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Monthly Disc Reviewの最近のブログ記事

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曽根麻央 Monthly Disc Review2025.12_Bing Crosby : Merry Christmas:Monthly Disc Review

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Title : 『Merry Christmas』
Artist : Bing Crosby


みなさんこんにちは、曽根麻央です。
今日は、アメリカ音楽史の中でも "最も長く親しまれているクリスマス・アルバム" ビング・クロスビーの 『Merry Christmas』 を取り上げます。
少し個人的な話ですが、僕も幼い頃は12月になると棚からこのLPを取り出し、A面ばかり繰り返し聴いていました。今回この記事を書くにあたり、実は初めてB面もしっかり聴いたほどです(笑)。


ビング・クロスビー(1903-1977)は歌手・俳優としてだけでなく、"アメリカ史上初のマルチメディアスター"と呼ばれる存在です。
本作『Merry Christmas』は、1942~1947年に録音された12曲をまとめ、1955年に 33⅓回転LP としてリリースされたもの(現在配信では『White Christmas』として出ているものと同内容)。元は 78回転盤やシングルとして出ていた音源をまとめ直した形態です。
代表曲「White Christmas」は ギネス認定・史上最も売れたシングルとしても知られ、クロスビーのクリスマス作品の中心に位置しています。


クロスビーは、マイクロフォンを活かした歌唱スタイルの確立者と言われています。
ポルタメントを滑らかに使ったメロディ処理、さりげない装飾、ロングトーンの柔らかいビブラート、これらは当時として革新的で、後のフランク・シナトラ、ディーン・マーティン、エルヴィス・プレスリー、さらにはジョン・レノン まで影響を与えたとされます。
映画出演も多く『Going My Way(我が道を往く)』ではアカデミー主演男優賞を獲得。シナトラやサミー・デイヴィスJr.そして Rat Pack と共演したミュージカル映画『Robin and the 7 Hoods』も今なお語り継がれる作品です。


A面は主に 讃美歌と伝統曲 を中心に構成され、アレンジ・歌唱・録音クオリティすべてが一流。ここが本作の"永遠性"を決定づけています。今日は主にA面を紹介していこうと思います。


1. Silent Night
ストリングスとチェレスタによる静かなイントロからクロスビーの包み込むような声が立ち上がります。途中から合唱が加わり、映画的とも言える壮麗さを持ちながら、どこか家庭的な温かさを失わないアレンジ。
ラジオや映画という当時のメディアを通じ、「クリスマス=ビング・クロスビーの声」というイメージが確立されました。


2. Adeste Fideles(神の御子は今宵しも)
18世紀から歌われる伝統的な聖歌。
本来荘厳なイメージのあるこの曲を、クロスビーは自然な揺らぎとポルタメントで柔らかく歌い、まるで"語りかける"ようなニュアンスを与えています。


3. White Christmas
アーヴィング・バーリンが映画『Holiday Inn』(1942)のために書き下ろした作品。
クロスビーの歌唱はあまりに象徴的で、世界的なクリスマス文化そのものに影響を与えました。ここで聴けるのが オリジナル録音 です。


4. God Rest Ye Merry Gentlemen
17世紀には既に歌われていたとされる伝統曲。
クロスビーと合唱団の掛け合い、テンポの微細な揺れ、ストリングスの温かいオブリガートが絶妙で、素朴ながら非常に洗練されたアレンジ。のちのナット・キング・コールやサイモン&ガーファンクルなど、多くのアーティストにも影響を与えた曲です。


5. Faith of Our Fathers(いにしえの聖徒の)
19世紀の讃美歌をしっとりと歌い上げるナンバー。クロスビーの低音の魅力が最も生きるトラックのひとつ。


6. I'll Be Home for Christmas
1943年の新曲として発表され、すぐに戦時下のアメリカで大きな支持を得ました。
兵士の"家に帰りたいという願い"を歌った歌詞が人々の心に響き、クロスビーのバージョンは今なお決定版とされています。


A面を見れば分かる通り、古い讃美歌の精神を尊重しつつ、より洗練された"新しいクリスマス音楽"のモデルを作ったことが最大の功績です。
これ以降、あらゆるアーティストがクリスマス作品を発表していきますが、その"フォーマット"を最初に確立したのは間違いなくクロスビーの本作でした。


文:曽根麻央 Mao Soné



Recommend Disc

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Title :『Merry Christmas』
Artist : Bing Crosby
LABEL : Decca
発売年 : 1955年



アマゾン詳細ページへ


【SONG LIST】

01. Silent Night
02. Adeste Fideles (Oh, Come, All Ye Faithful)
03. White Christmas
04. God Rest Ye Merry, Gentlemen
05. Faith Of Our Fathers
06. I'll Be Home For Christmas
07. Jingle Bells
08. Santa Claus Is Comin' To Town
09. Silver Bells
10. It's Beginning To Look Like Christmas
11. Christmas In Killarney
12. Mele Kalikimaka




曽根麻央『8つの小品』
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ジャズピアニスト兼作曲家・曽根麻央が贈る最新スタジオアルバム『8つの小品』。第一子誕生という人生最大の節目に生まれたこの作品は、家族の愛、日常の輝き、そして音楽への深い探求が織り込まれた45分間の組曲。緻密なオーケストレーション、ジャズとクラシックの垣根を超えた響き、そして親子の時間から生まれた優しくもダイナミックな旋律。新たな旅立ちの予感と共に、音楽の喜びを届ける一枚。

【Songs】
1. Ⅰ. Overture (feat. Ryo Miyachi, Hironori Suzuki)
2. Ⅱ. The Light You'll See
3. Ⅲ. Maria's Eye
4. Ⅳ. When the Angel Cries (feat. May Inoue, Ryo Miyachi, Hironori Suzuki)
5. Ⅴ. Lullaby
6. Ⅵ. Rumba (feat. Kojiro Tokunaga, Ryo Miyachi, Kan)
7. Ⅶ. Love Letter (feat. Edmar Colón)
8. Ⅷ. Finale Part 1 (feat. Kan)
9. Ⅷ. Finale Part 2 (feat. Ryo Miyachi, Hironori Suzuki)

【CD Bonus Track】
10. Waltz for Debby
11. A Song for Jobim
12. Lullaby (Piano Solo ver.)

