Title : 『Be with us』
Artist : 河野祐亮
今月のレビューはピアニスト河野祐亮の最新作『Be with us』。
Walter Smith IIIとWarren Wolfというゲストをむかえ、エンジニアにはグラミー受賞歴もある内藤克彦という豪華な布陣だが、このアルバムはクラウドファンディングで資金を集めて作られた作品だ。アートワークや録音環境へのこだわりは、下に記載したプロジェクトのページに詳しい。
一曲目の「Cydnian Blue」から河野の楽曲の澄んだ世界観が押し寄せてくる。基本のトーンはNYの名門ニュースクールで学んだ河野らしい、Robert Glasperらの世代が押し広げた語法が完全に消化されたブルックリンのコンテンポラリーな雰囲気。それは楽曲が難しくなっているという事ではなくて、リズムやコード進行の自由度の高さに象徴的だ。その中にふっと挟まれた4ビートの「Sunny Side Up!!」でのスリリングな駆け引きや、その「Sunny Side Up!!」に続く「Impact Factor」がトラップを思わせるビートの楽曲なのも、このトリオのスタンスを示しているように思う。サックス奏者の息継ぎやビブラフォンのペダルの感触まで伝わる生々しい録音も印象的。
そして感じたのは、前作『I LOVE YOU I KNOW』(2015年)のリリースから、SAPPORO CITY JAZZ 2015でのコンテスト優勝、オーストリアのウィーン・ジャズ・フェスティバルやイギリスの名門クラブ:ロニースコッツへの出演などを経て、この2年間でトリオがとんでもなく成熟したこと。言葉にするのが難しいけれど、ふとした一音一音までぐっと自然体の演奏になったような印象だ。その事が楽曲に感じる自由度ともマッチしているように思う。トリオの演奏がこの作品を経てさらに濃密になっていくのは間違い無いだろう。
文:花木洸 HANAKI hikaru
河野祐亮ピアノトリオ New Yorkでレコーディングを - CAMPFIRE(キャンプファイヤー)
●https://camp-fire.jp/projects/view/18246#menu
【【公式MV】『Be with us』河野祐亮ピアノトリオ with Walter Smith Ⅲ, Warren Wolf 】
●河野祐亮 Official
音楽ライター柳樂光隆氏による人気のムック『Jazz The New Chapter 』の第4弾が2017年3月8日に発売。今回も花木洸が選盤などを担当しています。
■タイトル:『Jazz The New Chapter 4』
■監修:柳樂光隆
■発売日:2017年3月8日
■出版社: シンコーミュージック
毎号重版を続ける話題のムック、第4弾が遂に登場!
今や現代の音楽シーンを左右する一大潮流となった"ジャズ"の最突端で今、何が起きているのかを、詳細なテキストと計150枚のディスク評で徹底検証。ジャズを活性化したネオソウルとの蜜月を改めて紐解く一方、ジャズを触媒として生まれた新たな潮流にも目を向け、脈打ち続けるジャズの「今」を深く掘り下げます。
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・2015.04 ・2015.05 ・2015.06 ・2015.07 ・2015.08 ・2015.09 ・2015.10 ・2015.11 ・2015.12 ・2016.01 ・2016.02 ・2016.03 ・2016.04 ・2016.05 ・2016.06 ・2016.07 ・2016.08 ・2016.09 ・2016.10 ・2016.11 ・2016.12 ・2017.01 ・2017.02 ・2017.03 ・2017.04 ・2017.05 ・2017.06 ・2017.07 ・2017.08
Reviewer information |
花木 洸 HANAKI hikaru 東京都出身。音楽愛好家。 |