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曽根麻央 Monthly Disc Review2025.05_Louis Armstrong: Hot Five & Hot Seven:Monthly Disc Review

louis500.jpg



Title : Hot Five & Hot Seven
Artist : Louis Armstrong



皆さんこんにちは、曽根麻央です。
今日はこれまであまり取り上げてこなかった、ジャズの最も歴史的な録音の一つについてお話ししたいと思います。


この時代、まだ「アルバム」という形で楽曲をまとめて発表する文化はほとんどなく、基本的にシングル(SP盤)として一曲ずつリリースされていました。今回はその中から、ジャズの歴史において極めて重要な7曲を厳選してご紹介します。


Louis Armstrong - Hot Five / Hot Seven


ジャズ史上最も偉大な存在のひとり、ルイ・アームストロング。
1925年から1928年頃に録音された、彼の初期キャリアを代表する録音セッションが「Hot Five(ホット・ファイブ)」および「Hot Seven(ホット・セブン)」です。


Hot Fiveは文字通り5人編成で、アームストロングのコルネット(のちにトランペット)に、クラリネット、トロンボーン、バンジョー、ピアノという構成。
後のHot Sevenでは、これにチューバやドラムスが加わり、より厚みのあるアンサンブルになっています。
ピアノには、アール・ハインズ(Earl Hines)が後期セッションで参加しており、その革新的な演奏スタイルはジャズ・ピアノの未来を切り拓きました。
それ以前のジャズ(特にニューオリンズ・スタイル)では、管楽器が同時に集団即興(コレクティブ・インプロヴィゼーション)を行うスタイルが主流で、いわゆる「ソロ」はほとんど存在していませんでした。
しかしHot Fiveでは、アームストロングが明確なソリストとしてフィーチャーされ、トロンボーンやクラリネットは伴奏的な役割に回るなど、モダン・ジャズに通じる「ソロ重視」の形式が初めて明確に表現されるようになります。これは、ジャズ即興演奏の概念を大きく進化させた革命的な出来事でした。


Cornet Chop Suey

3管編成ながら、クラリネットとトロンボーンはほぼバッキングに回り、アームストロングのコルネット・ソロが際立ちます。ピアノも、当時主流だったストライド奏法(左手がベース音と和音を交互に演奏するスタイル)を見事に披露し、アンサンブル全体にリズムと推進力を与えています。


Heebie Jeebies

アームストロングがスキャット唱法を録音で初めて披露したとされる伝説的なトラックです。
録音中に歌詞カードが落ちたため即興でスキャットに切り替えた、という逸話が有名ですが、近年ではこのエピソードには演出の可能性も指摘されています。とはいえ、スキャット・ボーカルを世に広めた記念碑的録音であることは間違いありません。


Muskrat Ramble

この曲はトロンボーンやクラリネットのソロも大きくフィーチャーされ、アンサンブル全体の高い即興能力が際立ちます。
それぞれのミュージシャンが順番にフィーチャーされる構成は、後のジャズ・コンボのスタイルにも強い影響を与えました。


Gut Bucket Blues

初期の録音で、ブルース形式に基づいたシンプルな構成。
ピアノはストライド奏法の影響が色濃く、バンジョーとともにリズムを支えています。ブギウギ的要素はここではまだ少ないものの、当時のスタイルをよく反映しています。


Potato Head Blues

アームストロングのソロが、単なるアルペジオにとどまらず経過音を多用し、滑らかで歌うようなラインを構築しています。
中間部のブレイク(バンドが止まり、ソロだけが残る)では彼のリズム感と創造性が際立ち、即興演奏の可能性を大きく押し広げた名演です。


Struttin'With Some Barbecue

作曲はアームストロングの妻であり、ピアニストのリル・ハーディン・アームストロング。
トランペットの早いパッセージと高音域のクリアな演奏が光る、技術と音楽性の融合が見られる楽曲です。


West End Blues

こちらは「Hot Seven」名義で録音された名曲で、ジャズ史を代表する一曲。
冒頭のトランペット・カデンツァはあまりにも有名で、現在でも世界中のトランペッターが練習する定番のフレーズです。
また、トロンボーン、クラリネット、ピアノそれぞれのソロも魅力的で、まさにモダンジャズの原型とも言える作品です。


録音技術についての逸話
当時の録音ではマイクは1本のみ使用されるのが一般的で、音量バランスは演奏者の立ち位置で調整していました。
アームストロングの音量が大きすぎて、部屋の外から吹かざるを得なかったという逸話も残っていますが、これには多少の誇張があるかもしれません。とはいえ、彼の存在感と音色の力強さを象徴するエピソードです。


この時代のアームストロングの録音は、後のジャズの基礎となるソロ表現、即興の自由さ、アンサンブルの構造を切り拓いたものであり、今日に至るまで多くのミュージシャンに影響を与え続けています。
今回ご紹介した7曲も、ぜひ注意深く聴いてみてください。何度聴いても新たな発見があるはずです。


文:曽根麻央 Mao Soné



Recommend Disc

louis200.jpg
Title :『Hot Five & Hot Seven』
Artist : Louis Armstrong
LABEL : MCA Records



【SONG LIST】

01. Cornet Shop Suey
02. Heebie Jeebies
03. Georgia Grind
04. Muskrat Ramble
05. King Of The Zulus
06. Snag It
07. Wild Man Blues
08. Potato Head Blues
09. Weary Blues
10. Gully Low Blues
11. Struttin' With Some Barbecue
12. Hotter Than That

※数あるHot Five & Hot Seven 録音の一部作品として紹介




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「Monthly Disc Review」アーカイブ曽根麻央
2020.04『Motherland / Danilo Perez』2020.05『Color Of Soil /タイガー大越』2020.06『Passages / Tom Harrell 』2020.07『Inventions And Dimensions / Herbie Hancock』2020.08『Birth Of The Cool / Miles Davis』2020.09『Chet Baker Sings / Chet Baker』2020.10『SFJAZZ Collective2 / SFJAZZ Collective』2020.11『Money Jungle: Provocative In Blue / Terri Lyne Carrington』2020.12『Three Suites / Duke Ellington』2021.01『Into The Blue / Nicholas Payton』2021.02『Ben And "Sweets" / Ben Webster & "Sweets" Edison』2021.03『Relaxin' With The MilesDavis Quintet / The Miles Davis Quintet 』2021.04『Something More / Buster Williams』2021.05『Booker Little / Booker Little』2021.06『Charms Of The Night Sky / Dave Douglas』2021.07『Play The Blues / Ray Bryant Trio』2021.08『The Sidewinder / Lee Morgan』2021.09『Esta Plena / Miguel Zenón』2021.10『Hub-Tones / Freddie Hubbard』2021.11『Concert By The Sea / Erroll Garner』2021.12『D・N・A Live In Tokyo / 日野皓正』2022.1『The Tony Bennett Bill Evans Album / Tony Bennett / Bill Evans』2022.2『Quiet Kenny / Kenny Dorham』2022.3『Take Five / Dave Brubeck』・2022.4『Old And New Dreams / Old And New Dreams』2022.5『Ella Fitzgerald And Louis Armstrong / Ella And Louis』2022.6『Live from Miami / Nu Deco Ensemble & Aaron Parks』2022.7『Oscar Peterson Trio + One / Oscar Peterson Trio Clark Terry』2022.8『Ugetsu/ Art Blakey & The Jazz Messengers』2022.9『Sun Goddess / Ramsey Lewis』2022.10『Emergence / Roy Hargrove Big Band』2022.11『Speak No Evil / Wayne Shorter』2022.12『The Revival / Cory Henry』2023.1『Complete Communion / Don Cherry』2023.2『Your Mother Should Know: Brad Mehldau Plays The Beatles / Brad Mehldau』2023.3『Without a Net / Wayne Shorter』2023.4『LADY IN LOVE / 中本マリ』2023.5『Songs Of New York / Mel Torme』2023.6『Covers / James Blake』2023.7『Siembra / Willie Colón & Rubén Blades』2023.8『Undercover Live at the Village Vanguard / Kurt Rosenwinkel』2023.09『Toshiko Mariano Quartet / Toshiko Mariano Quartet』2023.10『MAINS / J3PO』2023.11『Knower Forever / Knower』2023.12『Ella Wishes You A Swinging Christmas / Ella Fitzgerald』2024.01『Silence / Charlie Haden with Chet Baker, Enrico Pieranunzi, Billy Higgins』2024.02『Rhapsody in Blue Reimagined / Lara Downes』2024.03『Djesse Vol. 4 / Jacob Collier』2024.04『Voyager / Moonchild』2024.05『Evidence with Don Cherry / Steve Lacy』2024.06『Quietude / Eliane Elias』2024.07『Alone Together / Lee Konitz, Brad Mehldau, Charlie Haden』2024.08『The Rough Dancer And The Cyclical Night (Tango Apasionado) / Astor Piazzolla』2024.09『Potro De Rabia Y Miel / Camarón De La Isla』2024.10『Calle 54 / Various』2024.11『Trumpets Of Michel-ange / Ibrahim Maalouf』2024.12『Sings for Only the Lonely / Frank Sinatra』2025.01『Hero Worship / Hal Crook』2025.02『Undercurrent / Kenny Drew』2025.03『Live In Toronto 1952 / Lennie Tristano Quintet』2025.04『Antidote / Chick Corea & The Spanish Heart Band』



Reviewer information

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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

曽根麻央Official Site

曽根麻央 Monthly Disc Review2025.04_Chick Corea : Antidote :Monthly Disc Review

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Title : 『Antidote』
Artist : Chick Corea & The Spanish Heart Band


皆さんこんにちは。曽根麻央です。
今日はChick Coreaの2019年の作品、『Antidote』を紹介したいなと思います。
Chick Coreaはピアニストとしての活躍がフィーチャーされますが、「スペイン」などの代表曲が世界中で愛されているように作曲家としての功績も大きく、この作品『Antidote』ではその両サイドの彼のアーティスト性が見事にキャプチャーされています。
またこの作品はChick Coreaの以前よりの有名曲「Armando's Rhumba」もリメイクされていて、昔からのChick Coreaファンも嬉しい作品になっています。しかもフラメンコ奏者Paco de Lucíaの1990年のアルバムでもChick Coreが参加している「Zyryab」という曲もも新たなアレンジで演奏されていて胸熱なアルバムになっています。

このアルバムは全体を通してラテン音楽、フラメンコ音楽など多国籍なグルーヴを演奏しています。ベーシストCarlitos Del Puerto とドラマーMarcus Gilmore が中心となり、このヴァラエティ豊かなグルーヴを牽引しています。彼らが中心となって編成されたChick Coreaの8人編成ラテン・バンドは『The Spanish Heart Band』と名付けられていて、

Chick Corea - piano, keyboards, synthesizers
Carlitos Del Puerto - bass guitar
Marcus Gilmore - drums

のリズムセクションを中心に、Paco de Lucíaのバンドメンバーでもあった

Jorge Pardo - flute, saxophone
Niño Josele - guitar

がラテンとフラメンコのリズムをよりオーガニックなものに昇華して、

Michael Rodriguez - trumpet
Steve Davis - trombone

という現代のジャズシーンの最高峰のホーンセクションがインプロソロでも大活躍し、

Nino De Los Reyes - flamenco tap dance

がフラメンコのテイストをさらに与えてくれています。
さらにそこにRuben Bladesなどのゲストが参加していて、とても豪華な編成のアルバムです。
Ruben Bladesは日本では『プレデター2』に出演した俳優として知られていますが、実は素晴らしいシンガーソングライターで歌手でもあります。以前の記事でRubenのリーダー作品も紹介しています。
https://www.jjazz.net/jjazznet_blog/2023/07/-monthly-disc-review20237-willie-colon-ruben-blades-siembra.php

