Title : 『Disoriental』
Artist : Genzo Okabe
<Challenge Records>というレコードレーベルをご存知だろうか。
古くはEnrico PieranunziやBob Brookmeyer、Clark Terryなども録音を残したこのレーベルは、1994年にオランダで設立された。ジャズとともにクラシックも扱うこのレーベルは、透明感のある録音と美しい装丁でヨーロッパジャズファンのあいだではにわかに注目を集めている。近年の秀作として、ジャズ批評』で≪ジャズオーディオ・ディスク大賞2015≫ ヴォーカル部門を受賞したChiara Pancaldi『I Walk A Little Faster』(CR 73409)、Kenny WheelerとNorma Winstoneが参加した『The Banff Sessions - A Tribute to Kenny Wheeler』(CR 73403)、ポーランドのピアニストMaciej Tubisによるトリオ作『The Truth』(CR 73445)が記憶に新しい。
そんなChallenge Recordsのカタログを眺めていたら、日本人のリーダー作を見つけた。それが今月の紹介作品Genzo Okabe(岡部源蔵)『Disoriental』だ。
東京出身のアルトサックス奏者:岡部源蔵は、幼少期からクラシックピアノを学び、15歳でサックスを手に取る。イタリアのペルージャ国立音楽院でクラシック・サックスを、オランダのハーグ王立音楽院で今度はジャズ・サックスを学んだという経歴を持つ。2009年に結成されたこのバンドでは、OAP Recordsからすでに2枚のアルバムが出ており、今作が3枚目のアルバムとなる。
艶やかなトーンから熱気あふれるブロウまでシームレスに変化するサックスの音色の美しさにまず耳がいく。コンテンポラリージャズの「Castroni」、高速16ビートの「Ningyo」、ストレンジなリフがループする「Sms」、ルーズなブルースの「Still Blues」とリズム構造も多彩。タイトル・チューンの「Disoriental」ではサックスに掛けられたディレイと、ダークなトーンのピアノとの組み合わせによって、不思議なアトモスフィアを醸し出す。
ジャズとクラシック、日本とオランダという垣根を越えて届けられたこの作品。そう考えると、タイトルの『Disoriental』も意味深長だ。
文:花木洸 HANAKI hikaru
【Okabe Family - Castroni @ Bimhuis 11.03.2017】
●GENZO OKABE 岡部源蔵 Official
【Okabe Family Japan Tour 2017】
10/17 Osaka Mister Kelly's
10/18 Yokohama Motion Blue Yokohama
10/20 Tokyo Pit Inn
10/21 Hitachi George House
10/22 Atsugi Cabin
音楽ライター柳樂光隆氏による人気のムック『Jazz The New Chapter 』の第4弾が2017年3月8日に発売。今回も花木洸が選盤などを担当しています。
■タイトル:『Jazz The New Chapter 4』
■監修:柳樂光隆
■発売日:2017年3月8日
■出版社: シンコーミュージック
毎号重版を続ける話題のムック、第4弾が遂に登場!
今や現代の音楽シーンを左右する一大潮流となった"ジャズ"の最突端で今、何が起きているのかを、詳細なテキストと計150枚のディスク評で徹底検証。ジャズを活性化したネオソウルとの蜜月を改めて紐解く一方、ジャズを触媒として生まれた新たな潮流にも目を向け、脈打ち続けるジャズの「今」を深く掘り下げます。
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・2015.04 ・2015.05 ・2015.06 ・2015.07 ・2015.08 ・2015.09 ・2015.10 ・2015.11 ・2015.12 ・2016.01 ・2016.02 ・2016.03 ・2016.04 ・2016.05 ・2016.06 ・2016.07 ・2016.08 ・2016.09 ・2016.10 ・2016.11 ・2016.12 ・2017.01 ・2017.02 ・2017.03 ・2017.04 ・2017.05 ・2017.06 ・2017.07 ・2017.08 ・2017.09
Reviewer information |
花木 洸 HANAKI hikaru 東京都出身。音楽愛好家。 |