Title : 『EPICH』
Artist : 蕪木光生
今月のレビューはピアニスト・コンポーザーの蕪木光生のデビューアルバム『EPICH』。
これまでの参加作品には、松井秋彦『GROOVE X』(2012年)、ヴァイオリニスト・式町水晶『流木's Ballad』(2014年)がある。
アナログとデジタルが入り混じったようなジャケットが象徴するように、ジャズピアノらしさと何処か力の抜けたようなリラックスした雰囲気が同居する心地よいアルバムだ。
メンバーは都内を中心に活動中の若手ベーシスト古木佳祐、ドラマーにコトリンゴのバンドでも活躍する鈴木カオルという編成。ピアノと反応しつつもバッキングにとどまらないメロディを生み出していく古木のベースと、タイトなプレイからアグレッシブなプレイまで自由自在に行き来する鈴木のドラムは、バンドの自由度をグッと高めている。4ビートのスウィング感、8ビートのグルーヴ感、アコースティックベースとエレキベースといった、近年のジャズで必修科目となっているような様々な要素をメンバーの3人で網羅しつつも、アルバム全体にまとまりがあるのは、蕪木の楽曲の強さをあらわしているように思う。
エフェクトの掛かったベースが印象的な「Lotus」では、単体で派手な音色が重なり合ってもぶつかりあうことなくアンサンブルに上手く馴染ませ、むしろ丁寧にレイヤーを重ねていくことで浮かび上がってくる景色が美しい。「Sun Good True」は一転して、キメと4ビートで疾走するコンテンポラリージャズ。「Winter Morning」では後半に派手なシンセサイザー使いも見せる。全編に渡って登場するキーボードと生のピアノのバランス感覚には、ポップスも経験したプレイヤーならではのセンスを感じる。
なによりキーボードのスウィートスポットを知り尽くしているような音色選びがたまらなく気持ちよく、気づけば何周もリピートしてしまうアルバムだ。
文:花木洸 HANAKI hikaru
●蕪木光生 Official Site
【蕪木光生Mitsuo Kabuki 「Epich」】
音楽ライター柳樂光隆氏による人気のムック『Jazz The New Chapter 』の第4弾が2017年3月8日に発売。今回も花木洸が選盤などを担当しています。
■タイトル:『Jazz The New Chapter 4』
■監修:柳樂光隆
■発売日:2017年3月8日
■出版社: シンコーミュージック
毎号重版を続ける話題のムック、第4弾が遂に登場!
今や現代の音楽シーンを左右する一大潮流となった"ジャズ"の最突端で今、何が起きているのかを、詳細なテキストと計150枚のディスク評で徹底検証。ジャズを活性化したネオソウルとの蜜月を改めて紐解く一方、ジャズを触媒として生まれた新たな潮流にも目を向け、脈打ち続けるジャズの「今」を深く掘り下げます。
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Reviewer information |
花木 洸 HANAKI hikaru 東京都出身。音楽愛好家。 |