全体として特筆すべきはChick Coreaのピアノのタッチやソロのアイディアはもちろんですが、現在最高峰のドラマーMarcus Gilmore の色々な種類のリズムに対する理解の深さ、そしてグルーヴ、ドラムの音色の美しさが挙げられます。

タイトルソング「Antidote」は、Ruben BladesとChick Coreaの共作で、サルサの楽曲としての要素があるだけでなく、そこにChick Coreaの和音やホーンセクションのアレンジセンス、またフラメンコ・ルンバのテイストが加わり、このグループの方向性を示した一曲になています。


「Duende」は1982年のアルバム『Touchstone』からの再アレンジです。元のアレンジでは3分ほどの短いコンポジションですが、こちらではかなり拡大解釈され、3菅編成の美しさを聴くことが出来ます。Michael RodriguezとSteve Davis の二人の名手のソロがフィーチャーされています。


「The Yellow Nimbus, Pt. 1」はフラメンコのBuleríasというリズムが大枠になっているChick Coreaのオリジナル曲です。


それに続く「The Yellow Nimbus, Pt. 2」はフラメンコ・ルンバが基板になっている曲で、組曲になっています。


「My Spanish Heart」は1976年のChick Coreaの有名な代表作のアルバムタイトルで、オリジナルでは1分程度の短いピアノ曲ですが、このバージョンでは拡大解釈され、歌詞もついています。Ruben Bladesが歌っています。


「Armando's Rhumba」同じく1976年の『My Spanish Heart』に収録された20小節の有名な曲ですが、今回のアレンジではダイナミックなイントロイントロやシャウトコーラス、ホーンセクションのバックグラウンドがが追加されたりしていて、ファン必聴の一曲になっています。
メンバー全員をフィーチャーしていて、ジャム曲のような立ち位置になっています。


「Zyryab」は1990年のPaco de Lucíaのアルバムの代表曲ですが、Chick Coreaも参加していることで知られています。この『Antidote』ではChick Coreaが新しいセクションを追加し、より壮大な曲へと進化を遂げています。おそらくこのアルバムのハイライト的な曲だと思います。


「Pas de Deux」はストラヴィンスキーのコンポジションをChick CoreaとCarlitos Del Puerto のデュオで演奏していて、その次の曲の「Admiration」のイントロとして演奏されています。


「Admiration」はゆっくりなクンビア(コロンビアのリズム)とフラメンコ・ルンバが混ざったようなグルーヴの曲です。


ぜひこのアルバムを聴いてチック・コリアが思い描いたワールドミュージックを体感してみてください!

文:曽根麻央 Mao Soné



Recommend Disc

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Title :『Antidote』
Artist : Chick Corea & The Spanish Heart Band
LABEL : Concord Jazz
発売年 : 2019年



アマゾン詳細ページへ


【SONG LIST】

01. Antidote
02. Duende
03. The Yellow Nimbus - Part 1
04. The Yellow Nimbus - Part 2
05. Prelude to My Spanish Heart
06. My Spanish Heart
07. Armando's Rhumba
08. Desafinado
09. Zyryab
10. Pas De Deux
11. Admiration




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「Monthly Disc Review」アーカイブ曽根麻央
2020.04『Motherland / Danilo Perez』2020.05『Color Of Soil /タイガー大越』2020.06『Passages / Tom Harrell 』2020.07『Inventions And Dimensions / Herbie Hancock』2020.08『Birth Of The Cool / Miles Davis』2020.09『Chet Baker Sings / Chet Baker』2020.10『SFJAZZ Collective2 / SFJAZZ Collective』2020.11『Money Jungle: Provocative In Blue / Terri Lyne Carrington』2020.12『Three Suites / Duke Ellington』2021.01『Into The Blue / Nicholas Payton』2021.02『Ben And "Sweets" / Ben Webster & "Sweets" Edison』2021.03『Relaxin' With The MilesDavis Quintet / The Miles Davis Quintet 』2021.04『Something More / Buster Williams』2021.05『Booker Little / Booker Little』2021.06『Charms Of The Night Sky / Dave Douglas』2021.07『Play The Blues / Ray Bryant Trio』2021.08『The Sidewinder / Lee Morgan』2021.09『Esta Plena / Miguel Zenón』2021.10『Hub-Tones / Freddie Hubbard』2021.11『Concert By The Sea / Erroll Garner』2021.12『D・N・A Live In Tokyo / 日野皓正』2022.1『The Tony Bennett Bill Evans Album / Tony Bennett / Bill Evans』2022.2『Quiet Kenny / Kenny Dorham』2022.3『Take Five / Dave Brubeck』・2022.4『Old And New Dreams / Old And New Dreams』2022.5『Ella Fitzgerald And Louis Armstrong / Ella And Louis』2022.6『Live from Miami / Nu Deco Ensemble & Aaron Parks』2022.7『Oscar Peterson Trio + One / Oscar Peterson Trio Clark Terry』2022.8『Ugetsu/ Art Blakey & The Jazz Messengers』2022.9『Sun Goddess / Ramsey Lewis』2022.10『Emergence / Roy Hargrove Big Band』2022.11『Speak No Evil / Wayne Shorter』2022.12『The Revival / Cory Henry』2023.1『Complete Communion / Don Cherry』2023.2『Your Mother Should Know: Brad Mehldau Plays The Beatles / Brad Mehldau』2023.3『Without a Net / Wayne Shorter』2023.4『LADY IN LOVE / 中本マリ』2023.5『Songs Of New York / Mel Torme』2023.6『Covers / James Blake』2023.7『Siembra / Willie Colón & Rubén Blades』2023.8『Undercover Live at the Village Vanguard / Kurt Rosenwinkel』2023.09『Toshiko Mariano Quartet / Toshiko Mariano Quartet』2023.10『MAINS / J3PO』2023.11『Knower Forever / Knower』2023.12『Ella Wishes You A Swinging Christmas / Ella Fitzgerald』2024.01『Silence / Charlie Haden with Chet Baker, Enrico Pieranunzi, Billy Higgins』2024.02『Rhapsody in Blue Reimagined / Lara Downes』2024.03『Djesse Vol. 4 / Jacob Collier』2024.04『Voyager / Moonchild』2024.05『Evidence with Don Cherry / Steve Lacy』2024.06『Quietude / Eliane Elias』2024.07『Alone Together / Lee Konitz, Brad Mehldau, Charlie Haden』2024.08『The Rough Dancer And The Cyclical Night (Tango Apasionado) / Astor Piazzolla』2024.09『Potro De Rabia Y Miel / Camarón De La Isla』2024.10『Calle 54 / Various』2024.11『Trumpets Of Michel-ange / Ibrahim Maalouf』2024.12『Sings for Only the Lonely / Frank Sinatra』2025.01『Hero Worship / Hal Crook』2025.02『Undercurrent / Kenny Drew』2025.02『Live In Toronto 1952 / Lennie Tristano Quintet』



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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

曽根麻央Official Site

曽根麻央 Monthly Disc Review2025.03_Lennie Tristano Quintet : Live In Toronto 1952 :Monthly Disc Review

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Title : 『Live In Toronto 1952』
Artist : Lennie Tristano Quintet Featuring Warne Marsh And Lee Konitz


みなさんこんにちは。曽根麻央です。少しずつ暖かかく感じられる日が増えてきていますが、昼と夜の温度差で風邪をひかないようまだまだ気をつけないといけない時期ですね。
つい先日ふっとカフェに入ったらレニー・トリスターノのLPがドンと飾ってあり、珍しいな、と見つめていました。そういえばこのJJazz.Netのディスクレビューでトリスターノについてお話ししたことがなかったと思い、今回取り上げてみました。


今日は数あるトリスターノの作品の中でも『Live In Toronto 1952』というライブ版を取り上げてみようと思います。この作品は決して音質が良いわけでもなく、最初の曲は変なFade Inの仕方をしているにも関わらず、この時代のトリスターノの生きたエネルギーを体感することができる作品かなと思います。バンドとしてもクインテットの一体感が素晴らしく、全体のアンサンブルにも注目の作品です。


レニー・トリスターノの音楽といえばまず思うのは、この時代を先駆けた異質な音楽であるということです。
彼が活動し始めた40年はちょうどビ・バップ誕生とそのムーヴメントが大きな影響をジャズ音楽に与えたところです。また後半にさしかかるとその影響を強く受けたアーティストたちの各々個性が出てきて次の流れへと移ろうとしていた時代と言っても良いでしょう。NYCではクールジャズ、西海岸ではウェスト・コーストジャズのようなPOSTビ・バップと言われるモダンジャズが誕生しつつあった時代ですね。多様な音楽が誕生する中でそれらとも一線を画す存在がレニー・トリスターノの世界だったのではないでしょうか?
計算されたかのようでありながら意表をついてくる間や旋律、ビ・バップにそのルーツを置きながらもより高度なレベルでリズム・モーチーフの発展をさせるスタイル、美しいピアノのタッチとメトロのミックなグルーヴ、クラシック音楽のような旋律同士がせめぎ合う対位法のようない複数人で行う即興、複数のサックスとピアノで作られる独特のハーモニー、こんなイメージでしょうか。


この『Live In Toronto 1952』はタイトルの通り1952年のアルバムです。1950年はマイルス・デイヴィスが『Birth of Cool』で複数の管楽器を用いたジャズで新たなジャズのサウンドの可能性を示した年でした。
1952年はチェット・ベイカーやジェリー・マリガンが2菅、ピアノレスの編成で『Gerry Mulligan Quartet Volume 1』などのアルバムを、のちのウェスト・コースト・サウンドを発信していた時代でもあります。こういった音楽はビ・バップに比べて野生的な個人個人の熱量ではなく、より計画されたアンサンブルから生まれる知的な熱量を感じます。
この1952年の時のトリスターノは間違えなくこれらの音楽の影響は受けていたor与えていたと思います。


このビ・バップからPOSTビ・バップ前期の時代に言えるのが、ドラムという楽器の使い方が他の楽器に比べて発展が大きく遅れていることです。ビ・バップは旋律楽器の革命でしたし、それ以降の音楽もマックス・ローチがリーダーで活躍し出すぐらいまではドラムはシンプルに4分音符を中心にベースと一緒にリズムキープの仕事をしているイメージです。ドラムが華々しく活躍したビ・バップ以前のビッグバンド時代や、マックス・ローチやアート・ブレイキーの登場からは考えられないことですが、ドラムがある意味主役ではなくなったジャズの歴史の中でも珍しい期間の音源かなと思います。
この『Live in Toronto 1952』でもドラムは基本的にリズムキープに徹していて、ほぼインタープレイというものをしません。しかしそれがこのアルバムのこの時代ならではの面白いところであり、そのドラムのあり方にしては考えられないレベルで発展した管楽器とピアノの旋律とハーモニー、そしてリズムを集中して音楽を聴くことができます。ある意味この時代ドラムが退化したのは音楽が発展する上で必然だったのかもしれませんね。
間違えて欲しくないのは時代のドラマーが下手だったとかそういうことを言っているのではありません。このレベルでリズムキープできるのは素晴らしいことですし、普通はここまで集中したシンプルな演奏は現代のドラマーにはできないでしょう。


メンバー
Lennie Tristano (p) Warns Marsh (ts) Lee Konitz (as) Peter Ind (b) Al Levitt (ds)


