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JAZZ in NEW YORK#1

ニューヨークを拠点に活動しているピアニスト、中原美野(なかはらよしの)さん。
5月23日にファーストアルバム『A Ray of Light』をリリース。
そしてその新作を引っさげての凱旋ライブが6月5日(金)渋谷JZ Bratで決定しています。

そんな中原美野さんが、ライブまでの約1ヵ月間、
"JAZZ in New YORK"シリーズとして毎週JJazz.Netにコラムを届けてくれることになりました!

大学卒業後、一般企業に就職していた彼女が何故今NYでジャズを演奏しているのか?
このコラムではNYのジャズ事情と共に、彼女のストーリーも紹介してもらいます。
毎週金曜日の更新をお楽しみ下さい。


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■NYに渡った理由
The reason why I moved to New York (the US)



大学を卒業後、何年か会社員をしていたんです。
それがなぜかこんなことに。


4歳(5歳になる2ヶ月前)からYAMAHAでピアノを習い始め、小学校に入ってからは専門科コースというところに所属し、週3回レッスンに通い、アンサンブルや音楽理論を学び、頻繁にコンサートや作曲の課題をこなした。学校では部活等でフルートやトロンボーンなど色んな楽器を演奏したし、合唱団で歌も伴奏もしたし、ポップスも大好きで、「ミュージックステーション」も「Hey!Hey!Hey!」も「Countdown TV」も毎週楽しみにしていた。


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受験する高校を選ぶときに、音大付属を受けることも考えた。けど、音楽の道は厳しいからやめといたら、というアドバイスを受け、そうですね、とあっさりあきらめた。そのとき私の選択肢には「クラシックのピアニスト」しかなく、コンクールに向けて毎日何時間も一人で練習練習、プレッシャーとの闘い、というイメージしかなかったから。苦しいだけだろうと思った。受験のためしばらくピアノを中断したが、高校入学後、ピアノを再開。その後、就職活動のタイミングでまたピアノから遠のいた。就職後しばらく経ち、また音楽をやりたくなった。せっかくだから新しい楽器をやってみようと思い、アルトサックスを習い始めた。


先生のライブに行って初めて、ジャズってかっこいいな!と思った。ジャズの「バンド」の演奏に魅力を感じ、先生のライブでピアノを弾かれていた今泉正明さんが参加されていた、別のバンドのライブにも行ってみた。御茶ノ水NARUで、そのライブにめちゃくちゃ衝撃を受ける。なんだこのエネルギーと迫力は!!!そこで演奏されていたのは太田剣さんのバンド。ドラムが大槻カルタ英宣さん。それ以来、剣さんのバンド、カルタさんのバンドに何度も足を運び、ほかのミュージシャンの方々のライブへも行った。曲のかっこよさ、メンバーの一体感、楽しく演奏されている様子に、仕事で疲れたり落ち込んだりしていても、元気をもらえた。週4回くらいジャズのライブに行っていた時期もあったのでは。母に心配されたくらい。


慶応義塾大学に通っていたものの、在学中はジャズに興味を持っておらず、ジャズ研に入ろうというアイディアも全くなかった。働き始めてから、やっとジャズに出会いました。オーディエンスとして、かっこいい!!楽しい!という思いが持続すると同時に、私もジャズをちゃんと学んで上手くなって、あの方々と一緒に演奏したい!!という気持ちがどんどん強くなっていった。


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ジャズだったら楽しく演奏できそうな気がした。始めたばかりのサックスでは無理だ、とピアノにまた戻って来た。前述のピアニスト今泉さんに直接連絡をし、レッスンを受け始めた。週一回会社の後にメーザーハウスに通ってジャズ理論も勉強した。ですが、会社に行きながらのレッスン。まったく練習をせず、いつも今泉さんに申し訳ない気持ちでいっぱいだった。音楽だけに集中できる環境に身を置きたい、と思い始めた。年齢関係なく学生としてなじめそうだったこと、父が海外で単身赴任をしていたこともあり、海外の生活にずっと憧れがあったこと、そしてその学校の評判から、バークリー音楽大学入学を考えた。同校を卒業されている今泉さんからの、音楽を仕事とする、という点に関しての反対も押し切って、同校の奨学金オーディションを受けた。反対されながらも、オーディションに向けての準備に全面的にご協力くださった今泉さんに、とても感謝しています。


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そして無事オーディションに受かったのですが、すぐに渡米せず、マーケティングを学べるという理由で、あるベンチャー企業に転職した。働きながらもずっとバークリーのことは頭にあったが、本当に経済的に安定した生活を捨てていいのだろうか、いったんやめたら戻って来て再就職したいと思っても難しいのではないか、など現実的な恐怖がいっぱいだった。(もともと渡米するなら1年間だけ音楽を勉強して日本に戻ろうと思っていた。) でも、音楽に挑戦したかった。挑戦せずにあきらめるのは嫌だった。一方、仕事の方は、転職前は営業のサポートや経営管理といった仕事だったので、営業職がまったくうまくいかずなかなか成績が出なかった。ただ負けず嫌いな性格で、いったん営業という仕事を始めてしまったからには、結果を出さずにやめるのは不本意だった。心配してくださっていた先輩から、せっかく受かったんだからバークリーに行った方がいいよ、という説得を何度か受け、その度に葛藤があった。結局、1年半程でやっとそれなりの成績を出すことができ、それをきっかけに入学を決意した。
でも結果的に、このタイミングで渡米できて本当に良かったと思っている。そして、働いた二つの会社で鍛えられたことが、ミュージシャンとして生きるのに十分役立っている気がする。営業、プロモーション、さまざまな手配、事務処理、税金の申請などの手続、全部自分でやらないといけないので。