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「Monthly Disc Review」アーカイブ曽根麻央
2020.04『Motherland / Danilo Perez』2020.05『Color Of Soil /タイガー大越』2020.06『Passages / Tom Harrell 』2020.07『Inventions And Dimensions / Herbie Hancock』2020.08『Birth Of The Cool / Miles Davis』2020.09『Chet Baker Sings / Chet Baker』2020.10『SFJAZZ Collective2 / SFJAZZ Collective』2020.11『Money Jungle: Provocative In Blue / Terri Lyne Carrington』2020.12『Three Suites / Duke Ellington』2021.01『Into The Blue / Nicholas Payton』2021.02『Ben And "Sweets" / Ben Webster & "Sweets" Edison』2021.03『Relaxin' With The MilesDavis Quintet / The Miles Davis Quintet 』2021.04『Something More / Buster Williams』2021.05『Booker Little / Booker Little』2021.06『Charms Of The Night Sky / Dave Douglas』2021.07『Play The Blues / Ray Bryant Trio』2021.08『The Sidewinder / Lee Morgan』2021.09『Esta Plena / Miguel Zenón』2021.10『Hub-Tones / Freddie Hubbard』2021.11『Concert By The Sea / Erroll Garner』2021.12『D・N・A Live In Tokyo / 日野皓正』2022.1『The Tony Bennett Bill Evans Album / Tony Bennett / Bill Evans』2022.2『Quiet Kenny / Kenny Dorham』2022.3『Take Five / Dave Brubeck』・2022.4『Old And New Dreams / Old And New Dreams』2022.5『Ella Fitzgerald And Louis Armstrong / Ella And Louis』2022.6『Live from Miami / Nu Deco Ensemble & Aaron Parks』2022.7『Oscar Peterson Trio + One / Oscar Peterson Trio Clark Terry』2022.8『Ugetsu/ Art Blakey & The Jazz Messengers』2022.9『Sun Goddess / Ramsey Lewis』2022.10『Emergence / Roy Hargrove Big Band』2022.11『Speak No Evil / Wayne Shorter』2022.12『The Revival / Cory Henry』2023.1『Complete Communion / Don Cherry』2023.2『Your Mother Should Know: Brad Mehldau Plays The Beatles / Brad Mehldau』2023.3『Without a Net / Wayne Shorter』2023.4『LADY IN LOVE / 中本マリ』2023.5『Songs Of New York / Mel Torme』2023.6『Covers / James Blake』2023.7『Siembra / Willie Colón & Rubén Blades』2023.8『Undercover Live at the Village Vanguard / Kurt Rosenwinkel』2023.09『Toshiko Mariano Quartet / Toshiko Mariano Quartet』2023.10『MAINS / J3PO』2023.11『Knower Forever / Knower』2023.12『Ella Wishes You A Swinging Christmas / Ella Fitzgerald』2024.01『Silence / Charlie Haden with Chet Baker, Enrico Pieranunzi, Billy Higgins』2024.02『Rhapsody in Blue Reimagined / Lara Downes』2024.03『Djesse Vol. 4 / Jacob Collier』2024.04『Voyager / Moonchild』2024.05『Evidence with Don Cherry / Steve Lacy』2024.06『Quietude / Eliane Elias』2024.07『Alone Together / Lee Konitz, Brad Mehldau, Charlie Haden』2024.08『The Rough Dancer And The Cyclical Night (Tango Apasionado) / Astor Piazzolla』2024.09『Potro De Rabia Y Miel / Camarón De La Isla』2024.10『Calle 54 / Various』2024.11『Trumpets Of Michel-ange / Ibrahim Maalouf』2024.12『Sings for Only the Lonely / Frank Sinatra』2025.01『Hero Worship / Hal Crook』2025.02『Undercurrent / Kenny Drew』2025.03『Live In Toronto 1952 / Lennie Tristano Quintet』2025.04『Antidote / Chick Corea & The Spanish Heart Band』2025.05『Hot Five & Hot Seven / Louis Armstrong』2025.06『Panamonk / Danilo Pérez』2025.07『Nat King Cole Sings/George Shearing Plays / Nat King Cole、George Shearing』2025.08『Clifford Brown and Max Roach / Clifford Brown and Max Roach』2025.09『Montreux '77 / Ray Bryant』2025.10『Crystal Silence / Gary Burton & Chick Corea』2025.11『North Sea Jazz Legendary Concerts / Wayne Shorter』

Reviewer information

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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

曽根麻央Official Site

曽根麻央 Monthly Disc Review2025.11_Wayne Shorter : North Sea Jazz Legendary Concerts:Monthly Disc Review

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Title : 『North Sea Jazz Legendary Concerts』
Artist : Wayne Shorter


みなさんこんにちは、曽根麻央です。
今日はウェイン・ショーターの隠れた名盤『North Sea Jazz Legendary Concerts』をご紹介します。ショーター後期といえば、いまや伝説的な存在となったウェイン・ショーター・カルテットの一連のライヴ作品を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。