サックスの二人はトリスターノの音楽を一緒に作った二人と言って良いでしょう。トリスターノの作り出す複雑で難解なメロディーやハーモニーを正確に演奏し、このバンドのユニークなサウンドを明確なものにしています。
分かりやすいのは「317 East 32nd」は「East Of The Sun」というジャズスタンダードの替え歌になっています。最初のコーラスは「East Of The Sun」をトリスターノが演奏します。それでも半音ずらしたりしてかなり奇妙な「East Of The Sun」ですが、2コーラス目にはそれに続くようにcontrafactのメロディーが書かれています。これが「317 East 32nd」のメロディーになっています。トリスターノの書く旋律の面白さがわかる気がします。contrafactとは、以前の記事でも何回かお話ししましたがジャズの作曲のスタイルで、既存の楽曲のコード進行を用いながら自分なりの新しいメロディーを書き自らの作品とするスタイルのことです。



また「April」は「I Remember April」のcontrafactでこちらも同様に1コーラス目は通常のジャズスタンダードの「I Remember April」をピアノトリオで演奏し、2コーラス目からサックスが入ってきて「April」を演奏します。



「Back Home」は1コーラス目からそのメロディーですがチャーリー・パーカーの「Donna Lee」のcontrafactです。とは言っても実は「Donna Lee」自体が「Indiana」という曲のcontrafactなので、contrafactのcontrafactの曲と言って良いでしょう。



この3曲の序盤だけを聞いてもトリスターノのスタイルをなんとなく感じることができると思います。このcontrafactの旋律、そのスタイルがピアノソロやサックスソロでも現れていて、それが曲やバンド全体のカラーを統一してるといえます。


このユニークなリズム・モチーフの使い方はリズム・モチーフ(奇数の音価の場合が多いですが)を一つのグループとして、それを繰り返し発展させることでリズムに意外性を持たせ、拍子を錯覚させる手法ですが、これは後のビル・エヴァンスのスタイルにも大きな影響を与えています。


文:曽根麻央 Mao Soné



Recommend Disc

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Title :『Live In Toronto 1952』
Artist : Lennie Tristano Quintet Featuring Warne Marsh And Lee Konitz
LABEL : Jazz Records
発売年 : 1952年



アマゾン詳細ページへ


【SONG LIST】

01.Lennie's Pennies
02.317 East 32nd
03.You Go To My Head
04.April
05.Sound-Lee
06.Back Home




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「Monthly Disc Review」アーカイブ曽根麻央
2020.04『Motherland / Danilo Perez』2020.05『Color Of Soil /タイガー大越』2020.06『Passages / Tom Harrell 』2020.07『Inventions And Dimensions / Herbie Hancock』2020.08『Birth Of The Cool / Miles Davis』2020.09『Chet Baker Sings / Chet Baker』2020.10『SFJAZZ Collective2 / SFJAZZ Collective』2020.11『Money Jungle: Provocative In Blue / Terri Lyne Carrington』2020.12『Three Suites / Duke Ellington』2021.01『Into The Blue / Nicholas Payton』2021.02『Ben And "Sweets" / Ben Webster & "Sweets" Edison』2021.03『Relaxin' With The MilesDavis Quintet / The Miles Davis Quintet 』2021.04『Something More / Buster Williams』2021.05『Booker Little / Booker Little』2021.06『Charms Of The Night Sky / Dave Douglas』2021.07『Play The Blues / Ray Bryant Trio』2021.08『The Sidewinder / Lee Morgan』2021.09『Esta Plena / Miguel Zenón』2021.10『Hub-Tones / Freddie Hubbard』2021.11『Concert By The Sea / Erroll Garner』2021.12『D・N・A Live In Tokyo / 日野皓正』2022.1『The Tony Bennett Bill Evans Album / Tony Bennett / Bill Evans』2022.2『Quiet Kenny / Kenny Dorham』2022.3『Take Five / Dave Brubeck』・2022.4『Old And New Dreams / Old And New Dreams』2022.5『Ella Fitzgerald And Louis Armstrong / Ella And Louis』2022.6『Live from Miami / Nu Deco Ensemble & Aaron Parks』2022.7『Oscar Peterson Trio + One / Oscar Peterson Trio Clark Terry』2022.8『Ugetsu/ Art Blakey & The Jazz Messengers』2022.9『Sun Goddess / Ramsey Lewis』2022.10『Emergence / Roy Hargrove Big Band』2022.11『Speak No Evil / Wayne Shorter』2022.12『The Revival / Cory Henry』2023.1『Complete Communion / Don Cherry』2023.2『Your Mother Should Know: Brad Mehldau Plays The Beatles / Brad Mehldau』2023.3『Without a Net / Wayne Shorter』2023.4『LADY IN LOVE / 中本マリ』2023.5『Songs Of New York / Mel Torme』2023.6『Covers / James Blake』2023.7『Siembra / Willie Colón & Rubén Blades』2023.8『Undercover Live at the Village Vanguard / Kurt Rosenwinkel』2023.09『Toshiko Mariano Quartet / Toshiko Mariano Quartet』2023.10『MAINS / J3PO』2023.11『Knower Forever / Knower』2023.12『Ella Wishes You A Swinging Christmas / Ella Fitzgerald』2024.01『Silence / Charlie Haden with Chet Baker, Enrico Pieranunzi, Billy Higgins』2024.02『Rhapsody in Blue Reimagined / Lara Downes』2024.03『Djesse Vol. 4 / Jacob Collier』2024.04『Voyager / Moonchild』2024.05『Evidence with Don Cherry / Steve Lacy』2024.06『Quietude / Eliane Elias』2024.07『Alone Together / Lee Konitz, Brad Mehldau, Charlie Haden』2024.08『The Rough Dancer And The Cyclical Night (Tango Apasionado) / Astor Piazzolla』2024.09『Potro De Rabia Y Miel / Camarón De La Isla』2024.10『Calle 54 / Various』2024.11『Trumpets Of Michel-ange / Ibrahim Maalouf』2024.12『Sings for Only the Lonely / Frank Sinatra』2025.01『Hero Worship / Hal Crook』2025.02『Undercurrent / Kenny Drew』



Reviewer information

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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

曽根麻央Official Site

曽根麻央 Monthly Disc Review2025.02_Kenny Drew : Undercurrent :Monthly Disc Review

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Title : 『Undercurrent』
Artist : Kenny Drew


みなさんこんにちは、曽根麻央です。
Undercurrentというと、ビル・エヴァンスとジム・ホールの1962年のアルバムを想像しますが、今日は1961年にBlue Note Labelから発売されたKenny Drewの「Undercurrent」を紹介しようと思います。ドリューの「Undercurrent」も名盤と言える素晴らしい内容なので、是非みなさんにも改めて注目して欲しいジャズアルバムです。


実はこのアルバム、高校生の時の私のお気に入りのアルバムで、フレディー・ハバードのソロはどれも耳コピして演奏できたな、というのを改めて聴いて思い出しました。特に一曲目のハバードのソロはまるで『ルパン三世のテーマ』のようなフレーズがソロに入っていて、当時からお気に入りでした。

美しいタッチと、軽やかな指運びで流れるようなラインを展開することで知られるレジェンド・ピアニスト、ケニー・ドリューはヨーロッパでの活動が有名で、特に欧州移住後にベーシスト、ニールス=ヘニング・ペデルセンとの演奏でよく知られていますが、本作品はそんなドリューのアメリカ在住時代最後の作品だそうです。

メンバーも当時のアメリカで最高のアーティストが揃っていて、

Kenny Drew - piano
Freddie Hubbard - trumpet
Hank Mobley - tenor saxophone
Sam Jones - bass
Louis Hayes - drums

というメンバーが見事な演奏をしています。

参加メンバーを見ると、硬派な伝統的なジャズの奏者たちのイメージですが、時代的にはちょうどマイルス・デイビスがモードジャズを始めたり、ジョン・コルトレーンが「コルトレーン・チェンジ」なる新たなコード進行を開発したりと、新しい音楽が発信され続けた転換期とあって、それに影響されたような楽曲も数多く種録されています。

タイトル曲でもある1曲目「Undercurrent」は早いエネルギッシュなスウィングでスタートし、早速ドリューの軽やかな指捌きで独特な8分音符の伴奏パターンが演奏され、その上でハバードとモブレーがメロディーを展開していきます。1曲目のインパクトとして最高の出だしとなっています。このような8分音符の羅列をピアノで伴奏として演奏してVampを展開する手法は当時かなり特殊だったのではと思います。現在でもなかなか耳にしないユニークなアイディアです。そのVampのモチーフはBセクションではホーンが受け継ぎ曲を発展させます。基本Gマイナーのモード的なAセクションに対し、BセクションでBbに転調して少しビバップ的なコード進行が加わる曲です。


「Undercurrent」もそうですが、3曲目の「Lion's Den」でもモードジャズ的なAセクションを聴くことができます。従来のBebop的なコード進行をもつBセクションと、モードジャズ的な展開が共存しているところがこの60年代初期ジャズの特徴な気がします。 


「Ballade」というドリューのオリジナル曲もメジャーのコードを単3度のベースラインで動かしたりと、コルトレーンの「ジャイアント・ステップス」等でみられるコード進行と似たような発想で展開される、ビバップでは存在しないコード進行を使用しつつも、伝統的なii-Vのコード進行と共存させている、時代の転換期を象徴する意欲的な楽曲になっています。


「Funk-Cosity」などは、ジャズの伝統的なミディアムなスウィングの曲で、ハードバップやアート・ブレイキー&ジャズメッセンジャーズの影響を色濃く受けた楽曲になっています。ハバードのソロがとても冴えている曲です。そう言った意味でも、新しいジャズと古いビバップ、ハードバップが混在している、バランスの取れたアルバムと言えるでしょう。



文:曽根麻央 Mao Soné



Recommend Disc

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Title :『Undercurrent 』
Artist : Kenny Drew
LABEL : Blue Note
発売年 : 1961年



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【SONG LIST】

01.Undercurrent
02.Funk-Cosity
03.Lion's Den
04.The Pot's On
05.Groovin' The Blues
06.Ballade




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「Monthly Disc Review」アーカイブ曽根麻央
2020.04『Motherland / Danilo Perez』2020.05『Color Of Soil /タイガー大越』2020.06『Passages / Tom Harrell 』2020.07『Inventions And Dimensions / Herbie Hancock』2020.08『Birth Of The Cool / Miles Davis』2020.09『Chet Baker Sings / Chet Baker』2020.10『SFJAZZ Collective2 / SFJAZZ Collective』2020.11『Money Jungle: Provocative In Blue / Terri Lyne Carrington』2020.12『Three Suites / Duke Ellington』2021.01『Into The Blue / Nicholas Payton』2021.02『Ben And "Sweets" / Ben Webster & "Sweets" Edison』2021.03『Relaxin' With The MilesDavis Quintet / The Miles Davis Quintet 』2021.04『Something More / Buster Williams』2021.05『Booker Little / Booker Little』2021.06『Charms Of The Night Sky / Dave Douglas』2021.07『Play The Blues / Ray Bryant Trio』2021.08『The Sidewinder / Lee Morgan』2021.09『Esta Plena / Miguel Zenón』2021.10『Hub-Tones / Freddie Hubbard』2021.11『Concert By The Sea / Erroll Garner』2021.12『D・N・A Live In Tokyo / 日野皓正』2022.1『The Tony Bennett Bill Evans Album / Tony Bennett / Bill Evans』2022.2『Quiet Kenny / Kenny Dorham』2022.3『Take Five / Dave Brubeck』・2022.4『Old And New Dreams / Old And New Dreams』2022.5『Ella Fitzgerald And Louis Armstrong / Ella And Louis』2022.6『Live from Miami / Nu Deco Ensemble & Aaron Parks』2022.7『Oscar Peterson Trio + One / Oscar Peterson Trio Clark Terry』2022.8『Ugetsu/ Art Blakey & The Jazz Messengers』2022.9『Sun Goddess / Ramsey Lewis』2022.10『Emergence / Roy Hargrove Big Band』2022.11『Speak No Evil / Wayne Shorter』2022.12『The Revival / Cory Henry』2023.1『Complete Communion / Don Cherry』2023.2『Your Mother Should Know: Brad Mehldau Plays The Beatles / Brad Mehldau』2023.3『Without a Net / Wayne Shorter』2023.4『LADY IN LOVE / 中本マリ』2023.5『Songs Of New York / Mel Torme』2023.6『Covers / James Blake』2023.7『Siembra / Willie Colón & Rubén Blades』2023.8『Undercover Live at the Village Vanguard / Kurt Rosenwinkel』2023.09『Toshiko Mariano Quartet / Toshiko Mariano Quartet』2023.10『MAINS / J3PO』2023.11『Knower Forever / Knower』2023.12『Ella Wishes You A Swinging Christmas / Ella Fitzgerald』2024.01『Silence / Charlie Haden with Chet Baker, Enrico Pieranunzi, Billy Higgins』2024.02『Rhapsody in Blue Reimagined / Lara Downes』2024.03『Djesse Vol. 4 / Jacob Collier』2024.04『Voyager / Moonchild』2024.05『Evidence with Don Cherry / Steve Lacy』2024.06『Quietude / Eliane Elias』2024.07『Alone Together / Lee Konitz, Brad Mehldau, Charlie Haden』2024.08『The Rough Dancer And The Cyclical Night (Tango Apasionado) / Astor Piazzolla』2024.09『Potro De Rabia Y Miel / Camarón De La Isla』2024.10『Calle 54 / Various』2024.11『Trumpets Of Michel-ange / Ibrahim Maalouf』2024.12『Sings for Only the Lonely / Frank Sinatra』2025.01『Hero Worship / Hal Crook』



