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曽根麻央 Monthly Disc Review2023.6_James Blake : Covers:Monthly Disc Review

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こんにちは、曽根麻央です。
今日は2020年にリリースされたJames Blakeによるカヴァー・アルバムを紹介しようと思います。

その前に一つお知らせがありまして...

この度、曽根麻央が新しいレーベル"claudia"を立ち上げました!

実は今日まで、僕がコロナ渦中に立ち上げた会社では音源、CM制作、劇版アレンジなど様々なプロダクションを行ってきました。
その中のひとつの目標として掲げていたことが新規レーベルのローンチでした。

これから色々なアーティストとコラボしたいと期待しているところですが、 早速その記念すべき第一弾として『CITY POP RENDEZ-VOUS / Airi』が7/12に全国発売されます。 今世界からも注目を集めるシティ・ポップをアコースティックな編成で再発掘、再構築した作品です。

シンガーにAiri をむかえ、彼女の歌い方で素敵にこれらの曲の世界観を表現してくれました! 是非この夏一番聴いていただきたい一枚になっています。
Amazon等で先行予約開始中、今夏のレコードイベントCITY POP on VINYL 2023 8/5(土)~での7インチ発表も決定しています!

どうぞレーベルとこれからの発展するクリエイティブな作品を温かく見守って頂ければ幸いです!


Airi - City Pop Rendez-Vous500.jpg


【CD販売/配信リンク】
https://ultravybe.lnk.to/citypoprendez-vous


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Title : 『Covers』
Artist : James Blake



【ジャンルとしての"JAZZ"にも共通項を発見できる作品、James Blake『Covers』】


ということで、今日ご紹介するのはJames Blakeです。

彼はイギリスを中心に主にエレクトロニックやR&B、Popのフィールドで活躍しているアーティストですが、今回のカヴァー・アルバムは既に有名な楽曲を彼の独自の歌い回しとアレンジで曲の世界観を深めていくという、まるでジャズ・アルバムの様になっていて、是非ジャズ・ファン、オーディオ・ファンにも聴いてもらいたい一枚です。

編成もシンプルで基本的にピアノと歌の弾き語り。
もちろん彼の得意分野であるエレクトロニックっぽい編成もちらっと顔を出しますが、基本シンプルな編成に留めているので、改めて演奏家として、歌手としてのこのアーティストの素晴らしさを体感できるアルバムになっています。構成も短く20分ほどで聴き終えてしまうので、あっという間です。

まずJames Blakeの歌ですが、決して張りあげることはなく落ち着いて聴けるのが嬉しいところです。ただその声にはメッセージがあり、人々をあっという間に惹きつけてしまう魅力がありインパクトがあります。低音から高音まで見事に、精度の高い表現が可能です。

ピアノはシンプルな伴奏に止まっている曲も多いですが、ハーモニーの展開の仕方や、ダイナミクスの付け方、歌への寄り添い方は見事です。しかし一方で「Atomosphire」では大胆にピアノでグリッサンドを使った特徴的なトラックを聴かせてくれていますし、「Never Dreamed You'd Leave in Summer」ではダイナミックなプレイになっています。「When We're Older」ではクラシカル的なアプローチで曲全体を彩っています。

01. When The Party's Over

2019年のBillie Eilish のカヴァー。ピアノと歌の構成で終始シンプルな印象。
彼の素朴でありながら説得力のある素晴らしさ=実力をまさに体感できるトラックです。


02. Atmosphere

1988年のイギリスのロックバンドJoy Divisionのカヴァー。ピアノに独特なエフェクトがかかっていてイントロから印象的。するとパーカッションの様な音が4分音符を刻み本編へと入っていきシンセサイザーも加わり、という具合で彼の大胆緻密に配置されたエレクトロな魅力を味わえる一曲です。ピアノでグリッサンドを用いてCメージャースケールを大胆に使う部分などはとりわけ特徴的なトラックとしてリスナーに印象付けることに成功しています。




03. Never Dreamed You'd Leave In Summer

1971年のStevie Wonderのカヴァー。カヴァーが多いことでも知られるStevie Wonderですが、こんなスティービーのカヴァーを聴いたことがあるでしょうか。
トラックの最後ではJames Blakeのピアニストとしての魅力も余すところなく発揮、ダイナミックなプレイを聴くことができます。




04. Godspeed

2016年のFrank Oceanのカヴァー。歌い出だしは鳥肌が立つほどの歌唱。
Frank Oceanをカヴァーするという視点にもこのアルバムの意義を感じます。James Blakeによる少しフェイクしたメロディーのインパクトも味わい深いです。


05. When We're Older

ここで一曲登場するのがJames Blakeのオリジナル。特徴的なクラシカルなフルレンジのピアノ伴奏に誘われる様に曲が展開していきます。オーバーダブした歌が聴きどころでしょうか。改めて音のバランス、トータルクオリティーの高さに驚かされます。




06. The First Time Ever I Saw Your Face

アルバムの中で一番古い年代から選曲されたのが意外なことに1957年の作品、1972年のRoberta Flackの演奏で有名になった 「The First Time Ever I Saw Your Face」です。間違いなくJames Blakeの名唱が収められたトラックと言えます。

敢えてこういうクラシカルな切り口で終始James Blakeの世界観を語る、というスタイルにリスナーはさらに、どっぷり引き込まれてしまうんだろうなーと思いながらリピートボタンを押す次第です。




さて今回はジャンルとしての"JAZZ"にも共通項を発見できた作品、James Blakeの「Covers 」をご紹介しました。ぜひ気に入っているオーディオで一度聴いてみてください。

それではまた次回のレビューで!


文:曽根麻央 Mao Soné



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中本マリさんの10数年ぶりの新作が6/8に発売されました。
私・曽根麻央がプロデューサー/アレンジャーを担当し、マリさんの70~80年代の名盤『Lady In Love』『Aphrodite』『Moods Of A Lady』から11曲をセレクト!セルフ・カヴァー・アルバムとなっています。

ツアーもしますのでお近くの会場まで見に来てください!


中本マリ『Muse 1』 
6/8発売
Mari Nakamoto - vocal
Mao Sone - piano, fender rhodes, wurlitzer, clavinet, organ, prophet 6, trumpet & harpejji
Yuji Ito - bass
Kan - percussions






Recommend Disc

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Title : 『Covers』
Artist : James Blake
LABEL : Republic Records
発売年 : 2020年

アマゾン詳細ページへ

【SONG LIST】

01.When The Party's Over
02.Atmosphere
03.Never Dreamed You'd Leave In Summer
04.Godspeed
05.When We're Older
06.The First Time Ever I Saw Your Face




【曽根麻央LIVE INFO】


曽根麻央のその他情報はウェブサイトへ

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「Monthly Disc Review」アーカイブ曽根麻央
2020.04『Motherland / Danilo Perez』2020.05『Color Of Soil /タイガー大越』2020.06『Passages / Tom Harrell 』2020.07『Inventions And Dimensions / Herbie Hancock』2020.08『Birth Of The Cool / Miles Davis』2020.09『Chet Baker Sings / Chet Baker』2020.10『SFJAZZ Collective2 / SFJAZZ Collective』2020.11『Money Jungle: Provocative In Blue / Terri Lyne Carrington』2020.12『Three Suites / Duke Ellington』2021.01『Into The Blue / Nicholas Payton』2021.02『Ben And "Sweets" / Ben Webster & "Sweets" Edison』2021.03『Relaxin' With The MilesDavis Quintet / The Miles Davis Quintet 』2021.04『Something More / Buster Williams』2021.05『Booker Little / Booker Little』2021.06『Charms Of The Night Sky / Dave Douglas』2021.07『Play The Blues / Ray Bryant Trio』2021.08『The Sidewinder / Lee Morgan』2021.09『Esta Plena / Miguel Zenón』2021.10『Hub-Tones / Freddie Hubbard』2021.11『Concert By The Sea / Erroll Garner』2021.12『D・N・A Live In Tokyo / 日野皓正』2022.1『The Tony Bennett Bill Evans Album / Tony Bennett / Bill Evans』2022.2『Quiet Kenny / Kenny Dorham』2022.3『Take Five / Dave Brubeck』・2022.4『Old And New Dreams / Old And New Dreams』2022.5『Ella Fitzgerald And Louis Armstrong / Ella And Louis』2022.6『Live from Miami / Nu Deco Ensemble & Aaron Parks』2022.7『Oscar Peterson Trio + One / Oscar Peterson Trio Clark Terry』2022.8『Ugetsu/ Art Blakey & The Jazz Messengers』2022.9『Sun Goddess / Ramsey Lewis』2022.10『Emergence / Roy Hargrove Big Band』2022.11『Speak No Evil / Wayne Shorter』2022.12『The Revival / Cory Henry』2023.1『Complete Communion / Don Cherry』2023.2『Your Mother Should Know: Brad Mehldau Plays The Beatles / Brad Mehldau』2023.3『Without a Net / Wayne Shorter』2023.4『LADY IN LOVE / 中本マリ』2023.5『Songs Of New York / Mel Torme』



Reviewer information

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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

曽根麻央Official Site

曽根麻央 Monthly Disc Review2023.5_Mel Torme : Songs Of New York:Monthly Disc Review

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みなさん、こんにちは。マルチインストゥルメンタリストの曽根麻央です。
今回は偉大なシンガー、メル・トーメがニューヨークの歌を集めた『Songs Of New York』(1982)をご紹介します。

その前にすこし宣伝します!6月、曽根麻央Brightness Of The Livesのツアーが決定しました。
6/2 ブルーノート東京
6/6 岡山SOHO
6/7 大阪梅田Mr. Kelly's
6/8 名古屋 Mr Kenny's
6/9 静岡 Life Time

Member: 曽根麻央 trumpet, piano and etc、井上銘 guitar、山本連 bass、木村紘 drums、
Patrick Bartley (6/2のみ参加)
https://maosone.com/tour2023


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Title : 『Songs Of New York』
Artist : Mel Torme



【偉大なシンガー、メル・トーメによるアメリカン・ソングブック】


メル・トーメは「The Christmas Song」の作曲家として有名ですが、改めてこの現在にも通ずる素晴らしい歌唱テクニックの持ち主であり、表現者であることを再認識できればと思います。

アレンジャーにあの映画音楽で有名なJohn WilliamsやShorty Rogers、Richard Hazardなど当時の一流作家を迎えていて、サウンドも名エンジニアのBill Putnamによって録られています。音楽的にも聴きやすく、サウンドも素晴らしい名盤なのでぜひ聴いてみてください。





01. Sunday In New York

John Williams のアレンジで、元々は1963年の同タイトルの映画の曲のようです。心地よいワイヤー・ブラシのサウンドとバリトン・サックスの音色がグルーヴを支えます。John Williamsの作品はオーケストラが多いので、ビッグバンド編成の、しかもスウィングの作品はなかなか聴いたことがありませんでした。完璧な3分間ミュージックで心地よい!の一言でしょう。あっという間に聴き終わるのもジャズのこの時代の歌ものの良いところです。

3分間ミュージックとまだ録音文化が浸透してまもない頃は、3分半ぐらいがレコーディングできる限界だったと言われています。逆にこの縛りが良い演奏を生んでいるのですが、これがビッグバンドの、特に歌ものでは現在まで心地よい尺の長さとして受け継がれていると思います。


02. Autumn In New York

ジャズの偉大なスタンダードです。メル・トーメは丁寧にVerse(イントロのようなパートですが、歌詞があり、曲のストーリーを説明する重要な部分。インストではほぼ省略される)を歌っています。Richard Hazardのアレンジで、こちらはピアノトリオがフィーチャーされたストリングス・オーケストラが中心のアレンジで、とてもゴージャズです。


03. Lullaby of Birdland

またアメリカの偉大なソングブックに入る名曲です。 トランペッターでもあるShorty Rogersのアレンジです。まるでGeorge Shearingを彷彿とさせるサウンドで、ピアノトリオにヴィブラフォン、ギター、そしてフルートを加えた編成で心地よく演奏されます。このピアノがブロック・ヴォイシングしてる上にメロディーをギターとヴィブラフォンでユニゾンするのはGeorge Shearingが発明したサウンドで今ではジャズのサウンド作りに欠かせない手法となっています。


04. Broadway

軽快なスウィングの曲で、ビッグバンド編成でJohn Williamsのアレンジに戻っています。


05. Brooklyn Bridge

Shorty Rogersのアレンジ。Verseはギターとのデュオですが、メル・トーメの歌唱がとても素晴らしいです。テンポに入ってからは基本George Shearingスタイルでアレンジされています。


