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Monthly Disc Review2016.08.15:Monthly Disc Review

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Title : 『Melancholy of a Journey』
Artist : 佐藤浩一



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今月のディスクは佐藤浩一『Melancholy of a Journey』。rabbitooや橋爪亮督Group、土井徳浩Quartet、本田珠也トリオなどライブシーンではかなり頻繁に名前を目にするピアニストではあったけれど、本人名義の作品はこれで2枚目。前作から5年ぶりと久しぶりの作品だけれど、このアルバムの隅々までこだわり抜かれた 濃厚な音の説得力の源はそこにあると思う。

メンバーは土井徳浩(Clarinet, Bass Clarinet)、市野元彦(Guitar)、伊藤ハルトシ(Cello)、千葉広樹(Double Bass)、則武諒(Drums)とそれぞれが様々なフィールドで活動するミュージシャン達。ピアノ、ドラム、ベースにクラリネット、チェロ、ギターを加えたこの変則のセクステットを前提に書かれた12曲は、バラバラに聴いてしまうとそれぞれ驚くほど違った面を見せる。6人が徐々に折り重なってメロディを紡いでいく「Bird of Passage」 やクラリネットとピアノのデュオによる「Transience」にはクラシックや室内楽的なアンサンブルの美しさも感じられるし、ベースとピアノが作るミニマルな構造の上でクラリネットが踊る「tick-tack」や「morceau」、疾走する4ビートの上でフリーキーな会話をみせる「Reverse Run」には、即興の可能性を探るような現代的なジャズの要素を感じる。アルバムに4度登場する「The Railway Station」もそのパートによって違った表情を見せる。全ての曲が違う風景を描いているようにも、同じ風景の違う時間帯を描いているようにも感じられる不思議な統一感が、このアルバムの一番の魅力だと感じた。フリージャズ、現代音楽、室内楽まで様々な要素を一つのパッケージにまとめあげる佐藤の作曲とそれを具現化したメンバーの力には、日本のジャズシーンの最先端が、世界のシーンの最先端と確かに呼応している事を感じた。

その統一感に一役買っているのが、レコーディングとミックスにPete Rende、マスタリングにNate Woodという最近のジャズの中で一つの定番になりつつあるコンビによる制作だ。正直、このアルバムの音には驚いた。アコースティックの楽器にこだわって作られているけれど、曲ごとにマテリアルの細かな色彩は変化していくし、それでいて生の楽器の質感は丁寧に残されている。とても音楽的なミックスだと感じた。

どうしても僕たちは日々新しいアルバムを、次のアルバムをと待ち望んでしまうけれど、聴く度に表情の変わるこのアルバムは僕のプレイリストにずっと残ることになりそうだ。


文:花木洸 HANAKI hikaru


佐藤浩一 HP


【Koichi Sato - Melancholy of a Journey trailer】




Recommend Disc

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Title : 『Melancholy of a Journey』
Artist : 佐藤浩一
LABEL : SONG X JAZZ
NO : SONGX038
RELEASE : 2016.4.27

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【MEMBER】
佐藤浩一│Koichi Sato: Piano
土井徳浩│Tokuhiro Doi: Clarinet, Bass Clarinet
市野元彦│Motohiko Ichino: Guitar
伊藤ハルトシ│Harutoshi Ito: Cello
千葉広樹│Hiroki Chiba: Double Bass
則武諒│Ryo Noritake: Drums


【SONG LIST】
01. The Railway Station
02. Bird of Passage
03. tick-tuck
04. Reverse Run
05. morceau
06. The Railway Station 2
07. Transience
08. Sognsvann
09. The Railway Station 3
10. Voyager
11. ever after
12. The Railway Station 4


この連載の筆者、花木洸が先日発売になりました『Jazz The New Chapter 3』で編集・選盤・レビュー記事などを担当。ブラック・ミュージックの最先端からUKジャズ、ネクスト・ジャズ・ファンク、ラージアンサンブル等ここにしかない記事・インタビューが盛り沢山となっています。


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■タイトル:『Jazz The New Chapter 3』
■監修:柳樂光隆
■発売日:2015年9月10日
■出版社: シンコーミュージック

アマゾン詳細ページへ


今日においてはジャズこそが時代を牽引し、ディアンジェロやフライング・ロータスなど海外の最先端アーティストから、ceroなど日本のポップ・シーンにも大きな影響を与えている。この状況を予言し、新時代の到来を告げた「Jazz The New Chapter(ジャズ・ザ・ニュー・チャプター)」の第3弾がいよいよ登場。2014年の刊行時より刷数を重ね、SNS上でも未だ話題沸騰中の第1弾・第2弾に続き、2015年9月末に〈Blue Note JAZZ FESTIVAL in JAPAN〉が開催されるなど、かつてない活況を迎えているジャズの次なる未来は、ニューチャプターが切り拓く!


