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曽根麻央 Monthly Disc Review2022.11_Wayne Shorter : Speak No Evil:Monthly Disc Review

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みなさんこんにちは、トランペッター&ピアニストの曽根麻央です。

11月15日は僕の最新シングルのリリース日だったので沢山聴いていただけると嬉しいです。
これは7月から毎月2曲ずつシングルをリリースするシリーズ『Mao Sone Plays Standards』の一環で、デューク・エリントンの「The Star-crossed Lovers」を配信しました。この曲は2014年のセロニアス・モンク国際コンペティションのセミファイナルでも演奏した私の思い出の曲です。人生で一番緊張した時です(笑)。そんな曲を落ち着いて改めてスタジオ・レコーディングして皆さんにお聞かせ出来て嬉しく思っています!

「The Star-crossed Lovers」

その他の配信情報
https://maosone.com/discography.jp


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Title : 『Speak No Evil』
Artist : Wayne Shorter

【オリジナル曲、演奏、録音、全てにジャズの魅力が詰まったアルバム】

さて今日はウェイン・ショーターの名盤『Speak No Evil』をご紹介します。このアルバムは1966年にブルーノートからリリース(1964年のレコーディング)された名盤中の名盤ですが、改めてみなさんと一緒に聴いていこうと思います。オリジナル曲、演奏、録音、全てにジャズの魅力が詰まったアルバムです。



Bass - Ron Carter
Drums - Elvin Jones
Lacquer Cut By - VAN GELDER
Liner Notes - Don Heckman
Piano - Herbie Hancock
Tenor Saxophone, Written-By - Wayne Shorter
Trumpet - Freddie Hubbard




1964年といえばショーターがアート・ブレイキー&ジャズメッセンジャーズから脱退し、マイルス・デイヴィスのクインテットに参加し始めた年でもあり、このアルバムにもハービー・ハンコックとロン・カーターの2人がレコーディングしています。トランペットにはメッセンジャーズからフレディー・ハバードが参加し、息のあった呼吸で迫力のある2ホーンサウンドを残してくれています。ドラムにはデトロイト出身のエルヴィン・ジョーンズが参加していて、彼の繰り出すアフリカの影響が強く現れるリズムが、ハービーやロンの演奏を普段とは少し違ったものにしています。ハービーのフレーズはより3連音符中心のリズミカルなプレイに、ロンはエルヴィンのレガートに寄り添うように演奏していると思います。マイルス・バンドのスタジオレコーディングでのトニーウィリアムズとの関わり方と、このアルバムのリズムセクションを聴き比べるのもとても面白い聴き方だと思います。
レコーディングはルディ・ヴァンゲルダー・スタジオのもので、当時のブルーノート・サウンドを代表するものです。

01. Witch Hunt

「魔女狩り」という斬新なタイトルの曲です。最初に魔法のような超高速のフレーズで2ホーンが展開するイントロがあり、エルヴィンが心地よくスウィングさせて本編へ突入します。

 本編のメロディーは最初から最後まで完全4度の積み重ねだけでメロディーが書かれていて統一感があります。このように一つのアイディアやフレーズ、決め事を展開させて曲を完成させるのはクラシックでは必ず用いられる手法ですね。代表的なのはベートーベンの「運命」。あの有名な4音のリズムがずっと展開されていますね。ジャズでは特に「セマティック・ディベロップメント(Thematic Development)」と言って、コンテンポラリー・ジャズの作曲では必ず用いられます。ショーターはクラシック的な発想をジャズに分かりやすく取り入れた最初の人物の一人でもあると言えるでしょう。

この今日はショーターのソロももちろん冴え渡っていますが、フレディーの音色がたまりません!アイディアももちろんですが音色が曇りなく透き通っていて聴き手お心をとらえるでしょう。そしてハービーのソロはエルヴィンのリズムに影響を受け、3連音符を駆使した少しロジカルなソロになっていて面白いです。
ちなみに私は1:40~42にかけてのエルヴィンのドラムフィルがこの世の中で一番好きなドラムフィルです。是非聴いてみてください。





02. Fee-Fi-Fo-Fun

ジャックと豆の木で巨人がジャックを探すときに(人間の匂いを嗅ぐおきに)言ったセリフがタイトルになっています。今ではジャズスタンダードとしてジャムセッションで演奏されることもある曲です。ABAフォームの短めの曲ですがブルースの土くささも感じるし、都会的な洗練されたハーモニーセンスも感じられる不思議な曲です。

前曲に引き続きエルヴィンとロンの相性もよく、とってもスウィングしてグルーヴィーな演奏になっています。フレディーのソロは素晴らしいサウンドとフレーズのセンスでとても聴きやすいです。ショーターのソロは独特の浮遊感をともなっていますが、セマティック・ディベロップメントのテクニックをアドリブでも応用していて、このプレイはウェザー・リポートや現代のショーター・カルテットでも聴くことのできるウェイン節になっています。


03. Dace of Cadaverous

「死人の踊り」というまたインパクトの強いタイトルがついています。ジャズワルツの美しいメロディーの曲になっています。8小節のイントロのついたAABCAABDという独特なフォームで展開される楽曲です。minor-major7というかなり特徴あるコードサウンドが主軸になっているため独特な浮遊感をまとっています。またminor-major7から派生したmaj7(#5)というコンテンポラリーなサウンドを使用した、当時ではかなり異端な作品ではなかったのではと予想できます。


04. Speak No Evil

「see no evil, hear no evil, speak no evil」で「見ざる、言わざる、聞かざる」ということわざがありますが、恐らくその最後の一文からのタイトルでしょうか。
ロングトーンとそこから生まれた短いフレーズが対比をなして構成されている曲です。アルバムのタイトルソングでもあります。少し軽快なスウィング調の曲です。


05. Infant Eyes

9小節のABAフォームのバラードです。これもごく稀にジャムセッションでも演奏されるジャズスタンダードとなっている名曲です。他の楽曲と違いワンホーンで録音されています。この曲も一つのフレーズのパターンを何度も展開させて発展させるセマティック・ディベロップメントを使って曲を構成させています。


06. Wild Flower

ショーターの代表曲の一つで美しい3拍子の曲です。この曲もジャズスタンダードの一つになっています。このアルバムは本当に名曲を多く生み出していて、後世のミュージシャンにいかに影響を与えたか、楽曲だけを聴いてもわかります。2ホーンのアレンジも素晴らしく、フレディーとの2管編成の相性の良さも納得していただけるでしょう。


それではまた次回。


文:曽根麻央 Mao Soné



Recommend Disc

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Title : 『Speak No Evil』
Artist : Wayne Shorter
LABEL : Blue Note
発売年 : 1966年

アマゾン詳細ページへ

【SONG LIST】

01.Witch Hunt
02.Fee-Fi-Fo-Fum
03.Dance Cadaverous
04.Speak No Evil
05.Infant Eyes
06.Wild Flower




【曽根麻央LIVE INFO】

11/17 (Thu) @ 104.5 (御茶ノ水)
Good Jam Session with Candy Dulfer and Her Band​
Yoshiki Takahashi & Kazuhiro Odagiri

11/20 (Sun) @ Body & Soul (渋谷)
Mao Sone, Taka Nawashiro, Shin Sakaino, Kazu Odagiri​

11/27 (Sun) @ No Room For Squares (下北沢)
Mao Sone, Yuji Ito, Hironori Suzuki​

​​​​12/4 (Sun) @ Nardis (柏)
Mao Sone, Yoshiki Takahashi & Hiro Kimura

12/9 (Fri) @ The Moment (成城学園前)
Mao Sone, Yoshiki Takahashi, Hayato Yamazaki

​​​​12/12 (Mon) @ TBA​


曽根麻央のその他情報はウェブサイトへ

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「Monthly Disc Review」アーカイブ曽根麻央
2020.04『Motherland / Danilo Perez』2020.05『Color Of Soil /タイガー大越』2020.06『Passages / Tom Harrell 』2020.07『Inventions And Dimensions / Herbie Hancock』2020.08『Birth Of The Cool / Miles Davis』2020.09『Chet Baker Sings / Chet Baker』2020.10『SFJAZZ Collective2 / SFJAZZ Collective』2020.11『Money Jungle: Provocative In Blue / Terri Lyne Carrington』2020.12『Three Suites / Duke Ellington』2021.01『Into The Blue / Nicholas Payton』2021.02『Ben And "Sweets" / Ben Webster & "Sweets" Edison』2021.03『Relaxin' With The MilesDavis Quintet / The Miles Davis Quintet 』2021.04『Something More / Buster Williams』2021.05『Booker Little / Booker Little』2021.06『Charms Of The Night Sky / Dave Douglas』2021.07『Play The Blues / Ray Bryant Trio』2021.08『The Sidewinder / Lee Morgan』2021.09『Esta Plena / Miguel Zenón』2021.10『Hub-Tones / Freddie Hubbard』2021.11『Concert By The Sea / Erroll Garner』2021.12『D・N・A Live In Tokyo / 日野皓正』2022.1『The Tony Bennett Bill Evans Album / Tony Bennett / Bill Evans』2022.2『Quiet Kenny / Kenny Dorham』2022.3『Take Five / Dave Brubeck』・2022.4『Old And New Dreams / Old And New Dreams』2022.5『Ella Fitzgerald And Louis Armstrong / Ella And Louis』2022.6『Live from Miami / Nu Deco Ensemble & Aaron Parks』2022.7『Oscar Peterson Trio + One / Oscar Peterson Trio Clark Terry』2022.8『Ugetsu/ Art Blakey & The Jazz Messengers』2022.9『Sun Goddess / Ramsey Lewis』2022.10『Emergence / Roy Hargrove Big Band』

Reviewer information

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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

曽根麻央Official Site

曽根麻央 Monthly Disc Review2022.10_Roy Hargrove Big Band : Emergence:Monthly Disc Review

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皆さんこんにちは。トランペッター、ピアニストの曽根麻央です。
10月も中旬に差しかかり肌寒い日が多くなってきました。皆様におかれましては体調のほどいかがでしょうか?僕は元気にツアーの多い秋を駆け抜けています。
今回は熊本からディスク・レビューを書いています。

今日はレジェンド・トランペッター、ロイ・ハーグローヴが2009年に残したビッグバンド・アルバム、『Emergence』を聴いていきたいと思います。死後にリリースされたものを除けば、ラスト・リーダー作となっています。


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Title : 『Emergence』
Artist : Roy Hargrove Big Band

【現代を代表するトランペッター、Roy Hargroveのラスト・リーダー作】

 ロイ・ハーグローヴは間違いなく現代を代表するトランペッターでしたが、2018年に惜しまれながらこの世をさりました。残念ながら彼の絶頂期の演奏をライヴで聴くことは僕はありませんでしたが、それでも彼のソウルフルで温かい音色と歯切れ良いリズム、そして美しいメロディー・ラインは亡くなる直前まで彼と共にありました。NYCのSmallsというライヴ・ハウスに僕が学生時代に遊びにいき、ジャム・セッションに参加していると、ロイが急に現れて完璧な2コーラスを吹いてまたどこかへまた去っていく、これがたまらなくカッコよく憧れでした。

 ジャム・セッションといえば...ブルーノート東京と僕が毎月開催しているジャム・セッション・イベントがあるので是非チェックしてみてください。我こそはという参加者、ミュージシャンが切磋琢磨する様子を楽しみに来るリスナーさん歓迎です!ブルーノート東京の系列店で御茶ノ水にあるCafe104.5で主に開催しています。次回は11/17です。

Cafe104.5


 『Emergence』は2009年リリースの近年のアルバムだけあってとても良い音で収録されています。ロイのトランペットの音色も明るく収録されています。場面によっては録音ブースの隅まで音が響き渡っていたことが分かる部屋の残響音も集音されていて、ロイのパワフルな一面も存分に味わうことができるライヴ感もあるアルバムになっています。左からサックス・セクション、真ん中にトロンボーン・セクション、右側にトランペット・セクションが聴こえてきますので、恐らくトラディショナルなビッグ・バンドのレコーディングの配置で収録されたのかと思います。ロイはのトランペットはおおよそセンターから聴こえてきます。これを現代的なステレオ・イメージで聴くことが出来るのもこのアルバムの魅力かと思います。

01. Velera

ロイ・ハーグローヴ・ビッグバンドのオープニング曲としてよく演奏されていた美しいバラード曲です。10小節、8小節、10小節のA-B-Aフォームの曲で、独特のハーモニーと変則的な小節数が浮遊感を演出します。トランペット・セクションがピックアップのメロディーを演奏するとすぐにフル・オーケストレーションで1コーラス曲が奏でられます。ロイはフリューゲルホルンで2コーラス目のAセクションでソロをとります。バラードでのフリューゲルホルンの演奏はロイの魅力を最も味わえる場面です。




02. Ms. Garvey, Ms. Garvey

ファンキーなシャッフル・スウィングの曲です。1コーラス目にトロンボーンとバリトン・サックスのユニゾンでメロディーが演奏され、2コーラス目にはこれにロイが加わりつつ、オーケストラがハーモニーやカウンターポイント(対位法:主旋律と対になるような副旋律)を演奏します。その後もう1コーラス分アレンジャーズ・コーラスがあり、その後各セクションから一人ずつフィーチャーしてのソロとなります。アレンジャーズ・コーラスはシャウト・コーラスとも呼ばれ、ビッグバンドをアレンジした編曲家が元のコード進行の上に独自のメロディーを新たに書き、オーケストレーションした場面のことを指します。ソロはバリトン・サックス、ロイのトランペット、トロンボーンと受け継がれます。このロイのソロも力強く、ファンキーで、カッコいいです。