06. Let Me Off Uptown

John Williamsのアレンジ。再びビッグバンド編成です。先にも述べたのですがJohn Williamsのビッグバンドアレンジは珍しいのですが、このような曲をアレンジするとどこかフランク・シナトラのアレンジャーとして有名なNelson Riddleの雰囲気も少しある気がします。このトラックはメル・トーメの声の伸びが素晴らしく大歌手らしい歌い方になっています。


07. 42nd Street

今までの曲と雰囲気がガラッと変わり、ラテン風の妖艶な雰囲気になっています。Richard Hazardによるストリングスアレンジです。


08. Sidewalks Of New York

John Williamsのアレンジによる、映画音楽かと思わせるイントロから始まりますが、一旦曲に入ると軽快なスウィングワルツでピアノがテンションの強い和音を弾き続けるおもしろいアレンジです。


09. Harlem Nocturne

Richard Hazard編曲。ピアノトリオとストリングスを中心にしたアレンジ。スローなスウィングでこちらも7曲目のような妖艶な雰囲気が漂う一曲になっています。マイナー6やマイナーmaj7といったコードがこのような独特な雰囲気を作り出します。曲の中盤はその雰囲気がガラッと変わりブルースのフィールになる構成でとても珍しいと思います。


10. New York, New York

レナード・バースタインが音楽を担当したミュージカル『踊るニューヨーク』のテーマソング。映画はジーン・ケリーやフランク・シナトラが出演していて名作なのでみなさんも是非見てみてください。僕は個人的にこの時代のミュージカルが子供の頃から大好きでたくさん見ているのでいつかそれにまつわるアルバムも紹介したいですね!
Shorty Rogersのアレンジで、基本、George Shearingスタイルのアレンジですが、リズムがスウィングになったりラテンになったりとても楽しい見事な編曲になっています。ミュージカルではロックフェラーセンターや五番街、自由の女神などニューヨークの名所が各コーラス切り替わりながら歌っています。そんな雰囲気を想像しながら聴いても楽しい曲です。


11. There Is A Broken Heart For Every Light On Broadway

Shorty Rogersのアレンジ。楽しさのあとの寂しい雰囲気の曲。スウィングなのですが、それに対抗するようにメロディーは基本ストレートで奏でられていて、少し3連音符によったりそのバランスが素晴らしいです。


12. Manhattan

Richard Hazardの編曲。とても印象的なストリングスのイントロから始まり、ミュージカルを見ているような曲作りをしています。


13. My Time Of Day

1:22と、とても短いトラックですが、美しいアレンジと、素晴らしい歌唱が聴けるバラードのトラックになっています。アルバムの締めくくりとなるようなエンディングです。


前回ご紹介したアルバム『Lady In Love』の中本マリさんの10数年ぶりの新作が6/8に発売されることが決定しました。私・曽根麻央がプロデューサー/アレンジャーを担当し、マリさんの70~80年代の名盤『Lady In Love』『Aphrodite』『Moods Of A Lady』から11曲をセレクト!セルフ・カヴァー・アルバムとなっています。

ツアーもしますのでお近くの会場まで見に来てください!


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中本マリ『Muse 1』 
6/8発売
Mari Nakamoto - vocal
Mao Sone - piano, fender rhodes, wurlitzer, clavinet, organ, prophet 6, trumpet & harpejji
Yuji Ito - bass
Kan - percussions






それではまた次回。


文:曽根麻央 Mao Soné



Recommend Disc

meltorme200.jpg
Title : 『Songs Of New York』
Artist : Mel Torme
LABEL : Atlantic Jazz
発売年 : 1964年

アマゾン詳細ページへ

【SONG LIST】

01.Sunday In New York
02.Autumn In New York
03.Lullaby Of Birdland
04.Broadway
05.The Brooklyn Bridge
06.Let Me Off Uptown
07.42nd Street
08.Sidewalks Of New York
09.Harlem Nocturne
10.New York, New York
11.There's A Broken Heart For Every Light On Broadway
12.Manhattan
13.My Time Of Day




【曽根麻央LIVE INFO】

6/6 (tue.) [岡山] Cafe SOHO
Member: 曽根麻央(tp, pf & keys) 井上銘(gt) 山本連(b) 木村紘(ds)
・岡山市北区今4-4-8
・お問い合わせ 086-368-8455​


6/7 (wed.) [大阪] Mr. Kelly's
Member: 曽根麻央(tp, pf & keys) 井上銘(gt) 山本連(b) 木村紘(ds)
・大阪市北区曽根崎新地2-4-1 ホテルマイステイズプレミア堂島1F
・TEL: 06-6342-5821


​6/8 (thu.) [名古屋] Mr. Kenny's
Member: 曽根麻央(tp, pf & keys) 井上銘(gt) 山本連(b) 木村紘(ds)
・愛知県名古屋市中区金山5-1-5 満ビル2F
・TEL: 052-881-1555
・mrkennys.kuratani@gmail.com

​6/9 (fri.) [静岡] Life Time
Member: 曽根麻央(tp, pf & keys) 井上銘(gt) 山本連(b) 木村紘(ds)
・静岡県静岡市葵区紺屋町 11-1
・TEL: 054-250-0131


曽根麻央のその他情報はウェブサイトへ

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「Monthly Disc Review」アーカイブ曽根麻央
2020.04『Motherland / Danilo Perez』2020.05『Color Of Soil /タイガー大越』2020.06『Passages / Tom Harrell 』2020.07『Inventions And Dimensions / Herbie Hancock』2020.08『Birth Of The Cool / Miles Davis』2020.09『Chet Baker Sings / Chet Baker』2020.10『SFJAZZ Collective2 / SFJAZZ Collective』2020.11『Money Jungle: Provocative In Blue / Terri Lyne Carrington』2020.12『Three Suites / Duke Ellington』2021.01『Into The Blue / Nicholas Payton』2021.02『Ben And "Sweets" / Ben Webster & "Sweets" Edison』2021.03『Relaxin' With The MilesDavis Quintet / The Miles Davis Quintet 』2021.04『Something More / Buster Williams』2021.05『Booker Little / Booker Little』2021.06『Charms Of The Night Sky / Dave Douglas』2021.07『Play The Blues / Ray Bryant Trio』2021.08『The Sidewinder / Lee Morgan』2021.09『Esta Plena / Miguel Zenón』2021.10『Hub-Tones / Freddie Hubbard』2021.11『Concert By The Sea / Erroll Garner』2021.12『D・N・A Live In Tokyo / 日野皓正』2022.1『The Tony Bennett Bill Evans Album / Tony Bennett / Bill Evans』2022.2『Quiet Kenny / Kenny Dorham』2022.3『Take Five / Dave Brubeck』・2022.4『Old And New Dreams / Old And New Dreams』2022.5『Ella Fitzgerald And Louis Armstrong / Ella And Louis』2022.6『Live from Miami / Nu Deco Ensemble & Aaron Parks』2022.7『Oscar Peterson Trio + One / Oscar Peterson Trio Clark Terry』2022.8『Ugetsu/ Art Blakey & The Jazz Messengers』2022.9『Sun Goddess / Ramsey Lewis』2022.10『Emergence / Roy Hargrove Big Band』2022.11『Speak No Evil / Wayne Shorter』2022.12『The Revival / Cory Henry』2023.1『Complete Communion / Don Cherry』2023.2『Your Mother Should Know: Brad Mehldau Plays The Beatles / Brad Mehldau』2023.3『Without a Net / Wayne Shorter』2023.4『LADY IN LOVE / 中本マリ』

Reviewer information

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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

曽根麻央Official Site

曽根麻央 Monthly Disc Review2023.4_中本マリ : LADY IN LOVE:Monthly Disc Review

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みなさんこんにちは、マルチインストゥルメンタリストの曽根麻央です。
今日は日本を代表するジャズ・シンガー、中本マリさんのアルバムをご紹介しようと思います。

今、世界的に空前のブームとなっているシティー・ポップ。その流れを組みつつも全曲英語のオリジナルで勝負したマリさんの81年の意欲作『Lady In Love』をご紹介しようと思います。
時代を超えて、ジャンルを超えて支持される名盤だと思います。


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Title : 『LADY IN LOVE』
Artist : 中本マリ



実は私は個人的にマリさんとご縁があり、マリさんのピアノ奏者、アレンジャーとして去年から仕事をご一緒にするようになりました。その中でマリさんが今までオリジナルの曲をもう何十年と歌っていないし譜面も消失してないのだけれど、僕ともう一度再構築してライブで歌ってみたいと言っていただきました。

そして改めて譜面を書き起こすために音源を探していてこのアルバムに出会いました。全ての楽曲の完成度の高さ、アレンジの良さ、そして音の良さに驚愕し、こんな素晴らしいアルバムが日本発であったのかと驚愕しました。

ソングライターにはRoberta Flackの音楽監督を勤めたことでも有名なBarry Milesを主に迎え、リズムセクションにもAbraham Laborielなど強力なミュージシャンを集めたアルバムになっています。
またBarry Milesのシンセサイザーがストリングスと上手に絡まり、まるでオーケストラの一因のようなアンサンブルの役割を果たす箇所も多くあり斬新です。楽器の構成も様々な楽器がミックスされていて奥深い作品です。
オーケストラやバンドの厚みを超えてこちらに飛んでくるマリさんの歌唱も素晴らしいレベルで収録されており、聴く人を圧巻させます。ミックスなどの音作りも最高な一枚です。



Vocal - Mari Nakamoto
Drums - Alex Acuña
Electric Bass - Abraham Laboriel
Electric Guitar - Michael Sembello
Percussion - Steve Forman
Piano, Synthesizer [Mini Moog] - Barry Miles
Guitar - Tim May
Tenor Saxophone - Gary Herbig
Flute - Arthur Hoberman, Gary Herbig, Susan Stockhammer
French Horn - Henry Sigismonti
Harp - Gayle Levant
Percussion - Steve Forman







01. Sing Our Song Together

マツダのCMにもなった曲なのでお耳馴染みの方も多いでしょう。





Barry Milesの書いた美しいバラード曲でアルバムの幕が開けます。マリさんの抜ける歌声で聴く人を魅了します。マリさんの歌はリズムが正確で心地よいのが特徴で、曲のアプローチに対する努力や研究が伺えます。本人がお話しされた時にこれらの曲は全て初演になるのでデモがあったわけでもなく、ただただ譜面と向き合って曲を覚えて歌い方を工夫していったそうです。また録音も当時は一発録りが主流ですのでこのアルバムも例に漏れず「イッセーの」で録っているわけです。ですからマリさんや参加しているスタジオ・ミュージシャンの集中力は想像を絶するものと思います。
Barry Milesのシンセソロも抑揚と歌心があり聞き応えが満点です。


02. The Lady's In Love

アルバムのタイトルソングです。ラテン/フュージョンの曲でいろんなテイストが入っています。マリさんの代表曲の一つでライブでもいまだに人気が高い曲です。
Aセクションはシンプルな雰囲気のあるメロディーですが、Bセクションは細かく転調し、その構成はとても見事です。
途中マリさんとBarry Milesのスキャットとシンセユニゾンが曲にユニークなカラーを与えています。


03. You Gave To Me

Barry Milesの書いたバラード曲。他の曲よりもオーケストレーションが豪華に聞こえる作品です。


04. Loved You So Long

斬新でモダンなコード進行が特徴の一曲。斬新だけれどコード進行が非常に美しいのもBarry Milesの作品の特徴ですね。今聴いても古さを感じさせないセンスが素晴らしいと思います。


05. Benjamin

こちらは作家が変わりDon Grusinの曲になっています。繊細なニュアンスとピッチ感が求められるバラード曲だと思います。マリさんの幅広いレンジとハスキーな歌声を堪能できる一曲になっています。


06. Oops!

こちらもDon Grusinの書いたポップでファンキーな曲。技巧的なイントロにはっとさせられます。珍しい構成の曲で1回目のAが8小節、2回目のAが9小節、Bが9小節、Cが5+7小節で展開されています。独特の構成美で聴く人を魅了します。


07. We're Gonna Make Love Tonight

ここから再びBarry Milesの作品に戻ります。繰り返し演奏されるリフとメロディーが聴く人を自然と踊らせる曲です。


08. Don't Be Afraid Of Love

美しいバラード曲。AABAのシンプルな構成です。特にBからAに戻る瞬間のマリさんの歌声には感動してしまいます。マリさんの歌唱力を思い知らされる一曲になっています。


09. Is This The End?

美しいワルツの曲。繰り返される転調でカラーがコロコロと変わりますが美しく解決する見事なコード進行と流れる美しいメロディーが特徴の曲です。オーケストレーションもクラシカルで映画音楽のようです。


マリさんはもう10年近く新譜を出されていませんが、今も現役で人々に感動を与えています。今後のライブ活動やアルバム制作にも期待が寄せられているアーティストです。是非聴いてみてください。

それではまた次回。


文:曽根麻央 Mao Soné



Recommend Disc

mari nakamoto Lady In Love200.jpg

Title : 『LADY IN LOVE』
Artist : 中本マリ
LABEL : JVC
発売年 : 1981年

アマゾン詳細ページへ

【SONG LIST】

01.Sing Our Song Together
02.The Lady's In Love
03.You Gave To Me
04.Loved You So Long
05.Benjamin
06.Oops!
07.We're Gonna Make Love Tonight
08.Don't Be Afraid Of Love
09.Is This The End?