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「Monthly Disc Review」アーカイブ花木 洸

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花木 洸 HANAKI hikaru

東京都出身。音楽愛好家。
幼少期にフリージャズと即興音楽を聴いて育ち、暗中模索の思春期を経てジャズへ。
2014年より柳樂光隆監修『Jazz the New Chapter』シリーズ(シンコーミュージック)
及び関西ジャズ情報誌『WAY OUT WEST』に微力ながら協力。
音楽性迷子による迷子の為の音楽ブログ"maigo-music"管理人です。

花木 洸 Twitter
maigo-music

Monthly Disc Review2016.07.15:Monthly Disc Review

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Title : 『A Result Of The Colors』
Artist : Megumi Yonezawa Trio



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NYで活動するピアニスト、メグミ・ヨネザワのデビュー作。バークリーを卒業後、Jason Moranの推薦でGreg Osbyバンドのレギュラーピアニストをつとめた彼女は、2004年にGreg Osby『Public』(Blue Note)にサイドマンとして参加している。Greg Osbyのバンドと言えば、Edward SimonやJason Moranなど優れたピアニストを輩出してきたバンドだ。だからこのアルバムはまさに満を持して、待望のリーダー作と言える。

バックのメンバーはEric McPherson(ds)、John Herbert(b)というAndrew HillやFred Herschのバンドでも活動を共にする鉄板のコンビ。ほぼ全曲が彼女のコンポジションで、4ビートのジャズマナーに則った「Nor Dear Or Fear」から幾何学的なパズルのような「Children Of The Sun」、バラードの「A Letter From Stillness」まで幅広い楽曲が収められている。彼女のKeith JarrettやPaul Bleyに通じるようなメランコリックで空間的なピアノは、マーブリングや墨流しのように、じわりじわりと形や色を変えながら絶妙なバランスを持った危うい美しさがとても魅力的だ。なかでもスタンダードの「For Heaven's Sake」での、イントロのダークな雰囲気に繊細な一音を積み、曇り空に一筋ずつ光をさして行くように楽曲のカラーを変えていく様は圧巻。「Sketch」や「Epilogue」といった自由な構成の曲のなかでも、メンバーそれぞれの色を引き出しながら楽曲全体をコントロールし、スペースを自在に操るピアノが聴ける。

日本にまだあまり紹介されていないのが不思議なくらい、見逃すわけにはいかない才能だ。


文:花木洸 HANAKI hikaru


Megumi Yonezawa HP


【For Heaven's Sake】




Recommend Disc

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Title : 『A Result Of The Colors』
Artist : Megumi Yonezawa Trio
LABEL : FRESH SOUND NEW TALENT
NO : FSNT504
RELEASE : 2016.6.17

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【MEMBER】
Megumi Yonezawa(p)
John Herbert(b)
Eric McPherson(ds)

Recorded at Acoustic Recording, October 11, 2012


【SONG LIST】
1.A Result of the Colors
2.Children of the Sun
3.Untitled
4.Dr. Jekyll and Mr. Hyde
5.Sketch
6.For Heaven's Sake
7.Nor Dear or Fear
8.A Letter from Stillness
9.Epilogue


この連載の筆者、花木洸が先日発売になりました『Jazz The New Chapter 3』で編集・選盤・レビュー記事などを担当。ブラック・ミュージックの最先端からUKジャズ、ネクスト・ジャズ・ファンク、ラージアンサンブル等ここにしかない記事・インタビューが盛り沢山となっています。


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■タイトル:『Jazz The New Chapter 3』
■監修:柳樂光隆
■発売日:2015年9月10日
■出版社: シンコーミュージック

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今日においてはジャズこそが時代を牽引し、ディアンジェロやフライング・ロータスなど海外の最先端アーティストから、ceroなど日本のポップ・シーンにも大きな影響を与えている。この状況を予言し、新時代の到来を告げた「Jazz The New Chapter(ジャズ・ザ・ニュー・チャプター)」の第3弾がいよいよ登場。2014年の刊行時より刷数を重ね、SNS上でも未だ話題沸騰中の第1弾・第2弾に続き、2015年9月末に〈Blue Note JAZZ FESTIVAL in JAPAN〉が開催されるなど、かつてない活況を迎えているジャズの次なる未来は、ニューチャプターが切り拓く!


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「Monthly Disc Review」アーカイブ花木 洸

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花木 洸 HANAKI hikaru

東京都出身。音楽愛好家。
幼少期にフリージャズと即興音楽を聴いて育ち、暗中模索の思春期を経てジャズへ。
2014年より柳樂光隆監修『Jazz the New Chapter』シリーズ(シンコーミュージック)
及び関西ジャズ情報誌『WAY OUT WEST』に微力ながら協力。
音楽性迷子による迷子の為の音楽ブログ"maigo-music"管理人です。

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Monthly Disc Review2016.06.15:Monthly Disc Review

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Title : 『Grand Slam』
Artist : 森智大



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ここ数年間で、ドラマーが求められる能力の幅がぐんっと拡がった印象がある。それはヒップホップ的なビートであったり、変拍子であったり、あるいはラテンをはじめとする世界各地の音楽の要素であったりと、ジャズは様々なグルーヴを纏うようになってきた。そんな中にあっても(あるいはそんな状態だからこそ?)、日本のジャズ界では、優れた若手ドラマーがどんどん頭角を現している。石若駿、山田玲、木村紘、、、などなど都内のライブハウスでもしょっちゅう目にする20代のドラマー達は、日本の将来を担うどころか、すでにシーンを支える存在だ。


今回紹介するドラマーは森智大。彼もまた1992年生まれの20代。2011年に渡米しバークリー音楽大学で学んだ後、現在はニューヨークを中心に活動しているドラマーだ。昨年末にはクラウドファンディングで資金を集め、ニューヨークのミュージシャンを引き連れて来日ツアーも成功させている。


