Quintet 』2021.04『Something More / Buster Williams』2021.05『Booker Little / Booker Little』2021.06『Charms Of The Night Sky / Dave Douglas』2021.07『Play The Blues / Ray Bryant Trio』2021.08『The Sidewinder / Lee Morgan』2021.09『Esta Plena / Miguel Zenón』2021.10『Hub-Tones / Freddie Hubbard』2021.11『Concert By The Sea / Erroll Garner』2021.12『D・N・A Live In Tokyo / 日野皓正』2022.1『The Tony Bennett Bill Evans Album / Tony Bennett / Bill Evans』2022.2『Quiet Kenny / Kenny Dorham』2022.3『Take Five / Dave Brubeck』・2022.4『Old And New Dreams / Old And New Dreams』2022.5『Ella Fitzgerald And Louis Armstrong / Ella And Louis』2022.6『Live from Miami / Nu Deco Ensemble & Aaron Parks』2022.7『Oscar Peterson Trio + One / Oscar Peterson Trio Clark Terry』2022.8『Ugetsu/ Art Blakey & The Jazz Messengers』2022.9『Sun Goddess / Ramsey Lewis』2022.10『Emergence / Roy Hargrove Big Band』2022.11『Speak No Evil / Wayne Shorter』2022.12『The Revival / Cory Henry』2023.1『Complete Communion / Don Cherry』2023.2『Your Mother Should Know: Brad Mehldau Plays The Beatles / Brad Mehldau』2023.3『Without a Net / Wayne Shorter』2023.4『LADY IN LOVE / 中本マリ』2023.5『Songs Of New York / Mel Torme』2023.6『Covers / James Blake』2023.7『Siembra / Willie Colón & Rubén Blades』2023.8『Undercover Live at the Village Vanguard / Kurt Rosenwinkel』2023.09『Toshiko Mariano Quartet / Toshiko Mariano Quartet』



Reviewer information

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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

曽根麻央Official Site

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