03. My Funny Valentine

ロイのフリューゲルがフィーチャーされた誰もが知るスタンダード曲のカバー。出だしは少しだけスタン・ケントンの『コンテンポラリー・コンセプト』に収録されている「Stella By Starlight」に影響をうけたのを個人的に感じました。


04. Mambo For Roy

Dマイナーのブルース形式の快速なテンポで展開されるラテンの曲。ここでロイのトランペットも最高潮のソロを展開し、ハイノートを見事にヒットさせ続けます。ロイ、フルート、そしてピアノ・ソロと曲が展開しメロディーに戻ると、曲が一旦終わったかのように見せかけ、本編より遅いチャチャのリズムでエンディングが演奏されます。この時のロイもソウルフルな演奏で聴く人を虜にします。全体を通してロイのフリューゲルホルンがフィーチャーされており、丁寧にメロディーを吹いておりとても美しいです。


05. Requiem

アメリカの古きよきポップスのような出だしからイントロが始まりますが、いざ曲が始まるとアフリカン・ビートが満載で、モーダルな曲調となります。2分前後にロイと同時にソロを取っているトランペッターはおそらくダレン・バレットだと思います。


06. September In The Rain

ロイの名アレンジのひとつだと思います。誰が聞いても楽しいミディアムテンポのスウィングでアレンジされた、有名な「September in the Rain」のカヴァーです。インパクトのあるイントロの後、ロイが1コーラス、ハーマン・ミュート越しにメロディーを演奏します。その後フル・オーケストラのシャウトコーラスを半コーラス挟み、ベースソロとなります。その次のコーラスでは前半でアルト・サックス、トランペット、トロンボーンの3管編成のシャウト・コーラスがあり、途中からトロンボーン・セクションに主旋律が移りバックグラウンドとしてサックス・セクションがハーモニーを奏で、その後ブラス(トランペット+トロンボーン)とサックス・セクションの対比となり、最終的にピアノ・ソロに着地する見事なオーケストレーションを展開します。ピアノ・ソロはシンプルに、そしてリズミカルに心地よく演奏されます。その後ビッグバンド全体でユニゾン、そしてそれを追随するドラム・ソロというトレイド・セクションに入ります。

日本ではこのようなセクションを「フォーバース」と呼んだりしますが、アメリカではこの様な場面を「Trade」と言います。そしてロイが歌で「September in the Rain」のメロディーを歌い上げ、ロイの歌にメンバーが呼応する「Call & Response」の場面があり曲が幕を閉じます。実にバラエティに富んだアレンジで、このアルバムのクライマックスといえる名演奏です。




07. Everytime We Say Goodbye

Roberta Gambariniというイタリアのジャズ・シンガーをフィーチャーしたアレンジ。前半はバラードでじっくりと、後半はロイのソロがスウィング・ワルツで軽快に演奏されます。


08. La Puerta

同じくRoberta Gambariniをフィーチャーしたボレロ調の楽しい曲。ロイのフリューゲルホルンは短いソロながらも再び冴える一曲です。ビッグバンド自体のサウンドもとても太く一体感のある演奏でとても素晴らしいです。


09. Roy Allan

ロイ・ハーグローヴの代表曲のビッグバンド・アレンジ・ヴァージョン。Even 16 feelが心地よく、メロディーとハーモニーがとても洗練されていてロイらしい一曲です。ここまでの曲は割とオーソドックスなハーモニーで構成された曲が多いので、ここでこのようなコンテンポラリー・サウンドの登場はとても新鮮に感じられます。そしてロイのトランペットソロもMambo for Royで聴けたような熱量があり素晴らしいです。


10. Tschpiso

この曲は全体的にロイのトランペットがフィーチャーされた曲で、パッと聴くと「ルパン三世」や「グレート・プリテンダー」や「スパイファミリー」なんかの日本のアニメのサウンドトラックで使われそうなグルーヴとハーモニーの一曲になっています。


11. Trust

サックスのユニゾンが徐々に膨れ上がり繊細なハーモニーを織り出すバラード曲。ロイのトランペットの柔らかい音色がよく収録されていて素晴らしいです。一瞬フリューゲルホルンを演奏しているかのような柔らかい音色から徐々にハリのあるトランペットの音に変化してくソロは必聴です。

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さて私自身は7月よりジャズ・スタンダードの数々をソロで収録し、毎月2曲ずつサブスクで配信するプロジェクト『Mao Sone Plays Standards』を継続しております。

詳しくはこちら

今月10/24(月)には名古屋のMr. Kenny'sで『Mao Sone Plays Standards』のソロ公演を開催しますので名古屋の皆様、お待ちしております!
予約フォーム(Mr. Kenny's)



それではまた次回。


文:曽根麻央 Mao Soné



Recommend Disc

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Title : 『Emergence』
Artist : Roy Hargrove Big Band
LABEL : EmArcy
発売年 : 2009年

アマゾン詳細ページへ

【SONG LIST】

01.Velera
02.Ms. Garvey, Ms. Garvey
03.My Funny Valentine
04.Mambo For Roy
05.Requiem
06.September In The Rain
07.Every Time We Say Goodbye
08.La Puerta
09.Roy Allan
10.Tschpiso
11.Trust




【曽根麻央LIVE INFO】

10/16 (Sun) @ 菊陽町図書館ホール (熊本)
Travel Brass

10/17 (Mon) @ 宮崎市立大淀小学校 (宮崎)
Travel Brass
​​
10/18 (Tue) @TBA
Travel Brass
​​
10/19 (Wed) @ Velera (赤坂)
Mao Soné Trio with Yuji Ito & Hiro Kimura

10/21 (Fri) @ 葛城 北の丸(ハママツ・ジャズ・ウィーク関連イベント)
Brightness of the Lives with 井上銘、山本連、木村紘、二階堂貴文
​​​
10/23 (Sun) @ アクトシティー大ホール(浜松ヤマハ・ジャズ・フェスティバル)
Brightness of the Lives with 井上銘、山本連、木村紘、二階堂貴文 & 馬場智章

10/24 (Mon) @ Mr Kenny's (名古屋)
Mao Soné Solo "Plays Standards"

10/25 (Tue) @ 大和市立柳橋小学校 (神奈川)
Travel Brass
​​
10/26 (Wed) @ 名古屋市立植田小学校
Travel Brass
​​
10/27 (Thu) @ 浜松市立葵西小学校
Travel Brass
​​
10/30 (Sun) @ 御船町カルチャーセンター(熊本)
Travel Brass

10/31 (Mon) @ 福岡県 粕屋西小学校
Travel Brass

曽根麻央のその他情報はウェブサイトへ

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「Monthly Disc Review」アーカイブ曽根麻央
2020.04『Motherland / Danilo Perez』2020.05『Color Of Soil /タイガー大越』2020.06『Passages / Tom Harrell 』2020.07『Inventions And Dimensions / Herbie Hancock』2020.08『Birth Of The Cool / Miles Davis』2020.09『Chet Baker Sings / Chet Baker』2020.10『SFJAZZ Collective2 / SFJAZZ Collective』2020.11『Money Jungle: Provocative In Blue / Terri Lyne Carrington』2020.12『Three Suites / Duke Ellington』2021.01『Into The Blue / Nicholas Payton』2021.02『Ben And "Sweets" / Ben Webster & "Sweets" Edison』2021.03『Relaxin' With The MilesDavis Quintet / The Miles Davis Quintet 』2021.04『Something More / Buster Williams』2021.05『Booker Little / Booker Little』2021.06『Charms Of The Night Sky / Dave Douglas』2021.07『Play The Blues / Ray Bryant Trio』2021.08『The Sidewinder / Lee Morgan』2021.09『Esta Plena / Miguel Zenón』2021.10『Hub-Tones / Freddie Hubbard』2021.11『Concert By The Sea / Erroll Garner』2021.12『D・N・A Live In Tokyo / 日野皓正』2022.1『The Tony Bennett Bill Evans Album / Tony Bennett / Bill Evans』2022.2『Quiet Kenny / Kenny Dorham』2022.3『Take Five / Dave Brubeck』・2022.4『Old And New Dreams / Old And New Dreams』2022.5『Ella Fitzgerald And Louis Armstrong / Ella And Louis』2022.6『Live from Miami / Nu Deco Ensemble & Aaron Parks』2022.7『Oscar Peterson Trio + One / Oscar Peterson Trio Clark Terry』2022.8『Ugetsu/ Art Blakey & The Jazz Messengers』2022.9『Sun Goddess / Ramsey Lewis』

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maosona_A.png
曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

曽根麻央Official Site

曽根麻央 Monthly Disc Review2022.9_Ramsey Lewis : Sun Goddess:Monthly Disc Review

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みなさんこんにちは、トランペッター&ピアニストの曽根麻央です。
今週は日本のジャズシンガーの中でもレジェンド級の存在、
中本マリさんのツアーで関西〜名古屋方面にきています。お近くの方は是非お越しください。

9/15 高槻J K.RUSH
9/16 大津Bochi Bochi
9/17 桑名ado on top
9/18 桑名 ado on top (昼公演)
9/19 名古屋Star Eyes

そして今月来月は、今年発売したアルバム『Brightness of the Lives』のコンサートがあります。

9/23 @ 流山生涯学習センター
https://teket.jp/3138/14458

10/21 @ ヤマハリゾート葛城北の丸(掛川)
hhttps://www.yamaharesort.co.jp/katsuragi-kitanomaru/info/040.php

10/23 @ 浜松アクトシティー大ホール
https://hamamatsujazzweek.com/2022/01/


また現在配信中のソロ演奏シリーズ『曽根麻央プレイズ・スタンダード』の一環で、名古屋に10/24(月)ソロ公演で伺います!場所は金山のMr. Kenny'sです。
https://teket.jp/3138/14458


この様に徐々にライブシーンが通常に回り始めた喜びを感じつつ充実した日々を送っていたところ、とんでもない訃報が届いてしまいました。

ラムゼイ・ルイス。偉大なR&B~ジャズピアニストで数多くのヒットソングに携わった人です。僕はこの人のライブ映像を小学生の時に何回も見て、その凄まじいライブパフォーマンスに憧れていました。YouTubeにその映像を見つけたので是非聞いてみて下さい。




【クールでファンキーなピアノスタイル】

ラムゼイ・ルイスのピアノは輝く明るめのタッチとゴスペルやR&Bに根ざしたリズミカルでグルーヴィーな演奏が特徴です。ライブ映像をみてもわかるのですが、ファンキーな曲を演奏していてもとても落ち着いていて、軸がブレないというか、じっくりとストーリーが展開されている印象をえます。この様なクールでファンキーなピアノの演奏スタイルは、ラムゼイ・ルイスなしには完成しなかったといってよいでしょう。

さてこのSun Goddessは調べるとルイスとドラマー、モーリス・ホワイトのリユニオン作品だそうです。モーリス・ホワイトというとあの有名なEarth, Wind & Fireのリーダーとして有名でリードトラックの「Sun Goddess」をはじめ、Earth, Wind & Fireのメンバーが演奏に参加しています。
僕が書くまでもない名盤ですが、新ためてこのアルバムの魅力に気付けたらと思います。


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Title : 『Sun Goddess』
Artist : Ramsey Lewis



01. Sun Goddess




この8分間は録音の歴史上最高にグルーヴィーな瞬間であると言えるでしょう。ルイスの代表的名演奏です。ギターのカッティングが聴こえてきて、ドラムのbass drumが胸に響きます。ラムゼイ・ルイスは最初フェンダー・ローズでシンプルなパターンを繰り返し弾きながらグルーヴを高めます。その後かの有名な美しいメロディーが流れてきます。メロディーの間のルイスの合いの手も非常に歌心あり、感情をくすぐられます。その後一瞬イントロのギターカッティングの上で、ルイスが暴れます(笑)。これがまたちょうどよい長さでカッコ良いです。このトラックは構成のバランスも最高なのです。その後すぐにテナーソロに入り、イントロのコード進行の上で音楽が進んでいきます。同じ進行の上でソロがルイスに渡されます。リズムがとても歯切れよく心地よいソロが展開されます。フレーズはいたってシンプルでコードに沿ったものですが、それが自然と聴き手を徐々に音楽の中に引っ張り込んでしまいます。ソロが最高潮に達したところですぐさまメロディーに戻るのもシンプルな作りでとても良いですね。エンディングに近づくにつれディレイのかかったローズの音になっていき、フレーズが徐々に複雑になりかけたところでフェイドアウトして終わります。


02. Living for the City

スティーヴィー・ワンダーの楽曲。フェンダー・ローズでメロディーを弾きながら左手でブルージーなコンピングを繰り広げるのは本当に見事ですね。ブラスセクションがとてもインパクトある曲になっています。後ろのストリングスも特徴的ですね。ピアノソロ中は音程をグニャっとさせて独特の緊張感を音楽に与えています。