そんな彼のデビュー作となるアルバムが『Grand Slam』。メンバーにはNew Century Jazz QuintetやJose Jamesのバンドで活躍する大林武司(pf)、Christian ScottのバンドやButcher Brownとも共演するBraxton Cook(ts)、Tamir Shmerling(b)、Wayne Tucker(tp)などニューヨークの注目若手ミュージシャンが集まっている。いかにもにもサックスとトランペットの2管編成らしい楽曲の"Kick Ass"、"Grand Slam"。ピアノトリオで聞かせるミディアムテンポのスタンダード"When Sunny Gets Blue"、と"Blue Daniel"。バラードの"Be Back"。そして最後を飾る全力疾走の"A Piece Of Cake"まで、アルバムに通底するのはストレートなスウィングの追求だ。最近の若手の中では驚くほど真っ向勝負なストレートアヘッドの方向性だが、それ故にタイムレスな魅力がほとばしっている。9曲中6曲が彼のコンポジションだが、その中にも歴史へのリスペクトが感じられる。落ち着いたどっしりとしたドラミングは若手とは思えないほど自信満々で、そこに絡んでくるバンドのサウンドをより一層引き立てバンド全体がとてもフレッシュに聴こえる。テクニックや流行とは関係なく、こんなに素直にジャズの楽しさをぶつけてくるアルバムはなかなか無いと思う。ライブ映像を観たらアルバムよりもずっとアグレッシブだったので、是非動画を観て欲しい。そしてまた来日して欲しい。

このアルバムを一周したら、久しぶりにジャズの名盤をひっぱりだして一日スウィングに浸りたくなるような作品。


文:花木洸 HANAKI hikaru


Tomohiro Mori HP

auのCMで注目!NY在住のジャズドラマー。日本と世界をつなぎたい! - READYFOR
https://readyfor.jp/projects/tmoriondrums


【Grand Slam by Tomohiro Mori】



【Grand Slam - Live at Rockwood】




Recommend Disc

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Title : 『Grand Slam』
Artist : 森智大
LABEL : 自主制作
NO :
RELEASE : 2016.5.18

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【MEMBER】
Takeshi Ohbayashi 大林武司 piano
Tamir Shmerling タミール・シュマーリング bass
Tomohiro Mori 森智大 drums

Wayne Tucker ウェイン・タッカー [1,4,7] trumpet
Braxton Cook ブラクストン・クック [1,3,4,6,7] alto saxophone

【Credits】
Produced by Tomohiro Mori
Recorded at The Bunker Studio Brooklyn, NY
Recording engineer:Aaron Nevezie
Mix & Mastering Engineer: Jeremy Loucas
Recording Date:May 19th, 2015


【SONG LIST】
1. Kick Ass / Tomohiro Mori
2. When Sunny Gets Blue / Marvin Fischer, Jack Segal
3. The End of The Day / Tomohiro Mori
4. Grand Slam / Tomohiro Mori
5. Blue Daniel / Frank Rosolino
6. Man's Best Friend / Michael Wang
7. Don't Be So Serious / Tomohiro Mori
8. Be Back / Tomohiro Mori
9. A Piece of Cake / Tomohiro Mori


この連載の筆者、花木洸が先日発売になりました『Jazz The New Chapter 3』で編集・選盤・レビュー記事などを担当。ブラック・ミュージックの最先端からUKジャズ、ネクスト・ジャズ・ファンク、ラージアンサンブル等ここにしかない記事・インタビューが盛り沢山となっています。


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■タイトル:『Jazz The New Chapter 3』
■監修:柳樂光隆
■発売日:2015年9月10日
■出版社: シンコーミュージック

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今日においてはジャズこそが時代を牽引し、ディアンジェロやフライング・ロータスなど海外の最先端アーティストから、ceroなど日本のポップ・シーンにも大きな影響を与えている。この状況を予言し、新時代の到来を告げた「Jazz The New Chapter(ジャズ・ザ・ニュー・チャプター)」の第3弾がいよいよ登場。2014年の刊行時より刷数を重ね、SNS上でも未だ話題沸騰中の第1弾・第2弾に続き、2015年9月末に〈Blue Note JAZZ FESTIVAL in JAPAN〉が開催されるなど、かつてない活況を迎えているジャズの次なる未来は、ニューチャプターが切り拓く!


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「Monthly Disc Review」アーカイブ花木 洸

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花木 洸 HANAKI hikaru

東京都出身。音楽愛好家。
幼少期にフリージャズと即興音楽を聴いて育ち、暗中模索の思春期を経てジャズへ。
2014年より柳樂光隆監修『Jazz the New Chapter』シリーズ(シンコーミュージック)
及び関西ジャズ情報誌『WAY OUT WEST』に微力ながら協力。
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Monthly Disc Review2016.05.15:Monthly Disc Review

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Title : 『the torch』
Artist : rabbitoo



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ギタリスト市野元彦を中心に気鋭のジャズマンによって結成されたバンド、rabbitooの2ndアルバム。日本だけでなくヨーロッパでもリリースされるなどシーンの話題作となった前作『national anthem of unknown country』から2年を経てrabbitooが辿り着いたサウンドは、より深く、ソリッドな音像だ。


アルバムは一曲目、単音のシンセサウンドから始まる。それは聴いている自分の足元がグラつくように変調していきそこにドラム、ベースが順に加わっていく。ビルドアップされたモノクロの世界観がギターがコードを鳴らしたところで、パッと開けるように色づいていく。音数が少なくなったことによって聴いているものの想像力を駆り立て、その予想を裏切っていくこの展開はある意味ですごく「ジャズ」を聴いているような気持ちがしてくる。


