Title : 『A JAZZY PROFILE OF JOJO』
Artist : 高柳昌行
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今月は2018.9.17(月・祝)Jz Bratにて開催されるJJazz.Netの番組「温故知新」初のリアルイベントにちなみ、「ウェストコースト・ジャズ」をテーマにディスクレビューしていただきました。
【纐纈歩美 plays Standards -JJazz.Net温故知新スペシャル-】
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今月は「ウェストコースト・ジャズ」がテーマ。
「ウェストコースト・ジャズ」の説明は難しく、一般的には「1950年代にアメリカ西海岸のロサンゼルスやサンフランシスコで発展したジャズ」とくくられている。プレイヤーとしてはデイヴ・ブルーベックやジェリー・マリガン、チェット・ベイカーなどの白人系ジャズを指すことが多いが、音楽的にはクール・ジャズからビバップなど様々な音楽が混ざりあっており、ある種のキメラ的な音楽性だと言っていいだろう。「テイク・ファイブ」のようなアレンジメントの秀逸さも特徴にあげられるが、これはロサンゼルスという都市にハリウッドという映画産業の中心地があることとも不可分ではないだろう。
そんな事を考えていると、この「ウェストコースト・ジャズ」は2010年代の今、大旋風を巻き起こしているカマシ・ワシントンや彼のバンドメンバーで結成された「ウェスト・コースト・ゲットダウン」というクルーとも系譜的な繋がりが見え隠れしてくる。
前置きが長くなったが、今回のレビューは今年再発となった高柳昌行『A Jazzy Profile of Jojo』。今回のテーマを聞いてパッと頭に浮かんだのがこのアルバムだった。現在ロサンゼルスで活動するギタリストのジェフ・パーカーが、昨年来日した際に影響を受けたギタリストとして高柳昌行の名前をあげていたことも付しておこう。
高柳昌行というとどうしてもフリージャズ、そしてインプロのイメージが強い。しかしこの作品は、その高柳がスタンダード曲を中心にプレイし、渋谷毅によるアレンジが施されたホーン隊が鳴り響く作品であり、クールジャズとアレンジメント、そして背中合わせのフリージャズが内包された作品だ。
スタンダードなギターカルテットの編成の中で、高柳はストイックに選びぬかれたパッセージを紡いでいく。レニー・トリスターノやリー・コニッツのクール・ジャズに心酔した高柳らしい這うようなフレージングは、今聴いても新鮮だ。名前を挙げていたジェフ・パーカーはもちろん、メアリー・ハルバーソンなど現代のギタリストのフレージングと通じるところがあるように聞こえてくるから面白い。
このアルバムが録音される前年の1969年には、吉沢元治(b)、豊住芳三郎(ds)との<ニューディレクション>を結成し、三ヶ月後には阿部薫との『解体的交感』を録音している。そんな隙間で録音されたことも、この作品をなんだか意味深くしているように思う。
文:花木洸 HANAKI hikaru
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■監修:柳樂光隆
■発売日:2018年6月19日
■出版社: シンコーミュージック
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Reviewer information |
花木 洸 HANAKI hikaru 東京都出身。音楽愛好家。 |