03. Love Song

これはルイスのオリジナル曲。ルイスのアコースティックピアノをフィーチャーした曲。イントロのストリングスがこれも非常に特徴的ですね。 ルイスのピアノの音はこの上なく明るく、すべての音をかき分けて頂点に立つ様な音です。しかし、耳に突き刺さることはなく、優しさがある素敵なピアノのタッチです。ソロではフェンダー・ローズに戻り、グルーヴィーなソロを1コードの上で展開しつつ、徐々にホーンセクションなどが絡んできているのもかっこいいです。


04. Jungle Strut

この曲ではアップライトベースがとても特徴的なラインを弾いて、それが基本となり展開していきます。言葉とそれに呼応するシンセの音が特徴的な音楽です。


05. Hot Dawgit

映画音楽の様なブルージーなギター・イントロに続いて、リリカルなメロディーが展開されます。短いシンプルな曲です。


06. Tambura

ノイズの様なパーカッションとシンセが特徴的な出だしを作り出しています。ここまで聴いて改めて気づいたのですが、このアルバムは各楽曲のイントロの掴みが素晴らしいですね。聴き手に何だこれ、かっこいい、と思わせる工夫が特にイントロや出だしになされていて、そこから派生するグルーヴが安定して永続的に続くため体が自然と踊り出す、そんなアルバムなのかもしれません。


07. Gemini Rising

これまでの楽曲に比べるとかなり暗い混沌としたコンテンポラリーなサウンドでイントロが始まります。本編自体は少し軽快なグルーヴです。シンンセサイザーがメロディーを担当していて他の楽曲とかなり印象が変わります。アップライトベースも特徴的です。ルイスのソロではスウィングにグルーヴが変わります。恐らくCleveland Eatonがベースだと思いますが、非常に理想的なウォークベースを展開していて、スウィングのリズムをリードしています。それにルイスのソロも徐々に高まり彼のジャズ奏者としての優れた一面を聴くことができます。ベースソロではドラムが徐々にカオスになり、シンセも加わって混沌としたイントロのサウンドに戻り曲が終わります。



それではまた次回。


文:曽根麻央 Mao Soné



Recommend Disc

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Title : 『Sun Goddess』
Artist : Ramsey Lewis
LABEL : Columbia
発売年 : 1974年

アマゾン詳細ページへ

【SONG LIST】

01.Sun Goddess
02.Living For The City
03.Love Song
04.Jungle Strut
05.Hot Dawgit
06.Tambura
07.Gemini Rising




【曽根麻央LIVE INFO】

9/15 (Thu) @ JK Rush, Takatsuki
Mari Nakamoto Tour
​​
9/17 (Sat) night @ Ado On Space, Kuwana
Mari Nakamoto Tour
​​
9/16 (Fri) @ Bochi Bochi, Otsu
Mari Nakamoto Tour
​​
9/18 (Sat) @ Ado On Space, Kuwana
Mari Nakamoto Tour
​​
9/19 (Mon) @ Star Eyes, Nagoya
Mari Nakamoto Tour
​​
9/23 (Fri) @ 流山生涯学習センター
Brightness of the Lives (feat. May Inoue, Ren Yamamoto, Hiro Kimura & Takafumi Nikaido)

9/24 (Sat) @ Cabin, Honatsugi
Mao Sone, Takafumi Nikaido, Yuji Ito

9/25 (Sun) @ Body & Soul
Mao Sone, Yuji Ito, Hiro Kimura, Takafumi Nikaido

9/26 (Mon) @ Apple, Yokohama
​Tetsuo Koizumi, Takafumi Nikaido, Mao Sone

9/28 (Wed) @ Nardis, Kashiwa
Mao Sone Trio (feat. Yuji Ito & Hiro Kimura)

9/29 (Thu) @ 築地 Blue Mood
中村梅雀(eb)、井上銘(gt)、曽根麻央(keys&tp)、高橋直希(ds)

10/1 (Sat) @ 取手市民会館大ホール
宮本貴奈ダブル・トライアングル featuring 曽根麻央、中林俊哉&KOTETSU

10/2 (Sun) @ 蒲郡ジャズフェスティバル
Yucco Miller Quartet

10/3 (Mon) @ Nardis (柏)
Mao Soné Trio with Yuji Ito & Hiro Kimura

10/5 (Wed) @ Apple (横浜)
TBA

10/7 (Fri) @ Cabin (本厚木)
丈青 and more

10/8 (Sat) @ 関内ホール【横浜ジャズプロムナード】
Reborn Wood Sessions

10/9 (Sun) @ Cabin (本厚木)
Mao Soné SOLO

曽根麻央のその他情報はウェブサイトへ

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「Monthly Disc Review」アーカイブ曽根麻央
2020.04『Motherland / Danilo Perez』2020.05『Color Of Soil /タイガー大越』2020.06『Passages / Tom Harrell 』2020.07『Inventions And Dimensions / Herbie Hancock』2020.08『Birth Of The Cool / Miles Davis』2020.09『Chet Baker Sings / Chet Baker』2020.10『SFJAZZ Collective2 / SFJAZZ Collective』2020.11『Money Jungle: Provocative In Blue / Terri Lyne Carrington』2020.12『Three Suites / Duke Ellington』2021.01『Into The Blue / Nicholas Payton』2021.02『Ben And "Sweets" / Ben Webster & "Sweets" Edison』2021.03『Relaxin' With The MilesDavis Quintet / The Miles Davis Quintet 』2021.04『Something More / Buster Williams』2021.05『Booker Little / Booker Little』2021.06『Charms Of The Night Sky / Dave Douglas』2021.07『Play The Blues / Ray Bryant Trio』2021.08『The Sidewinder / Lee Morgan』2021.09『Esta Plena / Miguel Zenón』2021.10『Hub-Tones / Freddie Hubbard』2021.11『Concert By The Sea / Erroll Garner』2021.12『D・N・A Live In Tokyo / 日野皓正』2022.1『The Tony Bennett Bill Evans Album / Tony Bennett / Bill Evans』2022.2『Quiet Kenny / Kenny Dorham』2022.3『Take Five / Dave Brubeck』・2022.4『Old And New Dreams / Old And New Dreams』2022.5『Ella Fitzgerald And Louis Armstrong / Ella And Louis』2022.6『Live from Miami / Nu Deco Ensemble & Aaron Parks』2022.7『Oscar Peterson Trio + One / Oscar Peterson Trio Clark Terry』2022.8『Ugetsu/ Art Blakey & The Jazz Messengers』

Reviewer information

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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

曽根麻央Official Site

曽根麻央 Monthly Disc Review2022.8_Art Blakey & The Jazz Messengers : Ugetsu:Monthly Disc Review

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みなさんこんにちは、トランペッター&ピアニストの曽根麻央です。
今回はアート・ブレイキー&ジャズメッセンジャーズの代表作『Ugetsu』をご紹介しようと思います。

ポスト・ビバップの最高峰として各プレイヤーの熱演を聞く事は出来るだけでなく、ビバップ誕生から20年という月日が経過した事でアレンジやアンサンブルのあり方もバンドとして一つの頂点を極めたと言ってよい作品でしょう。


本編の前に一つ紹介させてください。僕のソロプロジェクト『Mao Sone Plays Standards』の第3作目「Luminous (Piano Solo Ver.)」が公開されました。ぜひたくさん聴いてください。


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【Luminous (Piano Solo Ver.) / 曽根麻央】(各配信サイト)
https://ultravybe.lnk.to/Luminous_p


また東京のコットンクラブではこのシリーズを記念したライブが9/2(金)にあります。



【MAO SONÉ "Plays Standards" with DAVID BRYANT & TAKANA MIYAMOTO】





"ジャズ二刀流"と称される若き才能と2人のピアニスト
スタンダード曲の数々を贅沢な内容で届ける一夜


【SCHEDULE】
2022 9.2 fri.
[1st.show] open 5:00pm / start 6:00pm
[2nd.show] open 7:45pm / start 8:30pm


【MEMBER】
曽根麻央 (p,tp)
【Guest】
デヴィッド・ブライアント (p,key)、 宮本貴奈 (p,key)


【詳細】
http://www.cottonclubjapan.co.jp/jp/sp/artists/mao-sone/




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Title : 『Ugetsu』
Artist : Art Blakey & The Jazz Messengers


【バンドとして一つの頂点を極めたアート・ブレイキー&ジャズメッセンジャーズの作品】

さてこの『Ugetsu』は1963年のNYバードランドで収録されたライブアルバムです。
日本を意識したタイトルと選曲になっており、当時から日本での人気を感じさせます。

ブレイキーがアルバムの途中で「次の曲はUGETSUといい、日本語でファンタジーという意味です」と紹介しています。おそらく「雨月物語」という1953年には映画化もされている日本の古典から言葉がきていると思います。海外のこの映画の紹介文を読むと「romantic fantasy drama」と紹介されていますので、雨月物語からの意訳かと思われます。「Ugetsu」というシダー・ウォルトンのタイトル曲は後に「Fantasy in D」とタイトルを改められます。

下記メンバーと曲です。



Art Blakey - drums
Freddie Hubbard - trumpet
Curtis Fuller - trombone
Wayne Shorter - tenor sax
Cedar Walton - piano
Reggie Workman - bass

オリジナルLP
One By One (Wayne Shorter)
Ugetsu (Cedar Walton)
Time Off (Curtis Fuller)
Ping-Pong (Wayne Shorter)
I Didn't Know What Time It Was (Richard Rodgers, Lorenz Hart)
On the Ginza (Wayne Shorter)

ボーナストラック
Eva (Wayne Shorter)
The High Priest (Curtis Fuller)
The Theme (Miles Davis)



50年代後期のメッセンジャーズはリー・モーガン&ベニー・ゴルソンの2菅編成サウンドに、ボビー・ティモンズのブルージーでファンキーなピアノに支えられ、ベニー・ゴルソンの類まれな作曲能力によってヒット曲にも恵まれていました。その後フロントがフレディー・ハバードとウェイン・ショーター、そしてカーティス・フラーの3菅編成に拡張されアンサンブルの可能性が増しました。

リズムセクションもシダー・ウォルトンとレジー・ワークマンに代わり、より複雑で繊細なハーモニーを取り入れることが出来るように。メンバーのキャラクターと演奏に合わせるようにウェイン・ショーターというジャズ史上最高の作曲家が名曲を生み出していきました。

レーベルもブルー・ノートからリヴァー・サイドに移った新生メッセンジャーズの初期のアルバムと言ってよいでしょう。





01. One By One

「Art Blakey and the Jazz Messengers」というアナウンスとともに有名なイントロが聴こえてきます。ジャズファンはこれだけでテンションが上がるに違いありません。「One By One」はウェイン・ショーターのファンキーなAABA構成のジャズ曲で、その構成はベニー・ゴルソンやボビー・ティモンズが作り上げたメッセンジャーズ伝統のものに近いと思います。

「Whisper Not」や「Dat Dare」という過去の作品を聴いてもその雰囲気と共通点がわかるでしょう。ブルージーなメロディー、さりげない転調、ピアニッシモからフォルテッシモの大胆なダイナミックス、そしてリーダー・ブレイキーのドラム・フィル、これらはメッセンジャーズの色です。しかし今回は3菅ですからさらに音に広がりがあります。

メロディーが入って最初の1-2小節は通常の音量で完璧な3本ユニゾンなのですが、3-4小節目は狭い音域での3声のハーモニー、そして5-7小節目にはトランペットがオクターブ上のユニゾンというように、徐々に音域も広がりを効かせて音量じゃなく楽器の組み合わせでダイナミックスを表現します。ところがBセクションに入るとフォルテッシモでオクターブユニゾンのメロディーが聴こえてきて、それがドラムのクラッシュとともに急にピアニッシモになり、同じ音域のユニゾンに戻ります。楽器の組み合わせと音量効果を合わせ技で使ったとても効果的なアレンジです。

3菅編成となると誰かがソロをしている後ろでも2本の管楽器でバックグラウンドが演奏できるのでまるでビッグバンドをきているような感覚になります。


02. Ugetsu

シダー・ウォルトンの名曲で「Fantasy in D」としても有名な曲です。12小節のメインテーマが2回トランペットで演奏され、16小節のA7susのVampセクションが毎回挟まれるAAB構成の曲です。

Vampセクションについては以前も詳しく書いたのですが、同じようなコードやリズムパターン、ベースパターンが複数回繰り返されるセクションをいい、ラテン音楽によく見られる形態のことです。50年代からは特にジャズもラテンの影響を受け始め曲にvampセクションがつくことが増えました。コード進行が目まぐるしく変化するビバップの曲に対し、コードの変化が少ないためソリストの自由度と熱量が増していくのがわかると思います。このフレディーのソロは歴史的名演と言えるでしょう。





03. Time Off

軽快なテンポの32小節の曲。ブレイキーらしいヒットがテーマ中に散りばめられ、その間を埋めるようにタムの音が埋められています。これはカーティス・フラーの曲ですがメッセンジャーズのメンバーは本当にブレイキーのスタイルに合わせて曲を作ることが非常にうまいです。各ソロもよくまとまっていてとても聴きやすい一曲になっています。