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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

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曽根麻央 Monthly Disc Review2025.01_Hal Crook : Hero Worship:Monthly Disc Review

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Title : 『Hero Worship』
Artist : Hal Crook


こんにちは、ジャズ二刀流ことマルチインストゥルメンタリストの曽根麻央です。今年もよろしくお願いいたします。
1月に入って気温もぐんと下がった気がしますがみなさんお元気ですか?僕はというと年中子供から風邪をもらってを繰り返していて、なかなか体調管理の難しい日々を送っています。
幸い演奏の機会は今年の前半は少ないのですが、作曲や編曲など今年も忙しく過ごしております。今年も一年頑張っていきますので、どうぞよろしくお願いいたします。


本題に入る前に一点宣伝をさせてください。
今年から日本屈指のバンドネオン奏者である三浦一馬さんと「Latin x Tango」という新しい企画を催すことになりまして、早速コンサートが東京と大阪で決定しました。

・2025年6月6日(金)19時開演(18時半開場)王子ホール
・2025年8月1日(金)19時開演(18時半開場)あいおいニッセイ同和損保ザ・フェニックスホール

一般的にラテン音楽と呼ばれるものはどちらかというとジャズの影響をより濃く受けた南米の音楽、タンゴはクラシックの影響をより受けた南米の音楽というふうに思っていますが、今回はこの二つのエレメントを大胆に混ぜ合わせた新しいジャンル「ラテンタンゴ」の誕生ということをテーマに、新たなレパートリーを引っ提げて公演を行います。
演目もマニュエルdeファリャの「火祭りの踊り」などクラシックの曲から、バーンスタインの『West Side Story』、そして「リベルタンゴ」まで、なかなか異色の公演になるはずです。是非お越しください。

<チケット販売:イープラス>
https://eplus.jp/sf/detail/4240650001-P0030001P021001?P1=1221


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今日は僕のバークリー音楽大学の師でもある、トロンボーン奏者のハル・クルックの名盤『Hero Worship』を紹介します。ハル・クルックは1950年にロードアイランド州で生まれたトロンボーン奏者で、おそらくジャズの歴史上最も実力があり独創的なトロンボーン奏者の一人であると考えています。
しかし彼のキャリアはあまりにもバークリー音楽大学で30年以上教壇に立ち後進の指導に務めたことや、『How To Improvise』など即興演奏に関する数々の名著を書いたことに集約されがちです。しかも彼の生徒はエスペランザ・スポルディング、ロイ・ハーグローヴ、アントニオ・サンチェス、リオネル・ルイケなどあまりにも有名すぎて、彼らアーティストたちがが尊敬する何やら偉大な人としての印象が強すぎて、あまりクルック自身のアーティスト作品に触れられないことが多い気がします。この点は日頃から残念に思っています。

同時に彼の教師としての一面がらアーティスト像を見ることもとても面白いので、いくつかまとめてみます。


① 君のベストで音楽をよくするのには十分だ、という言葉
はじめに断っておくと、ハル・クルックの授業は厳しいです。映画の『セッション』の先生のリアル版と例える生徒もいました。自信を喪失したり、授業中に泣いて逃げ出す生徒はたくさんいました。しかしそんな授業の中でも「君のベストで音楽をよくするのには十分だ」という言葉は僕の中に強く残っています。だからそんなに気張るなよ、頑張りすぎるなよ、自然体であれよ、でも誠実であれ、という意味が込められている気がします。いつも音楽に対して誠実だった彼の姿勢を見習っている生徒は多いはずです。


② 大きい、小さい、それが人間が聞いて判断できる最初の情報
ハル・クルックは音楽の強弱を大事にしてました。「クラシックの音楽はppp(ピアニッシシモ)からfff(フォルテッシシモ)まで表現する。ジャズも即興も同じであるべきだ。大きい、小さいが人間が聞いて脳が判断できる最初の情報。音程はその後だからダイナミックスが一番大事。」という言葉もとても印象に残っています。


③ 即興では自分が今何をしているか明確に
ハル・クルックの即興演奏のアプローチは実に合理的です。練習やセッションの時、自分が何をしているかを理解することによって表現の幅を広げていこうとする人です。

・フォーム(形式)に従って演奏しているのか、それともフリーの演奏なのか
ジャズの代表的な演奏スタイルは、例えば何か有名な曲を演奏しているとして、もしその曲が32小節ならば、32小節を繰り返す、そのフォーム(形式)の中で即興を演奏するものです。これは一般的なルールで、セッション行ったらこのやり方をして世界中どこでも大丈夫といえます。一方でもしソリストが5人いた場合、長尺の曲となってしまいます。聞いている側は形式がずっと一緒だと同じ曲調で退屈してしまいますよね。

ハル・クルックの授業では曲が即興演奏の過程で長尺化した場合でも常にお客さんに興味を持ってもらうような、何か変化をつけることを求められます。一番代表的なのが、フォームで演奏するのか、それともフリーで形式を破っていくのか、即興演奏中に選択することを求められます。例えば前のソリストがフォームでソロを終えたのならば、自分のソロは最初はフォーム、途中からフリーへと変化させ、前のソロとの明らかな違いを作っていくことを授業で体験させてくれます。そしてまた次のソリストはフリーのソロを受け継いで、全く違う曲に切り替えて、その別曲をフォームで発展させ、また元の主題に戻る、などというテクニックも教えてくれます。これがハル・クルックが説くフォームvsフリーのコンセプトです。
授業では、特に自分が今何をしているかを明確に演奏で表現する必要があります。明確でないと一旦そこで演奏を止められて、「今何がしたかったの」と聞かれます。こうしたかったと自分の理想を言うと、ああ、じゃあ、とその即興演奏の流れにおいて最善の例を演奏して見せてくれる、それがハル・クルックです。
全てが整頓されていて、しかもそれが音楽的である素晴らしいアーティストなのです。自分が何をしようと即興していたのか、明確に理解することが表現の幅を広げるための一歩なのです。その代表的な例が、

・フリーの種類
Free:コード進行やタイムなど、形式を作る要素を省いた演奏スタイル
Free in Tempo:コード進行や拍子はその場で作るか、もしくは全くないかだが、一定のテンポはキープするフリー・スタイル
Free in Time:コード進行や拍子はその場で作るか、もしくは全くないかだが、元々の楽曲の拍子やテンポで演奏するスタイル
Free on Form:もともと存在する曲の形式の(伴奏などの)上で、それとは全く関係のない内容のソロをとる演奏スタイル

・今自分はソロを演奏しているのか、コンピング(ジャズの伴奏)なのか
ソロと伴奏の違いはモチーフ、特にリズミック・モチーフの繰り返しの多いか少ないかだ。コンピングは繰り返しが多い。


ここまでハル・クルックのアーティスト性を生徒目線で追ってみましたが、この『Hero Worship』という作品はトロンボーンにエフェクターをつけハーモニーを表現する、トロンボーンの新たな表現の可能性に迫った作品になっています。
この作品以降ハル・クルック・サウンドといえばこのエフェクター・サウンドとなりました。エフェクターを駆使することで、このアルバムのこの不規則編成のトリオは成り立っています。
編成はトロンボーン、ギター、ドラム。トロンボーンとギターがハーモニーを奏でられるという、ベースが不在のなんとも珍しい編成になっています。
しかもギターにMick Goodrick、ドラムにPaul Motianという名手が揃っています。ミック・グッドリックは同じくバークリー音楽大学の教授として知られていて、マイク・スターン、ジョン・スコフィールド、ジュリアン・ラージなどジャズ史を代表するギター奏者の先生として知られています。ポール・モチアンはジャズドラムの巨匠ですね。ビル・エヴァンス・トリオをはじめ自身のバンドでも広く活動しています。いつか彼のリーダー作品もこちらで取り上げます。


この作品の聞きどころはなんといってもこの3人の名手の会話のようなプレイ、そして本当に自由な演奏スタイルです。しかし、上記に挙げた今、曲を、形式に沿って演奏しているのか、フリーなのか、フリーでもどんなフリーなのか考えながら聞くと、また一つジャズの聴き方の楽しみが増えると思います。




それではまた次回、お元気で。


文:曽根麻央 Mao Soné



Recommend Disc

41N4D6H2P8L._200.jpg
Title :『Hero Worship』
Artist : Hal Crook
LABEL : RAM Records
発売年 : 1997年



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【SONG LIST】

01.Noticed Moments
02.Bluezo
03.A Simpler Time
04.Night And Day
05.Teen Mind
06.Cathedral Song
07.My Funny Valentine
08.Hero Worship
09.Falling Grace
10.You Do Something To Me




