Title : 『A Time For A Change』
Artist : 荒武裕一郎
東京を中心に活動する日本人ピアニスト荒武裕一郎の新作『A Time For A Change』。
メンバーは若手の注目ベーシスト三嶋大輝、そして日本ジャズ界の重鎮とも言えるであろう本田珠也とのトリオが軸となっている。荒武はこれまでにも定期的に作品を残してはいるが、トリオでの録音はデビュー作以来15年ぶりというから驚きだ。
一曲目、デイブ・ブルーベックの名曲から始まるのは紛れもないジャズ。三嶋の若手には珍しい骨太なベースラインと、本田のツボを押さえた熟達のドラムは相性よくスウィングしていく。その上で転がっていく荒武のピアノの端々には歴史と伝統への敬意がひしひしと伝わってくる。それは愛奏するスタンダードだけではなく、荒武のオリジナル曲や取り上げたアーティストのオリジナル曲にも表れている。ベテラン橋本信二(gt)を迎えた#5、本田竹広の楽曲を取り上げた#9、そのどれもが楽しさと喜びに溢れているのが印象的だ。しっとりとした後半から、大団円へと向かい、最後はピアノソロで締めるというある意味ベタな構成が心地よい。
新しい手法や音への追求はもちろんだが、荒武が自ら主宰する音楽イベント「Music make us one !! 」では、ジャズ界の若手からベテランまで取り上げ毎回面白い試みがなされている。歴史とその中での現在地を一番考えているのは荒武のようなプレイヤーかも知れない。
今回のアルバムのフライヤーには「日本ジャズ界で走り続けることに疲れ始めた1年前 ピアノをやめようと考えていた そんな思いから解放してくれたのが本田珠也と三島大輝の2人だった」と書かれている。荒武を導いた2人とともに、このアルバムは聴く人を真摯なジャズへ迷いなく導いてくれる一枚だ。
文:花木洸 HANAKI hikaru
【Dialogue in a Day of Spring】
Recommend Disc |
Title : 『A Time For A Change』 【diskunionでの購入はこちら】 Guest: Recorded at Power House Studio, TOKYO 28, 29, 30 November, 2015 |
この連載の筆者、花木洸が先日発売になりました『Jazz The New Chapter 3』で編集・選盤・レビュー記事などを担当。ブラック・ミュージックの最先端からUKジャズ、ネクスト・ジャズ・ファンク、ラージアンサンブル等ここにしかない記事・インタビューが盛り沢山となっています。
■タイトル:『Jazz The New Chapter 3』
■監修:柳樂光隆
■発売日:2015年9月10日
■出版社: シンコーミュージック
今日においてはジャズこそが時代を牽引し、ディアンジェロやフライング・ロータスなど海外の最先端アーティストから、ceroなど日本のポップ・シーンにも大きな影響を与えている。この状況を予言し、新時代の到来を告げた「Jazz The New Chapter(ジャズ・ザ・ニュー・チャプター)」の第3弾がいよいよ登場。2014年の刊行時より刷数を重ね、SNS上でも未だ話題沸騰中の第1弾・第2弾に続き、2015年9月末に〈Blue Note JAZZ FESTIVAL in JAPAN〉が開催されるなど、かつてない活況を迎えているジャズの次なる未来は、ニューチャプターが切り拓く!
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・2015.04 ・2015.05 ・2015.06 ・2015.07 ・2015.08 ・2015.09 ・2015.10 ・2015.11 ・2015.12 ・2016.01 ・2016.02
Reviewer information |
花木 洸 HANAKI hikaru 東京都出身。音楽愛好家。 |