04. Ping-Pong

非常に特徴のあるドラムパターンから成る楽曲。形式も複雑化していてショーターの曲作りの素晴らしさを体感できる一曲。ドラムパターンの上にハーモニーが聴こえてきて、そのパターンの上で演奏される8小節のメロディーがAセクション。Aセクションに続いて展開される激しく転調を繰り返す12小節のセクションがBセクションとなっていて、これが2回繰り返されます。その後音楽のクライマックスを締め受くるCセクションが8小節繰り返されAに戻るという、ABABCAという奇妙な構成の楽曲です。

一見つかみどころのない、流れるようなメロディーのように聴こえますが、モティーフがはっきりしてそれを展開させているためストーリーが統一された楽曲と言えるでしょう。卓球玉が目まぐるしく転がっていくようなメロディーから始まり、その後に続くモティーフがずっと展開されていきます。ジャズ作曲史上その構成の枠を打破した見事な楽曲と言えるでしょう。


05. I Didn't Know What Time It Was

ジャズ・スタンダード曲。ショーターをフィーチャーしたバラードで演奏されています。こちらもただ単にバラードを演奏しているだけでなく、メッセンジャーらしいダイナミックスのある演奏になっています。


06. On the Ginza

「日本のショッピングタウン」銀座の街をテーマに展開される軽快なショーターの曲。3菅の持つバラエティー豊かなサウンドをとてもよく表現している曲です。各8小節ずつのABCセクションで構成される曲です。各セクションとも共通したモティーフを共有していて曲に統一性があるのはショーターの特徴です。


BONUS. Eva

ボーナストラックですがこの楽曲だけは特に取り上げたいのです。ジャズで作曲を志す人はぜひ研究してほしい名曲です。おそらくこれがこの曲の唯一のバージョンなのが非常に残念に感じています。

ジャズのスタンダードと成るポテンシャルのある曲なのですが、多作であるウェイン・ショーターらしい話です。まずメロディーが非常に美しく、メッセンジャーズのもつダイナミックスも活かせるバラードです。6小節のイントロのついたABABの構成の曲です。バラードですが全てのセクションが3菅編成で統一されていて、そのハーモニーも見事に書かれています。ぜひ聴いてみてください。





それではまた次回。


文:曽根麻央 Mao Soné






Recommend Disc

ugetsu200.jpg

Title : 『Ugetsu』
Artist : Art Blakey & The Jazz Messengers
LABEL : Riverside Records
発売年 : 1963年

アマゾン詳細ページへ

【SONG LIST】

01.One By One
02.Ugetsu
03.Time Off
04.Ping-Pong
05.I Didn't Know What Time It Was
06.On The Ginza
07.Eva
08.The High Priest
09.IThe Theme




【曽根麻央LIVE INFO】

8/20 (Sat) @ Nagareyama-city Shogai Gakushu Center
Mizuki Shikimachi & Mao Sone

8/21 (Sun) @ Cabin, Hon-atsugi
Mao Sone, Yoshiki Takahashi, Hayato Yamazaki

​​8/22 (Mon) @ TBA
​TBA
​​
8/24 (Wed) @ Apple, Yokohama
Kurena Ishikawa & Mao Sone
​​
8/27 (Sat) @ No Room For Squares, Shimokitazawa
Mao Sone & Yuji Ito
​​
8/28 (Sun) @ Yatsugatake Jazz Festival
​Yucco Miller
​​
8/29 (Mon) @ Mr, Kelly's, Osaka
​Yucco Miller
​​
8/30 (Tue) @ Star Eyes, Nagoya
​Yucco Miller
​​
8/31 (Tue) @ Star Eyes, Nagoya
​Yucco Miller

9/2 (Fri) @ Cotton Club, Tokyo
Mao Sone "Plays Standars"
with David Bryant & Takana Miyamoto

​​9/24 (Sat) @ Cabin, Honatsugi
Mao Sone, Takafumi Nikaido, Yuji Ito

9/25 (Sun) @ Body & Soul
Mao Sone
​​
9/26 (Mon) @ Apple, Yokohama
​Tetsuo Koizumi, Takafumi Nikaido, Mao Sone
​​
9/28 (Wed) @ Nardis, Kashiwa
Mao Sone Trio (feat. Yuji Ito & Hiro Kimura)
​​
9/8 (Thu) @ Cotton Clun, Tokyo
Eri Chichibu
​​
9/10 (Sat) @ giee, Kokubunji
Mari Nakamoto
​​
9/12 (Mon) @ TBA
TBA
​​
9/14 (Wed) @ Jazz Live Bar GLOVER, Osaka
Mari Nakamoto Tour
​​
9/15 (Thu) @ JK Rush, Takatsuki
Mari Nakamoto Tour


曽根麻央のその他情報はウェブサイトへ

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「Monthly Disc Review」アーカイブ曽根麻央
2020.04『Motherland / Danilo Perez』2020.05『Color Of Soil /タイガー大越』2020.06『Passages / Tom Harrell 』2020.07『Inventions And Dimensions / Herbie Hancock』2020.08『Birth Of The Cool / Miles Davis』2020.09『Chet Baker Sings / Chet Baker』2020.10『SFJAZZ Collective2 / SFJAZZ Collective』2020.11『Money Jungle: Provocative In Blue / Terri Lyne Carrington』2020.12『Three Suites / Duke Ellington』2021.01『Into The Blue / Nicholas Payton』2021.02『Ben And "Sweets" / Ben Webster & "Sweets" Edison』2021.03『Relaxin' With The MilesDavis Quintet / The Miles Davis Quintet 』2021.04『Something More / Buster Williams』2021.05『Booker Little / Booker Little』2021.06『Charms Of The Night Sky / Dave Douglas』2021.07『Play The Blues / Ray Bryant Trio』2021.08『The Sidewinder / Lee Morgan』2021.09『Esta Plena / Miguel Zenón』2021.10『Hub-Tones / Freddie Hubbard』2021.11『Concert By The Sea / Erroll Garner』2021.12『D・N・A Live In Tokyo / 日野皓正』2022.1『The Tony Bennett Bill Evans Album / Tony Bennett / Bill Evans』2022.2『Quiet Kenny / Kenny Dorham』2022.3『Take Five / Dave Brubeck』・2022.4『Old And New Dreams / Old And New Dreams』2022.5『Ella Fitzgerald And Louis Armstrong / Ella And Louis』2022.6『Live from Miami / Nu Deco Ensemble & Aaron Parks』2022.7『Oscar Peterson Trio + One / Oscar Peterson Trio Clark Terry』

Reviewer information

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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

曽根麻央Official Site

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みなさんこんにちは。トランペットとピアノの曽根麻央です。
まず最初にお知らせがあります。

先日7/13(水)より シングル「Days of Wine and Roses(酒とバラの日々)」が配信されました。
是非聴いてください!

これは私、曽根麻央が数々の名曲をピアノソロ中心に録音した"Plays Standards"シリーズの一環で、このシリーズは今月から12月までの間、毎月2曲ずつ配信していきます。注目しておいてください。


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【Days of Wine and Roses / 曽根麻央】(各配信サイト)
https://ultravybe.lnk.to/thedaysofwineandroses


まだ一曲のみですが計12曲にも及ぶのでこちらのSpotifyプレイリストに随時まとめていく予定です。




そして東京の丸の内コットンクラブではこれに先駆けて配信を記念したライヴを開催します。
会場でお会いしましょう!



【MAO SONÉ "Plays Standards" with DAVID BRYANT & TAKANA MIYAMOTO】





"ジャズ二刀流"と称される若き才能と2人のピアニスト
スタンダード曲の数々を贅沢な内容で届ける一夜


【SCHEDULE】
2022 9.2 fri.
[1st.show] open 5:00pm / start 6:00pm
[2nd.show] open 7:45pm / start 8:30pm


【MEMBER】
曽根麻央 (p,tp)
【Guest】
デヴィッド・ブライアント (p,key)、 宮本貴奈 (p,key)


【詳細】
http://www.cottonclubjapan.co.jp/jp/sp/artists/mao-sone/

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Title : 『Oscar Peterson Trio + One』
Artist : Oscar Peterson Trio Clark Terry


【オスカー・ピーターソン&クラーク・テリーによる巨匠の名演】

さて今回はピアノの名手オスカー・ピーターソンと、ジャズ・トランペットの神様、クラーク・テリーの共演した名盤『Oscar Peterson Trio + One』を聴いていきましょう。

このアルバムは1964年のもので、ピーターソンが39歳、クラーク・テリーが44歳と、丁度中堅に差し掛かり心地よいジャズを演奏するのにちょうど良い年齢に達した二人の巨匠の名演集ともいえる作品です。

クラーク・テリーという名前に馴染みがない方はすぐにでも覚えてほしい。この人ほどトランペットという楽器をここまで高度に操れた人は過去にはいないのです。
技術だけなのかというとそうではなく、この人ほどトランペットを自身の声として扱うことに長けていた人はいないでしょう。プレイヤーとしてでなく94歳で亡くなる2015年まで教育者としても尊敬されていた人です。

1920年に生まれ、カウント・ベイシーとデューク・エリントン・オーケストラというジャズ界の歴代2大ビッグバンドのソリストとして活躍し、ソロ活動も精力的に行なっていました。またマイルス・デイヴィスのメンター(ただの楽器の先生としての意味合いではなく生き様を見せることで後進の指導をするような人の意)として有名です。ウィントン・マルサリスやクインシー・ジョーンズといった一流のアーティストも彼のことをメンターとして挙げています。ジャズのシーンだけでなくNBCなどのTVミュージシャンとしても活躍したマルチ・タレントです。

そんな彼のトランペットの音は、立ち上がりがよく、艶やかでリズミカル。まるで彼自身の声を聴いているかのようです。このアルバムでも収録されている「Mumbles」でクラーク・テリー自身のスキャットも聴けます。ぜひ彼のトランペットと歌の共通点を見つけてみてください。






Clark Terry - trumpet, flugelhorn, vocal
Oscar Peterson - piano
Ray Brown - double bass
Ed Thigpen - drums



オスカー・ピーターソンの最も有名なトリオにクラーク・テリーが乗っかったアルバムです。このコラボはツアーなどで以後も続いていきます


01. Brotherhood of Man

早速、心地よい快速なスウィングの曲で始まります。クラーク・テリーはプランジャー・ミュートという、いわゆるトイレのスッポンのゴム部分を使用しており、これをトランペットのベルのところで開けたり閉めたりすることで、まるで喋るような、歌詞を歌っているかのような演奏を聴かせてくれます。エリントン・ビッグバンドのアレンジによく登場する奏法です。このプランジャーを使った演奏は彼の得意技で、他の追随を許しません。ぜひ楽しんで聴いてください。


02. Jim

少しゆったりとしたスウィングの曲。ピーターソントリオで1コーラステーマを演奏し、テリーに引き継がれます。テリーに引き継がれると、トランペットの音を変化させ彼がまるで二人に分身したかのように掛け合いで演奏を始めます。実は右手にフリューゲルホルン、左手にハーマン・ミュートをつけたトランペットを持っていて、それをパートによって吹き分けています。これもテリーの芸の一つで、トランペットを左手でも持てるように取り外し式のピンキーフックを楽器に装着し使っています。2人のジャズの巨匠が掛け合いをしてるようでとても楽しいトラックです。ちなみにクラーク・テリーのハーマン・ミュートの音が後にマイルス・デイヴィスに影響を与えたと言われています。


03. Blues For Smedley

Abのシンプルなブルース。一曲目と同じくプランジャー・ミュートを駆使しています。テリーの音は全てのレンジで立ち上がりが素晴らしく、ハリのある音色でジューシーです。そして何よりスウィングしますね!特にこのトラックではピーターソンだけでなくレイ・ブラウンのソロも聴くことができます。


04. Roundalay

ようやくテリーのオープンなトランペットサウンドが聴けます。今までと少し毛色の違う寂しげな曲。オープンなトランペットサウンドでとても真のある音にも関わらず、柔らかく人々の耳を決して痛めることのない優しさのある音だと思います。彼の速いフレーズを吹くときに注目すれば、彼のトランペットが恐ろしくクリーンでクリアであることに気づかされます。なぜ他のジャズ・トランペッターが憧れたかがわかるでしょう。


05. Mumbles

テリーの「芸」はプランジャーやフリューゲルとの持ち替えだけではありません。ここでは巧みなスキャットを披露します。" Mumbles"と人々が呼ぶそれはまるで南部訛りの男性が話しているかのように展開されます。しかし言葉に意味はありません。そこにはただソウルとリズムがあり、その全てがテリーのトランペット演奏に反映されています。


06. Mack The Knife

有名なジャズスタンダード。ここでテリーはバケットミュートという棉の詰まったミュートを使用しています。このアルバムには様々なミュートが登場します。この時代はエフェクターがないのでミュートを変えたりフリューゲルに持ち変えることで曲調に合う音色を探していたことがわかりますね。正直この曲のテリーのソロは神業です。歯切れ良い丁寧な3連音符。それと対となるようなスピード感ある16分音符。世界最高のトランペッターの軽い本気が聴けます。


07. They Didn't Believe Me

ピーターソンのソロから始まるバラードの曲。この曲ではテリーはフリューゲルを使用しています。実はテリーは稀に見るフリューゲルの名手としても有名で、ハイノートや激しい演奏など、通常フリューゲルでは難しいとされていることも何気なくこなしてしまいます。そのテイクではテクニカルな一面は封印して、歌心あるメロディープレイに集中しています。


08. Squeaky's Blues

速いテンポのブルースの曲。こちらもバケットミュートを使用しています。テリーのアーティキュレーションの綺麗さが際立つ一曲です。このタイプの演奏スタイルは現在ではウィントン・マルサリスが継承していて、彼の演奏を聴きに行けば今でも体感することができます。このテンポはピーターソンも得意とするところで輝くようなタッチで軽やかに演奏しています。


09. I Want A Little Girl

プランジャーを使ったバラード曲。通常プランジャーを使う場合左手はプランジャー操作で忙しくなるので楽器自体は右手のみで持つことになります。このためとても楽器の演奏自体が困難になるのですが、テリーはダイナミックスまでも見事につけてトランペットを完璧に操っています。4:37以降のエンディングは圧巻です!