【曽根麻央LIVE INFO】

4/20 (thu.) Peter Center Stage supported by Blue Note Tokyo
The Peninsula Tokyo (日比谷)
Member: 曽根麻央 (pf)

・19:00-, 19:50-, 20:40- (各20分)
・東京都千代田区有楽町1-8-1
・ご予約はこちら/Reservations

5/3 (wed.) 高槻城公園芸術文化劇場 南館 太陽ファルマテックホール
Member: 曽根麻央(pf)

・高槻市野見町6番8号
・時間: 7pm~​​

曽根麻央のその他情報はウェブサイトへ

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「Monthly Disc Review」アーカイブ曽根麻央
2020.04『Motherland / Danilo Perez』2020.05『Color Of Soil /タイガー大越』2020.06『Passages / Tom Harrell 』2020.07『Inventions And Dimensions / Herbie Hancock』2020.08『Birth Of The Cool / Miles Davis』2020.09『Chet Baker Sings / Chet Baker』2020.10『SFJAZZ Collective2 / SFJAZZ Collective』2020.11『Money Jungle: Provocative In Blue / Terri Lyne Carrington』2020.12『Three Suites / Duke Ellington』2021.01『Into The Blue / Nicholas Payton』2021.02『Ben And "Sweets" / Ben Webster & "Sweets" Edison』2021.03『Relaxin' With The MilesDavis Quintet / The Miles Davis Quintet 』2021.04『Something More / Buster Williams』2021.05『Booker Little / Booker Little』2021.06『Charms Of The Night Sky / Dave Douglas』2021.07『Play The Blues / Ray Bryant Trio』2021.08『The Sidewinder / Lee Morgan』2021.09『Esta Plena / Miguel Zenón』2021.10『Hub-Tones / Freddie Hubbard』2021.11『Concert By The Sea / Erroll Garner』2021.12『D・N・A Live In Tokyo / 日野皓正』2022.1『The Tony Bennett Bill Evans Album / Tony Bennett / Bill Evans』2022.2『Quiet Kenny / Kenny Dorham』2022.3『Take Five / Dave Brubeck』・2022.4『Old And New Dreams / Old And New Dreams』2022.5『Ella Fitzgerald And Louis Armstrong / Ella And Louis』2022.6『Live from Miami / Nu Deco Ensemble & Aaron Parks』2022.7『Oscar Peterson Trio + One / Oscar Peterson Trio Clark Terry』2022.8『Ugetsu/ Art Blakey & The Jazz Messengers』2022.9『Sun Goddess / Ramsey Lewis』2022.10『Emergence / Roy Hargrove Big Band』2022.11『Speak No Evil / Wayne Shorter』2022.12『The Revival / Cory Henry』2023.1『Complete Communion / Don Cherry』2023.2『Your Mother Should Know: Brad Mehldau Plays The Beatles / Brad Mehldau』2023.3『Without a Net / Wayne Shorter』

Reviewer information

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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

曽根麻央Official Site

曽根麻央 Monthly Disc Review2023.3_Wayne Shorter : Without a Net:Monthly Disc Review

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こんにちは、曽根麻央です。みなさんお元気でしょうか? 
僕はちょうどレジェンドシンガー、中本マリさんのツアーで山形県鶴岡に入ったところです。


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Title : 『Without a Net』
Artist : Wayne Shorter



今月衝撃的なニュースがもたらされました。長年に渡り世界の音楽をリードしてきたウェイン・ショーターがお亡くなりになったということでした。
今日は彼の最高傑作の一つである2013年のアルバム『Without A Net』を改めて皆さんと一緒に聴いていきたいと思います。


実はこの『Without A Net』のリリースされた年にWayne Shorterにお会いする機会を得た私はサインをもらいました。彼のグループのピアニストであるダニーロ・ペレスが私も含めた当時の彼の生徒たちにWayneのホームパーティーで演奏する機会を作ってくれ、なんとWayneの前で演奏するという一大事でした。演奏後、嬉しそうに「このジャケットは僕が書いたんだ。裸の女性が落ちていて、そこには助かるためのネットもないが、そこに恐怖もない。」と語ってくれました。


【臨場感溢れるウェイン・ショーター最後のクインテット作品】


このアルバムはウェイン・ショーターの最後のクインテットをフィーチャーしています。ピアノにダニーロ・ペレス、ベースにジョン・パティトゥッチ、ドラムにブライアン・ブレイドという黄金チームです。
この4人は演奏前に必ずハグをしてグループの調子を整えます。音楽だけでなく人間としても尊敬し合えるそんなバンドに僕はとても憧れていました。
「Pegasus」にはInam Windsという木管楽団がサポートで入リ、曲/演奏ともに大曲となっています。

ミックスもセンターにウェインとベース、左側にピアノ、右にドラムス、とライブのステレオ感をイメージできるミックスになっていて、まるでその場にいるような臨場感があります。ミュージシャンやお客さんの熱気も伝わってくる名盤です。



Bass - John Patitucci
Drums - Brian Blade
Piano - Danilo Perez
Soprano Saxophone - Wayne Shorter
Tenor Saxophone - Wayne Shorter



01. Orbits

マイルス・デイヴィス時代のウェイン・ショーターの名作です。原作は『Miles Smile(1967)』に入っている軽快なスウィングで演奏される曲。本来はもっと長いテーマですが、『Without A Net』ではもっとも特徴的なオリジナルのメロディーだけを切りとって繰り返し繰り返し演奏しています。またオリジナルではHerbie Hancockは一切和音を弾いていないので、今まで誰もこの曲のコードを認知することできませんでしたが、今回この曲の新しい解釈が約40年ぶりに生まれました。

序盤、ピアノとベースよって低音でメロディーが演奏され、その合間を縫うようにショーターがソプラノサックスで縦横無尽に行き交います。その後ウェイン自身によってメロディーが演奏され、再解釈されたハーモニーやグルーヴが聞こえてきてきます。基本この4小節のメロディーとハーモニーの上で即興演奏が行われます。ピアニスト、ダニーロ・ペレスやジョン・パティトゥッチの言うところのComprovise(Comping=伴奏とImprovisation=即興)が終始行われ、曲が最高潮に達した3:52ほどでマイルス・ヴァージョンの最初のメロディーに到達して曲が終わります。








02. Starry Night

ダニーロ・ペレスの美しいイントロに誘われて、徐々に曲の基本となる4つのコード(B7alt, Ab2/C, D7alt, B2/Eb)が出現して、そこからはコードは繰り返されるにもかかわらずエンディングまでずっと音楽が上昇していきます。4つだけで登りきったところでコードが8種類に変化し(B7alt, Ab2/C, D7alt, B2/Eb, F7alt F#-b13, Ab7alt, A-b13)音楽の緊張感を高めクライマックスに突入します。

別ライブテイクも最高なので見てみてください。ウェインの表情、手の動き、目線などを見るとどのように音楽を受け取って楽しんでいるかみることができて感動します。僕が本当に憧れた音楽です。





03. S.S. Golden Mean

こちらもウェインのオリジナル曲。今までの楽曲とは変わって、ポップで少しWeather Report時代の雰囲気も感じられる曲になってると思います。ダニーロの素晴らしいcomproviseを聴くことができます。


04. Plaza Real

こちらもショーターのオリジナル曲で明るめのバラード曲です。とてもポップで美しいメロディーとビート感がとても聴きやすいです。あまり即興演奏に慣れ親しんだ人でない方にもお勧めしてウェインを好きになってもらえる一曲だと思います。


05. Myrrh

シンプルなモチーフをバンドが展開し、その上でウェインのソプラノが火を吹き続ける短くとも素晴らしいテイクです。


06. Pegasus

このアルバム一番の大曲で、僕自身もっとも愛する名曲です。イントロの付いた2部構成の曲で、ジャズ、クラシック、ロック、フュージョンの枠を超えた曲です。またcomprovise とアンサンブルの絶妙なバランスが過去にない作品になっています。
ダニーロのイントロから始まり、ジョンもそれに応えます。すると木管楽器の美しいサウンドが聞こえてきて、ああ、これは前の5曲とは違う世界観だと気づかせてくれます。


0:00-3:55までが前奏としてのパート、そしてそこから1部が始まります。いきなり基本となるリズムが提示され、パッションとともにで1部の幕が開けます。4:47からメインテーマが演奏されます。基本となるリズムにのって徐々にメインテーマも変化していきます。5:57からグルーヴが変化し、3連音符を主とするグルーヴに突如移行します。そしてウェインのソロに突入します。そこから徐々にエネルギーを加え続け、特に圧巻なのが7:10にはマイルスとショーターが演奏した「Walkin'」が一瞬顔を見せます。これにはブラインも「Oh my god」と叫んでしまいます。そこから一旦落ち着きを取り戻し、徐々にアンサンブルの時間に戻っていきます。8:22~は元々スコアに書かれているものと即興のバランスが素晴らしいです。Wayneもチャーリーパーカーの「NowThe Time」をこの上で吹き出したりジャズファンにはたまらないセクションです。9:30にウェインが次のセクションのテーマを吹き合図を出します。10:04にグルーヴが8-16部音符系に戻り、本格的にアンサンブルが主導権をにぎります。10:21からのモチーフはダニーロがよく過去の作品でも即興中提示してきたアイディアで何回か聞いたことがありました。それを今回具体的にウェインがアンサンブルで形にしました。このようにメンバーのフレーズや特徴をも自身の作品に取り入れてしまうウェインの能力は素晴らしいですね。


10:49からは一旦トリオによる、(おそらく)即興演奏の時間が続きます。徐々にその即興演奏が二部の基本リズムに近づいてきてウェインも入ってきて、そしてアンサンブルが入ってきます。音楽は徐々に緊張感を高め、18:06からは1部の最初のメロディーの再現に戻っていきます。再現と言っても全然違うのですけれど(笑)。再現が終わると19:37からは元のグルーヴを基盤にした新しいvampセクションに突入し、バンドとアンサンブルが入り乱れて音楽を高みに持って行きます。同じフレーズを繰り返し繰り返し演奏していく中で人は慣れていきますが、20:57に今までなかった音を1音だけ入れることで音楽がいっそうフレッシュな状態でクライマックスに突入します。そしてもう一度テーマの再現をして音楽は徐々にエンディングに向かいます。





07. Flying Down to Rio

こちらは1933年のミュージカルよりカバー。と言ってもほとんどオリジナルのメロディーは分からないほど再解釈されています。「Orbits」と同じく元々あるメロディーを伸ばしたり切り取ったりして一曲を表現しています。また同じフレーズを繰り返してグループで即興的に発展させられそうな箇所を彼らは「Window」と呼んでいました。オリジナルを聴いてみてそんな「Window」を発見するのもWayne Shorter Quintetの楽しい聴き方です。


08. Zero Gravity to the 10th Power

クレジット上はクインテット4人の作曲になっていましたが恐らく即興演奏でしょう。「ZeroGravity」=無重力はこのグループが表現している音楽のキーワードです。彼ら自身がこのグループの音楽や行なっていることを象徴している言葉であり、ウェインが生涯をかけてたどりついた音楽のコンセプトと言えるでしょう。


09. (The Notes) Unidentified Flying Objects

UFOとタイトルのついたこのトラックもおそらく即興演奏を切り取ったものでしょう。ウェインに、このアルバムについて聞いた時によく考えなさいと言われた言葉があります。「You gotta be identified to be unidentified, you gotta be unidentified to be identified. Think about that!(未確認になるためには確認されないといけない、認知されるには未確認でいないといけない。よく考えなさい。)」


最後のこの2曲は音楽には始まりもなく終わりもない。人生は続くというウェインのコンセプトがよく聞こえてきます。


それではまた次回。


文:曽根麻央 Mao Soné



Recommend Disc

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Title : 『Without a Net』
Artist : Wayne Shorter
LABEL : Blue Note Records
発売年 : 2013年

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【SONG LIST】

01.Orbits
02.Starry Night
03.S.S. Golden Mean
04.Plaza Real
05.Myrrh
06.Pegasus
07.Flying Down to Rio
08.Zero Gravity to the 10th Power
09.(The Notes) Unidentified Flying Objects