時系列で並べると、

・2002年(2001年録音)『Footprints Live!』
・2005年(2002-2004年録音)『Beyond the Sound Barrier』
・2013年(2010-2011年録音)『Without a Net』
・2018年(2016年録音)『Emanon』

となります。『Emanon』は3枚組で、1枚目がオーケストラとカルテットのスタジオ録音、2~3枚目がカルテットのライヴ録音という構成です。


この流れの中で、よく話題に上がるのが、2003年のスタジオ作『Alegría』です。実はこのアルバム、カルテット結成以前のレコーディングで、ショーターが新カルテットのメンバーを決めるために行った"試し"のセッションであったという話を、ピアニストのダニーロ・ペレスとジョン・パティトゥッチ本人から直接聞きました。
ブラッド・メルドーかペレスか、テリ・リン・キャリントンかブライアン・ブレイドか――。
ショーターはさまざまな可能性を探っていましたが、アルバム1曲目「Sacajawea」のラストで聞こえるショーターの笑い声の瞬間、カルテットの方向性が決まったというのです。
こうして誕生したショーター・カルテットは、その後およそ20年にわたり現代ジャズの指針を示し続けました。


改めて今回の『North Sea Jazz Legendary Concerts』を見てみると、ベースがジョン・パティトゥッチではなくクリスチャン・マクブライドになっている点が目を引きます。本作は 2002年のノース・シー・ジャズ・フェスティバルで行われた複数の公演から編まれたもので

・ハービー・ハンコックとのデュオ(7月12日)
・ショーター・カルテット(7月13日)
・Prima La Música Orchestra との共演(7月14日)

という3日間の演奏を収録しています。
カルテット期の真っただ中ですが、この時はパティトゥッチが参加できず、マクブライドが代役として出演しています。


このアルバムには『Footprints Live!』に残る"初期カルテットの荒々しさ"に加え、ペレスのハーモニーがさらに広がりつつある"中期以降のサウンドの萌芽"が聴き取れます。また、Prima La Música Orchestra との共演2曲は、『Without a Net』や『Emanon』で本格的に提示された〈オーケストラとジャズ〉の融合が、すでにこの段階で形になりつつあったことを示す貴重な記録です。
最後の「Meridianne (A Wood Sylph)」は、巨匠ハービー・ハンコックとのデュオ(ボーナストラック的収録)で、ファンにはたまらない演奏です。


01. Orbits
オリジナルは1967年のマイルス・デイヴィス『Miles Smiles』に収録。
当時の"コードレス"なスリリングな雰囲気とは異なり、本作では美しいオーケストレーションのもとテーマが提示され、その後Fを中心にカルテット全員が緊密な即興を展開。オーケストラとジャズが自然に共存する、見事な構成になっています。


02. Midnight in Carlotta's Hair
こちらもオーケストラとの共演。2017年のエスペランザ・スポルディング&テリ・リン・キャリントンとのライヴ盤にも収録されている佳曲です。
印象的なベースラインの上でカルテットが自由に即興を繰り広げ、オーケストラが加わるとリリカルかつエキゾチックな主題が姿を変えながら現れ、時間をかけて大きなクライマックスへ向かいます。
なお、この曲のオーケストラスコアはSchottからデジタルで入手可能です。
続く3曲はカルテット編成による演奏です。


03. Smilin' Through
1919年の古いバラード。『Beyond the Sound Barrier』でも取り上げられており、ショーターが愛したレパートリーであることがわかります。メロディーが何度も姿を変える背後で、リズムセクションが自在に色合いを変えてゆく演奏。


04. Footprints
1967年『Miles Smiles』収録、ショーターを代表する名曲。『Footprints Live!』での演奏が広く知られていますが、本作でもカルテットが深い呼吸で再解釈を行っています。


05. Aung San Suu Kyi
1997年、ハービー・ハンコックとのデュオ作『1+1』で初演されたオリジナル。『Footprints Live!』にも収録。親しみやすいブルース形式と、アジア的ニュアンスを含むメロディーが魅力です。


06. Meridianne (A Wood Sylph)
ハンコックとのデュオ演奏。『1+1』にも収録されており、本作では貴重なボーナストラックとして楽しめます。


文:曽根麻央 Mao Soné



Recommend Disc

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Title :『North Sea Jazz Legendary Concerts』
Artist : Wayne Shorter
LABEL : Bob City
発売年 : 2013年



アマゾン詳細ページへ


【SONG LIST】

01. Orbits
02. Midnight In Carlotta's Hair
03. Smilin' Through
04. Footprints
05. Aung San Suu Kyi
06. Meridianne (A Wood Sylph)




曽根麻央『8つの小品』
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ジャズピアニスト兼作曲家・曽根麻央が贈る最新スタジオアルバム『8つの小品』。第一子誕生という人生最大の節目に生まれたこの作品は、家族の愛、日常の輝き、そして音楽への深い探求が織り込まれた45分間の組曲。緻密なオーケストレーション、ジャズとクラシックの垣根を超えた響き、そして親子の時間から生まれた優しくもダイナミックな旋律。新たな旅立ちの予感と共に、音楽の喜びを届ける一枚。

【Songs】
1. Ⅰ. Overture (feat. Ryo Miyachi, Hironori Suzuki)
2. Ⅱ. The Light You'll See
3. Ⅲ. Maria's Eye
4. Ⅳ. When the Angel Cries (feat. May Inoue, Ryo Miyachi, Hironori Suzuki)
5. Ⅴ. Lullaby
6. Ⅵ. Rumba (feat. Kojiro Tokunaga, Ryo Miyachi, Kan)
7. Ⅶ. Love Letter (feat. Edmar Colón)
8. Ⅷ. Finale Part 1 (feat. Kan)
9. Ⅷ. Finale Part 2 (feat. Ryo Miyachi, Hironori Suzuki)

【CD Bonus Track】
10. Waltz for Debby
11. A Song for Jobim
12. Lullaby (Piano Solo ver.)