10. Incoherent Blues

再びテリーの"mumbles"をスローブルースで聴くことができます。よりしゃべっている感覚が伝わってくると思います。これが実にジャズという音楽でアートなのです。

それではまた次回。


文:曽根麻央 Mao Soné



Recommend Disc

UCCU-5884_200.png

Title : 『Oscar Peterson Trio + One』
Artist : Oscar Peterson Trio Clark Terry
LABEL : Mercury
発売年 : 1964年

アマゾン詳細ページへ

【SONG LIST】

01.Brotherhood Of Man
02.Jim 
03.Blues For Smedley
04.Roundalay
05.Mumbles
06.Mack The Knife
07.They Didn't Believe Me
08.Squeaky's Blues
09.I Want A Little Girl
10.Incoherent Blues 




【曽根麻央LIVE INFO】

7/20 (Wed) @ Body & Soul, Shibuya
Takana Miyamoto & Mao Sone
​​
7/22 (Fri) @ Cotton Club, Tokyo
Saku Yanagawa "Time To Standup at COTTON CLUB Tokyo"
​​
7/23 (Sat) @ Kanze Nohgakudo, Ginza
Edo Jazz
​​
7/24 (Sun) @ Cabin, Honatsugi
Mao Sone SOLO

7/25 (Mon) @ Apple, Yokohama
Yuya Wakai & Mao Sone
​​
7/26 (Tue) @ 104.5, Ochanomizu
Good Jam Session
​​
7/27 (Wed) @ TBA
Secret Event
​​
7/28 (Thu) @ Alfie, Roppongi
SkyFloor (feat. Hiro Suzuki, Shota Watanabe, Shunya Wakai & Mao Sone)

8/6(Sat) @ Naru, Yoyogi
Ayana, Mao Sone, Nori Shiota
​​
8/11(Thu) @ Nardis, Kashiwa
Mao Sone Trio (feat. Yuji Ito & Hiro Kimura)
​​
8/12 (Fri) @ Body & Soul, Shibuya
Mao Sone, Taka Nawashiro, Shin Sakaino, Kazu Odagiri

​​8/14 (Sun) @ No Room For Squares, Shimokitazawa
Ryo Miyachi
​​
8/20 (Sat) @ Nagareyama-city Shogai Gakushu Center
Mizuki Shikimachi & Mao Sone

​​8/21 (Sun) @ Cabin, Hon-atsugi
Mao Sone, Yoshiki Takahashi, Hayato Yamazaki


曽根麻央のその他情報はウェブサイトへ

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「Monthly Disc Review」アーカイブ曽根麻央
2020.04『Motherland / Danilo Perez』2020.05『Color Of Soil /タイガー大越』2020.06『Passages / Tom Harrell 』2020.07『Inventions And Dimensions / Herbie Hancock』2020.08『Birth Of The Cool / Miles Davis』2020.09『Chet Baker Sings / Chet Baker』2020.10『SFJAZZ Collective2 / SFJAZZ Collective』2020.11『Money Jungle: Provocative In Blue / Terri Lyne Carrington』2020.12『Three Suites / Duke Ellington』2021.01『Into The Blue / Nicholas Payton』2021.02『Ben And "Sweets" / Ben Webster & "Sweets" Edison』2021.03『Relaxin' With The MilesDavis Quintet / The Miles Davis Quintet 』2021.04『Something More / Buster Williams』2021.05『Booker Little / Booker Little』2021.06『Charms Of The Night Sky / Dave Douglas』2021.07『Play The Blues / Ray Bryant Trio』2021.08『The Sidewinder / Lee Morgan』2021.09『Esta Plena / Miguel Zenón』2021.10『Hub-Tones / Freddie Hubbard』2021.11『Concert By The Sea / Erroll Garner』2021.12『D・N・A Live In Tokyo / 日野皓正』2022.1『The Tony Bennett Bill Evans Album / Tony Bennett / Bill Evans』2022.2『Quiet Kenny / Kenny Dorham』2022.3『Take Five / Dave Brubeck』・2022.4『Old And New Dreams / Old And New Dreams』2022.5『Ella Fitzgerald And Louis Armstrong / Ella And Louis』2022.6『Live from Miami / Nu Deco Ensemble & Aaron Parks』

Reviewer information

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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

曽根麻央Official Site

曽根麻央 Monthly Disc Review2022.6_Nu Deco Ensemble + Aaron Parks: Live from Miami:Monthly Disc Review

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Nu Deco Ensemble + Aaron Parks500.jpg

Title : 『Nu Deco Ensemble+Aaron Parks: Live from Miami』
Artist : Nu Deco Ensemble & Aaron Parks

【21世紀の室内楽団と注目のピアニストAaron Parksの2021年コラボレーション作品】

みなさんこんにちは、トランペットとピアノの曽根麻央です。今日は2021年にリリースされたNu Deco Ensembleというマイアミで活動するオーケストラがピアニストAaron Parksをゲストに迎えたアルバムを紹介したいと思います。

実は先月までこのアルバムの存在を知らなかったのですが、私のバンド"Brightness of the Lives"のアルバムリリースツアーで 、車で移動中に、ギターの井上銘くんがかけてくれて、あまりの凄さにメンバー全員耳が釘付けになり、3回通しで聴きました。

Nu Daco EnsembleはアレンジャーのSam Hykenと、指揮者のJacomo Bairosによって創設されたオーケストラです。2015年頃からマイアミのエレクトロニック・シーンで注目を集め、ジャンルにとらわれず様々なアーティストとのコラボを行なっています。ニューヨークタイムスには「21世紀の室内楽団」と称されています。

Aaron Parksは2008年に『Invisible Cinema』をブルーノートからデビューして以来、現在もジャズ・シーンの最先端を切り抜けているピアニストで、美しいピアノのタッチ、絶対的なリズム感、独特のハーモニーセンスの持ち主です。

今回紹介する『Nu Deco Ensemble + Aaron Parks: Live from Miami』には『Invisible Cinema』の曲も収録されているので、Aaron Parksの出現とともに学生時代を過ごした私の世代には胸熱の作品になっています。

またこの作品は全編YouTubeでも収録の様子(ライブ)が公開されており、見ることができます。おすすめは耳だけでオーディオを聴いてから、どんな状況で録音されたのか確認すると楽しいかなと思います。

『Nu Deco Ensemble + Aaron Parks: Live from Miami¬』のリリースは2021年ですが、収録は2019年マイアミThe Light Boxのようです。


Aaron Parks (ピアノ、シンセサイザー、作曲)
Sam Hyken (編曲)
Jacomo Bairos (指揮)
Nu Deco Ensemble(演奏)



01. Siren

Aaron Parksの『Little Big』というアルバムから「Siren」という美くしい曲で幕を開けます。Bマイナーのサウンドが静かに響きメロディーが出現するとコードが徐々に形を変えて次から次にハーモニーを展開します。

パークスのスタイルでもありますが、 共通の音をもたせながら前の和音から次の和音に移動することで、まるで水が流れるかのように自然に曲を展開して行きます。Aセクションの最後2小節の副旋律がストリングスで奏でられBセクションよりオーボエが主旋律をとります。
オリジナルの『Little Big』ではエレクトリック・ギターでしたが、オーボエという、ジャズでは滅多に耳にしないサウンドで演奏されることで、曲本来が持つドラマがより大きく展開されている気がします。そしてまたAセクションに戻るときにはフル・ストリングスがメロディーをとり、展開が一旦クライマックスを迎えます。パークスのスタイルで同じ音を何度も連打してサウンドを作ることがありますが(のちの曲でも出て来ます)、この曲の終わりでもBの音を連打していますが、ここでは木琴がその役割を担っていてとてもインパクトがありました。

メロディーの後のパークスのソロもとても美しく、テンポにとらわれることなく自由に展開しています。このレコーディングでは、耳だけで聞いた時は電子キーボードなのかなと勘違いするぐらいブライトなタッチでピアノを奏でていて印象深いです。
その後またBの連打するセクションが登場し、曲が一旦落ち着きながらゆっくりと展開します。Bを連打しつつベースの音を移動することで世界がガラッと変わる瞬間がとても素晴らしいです。

その後もインタルード的なセクションが曲をクレッシェンドし、新たなセクションでエレキ・ギターとベースがユニゾンを始めます。それによって世界が一気にロックな世界へと様変わりし、最終的なクライマックスを迎えます。このパートのオーケストレーションは非常に素晴らしいです。そして登場するパークスのシンセが一瞬フレンチホルンのような雄叫びをあげつつ旋律を展開し、曲が徐々にディミュニエンドし終わります。

02. Chronos ~ 03. Interlude

ここからM4までは続けて演奏されます。「Chronos」はオリジナルはJoshua Redman, Aaron Parks, Matt Penman, Eric Harlandの頭文字をとって命名されたバンド"James Farm"のアルバム『James Farm』の楽曲。

イントロで出てくる6音の連打の上にメロディーが書かれていて、それらがゆっくりと展開していく曲。Aのメロディーが2回繰り返された後にC#の連打の上で新たなメロディー(Bセクション)が出て来てイントロの部分に戻るというシンプルな構成。その後新たな伴奏パターン(Ostinato)がピアノで提示され、それが持続している上でオーケストラが曲を展開し行きます。

徐々に最高潮に達したところでベースが動き出し、元々のAセクションとBセクションの上でシンセソロが聴けます。このシンセは映像で見る限りパークスではなくNu Decoのメンバーによるものです。その後同じパートの上でパークス自身もシンセソロをとります。左手はピアノで伴奏パターンを常にキープしていますね。

その後、曲は一旦ディミュニエンドし、新しいハーモニーが聴こえて来ます。ただこの間、C#は常に連打されています。C#をキープしつつハーモニーを展開しているのです。その上でドラムソロが奏でられ、徐々にグルーヴへ戻り、シンセソロになってクライマックスへと向かいます。そこから自然とピアノソロになりInterludeへと繋がります。このInterludeは次の曲、「Nemesis」へと導かれます。「Nemesis」はデビュー作『Invisible Cinema』からパークスが演奏し続けて来た代表作です。

04. Nemesis
Nemesisは「報復の女神」のことです。Bの連打とともに激しいロックフィールが奏でられ、ギターで主旋律が演奏されます。一部G#に移りますが、ほぼほぼ終始このB連打をキープしている曲で、パークスの演奏・作曲スタイルを代表する曲でもあると改めて思います。ソロはパークスのシンセサイザーで演奏されたのち、ギタリストに渡されます。グルーヴも曲調もテンションも一曲通して変わらないのもこの曲の特徴です。メロディーも非常にかっこよく何度も演奏されるので是非覚えてください。

このアルバムは映画音楽的でもあり、コンテンポラリー・ジャズでもあり、ピアノ音楽でもあり、ロックでもあります。多くの人に聞いてほしい2021年の傑作だと思います。

それではまた次回。

文:曽根麻央 Mao Soné

Recommend Disc

Title : 『Nu Deco Ensemble + Aaron Parks: Live from Miami』
Artist : Nu Deco Ensemble & Aaron Parks
LABEL : Nu Deco Ensemble
発売年 : 2021年

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【SONG LIST】

01.Siren (Live)
02.Chronos (Live) 
03.Interlude (Live)
04.Nemesis (Live)

【曽根麻央LIVE INFO】

6/18 (SAT)
Open 19:00 | Start 20:00
MAO SONÉ SOLO @ Nardis 柏
<出演>
​曽根麻央 - trumpet & piano
<ご予約・お問い合わせ>
TEL: 04-7164-9469 email : knardis@mac.com

6/21 (Tue)
Open 19:00 | Start 19:30
MAO SONÉ TRIO @ Velera 赤坂
<出演>
​曽根麻央 - trumpet & piano
伊藤勇司- bass
木村紘 - drums

6/22 (Wed)
Open 19:00 | Start 19:30
MAO SONÉ & YUJI ITO @ Apple, YOKOHAMA
<出演>
​曽根麻央 - trumpet & piano
伊藤勇司- bass ​

6/26 (Sun)
Open 18:00 | Start 19:00
MAO SONÉ Solo @ Cabin 本厚木
<出演>
​​曽根麻央 - piano & trumpet
<ご予約・お問い合わせ>
TEL: 046-221-0785

6/27 (Mon)
Start TBA
Good "Jam Session" Parlor @ TBA
<出演>
TBA​

7/20 (Wed)
Open 18:30 | Start 19:30
TAKANA MIYAMOTO & MAO SONÉ @ 渋谷Body & Soul
<出演>
宮本貴奈(pf,vo)
曽根麻央(tp,pf,vo)