【曽根麻央LIVE INFO】

3/23(thu.) JAZZ SPOT analog.(浜松)
Member: 曽根麻央(pf,tp,etc.) 宮地遼(b) 鈴木宏紀(ds)
静岡県浜松市中区田町325-1 渥美薬局ビル2F
ご予約はこちら ℡ 053-457-0905


4/2 (sun.) Blue Note Place (恵比寿)
Member: 曽根麻央(pf,tp) 宮地遼(b) 鈴木宏紀(ds)
東京都渋谷区恵比寿4-20-4恵比寿ガーデンプレイス
ご予約はこちら
https://www.bluenoteplace.jp/live/mao-sone-230402

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「Monthly Disc Review」アーカイブ曽根麻央
2020.04『Motherland / Danilo Perez』2020.05『Color Of Soil /タイガー大越』2020.06『Passages / Tom Harrell 』2020.07『Inventions And Dimensions / Herbie Hancock』2020.08『Birth Of The Cool / Miles Davis』2020.09『Chet Baker Sings / Chet Baker』2020.10『SFJAZZ Collective2 / SFJAZZ Collective』2020.11『Money Jungle: Provocative In Blue / Terri Lyne Carrington』2020.12『Three Suites / Duke Ellington』2021.01『Into The Blue / Nicholas Payton』2021.02『Ben And "Sweets" / Ben Webster & "Sweets" Edison』2021.03『Relaxin' With The MilesDavis Quintet / The Miles Davis Quintet 』2021.04『Something More / Buster Williams』2021.05『Booker Little / Booker Little』2021.06『Charms Of The Night Sky / Dave Douglas』2021.07『Play The Blues / Ray Bryant Trio』2021.08『The Sidewinder / Lee Morgan』2021.09『Esta Plena / Miguel Zenón』2021.10『Hub-Tones / Freddie Hubbard』2021.11『Concert By The Sea / Erroll Garner』2021.12『D・N・A Live In Tokyo / 日野皓正』2022.1『The Tony Bennett Bill Evans Album / Tony Bennett / Bill Evans』2022.2『Quiet Kenny / Kenny Dorham』2022.3『Take Five / Dave Brubeck』・2022.4『Old And New Dreams / Old And New Dreams』2022.5『Ella Fitzgerald And Louis Armstrong / Ella And Louis』2022.6『Live from Miami / Nu Deco Ensemble & Aaron Parks』2022.7『Oscar Peterson Trio + One / Oscar Peterson Trio Clark Terry』2022.8『Ugetsu/ Art Blakey & The Jazz Messengers』2022.9『Sun Goddess / Ramsey Lewis』2022.10『Emergence / Roy Hargrove Big Band』2022.11『Speak No Evil / Wayne Shorter』2022.12『The Revival / Cory Henry』2023.1『Complete Communion / Don Cherry』2023.2『Your Mother Should Know: Brad Mehldau Plays The Beatles / Brad Mehldau』

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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

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こんにちは、トランペッター、ピアニストの曽根麻央です。
今回は今月来日公演を敢行した現在最高のピアニスト、ブラッド・メルドーの新譜『Your Mother Should Know: Brad Mehlau Plays The Beatles』を一緒に聴いていこうと思います。


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Title : 『Your Mother Should Know: Brad Mehldau Plays The Beatles』
Artist : Brad Mehldau



私は2/3の東京オペラシティのピアノソロ公演を幸運なことに聴きに行くことができ、音楽家として大きな感銘を受けました。ライブでメルドーを見るのは2014年のトロント・ジャズ・フェスでの「Mehliana」名義での公演以来2回目でした。しかもアコースティック・ピアノはこれが初でしたのでとても楽しみにしていました。
プログラムも前情報も無しのコンサートでしたので 予習ができないですから、何が起こるか全く知らずに会場へ赴きました。会場へ入り様子を伺うと天井の高い神々しいステージの真ん中にピアノが一台だけ置かれていました。ピアノマイクどころか、トークマイクも見当たりません。椅子は違和感を覚えるほどとても低く驚きました。実際本番でのメルドーの膝はピアニストの角度とは思えないほど屈折していました。


メルドーが登場すると深く一礼してピアノに座りました。するとすぐに何かのイントロが始まりました。しばらくすると聴き覚えのあるメロディーが...それが「I Am The Walrus」でした。その後もビートルズの曲を多数演奏して、スタンダードやステーヴィー・ワンダーの曲、そしておそらく自身の曲など、休憩なしトークなしの90分間演奏をして、アンコールを3回受けてこの日の演奏は幕を閉じました。
終わってみると、なんてものを聴いてしまったのかという気分になりました。過去にこれだけの集中力を持って一つのコンサートを達成したジャズ・ピアニストがいたのでしょうか? ジャズでもクラシックでもない、オリジナリティーのあるグルーヴするコンサート・ピアニストのステージを見たという表現が正しいかもしれません。もちろん私はキース・ジャレットやビル・エヴァンスといった名手の絶頂期をライブで見ることは叶いませんでしたので比べようがありませんが、メルドーはおそらくそのレベルかそれ以上のコンサート・ピアニストとなったと感じました。
コンサートが終わり外に出ると偶然仲間の井上銘くんや山本連くん、そして他の同世代の活躍しているミュージシャン達もいて、彼らと同じものを共有できたことにとても嬉しく思いました。


あまり熱狂的なビートルズ信者でない私には、コンサート中は「I Am The Walrus」以外のピートルズはどこかで聴いたことがあるけどタイトルが思い出せない、といった感じでした。私は帰り道になんでこんなにビートルズの曲をプログラムに多数加えたのかが気になり、最近のメルドーの活動を追いかけ、ようやくこのアルバム『Your Mother Should Know: Brad Mehlau Plays The Beatles』をリリース予定だったことがここでわかりました。なるほど、今回の来日公演はこのアルバムのリリースも兼ねていたのかと。その時すでに「I Am The Walrus」と「Your Mother Should Know」に関しては先行配信がされていたので、帰りの車で聴きながらコンサートの余韻に浸りました。


メルドーのソロ・ピアノは大事な音とそうでない音のバランスが最適です。旋律と伴奏とうシンプルな状態だけでなく、対位法がいたるところに使われていて同時に複数のメロディーや副旋律が進行していて、それらが美しく絡み合っています。なので音の情報量は相当なものですが、とても整頓されていて聴いていてシンプルな美しさすら感じてしまいます。


【現在最高のピアニスト、ブラッド・メルドー、完成度の高いソロ演奏】





さてこのアルバムはフランスのパリで2020年にライブ録音されたもののようです。現代最高峰のピアニストによるライブとは思えない完成度の高いソロ演奏に圧倒されるでしょう。また次の段落でも明記していますがビートルズの楽曲の持つ奇妙さと、メルドーの持つ奇妙さ、そして両者の美しさとが絶妙にマッチしていて、とても完成度の高い作品になっています。



01. I Am The Walrus

YouTubeにもある動画インタビューでメルドーは「Rubber Soul」以降のアルバム、「Revolver」「Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band」「The Beatles ("The White Album")」などには一種の奇妙さがあると語っています。ハーモニーや形式、フレーズの長さや歌詞の議題などに奇妙さがあり、このような奇妙な曲をピアニスト&アレンジャーとしてどう表現するかがとても挑戦的だと語っています。「I Am The Walrus」は『Magical Mystery Tour』に収録されているジョン・レノンの曲で、もちろんこれも奇妙な曲の一つです。コードが全音ずつ下がって行くこの独特の進行はあまりポップスでは見られない進行で、どちらかというとドビュッシーや印象派の作品を彷彿とさせます。メルドーはこの曲を最高のピアノ曲に仕立て上げています。





02. Your Mother Should Know

1曲目からメドレーで繋がっています。メルドーの言葉を借りればビートルズの「スウィング曲」。このアルバムの中でも珍しくメロディーと伴奏に役割がはっきりしているアレンジですが、そうであるからこそメルドーの完璧なピアノコントロールを聴くことができます。


03. I Saw Her Standing There

ビートルズの初期の曲です。左手が正確に8分音符を刻みグルーヴを激しく出していきます。ブルースピアノのようなスタイルですが、土臭さはなく、ブギウギ/モータウン的なグルーヴまでもがメルドーの繊細な世界観へと昇華させられています。


04. For No One

インタールード的に短く演奏されるマッカートニーの曲。こういうシンプルな曲で時たま顔を出すメルドー独特のジャズフレーズが心にしみます。


05. Baby's In Black

レノン&マッカートニーの作品。原曲は3連のグルーヴですが、ゆったりとしたSwingワルツに編曲されています。ゆっくりと徐々に展開して行くアレンジです。


06. She Said, She Said

もともとは8ビートのロック調の曲を美しいバラードに仕立てています。こちらもインタールード的な短い演奏です。


07. Here, There And Everywhere

こちらももともとは8ビートのロック調の曲ですが、まるでジャズスタンダードの古いバラードのようなメロディーラインが特徴的な一曲です。その後途中からまるで何人かものピアニストがバラバラのハーモニーを弾いているかのような錯覚に襲われる不思議なアレンジになっています。


08. If I Needed Someone

こちらは割と原曲の雰囲気とハーモニーがそのまま聴こえてくるところが多くあります。メロディーを一回通して終わる短いアレンジになっています。


09. Maxwell's Silver Hammer

もともとは軽快な跳ねているグルーヴの曲を、少し遅めのスウィング調で演奏しています。ストライド・スタイルも少し取り入れることでジャズの伝統的な味わいも出しつつ、メロディーはビートルズで、ハーモニーはメルドーという奇妙な世界観を作り出しています。


10. Golden Slumbers

原曲はかなり短いですがマッカートニーの美しい曲の一つです。フレーズのアガサが独特でポップスではなかなか見ないスタイルの曲です。メルドーもかなり原曲に近いイントロから入りますが演奏はアルバム一の長尺になっています。コンサートでもかなりインパクトの強いメインの楽曲でした。


11. Life On Mars?

この曲のみDavid Bowieの曲です。転調の仕方やメロディーの発展の仕方やハーモニーが美しくもどこか奇妙で、ビートルズの影響をうけたイギリスのアーティストということでこのラインアップにあってもおかしくない一曲ですね。メルドーの日本公演でも異彩を放った一曲でした。


それではまた次回。


文:曽根麻央 Mao Soné



Recommend Disc

YOUR MOTHER SHOULD KNOW200.jpg

Title : 『Your Mother Should Know: Brad Mehldau Plays The Beatles』
Artist : Brad Mehldau
LABEL : Nonesuch
発売日 : 2023年02月10日

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【SONG LIST】

01.I Am The Walrus
02.Your Mother Should Know
03.I Saw Her Standing There
04.For No One
05.Baby's In Black
06.She Said, She Said
07.Here, There And Everywhere
08.If I Needed Someone
09.Maxwell's Silver Hammer
10.Golden Slumbers
11.Life On Mars?