前作から一貫してrabbitooのサウンドとは、基本となる枠組みの上で各々がソロをとっていく所謂オーソドックスなジャズのスタイルではなく、ミニマルな繰り返しの中での音の抜き差しに寄って楽曲を展開させていき、そのビルドアップの要素の一つに即興があるというものだ。今作はその方向性を保ったまま個の演奏はより抑制的になり、その結果としてバンドサウンドがよりタイトにそしてぐっとソリッドになった。ギターやシンセの音色は様々だが、サックスの息遣いと乾いた生のドラムサウンドが音色の面でアルバムに芯を通すような存在であり、同時にこの音楽が生のバンドで、人力で作られている意味をすごく現している。

音響、ミニマル、ビートと即興演奏について示唆に富むこの一枚は、世界的にみてもジャズの最先端シーンの一角を担う作品だ。


文:花木洸 HANAKI hikaru


【rabbitoo - the torch Album Preview】




Recommend Disc

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Title : 『the torch』
Artist : rabbitoo
LABEL : SONG X JAZZ
NO : SONG X 036
RELEASE : 2016.3.23

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【MEMBER】
市野元彦 Motohiko Ichino : guitar, keyboards
藤原大輔 Daisuke Fujiwara : tenor saxophone, flute, synthesizer, electronics
佐藤浩一 Koichi Sato : rhodes, synthesizer, piano
千葉広樹 Hiroki Chiba : contrabass, electric bass, violin, electronics
田中徳崇 Noritaka Tanaka : drums


【SONG LIST】
01. バターランプの頂きにて 5:32
02. 火のこどもたち 6:13
03. MET-ROPE-OPLE 4:30
04. やがて星は泥の眠りから醒める 7:01
05. 影に満ちて梟は雪のように眠る 3:25
06. Nodding Robo Labo 4:49
07. 15 Arrows 3:10
08. 渦巻 6:24
09. pool 4:25
All songs produced and arranged by rabbitoo


この連載の筆者、花木洸が先日発売になりました『Jazz The New Chapter 3』で編集・選盤・レビュー記事などを担当。ブラック・ミュージックの最先端からUKジャズ、ネクスト・ジャズ・ファンク、ラージアンサンブル等ここにしかない記事・インタビューが盛り沢山となっています。


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■タイトル:『Jazz The New Chapter 3』
■監修:柳樂光隆
■発売日:2015年9月10日
■出版社: シンコーミュージック

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今日においてはジャズこそが時代を牽引し、ディアンジェロやフライング・ロータスなど海外の最先端アーティストから、ceroなど日本のポップ・シーンにも大きな影響を与えている。この状況を予言し、新時代の到来を告げた「Jazz The New Chapter(ジャズ・ザ・ニュー・チャプター)」の第3弾がいよいよ登場。2014年の刊行時より刷数を重ね、SNS上でも未だ話題沸騰中の第1弾・第2弾に続き、2015年9月末に〈Blue Note JAZZ FESTIVAL in JAPAN〉が開催されるなど、かつてない活況を迎えているジャズの次なる未来は、ニューチャプターが切り拓く!


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「Monthly Disc Review」アーカイブ花木 洸

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花木 洸 HANAKI hikaru

東京都出身。音楽愛好家。
幼少期にフリージャズと即興音楽を聴いて育ち、暗中模索の思春期を経てジャズへ。
2014年より柳樂光隆監修『Jazz the New Chapter』シリーズ(シンコーミュージック)
及び関西ジャズ情報誌『WAY OUT WEST』に微力ながら協力。
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Monthly Disc Review2016.04.15:Monthly Disc Review

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Title : 『FLOW』
Artist : 藤本一馬



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今月紹介するのはギタリスト藤本一馬の新作『FLOW』。


藤本一馬がポップユニットorange pekoeのギタリスト・作曲者としてシーンに現れたのは2002年。その頃から彼のミルトン・ナシメントをはじめとするブラジル音楽やアルゼンチン音楽やボサノヴァからの影響は聴き取ることが出来る。2011年から始まるソロ名義での作品達は、次第にチェンバーミュージックへと近づいていった。この春から活動拠点を一時ニューヨークへと移す彼が日本へ残したこの作品は、間違いなく彼の最高傑作だ。


ギターのアルペジオが響き、そこにクラリネット、ピアノ、ベースが加わっていく一曲目からアルバムの最後までを貫く、オーガニックな手法とで凛とした空気は彼独特のもの。どの曲もルバートに近いゆったりとしたテンポで、楽曲が持つ世界観に全員が奉仕していく。藤本のギターはもちろんのこと、前作をこの連載で紹介したピアニスト林正樹の左手とベーシスト西島徹の奇跡とも言えるコンビネーションには何度もハッとさせられる場面があった。


このアルバムもストレートなジャズのサウンドには分類されないかもしれないが、互いの音が反応し合いながらゆるやかに重なり、形を変えながら流れていく様は、アンサンブルを基調とする近年のジャズの動向に確かに重なるものがある。目立った楽器のソロがあったとしても、関係性はソリストと伴奏者とはならず、むしろアンサンブルの為のソロといったサウンド。この関係性こそがこの作品を現代のチェンバー・ミュージックたらしめる要素だと思う。それくらい作曲されたパーツとインプロヴァイズされたパーツが複雑に絡み合っているのに、とてもシンプルな耳ざわりに仕上がっているのは彼の底知れない作曲能力によるものだ。


今回の作品をリリースしているが「日本のECM」という声もちらほら聴こえてくる"Spiral Records"。音楽に沿ってパッケージングまで一貫されたデザインと、弦の擦れる音やプレイヤーの息遣いまで余すこと無く閉じ込めた録音が素晴らしいです。