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「Monthly Disc Review」アーカイブ曽根麻央
2020.04『Motherland / Danilo Perez』2020.05『Color Of Soil /タイガー大越』2020.06『Passages / Tom Harrell 』2020.07『Inventions And Dimensions / Herbie Hancock』2020.08『Birth Of The Cool / Miles Davis』2020.09『Chet Baker Sings / Chet Baker』2020.10『SFJAZZ Collective2 / SFJAZZ Collective』2020.11『Money Jungle: Provocative In Blue / Terri Lyne Carrington』2020.12『Three Suites / Duke Ellington』2021.01『Into The Blue / Nicholas Payton』2021.02『Ben And "Sweets" / Ben Webster & "Sweets" Edison』2021.03『Relaxin' With The MilesDavis Quintet / The Miles Davis Quintet 』2021.04『Something More / Buster Williams』2021.05『Booker Little / Booker Little』2021.06『Charms Of The Night Sky / Dave Douglas』2021.07『Play The Blues / Ray Bryant Trio』2021.08『The Sidewinder / Lee Morgan』2021.09『Esta Plena / Miguel Zenón』2021.10『Hub-Tones / Freddie Hubbard』2021.11『Concert By The Sea / Erroll Garner』2021.12『D・N・A Live In Tokyo / 日野皓正』2022.1『The Tony Bennett Bill Evans Album / Tony Bennett / Bill Evans』2022.2『Quiet Kenny / Kenny Dorham』2022.3『Take Five / Dave Brubeck』・2022.4『Old And New Dreams / Old And New Dreams』2022.5『Ella Fitzgerald And Louis Armstrong / Ella And Louis』2022.6『Live from Miami / Nu Deco Ensemble & Aaron Parks』2022.7『Oscar Peterson Trio + One / Oscar Peterson Trio Clark Terry』2022.8『Ugetsu/ Art Blakey & The Jazz Messengers』2022.9『Sun Goddess / Ramsey Lewis』2022.10『Emergence / Roy Hargrove Big Band』2022.11『Speak No Evil / Wayne Shorter』2022.12『The Revival / Cory Henry』2023.1『Complete Communion / Don Cherry』2023.2『Your Mother Should Know: Brad Mehldau Plays The Beatles / Brad Mehldau』2023.3『Without a Net / Wayne Shorter』2023.4『LADY IN LOVE / 中本マリ』2023.5『Songs Of New York / Mel Torme』2023.6『Covers / James Blake』2023.7『Siembra / Willie Colón & Rubén Blades』2023.8『Undercover Live at the Village Vanguard / Kurt Rosenwinkel』2023.09『Toshiko Mariano Quartet / Toshiko Mariano Quartet』2023.10『MAINS / J3PO』2023.11『Knower Forever / Knower』2023.12『Ella Wishes You A Swinging Christmas / Ella Fitzgerald』2024.01『Silence / Charlie Haden with Chet Baker, Enrico Pieranunzi, Billy Higgins』2024.02『Rhapsody in Blue Reimagined / Lara Downes』2024.03『Djesse Vol. 4 / Jacob Collier』2024.04『Voyager / Moonchild』2024.05『Evidence with Don Cherry / Steve Lacy』2024.06『Quietude / Eliane Elias』2024.07『Alone Together / Lee Konitz, Brad Mehldau, Charlie Haden』2024.08『The Rough Dancer And The Cyclical Night (Tango Apasionado) / Astor Piazzolla』2024.09『Potro De Rabia Y Miel / Camarón De La Isla』2024.10『Calle 54 / Various』2024.11『Trumpets Of Michel-ange / Ibrahim Maalouf』2024.12『Sings for Only the Lonely / Frank Sinatra』2025.01『Hero Worship / Hal Crook』2025.02『Undercurrent / Kenny Drew』2025.03『Live In Toronto 1952 / Lennie Tristano Quintet』2025.04『Antidote / Chick Corea & The Spanish Heart Band』2025.05『Hot Five & Hot Seven / Louis Armstrong』2025.06『Panamonk / Danilo Pérez』2025.07『Nat King Cole Sings/George Shearing Plays / Nat King Cole、George Shearing』2025.08『Clifford Brown and Max Roach / Clifford Brown and Max Roach』2025.09『Montreux '77 / Ray Bryant』2025.10『Crystal Silence / Gary Burton & Chick Corea』

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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

曽根麻央Official Site

曽根麻央 Monthly Disc Review2025.10_Gary Burton / Chick Corea : Crystal Silence:Monthly Disc Review

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みなさんこんにちは、曽根麻央です。
今日は、1973年にリリースされた Gary Burton と Chick Corea のデュオアルバム『Crystal Silence』を聴いていこうと思います。

その前に少しだけお知らせです。
先月リリースされた私の最新アルバム『8つの小品』のリリースライブが決定しました!
ジャズトリオにパーカッション、ストリングス、ホーンセクションも加わる大規模なステージになります。
ぜひ、この機会をお見逃しなく!