【曽根麻央LIVE INFO】

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「Monthly Disc Review」アーカイブ曽根麻央
2020.04『Motherland / Danilo Perez』2020.05『Color Of Soil /タイガー大越』2020.06『Passages / Tom Harrell 』2020.07『Inventions And Dimensions / Herbie Hancock』2020.08『Birth Of The Cool / Miles Davis』2020.09『Chet Baker Sings / Chet Baker』2020.10『SFJAZZ Collective2 / SFJAZZ Collective』2020.11『Money Jungle: Provocative In Blue / Terri Lyne Carrington』2020.12『Three Suites / Duke Ellington』2021.01『Into The Blue / Nicholas Payton』2021.02『Ben And "Sweets" / Ben Webster & "Sweets" Edison』2021.03『Relaxin' With The MilesDavis Quintet / The Miles Davis Quintet 』2021.04『Something More / Buster Williams』2021.05『Booker Little / Booker Little』2021.06『Charms Of The Night Sky / Dave Douglas』2021.07『Play The Blues / Ray Bryant Trio』2021.08『The Sidewinder / Lee Morgan』2021.09『Esta Plena / Miguel Zenón』2021.10『Hub-Tones / Freddie Hubbard』2021.11『Concert By The Sea / Erroll Garner』2021.12『D・N・A Live In Tokyo / 日野皓正』2022.1『The Tony Bennett Bill Evans Album / Tony Bennett / Bill Evans』2022.2『Quiet Kenny / Kenny Dorham』2022.3『Take Five / Dave Brubeck』・2022.4『Old And New Dreams / Old And New Dreams』2022.5『Ella Fitzgerald And Louis Armstrong / Ella And Louis』2022.6『Live from Miami / Nu Deco Ensemble & Aaron Parks』2022.7『Oscar Peterson Trio + One / Oscar Peterson Trio Clark Terry』2022.8『Ugetsu/ Art Blakey & The Jazz Messengers』2022.9『Sun Goddess / Ramsey Lewis』2022.10『Emergence / Roy Hargrove Big Band』2022.11『Speak No Evil / Wayne Shorter』2022.12『The Revival / Cory Henry』2023.1『Complete Communion / Don Cherry』

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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

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曽根麻央 Monthly Disc Review2023.1_Don Cherry : Complete Communion:Monthly Disc Review

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こんにちはトランペットとピアノの曽根麻央です。2023年もよろしくお願いいたします。
今年最初のDisc ReviewはトランペッターDon Cherryによる1966年のアルバムです。
高い作曲能力と演奏技術、そしてコレクティヴなフリー・インプロヴィゼーションが絶妙なバランスで収録された名盤です。


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Title : 『Complete Communion』
Artist : Don Cherry

【高い作曲能力と演奏技術、そしてコレクティヴなフリー・インプロヴィゼーション】

僕とこのアルバムの出会いはまだバークリーの学生の頃でした。デイヴィッド・リーブマンとケニー・ワーナーを宿泊先のボストンのホテルまで送って行った時、ホテルのバーで二人の音楽談義を聞く機会がありました。僕はひたすら黙って二人の会話を聞いていたのですが、その中で最も印象に残ったのがリーブマンの「Complete CommunionのLeandro "Gato" Barbieriはサックスの未来だ!」といった言葉でした。

その会話で初めて僕はこのアルバムの存在を知ったのですが、気になってその場でメモを取り、CDを図書館へ借りに行ったのをよく覚えています。みなさんも是非その言葉の真意を考えながら聴いてみてください!




Don Cherry - cornet
Leandro "Gato" Barbieri - tenor saxophone
Henry Grimes - bass
Edward Blackwell - drums




01. Complete Communion

この楽曲は複数の、7つのテーマ(曲)の組曲だと思います。あくまで私が聴いて「ここからここまでが1主題だろう」と行った具合に予想して区切ったものですので、もしかすると作曲者からは間違いだと指摘されてしまうかもしれませんが、下記にまとめてみました。
見ながら聴いていただくと曲がわかりやすいかもしれません。それぞれの主題はとてもユニークで雰囲気が違います。Complete Comunionという曲は初めて聞くと長いですし、常に流れていて取り止めがない感じがしますので難しく聞こえてしまうかもしれませんが、是非短い曲の集合だと考えて聴いてみてください。





0:00 Theme 1
こちらはルバートの主題になっていて、イントロとして考えても良いパートになっています。このトラック全体の雰囲気をよく表している曲で、Don CherryのトランペットとLeandro "Gato" Barbieriのサックスが完璧なチームワークを果たしていてお互いがリードしフォローし合い、音楽を推進させていきます。


0:52 Theme 2
序盤のメインの曲です。Gマイナーとメジャーを交互に行き来するリズミックな曲です。テーマを2ホーンで吹き2ホーンでソロを回し、ドラムソロも挟みつつ、再びテーマに戻ります。


4:32~ Theme 3
短いテーマが演奏され徐々に曲がTheme 4へと移行していきます。間奏としての役割を果たすパートです。


5:20~ Theme 4
こちらもテーマが演奏されトランペットとサックスのソロがフィーチャーされます。


6:57~ Theme 5A
Theme 5Aのラインがルバートで提示されると、すぐに軽快なスウィングのテンポに移行してメロディーを演奏します。


7:43~ Theme 5B
その後すぐに5Bに移行します。5Aと5Bの雰囲気は全く違う別のテーマなのですが交互に演奏されるので番号は揃えました。5Aはブルース的な、アフリカ音楽的な旋律に対して、5Bはどこか日本的な旋律、中東の旋律を思い浮かばせます。
5B移行後もこの旋律でDon Cherryがソロを取っているあいだ、ベーシストは5Aのテーマをベースラインとして使用していたりするので、この2曲は密接な関係にあると言えます。
中盤のメインの曲です。


12:55~ Interlude
どこまでが即興か、書いてあるのか、一概に判断できないのがこのアルバムの特徴でもあるのですが、おそらくinterlude前半は即興、徐々に作曲してある旋律に移行し次の曲に入ります。


13:38~ Theme 6
Ed Blackwellが名称不明の音程のあるパーカッションを使って演奏している、16小節のミディアムスウィングの曲です。後半のメインの楽曲になっています。


17:46~ Interlude


17:55 Theme 7 (Medium Swing ~ Fast Swing)
少し今までとは雰囲気の違うコミカルな旋律の楽曲です。


19:06 Theme 2 (再現)
楽曲が最後に近づき再現部に移行します。

20:09 Theme 1(再現)
エンディングとしてイントロでもあったTheme1を再び演奏して曲を締めています。


02. Elephantasy

こちらの曲はComplete Communionより前後のテーマ同士が複雑に絡み合いなかなかセクションを分けて考えるのは難しいですが大まかに下記に分けて見ました。後半以降は何度も以前使われたテーマが再現されているのがわかるでしょう。Theme1は特にDon Cherryの作曲能力の高さ、旋律の対する美意識がよく現れた曲だと思うのでぜひ注目して聴いてみてください。
またTheme2のDon Cherryのソロは絶品です。





0:00 Theme 1
3:36 Interlude
4:21 Interlude 2 (転調が始まります)
5:31 Theme 2 (fast swing)
10:55 Theme 3
11:58 Theme 4
12:11 Theme 5
12:30 Theme 6
13:04 Theme 5
15:28 Theme 6 (bass)
16:44 Theme 5
16:48 Theme 4
17:21 Theme 6
17:58 Theme 1 (再現)


それではまた次回。


文:曽根麻央 Mao Soné



Recommend Disc

Complete Communion200.jpg

Title : 『Complete Communion』
Artist : Don Cherry
LABEL : Blue Note
発売年 : 1966年

アマゾン詳細ページへ

【SONG LIST】

01.Complete Communion
02.Elephantasy




【曽根麻央LIVE INFO】

1/20 (金) @ Body & Soul (渋谷)
w/ 伊藤勇司、木村紘

2/17 (金) Nardis (柏)
w/ 伊藤勇司、木村紘

2/18 (土) -19 (日) TBA

2/28 (火) @ Mr. Kenny's (名古屋・金山)
Mao Sone Plays Standards (solo)

3/3 (金) @ Body and Soul (渋谷)
w/ シンサカイノ、苗代尚寛、小田桐和寛

3/10 (金) @ The Moment (成城学園前)
w/ 高橋佳輝、山崎隼

曽根麻央のその他情報はウェブサイトへ

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「Monthly Disc Review」アーカイブ曽根麻央
2020.04『Motherland / Danilo Perez』2020.05『Color Of Soil /タイガー大越』2020.06『Passages / Tom Harrell 』2020.07『Inventions And Dimensions / Herbie Hancock』2020.08『Birth Of The Cool / Miles Davis』2020.09『Chet Baker Sings / Chet Baker』2020.10『SFJAZZ Collective2 / SFJAZZ Collective』2020.11『Money Jungle: Provocative In Blue / Terri Lyne Carrington』2020.12『Three Suites / Duke Ellington』2021.01『Into The Blue / Nicholas Payton』2021.02『Ben And "Sweets" / Ben Webster & "Sweets" Edison』2021.03『Relaxin' With The MilesDavis Quintet / The Miles Davis Quintet 』2021.04『Something More / Buster Williams』2021.05『Booker Little / Booker Little』2021.06『Charms Of The Night Sky / Dave Douglas』2021.07『Play The Blues / Ray Bryant Trio』2021.08『The Sidewinder / Lee Morgan』2021.09『Esta Plena / Miguel Zenón』2021.10『Hub-Tones / Freddie Hubbard』2021.11『Concert By The Sea / Erroll Garner』2021.12『D・N・A Live In Tokyo / 日野皓正』2022.1『The Tony Bennett Bill Evans Album / Tony Bennett / Bill Evans』2022.2『Quiet Kenny / Kenny Dorham』2022.3『Take Five / Dave Brubeck』・2022.4『Old And New Dreams / Old And New Dreams』2022.5『Ella Fitzgerald And Louis Armstrong / Ella And Louis』2022.6『Live from Miami / Nu Deco Ensemble & Aaron Parks』2022.7『Oscar Peterson Trio + One / Oscar Peterson Trio Clark Terry』2022.8『Ugetsu/ Art Blakey & The Jazz Messengers』2022.9『Sun Goddess / Ramsey Lewis』2022.10『Emergence / Roy Hargrove Big Band』2022.11『Speak No Evil / Wayne Shorter』2022.12『The Revival / Cory Henry』

Reviewer information

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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

曽根麻央Official Site

曽根麻央 Monthly Disc Review2022.12_Cory Henry : The Revival:Monthly Disc Review

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こんにちは、トランペッター、ピアニストの曽根麻央です。
今日はマルチ・インストゥルメンタリストでもあるコーリー・ヘンリーの本業とも言える超絶オルガン・プレイを聴けるライブアルバムを紹介します。


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Title : 『The Revival』
Artist : Cory Henry

【クリスマスシーズンにもおすすめ、オルガン作品】

ゴスペル、ポップス、ジャズのクロスオーヴァーな作品でたくさんの人に楽しんでもらえる作品と思いますし、オルガンの音色はやはりクリスマスにとても映えますね!

『The Revival』というアルバムはブルックリンにあるGreater Temple of Praiseでライブレコーディングされたもので、ほぼほぼオルガン・ソロのアルバムといってよいでしょう。

トラックによってはジェームス・ウィリアムスというドラマーが参加しています。僕は彼の演奏をタイガー大越さんのバンドで一度だけ見ましたが、ドラムにカホンなどのパーカッションを組み合わせ、様々なジャンルの音楽を見事に表現する本当に素晴らしいドラマーです。またBishop Jeffrey Whiteというゴスペル・シンガーが一曲ゲスト参加しています。




Executive-Producer - Cory A. Henry
Drums, Percussion - James Williams




ヘンリーは終始オルガンの音色を柔軟に操り、曲に彩りを与えます。またダイナミックスもpp(ピアニッシモ)~fff(フォルテッシシモ)まで迫力のある表現を魅せてくれます。そして一度曲がリズムに入れば強力なグルーヴで聴いている我々が踊り出したい気分にさせてくれます。そんなとっても素晴らしい一枚です。

またヘンリーのお客さんを楽しませるエンターテイナーとしての魅力も感じられる一枚で、まるでライヴ会場で一緒に盛り上がっているような気持ちにさせてくれます。

ちなみに彼は終始B3というオルガンの名機を使用しています。この楽器の魅力も体感してみてください。





01. Lord's Prayer

一曲目は静かにハーモニーが移り変わりとても神秘的な表現を聴かせてくれるトラックになっています。オルガンの魅力は音量ペダルがあり、とてもダイナミックな演奏ができるところにあります。聴こえるか聴こえないかのレベルで始まり、そこから膨らみを増していきます。そして場面が変わると音色スイッチを素早く切り替えてさらにゴージャズな音色を即興的に作って行きます。キーボードのようにボタンのスイッチではなくレバーなので、音色を切り替えても音が途切れることなく次の音色に移行できるのがオルガンの魅力ですね。レバーはたくさんあり、 それぞれ役割が違いますので、楽器のことを本当に理解し、とてもたくさんの時間をかけて音色の研究をしていることがわかります。

僕はこの曲をApple Musicのランダム再生で発見して、ちょうど首都高を走っていて朝日が昇ってくるところでこの曲のクライマックスが出てきまして、あまりの感動に思わず声を上げてしまいました。


02. He Has Made Me Glad

ゴスペル音楽で有名な曲だと思います。僕もニューヨークに住んでいた時、日曜日の朝の教会でオルガンを弾くアルバイトをしていて、何度もこの曲を演奏した記憶があります。
ヘンリーはこの曲をとてもグルーヴィーに、ブルースのテイストを合わせながら、独自のハーモニーセンスを組み合わせて見事にプレイしています。おそらく聴いている限り即興的にリハモニゼーションしたり、転調したりしていると思うのですが、ベースの動きがとにかく綺麗です。またソロなのでテンポも自由自在に操っていて、かなり自由度の高い内容になっています。またヘンリーはクライマックスへ一曲かけて持っていく、この構成力も素晴らしいと思います。このアルバムで最も好きなトラックの一つですので是非聴いてください。