文:花木洸 HANAKI hikaru


【藤本一馬 «FLOW» 】







Recommend Disc

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Title : 『FLOW』
Artist : 藤本一馬
LABEL : SPIRAL RECORDS
NO : SPIRA1109
RELEASE : 2016.3.30

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【MEMBER】
藤本一馬(g)
Silvia Iriondo (vo)
Joana Queiroz (cl)
林正樹 (p)
西嶋徹 (B)


【SONG LIST】
01. Polynya
02. Estrella del río
03. Flow
04. Resemblance
05. Still
06. Azure
07. Consequence
08. Dew
09. Snow Mountain
10. Surface
11. Prayer
*Music by Kazuma Fujimoto, except "Consequence" Music by Masaki Hayashi,"Estrella del río " Lyrics by Silvia Iriondo


この連載の筆者、花木洸が先日発売になりました『Jazz The New Chapter 3』で編集・選盤・レビュー記事などを担当。ブラック・ミュージックの最先端からUKジャズ、ネクスト・ジャズ・ファンク、ラージアンサンブル等ここにしかない記事・インタビューが盛り沢山となっています。


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■タイトル:『Jazz The New Chapter 3』
■監修:柳樂光隆
■発売日:2015年9月10日
■出版社: シンコーミュージック

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今日においてはジャズこそが時代を牽引し、ディアンジェロやフライング・ロータスなど海外の最先端アーティストから、ceroなど日本のポップ・シーンにも大きな影響を与えている。この状況を予言し、新時代の到来を告げた「Jazz The New Chapter(ジャズ・ザ・ニュー・チャプター)」の第3弾がいよいよ登場。2014年の刊行時より刷数を重ね、SNS上でも未だ話題沸騰中の第1弾・第2弾に続き、2015年9月末に〈Blue Note JAZZ FESTIVAL in JAPAN〉が開催されるなど、かつてない活況を迎えているジャズの次なる未来は、ニューチャプターが切り拓く!


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Monthly Disc Review2016.04.01:Monthly Disc Review

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※平井さんのDisc Reviewは今月が最終回となります。


Title : 『CONTINUUM』
Artist : NIK BARTSCH'S MOBILE



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もう10年近く前に、"ここ数年で最もエキサイティングな発見"、というような表現で紹介されていたNIK BARTSCH'S RONINも随分と刺激的であったけれど、このNIK BARTSCH'S MOBILEもまた同様にかなりのもの。違いを言い表すとしたら、RONINが血を騒がす肉体的な刺激だとすると、MOBILEは精神の奥深くを揺るがす刺激と言ったら良いだろうか。とにかく一度耳にしたらリスナーを捉えて離さない麻薬的な作用を持った作品という点は、両者どちらにも共通するものだ。

現代音楽的な聞かれ方をする部分もあるけれども、クラシカルを背景に持つそれらとは、やはりその佇まいは明らかに異なり、現代という言葉がもつ同時代性よりも、もっと強く"今"を感じる。現代社会の息づかいが、複雑に絡み合うリズムと共鳴し、否応なしにリスナーは現実と幻想を往き来することになる。うすのろな現実と、甘美な幻想の間を。


音楽は、計らずも時代を反映する。MOBILEが奏でるものが、今という時代と呼応しているとしたら、僕らは危うさや脆さを孕んだ真っ只中に生まれ生きているという印象だ。それは、身の回りを見渡せば容易に感じ取れることではあるけれども、僕らはいつのまにか都合の良いように物事を湾曲する術を身につけてしまった。アンダーコントロールなことなど本当はどこにもないと知っている一方で、そういうことにしておかないと先へは進めないことも同じくらい知っている。先にあるものが常に進歩であるかは不透明だというのに。


音楽に何か役割のようなものがあるとしたら、愚かな時代を俯瞰する契機を与えてくれることもそのひとつだろう。MOBILEの音楽は、その役割を的確に果たしてくれる。
NIKが、そういうことを意図しているか否かに関わらず、音楽自らがその役をかって出ているように僕には聴こえる。


一年間、担当させていただいたこのコーナーは
今回で最終回となります。
お付き合いいただき、ありがとうございました。
自由ヶ丘の店では、こちらで紹介させていただいたような音楽を日々選曲しています。

機会がありましたら是非、お立ち寄りください。
カフェでお待ちしております。

cafeイカニカ
平井康二


Nik Bärtsch's Mobile - Continuum




Recommend Disc

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Title : 『CONTINUUM』
Artist : NIK BARTSCH'S MOBILE
LABEL : ECM(ECM2464)
RELEASE : 2016.4.22

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【MEMBER】
Nik Bärtsch (p,comp)
Sha (b-cl, contrabass clarinet)
Kaspar Rast (ds,per)
Nicolas Stocker (ds,tuned percussion)

EXTENDED:
Etienne Abelin (vln)
Ola Sendecki (vln)
David Schnee (viola)
Solme Hong (cello)
Ambrosius Huber (cello)


【SONG LIST】
01 Modul 29-14
02 Modul 12
03 Modul 18
04 Modul 5
05 Modul 60
06 Modul 4
07 Modul 44
08 Modul 8-11


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「Monthly Disc Review 平井康二」アーカイブ平井康二

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平井康二(cafeイカニカ)

1967年生まれ。レコード会社、音楽プロダクション、
音楽出版社、自主レーベル主宰など、約20年に渡り、
音楽業界にて仕事をする。
2009年、cafeイカニカをオープン
おいしいごはんと良い音楽を提供するべく日々精進。