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「Monthly Disc Review」アーカイブ曽根麻央
2020.04『Motherland / Danilo Perez』2020.05『Color Of Soil /タイガー大越』2020.06『Passages / Tom Harrell 』2020.07『Inventions And Dimensions / Herbie Hancock』2020.08『Birth Of The Cool / Miles Davis』2020.09『Chet Baker Sings / Chet Baker』2020.10『SFJAZZ Collective2 / SFJAZZ Collective』2020.11『Money Jungle: Provocative In Blue / Terri Lyne Carrington』2020.12『Three Suites / Duke Ellington』2021.01『Into The Blue / Nicholas Payton』2021.02『Ben And "Sweets" / Ben Webster & "Sweets" Edison』2021.03『Relaxin' With The MilesDavis Quintet / The Miles Davis Quintet 』2021.04『Something More / Buster Williams』2021.05『Booker Little / Booker Little』2021.06『Charms Of The Night Sky / Dave Douglas』2021.07『Play The Blues / Ray Bryant Trio』2021.08『The Sidewinder / Lee Morgan』2021.09『Esta Plena / Miguel Zenón』2021.10『Hub-Tones / Freddie Hubbard』2021.11『Concert By The Sea / Erroll Garner』2021.12『D・N・A Live In Tokyo / 日野皓正』2022.1『The Tony Bennett Bill Evans Album / Tony Bennett / Bill Evans』2022.2『Quiet Kenny / Kenny Dorham』2022.3『Take Five / Dave Brubeck』・2022.4『Old And New Dreams / Old And New Dreams』2022.5『Ella Fitzgerald And Louis Armstrong / Ella And Louis』2022.6『Live from Miami / Nu Deco Ensemble & Aaron Parks』2022.7『Oscar Peterson Trio + One / Oscar Peterson Trio Clark Terry』2022.8『Ugetsu/ Art Blakey & The Jazz Messengers』2022.9『Sun Goddess / Ramsey Lewis』2022.10『Emergence / Roy Hargrove Big Band』2022.11『Speak No Evil / Wayne Shorter』2022.12『The Revival / Cory Henry』2023.1『Complete Communion / Don Cherry』2023.2『Your Mother Should Know: Brad Mehldau Plays The Beatles / Brad Mehldau』2023.3『Without a Net / Wayne Shorter』2023.4『LADY IN LOVE / 中本マリ』2023.5『Songs Of New York / Mel Torme』2023.6『Covers / James Blake』2023.7『Siembra / Willie Colón & Rubén Blades』2023.8『Undercover Live at the Village Vanguard / Kurt Rosenwinkel』2023.09『Toshiko Mariano Quartet / Toshiko Mariano Quartet』2023.10『MAINS / J3PO』2023.11『Knower Forever / Knower』2023.12『Ella Wishes You A Swinging Christmas / Ella Fitzgerald』2024.01『Silence / Charlie Haden with Chet Baker, Enrico Pieranunzi, Billy Higgins』2024.02『Rhapsody in Blue Reimagined / Lara Downes』2024.03『Djesse Vol. 4 / Jacob Collier』2024.04『Voyager / Moonchild』2024.05『Evidence with Don Cherry / Steve Lacy』2024.06『Quietude / Eliane Elias』2024.07『Alone Together / Lee Konitz, Brad Mehldau, Charlie Haden』2024.08『The Rough Dancer And The Cyclical Night (Tango Apasionado) / Astor Piazzolla』2024.09『Potro De Rabia Y Miel / Camarón De La Isla』2024.10『Calle 54 / Various』2024.11『Trumpets Of Michel-ange / Ibrahim Maalouf』2024.12『Sings for Only the Lonely / Frank Sinatra』



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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

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曽根麻央 Monthly Disc Review2024.12_Frank Sinatra : Sings for Only the Lonely:Monthly Disc Review

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Title : 『Sings for Only the Lonely』
Artist : Frank Sinatra


みなさんこんにちは、ピアノとトランペットの曽根麻央です。
今日は寒い日にゆっくり家で過ごしたい時、少しばかりセンチになってみたい時にぴったりな名作を紹介します。


今日はフランク・シナトラの『Sings for Only the Lonely』を紹介します。
この作品は1958年に録音・発売されたアルバムです。


編曲は最高のアレンジャーであるネルソン・リドル。そして録音は1956年に誕生したばかりの当時最先端、なおかつ、今だに現役で有名なレコーディング・スタジオCapitol Studioでレコーディングされました。
Capitol Studioは当時シナトラの名盤を数多く収録したのはもちろんのこと、ナット・キング・コールやザ・ビーチ・ボーイズなど当時の一流のアーティストが使用したことでも有名です。
それだけでなくチェンバー・リバーブを自然に作り出すためだけの部屋が確保されていることでも知られていて、現在ではその部屋を模倣したデジタル・リバーブもプラグイン(パソコンで音を編集するときに使用するもの)として販売されていたりします。


この時代はモノラルとステレオの転換期でもあり、複数の録音機を用いてモノラルとステレオの両方で収録したそうです。
現在私たちが配信等で聴けるものはステレオの再販(おそらくリミックス&リマスター)されたものですのでモノラル・レコードのクオリティーがどの程度であったか私は知らないのですが、恐らく素晴らしいものだったことでしょう。
現状、私が持っているCDや配信版を聴いていても、当時の録音技術の高さを思い知らされます。


文献によると当時Capitol Recordではオーケストラに8つのマイクをあてて、3つのテープマシンを使って録音していたそうです。なので完璧なマイク配置によってでしか正しいオーケストラの音のバランスは得られません。
またそれはミュージシャン一人一人の演奏力の高さも物語っています。
この時代はシナトラの歌とオーケストラは同時録音ですから、差し替えが効きません。「ミスのない演奏」をしなければいけない緊張感もあり、しかしそれを個々の技術力と表現力で完璧な作品とするマンパワーすら感じます。


別のアルバムではありますが、YouTubeにいくつかシナトラのレコーディング映像も上がっていまして、ヘッドフォンすらつけず、譜面とひたすら睨めっこしながら歌詞と音に真剣に向かい合う姿に感動します。
輝かしいエンターテイメントの世界に生きていたイメージの強いシナトラですが、その根底はやはり完璧主義者のアーティストであります。
このアルバムの収録時シナトラは43歳ほどです。若々しくも低音の美声だったミュージカルやトミー・ドーシー・ビッグバンド時代の声ではなく、いわゆるみんなが想像する少し枯れたあのシナトラの歌声で、それがとても心に響くアルバムです。


アルバム全体はバラード曲集、しかも失恋の歌を中心にテーマを定めています。
それはシナトラの離婚や、アレンジャーのネルソン・リドルの母の死などが同時に重なり、このアルバムに結果として行き着いたとリドルも語っているそうです。

シナトラの歌唱はとても感傷的で、掠れるところが痛みにも感じられます。そして普段よりソフトに歌っている箇所もたくさんあり、ダイナミックスでの表現の幅が一段と広いアルバムではないかと思います。


そしてリドルのアレンジもやはり一流であり、シナトラやナット・キング・コールを支えたサウンドとアイディアはこのアルバムでも輝きを発しています。
ネルソン・リドルはクラシック的なストリングスや木管に、ジャズやポップスを中心としたオールマイティーに演奏できる金管奏者、そしてリズムセクションの、いわゆるスタジオや映画音楽のような編成のアレンジの名手で、歴代最高のアレンジャーの一人です。
また彼の書くイントロはまたそれぞれユニークで、各曲の個性を一層引き出す力があります。
またリドルのシナトラ用のアレンジでは良くあることなのですが、トロンボーンがフィーチャーされている曲が多く、これはトミー・ペダーソンという名手が吹いています。
彼のシナトラに寄り添うような演奏もこのアルバムの聞きどころの一つでもあります。




文:曽根麻央 Mao Soné



Recommend Disc

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Title :『Sings for Only the Lonely』
Artist : Frank Sinatra
LABEL : Capitol Records
発売年 : 1958年



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【SONG LIST】

01.Only The Lonely
02.Angel Eyes
03.What's New
04.It's A Lonesome Old Town
05.Willow Weep For Me
06.Good-Bye
07.Blues In The Night
08.Guess I'll Hang My Tears Out To Dry
09.Ebb Tide
10.Spring Is Here
11.Spring Is Here
12.One For My Baby




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「Monthly Disc Review」アーカイブ曽根麻央
2020.04『Motherland / Danilo Perez』2020.05『Color Of Soil /タイガー大越』2020.06『Passages / Tom Harrell 』2020.07『Inventions And Dimensions / Herbie Hancock』2020.08『Birth Of The Cool / Miles Davis』2020.09『Chet Baker Sings / Chet Baker』2020.10『SFJAZZ Collective2 / SFJAZZ Collective』2020.11『Money Jungle: Provocative In Blue / Terri Lyne Carrington』2020.12『Three Suites / Duke Ellington』2021.01『Into The Blue / Nicholas Payton』2021.02『Ben And "Sweets" / Ben Webster & "Sweets" Edison』2021.03『Relaxin' With The MilesDavis Quintet / The Miles Davis Quintet 』2021.04『Something More / Buster Williams』2021.05『Booker Little / Booker Little』2021.06『Charms Of The Night Sky / Dave Douglas』2021.07『Play The Blues / Ray Bryant Trio』2021.08『The Sidewinder / Lee Morgan』2021.09『Esta Plena / Miguel Zenón』2021.10『Hub-Tones / Freddie Hubbard』2021.11『Concert By The Sea / Erroll Garner』2021.12『D・N・A Live In Tokyo / 日野皓正』2022.1『The Tony Bennett Bill Evans Album / Tony Bennett / Bill Evans』2022.2『Quiet Kenny / Kenny Dorham』2022.3『Take Five / Dave Brubeck』・2022.4『Old And New Dreams / Old And New Dreams』2022.5『Ella Fitzgerald And Louis Armstrong / Ella And Louis』2022.6『Live from Miami / Nu Deco Ensemble & Aaron Parks』2022.7『Oscar Peterson Trio + One / Oscar Peterson Trio Clark Terry』2022.8『Ugetsu/ Art Blakey & The Jazz Messengers』2022.9『Sun Goddess / Ramsey Lewis』2022.10『Emergence / Roy Hargrove Big Band』2022.11『Speak No Evil / Wayne Shorter』2022.12『The Revival / Cory Henry』2023.1『Complete Communion / Don Cherry』2023.2『Your Mother Should Know: Brad Mehldau Plays The Beatles / Brad Mehldau』2023.3『Without a Net / Wayne Shorter』2023.4『LADY IN LOVE / 中本マリ』2023.5『Songs Of New York / Mel Torme』2023.6『Covers / James Blake』2023.7『Siembra / Willie Colón & Rubén Blades』2023.8『Undercover Live at the Village Vanguard / Kurt Rosenwinkel』2023.09『Toshiko Mariano Quartet / Toshiko Mariano Quartet』2023.10『MAINS / J3PO』2023.11『Knower Forever / Knower』2023.12『Ella Wishes You A Swinging Christmas / Ella Fitzgerald』2024.01『Silence / Charlie Haden with Chet Baker, Enrico Pieranunzi, Billy Higgins』2024.02『Rhapsody in Blue Reimagined / Lara Downes』2024.03『Djesse Vol. 4 / Jacob Collier』2024.04『Voyager / Moonchild』2024.05『Evidence with Don Cherry / Steve Lacy』2024.06『Quietude / Eliane Elias』2024.07『Alone Together / Lee Konitz, Brad Mehldau, Charlie Haden』2024.08『The Rough Dancer And The Cyclical Night (Tango Apasionado) / Astor Piazzolla』2024.09『Potro De Rabia Y Miel / Camarón De La Isla』2024.10『Calle 54 / Various』2024.11『Trumpets Of Michel-ange / Ibrahim Maalouf』



Reviewer information

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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

曽根麻央Official Site

曽根麻央 Monthly Disc Review2024.11_Ibrahim Maalouf : Trumpets Of Michel-ange:Monthly Disc Review

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Title : 『Trumpets Of Michel-ange』
Artist : Ibrahim Maalouf


今日は、曽根麻央です。
今日は先日ブルーノート東京にアルバムリリースコンサートを聴きに行ってとても印象的だった
Ibrahim Maaloufの新譜『Trumpets Of Michel-ange』を一緒に聴いてみましょう。
トランペットの革命と言っても良いこのプロジェクトについて少しお話しします。


ブルーノート東京のリリースに伺うと、そこにはドラムセットとアコースティックとエレクトリックのギター2本。
予習なしで伺った私は今日はトリオか、などと呑気にしてましたが、舞台が暗転するとイブラヒムを始めとするトランペットを持った男たちが5人現れ、それに加えてアルトサックス、ギター2人、ドラマーが現れました。
しかもよく見ると全員がクオーター・トーン・トランペットを持っているではないですか。
こんな編成は聞いたことありません。舞台に駆け上がってきただけで心を奪われてしまいました。
そこからはおおよそ70分のトランペットの芸術とエンターテイメントの世界。
これはみんなに体験してほしいと思い、今日記事にしています。