03. Precious Lord

アレサ・フランクリンやニーナ・シモンが歌ったゴスペルの名曲です。それを3連のゴスペル特有のグルーヴで演奏しています。ドラムにジェームス・ウィリアムスが入りグルーヴの芯がとても見えやすい演奏です。ウィリアムスは終始シンプルな4分音符を演奏していて、アフリカン・アメリカン音楽の4分音符の大事さを思い知らされます。


04. Old Rugged Cross

調べると1912年に書かれた古い賛美歌なようです。Bishop Jeffrey Whiteというゴスペル・シンガーがゲストに入っています。3拍子の3連音符の曲でとてもソウルフルな内容になっています。


05. Naanaanaa

アルバム一楽しい楽曲で、まるで会場に一緒にいるような感覚に陥ります。皆さんも是非一緒に歌ってみてください。



06. That Is Why I'm Happy

軽快なテンポのゴスペル調の曲。タンバリンとベースの響きがとても心地よくなっています。ドラムのスネアの音も歯切れがよくゴスペル特有の気持ち良いバックビートです。


07. If You're Happy

「幸せなら手をたたこう」を本気で演奏するとこんなにかっこよくなるのですね!  面白いので是非聴いてみてください。こういうシンプルでポピュラーな曲を表現する楽器としてオルガンはある意味最適かもしれないですね。自分でベースとハーモニーを組み替えてバンドサウンドのように出来てしまうのはピアニストからすると本当に羨ましいです。


08. Giant Steps

ジョン・コルトレーンのカヴァー曲です。中庸な速さのスウィングで演奏していて、ヘンリーのジャズ奏者としての一面を見ることが出来ます。オルガンでこういったウォークベースを弾く際、左手で4分音符を弾いて、各音を切る裏拍で足鍵盤でゴーストノート(弾いているけど実際には音程が認識できないほどの音)を弾くのですが、その独特なバウンス感がとても心地よいです。


09. All In Love Is Fair

スティーヴィー・ワンダーのカヴァー曲。原曲よりもゆったりとしたテンポで少しミステリアスな雰囲気を帯びているトラックです。


10. Yesterday

ビートルズのカヴァー曲。実はこの曲をヘンリーのインスタライヴで見て彼のファンになったのでこうしてライヴ音源も出してくれていて個人的に嬉しかったです。原曲よりもブルージーなYesterdayなのでとても面白い演奏になっていると思います。


11. I Want To Be Ready

古い賛美歌の曲です。カホンとシェイカーとリズミックに演奏しています。とてもライヴ感のあるこのアルバムを象徴するかのようなトラックになっています。即興的にメロディーやハーモニー、リズムを少しずつ変化させて巧みに音楽をクライマックスに導いています。


それではまた次回。


文:曽根麻央 Mao Soné



Recommend Disc

revival200.jpg

Title : 『The Revival』
Artist : Cory Henry
LABEL : GroundUP Music
発売年 : 2016年

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【SONG LIST】

01.Lord's Prayer
02.He Has Made Me Glad (I Will Enter His Gates)
03.Precious Lord
04.Old Rugged Cross
05.Naanaanaa
06.That Is Why I'm Happy
07.If You're Happy (And You Know It)
08.Giant Steps
09.All in Love Is Fair
10.Yesterday
11.I Want to Be Ready




【曽根麻央LIVE INFO】

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「Monthly Disc Review」アーカイブ曽根麻央
2020.04『Motherland / Danilo Perez』2020.05『Color Of Soil /タイガー大越』2020.06『Passages / Tom Harrell 』2020.07『Inventions And Dimensions / Herbie Hancock』2020.08『Birth Of The Cool / Miles Davis』2020.09『Chet Baker Sings / Chet Baker』2020.10『SFJAZZ Collective2 / SFJAZZ Collective』2020.11『Money Jungle: Provocative In Blue / Terri Lyne Carrington』2020.12『Three Suites / Duke Ellington』2021.01『Into The Blue / Nicholas Payton』2021.02『Ben And "Sweets" / Ben Webster & "Sweets" Edison』2021.03『Relaxin' With The MilesDavis Quintet / The Miles Davis Quintet 』2021.04『Something More / Buster Williams』2021.05『Booker Little / Booker Little』2021.06『Charms Of The Night Sky / Dave Douglas』2021.07『Play The Blues / Ray Bryant Trio』2021.08『The Sidewinder / Lee Morgan』2021.09『Esta Plena / Miguel Zenón』2021.10『Hub-Tones / Freddie Hubbard』2021.11『Concert By The Sea / Erroll Garner』2021.12『D・N・A Live In Tokyo / 日野皓正』2022.1『The Tony Bennett Bill Evans Album / Tony Bennett / Bill Evans』2022.2『Quiet Kenny / Kenny Dorham』2022.3『Take Five / Dave Brubeck』・2022.4『Old And New Dreams / Old And New Dreams』2022.5『Ella Fitzgerald And Louis Armstrong / Ella And Louis』2022.6『Live from Miami / Nu Deco Ensemble & Aaron Parks』2022.7『Oscar Peterson Trio + One / Oscar Peterson Trio Clark Terry』2022.8『Ugetsu/ Art Blakey & The Jazz Messengers』2022.9『Sun Goddess / Ramsey Lewis』2022.10『Emergence / Roy Hargrove Big Band』2022.11『Speak No Evil / Wayne Shorter』

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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

曽根麻央Official Site

曽根麻央 Monthly Disc Review2022.11_Wayne Shorter : Speak No Evil:Monthly Disc Review

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みなさんこんにちは、トランペッター&ピアニストの曽根麻央です。

11月15日は僕の最新シングルのリリース日だったので沢山聴いていただけると嬉しいです。
これは7月から毎月2曲ずつシングルをリリースするシリーズ『Mao Sone Plays Standards』の一環で、デューク・エリントンの「The Star-crossed Lovers」を配信しました。この曲は2014年のセロニアス・モンク国際コンペティションのセミファイナルでも演奏した私の思い出の曲です。人生で一番緊張した時です(笑)。そんな曲を落ち着いて改めてスタジオ・レコーディングして皆さんにお聞かせ出来て嬉しく思っています!

「The Star-crossed Lovers」

その他の配信情報
https://maosone.com/discography.jp


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Title : 『Speak No Evil』
Artist : Wayne Shorter

【オリジナル曲、演奏、録音、全てにジャズの魅力が詰まったアルバム】

さて今日はウェイン・ショーターの名盤『Speak No Evil』をご紹介します。このアルバムは1966年にブルーノートからリリース(1964年のレコーディング)された名盤中の名盤ですが、改めてみなさんと一緒に聴いていこうと思います。オリジナル曲、演奏、録音、全てにジャズの魅力が詰まったアルバムです。



Bass - Ron Carter
Drums - Elvin Jones
Lacquer Cut By - VAN GELDER
Liner Notes - Don Heckman
Piano - Herbie Hancock
Tenor Saxophone, Written-By - Wayne Shorter
Trumpet - Freddie Hubbard




1964年といえばショーターがアート・ブレイキー&ジャズメッセンジャーズから脱退し、マイルス・デイヴィスのクインテットに参加し始めた年でもあり、このアルバムにもハービー・ハンコックとロン・カーターの2人がレコーディングしています。トランペットにはメッセンジャーズからフレディー・ハバードが参加し、息のあった呼吸で迫力のある2ホーンサウンドを残してくれています。ドラムにはデトロイト出身のエルヴィン・ジョーンズが参加していて、彼の繰り出すアフリカの影響が強く現れるリズムが、ハービーやロンの演奏を普段とは少し違ったものにしています。ハービーのフレーズはより3連音符中心のリズミカルなプレイに、ロンはエルヴィンのレガートに寄り添うように演奏していると思います。マイルス・バンドのスタジオレコーディングでのトニーウィリアムズとの関わり方と、このアルバムのリズムセクションを聴き比べるのもとても面白い聴き方だと思います。
レコーディングはルディ・ヴァンゲルダー・スタジオのもので、当時のブルーノート・サウンドを代表するものです。

01. Witch Hunt

「魔女狩り」という斬新なタイトルの曲です。最初に魔法のような超高速のフレーズで2ホーンが展開するイントロがあり、エルヴィンが心地よくスウィングさせて本編へ突入します。

 本編のメロディーは最初から最後まで完全4度の積み重ねだけでメロディーが書かれていて統一感があります。このように一つのアイディアやフレーズ、決め事を展開させて曲を完成させるのはクラシックでは必ず用いられる手法ですね。代表的なのはベートーベンの「運命」。あの有名な4音のリズムがずっと展開されていますね。ジャズでは特に「セマティック・ディベロップメント(Thematic Development)」と言って、コンテンポラリー・ジャズの作曲では必ず用いられます。ショーターはクラシック的な発想をジャズに分かりやすく取り入れた最初の人物の一人でもあると言えるでしょう。

この今日はショーターのソロももちろん冴え渡っていますが、フレディーの音色がたまりません!アイディアももちろんですが音色が曇りなく透き通っていて聴き手お心をとらえるでしょう。そしてハービーのソロはエルヴィンのリズムに影響を受け、3連音符を駆使した少しロジカルなソロになっていて面白いです。
ちなみに私は1:40~42にかけてのエルヴィンのドラムフィルがこの世の中で一番好きなドラムフィルです。是非聴いてみてください。





02. Fee-Fi-Fo-Fun

ジャックと豆の木で巨人がジャックを探すときに(人間の匂いを嗅ぐおきに)言ったセリフがタイトルになっています。今ではジャズスタンダードとしてジャムセッションで演奏されることもある曲です。ABAフォームの短めの曲ですがブルースの土くささも感じるし、都会的な洗練されたハーモニーセンスも感じられる不思議な曲です。

前曲に引き続きエルヴィンとロンの相性もよく、とってもスウィングしてグルーヴィーな演奏になっています。フレディーのソロは素晴らしいサウンドとフレーズのセンスでとても聴きやすいです。ショーターのソロは独特の浮遊感をともなっていますが、セマティック・ディベロップメントのテクニックをアドリブでも応用していて、このプレイはウェザー・リポートや現代のショーター・カルテットでも聴くことのできるウェイン節になっています。


03. Dace of Cadaverous

「死人の踊り」というまたインパクトの強いタイトルがついています。ジャズワルツの美しいメロディーの曲になっています。8小節のイントロのついたAABCAABDという独特なフォームで展開される楽曲です。minor-major7というかなり特徴あるコードサウンドが主軸になっているため独特な浮遊感をまとっています。またminor-major7から派生したmaj7(#5)というコンテンポラリーなサウンドを使用した、当時ではかなり異端な作品ではなかったのではと予想できます。


04. Speak No Evil

「see no evil, hear no evil, speak no evil」で「見ざる、言わざる、聞かざる」ということわざがありますが、恐らくその最後の一文からのタイトルでしょうか。
ロングトーンとそこから生まれた短いフレーズが対比をなして構成されている曲です。アルバムのタイトルソングでもあります。少し軽快なスウィング調の曲です。


05. Infant Eyes

9小節のABAフォームのバラードです。これもごく稀にジャムセッションでも演奏されるジャズスタンダードとなっている名曲です。他の楽曲と違いワンホーンで録音されています。この曲も一つのフレーズのパターンを何度も展開させて発展させるセマティック・ディベロップメントを使って曲を構成させています。


06. Wild Flower

ショーターの代表曲の一つで美しい3拍子の曲です。この曲もジャズスタンダードの一つになっています。このアルバムは本当に名曲を多く生み出していて、後世のミュージシャンにいかに影響を与えたか、楽曲だけを聴いてもわかります。2ホーンのアレンジも素晴らしく、フレディーとの2管編成の相性の良さも納得していただけるでしょう。


それではまた次回。


文:曽根麻央 Mao Soné



Recommend Disc

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Title : 『Speak No Evil』
Artist : Wayne Shorter
LABEL : Blue Note
発売年 : 1966年

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【SONG LIST】

01.Witch Hunt
02.Fee-Fi-Fo-Fum
03.Dance Cadaverous
04.Speak No Evil
05.Infant Eyes
06.Wild Flower




【曽根麻央LIVE INFO】

11/17 (Thu) @ 104.5 (御茶ノ水)
Good Jam Session with Candy Dulfer and Her Band​
Yoshiki Takahashi & Kazuhiro Odagiri

11/20 (Sun) @ Body & Soul (渋谷)
Mao Sone, Taka Nawashiro, Shin Sakaino, Kazu Odagiri​