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cafeイカニカ

●住所/東京都世田谷区等々力6-40-7
●TEL/03-6411-6998
●営業時間/12:00~18:00(毎週水、木曜日定休)
お店の情報はこちら

Monthly Disc Review2016.03.15:Monthly Disc Review

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Title : 『A Time For A Change』
Artist : 荒武裕一郎



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東京を中心に活動する日本人ピアニスト荒武裕一郎の新作『A Time For A Change』。
メンバーは若手の注目ベーシスト三嶋大輝、そして日本ジャズ界の重鎮とも言えるであろう本田珠也とのトリオが軸となっている。荒武はこれまでにも定期的に作品を残してはいるが、トリオでの録音はデビュー作以来15年ぶりというから驚きだ。


一曲目、デイブ・ブルーベックの名曲から始まるのは紛れもないジャズ。三嶋の若手には珍しい骨太なベースラインと、本田のツボを押さえた熟達のドラムは相性よくスウィングしていく。その上で転がっていく荒武のピアノの端々には歴史と伝統への敬意がひしひしと伝わってくる。それは愛奏するスタンダードだけではなく、荒武のオリジナル曲や取り上げたアーティストのオリジナル曲にも表れている。ベテラン橋本信二(gt)を迎えた#5、本田竹広の楽曲を取り上げた#9、そのどれもが楽しさと喜びに溢れているのが印象的だ。しっとりとした後半から、大団円へと向かい、最後はピアノソロで締めるというある意味ベタな構成が心地よい。


新しい手法や音への追求はもちろんだが、荒武が自ら主宰する音楽イベント「Music make us one !! 」では、ジャズ界の若手からベテランまで取り上げ毎回面白い試みがなされている。歴史とその中での現在地を一番考えているのは荒武のようなプレイヤーかも知れない。


今回のアルバムのフライヤーには「日本ジャズ界で走り続けることに疲れ始めた1年前 ピアノをやめようと考えていた そんな思いから解放してくれたのが本田珠也と三島大輝の2人だった」と書かれている。荒武を導いた2人とともに、このアルバムは聴く人を真摯なジャズへ迷いなく導いてくれる一枚だ。


文:花木洸 HANAKI hikaru


【Dialogue in a Day of Spring】




Recommend Disc

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Title : 『A Time For A Change』
Artist : 荒武裕一郎
LABEL : Independent
NO : SDR6001
RELEASE : 2016.2.9

【diskunionでの購入はこちら】


【MEMBER】
荒武裕一朗 Yuichiro Aratake (piano)
三嶋大輝 Daiki Mishima (bass)
本田珠也 Tamaya Honda (drums)

Guest:
橋本信二 Shinji Hashimoto (guitar)
小泉P克人 Yoshihito P Koizumi (bass)

Recorded at Power House Studio, TOKYO 28, 29, 30 November, 2015


この連載の筆者、花木洸が先日発売になりました『Jazz The New Chapter 3』で編集・選盤・レビュー記事などを担当。ブラック・ミュージックの最先端からUKジャズ、ネクスト・ジャズ・ファンク、ラージアンサンブル等ここにしかない記事・インタビューが盛り沢山となっています。


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■タイトル:『Jazz The New Chapter 3』
■監修:柳樂光隆
■発売日:2015年9月10日
■出版社: シンコーミュージック

アマゾン詳細ページへ


今日においてはジャズこそが時代を牽引し、ディアンジェロやフライング・ロータスなど海外の最先端アーティストから、ceroなど日本のポップ・シーンにも大きな影響を与えている。この状況を予言し、新時代の到来を告げた「Jazz The New Chapter(ジャズ・ザ・ニュー・チャプター)」の第3弾がいよいよ登場。2014年の刊行時より刷数を重ね、SNS上でも未だ話題沸騰中の第1弾・第2弾に続き、2015年9月末に〈Blue Note JAZZ FESTIVAL in JAPAN〉が開催されるなど、かつてない活況を迎えているジャズの次なる未来は、ニューチャプターが切り拓く!


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「Monthly Disc Review」アーカイブ花木 洸

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花木 洸 HANAKI hikaru

東京都出身。音楽愛好家。
幼少期にフリージャズと即興音楽を聴いて育ち、暗中模索の思春期を経てジャズへ。
2014年より柳樂光隆監修『Jazz the New Chapter』シリーズ(シンコーミュージック)
及び関西ジャズ情報誌『WAY OUT WEST』に微力ながら協力。
音楽性迷子による迷子の為の音楽ブログ"maigo-music"管理人です。

花木 洸 Twitter
maigo-music

Monthly Disc Review2016.03.01:Monthly Disc Review

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Title : 『Warp』
Artist : Jon Balke



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多くの人が抱くECMのパブリックイメージがあるとしたら
おそらくそれを代表するうちのひとつであろう一枚。


まずは入口となるアルバムカヴァー。
奥へ奥へとどこまでも続いていそうな白樺の森。
北欧にしては珍しく薄日が差し、
白樺の葉の緑が心地よい。
しかしその森の奥へ実際足を踏み入れようとすると
何かがその往く手を拒んでいる。
少しの好奇心と少しの恐怖心が鬩ぎ合う。
そんな妄想を掻き立てる写真だ。
ここでは紹介出来ないが、バックカヴァーの写真も秀逸で、
コンテンポラリーなアート作品だ。
ちなみに写真もJon Balke自らが手がける。