クオーター・トランペットについてはおいおい説明しますが
『ミケランジェロのトランペット』と題されたこの作品、一体どんなコンセプトなのでしょうか?
ミケランジェロはルネサンス期の彫刻家ですが、アートの世界に多大な影響を与えた人物として知られています。

それではこのアルバムはなぜトランペットにとって革新的なのか。

アルバムでもイブラヒムを含む5人のトランペット奏者が参加しています。
イブラヒムがリードし他が呼応する様な場面や、ユニゾンが多く、これはイブラヒムのルーツでもあるアラブ音楽に由来します。
そしてアラブ音楽では半音の半音、微分音(マイクロトーン)とも言いますが、より明確に半音が½(ハーフ)ノートなのに対し、¼(クオーター)ノートを多用します。
本来トランペットは3本バルブですので、¼ノートを出すためには、その音を吹いた瞬間にどこかの抜き差し菅を長く左手指を使って伸ばし¼音低くしてあげる必要があります。なのでアーティキュレーションはそれほどクリアなものにはなりません。


アラブ音楽のトランペット奏者としては私はSamy El Bablyという人が好きなのですが、彼は写真を見る限りでは3本バルブ(ロータリー菅)トランペットで¼音を駆使する人物です。


しかし、イブラヒムの父であるNassim Maaloufが、左手の人差し指で¼音下げられる様、4本目のバルブを付けたことでこの世界にアラビック音楽に特化した4本のバルブのトランペットが誕生した様です。

今回のIbrahim Maarofの『Trumpets Of Michel-ange』では、世界中誰でもこの4本バルブのトランペットが手にできる様にとの構想を得て製作したアルバムになります。
ブルーノート東京ではアルバムの発売と同時にイブラヒムが監修した4本バルブのエントリーモデルが、20万円程度で発売されましたとのことをメーカーさんのお話で伺いました。

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音楽の製作だけでなく、4本バルブトランペットの普及にも尽力しているイブラヒムですが、このアルバムでは他に4人のトランペット奏者とアルト奏者が正確に微分音をユニゾンする事でしか得られない、独特のニュアンスや音楽のパワーを表現することに成功してます。
これは4本バルブでしか表現できない事ですし、4本バルブの習得自体かなり難しい事ですので、彼の考えに賛同して研修を積んだ素晴らしいトランペット奏者が最低でも4人いることを考えると、彼の影響力は今後どんどん大きくなるのではないでしょうか?


4本バルブのトランペット奏者として有名なイブラヒムですが、そもそもトランペット奏者としてクラシック音楽もバリバリにこなす腕前で、パリのコンセルバトワールを卒業しています。
その豊かな音色は現在も健在で、リリースライブでも表現豊かな音色と、この上ないテクニックに驚きました。
正直、私が理想とするトランペットの音とテクニックを持っていたのでそれだけでファンになってしまいました。

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ブルーノートへは、私の師匠で藝大名誉教授の杉木峯夫先生と、新日本フィルのトランペット奏者・杉木淳一朗氏という、パリでイブラヒムの同門の方々と一緒にお招きいただき、少しお話しする機会もいただきました。


素晴らしい演奏をありがとうございました!


文:曽根麻央 Mao Soné



Recommend Disc

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Title :『Trumpets Of Michel-ange』
Artist : Ibrahim Maalouf
LABEL : Mister I.b.e.
発売年 : 2024年



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【SONG LIST】

01.The Proposal
02.Love Anthem
03.Fly with Me
04.Zajal
05.Stranger
06.The Smile of Rita
07.Au Revoir
08.Capitals
09.Timeless
10.Au Revoir - Live in Brittany - a capella version




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「Monthly Disc Review」アーカイブ曽根麻央
2020.04『Motherland / Danilo Perez』2020.05『Color Of Soil /タイガー大越』2020.06『Passages / Tom Harrell 』2020.07『Inventions And Dimensions / Herbie Hancock』2020.08『Birth Of The Cool / Miles Davis』2020.09『Chet Baker Sings / Chet Baker』2020.10『SFJAZZ Collective2 / SFJAZZ Collective』2020.11『Money Jungle: Provocative In Blue / Terri Lyne Carrington』2020.12『Three Suites / Duke Ellington』2021.01『Into The Blue / Nicholas Payton』2021.02『Ben And "Sweets" / Ben Webster & "Sweets" Edison』2021.03『Relaxin' With The MilesDavis Quintet / The Miles Davis Quintet 』2021.04『Something More / Buster Williams』2021.05『Booker Little / Booker Little』2021.06『Charms Of The Night Sky / Dave Douglas』2021.07『Play The Blues / Ray Bryant Trio』2021.08『The Sidewinder / Lee Morgan』2021.09『Esta Plena / Miguel Zenón』2021.10『Hub-Tones / Freddie Hubbard』2021.11『Concert By The Sea / Erroll Garner』2021.12『D・N・A Live In Tokyo / 日野皓正』2022.1『The Tony Bennett Bill Evans Album / Tony Bennett / Bill Evans』2022.2『Quiet Kenny / Kenny Dorham』2022.3『Take Five / Dave Brubeck』・2022.4『Old And New Dreams / Old And New Dreams』2022.5『Ella Fitzgerald And Louis Armstrong / Ella And Louis』2022.6『Live from Miami / Nu Deco Ensemble & Aaron Parks』2022.7『Oscar Peterson Trio + One / Oscar Peterson Trio Clark Terry』2022.8『Ugetsu/ Art Blakey & The Jazz Messengers』2022.9『Sun Goddess / Ramsey Lewis』2022.10『Emergence / Roy Hargrove Big Band』2022.11『Speak No Evil / Wayne Shorter』2022.12『The Revival / Cory Henry』2023.1『Complete Communion / Don Cherry』2023.2『Your Mother Should Know: Brad Mehldau Plays The Beatles / Brad Mehldau』2023.3『Without a Net / Wayne Shorter』2023.4『LADY IN LOVE / 中本マリ』2023.5『Songs Of New York / Mel Torme』2023.6『Covers / James Blake』2023.7『Siembra / Willie Colón & Rubén Blades』2023.8『Undercover Live at the Village Vanguard / Kurt Rosenwinkel』2023.09『Toshiko Mariano Quartet / Toshiko Mariano Quartet』2023.10『MAINS / J3PO』2023.11『Knower Forever / Knower』2023.12『Ella Wishes You A Swinging Christmas / Ella Fitzgerald』2024.01『Silence / Charlie Haden with Chet Baker, Enrico Pieranunzi, Billy Higgins』2024.02『Rhapsody in Blue Reimagined / Lara Downes』2024.03『Djesse Vol. 4 / Jacob Collier』2024.04『Voyager / Moonchild』2024.05『Evidence with Don Cherry / Steve Lacy』2024.06『Quietude / Eliane Elias』2024.07『Alone Together / Lee Konitz, Brad Mehldau, Charlie Haden』2024.08『The Rough Dancer And The Cyclical Night (Tango Apasionado) / Astor Piazzolla』2024.09『Potro De Rabia Y Miel / Camarón De La Isla』2024.10『Calle 54 / Various』



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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

曽根麻央Official Site

曽根麻央 Monthly Disc Review2024.10_Various : Calle 54:Monthly Disc Review

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Title : 『Calle 54』
Artist : Various


こんにちは、曽根麻央です。
今日は2000年にFernando Trueba監督が制作した音楽映画、『Calle 54』のサウンドトラックアルバムについて考察し聴いていきましょう。
今でもおそらくDVDという形で映画を購入することができます。この作品を体験するベストは映画を見ることなので、できたらそちらをお勧めします。
しかしサウンドトラックのアルバムも音楽作品としてレベルが非常に高く、これを知らなければ現代のラテンジャズを体験したことにはならないでしょう。ラテンジャズを世に知らしめた最高の作品だと思います。
映画では、1アーティストごとにアーティストの紹介ドキュメンタリーがまずあり、そのあと1曲それぞれのアーティストの演奏が交互に入っていて、なんと12アーティスト(グループ)を紹介しています。



Paquito D'Rivera
ラテンジャズの重鎮、キューバのサックス奏者のPaquito D'Riveraは自身の作品、「Panamerica」を演奏しています。
Panamericaとは北米・中米・南米を含む地域をさす言葉なので、そのあらゆるアメリカの音楽やカリブの音楽を融合させるPaquito D'Riveraの作曲家としての能力の高さも感じられる曲です。
この曲では様々なアメリカのリズムを聞くことができます。
バラードでクラリネットともにイントロが始まりキューバの歌が聞こえてきます。すると0:43くらいからLulabanche というBataというキューバの楽器を使って演奏されるリズムが登場します。
トランペットとバンドネオンの登場とともに舞台は急にアルゼンチンに移りモダン・タンゴのリズムに切り替わります。
2:24からはいわゆるAfro-Cuban 6/8と呼ばれる軽快なフィールに変わり、2:46からは有名なCha Chaになります。
3:09からはDanzonというキューバの古いポピュラー音楽のフィールになり、デリヴェラのサックスがフィーチャーされます。
3:29からはBossa Nova、4:02からはBataをフィーチャーしてChachalokafunというグルーヴ、そしてそのままグルーヴをドラムが引き継いでトランペットソロからのサックスとのソリが決まります。
その後ウクレレソロではメキシコやヴェネズウェラの音楽を思い浮かばせてくれます。
そこからバンドが戻ってきた時にはコロンビアやヴェネズエラのJoropoのようなグルーヴになります。ベース1拍目を弾かずに2-3拍を低音で強調する独特の三拍子です。

一言でラテンと言っても色々ありますね!
このように様々な国のラテンの要素が詰まった曲になっていて聞き応えがあります。



Eliane Elias
以前彼女のアルバムをこのMonthly Disc Reviewでも取り上げましたね。
素晴らしいピアニスト、シンガーでもあるEliane Eliasは、ここではトリオでBaden Powellが書いてStan Getzが演奏したことで有名な「Samba Triste」を軽快なテンポのヴァージョンで演奏しています。



Chano Domínguez
ラテンジャズ、ジャズ、フラメンコなど幅広いジャンルの音楽を手がけるChano Domínguezは、今回は「Oye Cómo Viene」という楽曲でフラメンコとジャズの融合を見事にデモンストレートしています。何より彼のピアノのタッチがが美しいことにも注目して聴いていただけると嬉しいです。
通常のジャズトリオの編成にパルマ(手拍子)やフラメンコダンス、そしてフラメンコ独特の歌が入り、素晴らしい世界観を作り出すことに成功してます。



Jerry González
Jerry Gonzálezはトランペッター、パーカッショニスト。プエルトリコをルーツに持つニューヨーカー。
「Earth Dance」ではジャズのスウィングとキューバのルンバの「Guaguanco」を見事に混在させて、ジャズもラテンもグルーヴの原点が一緒であることを我々に再認識させてくれている気がします。



Michel Camilo
素晴らしいドミニカ共和国出身のピアニスト、Michel Camilo。
ここではベーシストのAnthony JacksonとドラマーのHoracio El Negro HernandezのCamiloの伝説のトリオで出演しています。
曲はパッションに溢れていて、楽曲としても聞き応えがあるのはもちろんのこと、Camiloの研ぎ澄まされたピアノテクニックは聴いていて驚きを隠せなくなってしまいます。
トリオとしてグループの演奏を重ねているので、素晴らしく息が合っていて、このバンド独特のサウンドというのを確立しています。この作品前半のハイライトと言って良いでしょう。