11/27 (Sun) @ No Room For Squares (下北沢)
Mao Sone, Yuji Ito, Hironori Suzuki​

​​​​12/4 (Sun) @ Nardis (柏)
Mao Sone, Yoshiki Takahashi & Hiro Kimura

12/9 (Fri) @ The Moment (成城学園前)
Mao Sone, Yoshiki Takahashi, Hayato Yamazaki

​​​​12/12 (Mon) @ TBA​


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「Monthly Disc Review」アーカイブ曽根麻央
2020.04『Motherland / Danilo Perez』2020.05『Color Of Soil /タイガー大越』2020.06『Passages / Tom Harrell 』2020.07『Inventions And Dimensions / Herbie Hancock』2020.08『Birth Of The Cool / Miles Davis』2020.09『Chet Baker Sings / Chet Baker』2020.10『SFJAZZ Collective2 / SFJAZZ Collective』2020.11『Money Jungle: Provocative In Blue / Terri Lyne Carrington』2020.12『Three Suites / Duke Ellington』2021.01『Into The Blue / Nicholas Payton』2021.02『Ben And "Sweets" / Ben Webster & "Sweets" Edison』2021.03『Relaxin' With The MilesDavis Quintet / The Miles Davis Quintet 』2021.04『Something More / Buster Williams』2021.05『Booker Little / Booker Little』2021.06『Charms Of The Night Sky / Dave Douglas』2021.07『Play The Blues / Ray Bryant Trio』2021.08『The Sidewinder / Lee Morgan』2021.09『Esta Plena / Miguel Zenón』2021.10『Hub-Tones / Freddie Hubbard』2021.11『Concert By The Sea / Erroll Garner』2021.12『D・N・A Live In Tokyo / 日野皓正』2022.1『The Tony Bennett Bill Evans Album / Tony Bennett / Bill Evans』2022.2『Quiet Kenny / Kenny Dorham』2022.3『Take Five / Dave Brubeck』・2022.4『Old And New Dreams / Old And New Dreams』2022.5『Ella Fitzgerald And Louis Armstrong / Ella And Louis』2022.6『Live from Miami / Nu Deco Ensemble & Aaron Parks』2022.7『Oscar Peterson Trio + One / Oscar Peterson Trio Clark Terry』2022.8『Ugetsu/ Art Blakey & The Jazz Messengers』2022.9『Sun Goddess / Ramsey Lewis』2022.10『Emergence / Roy Hargrove Big Band』

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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

曽根麻央Official Site

曽根麻央 Monthly Disc Review2022.10_Roy Hargrove Big Band : Emergence:Monthly Disc Review

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皆さんこんにちは。トランペッター、ピアニストの曽根麻央です。
10月も中旬に差しかかり肌寒い日が多くなってきました。皆様におかれましては体調のほどいかがでしょうか?僕は元気にツアーの多い秋を駆け抜けています。
今回は熊本からディスク・レビューを書いています。

今日はレジェンド・トランペッター、ロイ・ハーグローヴが2009年に残したビッグバンド・アルバム、『Emergence』を聴いていきたいと思います。死後にリリースされたものを除けば、ラスト・リーダー作となっています。


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Title : 『Emergence』
Artist : Roy Hargrove Big Band

【現代を代表するトランペッター、Roy Hargroveのラスト・リーダー作】

 ロイ・ハーグローヴは間違いなく現代を代表するトランペッターでしたが、2018年に惜しまれながらこの世をさりました。残念ながら彼の絶頂期の演奏をライヴで聴くことは僕はありませんでしたが、それでも彼のソウルフルで温かい音色と歯切れ良いリズム、そして美しいメロディー・ラインは亡くなる直前まで彼と共にありました。NYCのSmallsというライヴ・ハウスに僕が学生時代に遊びにいき、ジャム・セッションに参加していると、ロイが急に現れて完璧な2コーラスを吹いてまたどこかへまた去っていく、これがたまらなくカッコよく憧れでした。

 ジャム・セッションといえば...ブルーノート東京と僕が毎月開催しているジャム・セッション・イベントがあるので是非チェックしてみてください。我こそはという参加者、ミュージシャンが切磋琢磨する様子を楽しみに来るリスナーさん歓迎です!ブルーノート東京の系列店で御茶ノ水にあるCafe104.5で主に開催しています。次回は11/17です。

Cafe104.5


 『Emergence』は2009年リリースの近年のアルバムだけあってとても良い音で収録されています。ロイのトランペットの音色も明るく収録されています。場面によっては録音ブースの隅まで音が響き渡っていたことが分かる部屋の残響音も集音されていて、ロイのパワフルな一面も存分に味わうことができるライヴ感もあるアルバムになっています。左からサックス・セクション、真ん中にトロンボーン・セクション、右側にトランペット・セクションが聴こえてきますので、恐らくトラディショナルなビッグ・バンドのレコーディングの配置で収録されたのかと思います。ロイはのトランペットはおおよそセンターから聴こえてきます。これを現代的なステレオ・イメージで聴くことが出来るのもこのアルバムの魅力かと思います。

01. Velera

ロイ・ハーグローヴ・ビッグバンドのオープニング曲としてよく演奏されていた美しいバラード曲です。10小節、8小節、10小節のA-B-Aフォームの曲で、独特のハーモニーと変則的な小節数が浮遊感を演出します。トランペット・セクションがピックアップのメロディーを演奏するとすぐにフル・オーケストレーションで1コーラス曲が奏でられます。ロイはフリューゲルホルンで2コーラス目のAセクションでソロをとります。バラードでのフリューゲルホルンの演奏はロイの魅力を最も味わえる場面です。




02. Ms. Garvey, Ms. Garvey

ファンキーなシャッフル・スウィングの曲です。1コーラス目にトロンボーンとバリトン・サックスのユニゾンでメロディーが演奏され、2コーラス目にはこれにロイが加わりつつ、オーケストラがハーモニーやカウンターポイント(対位法:主旋律と対になるような副旋律)を演奏します。その後もう1コーラス分アレンジャーズ・コーラスがあり、その後各セクションから一人ずつフィーチャーしてのソロとなります。アレンジャーズ・コーラスはシャウト・コーラスとも呼ばれ、ビッグバンドをアレンジした編曲家が元のコード進行の上に独自のメロディーを新たに書き、オーケストレーションした場面のことを指します。ソロはバリトン・サックス、ロイのトランペット、トロンボーンと受け継がれます。このロイのソロも力強く、ファンキーで、カッコいいです。




03. My Funny Valentine

ロイのフリューゲルがフィーチャーされた誰もが知るスタンダード曲のカバー。出だしは少しだけスタン・ケントンの『コンテンポラリー・コンセプト』に収録されている「Stella By Starlight」に影響をうけたのを個人的に感じました。


04. Mambo For Roy

Dマイナーのブルース形式の快速なテンポで展開されるラテンの曲。ここでロイのトランペットも最高潮のソロを展開し、ハイノートを見事にヒットさせ続けます。ロイ、フルート、そしてピアノ・ソロと曲が展開しメロディーに戻ると、曲が一旦終わったかのように見せかけ、本編より遅いチャチャのリズムでエンディングが演奏されます。この時のロイもソウルフルな演奏で聴く人を虜にします。全体を通してロイのフリューゲルホルンがフィーチャーされており、丁寧にメロディーを吹いておりとても美しいです。


05. Requiem

アメリカの古きよきポップスのような出だしからイントロが始まりますが、いざ曲が始まるとアフリカン・ビートが満載で、モーダルな曲調となります。2分前後にロイと同時にソロを取っているトランペッターはおそらくダレン・バレットだと思います。


06. September In The Rain

ロイの名アレンジのひとつだと思います。誰が聞いても楽しいミディアムテンポのスウィングでアレンジされた、有名な「September in the Rain」のカヴァーです。インパクトのあるイントロの後、ロイが1コーラス、ハーマン・ミュート越しにメロディーを演奏します。その後フル・オーケストラのシャウトコーラスを半コーラス挟み、ベースソロとなります。その次のコーラスでは前半でアルト・サックス、トランペット、トロンボーンの3管編成のシャウト・コーラスがあり、途中からトロンボーン・セクションに主旋律が移りバックグラウンドとしてサックス・セクションがハーモニーを奏で、その後ブラス(トランペット+トロンボーン)とサックス・セクションの対比となり、最終的にピアノ・ソロに着地する見事なオーケストレーションを展開します。ピアノ・ソロはシンプルに、そしてリズミカルに心地よく演奏されます。その後ビッグバンド全体でユニゾン、そしてそれを追随するドラム・ソロというトレイド・セクションに入ります。

日本ではこのようなセクションを「フォーバース」と呼んだりしますが、アメリカではこの様な場面を「Trade」と言います。そしてロイが歌で「September in the Rain」のメロディーを歌い上げ、ロイの歌にメンバーが呼応する「Call & Response」の場面があり曲が幕を閉じます。実にバラエティに富んだアレンジで、このアルバムのクライマックスといえる名演奏です。




07. Everytime We Say Goodbye

Roberta Gambariniというイタリアのジャズ・シンガーをフィーチャーしたアレンジ。前半はバラードでじっくりと、後半はロイのソロがスウィング・ワルツで軽快に演奏されます。


08. La Puerta

同じくRoberta Gambariniをフィーチャーしたボレロ調の楽しい曲。ロイのフリューゲルホルンは短いソロながらも再び冴える一曲です。ビッグバンド自体のサウンドもとても太く一体感のある演奏でとても素晴らしいです。


09. Roy Allan

ロイ・ハーグローヴの代表曲のビッグバンド・アレンジ・ヴァージョン。Even 16 feelが心地よく、メロディーとハーモニーがとても洗練されていてロイらしい一曲です。ここまでの曲は割とオーソドックスなハーモニーで構成された曲が多いので、ここでこのようなコンテンポラリー・サウンドの登場はとても新鮮に感じられます。そしてロイのトランペットソロもMambo for Royで聴けたような熱量があり素晴らしいです。


10. Tschpiso

この曲は全体的にロイのトランペットがフィーチャーされた曲で、パッと聴くと「ルパン三世」や「グレート・プリテンダー」や「スパイファミリー」なんかの日本のアニメのサウンドトラックで使われそうなグルーヴとハーモニーの一曲になっています。


11. Trust

サックスのユニゾンが徐々に膨れ上がり繊細なハーモニーを織り出すバラード曲。ロイのトランペットの柔らかい音色がよく収録されていて素晴らしいです。一瞬フリューゲルホルンを演奏しているかのような柔らかい音色から徐々にハリのあるトランペットの音に変化してくソロは必聴です。

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さて私自身は7月よりジャズ・スタンダードの数々をソロで収録し、毎月2曲ずつサブスクで配信するプロジェクト『Mao Sone Plays Standards』を継続しております。

詳しくはこちら

今月10/24(月)には名古屋のMr. Kenny'sで『Mao Sone Plays Standards』のソロ公演を開催しますので名古屋の皆様、お待ちしております!
予約フォーム(Mr. Kenny's)



それではまた次回。


文:曽根麻央 Mao Soné



Recommend Disc

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Title : 『Emergence』
Artist : Roy Hargrove Big Band
LABEL : EmArcy
発売年 : 2009年

アマゾン詳細ページへ

【SONG LIST】

01.Velera
02.Ms. Garvey, Ms. Garvey
03.My Funny Valentine
04.Mambo For Roy
05.Requiem
06.September In The Rain
07.Every Time We Say Goodbye
08.La Puerta
09.Roy Allan
10.Tschpiso
11.Trust




【曽根麻央LIVE INFO】

10/16 (Sun) @ 菊陽町図書館ホール (熊本)
Travel Brass

10/17 (Mon) @ 宮崎市立大淀小学校 (宮崎)
Travel Brass
​​
10/18 (Tue) @TBA
Travel Brass
​​
10/19 (Wed) @ Velera (赤坂)
Mao Soné Trio with Yuji Ito & Hiro Kimura

10/21 (Fri) @ 葛城 北の丸(ハママツ・ジャズ・ウィーク関連イベント)
Brightness of the Lives with 井上銘、山本連、木村紘、二階堂貴文
​​​
10/23 (Sun) @ アクトシティー大ホール(浜松ヤマハ・ジャズ・フェスティバル)
Brightness of the Lives with 井上銘、山本連、木村紘、二階堂貴文 & 馬場智章

10/24 (Mon) @ Mr Kenny's (名古屋)
Mao Soné Solo "Plays Standards"

10/25 (Tue) @ 大和市立柳橋小学校 (神奈川)
Travel Brass
​​
10/26 (Wed) @ 名古屋市立植田小学校
Travel Brass
​​
10/27 (Thu) @ 浜松市立葵西小学校
Travel Brass
​​
10/30 (Sun) @ 御船町カルチャーセンター(熊本)
Travel Brass