収録されているのは、Jon Balkeによるpianoとsound images とある。
この時点ですでに、単なるソロピアノ作品ではないことに気付く。
ピアノ演奏の背後に、様々な景色を描きだす音像が重ねあわされる。
それは、時にはリズムを後押しする電子的な音であったり、
または日常の景色から切り取られたフィールドレコーディングであったり、
幻想的なヴォイスであったりと、
さり気なく加味されている程度の音像ではあるのだけれど、
その効果は絶大で表情豊かな作品へと昇華させている。
そのSoundscapesは、さまにECM的と多くの人が感じる仕上がり。
所謂エレクトロニカに生のピアノといった凡庸な風情に陥らないのは
ECMの重鎮たちのアイデアと技術の深みからくる差なのだろう。


スタッフクレジットによると、
ピアノの録音は、お馴染みOsloのRainbow StudioでJan Erik Kongshougが担い、
Sound imagesとField Recordingを含む最終MIXは、
LuganoでStefano Amerioが担当するといった、
現在のECMに欠かせない二大エンジニアの贅沢使い。
Jon Balkeに対してのEicherの計らいか。


北欧的なアートワークとミニマルなSoundscapesは、
入口としては入りやすいと感じるかもしれないけれども、
決して、開放的に外へ外へと僕らを誘うことはない。
やわらかな陽が差し、澄んだ緑の風が吹いている白樺の森は
自己の内に抱えた広大な世界への入口であるのだ。
一度は、その森へ足を踏み入れることをお勧めする。


文:平井康二





Recommend Disc

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Title : 『Warp』
Artist : Jon Balke
LABEL : ECM(ECM2444)
RELEASE : 2016.2.12

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【MEMBER】
Jon Balke(Piano, Keyboards)


【SONG LIST】
01 Heliolatry
02 This Is The Movie
03 Bucolic
04 On And On
05 Bolide
06 Amarinthine
07 Shibboleth
08 Mute
09 Slow Spin
10 Boodle
11 Dragoman
12 Kantor
13 Geminate
14 Telesthesia
15 Geminate var.
16 Heliolatry var.


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「Monthly Disc Review 平井康二」アーカイブ平井康二

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平井康二(cafeイカニカ)

1967年生まれ。レコード会社、音楽プロダクション、
音楽出版社、自主レーベル主宰など、約20年に渡り、
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Monthly Disc Review2016.02.15:Monthly Disc Review

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Title : 『Dreamii』
Artist : Mika Mimura



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今月紹介するのはニューヨークを拠点に活動するマリンバ奏者:三村未佳のアルバム。先日行われたマルチ・カルチュラル・バンド"Banda Magda"の来日公演にもバンドメンバーとしてNYから来日していた。これは大阪出身、そしてバークリーへと渡った彼女の2枚目のオリジナル・アルバムとなる。残念ながら日本での認知度は高くないが、アメリカではBLUE NOTE & JAPAN FOUNDATIONの企画でBLUE NOTE N.Y.でピアニストの百々徹を招いてライブをするほどの実力者だ。


バンド・メンバーはSnarky Puppyのリーダー兼ベーシストのMichael League、Banda MagdaのボーカルMagda Giannikou、自身のバンドRodriguez Brothersで先日発表されたグラミーにもノミネートされたトランペッターMichael Rodriguez、Kendrick ScottらとACTから作品を出しているRomain Collin、Snarky PuppyとBanda Magda両方に所属する日本人パーカッショニスト小川慶太、彼女の出身地である大阪のピアニスト名倉学、グラミーウィナーのドラマーMark Walker、ビブラフォンの重鎮とも言えるWarren Wolfなど実に様々。


全曲が彼女のオリジナル曲で、バンドの編成も曲によって様々。Snarky PuppyやBanda Magdaがそうであるように、ジャズだけではなく様々なジャンルが交錯している音楽だ。スウィングからラテン、スケールの大きなバラードまで曲調やアレンジは様々ながら、彼女の不思議な人懐っこさをもったコンポジションと確かなバランス感覚でもって統一感のある仕上がりになっている。中でもWarren Wolfのビブラフォンとの"Rhapsody in The Moon"やMark Wallkerのドラムとの"M..."、名倉学との"Dear Grandma and Grandpa"といった各楽器とのデュオの演奏では、普段耳にする機会の少ないビブラフォンやマリンバといった楽器の面白さを再発見させられた。


一口にジャズやラテンとは言い切れないような、色んな音楽が混ざって新しい音楽が生まれているその最前線に彼女もまたいるのだと感じずにはいられない。


文:花木洸 HANAKI hikaru


【Mika Mimura "Dreamii"】




Recommend Disc

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Title : 『Dreamii』
Artist : Mika Mimura
LABEL : Independent
NO : KSM002
RELEASE : 2016.2.2

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【diskunionでの購入はこちら】


【MEMBER】
Mika Mimura(marimba)
Michael Leagus(g)
Magda Giannikou(accodion)
Warren Wolf(vib)
Mark Walker(ds)
Keita Ogawa(perc)
Michael Rodriguez(tp)
Bob Lanzette(g)
Justin Stanton(b)
Romain Collin(p)
Manabu Nakura(p)


【SONG LIST】
01. W (New York Serenade)
02. Object
03. Dream Team
04. Rhapsody in the Moon
05. Shining
06. Marvelous's Romance
07. Treasure
08. M...
09. Iroha
10. Faith
11. Reverie
12. Dear Grandma and Grandpa