Gato Barbieri
以前Don Cherryのアルバムを紹介した際に深く考察した偉大なサックス奏者Gato Barbieriの演奏。
「Introduccion, Llamerito Y Tango / Bolivia」ではテナーサックスを演奏しています。
サックス、ピアノ、ベース、ドラム、パーカッションというシンプルな編成ですが、音楽は壮大で、やはりこの偉人が行き着いたどこか境地を垣間見ることができる気がしています。
サウンドトラックの方では映画版では聴けない彼の声のオーバーダブを聴くことができ、音楽としてはこちらが完成系なのでしょう。



Tito Puente
Tito Puenteは、「Oye Como Va」を作曲したことでも知られる、ラテンジャズにおいて最も偉大なパーカッショニストの一人です。
「New Arrival」ではMamboとswingを交互に演奏する楽曲になっています。
Tito Puenteといえばこのグルーヴ!という内容になっています。



Chucho Valdes
キューバを代表するピアニストChucho Valdesは美しい自作曲「Caridad Amaro」を演奏しています。
自身のアルバム『Border-Free』ではトリオで録音していますが、ここではピアノ一本のソロ。
特に高音の力強く伸びのある音色が美しく聴くひとを感動させてくれることでしょう。



Chico O'Farrill
偉大な作曲家、ビッグバンドリーダーChico O'Farrillは、ここでは1950年にチャーリー・パーカーとレコーディングした「The Afro-Cuban Jazz Suites」を演奏しています。
この曲もm1と同じく様々なアフロのリズムを組み合わせて書かれています。
最初はBolero、Mambo、Guanguancoなどのリズムを経由して最高潮へ音楽を誘います。



Bebo Valdes And Cachao
Chucho Valdesの父であり、同じくキューバを代表する歴史的ピアニストBebo Valdesと、最高のラテンベース奏者であるCachaoのコラボ。
「Lágrimas Negras」という曲をキューバの古いリズムDanzonで演奏しているので、キューバの伝統的な音楽が聴けると思います。



Puntilla y Nueva Generacion
Orlando "Puntilla" Ríosというパーカッショニストを筆頭に、今最も人気のパーカッショニストPedrito Martinezなど、当時のニュー・ジェネレーションを率いて演奏しています。
Rumba Guanguancoのリズムで演奏しています。
もちろん最高にグルーヴしていて、これぞトラディショナルのアフロ・キューバン音楽だと言えるでしょう。
我々に本人にはなかなか馴染みのないリズムなので最初は拍子すら取れず困惑するでしょうが、よく耳をすましてクラーベを発見してみてください。そこからラテン音楽の世界が広がっています。



文:曽根麻央 Mao Soné



Recommend Disc

51Mevquo4RL._200.jpg
Title :『Calle 54』
Artist : Various
LABEL : Blue Note Records
発売年 : 2001年



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【SONG LIST】

01.Panamericana
02.Samba Triste
03.Oye Cómo Viene
04.Earth Dance
05.From Within
06.Introducción, Llamerito Y Tango/Bolivia
07.New Arrival
08.Caridad Amaro
09.Afro-Cuban Jazz Suite
10.Lágrimas Negras
11.Compa Galletano
12.La Comparsa




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「Monthly Disc Review」アーカイブ曽根麻央
2020.04『Motherland / Danilo Perez』2020.05『Color Of Soil /タイガー大越』2020.06『Passages / Tom Harrell 』2020.07『Inventions And Dimensions / Herbie Hancock』2020.08『Birth Of The Cool / Miles Davis』2020.09『Chet Baker Sings / Chet Baker』2020.10『SFJAZZ Collective2 / SFJAZZ Collective』2020.11『Money Jungle: Provocative In Blue / Terri Lyne Carrington』2020.12『Three Suites / Duke Ellington』2021.01『Into The Blue / Nicholas Payton』2021.02『Ben And "Sweets" / Ben Webster & "Sweets" Edison』2021.03『Relaxin' With The MilesDavis Quintet / The Miles Davis Quintet 』2021.04『Something More / Buster Williams』2021.05『Booker Little / Booker Little』2021.06『Charms Of The Night Sky / Dave Douglas』2021.07『Play The Blues / Ray Bryant Trio』2021.08『The Sidewinder / Lee Morgan』2021.09『Esta Plena / Miguel Zenón』2021.10『Hub-Tones / Freddie Hubbard』2021.11『Concert By The Sea / Erroll Garner』2021.12『D・N・A Live In Tokyo / 日野皓正』2022.1『The Tony Bennett Bill Evans Album / Tony Bennett / Bill Evans』2022.2『Quiet Kenny / Kenny Dorham』2022.3『Take Five / Dave Brubeck』・2022.4『Old And New Dreams / Old And New Dreams』2022.5『Ella Fitzgerald And Louis Armstrong / Ella And Louis』2022.6『Live from Miami / Nu Deco Ensemble & Aaron Parks』2022.7『Oscar Peterson Trio + One / Oscar Peterson Trio Clark Terry』2022.8『Ugetsu/ Art Blakey & The Jazz Messengers』2022.9『Sun Goddess / Ramsey Lewis』2022.10『Emergence / Roy Hargrove Big Band』2022.11『Speak No Evil / Wayne Shorter』2022.12『The Revival / Cory Henry』2023.1『Complete Communion / Don Cherry』2023.2『Your Mother Should Know: Brad Mehldau Plays The Beatles / Brad Mehldau』2023.3『Without a Net / Wayne Shorter』2023.4『LADY IN LOVE / 中本マリ』2023.5『Songs Of New York / Mel Torme』2023.6『Covers / James Blake』2023.7『Siembra / Willie Colón & Rubén Blades』2023.8『Undercover Live at the Village Vanguard / Kurt Rosenwinkel』2023.09『Toshiko Mariano Quartet / Toshiko Mariano Quartet』2023.10『MAINS / J3PO』2023.11『Knower Forever / Knower』2023.12『Ella Wishes You A Swinging Christmas / Ella Fitzgerald』2024.01『Silence / Charlie Haden with Chet Baker, Enrico Pieranunzi, Billy Higgins』2024.02『Rhapsody in Blue Reimagined / Lara Downes』2024.03『Djesse Vol. 4 / Jacob Collier』2024.04『Voyager / Moonchild』2024.05『Evidence with Don Cherry / Steve Lacy』2024.06『Quietude / Eliane Elias』2024.07『Alone Together / Lee Konitz, Brad Mehldau, Charlie Haden』2024.08『The Rough Dancer And The Cyclical Night (Tango Apasionado) / Astor Piazzolla』2024.09『Potro De Rabia Y Miel / Camarón De La Isla』



Reviewer information

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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

曽根麻央Official Site

曽根麻央 Monthly Disc Review2024.09_Camarón De La Isla : Potro De Rabia Y Miel:Monthly Disc Review

みなさんこんにちは。曽根麻央です。
今日はフラメンコの作品を紹介しようと思います。

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Title : 『Potro De Rabia Y Miel』
Artist : Camarón De La Isla


この作品は1992年の作品でCameron De La Islaというフラメンコを代表するシンガーの作品で、ギターの巨匠、Paco de LucíaやTomatitoが参加している事で知られています。

この作品を僕に紹介してくれたのは、今ではスペインで代表的なフラメンコ・ギター奏者となったYago Santosという友人なのですが、彼から絶対に聞かないといけないフラメンコ作品だと言われました。
また真偽の程は分かりませんが、その友人曰くシンセサイザーでモダンなサウンドを用いた最初のフラメンコ・アルバムであるとのことです。
フラメンコを体験するアルバムとしても素晴らしいのですが、そもそも非常に音楽的でアルバムとしても一瞬で聴き終えてしまう完成度の高い作品ですのでぜひ聴いてみて下さい。


さてTanguillos、Bulerías、Tangos、Rumba、Tarantaの代表的なフラメンコのスタイルで演奏されています。
ちなみにサブスクで聴くと、タイトルの後にこの曲がこのリズムですって()の中に書いてあるので、そこに注目しながら聴けるのもポイントです。

まずフラメンコといって有名なリズムはBuleríasですよね!これぞフラメンコというかっこいいビートです。
通常早い12拍子の場合が多いと思います。
一つ注意として、ここからのリズムについての説明はあくまでジャズやその他のジャンルを演奏している人から見た拍子やリズムの捉え方です。
フラメンコは12拍子を演奏するときに12から数え始めるので、12-1-2-3-4-5-6-7-8-9-10-11と数えるそうですが、そんなこと僕にはできません!普通に1から数えさせてください(笑)。
スペインでフラメンコのレッスンを受けた時もパーカッションの先生はそうやってわかりやすく教えてくれました。
Buleríasをスペインで習った時はひたすらこのリズムを手と足で体に入れ込むところから始まり、これだけで終わるほどこのリズムは難しいです。
というか日本に普通に住んでると身につかないリズム感だと思います。


2024-09-19.png


このアルバムのBuleríasの楽曲も基本的にはこのグルーヴが使われています。ぜひ楽曲に合わせてやってみてください。最初は難しいですが...


M5 やM9で用いられるRumbaはいわゆるキューバのルンバではなく、スペインのフラメンコのルンバです。といっても19-20世紀初頭のキューバ音楽の影響を多く受けていて、キューバのリズムをフラメンコの奏者が発展させたといって良いでしょう。
有名な曲ではジプシー・キングの「Volare」を想像するとどんなリズムかわかる方が多いかと思います。
キューバに影響を受けたといっても、キューバ音楽のルンバのようにクラーベ・パターンはありません。
基本的には8分音符が3-3-2のグループで演奏されてグルーヴを作ります。
歴史的にはパコ・デ・ルシアがパーカッション(カホン)をフラメンコに使うようになって今のスタイルになったと言って良いと思います。

M5ではブラスシンセが際立っています。



M9ではフラメンコ・ルンバでは珍しく、まるでキューバ・スタイルかのようにピアノでモントゥーノが演奏されます。



M7のTangosは、少しRumbaとにてますが、Rumbaより遅めの3-3-2のグルーヴですね。グルーヴが3-3-2のまとまりで音楽が動いているのはアルゼンチン・タンゴと一緒です。



M1のTanguillosは調べると色々な解釈があるようですが、聴いた感触だとミディアムな3拍子の曲で、しかし、1-2-3-1-2-3とも取れるし、1-2-3-4-5-6で1と3と5にアクセントがついて、大きな3拍子のようにも聴こえる、サイズの違う3拍子が同時存在するリズムかなと思います。



またM3でもあるTarantaはシンガーとギターリストの息の合い方だけで表現される、拍子のない楽曲のスタイルです。



ちなみに話はそれますが、僕のトランペットとこのアルバムを紹介してくれたYago Santosと二人でTarantaを作った音源があるのでぜひ聴いてみてください。1:46ぐらいからです。



文:曽根麻央 Mao Soné



Recommend Disc

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Title :『Potro De Rabia Y Miel』
Artist : Camarón De La Isla
LABEL : Universal Music Spain
発売年 : 1992年


【SONG LIST】

01.Una Rosa Pa Tu Pelo
02.Mi Nazareno
03.Se Me Partió La Barrena
04.Potro De Rabia Y Miel
05.La Primavera
06.Yo Vendo Pescaíto
07.Eres Como Un Laberinto
08.La Calle De Los Lunares
09.Un Caballo Y Una Yegua