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「Monthly Disc Review」アーカイブ曽根麻央
2020.04『Motherland / Danilo Perez』2020.05『Color Of Soil /タイガー大越』2020.06『Passages / Tom Harrell 』2020.07『Inventions And Dimensions / Herbie Hancock』2020.08『Birth Of The Cool / Miles Davis』2020.09『Chet Baker Sings / Chet Baker』2020.10『SFJAZZ Collective2 / SFJAZZ Collective』2020.11『Money Jungle: Provocative In Blue / Terri Lyne Carrington』2020.12『Three Suites / Duke Ellington』2021.01『Into The Blue / Nicholas Payton』2021.02『Ben And "Sweets" / Ben Webster & "Sweets" Edison』2021.03『Relaxin' With The MilesDavis Quintet / The Miles Davis Quintet 』2021.04『Something More / Buster Williams』2021.05『Booker Little / Booker Little』2021.06『Charms Of The Night Sky / Dave Douglas』2021.07『Play The Blues / Ray Bryant Trio』2021.08『The Sidewinder / Lee Morgan』2021.09『Esta Plena / Miguel Zenón』2021.10『Hub-Tones / Freddie Hubbard』2021.11『Concert By The Sea / Erroll Garner』2021.12『D・N・A Live In Tokyo / 日野皓正』2022.1『The Tony Bennett Bill Evans Album / Tony Bennett / Bill Evans』2022.2『Quiet Kenny / Kenny Dorham』2022.3『Take Five / Dave Brubeck』・2022.4『Old And New Dreams / Old And New Dreams』2022.5『Ella Fitzgerald And Louis Armstrong / Ella And Louis』

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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

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Ella and Louis500.jpg


Title : 『Ella And Louis』
Artist : Ella Fitzgerald And Louis Armstrong



【ジャズ界のキングとクイーンによるコラボ作品】


エラ・フィッツジェラルドとルイ・アームストロングという偉大な2人が自然体でミディアム〜バラードのテンポで演奏しています。さらにその伴奏をオスカー・ピーターソンを中心としたリズムセクションが務めるという豪華なアルバム。私自身もこのアルバムを小学生の頃から聴いていて、このアームストロングのソロに合わせて楽器を練習した記憶があります。歌心が最高で、抑揚のつけ方、ビブラート、音と音の間のとりかた、どれも最高です。





ジャズはある種の自然発生した音楽なので創始者を特定するのは難しいですが、ルイ・アームストロングは間違いなく最初にジャズを芸術の域まで到達させた人物であると言われています。
1901年に生まれたアームストロングは1971年に亡くなるまで、アメリカを代表するアーティストとして様々な名演奏を残しました。トランペッターでもありシンガーでもあるアームストロングはその両方において大変大きな影響を後世に与えました。


アームストロング以前のジャズトランペットは主にメロディーを吹くのが精一杯でしたが、そこにアームストロングはクラリネットのテクニックを持ってきました。当時のクラリネットはトランペットの主旋律に寄り添うように、和音をアルペジオで演奏して合いの手を入れる役割が主でした。管楽器は単音楽器なのでピアノのように和音を一度に鳴らすことができません。そこで和音を分散させて演奏するアルペジオを使った即興的な伴奏パートをクラリネットは担当していました。アルペジオは音が跳躍するためトランペットで演奏することは非常に困難ですが、アームストロングはこれをトランペットに取り入れ、主旋律としても使用することで、ジャズの即興演奏のレベルを大きく飛躍させました。


またアームストロングの持つ独特の声が、アメリカのポピュラー音楽の歌唱を変えました。語りかけるような独特な間の取り方、フレーズの終わりに向けてかかるビブラート、シャウトする表現などあります。特にジャズのボーカルとしてはスキャットを初めてレコーディングで取り上げ、ボーカルでの即興演奏の可能性を最初に見出しました。


エラ・フィッツジェラルドもスキャットを得意とするボーカリストで、メロディーも自由自在に楽器のように操り、ボーカルの新しい表現を見出した人です。1917年生まれということでアームストロングよりもディジー・ガレスピーやセロニアス・モンクなどのモダンジャズを生み出した新しい世代のミュージシャンになります。当然フィッツジェラルドの若い頃には、アームストロングは多くのレコーディングをこなしヒットも出していますので、音楽的な影響はかなりあったでしょう。ただフィッツジェラルドはbebop世代で、チャーリー・パーカーやガレスピーより早く、正確な演奏を聴く機会も多かったので、それを歌でも表現可能なことを見事に証明した人の一人です。


Ella Fitzgerald (Vocals)
Louis Armstrong (Trumpet, Vocals)
Oscar Peterson (Piano)
Herb Ellis (Guitar)
Buddy Rich (Drums)
Ray Brown (Bass)




さてこのアルバムは有名なジャズのプロデューサー、ノーマン・グランツが11曲を選曲し、1956年に録音した作品です。アームストロングは持ち味の歌心と独特の間で聴く人を捉えますし、フィッツジェラルドも最高の声と圧倒的な歌唱で感動させます。圧倒的な歌唱と書いてしまうとまるで熱唱しているように捉えられてしまいますが、圧倒的すぎて力が抜けているので、こちらもリラックスして聴ける最高の歌が聴けます。リズムセクションにはオスカー・ピーターソン、ハーブ・エリス、レイ・ブラウン、バディー・リッチというジャズを代表するミュージシャンが参加しており、とても一体感のある豪華なトラックになっています。





どの曲も最高の出来になっていてゆっくりと聴いていただきたいのですが、特に「Cheek To Cheek」は二人のキャラクターが聴こえてきて、この最強のリズムセクションも一体感が特にあります。「Tenderly」はアームストロングのトランペットが心から歌っていて、エンディングでトランペットに絡んでくるフィッツジェラルドも最高です。ぜひ聴いてみてください!

それではまた次回。

文:曽根麻央 Mao Soné





【曽根麻央LIVE INFO】

5/29 (Sun)
Open 15:00 | Start 16:00
MAO SONÉ Solo @ Cabin 本厚木
<出演>
​​曽根麻央 - piano & trumpet


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Recommend Disc

Ella and Louis200.jpg


Title : 『Ella And Louis』
Artist : Ella Fitzgerald And Louis Armstrong
LABEL : Verve Records
発売年 : 1956年


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【SONG LIST】

01.Can't We Be Friends
02.Isn't This A Lovely Day 
03.Moonlight In Vermont
04.They Can't Take That Away From Me
05.Under A Blanket Of Blue
06.Tenderly
07.A Foggy Day 
08.Stars Fell On Alabama
09.Cheek To Cheek
10.The Nearness Of You
11April In Paris




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「Monthly Disc Review」アーカイブ曽根麻央

2020.04『Motherland / Danilo Perez』2020.05『Color Of Soil /タイガー大越』2020.06『Passages / Tom Harrell 』2020.07『Inventions And Dimensions / Herbie Hancock』2020.08『Birth Of The Cool / Miles Davis』2020.09『Chet Baker Sings / Chet Baker』2020.10『SFJAZZ Collective2 / SFJAZZ Collective』2020.11『Money Jungle: Provocative In Blue / Terri Lyne Carrington』2020.12『Three Suites / Duke Ellington』2021.01『Into The Blue / Nicholas Payton』2021.02『Ben And "Sweets" / Ben Webster & "Sweets" Edison』2021.03『Relaxin' With The MilesDavis Quintet / The Miles Davis Quintet 』2021.04『Something More / Buster Williams』2021.05『Booker Little / Booker Little』2021.06『Charms Of The Night Sky / Dave Douglas』2021.07『Play The Blues / Ray Bryant Trio』2021.08『The Sidewinder / Lee Morgan』2021.09『Esta Plena / Miguel Zenón』2021.10『Hub-Tones / Freddie Hubbard』2021.11『Concert By The Sea / Erroll Garner』2021.12『D・N・A Live In Tokyo / 日野皓正』2022.1『The Tony Bennett Bill Evans Album / Tony Bennett / Bill Evans』2022.2『Quiet Kenny / Kenny Dorham』2022.3『Take Five / Dave Brubeck』・2022.4『Old And New Dreams / Old And New Dreams』




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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

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曽根麻央 Monthly Disc Review2022.4_Old And New Dreams_Old And New Dreams:Monthly Disc Review

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Title : 『Old And New Dreams』
Artist : Old And New Dreams






みなさんこんにちは、曽根麻央です。今日はオーネット・コールマンのサイドメン達が集まり結成したバンド「Old and New Dreams」の2枚目のアルバムを紹介したいと思います。


【オーネット・コールマンの音楽を受け継ぐバンド】

「Old and New Dreams」は1976-87年まで活動したバンドで、Dewey Redman、Don Cherry、Charlie Haden、Ed Blackwellといった名手達の演奏を聴くことができます。またメンバー全員が偉大なOrnette Colemanの音楽を受け継いでいて、60年代のfree jazzから、70年代のNYロフトシーンへの繋がりも感じ取れます。

ロフトシーンとはNYマンハッタン、特にSohoなどの今では最高級エリアに、ジャズミュージシャンが多く広いロフトを持っていた時代のことで、そこで夜な夜な集まり実験的なセッションを重ね、音楽的高まりを見ることができました。ロフトを持つミュージシャンはリハーサルやセッションなどに多く利用され、ロフトに集まる仲間はバンドメンバーとして音楽的、人間的繋がりが強固なものになりました。

この『Old and New Dreams』もそんなアツい時代を感じられる一枚です。



Charlie Haden (bass)
Ed Blackwell (drums)
Dewey Redman (Tenor Saxophone, Musette)
Don Cherry (Trumpet, Piano)




01. Lonely Woman
ヘイデンのベースソロが重音を奏で不思議な和音を奏でます。そこからブラックウェルの最高に綺麗なシンバルワークが聞こえてきたと思えば、チェリーとレッドマンのユニゾンで有名な「Lonely Woman」のメロディーが聴こえてきます。「Lonely Woman」はコールマンの59年の代表曲で、『Shape of Jazz to Come』の中に収録されています。ヘイデンとチェリーがオリジナルのレコーディングにも参加しているので聞き比べると面白いでしょう。






オリジナルよりもゆったりと、自由に演奏されて、リズムやハーモニーに関する解釈が20年かけて拡大されていますね。また録音状態も良いのでそういった意味でも楽しめる音源と思います。

ソロに入るとブラックウェルは早いスウィングのパターンを分解し、大きく捉え音楽に隙間を与えてソリストに間を与えています。ヘイデンもそのスペースを利用しベースでハーモニーを作り出しています。チェリーのソロ途中でブラックウェルがマレットに持ち替えてテンポやフィールをガラッと変えているのもとても素晴らしいです。

 Lead and Followというコンセプトがロフトジャズ以降のフリージャズでは大事になっています。もちろんそれ以前のジャズでも大事なのですが。誰かが音楽をリードする時もあれば、サポートに回ることもあるということです。Lead and Followの役回りをうまく立ち回れるかがアンサンブル能力に直結します。


02. Togo
ドラマーのブラックウェルの曲。インディアンやアフリカのリズムに影響を受けて書いたのがわかる一曲です。ブラックウェルのカウベルを導入したドラムがフィーチャーされます。


03. Guinea
ドン・チェリーの曲。ギニアは西アフリカの国の名前です。この時代よりチェリーは多くの民俗音楽に影響を受けた作品を多く残していますのでこれもそんな曲なのかもしれません。特徴的な5音階で書かれたベースラインがとてもかっこいいですね。この5音階はアフリカの音楽でよく歌われるものです。レッドマンのソロで急にピアノが演奏されていますが、おそらくチェリーが衝動的に弾いている音と思われます。


04. Open Or Close
オーネット・コールマンの曲。やはり彼の曲はスタイルがあり聴くだけでわかりますね!早いスウィングの上に2管編成で演奏される独特のメロディーライン。まるで興味深いおしゃべりや雑談を聞かされているかのような雰囲気があります。このオーネットスタイルを作り上げた人たちが、このスタイルをオーネット抜きで再構築している様はとても興味深いですね。


05. Orbit of La-Ba
レッドマンの曲。いわゆる中国の楽器、チャルメラをレッドマンが吹いています。チャルメラというと我々日本人にはラーメンフレーズしか出てきませんが、こんなにも沢山のクリエイティブなフレーズが出てくるものなのかと楽器の価値を再認識させてくれるトラックになっています。曲の途中、トランペットとチャルメラのみのパートもあり、かなり意外なサウンドになっていると思います。またベースも特殊なチューニングでノイズの乗るようなサウンドにしていて、それが楽曲全体の大きなカラーとなっています。


06. Song For The Whales
ヘイデンの曲。かなりアンビエント色の強いトラックです。ヘイデンは終始アルコ(弓)でイルカの鳴き声のようにベースを演奏しています。そこに呼応するようにチェリーも参加してきます。5分ぐらい経過してようやくテーマが演奏されます。早いスウィングのフレーズをブラックウェルが奏で、その後ろでヘイデンは強烈な弓のサウンドを終始連打しています。メロディーは「Lonely Woman」のようにリズムとは関係なくルバートで展開されています。

バンドでの一体感のある音楽を、各々の興味のある題材を取り入れながら自由に作っていてとても良いですね。私曽根も来月は自分のバンドで全国のみなさんの元に行きます!各地でお会いできると嬉しいです!