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https://www.cottonclubjapan.co.jp/jp/sp/artists/mao-sone/

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Title : 『Crystal Silence』
Artist : Gary Burton & Chick Corea

さて、『Crystal Silence』は、二人の巨匠による美しい音の会話が楽しめる名盤です。
収録曲は主にチック・コリアのオリジナルで構成されています。

まず、ゲーリー・バートンについて。
彼は1943年生まれのヴィブラフォン奏者で、「バートン・グリップ」という独自の持ち方を生み出しました。
片手に2本ずつマレットを持ち、音楽に合わせて角度を自在に変えられるんです。
この奏法によって、ヴィブラフォンでも複雑な和音や、美しいアルペジオを表現できるようになりました。
また、使っていない方のマレットで音をミュートすることで、和音を響かせながらメロディーを分離させることもできる。
つまり、彼はヴィブラフォンを"和音と旋律を自在に行き来できるソロ楽器"に進化させたんですね。
バークリー音楽大学で30年以上教鞭をとり、日本人ではタイガー大越さんや小曽根真さんも彼の教え子として知られています。

一方、チック・コリアは1941年生まれのピアニスト、作曲家。
彼はもともとドラマーでもあったので、圧倒的なリズム感を持っています。
そのリズムから生まれるフレーズや構成のアイデアが、彼の音楽世界をより独創的なものにしています。

このアルバムのミックスもとても特徴的です。
ヴィブラフォンは低音が左、高音が右に広く振られていて、ピアノはやや左寄り。
でも決してぶつからず、2つの楽器が見事に空間を使い分けています。



1. 「Señor Mouse」
スペイン的な和声感やリズムを持つ一曲。
のちのチック・コリアの「Spanish Heart Band」に通じる雰囲気です。
ラテン的なエネルギーを持ちながら、最後は静かに消えていくようなエンディングが美しいですね。


2. 「Arise, Her Eyes」
いきなり登場するのが、バートンの"音のベンディング"技法。
叩いた音板を別のマレットで押さえて音程を変えるという、非常に繊細なテクニックです。
ベーシストのスティーヴ・スワロウの曲で、浮遊感のある音世界を作り出しています。


3. 「I'm Your Pal」
同じくスティーヴ・スワロウ作曲。讃美歌のように静かで温かい雰囲気の曲です。


4. 「Desert Air」
ピアノとヴィブラフォンの音がまるで溶け合うように響きます。
聴いていると、どちらの音なのか分からなくなるほど。
早めの3拍子が心地よい、チック・コリアらしい作品です。


5. 「Crystal Silence」
アルバムタイトル曲で、最も長いトラック。
アナログではB面の1曲目です。
ピアノのアルペジオの上に、ヴィブラフォンのメロディーが浮かび上がる場面では、まるでアルバムジャケットの風景が見えるようです。


6. 「Falling Grace」
再びスティーヴ・スワロウの名曲。
今ではジャズ・スタンダードとしてもよく演奏されます。
拍の頭が分からなくなるようなループ感があり、不思議な美しさを持った一曲です。


7. 「Feelings and Things」
作曲家のマイケル・ギブスの曲。ヴィブラフォンとピアノが同時に別々のメロディーを演奏する場面が多く、両者の主張が不思議と混ざり合い、他の楽曲にはない魅力を聴かせてくれます。


8. 「Children's Song」
前曲とは対照的に、とてもシンプルで透明感のある一曲。
ピアノとヴィブラフォンのユニゾンの響きが印象的です。


9. 「What Game Shall We Play Today」
Return To Foreverでもおなじみのチック・コリアの代表曲。
ここではメロディーよりも、二人の即興的な"対話"が中心。
まさに「会話するような音楽」です。


文:曽根麻央 Mao Soné



Recommend Disc

715nIFNvZdL._200.jpeg
Title :『Crystal Silence』
Artist : Gary Burton & Chick Corea
LABEL : ECM Records
発売年 : 1973年



アマゾン詳細ページへ


【SONG LIST】

01. Señor Mouse
02. Arise, Her Eyes
03. I'm Your Pal
04. Desert Air
05. Crystal Silence
06. Falling Grace
07. Feelings And Things
08. Childrens Song
09. What Game Shall We Play Today



曽根麻央『8つの小品』
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ジャズピアニスト兼作曲家・曽根麻央が贈る最新スタジオアルバム『8つの小品』。第一子誕生という人生最大の節目に生まれたこの作品は、家族の愛、日常の輝き、そして音楽への深い探求が織り込まれた45分間の組曲。緻密なオーケストレーション、ジャズとクラシックの垣根を超えた響き、そして親子の時間から生まれた優しくもダイナミックな旋律。新たな旅立ちの予感と共に、音楽の喜びを届ける一枚。

【Songs】
1. Ⅰ. Overture (feat. Ryo Miyachi, Hironori Suzuki)
2. Ⅱ. The Light You'll See
3. Ⅲ. Maria's Eye
4. Ⅳ. When the Angel Cries (feat. May Inoue, Ryo Miyachi, Hironori Suzuki)
5. Ⅴ. Lullaby
6. Ⅵ. Rumba (feat. Kojiro Tokunaga, Ryo Miyachi, Kan)
7. Ⅶ. Love Letter (feat. Edmar Colón)
8. Ⅷ. Finale Part 1 (feat. Kan)
9. Ⅷ. Finale Part 2 (feat. Ryo Miyachi, Hironori Suzuki)

【CD Bonus Track】
10. Waltz for Debby
11. A Song for Jobim
12. Lullaby (Piano Solo ver.)