10/31 (Mon) @ 福岡県 粕屋西小学校
Travel Brass

曽根麻央のその他情報はウェブサイトへ

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「Monthly Disc Review」アーカイブ曽根麻央
2020.04『Motherland / Danilo Perez』2020.05『Color Of Soil /タイガー大越』2020.06『Passages / Tom Harrell 』2020.07『Inventions And Dimensions / Herbie Hancock』2020.08『Birth Of The Cool / Miles Davis』2020.09『Chet Baker Sings / Chet Baker』2020.10『SFJAZZ Collective2 / SFJAZZ Collective』2020.11『Money Jungle: Provocative In Blue / Terri Lyne Carrington』2020.12『Three Suites / Duke Ellington』2021.01『Into The Blue / Nicholas Payton』2021.02『Ben And "Sweets" / Ben Webster & "Sweets" Edison』2021.03『Relaxin' With The MilesDavis Quintet / The Miles Davis Quintet 』2021.04『Something More / Buster Williams』2021.05『Booker Little / Booker Little』2021.06『Charms Of The Night Sky / Dave Douglas』2021.07『Play The Blues / Ray Bryant Trio』2021.08『The Sidewinder / Lee Morgan』2021.09『Esta Plena / Miguel Zenón』2021.10『Hub-Tones / Freddie Hubbard』2021.11『Concert By The Sea / Erroll Garner』2021.12『D・N・A Live In Tokyo / 日野皓正』2022.1『The Tony Bennett Bill Evans Album / Tony Bennett / Bill Evans』2022.2『Quiet Kenny / Kenny Dorham』2022.3『Take Five / Dave Brubeck』・2022.4『Old And New Dreams / Old And New Dreams』2022.5『Ella Fitzgerald And Louis Armstrong / Ella And Louis』2022.6『Live from Miami / Nu Deco Ensemble & Aaron Parks』2022.7『Oscar Peterson Trio + One / Oscar Peterson Trio Clark Terry』2022.8『Ugetsu/ Art Blakey & The Jazz Messengers』2022.9『Sun Goddess / Ramsey Lewis』

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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

曽根麻央Official Site

曽根麻央 Monthly Disc Review2022.9_Ramsey Lewis : Sun Goddess:Monthly Disc Review

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みなさんこんにちは、トランペッター&ピアニストの曽根麻央です。
今週は日本のジャズシンガーの中でもレジェンド級の存在、
中本マリさんのツアーで関西〜名古屋方面にきています。お近くの方は是非お越しください。

9/15 高槻J K.RUSH
9/16 大津Bochi Bochi
9/17 桑名ado on top
9/18 桑名 ado on top (昼公演)
9/19 名古屋Star Eyes

そして今月来月は、今年発売したアルバム『Brightness of the Lives』のコンサートがあります。

9/23 @ 流山生涯学習センター
https://teket.jp/3138/14458

10/21 @ ヤマハリゾート葛城北の丸(掛川)
hhttps://www.yamaharesort.co.jp/katsuragi-kitanomaru/info/040.php

10/23 @ 浜松アクトシティー大ホール
https://hamamatsujazzweek.com/2022/01/


また現在配信中のソロ演奏シリーズ『曽根麻央プレイズ・スタンダード』の一環で、名古屋に10/24(月)ソロ公演で伺います!場所は金山のMr. Kenny'sです。
https://teket.jp/3138/14458


この様に徐々にライブシーンが通常に回り始めた喜びを感じつつ充実した日々を送っていたところ、とんでもない訃報が届いてしまいました。

ラムゼイ・ルイス。偉大なR&B~ジャズピアニストで数多くのヒットソングに携わった人です。僕はこの人のライブ映像を小学生の時に何回も見て、その凄まじいライブパフォーマンスに憧れていました。YouTubeにその映像を見つけたので是非聞いてみて下さい。




【クールでファンキーなピアノスタイル】

ラムゼイ・ルイスのピアノは輝く明るめのタッチとゴスペルやR&Bに根ざしたリズミカルでグルーヴィーな演奏が特徴です。ライブ映像をみてもわかるのですが、ファンキーな曲を演奏していてもとても落ち着いていて、軸がブレないというか、じっくりとストーリーが展開されている印象をえます。この様なクールでファンキーなピアノの演奏スタイルは、ラムゼイ・ルイスなしには完成しなかったといってよいでしょう。

さてこのSun Goddessは調べるとルイスとドラマー、モーリス・ホワイトのリユニオン作品だそうです。モーリス・ホワイトというとあの有名なEarth, Wind & Fireのリーダーとして有名でリードトラックの「Sun Goddess」をはじめ、Earth, Wind & Fireのメンバーが演奏に参加しています。
僕が書くまでもない名盤ですが、新ためてこのアルバムの魅力に気付けたらと思います。


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Title : 『Sun Goddess』
Artist : Ramsey Lewis



01. Sun Goddess




この8分間は録音の歴史上最高にグルーヴィーな瞬間であると言えるでしょう。ルイスの代表的名演奏です。ギターのカッティングが聴こえてきて、ドラムのbass drumが胸に響きます。ラムゼイ・ルイスは最初フェンダー・ローズでシンプルなパターンを繰り返し弾きながらグルーヴを高めます。その後かの有名な美しいメロディーが流れてきます。メロディーの間のルイスの合いの手も非常に歌心あり、感情をくすぐられます。その後一瞬イントロのギターカッティングの上で、ルイスが暴れます(笑)。これがまたちょうどよい長さでカッコ良いです。このトラックは構成のバランスも最高なのです。その後すぐにテナーソロに入り、イントロのコード進行の上で音楽が進んでいきます。同じ進行の上でソロがルイスに渡されます。リズムがとても歯切れよく心地よいソロが展開されます。フレーズはいたってシンプルでコードに沿ったものですが、それが自然と聴き手を徐々に音楽の中に引っ張り込んでしまいます。ソロが最高潮に達したところですぐさまメロディーに戻るのもシンプルな作りでとても良いですね。エンディングに近づくにつれディレイのかかったローズの音になっていき、フレーズが徐々に複雑になりかけたところでフェイドアウトして終わります。


02. Living for the City

スティーヴィー・ワンダーの楽曲。フェンダー・ローズでメロディーを弾きながら左手でブルージーなコンピングを繰り広げるのは本当に見事ですね。ブラスセクションがとてもインパクトある曲になっています。後ろのストリングスも特徴的ですね。ピアノソロ中は音程をグニャっとさせて独特の緊張感を音楽に与えています。


03. Love Song

これはルイスのオリジナル曲。ルイスのアコースティックピアノをフィーチャーした曲。イントロのストリングスがこれも非常に特徴的ですね。 ルイスのピアノの音はこの上なく明るく、すべての音をかき分けて頂点に立つ様な音です。しかし、耳に突き刺さることはなく、優しさがある素敵なピアノのタッチです。ソロではフェンダー・ローズに戻り、グルーヴィーなソロを1コードの上で展開しつつ、徐々にホーンセクションなどが絡んできているのもかっこいいです。


04. Jungle Strut

この曲ではアップライトベースがとても特徴的なラインを弾いて、それが基本となり展開していきます。言葉とそれに呼応するシンセの音が特徴的な音楽です。


05. Hot Dawgit

映画音楽の様なブルージーなギター・イントロに続いて、リリカルなメロディーが展開されます。短いシンプルな曲です。


06. Tambura

ノイズの様なパーカッションとシンセが特徴的な出だしを作り出しています。ここまで聴いて改めて気づいたのですが、このアルバムは各楽曲のイントロの掴みが素晴らしいですね。聴き手に何だこれ、かっこいい、と思わせる工夫が特にイントロや出だしになされていて、そこから派生するグルーヴが安定して永続的に続くため体が自然と踊り出す、そんなアルバムなのかもしれません。


07. Gemini Rising

これまでの楽曲に比べるとかなり暗い混沌としたコンテンポラリーなサウンドでイントロが始まります。本編自体は少し軽快なグルーヴです。シンンセサイザーがメロディーを担当していて他の楽曲とかなり印象が変わります。アップライトベースも特徴的です。ルイスのソロではスウィングにグルーヴが変わります。恐らくCleveland Eatonがベースだと思いますが、非常に理想的なウォークベースを展開していて、スウィングのリズムをリードしています。それにルイスのソロも徐々に高まり彼のジャズ奏者としての優れた一面を聴くことができます。ベースソロではドラムが徐々にカオスになり、シンセも加わって混沌としたイントロのサウンドに戻り曲が終わります。



それではまた次回。


文:曽根麻央 Mao Soné



Recommend Disc

sungoddess200.jpg

Title : 『Sun Goddess』
Artist : Ramsey Lewis
LABEL : Columbia
発売年 : 1974年

アマゾン詳細ページへ

【SONG LIST】

01.Sun Goddess
02.Living For The City
03.Love Song
04.Jungle Strut
05.Hot Dawgit
06.Tambura
07.Gemini Rising




【曽根麻央LIVE INFO】

9/15 (Thu) @ JK Rush, Takatsuki
Mari Nakamoto Tour
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9/17 (Sat) night @ Ado On Space, Kuwana
Mari Nakamoto Tour
​​
9/16 (Fri) @ Bochi Bochi, Otsu
Mari Nakamoto Tour
​​
9/18 (Sat) @ Ado On Space, Kuwana
Mari Nakamoto Tour
​​
9/19 (Mon) @ Star Eyes, Nagoya
Mari Nakamoto Tour
​​
9/23 (Fri) @ 流山生涯学習センター
Brightness of the Lives (feat. May Inoue, Ren Yamamoto, Hiro Kimura & Takafumi Nikaido)

9/24 (Sat) @ Cabin, Honatsugi
Mao Sone, Takafumi Nikaido, Yuji Ito

9/25 (Sun) @ Body & Soul
Mao Sone, Yuji Ito, Hiro Kimura, Takafumi Nikaido

9/26 (Mon) @ Apple, Yokohama
​Tetsuo Koizumi, Takafumi Nikaido, Mao Sone

9/28 (Wed) @ Nardis, Kashiwa
Mao Sone Trio (feat. Yuji Ito & Hiro Kimura)

9/29 (Thu) @ 築地 Blue Mood
中村梅雀(eb)、井上銘(gt)、曽根麻央(keys&tp)、高橋直希(ds)

10/1 (Sat) @ 取手市民会館大ホール
宮本貴奈ダブル・トライアングル featuring 曽根麻央、中林俊哉&KOTETSU

10/2 (Sun) @ 蒲郡ジャズフェスティバル
Yucco Miller Quartet

10/3 (Mon) @ Nardis (柏)
Mao Soné Trio with Yuji Ito & Hiro Kimura

10/5 (Wed) @ Apple (横浜)
TBA

10/7 (Fri) @ Cabin (本厚木)
丈青 and more

10/8 (Sat) @ 関内ホール【横浜ジャズプロムナード】
Reborn Wood Sessions

10/9 (Sun) @ Cabin (本厚木)
Mao Soné SOLO

曽根麻央のその他情報はウェブサイトへ

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「Monthly Disc Review」アーカイブ曽根麻央
2020.04『Motherland / Danilo Perez』2020.05『Color Of Soil /タイガー大越』2020.06『Passages / Tom Harrell 』2020.07『Inventions And Dimensions / Herbie Hancock』2020.08『Birth Of The Cool / Miles Davis』2020.09『Chet Baker Sings / Chet Baker』2020.10『SFJAZZ Collective2 / SFJAZZ Collective』2020.11『Money Jungle: Provocative In Blue / Terri Lyne Carrington』2020.12『Three Suites / Duke Ellington』2021.01『Into The Blue / Nicholas Payton』2021.02『Ben And "Sweets" / Ben Webster & "Sweets" Edison』2021.03『Relaxin' With The MilesDavis Quintet / The Miles Davis Quintet 』2021.04『Something More / Buster Williams』2021.05『Booker Little / Booker Little』2021.06『Charms Of The Night Sky / Dave Douglas』2021.07『Play The Blues / Ray Bryant Trio』2021.08『The Sidewinder / Lee Morgan』2021.09『Esta Plena / Miguel Zenón』2021.10『Hub-Tones / Freddie Hubbard』2021.11『Concert By The Sea / Erroll Garner』2021.12『D・N・A Live In Tokyo / 日野皓正』2022.1『The Tony Bennett Bill Evans Album / Tony Bennett / Bill Evans』2022.2『Quiet Kenny / Kenny Dorham』2022.3『Take Five / Dave Brubeck』・2022.4『Old And New Dreams / Old And New Dreams』2022.5『Ella Fitzgerald And Louis Armstrong / Ella And Louis』2022.6『Live from Miami / Nu Deco Ensemble & Aaron Parks』2022.7『Oscar Peterson Trio + One / Oscar Peterson Trio Clark Terry』2022.8『Ugetsu/ Art Blakey & The Jazz Messengers』

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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

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