Title : 『SUZAKU』
Artist : NIRAN DASIKA QUARTET
カナダ生まれオーストラリアのメルボルン出身のトランペッター、ニラン・ダシカ。
はじめて知ったのは、石若駿のバンドに彼がのっているのを観た時だと思う。その後、菊地成孔がプロデュースする けもの のライブを始め、さまざまなところでトランペットを吹く彼を観たけれど、僕よりも年下の1993年生まれだということを知ったのはもっと後になってからだ。優しくなめらかで美しいトランペットのトーンと、高いテクニックで繰り広げられるアドリブとの、甘さと辛さのようなコントラストがとても印象的だった。
今回のアルバムは、全曲が彼自身のコンポジションで仕上げられた楽曲。もともとクラシックの研鑽を積み、ブッカー・リトルの影響でジャズの道を志したという彼は、そのどちらの影響も感じさせる興味深いトーンと楽曲を産んだ。「All Good Things」のようなバラードでみせるサブトーン気味の幽玄な雰囲気も魅力的だが、「Todoroki Falls」では幾つものリズムが同時進行するようなテクニカルな構成をものともせずに、艶やかなトーンで乗りこなしてみせる。「Toyocho, Where I Keep Returning」のように日本をテーマにした各楽曲タイトルも気になりつつ、アルバムはルパートで楽曲の余白を聴かせるような美しさをみせる「In a Nutshell」で幕を閉じる。
石若駿(ds)、須川崇志(b)という鉄板のリズム隊によるコンビネーションはもちろんのこと、楽曲で遊ぶように自由自在なプレイをみせる栗林すみれ(pf)のピアノは、アルバムをより鮮やかに仕立て上げる。
ニラン・ダシカは現在オーストラリアと日本を中心に活動しているが、近い将来ジャズのメインストリームに飛び込んでいくプレイヤーになるかもしれない。そう確信させる一枚。
文:花木洸 HANAKI hikaru
【Niran Dasika Quartet『SUZAKU』告知動画】
【Shun Ishiwaka Clean Up Trio feat. Niran Dasika Live at PIT INN】
●NIRAN DASIKA
音楽ライター柳樂光隆氏による人気のムック『Jazz The New Chapter 』の第4弾が2017年3月8日に発売。今回も花木洸が選盤などを担当しています。
■タイトル:『Jazz The New Chapter 4』
■監修:柳樂光隆
■発売日:2017年3月8日
■出版社: シンコーミュージック
毎号重版を続ける話題のムック、第4弾が遂に登場!
今や現代の音楽シーンを左右する一大潮流となった"ジャズ"の最突端で今、何が起きているのかを、詳細なテキストと計150枚のディスク評で徹底検証。ジャズを活性化したネオソウルとの蜜月を改めて紐解く一方、ジャズを触媒として生まれた新たな潮流にも目を向け、脈打ち続けるジャズの「今」を深く掘り下げます。
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Reviewer information |
花木 洸 HANAKI hikaru 東京都出身。音楽愛好家。 |