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「Monthly Disc Review」アーカイブ曽根麻央
2020.04『Motherland / Danilo Perez』2020.05『Color Of Soil /タイガー大越』2020.06『Passages / Tom Harrell 』2020.07『Inventions And Dimensions / Herbie Hancock』2020.08『Birth Of The Cool / Miles Davis』2020.09『Chet Baker Sings / Chet Baker』2020.10『SFJAZZ Collective2 / SFJAZZ Collective』2020.11『Money Jungle: Provocative In Blue / Terri Lyne Carrington』2020.12『Three Suites / Duke Ellington』2021.01『Into The Blue / Nicholas Payton』2021.02『Ben And "Sweets" / Ben Webster & "Sweets" Edison』2021.03『Relaxin' With The MilesDavis Quintet / The Miles Davis Quintet 』2021.04『Something More / Buster Williams』2021.05『Booker Little / Booker Little』2021.06『Charms Of The Night Sky / Dave Douglas』2021.07『Play The Blues / Ray Bryant Trio』2021.08『The Sidewinder / Lee Morgan』2021.09『Esta Plena / Miguel Zenón』2021.10『Hub-Tones / Freddie Hubbard』2021.11『Concert By The Sea / Erroll Garner』2021.12『D・N・A Live In Tokyo / 日野皓正』2022.1『The Tony Bennett Bill Evans Album / Tony Bennett / Bill Evans』2022.2『Quiet Kenny / Kenny Dorham』2022.3『Take Five / Dave Brubeck』・2022.4『Old And New Dreams / Old And New Dreams』2022.5『Ella Fitzgerald And Louis Armstrong / Ella And Louis』2022.6『Live from Miami / Nu Deco Ensemble & Aaron Parks』2022.7『Oscar Peterson Trio + One / Oscar Peterson Trio Clark Terry』2022.8『Ugetsu/ Art Blakey & The Jazz Messengers』2022.9『Sun Goddess / Ramsey Lewis』2022.10『Emergence / Roy Hargrove Big Band』2022.11『Speak No Evil / Wayne Shorter』2022.12『The Revival / Cory Henry』2023.1『Complete Communion / Don Cherry』2023.2『Your Mother Should Know: Brad Mehldau Plays The Beatles / Brad Mehldau』2023.3『Without a Net / Wayne Shorter』2023.4『LADY IN LOVE / 中本マリ』2023.5『Songs Of New York / Mel Torme』2023.6『Covers / James Blake』2023.7『Siembra / Willie Colón & Rubén Blades』2023.8『Undercover Live at the Village Vanguard / Kurt Rosenwinkel』2023.09『Toshiko Mariano Quartet / Toshiko Mariano Quartet』2023.10『MAINS / J3PO』2023.11『Knower Forever / Knower』2023.12『Ella Wishes You A Swinging Christmas / Ella Fitzgerald』2024.01『Silence / Charlie Haden with Chet Baker, Enrico Pieranunzi, Billy Higgins』2024.02『Rhapsody in Blue Reimagined / Lara Downes』2024.03『Djesse Vol. 4 / Jacob Collier』2024.04『Voyager / Moonchild』2024.05『Evidence with Don Cherry / Steve Lacy』2024.06『Quietude / Eliane Elias』2024.07『Alone Together / Lee Konitz, Brad Mehldau, Charlie Haden』2024.08『The Rough Dancer And The Cyclical Night (Tango Apasionado) / Astor Piazzolla』2024.09『Potro De Rabia Y Miel / Camarón De La Isla』2024.10『Calle 54 / Various』2024.11『Trumpets Of Michel-ange / Ibrahim Maalouf』2024.12『Sings for Only the Lonely / Frank Sinatra』2025.01『Hero Worship / Hal Crook』2025.02『Undercurrent / Kenny Drew』2025.03『Live In Toronto 1952 / Lennie Tristano Quintet』2025.04『Antidote / Chick Corea & The Spanish Heart Band』2025.05『Hot Five & Hot Seven / Louis Armstrong』2025.06『Panamonk / Danilo Pérez』2025.07『Nat King Cole Sings/George Shearing Plays / Nat King Cole、George Shearing』2025.08『Clifford Brown and Max Roach / Clifford Brown and Max Roach』2025.09『Montreux '77 / Ray Bryant』

Reviewer information

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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

曽根麻央Official Site

曽根麻央 Monthly Disc Review2025.09_Ray Bryant : Montreux '77:Monthly Disc Review

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皆さんこんにちは、曽根麻央です。
今日はピアノの名手、レイ・ブライアントによるライヴ録音のソロアルバム『Montreux '77』(Pablo Records, 1977年)をご紹介します。
ブライアントのソロピアノは、一人で演奏しているとは思えないほど厚みがあり、グルーヴは常に強力です。まさに「ジャズ・ソロピアノの教科書」とも呼べる存在ですが、同時に彼の恵まれた体格を活かした奏法は、他のピアニストには簡単に真似できないものとされています。


そのレビュー前に一つお知らせです。
今月10日ついに私・曽根麻央の4枚目のアルバム『8つの小品』がリリースされました。ジャズとクラシック、そしてワールド・ミュージック、まるで世界旅行をしているような様々な文化、景色詰め込んだ音楽をジャズトリオとオーケストラがお届けします。ぜひお手にとって聴いてください。
【amazon】
https://amzn.asia/d/eIymYNQ
【tower record】
https://tower.jp/item/6932408?srsltid=AfmBOoqThYX9q5nYRtMJUdDHnSX5lFx5wZfqf-e9jvhaQhK9OnIB35b5

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Title : 『Montreux '77』
Artist : Ray Bryant