それではまた次回。


文:曽根麻央 Mao Soné


【曽根麻央LIVE INFO】

【Brightness of the Lives Release Tour】
5/17(火) 蔭凉寺 岡山
5/18(水)ビルボード・ライブ大阪
5/19(木) ミスター・ケニーズ 名古屋
5/20(金) ライフタイム 静岡

【Member】
曽根麻央 - trumpet, piano & keybord
井上銘 - guitar
山本連 - bass
木村紘 - drums
全国各地の皆様にお目にかかれるのをメンバー一同心より楽しみにしております。是非お近くの会場まで足をお運びください。待ってます!


曽根麻央のその他情報はウェブサイトへ



Recommend Disc

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Title : 『Old And New Dreams』
Artist : Old And New Dreams
LABEL : ECM Records
発売年 : 1979年



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【SONG LIST】

01.Lonely Woman
02.Togo 
03.Guinea
04.Open Or Close
05.Orbit Of La-Ba
06.Song For The Whales




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「Monthly Disc Review」アーカイブ曽根麻央

2020.04『Motherland / Danilo Perez』2020.05『Color Of Soil /タイガー大越』2020.06『Passages / Tom Harrell 』2020.07『Inventions And Dimensions / Herbie Hancock』2020.08『Birth Of The Cool / Miles Davis』2020.09『Chet Baker Sings / Chet Baker』2020.10『SFJAZZ Collective2 / SFJAZZ Collective』2020.11『Money Jungle: Provocative In Blue / Terri Lyne Carrington』2020.12『Three Suites / Duke Ellington』2021.01『Into The Blue / Nicholas Payton』2021.02『Ben And "Sweets" / Ben Webster & "Sweets" Edison』2021.03『Relaxin' With The MilesDavis Quintet / The Miles Davis Quintet 』2021.04『Something More / Buster Williams』2021.05『Booker Little / Booker Little』2021.06『Charms Of The Night Sky / Dave Douglas』2021.07『Play The Blues / Ray Bryant Trio』2021.08『The Sidewinder / Lee Morgan』2021.09『Esta Plena / Miguel Zenón』2021.10『Hub-Tones / Freddie Hubbard』2021.11『Concert By The Sea / Erroll Garner』2021.12『D・N・A Live In Tokyo / 日野皓正』2022.1『The Tony Bennett Bill Evans Album / Tony Bennett / Bill Evans』2022.2『Quiet Kenny / Kenny Dorham』2022.2『Take Five / Dave Brubeck』




Reviewer information

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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

曽根麻央Official Site

曽根麻央 Monthly Disc Review2022.3_Dave Brubeck_Take Five:Monthly Disc Review

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Title : 『Take Five』
Artist : Dave Brubeck



みなさんこんにちは、曽根麻央です。先日はブルーノート東京「Brightness of the Lives Release Live」に足をお運びいただきありがとうございました。本当にびっくりするぐらい沢山の方にご来場いただき感謝いたします。このバンドでは5月に中国、関西、東海道ツアーをしますので是非観に来てください!

【Brightness of the Lives : Album Release Tour】 曽根麻央(tp/fgh/p/keys) 井上銘(gt) 山本連(eb) 木村紘(ds) 5/17(火) 蔭凉寺 岡山 5/18(水) ビルボード・ライブ大阪 5/19(木) ミスター・ケニーズ 名古屋 5/20(金) ライフタイム 静岡


【デイヴ・ブルーベック、おすすめライブ盤】

1982年のモントルー・ジャズ・フェスティバルでのデイヴ・ブルーベック・カルテットの演奏は有名盤ではないが人の心を熱く燃え上がらせる不思議な力があると僕は思います。僕自身、小学生の頃にこのアルバムをスウィングジャーナルの元編集長で地元が一緒で大変お世話になった、故・児山紀芳先生から譲り受けていらい、ずっと憧れて来たアルバムです。ピアノとエレクトリック・ベースとドラムが一体となって作り出す、アコースティックにはない熱量は小学生の僕には大変新鮮なものでした。もちろん「Time Out」などのオリジナルの音源は当時から聴いていましたが、こちらのライヴ盤の方がよりグルーヴ感がより好みだったのを覚えています。このライヴ盤のバンド・サウンドを聴いていなければ僕の現在のバンド「Brightness of the Lives」の構想には至らなかったかもしれません。



Dave Brubeck (piano)
Bill Smith (clarinet)
Chris Brubeck (electric bass)
Randy Jones (drums)




正直あまり名前を見ないミュージシャンも多くいますので、短く紹介します。

Bill Smithはクラリネット奏者でジャズとクラシックの両方の音楽性をマスターしている人物。のちにアメリカを代表する作曲家ガンター・シュラーに「The Third Stream」と名付けられたクラシックとジャズの融合を50年代に試みた取り組みを行った人物の一人です。ブルーベックとは長いキャリアを通してコラボをしています。
Chris BrubeckはDave Brubeckの息子でベーシストだけでなくベース・トローンボーン奏者。このアルバムでもBig Bad Basieで素晴らしいソロを披露しています。
Randy Jonesはメナード・ファーガソンやトニー・ベネットとも演奏しているドラマーです。


01. Tritonis
独特のベースラインの上で展開される5拍子の曲です。1980年の『Dave Brubeck Quartet』というアルバムに入っている曲です。Daveの力強いタッチがピアニストとしての力量を感じさせます。クラリネットのソロの伴奏でもジャズでは珍しいぐらいとてもシンプルではっきりとしたハーモニーを使い、リズムもわかりやすく提示しています。ブルーベックのソロはどこか中東の雰囲気を残しつつ、ブルースのスタイル、ラテンのモントゥーノのスタイル、クラシカルなスタイルを行き来する自由なもの。これは国外の音楽に自己の音楽のヒントを得たブルーベック独特の表現と言えるでしょう。


02. Koto Song
日本の音階に影響を受けて書いた一曲。小泉文夫氏の著書『日本の音』よりスケールの分類を拝借するとしたら都節音階を用いたブルース形式の曲。ブルーベックのピアノが日本の独特な間と空気感を独自の解釈で表現していてとても面白い一曲です。それに続くBill Smithはディレイのエフェクターを使いスケールできることを極限まで展開しているのが魅力です。それにしてもBill Smithのクラリネットの技量と歌心に驚かされます。ダイナミックの豊かなことですね!


03. Out Of The Way Of The People
C一発のスピード感のある楽曲。短いテーマの後にBill SmithとDave Brubeckの同時インプロヴィゼーションが凄まじいエネルギーとともに展開されます。その後はRandy Jonesのドラムソロをフィーチャーしています。


04. Big Bad Basie
Dave Brubeckはよく別アーティストの特徴を捉えて自己の楽曲を制作することがありました。これもそんな一曲かと予想します。ど直球のベイシー風のスウィング曲。Dave Brubeckのストライド・ピアノまで聴けるある意味珍しいテイクです。Chris Brubeckは途中ベースからベース・トロンボーンに持ち替え素晴らしいソロを展開しています。


05. What Did I Do To Be So Black And Blue
Chris Brubeckのベース・トロンボーンをフィーチャーした一曲。ルイ・アームストロングが歌った名曲で、人種差別の悲しさを歌った一曲です。


06. Take Five
言わずと知れた名曲ですね。Paul Desmondが作曲してDave Brubeckのバンドで演奏し、アメリカの歴史に残る名曲となりました。おそらくジャズ史上一番有名になった変拍子(5拍子)の曲でもあります。メロディーはAABBAAですが、ソロは有名なVampの上で展開され、モードジャズの影響も感じることができる作品です。このテイクではソロをさらにストレッチして、Brubeckの大胆なソロも聞くことができます。
というのもオリジナル・バージョンである『Time Out』の中のテイクではメンバー全員が5拍子に慣れておらず、20テイク以上録音したという説があります。当時のジャズは1-2テイクが主流でしたからこれは異常な事態です。そのためDave Brubeckは基本パターンに忠実に終始キープに務めたと考えられます。この82年の時期には5拍子は普通の表現となったので、より自由にピアノをフルに活用したソロを聞くことができます。


07. Benjamin
Dave Brubeckの子供の名前からとったというこのタイトル。ラテン分のグルーヴの上で構成されるシンプルな明るいメロディーが特徴。


08. Blue Rondo A La Turk
Dave Brubeckの代表作品。トルコのリズム2+2+2+3のまとまりの9拍子にヒントを得て、それを基盤に展開される非常によくできた楽曲。ソロ部分はシンプルなFブルースになっており、そこが聴衆の興奮を最高潮に高めます


それではまた次回。


文:曽根麻央 Mao Soné


【曽根麻央LIVE INFO】

---3月---

・3/31 (木) @ 柏Nardis
 曽根麻央(tp/p) 高橋佳輝(b) 山崎隼(ds)
 今回は初の組み合わせのトリオ!素晴らしい高橋佳輝のベースに20歳のドラマー山崎隼と作り上げるサウンドはどうなるのか、今から楽しみです。

---4月---

・4/2 (土) @ 本厚木キャビン
 丈青(p) 曽根麻央(tp/fgh)
 恒例となった、ソイル&ピンプセッションズの丈青さんとのこのデュオは、美しいメロディーとその世界観を大事に、二人にしか出せない響きをお届けします。

・4/5(火) @ 赤坂Velera
 MAO SONÉ Trio
 曽根麻央のレギュラートリオ!in 赤坂!

・4/11(月) @ 柏Nardis
 MAO SONÉ Trio
 曽根麻央のレギュラートリオ!in 柏!

・4/14 (木) @ TBA
 ?????
 (情報解禁をお待ちください)

・4/15 (金) @ 古河アップス
 宮本貴奈 ソロピアノ&弾き語り
 Special Guest: 曽根麻央 (Tp/Pf)

・4/17 (日) @ 小岩コチ
 曽根麻央(p/tp) 伊藤勇司(b)
 私と長年コンビを組む伊藤とのデュオ!トリオとはまた違った呼吸の相方を楽しみに聞きに来てください!

・4/18 (月) @ TBA
 ?????
 (情報解禁をお待ちください)

・4/19 (火) @ 横浜Apple
 若井優也(b)& 曽根麻央

・4/24(日)@ 本厚木キャビン
 MAO SONÉ Solo
 同じく本厚木のキャビンで恒例の曽根麻央のソロ!JAZZスタンダードを中心に心地よくグルーヴします!

・4/26 (火) @ 渋谷クラシックス
 曽根麻央クインテット
 片倉真由子(p) 松丸契(sax) 伊藤勇司(b) 木村紘(ds)
 アーツカウンシル東京の助成を受け、映像と音源をライブ収録いたします。ピアノも調律師を当日ずっと入れて万全の音環境で望みます。この機会をお見逃しなく。

・4/27 (水) @ 渋谷Body & Soul
 曽根麻央(pf,tp) 苗代尚寛(g) シン・サカイノ(b) 小田桐和寛(ds)
 ボストン=ニューヨーク・コネクション!久々のこのメンバーでボストンのホーム、ウォーリーズに帰ったかのような気持ちで演奏します。

・4/30 (土) @ 水戸 Girl Talk
 二台のピアノによる DUO
 若井優也 & 曽根麻央
 ベヒシュタインとヤマハのグランドピアノを2台並べて行うライブです。お相手は尊敬するピアニストの若井優也さん。調律は大信頼の井手雄一氏。

---5月---

【Album Release Tour】
曽根麻央、井上銘、山本連、木村紘
5/17(火) 蔭凉寺 岡山
5/18(水)ビルボード・ライブ大阪
5/19(木) ミスター・ケニーズ 名古屋
5/20(金) ライフタイム 静岡
9/23(金・祝) TBA


【そのほかのリーダーライブ】
5/14 (土) 曽根麻央トリオ@ 渋谷Body&Soul
5/15 (日) @ 本厚木キャビン
5/23 (月) 石川紅奈&曽根麻央 @ Apple 横浜
5/29(土) @ 本厚木キャビン


---その他のサポートライブ---
3/19 ユッコ・ミラー @甲府ジャズフェス
4/7 鈴木宏紀 @ Alfie
4/10 Kalta Otsuki @ Satin Doll
4/25 Kensuke Miyaki Big Band @ Bb Akasaka
5/1~5/6 Support Tour @ TBA
5/8 Masahiko Osaka @ Satin Doll


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Recommend Disc

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Title : 『Take Five』
Artist : Dave Brubeck
LABEL : Prism Leisure
発売年 : 2000年



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【SONG LIST】

01.Tritonis
02.Koto Song 
03.Out Of The Way People
04.Big Bad Basie
05.(What Did I Do To Be So) Black And Blue
06.Take Five
07.Benjamin
08.Blue Rondo A La Turk




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「Monthly Disc Review」アーカイブ曽根麻央