日本で音大や専門学校に行っていたわけではなく、オーディションも入学の手続きも自分で行ったのですが、手続に関しては、学校とのやりとりが全くスムーズに行かなかった。今となっては「アメリカなら普通のこと」ですが。もうこのときからこのアメリカの文化との終わりのない戦いが始まっていたのですね。


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そして2009年の1月に無事ボストンに渡った。予定の1年間なんて、あっという間に過ぎた。アメリカの生活や学校のシステム、英語に慣れること、人間関係の問題(最大の敵)。そういったことをクリアするのに大半の力を使った。ジャズには足を踏み入れられてもいない、くらいのレベルだった。


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こんな段階で帰れない、とすぐ悟った。幸い働いて貯めたお金、奨学金なども手伝って、結果的には3年間、泣きながら(本当に泣きながら)学生生活を送り、無事卒業に至ることに。


アメリカで海外の学生が大学を卒業するとその後1年間、OPTという職業訓練のためのビザを申請することができる。バークリーを卒業したら、そのビザを利用して、数ヶ月間だけジャズの本場のニューヨークを味わって帰ろう、と思った。在学中から、プロフェッサーからニューヨークは競争が激しい、優秀な卒業生も苦労して悩んでる、と聞いていたので、そのシーンで戦える気は正直していなかった。バークリーはとんでもなく才能あるミュージシャンだらけでその人たちでさえ苦戦しているのだから。


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そんな予定が、今ニューヨークに来て4年目。ちょっと味わおうなんて、とんでもない!!
すみませんでした!!この続きはまた。

中原美野




【中原美野 "A Ray of Light" Release Tour 2015】

NYを拠点に活躍している新人ピアニスト/コンポーザー中原美野がJZ Brat初登場!1stアルバム『A Ray of Light』のリリースを記念して豪華メンバーが集結。ドラマ、映画、CMの音楽のアドバイザーを務めるなど、日本の音楽シーンへも活動の幅を広げている彼女から目が離せない。


<日時>
2015.6.5.Friday
1st:Open 17:30 Start 19:30
2nd:Open 21:00 Start 21:30
※時間が通常と異なります。

<出演>
中原美野(p)西口明宏(ts)土井孝幸(b)大槻"KALTA"英宣(ds)
Guest: 太田 剣(sax)

<場所>
JZ Brat(渋谷)
〒150-0031 東京都渋谷区桜丘町26-1 セルリアンタワー東急ホテル2階

<料金>
入替制¥4,000 2ステージ¥6,000

<予約・お問い合わせ>
JZ Brat
03-5728-0168(平日15:00~21:00)
予約はこちら

<詳細>
http://www.jzbrat.com/liveinfo/2015/06/#20150605(JZ Brat)


CD情報はこちら
※ライブ会場限定販売




【Pianist Yoshino Nakahara Album"A Ray of Light" EPK】




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Profile

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中原美野(Yoshino Nakahara)(ピアニスト/作曲家/編曲家/講師)

4歳でピアノを始め、ヤマハ音楽教室でクラシック演奏や作曲、アンサンブルを学び、幼少時代より作曲で多くの賞を獲得。大学を卒業後、趣味でアルトサックスを手にしたことをきっかけに、ジャズと出会う。
ジャズ・ライブに足繁く通う中、「ピアノでジャズ演奏を学びたい」と、ジャズ・ピアニスト今泉正明に師事する。バークリー音楽大学より奨学金を獲得後、2009年に渡米。2011年、「Professional Music Major Achievement Award」を受賞。ボストンで演奏活動を開始し、地元ラジオ局等に出演。多数の著名プレイヤーと共演する。ジャズだけでなく、クラシックのコンサートやミュージカルでも演奏。2011年卒業後、拠点をニューヨークに移し、北川潔、E.J. Strickland、Gilad Hekselmant等トップクラスのミュージシャンをバンドメンバーに迎え、ライブ活動を行う。2012年9月にはTomi Jazzの「Artist of the Month」に選ばれ、2013年1月には週刊NY生活に特集記事が掲載される。様々なジャンルのバンドでサイドマンとしても活躍。2014年4月には、所属するGregory McDowellバンドでの演奏の様子がNew York Timesに掲載される。その他、音楽学校でピアノやフルートの講師として、また教会でオルガン奏者としても活躍している。2013年、TBSドラマ「潜入探偵トカゲ」のサウンドトラックに、自身でアレンジしたソロピアノ演奏が収録される。日本テレビ音楽のミュージック・ライブラリーの楽曲、スマートフォンアプリのBGM等の演奏、またドラマ、映画、CMの音楽のアドバイザーを務めるなど、日本の音楽シーンへも活動の幅を広げる。2014年、初の帰国ライブを行い、大好評を博した。2015年、ニューヨークにて自己のバンドでレコーディングした1stアルバム「A Ray of Light」をリリースする。


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