レイ・ブライアントは1972年のモントルー・ジャズ・フェスティバルでもソロ演奏を行い、その模様は『Alone at Montreux』(Prestige, 1972)として残されています。これはオスカー・ピーターソンが直前に出演をキャンセルしたため、急遽ブライアントが代役を務めた公演でした。準備不足の中で初のソロ公演を見事に成功させたことで、その後のソロピアニストとしてのキャリアの出発点となった、伝説的なステージです。
今回取り上げる『Montreux '77』は、その5年後に同じフェスティバルで行われたステージで、より洗練されたアレンジと、一般のリスナーにも親しみやすい選曲が並ぶ充実作です。個人的には『Alone at Montreux』以上におすすめしたいアルバムです。


1931年フィラデルフィア生まれ。14歳でプロ活動を開始し、地元クラブ「ブルーノート」のハウスピアニストとして経験を積みました。ニューヨークに拠点を移すまでにすでに多くの一流プレイヤーの信頼を得ており、フィラデルフィア時代の録音にはマイルス・デイヴィス『Quintet/Sextet』(1955)やソニー・ロリンズ『Work Time』(1956)などがあります。
その後はカーメン・マクレエの伴奏者を務め、エラ・フィッツジェラルドやアレサ・フランクリンといった名歌手の録音にも参加しました。
1950年代後半には『Ray Bryant Trio』(1957)などトリオ作品も発表されましたが、やはり彼の真骨頂は、ブギウギやストライドといった伝統的な左手のスタイルを都会的に洗練させ、ブルースやゴスペルと融合させたソロピアノにあります。その到達点のひとつが、この『Montreux '77』と言えるでしょう。


Take the "A" Train(Billy Strayhorn)
有名なイントロに続き、左手の8分音符が強力な推進力を生み出す冒頭曲。ソロはエリントン楽団でのレイ・ナンスの名演を踏まえたフレーズから展開されます。ブライアントは即興よりも、あらかじめ練り上げたアレンジを繰り返し披露するスタイルで知られ、この公演でも完成度の高いソロが聴けます。


Georgia On My Mind(Hoagy Carmichael, Stuart Gorrell)
ストライド奏法を基盤にしたスロー・スウィング。低音で10度をつかむ左手は、彼の大きな手のリーチあってこそ。豊かな響きが魅力です。


Jungle Town Jubilee(Ray Bryant)
短いオリジナル曲ですが、快活なテンポとストライドのリズム感が光ります。ラグタイムの伝統を継承しつつ、現代的なスイングに昇華しています。


If I Could Just Make It To Heaven(Traditional)
ゴスペル/スピリチュアルの伝承曲。ブライアントが好んで取り上げた一曲で、祈りに満ちた美しい演奏です。


Django(John Lewis)
アルバムの白眉。MJQの名曲をピアノソロにアレンジし、ルバートの重厚なイントロからストライドやブギウギを駆使して展開します。彼のレパートリーの中でも特に愛奏された一曲です。


Blues No. 6(Ray Bryant)
オリジナルのブルース。代表作「After Hours」と通じるアレンジが聴け、ブルースピアノの極致といえる演奏です。


Satin Doll(Duke Ellington, Johnny Mercer, Billy Strayhorn)
速めのテンポで演奏される定番曲。左手の4分音符のウォーキングが心地よくスウィングします。


Sometimes I Feel Like a Motherless Child(Traditional)
スピリチュアルの名曲。重厚な導入から、独特の左手パターンで静かにグルーヴが生まれていきます。


St. Louis Blues(W. C. Handy)
「ブルースの父」W.C.ハンディによる歴史的名曲を、ストライドとブギウギを織り交ぜて独自にアレンジ。途中のテンポチェンジで観客を熱狂させます。ブライアントがライヴで必ず演奏した十八番のひとつです。


Things Ain't What They Used To Be(Mercer Ellington, Ted Persons)
デューク・エリントンの息子マーサー作のブルース。晩年までアンコールでよく弾かれたブライアントの定番レパートリーで、本作の締めくくりにもふさわしい一曲です。


『Montreux '77』は、レイ・ブライアントがソロピアニストとして円熟期に到達した記録です。
ブギウギやストライドといった古い様式を土台にしながらも、モダンで洗練された響きを獲得した彼の音楽は、まさにジャズの伝統と革新の交差点に立っています。
ソロピアノでこれほど豊かなグルーヴと厚みを出せるピアニストは数少なく、今聴いても驚きと感動を与えてくれる名盤です。


文:曽根麻央 Mao Soné



Recommend Disc

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Title :『Montreux '77』
Artist : Ray Bryant
LABEL : Pablo Live
発売年 : 1977年



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【SONG LIST】

01. Take The "A" Train
02. Georgia On My Mind
03. Jungle Town Jubilee
04. If I Could Just Make It To Heaven
05. Django
06. Blues N° 6
07. Satin Doll
08. Sometimes I Feel Like A Motherless Child
09. St. Louis Blues
10. Things Ain't What They Used To Be



曽根麻央『8つの小品』
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ジャズピアニスト兼作曲家・曽根麻央が贈る最新スタジオアルバム『8つの小品』。第一子誕生という人生最大の節目に生まれたこの作品は、家族の愛、日常の輝き、そして音楽への深い探求が織り込まれた45分間の組曲。緻密なオーケストレーション、ジャズとクラシックの垣根を超えた響き、そして親子の時間から生まれた優しくもダイナミックな旋律。新たな旅立ちの予感と共に、音楽の喜びを届ける一枚。

【Songs】
1. Ⅰ. Overture (feat. Ryo Miyachi, Hironori Suzuki)
2. Ⅱ. The Light You'll See
3. Ⅲ. Maria's Eye
4. Ⅳ. When the Angel Cries (feat. May Inoue, Ryo Miyachi, Hironori Suzuki)
5. Ⅴ. Lullaby
6. Ⅵ. Rumba (feat. Kojiro Tokunaga, Ryo Miyachi, Kan)
7. Ⅶ. Love Letter (feat. Edmar Colón)
8. Ⅷ. Finale Part 1 (feat. Kan)
9. Ⅷ. Finale Part 2 (feat. Ryo Miyachi, Hironori Suzuki)

【CD Bonus Track】
10. Waltz for Debby
11. A Song for Jobim
12. Lullaby (Piano Solo ver.)

