feed markRSS
JJazz.Net Blog Title

Monthly Disc Review2016.10.15

mdr1.jpg


Title : 『A LIFETIME TREASURE』
Artist : 中村恭士(Yasushi Nakamura)



yasushinakamura500.jpg


今月のレビューは1982年生まれのベーシスト、中村恭士のリーダーアルバム。中村恭士、というより"Yasushi Nakamura"という表記で目にしたことの方が多いかもしれない。東京で生まれ、小学校からシアトルで育ち、バークリー音楽大学、ジュリアード音楽院とジャズを学んだ彼の現在の活動拠点はアメリカ・ニューヨークだ。過去の作品では、日本でも人気のニュー・センチュリー・ジャズ・クインテット、J-Squadに加えて、Jon Irabagon『Behind the Sky』、Rudy Royston『303』でのプレイも素晴らしかった。

今作はClarence Penn(ds)、Lawrence Fields(pf)とのピアノトリオ作。Clarence Pennは90年代からJoshua Redman、Cyrus Chestnutなどのサイドマンから頭角をあらわし、小曽根真のアルバムにも多く参加しているベテランドラマー。Lawrence FieldsはJaleel ShawやWarren Wolfのサイドマンとして活躍する注目の若手ピアニストで、最近ではJoe LovanoとDave Douglasの双頭バンドやChristian Scottのバンドでも活躍している。


アルバム冒頭から、直球で力強いウォーキングベースにワクワクする。"Stablemates"では、緻密に仕掛けられたリズムの上で三者が同時にソロをとっているようなインタープレイをみせ、かと思えば中村がテーマをとるバラードの"But Beautiful"では繊細で丁寧な一面を見せたり、高速でスウィングする"Stella by Starlight"、8ビートの"Yasugaloo"など曲調は様々。どの曲でも気心の知れたメンバーならではの濃密な会話が繰り広げられ、メロディアスでチャレンジングなピアノと、手数の多いドラムという組み合わせが、ぐいぐいとバンドを引っ張る中村のベースを一層際立たせ、聴く度に新たな発見が生まれそうだ。ライブハウスの最前列のような録音も心地よく、最後に置かれたベースソロによる"The Nearness of You"では弦を擦る音や呼吸の音まで感じられるほど。


現代ジャズの高度なテクニック・アレンジの面白さと伝統的なスウィングの旨味の両方がバランス良く散りばめられ、アコースティックなピアノトリオのサウンドの中に真っ直ぐな意志を感じる。今年聴いたピアノトリオで一番のアルバムになりそうだ。


文:花木洸 HANAKI hikaru


中村恭士(Yasushi Nakamura)


【VOL.1; E4 - "Blue Monk" - Ben Williams + Yasushi Nakamura (Bass)】



【澤野工房】『A LIFETIME TREASURE/ヤスシ・ナカムラ』
http://www.jazz-sawano.com/products_448-4-1.html



Recommend Disc

yasushinakamura200.jpg

Title : 『A LIFETIME TREASURE』
Artist : 中村恭士(Yasushi Nakamura)
LABEL : 澤野工房 Atelier Sawano
NO : YN001
RELEASE : 2016.9.23

アマゾン詳細ページへ


【MEMBER】
Yasushi Nakamura : bass
Lawrence Fields : piano
Clarence Penn : drums


【SONG LIST】
01. On My Way
02. Stablemates
03. A Lifetime Treasure
04. But Beautiful
05. Viva o Rio de Janeiro
06.Stella by Starlight
07. When Mr.Gut Says
08. Naima
09. Burden Hand (Bird in the Hand)
10. Language of Flowers
11. Yasugaloo
12. The Nearness of You


この連載の筆者、花木洸が先日発売になりました『Jazz The New Chapter 3』で編集・選盤・レビュー記事などを担当。ブラック・ミュージックの最先端からUKジャズ、ネクスト・ジャズ・ファンク、ラージアンサンブル等ここにしかない記事・インタビューが盛り沢山となっています。


Jazz The New Chapter 3_R.jpg

■タイトル:『Jazz The New Chapter 3』
■監修:柳樂光隆
■発売日:2015年9月10日
■出版社: シンコーミュージック

アマゾン詳細ページへ


今日においてはジャズこそが時代を牽引し、ディアンジェロやフライング・ロータスなど海外の最先端アーティストから、ceroなど日本のポップ・シーンにも大きな影響を与えている。この状況を予言し、新時代の到来を告げた「Jazz The New Chapter(ジャズ・ザ・ニュー・チャプター)」の第3弾がいよいよ登場。2014年の刊行時より刷数を重ね、SNS上でも未だ話題沸騰中の第1弾・第2弾に続き、2015年9月末に〈Blue Note JAZZ FESTIVAL in JAPAN〉が開催されるなど、かつてない活況を迎えているジャズの次なる未来は、ニューチャプターが切り拓く!


□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□


「Monthly Disc Review」アーカイブ花木 洸

2015.04 ・2015.05 ・2015.06 ・2015.07 ・2015.08 ・2015.09 ・2015.10 ・2015.11 ・2015.12 ・2016.01 ・2016.02 ・2016.03 ・2016.04 ・2016.05 ・2016.06 ・2016.07 ・2016.08 ・2016.09




Reviewer information

hikaru500.jpg

花木 洸 HANAKI hikaru

東京都出身。音楽愛好家。
幼少期にフリージャズと即興音楽を聴いて育ち、暗中模索の思春期を経てジャズへ。
2014年より柳樂光隆監修『Jazz the New Chapter』シリーズ(シンコーミュージック)
及び関西ジャズ情報誌『WAY OUT WEST』に微力ながら協力。
音楽性迷子による迷子の為の音楽ブログ"maigo-music"管理人です。

花木 洸 Twitter
maigo-music

アーカイブ