2020.04『Motherland / Danilo Perez』2020.05『Color Of Soil /タイガー大越』2020.06『Passages / Tom Harrell 』2020.07『Inventions And Dimensions / Herbie Hancock』2020.08『Birth Of The Cool / Miles Davis』2020.09『Chet Baker Sings / Chet Baker』2020.10『SFJAZZ Collective2 / SFJAZZ Collective』2020.11『Money Jungle: Provocative In Blue / Terri Lyne Carrington』2020.12『Three Suites / Duke Ellington』2021.01『Into The Blue / Nicholas Payton』2021.02『Ben And "Sweets" / Ben Webster & "Sweets" Edison』2021.03『Relaxin' With The MilesDavis Quintet / The Miles Davis Quintet 』2021.04『Something More / Buster Williams』2021.05『Booker Little / Booker Little』2021.06『Charms Of The Night Sky / Dave Douglas』2021.07『Play The Blues / Ray Bryant Trio』2021.08『The Sidewinder / Lee Morgan』2021.09『Esta Plena / Miguel Zenón』2021.10『Hub-Tones / Freddie Hubbard』2021.11『Concert By The Sea / Erroll Garner』2021.12『D・N・A Live In Tokyo / 日野皓正』2022.1『The Tony Bennett Bill Evans Album / Tony Bennett / Bill Evans』2022.2『Quiet Kenny / Kenny Dorham』




Reviewer information

maosona_A.png

曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

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曽根麻央 Monthly Disc Review2022.2_ Kenny Dorham_ Quiet Kenny:Monthly Disc Review

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Title : 『Quiet Kenny』
Artist : Kenny Dorham



みなさんこんにちは、トランペットとピアノの曽根麻央です。さて今回はジャズトランペットの代表的存在、ケニー・ドーハムの『Quiet Kenny』についてお話しします。もうすでにたくさんの方がご存知のこのアルバムですが、改めてケニー・ドーハムのトランペッター、そして曲としての素晴らしさを再認識できたら良いなと考えております。


本題に入る前に曽根麻央の最新アルバム発売についてお知らせします。2/9に発売しました最新作『Brightness of the Lives』はアマゾン等で販売開始しております。是非お手にとって聴いていただけると嬉しいです。
 私が学生時代より一緒に活動している、井上銘、山本連、木村紘といったメンバーと作り上げたバンドサウンドが凝縮されています。またゲストに世界的なパーカッショニスト二階堂貴文を迎えてサウンドに新たな風を呼び込みました。




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Title : 『Brightness of the Lives』
Artist : 曽根麻央
LABEL : リボーンウッド
NUMBER : RBW-0022
RELEASE : 2022.2.9



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【SONG LIST】


01. Prelude
02. Luminous
03. Drum Hero
04. Home
05. Quiet Cinema
06. Air
07. Lives
08. You Are Not Alone
09. Gathering At Park Drive
10. Always And Forever





【リリースツアー】
3/12(土) ブルーノート東京
5/18(水) ビルボードライブ大阪
5/19(木) Mr. Kenny's 名古屋
5/20(金) Life Time 静岡




【名盤『Quiet Kenny』再検証】

ケニー・ドーハムの『Quiet Kenny』はジャズトランペットのアルバムの代表格です。1曲目の「Lotus Blossom」はトランペッターなら必ずコピーして練習する曲の一つです。

ドーハムの特徴は、美しいソロのラインを訥々としたスクエアなアーティキュレーションで演奏することです。録り音はとても柔らかい印象ですが当時のバップトランペッターの中では最も音量が大きかったという噂を聴いたことがあります。が、今となって真偽は確かめられませんね。また少しフレーズの最初の音をしゃくりあげるようなベンディングで雰囲気を作るのも特徴です。スクエアなアーティキュレーションなのでドラムのスネアのようなリズミックな演奏が可能です。ダイナミックスと音域はそこまで広くないですが、それを必要としないメロディーセンスが素晴らしいです。それではメンバーを見てみましょう。



Kenny Dorham - trumpet
Tommy Flanagan - piano
Paul Chambers - bass
Art Taylor - drums




言わずとしれたジャズの名手ぞろいです。

録音に関してはトランペットがかなりマイクに近い印象で、ドラムのスネアに独特のリバーブが効いていてそれがどこか心地よいサウンド作りになっています。



01. Lotus Blossom
「蓮の花」と日本語のタイトルも付いている曲。ドーハムの代表曲でフレディー・ハバードやその他のジャズレジェンドにも多くカバーされている名曲。ドーハムの作曲家としての素晴らしい一面を捉えた楽曲でしょう。

イントロではインパクトのあるライドシンバルで始まり、次の瞬間にはベースが細かいラインを奏で、どこかアジアを連想させるような完全4度と5度で作られたハーモニーがピアノで奏でられます。
そのモチーフから作られたメロディーがドーハムによって演奏され曲が聞こえてきます。曲自体はAABAフォームというジャズの一般的な形式ですが、拍子が複雑に入り組んでいてこの曲を唯一無二の存在としています。AABAフォームとは8小節の基本となるメロディー(Aセクション)が二回繰り返されたのち、それに続くように違うメロディーが8小節演奏され、最後に最初と同じAのメロディーに戻る形式です。真ん中の一回しか出てこないメロディーがAと最後のAを架け橋のようにつなぐことから「ブリッジ(B)」と呼ばれます。

Lotus BlossomではAセクション最初の4小節は3/4(もしくは6/8)で書かれています。そしてその3のまとまり感をキープしつつ、後半の4小節では4拍子になり、3のまとまりがアクセントやシンコペーションとして機能する素晴らしい作りになっています。シンコペーションとはリズム的に面白さを出すために予想外の拍に強拍を置くことです。
このように展開が細かいとグルーヴは停滞しているように聞こえるのですが、そこでBセクションは思いっきりスウィングして曲を前へ進める対の役割を担っています。

ソロセクションは普通に4拍子でとても綺麗なソロをドーハムがとっています。スクエアなタンギングとニュアンスがとても特徴的なドーハムなのソロ。しかし作られるメロディーが綺麗なので、カクカクしている感じには聞こえず歯切れ良いといった感じに聞こえると思います。

このスクエアなニュアンスは是非ジャズを勉強する人はみにつけてみてください。跳ねない、スキップしないスウィング。とても大事です。


02. My Ideal
チェット・ベーカーの歌でもおなじみのスタンダード曲。トミー・フラナガンの美しいイントロに続いて現れるドーハムの音色は、バケット・ミュートというバケツのような形をした裏に綿を詰めトランペットのベルに被せるように使うミュートを使っているので、音がすごく柔らかくなっています。最初の音を少しベンディングさせて雰囲気を作るのはドーハムのバラードを吹く時の特徴かもしれません。バラードでもソロではほぼ全部の8分音符にタンギングをつけてかなり訥々としてスクエアな演奏ではありますが、それが美しいメロディーラインを際立たせています。


03. Blue Friday
ドーハム作曲のマイナー・ブルース曲。シンプルなメロディーで覚えやすい曲です。この曲を聞くと思うのですが、当時のミュージシャンは必ずと言っていいほどブルースの曲を1曲は収録しています。そしてそんな歴代の演奏にポール・チェンバースは一体どれだけ参加したのでしょう?おそらく数えきれないブルースに参加していることと思います。このテイクでも完璧なベースラインを見せてくれています。ポール・チェンバースのすごさに関しては『Inventions And Dimensions / Herbie Hancock』の回でも解説しているので読んでみてください。


2020.7.15『Inventions And Dimensions / Herbie Hancock』


04. Alone Together
様々なミュージシャンがカバーしているジャズスタンダード。通常楽器ではDマイナーで 早めのテンポで演奏することが多いです。しかし、ドーハムはFマイナーでバラードとして演奏しているのでなんだか違う曲を聴いているような不思議な気分になりました。こちらのバラードでもフレーズの最初の音を少ししゃくりあげてベンディングすることでニュアンスを作る場面が多いので、やはりドーハムのバラードの歌い方の特徴が聞き取れます。


05. Blue Spring Shuffle
こちらもマイナー・ブルースの曲。本当にこの時代のジャズメンはマイナー・ブルースが好きですね!なかなか今の時代にミディアムのブルース2曲を1アルバムに入れる構成はしないですが、遊びのある時代のジャズを象徴しているとも言えます。


06. I Had The Craziest Dream
ストレートに演奏されていますが、ドーハムの良さが詰まった演奏です。先ほどから繰り返している淡々と訥々とした演奏、そしてしゃくり上げるような独特なニュアンスはもちろん、それに加え素晴らしいタイム感、絶妙なフレーズの始まりと終わり方など、素晴らしいソロを聞くことができます。決して広い音域を使っている訳でも、ダイナミックスが豊かな訳でもないですが、音楽的で美しいラインを歌い上げています。


07. Old Folks
ゆったりとしたスウィングで演奏されるスタンダード曲。こちらは3連音符を基調にしたソロの作り方になっていて統一感のある内容になっています。


08. Mack The Knife
アート・テイラーとトランペットの呼応がとても気持ちよくサウンドしているトラック。ドーハムのリズムのモチーフに反応してテイラーがそれに続いているのが、音楽的にこのオーソドックスなスタイルの演奏の中でも面白さを提供しています。


それではまた次回。


文:曽根麻央 Mao Soné





【曽根麻央LIVE INFO】

2/17 (Thu)
20:00 ~ 21:00
映画「トランペット」上映, トーク & トランペット演奏
@ キネマ旬報シアター (柏高島屋ステーションモール S館隣り)
劇場公式サイト
<「ブライトネス・オブ・ザ・ライヴス」発売記念 曽根麻央トーク&演奏付き短編映画上映>
場所 : スクリーン③
料金 : 一般 1500円 / シニア 1100円 / 大学 1000円 / 高校生以下 500円
20 : 00 ~ 20 : 17 頃 映画『トランペット』上映
20 : 17 ~ 21 : 00 頃 曽根麻央の舞台挨拶・トランペット演奏
終了後、CD 購入者にサイン会予定


2/18 (Fri)
20:00 ~ 21:00
映画「トランペット」上映, トーク & トランペット演奏
@ キネマ旬報シアター (柏高島屋ステーションモール S館隣り)
劇場公式サイト
<「ブライトネス・オブ・ザ・ライヴス」発売記念 曽根麻央トーク&演奏付き短編映画上映>
場所 : スクリーン③
料金 : 一般 1500円 / シニア 1100円 / 大学 1000円 / 高校生以下 500円
20 : 00 ~ 20 : 17 頃 映画『トランペット』上映
20 : 17 ~ 21 : 00 頃 曽根麻央の舞台挨拶・トランペット演奏
終了後、CD 購入者にサイン会予定


2/19 (SAT)
Open 16:00 | Start 16:30
MAO SONÉ Trio @ Velera 赤坂
<出演>
​曽根麻央 - trumpet & piano
伊藤勇司 - bass
木村紘 - drums
<ご予約・お問い合わせ>
TEL: 03-6277-8772


2/24 (Thu)
Open 18:00 | Start 19:00
MAO SONÉ Solo @ Cabin 本厚木
<出演>
​曽根麻央 - trumpet & piano
<ご予約・お問い合わせ>
TEL: 046-221-0785


2/25 (FRI)
Open 19:00 | Start 20:30
MAO SONÉ Trio @ Nardis 柏
<出演>
​曽根麻央 - trumpet & piano
伊藤勇司 - bass
木村紘 - drums
<ご予約・お問い合わせ>
TEL: 04-7164-9469 email : knardis@mac.com


3/12 (SAT)
[1st]Open3:30pm | Start4:15pm
[2nd]Open6:30pm | Start7:30pm
MAO SONÉ "Brightness of the Lives"
Release Live @ Blue Note Tokyo
<出演>​
曽根麻央(トランペット、ピアノ、キーボード)
井上銘(ギター)
山本連(ベース)
木村紘(ドラムス)
Guest:
二階堂貴文(パーカッション)


曽根麻央のその他情報はウェブサイトへ



Recommend Disc

quietkenny200.jpg


Title : 『Quiet Kenny』
Artist : Kenny Dorham
LABEL : Prestige/New Jazz
発売年 : 1960年



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【SONG LIST】

01.Lotus Blossom
02.My Ideal 
03.Blue Friday
04.Alone Together
05.Blue Spring Shuffle
06.I Had The Craziest Dream
07.Old Folks
08.Mack The Knife




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「Monthly Disc Review」アーカイブ曽根麻央

2020.04『Motherland / Danilo Perez』2020.05『Color Of Soil / タイガー大越』2020.06『Passages / Tom Harrell 』2020.07『Inventions And Dimensions / Herbie Hancock』2020.08『Birth Of The Cool / Miles Davis』2020.09『Chet Baker Sings / Chet Baker』2020.10『SFJAZZ Collective2 / SFJAZZ Collective』2020.11『Money Jungle: Provocative In Blue / Terri Lyne Carrington』2020.12『Three Suites / Duke Ellington』2021.01『Into The Blue / Nicholas Payton』2021.02『Ben And "Sweets" / Ben Webster & "Sweets" Edison』2021.03『Relaxin' With The MilesDavis Quintet / The Miles Davis Quintet 』2021.04『Something More / Buster Williams』2021.05『Booker Little / Booker Little』2021.06『Charms Of The Night Sky / Dave Douglas』2021.07『Play The Blues / Ray Bryant Trio』2021.08『The Sidewinder / Lee Morgan』2021.09『Esta Plena / Miguel Zenón』2021.10『Hub-Tones / Freddie Hubbard』2021.11『Concert By The Sea / Erroll Garner』2021.12『D・N・A Live In Tokyo / 日野皓正』2021.1『The Tony Bennett Bill Evans Album / Tony Bennett / Bill Evans』




Reviewer information

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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

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