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「Monthly Disc Review」アーカイブ曽根麻央
2020.04『Motherland / Danilo Perez』2020.05『Color Of Soil /タイガー大越』2020.06『Passages / Tom Harrell 』2020.07『Inventions And Dimensions / Herbie Hancock』2020.08『Birth Of The Cool / Miles Davis』2020.09『Chet Baker Sings / Chet Baker』2020.10『SFJAZZ Collective2 / SFJAZZ Collective』2020.11『Money Jungle: Provocative In Blue / Terri Lyne Carrington』2020.12『Three Suites / Duke Ellington』2021.01『Into The Blue / Nicholas Payton』2021.02『Ben And "Sweets" / Ben Webster & "Sweets" Edison』2021.03『Relaxin' With The MilesDavis Quintet / The Miles Davis Quintet 』2021.04『Something More / Buster Williams』2021.05『Booker Little / Booker Little』2021.06『Charms Of The Night Sky / Dave Douglas』2021.07『Play The Blues / Ray Bryant Trio』2021.08『The Sidewinder / Lee Morgan』2021.09『Esta Plena / Miguel Zenón』2021.10『Hub-Tones / Freddie Hubbard』2021.11『Concert By The Sea / Erroll Garner』2021.12『D・N・A Live In Tokyo / 日野皓正』2022.1『The Tony Bennett Bill Evans Album / Tony Bennett / Bill Evans』2022.2『Quiet Kenny / Kenny Dorham』2022.3『Take Five / Dave Brubeck』・2022.4『Old And New Dreams / Old And New Dreams』2022.5『Ella Fitzgerald And Louis Armstrong / Ella And Louis』2022.6『Live from Miami / Nu Deco Ensemble & Aaron Parks』2022.7『Oscar Peterson Trio + One / Oscar Peterson Trio Clark Terry』2022.8『Ugetsu/ Art Blakey & The Jazz Messengers』2022.9『Sun Goddess / Ramsey Lewis』2022.10『Emergence / Roy Hargrove Big Band』2022.11『Speak No Evil / Wayne Shorter』2022.12『The Revival / Cory Henry』2023.1『Complete Communion / Don Cherry』2023.2『Your Mother Should Know: Brad Mehldau Plays The Beatles / Brad Mehldau』2023.3『Without a Net / Wayne Shorter』2023.4『LADY IN LOVE / 中本マリ』2023.5『Songs Of New York / Mel Torme』2023.6『Covers / James Blake』2023.7『Siembra / Willie Colón & Rubén Blades』2023.8『Undercover Live at the Village Vanguard / Kurt Rosenwinkel』2023.09『Toshiko Mariano Quartet / Toshiko Mariano Quartet』2023.10『MAINS / J3PO』2023.11『Knower Forever / Knower』2023.12『Ella Wishes You A Swinging Christmas / Ella Fitzgerald』2024.01『Silence / Charlie Haden with Chet Baker, Enrico Pieranunzi, Billy Higgins』2024.02『Rhapsody in Blue Reimagined / Lara Downes』2024.03『Djesse Vol. 4 / Jacob Collier』2024.04『Voyager / Moonchild』2024.05『Evidence with Don Cherry / Steve Lacy』2024.06『Quietude / Eliane Elias』2024.07『Alone Together / Lee Konitz, Brad Mehldau, Charlie Haden』2024.08『The Rough Dancer And The Cyclical Night (Tango Apasionado) / Astor Piazzolla』



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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

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みなさんこんにちは、曽根麻央です。
実は今月、人生で初めてタンゴというジャンルを、これまた初めて共演する楽器のバンドネオン奏者・三浦一馬さんのグループで演奏する機会がありました。
本当に勉強になりましたし、メロディーは途中で感情溢れて泣きそうになるほど美しく情熱あふれる旋律で、、、大変素晴らしい経験になりました。
この仕事をいただいた時に、そういえば昔ヘビロテしていたタンゴのCDがあったなと思い出し、今回のチャレンジの勉強のために、演目とは全く違うのですが、改めて聴いてみた素晴らしいアルバムがあります。
今日はそのアルバムをご紹介したいなと思います。


その前に一つ宣伝です。
昨年リリースしたアルバム『PLAYS STANDARDS』のリリースコンサートから3曲、ライブ版を映像でリリースしました。
是非見てみてください!



Reflections in D / Serenade / Wave (LIVE at Keyaki No Hall) - Mao Sone


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Title : 『The Rough Dancer And The Cyclical Night (Tango Apasionado)』
Artist : Astor Piazzolla


さて今回紹介するのは、『The Rough Dancer and the Cyclical Night (Tango Apasionado) 』という、タンゴにジャズやクラシックの要素をふんだんに取り入れた Nuevo Tango=新しいタンゴ の生みの親でもあるアストラ・ピアソラのアルバムを紹介します。


バンドネオン奏者、作曲家のアストラ・ピアソラはアルゼンチン生まれですが、4歳から15歳まではアメリカのニューヨークで過ごしたそうで、ジャズもたくさん聴いていたようです。
この頃のジャズ、1925-35ぐらいですかね、といえば、ルイ・アームストロングの26年の「Heebie Jeebies」、28年の「West End Blues」などのヒット・ソングがあります。
デューク・エリントンも「Mood Indigo」(1930)、「Don't Mean A Thing」(1932)、「Sophisticated Lady」(1933)、「Solitude"」(1934)、「In a Sentimental Mood」(1935)などのジャズの名曲を次々と生み出した時期でもあります。


その後アルゼンチンに移住し、ピアソラはタンゴに興味を持ちました。そしてパリに留学するなどしてクラシック音楽の理論なども勉強した様です。
現在ではピアソラの音楽はクラシックの音楽家に取り扱われることが多いので、根本的にラテンやジャズの音楽というよりは、クラシックのように決め事の多い音楽といえます。


ピアソラは自身の有名な五重奏を結成すると、バンドネオン、ヴァイオリン、ピアノ、コントラバス、エレキギターという変わった編成で演奏活動の軸を定めることになります。
エレキギターってこの音楽にいること自体が意外だと思うんです。エレキギターのサウンドがあることが、今聞いてもピアソラの音楽を斬新なものにしている気がします。


参加メンバー
Astor Piazzolla - Bandoneon
Pablo Zinger - Piano
Fernando Suarez Paz - Violin
Andy Gonzales - Bass
Rodolfo Alchourron - Electric Guitar
Paquito D'Rivera - Alto Sax, Clarinet


今回紹介するアルバムはこの五重奏の編成にパキート・デリヴェラというラテンジャズの巨匠が数曲サックスとクラリネットで入っています。
またアンディー・ゴンザレスというラテンジャズのベーシストが参加していて、全体的にベースの音色や音楽のコアがはっきりしていて、とても聞きやすいです。


先ほどエレキギターがピアソラの音楽をユニークなものにしていると言いましたが、ヴァイオリンもクラシックにはない独特でミステリアスなニュアンスで、この音楽をスペシャルなものにしています。
そしてピアソラのバンドネオンの音色はもちろん唯一無二で、メロディーの歌い方は情熱的で完璧です。
時にリズムに正確に、バラードではリズムの線を超えて感情的にと、メリハリが素晴らしいのです。


この音楽は、きちんと作曲されているという点がとても魅力的です。
きちんと、と言うと語弊がありますが、おそらく書き譜の割合がかなり多い気がします。
個人のソロパートは少なく、アンサンブルで勝負しているアルバムな気がします。
もちろんM3の「Street Tango」ではピアソラやピアニストの素晴らしいソロパートがきける場面もあります。





そしてタンゴ独特の不協和音のハーモニーにも注目していただけたらと思います。
M5の「Knife Fight」の出だしなど、まさにそれです。





このアルバムにはラテンジャズの名手、パキートが参加していますが、登場するとある意味ドキっとします。
彼の特徴的な少ししゃくるようなニュアンスはラテンジャズでは聞き覚えがありますが、こういったメロディーや雰囲気の曲をその専門家のバンドで吹くと"異文化交流感" があり、僕なんかはハッとさせられます。


今月は久しぶりにタンゴを聴いて、初めて演奏する機会があり、改めてピアソラの美しい音楽に触れられてとても嬉しかったです。
ぜひみなさんにも共有したく、今回はピアソラのアルバムを紹介しました。
また次回の投稿をお楽しみに!


文:曽根麻央 Mao Soné



Recommend Disc

71IUmFik4YL._200.jpg
Title :『The Rough Dancer And The Cyclical Night (Tango Apasionado)』
Artist : Astor Piazzolla
LABEL : American Clavé
発売年 : 1988年



アマゾン詳細ページへ


【SONG LIST】

01.Prologue (Tango Apasionado)
02.Milonga For Three
03.Street Tango
04.Milonga Picaresque
05.Knife Fight
06.Leonora's Song
07.Prelude To The Cyclical Night (Pt.1)
08.Butchers Death
09.Leijia's Game
10.Milonga For Three (Reprise)
11.Bailongo
12.Leonora's Love Theme
13.Finale (Tango Apasionado)
14.Prelude To The Cyclical Night (Pt.2)




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「Monthly Disc Review」アーカイブ曽根麻央
2020.04『Motherland / Danilo Perez』2020.05『Color Of Soil /タイガー大越』2020.06『Passages / Tom Harrell 』2020.07『Inventions And Dimensions / Herbie Hancock』2020.08『Birth Of The Cool / Miles Davis』2020.09『Chet Baker Sings / Chet Baker』2020.10『SFJAZZ Collective2 / SFJAZZ Collective』2020.11『Money Jungle: Provocative In Blue / Terri Lyne Carrington』2020.12『Three Suites / Duke Ellington』2021.01『Into The Blue / Nicholas Payton』2021.02『Ben And "Sweets" / Ben Webster & "Sweets" Edison』2021.03『Relaxin' With The MilesDavis Quintet / The Miles Davis Quintet 』2021.04『Something More / Buster Williams』2021.05『Booker Little / Booker Little』2021.06『Charms Of The Night Sky / Dave Douglas』2021.07『Play The Blues / Ray Bryant Trio』2021.08『The Sidewinder / Lee Morgan』2021.09『Esta Plena / Miguel Zenón』2021.10『Hub-Tones / Freddie Hubbard』2021.11『Concert By The Sea / Erroll Garner』2021.12『D・N・A Live In Tokyo / 日野皓正』2022.1『The Tony Bennett Bill Evans Album / Tony Bennett / Bill Evans』2022.2『Quiet Kenny / Kenny Dorham』2022.3『Take Five / Dave Brubeck』・2022.4『Old And New Dreams / Old And New Dreams』2022.5『Ella Fitzgerald And Louis Armstrong / Ella And Louis』2022.6『Live from Miami / Nu Deco Ensemble & Aaron Parks』2022.7『Oscar Peterson Trio + One / Oscar Peterson Trio Clark Terry』2022.8『Ugetsu/ Art Blakey & The Jazz Messengers』2022.9『Sun Goddess / Ramsey Lewis』2022.10『Emergence / Roy Hargrove Big Band』2022.11『Speak No Evil / Wayne Shorter』2022.12『The Revival / Cory Henry』2023.1『Complete Communion / Don Cherry』2023.2『Your Mother Should Know: Brad Mehldau Plays The Beatles / Brad Mehldau』2023.3『Without a Net / Wayne Shorter』2023.4『LADY IN LOVE / 中本マリ』2023.5『Songs Of New York / Mel Torme』2023.6『Covers / James Blake』2023.7『Siembra / Willie Colón & Rubén Blades』2023.8『Undercover Live at the Village Vanguard / Kurt Rosenwinkel』2023.09『Toshiko Mariano Quartet / Toshiko Mariano Quartet』2023.10『MAINS / J3PO』2023.11『Knower Forever / Knower』2023.12『Ella Wishes You A Swinging Christmas / Ella Fitzgerald』2024.01『Silence / Charlie Haden with Chet Baker, Enrico Pieranunzi, Billy Higgins』2024.02『Rhapsody in Blue Reimagined / Lara Downes』2024.03『Djesse Vol. 4 / Jacob Collier』2024.04『Voyager / Moonchild』2024.05『Evidence with Don Cherry / Steve Lacy』2024.06『Quietude / Eliane Elias』2024.07『Alone Together / Lee Konitz, Brad Mehldau, Charlie Haden』



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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

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