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曽根麻央 Monthly Disc Review2024.06_Eliane Elias : Quietude

みなさんこんにちは、曽根麻央です。
今日はブラジル、サンパウロが生んだ世界的ジャズアーティストEliane Eliasの『Quietude』という作品をご紹介します。
この作品はボサノヴァと彼女の歌にフォーカスを当てています。大変聴きやすく、あまりブラジリアン音楽やジャズに馴染みのない人にも大変おすすめのアルバムです。
もちろん演奏も歌も選曲もアレンジも素晴らしく音楽ファンにも満足してもらえる内容であります。しかし同時にドライヴ、カフェ、リヴィングルーム等、時間と場所を選ばず空間に溶け込むことができる、ある意味完璧なアルバムかもしれません。


その前に一つ宣伝させてください。
僕のレーベルclaudiaで制作したアナログ7インチ盤が、8/3から開催されるシティ・ポップに特化したイベント"City Pop on Vinyl"で発売されます。
昨年のレーベルで発売して好評をいただいた作品『City Pop Rendez-Vous』の続編として制作され、シンガーには引き続きAiriが「中央フリーウェイ」「MUSIC BOOK」とシティ・ポップの代表曲を歌っています。
僕は他すべての楽器を演奏してアレンジ、ミックス、プロデュースをしてます。Airiとこだわって制作しました。ぜひ買ってください!


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『中央フリーウェイ/MUSIC BOOK』7' Analog
https://ultravybe.lnk.to/OTS-356


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『City Pop Rendez-Vous』CD
https://ultravybe.lnk.to/citypoprendez-vous




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Title : 『Quietude』
Artist : Eliane Elias


Eliane Eliasの存在は2000年に制作されたラテン・ジャズ・ドキュメンタリー映画『Calle 54』で知ったという人は多いのではないでしょうか?
リズミカルに、尚且つ繊細に力強くボサノヴァのスタイルでピアノを弾くElianeの素晴らしい演奏が収録されていますが、この映画には他にも、Michel Camilo、Chucho Valdés、Bebo Valdés、Cachao、Gato Barbieri、Tito Puente、Paquito D'Riveraといったラテン・ジャズのスターや巨匠が出演していて、たいへん内容の濃いものです。
ラテン・ジャズを知るのに当時最も適した映像資料であったなと思います。





僕自身、小学生の時にこのドキュメンタリー映画を見てEliane のファンになり、その時から彼女のボサノヴァの弾き方などを映像で見て勉強していました。


実は先月久しぶりにEliane Eliasが来日したので、ブルーノート東京で聴いてきました。
今回はLeandro Pellegrinoという僕のバークリー音楽大学時代の友人をギタリストとして帯同しての来日だったので、その友人との再会も大きな目的でした。
ドラムにはRafael Barataというブラジリアンの名手を、そしてベースには巨匠Marc Johnsonを連れてきてくれました。
Marc JohnsonはかのBill Evansのトリオのメンバーとして長年活躍した人ですが、私生活ではEliane Eliasと結婚していて、実質現在ではEliane Eliasバンド以外でMarcを聴くことはほぼできないでしょう。
それほどまでに、Eliane という存在と彼女の音楽にコミットしているMarcのベースとElianeは、素晴らしい息の合い方をするのはもちろんですが、そもそもブラジリアン音楽でベースはリズムやハーモニーを正しく機能させる上で非常に重要な役割をしています。

プログラムの序盤はステージ全体を使って、上手から下手にかけて、ギター、Eliane、ベース、ドラムと配置していました。
序盤も最高だったのですが、中盤で突如配置を上手側に移動して、グランドピアノの後ろにベースが近づき、ドラマーがElianeと背合わせになる形に舞台のセットアップを変えました。
ドラムセットではなく小さな太鼓とシンバルを組み合わせたパーカッションセットのようなものでした。

そこでElianeが「今からボサノヴァの誕生を再現したいと思います。ボサノヴァはリオデジャネイロの小さい部屋でギターと歌、パーカッション、ベース、ピアノといった楽器を合わせてセッションしていたところから始まりました。」と日本の聴衆に向けてボサノヴァという音楽の説明を少し入れてくれました。
そしてこのセッティングでレコーディングしたのがコロナ禍に発売したアルバム『Quietude』ですと、アルバムの紹介をして、アルバムから数曲、この小さなセットアップで最高のプレゼンテーションをしてくれました。
本当に一生聴いていたかったプログラムでした。

帰ってからはアルバムで収録されているのは幸運だと思い、何度も聴きました。


さて、ボサノヴァという音楽を正しく理解して演奏できるミュージシャンは少ないでしょう。
まず言葉がわからないと演奏する時リズムが合わないように出来ているのが、非常に演奏のハードルを上げています。
さらにそれに合わせて緻密なハーモニーと、世界的にも類を見ない、複雑かつ極上のメロディーを歌い上げるのは容易ではありません。