この連載の筆者、花木洸が先日発売になりました『Jazz The New Chapter 3』で編集・選盤・レビュー記事などを担当。ブラック・ミュージックの最先端からUKジャズ、ネクスト・ジャズ・ファンク、ラージアンサンブル等ここにしかない記事・インタビューが盛り沢山となっています。


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■タイトル:『Jazz The New Chapter 3』
■監修:柳樂光隆
■発売日:2015年9月10日
■出版社: シンコーミュージック

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今日においてはジャズこそが時代を牽引し、ディアンジェロやフライング・ロータスなど海外の最先端アーティストから、ceroなど日本のポップ・シーンにも大きな影響を与えている。この状況を予言し、新時代の到来を告げた「Jazz The New Chapter(ジャズ・ザ・ニュー・チャプター)」の第3弾がいよいよ登場。2014年の刊行時より刷数を重ね、SNS上でも未だ話題沸騰中の第1弾・第2弾に続き、2015年9月末に〈Blue Note JAZZ FESTIVAL in JAPAN〉が開催されるなど、かつてない活況を迎えているジャズの次なる未来は、ニューチャプターが切り拓く!


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「Monthly Disc Review」アーカイブ花木 洸

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花木 洸 HANAKI hikaru

東京都出身。音楽愛好家。
幼少期にフリージャズと即興音楽を聴いて育ち、暗中模索の思春期を経てジャズへ。
2014年より柳樂光隆監修『Jazz the New Chapter』シリーズ(シンコーミュージック)
及び関西ジャズ情報誌『WAY OUT WEST』に微力ながら協力。
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Monthly Disc Review2016.02.01:Monthly Disc Review

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Title : 『Musique de nuit:夜の音楽』
Artist : Ballake Sissoko & Vincent Segal



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ある年の夏の午後に、カフェの常連さんから
'平井さん、これ知ってます?'とiPhoneで動画を見せてもらった。
どこかの教会で、演奏する二人。
一人はチェロ、もう一人はアフリカの民族衣装のようなものを纏い見知らぬ楽器を奏でる。
後に、それは"コラ"という楽器だと知る。
ある程度は、幅広くジャンルを跨いで
音楽に触れて来たつもりであったのだけれど、
チェロとコラのデュオは初めての出会いだった。


Vincent Segalがチェロ、Ballake Sissokoがコラ、
二人が教会で演奏するその姿はなんとも格好良く、
始めて聞くコラという楽器の音色にも魅了され、すぐにCDをオーダーしたのだった。
『CHAMBER MUSIC』というタイトルのその作品は、
それから夏の定番となり、カフェの空気を震わせることになる。


2015年の暮れに、再びBallake SissokoとVincent Segalの
作品がリリースされている情報を得る。
前作『CHAMBER MUSIC』は、本国フランスで2009年にリリースされ
大ヒットしたようで、日本でも来日公演をするくらいに、
一部の音楽ファンには広く受け入れられていたのだけれど、
今回は、前回に比べると周囲の反応は少しトーンダウンしているのだろうか。
正直、情報が少ない。ようやく手にした二作目は、
『Musique de nuit 』"夜の音楽"という。
前作が夏の午後のイメージであったので、今回はその逆を行く。
アフリカに日本の様な冬という概念は無いのだろうけど、こちらが手にした季節は冬だ。


さて、肝心の中身に入る前に、
まず、月夜のイラストのジャケットが良い。
アルバム前半の4曲は、そのイラストが描く通りに、屋上で録音されている。
マリにあるSissokoの自宅の屋上らしい。
録音は2015年の1月14日~16日とあるから、
丁度、この原稿を書いている今から1年前だ。
屋外での録音の為、風の音や遠くに街の喧騒が聞こえる。
そこに、コラとチェロが響き、あたかも自分もマリの街にいるような感覚に導いてくれる。
これはなんとも気持ちの良い感覚だ。
しかし、聴き進むうちに、前作とは何かが違う感じがする。
ただ、心地よいだけではない、何かがそこにある。
前作の、"昼下がりの非日常の美しい快楽"、というものとは違う
何か力強いメッセージが聞き取れる、といった感じだろうか。
二人を取り巻く環境がそうさせたのか、
または他に何か原因があるのか、理由は定かではないが、
その力強さは、心地よさだけではない深みを作品に付与している。
タイトル通り、夜、月明かりで聴くと間違いない。


文:平井康二


【Ballaké Sissoko & Vincent Segal - Making of 'Musique de Nuit'】






『Musique de nuit / Ballake Sissoko & Vincent Segal』(NØ FØRMAT)





Recommend Disc

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Title : 『Musique de nuit:夜の音楽』
Artist : Ballake Sissoko & Vincent Segal
LABEL : Plankton(VIVO269)
RELEASE : 2015.11.29

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【MEMBER】
Ballake Sissoko (Kora)
Vincent Segal (cello)

【SONG LIST】
01. Niandou ニアンドウ
02. Passa Quatro パッサ・クアトロ
03. Balazando バラザンド
04. N'kapalema ン・カパレマ
05. Diabaro ディアバロ
06. Super Etoile スーパー・スター
07. Prelude プレリュード
08. Samba Tomora サンバ・トモラ
09. Musique de nuit 夜の音楽


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「Monthly Disc Review 平井康二」アーカイブ平井康二

2015.4.1 ・2015.5.1 ・2015.6.1 ・2015.7.1 ・2015.8.1 ・2015.9.1 ・2015.10.1 ・2015.11.1 ・2015.12.1 ・2016.1.1




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音楽出版社、自主レーベル主宰など、約20年に渡り、
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