Title : 『Blessing』
Artist : 安ヵ川大樹
今月のレビューはベテランベーシスト安ヵ川大樹の新作『Blessing』。
メンバーは田窪寛之(pf)、橋本学(ds)というピアノ・トリオ。田窪は1981年生まれ、バークリー音楽大学を卒業後、2009年には横浜ジャズプロムナードのコンペティションで山田拓児クインテットのメンバーとしてグランプリを受賞。現在は東京を中心にライブを行っており、川嶋哲郎や小林陽一のバンドでサイドマンを勤め、今年5月には初のリーダーアルバムをリリースしている。橋本は長年安ヵ川がトリオのドラマーとして信頼を置く存在。西山瞳"NORHM"や、橋詰亮督グループでも活躍している。
一曲目から透明感のあるこのトリオの空気がよくとらえられている。オリジナル曲ではアルコで聞かせるバラードの「Blues For My Better Half」や、小気味良いスウィングの「Memories Of T」など様々なスタイルを見せながらも、その中にはジャズの伝統への真っ直ぐなリスペクトが感じられる。バラードに仕立てたスコットランド民謡の「Morning Has Broken」では三者のサウンドの混ざりあいかたにビル・エヴァンス・トリオのような雰囲気も感じられるし、続く「Dark Eyes」ではルバートの冒頭部からスリリングな4ビートへの転換にドキドキさせられる。アルバムラストの「Praise The Lord Hallelujah」ではビバップのフレーズを軽やかに連発していく田窪のプレイに釘付けになり、ベースソロでその中にハンドクラップが入ってくると、もうたまらなくなってしまう。
目を引くような新しさや、派手なサウンドメイクも無いけれど、このピアノ・トリオの素晴らしさが音からも内容からもひしひしと伝わってくる作品。
文:花木洸 HANAKI hikaru
●安ヵ川大樹 Official Site
音楽ライター柳樂光隆氏による人気のムック『Jazz The New Chapter 』の第4弾が2017年3月8日に発売。今回も花木洸が選盤などを担当しています。
■タイトル:『Jazz The New Chapter 4』
■監修:柳樂光隆
■発売日:2017年3月8日
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Reviewer information |
花木 洸 HANAKI hikaru 東京都出身。音楽愛好家。 |