僕にとってはラテン音楽がそうですが、きちんと聴いて、そいてまた聴いて、研究してみて、現地に行ってみて、ようやく少し演奏できるようになるものです。
ブラジルは残念ながら行ったこともなければ、ポルトガル語は全くわからないのでこれから要勉強です。
もちろんラテン音楽とブラジリアン音楽は共通しているところも多くあるので、ラテン音楽として学んだニュアンスをそのまま活かせる時もあるのですが、やはり各国で独自の音楽のコミュニケーションがあります。

そういう詳細を感じたり気づくことが音楽の楽しさだったり、上達につながると思っています。
そしてこのアルバムは入門アルバムとしても優れているなと思いました。
オリジナルのレコーディングよりも新しいので色々なパートがクリアですし、モダンなので現代的なアプローチの仕方も聴いていてわかりやすいです。

ぜひブラジリアン音楽を楽しく聴いて、この夏を過ごしてみてください。

それではまた次回。


文:曽根麻央 Mao Soné



Recommend Disc

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Title :『Quietude』
Artist : Eliane Elias
LABEL : Candid
発売年 : 2022年





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【SONG LIST】

01.Você E Eu (You and I)
02.Marina
03.Bahia Com H (Bahia with H)
04.Só Tinha Que Ser Com Você (This Love That I've Found)
05.Olha (Look)
06.Bahia Medley: Saudade da Bahia / Você Já Foi á Bahia
07.Eu Sambo Mesmo (I Really Samba)
08.Bolinha de Papel (Little Paper Ball)
09.Tim-Tim Por Tim-Tim
10.Brigas Nunca Mais (No More Fighting)
11.Saveiros




曽根麻央『Expressions on the Melody of Kokiriko』
富山のこきりこ節をモチーフに展開した17分の作品がデジタルリリース!

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https://ultravybe.lnk.to/eotmok

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「Monthly Disc Review」アーカイブ曽根麻央
2020.04『Motherland / Danilo Perez』2020.05『Color Of Soil /タイガー大越』2020.06『Passages / Tom Harrell 』2020.07『Inventions And Dimensions / Herbie Hancock』2020.08『Birth Of The Cool / Miles Davis』2020.09『Chet Baker Sings / Chet Baker』2020.10『SFJAZZ Collective2 / SFJAZZ Collective』2020.11『Money Jungle: Provocative In Blue / Terri Lyne Carrington』2020.12『Three Suites / Duke Ellington』2021.01『Into The Blue / Nicholas Payton』2021.02『Ben And "Sweets" / Ben Webster & "Sweets" Edison』2021.03『Relaxin' With The MilesDavis Quintet / The Miles Davis Quintet 』2021.04『Something More / Buster Williams』2021.05『Booker Little / Booker Little』2021.06『Charms Of The Night Sky / Dave Douglas』2021.07『Play The Blues / Ray Bryant Trio』2021.08『The Sidewinder / Lee Morgan』2021.09『Esta Plena / Miguel Zenón』2021.10『Hub-Tones / Freddie Hubbard』2021.11『Concert By The Sea / Erroll Garner』2021.12『D・N・A Live In Tokyo / 日野皓正』2022.1『The Tony Bennett Bill Evans Album / Tony Bennett / Bill Evans』2022.2『Quiet Kenny / Kenny Dorham』2022.3『Take Five / Dave Brubeck』・2022.4『Old And New Dreams / Old And New Dreams』2022.5『Ella Fitzgerald And Louis Armstrong / Ella And Louis』2022.6『Live from Miami / Nu Deco Ensemble & Aaron Parks』2022.7『Oscar Peterson Trio + One / Oscar Peterson Trio Clark Terry』2022.8『Ugetsu/ Art Blakey & The Jazz Messengers』2022.9『Sun Goddess / Ramsey Lewis』2022.10『Emergence / Roy Hargrove Big Band』2022.11『Speak No Evil / Wayne Shorter』2022.12『The Revival / Cory Henry』2023.1『Complete Communion / Don Cherry』2023.2『Your Mother Should Know: Brad Mehldau Plays The Beatles / Brad Mehldau』2023.3『Without a Net / Wayne Shorter』2023.4『LADY IN LOVE / 中本マリ』2023.5『Songs Of New York / Mel Torme』2023.6『Covers / James Blake』2023.7『Siembra / Willie Colón & Rubén Blades』2023.8『Undercover Live at the Village Vanguard / Kurt Rosenwinkel』2023.09『Toshiko Mariano Quartet / Toshiko Mariano Quartet』2023.10『MAINS / J3PO』2023.11『Knower Forever / Knower』2023.12『Ella Wishes You A Swinging Christmas / Ella Fitzgerald』2024.01『Silence / Charlie Haden with Chet Baker, Enrico Pieranunzi, Billy Higgins』2024.02『Rhapsody in Blue Reimagined / Lara Downes』2024.03『Djesse Vol. 4 / Jacob Collier』2024.04『Voyager / Moonchild』2024.05『Evidence with Don Cherry / Steve Lacy』



Reviewer information

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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

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