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「Monthly Disc Review」アーカイブ曽根麻央
2020.04『Motherland / Danilo Perez』2020.05『Color Of Soil /タイガー大越』2020.06『Passages / Tom Harrell 』2020.07『Inventions And Dimensions / Herbie Hancock』2020.08『Birth Of The Cool / Miles Davis』2020.09『Chet Baker Sings / Chet Baker』2020.10『SFJAZZ Collective2 / SFJAZZ Collective』2020.11『Money Jungle: Provocative In Blue / Terri Lyne Carrington』2020.12『Three Suites / Duke Ellington』2021.01『Into The Blue / Nicholas Payton』2021.02『Ben And "Sweets" / Ben Webster & "Sweets" Edison』2021.03『Relaxin' With The MilesDavis Quintet / The Miles Davis Quintet 』2021.04『Something More / Buster Williams』2021.05『Booker Little / Booker Little』2021.06『Charms Of The Night Sky / Dave Douglas』2021.07『Play The Blues / Ray Bryant Trio』2021.08『The Sidewinder / Lee Morgan』2021.09『Esta Plena / Miguel Zenón』2021.10『Hub-Tones / Freddie Hubbard』2021.11『Concert By The Sea / Erroll Garner』2021.12『D・N・A Live In Tokyo / 日野皓正』2022.1『The Tony Bennett Bill Evans Album / Tony Bennett / Bill Evans』2022.2『Quiet Kenny / Kenny Dorham』2022.3『Take Five / Dave Brubeck』・2022.4『Old And New Dreams / Old And New Dreams』2022.5『Ella Fitzgerald And Louis Armstrong / Ella And Louis』2022.6『Live from Miami / Nu Deco Ensemble & Aaron Parks』2022.7『Oscar Peterson Trio + One / Oscar Peterson Trio Clark Terry』2022.8『Ugetsu/ Art Blakey & The Jazz Messengers』2022.9『Sun Goddess / Ramsey Lewis』2022.10『Emergence / Roy Hargrove Big Band』2022.11『Speak No Evil / Wayne Shorter』2022.12『The Revival / Cory Henry』2023.1『Complete Communion / Don Cherry』2023.2『Your Mother Should Know: Brad Mehldau Plays The Beatles / Brad Mehldau』2023.3『Without a Net / Wayne Shorter』2023.4『LADY IN LOVE / 中本マリ』2023.5『Songs Of New York / Mel Torme』2023.6『Covers / James Blake』2023.7『Siembra / Willie Colón & Rubén Blades』2023.8『Undercover Live at the Village Vanguard / Kurt Rosenwinkel』2023.09『Toshiko Mariano Quartet / Toshiko Mariano Quartet』2023.10『MAINS / J3PO』2023.11『Knower Forever / Knower』2023.12『Ella Wishes You A Swinging Christmas / Ella Fitzgerald』2024.01『Silence / Charlie Haden with Chet Baker, Enrico Pieranunzi, Billy Higgins』2024.02『Rhapsody in Blue Reimagined / Lara Downes』2024.03『Djesse Vol. 4 / Jacob Collier』2024.04『Voyager / Moonchild』2024.05『Evidence with Don Cherry / Steve Lacy』2024.06『Quietude / Eliane Elias』2024.07『Alone Together / Lee Konitz, Brad Mehldau, Charlie Haden』2024.08『The Rough Dancer And The Cyclical Night (Tango Apasionado) / Astor Piazzolla』2024.09『Potro De Rabia Y Miel / Camarón De La Isla』2024.10『Calle 54 / Various』2024.11『Trumpets Of Michel-ange / Ibrahim Maalouf』2024.12『Sings for Only the Lonely / Frank Sinatra』2025.01『Hero Worship / Hal Crook』2025.02『Undercurrent / Kenny Drew』2025.03『Live In Toronto 1952 / Lennie Tristano Quintet』2025.04『Antidote / Chick Corea & The Spanish Heart Band』2025.05『Hot Five & Hot Seven / Louis Armstrong』2025.06『Panamonk / Danilo Pérez』2025.07『Nat King Cole Sings/George Shearing Plays / Nat King Cole、George Shearing』2025.08『Clifford Brown and Max Roach / Clifford Brown and Max Roach』

Reviewer information

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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

曽根麻央Official Site

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皆さんこんにちは、トランペッター/ピアニストの曽根麻央です。
今日は、ジャズ史においてもっともジャズらしく、しかも完璧に美しく整ったアルバムを改めてご紹介します。トランペッターのクリフォード・ブラウンとドラマーのマックス・ローチによるクインテットの名を冠したアルバム――『Clifford Brown and Max Roach』(1954年録音、1955年発表)です。


その前に少しだけ告知をさせてください。
私、曽根麻央の4thアルバム『8つの小品』が2025年9月10日に発売決定となりました!
第一子誕生という人生最大の節目に作曲したオリジナル組曲で、ピアノトリオを中心にストリングスやブラスも加えた約45分の音楽世界です。ぜひお聴きください。
Amazon予約:https://amzn.asia/d/eqvL6VA

さらに、三味線奏者・浅野祥さんとのデュオユニット MAOSHO のデビュー・シングルが、2025年8月20日にエイベックスより配信開始となりました。
こちらもどうぞお楽しみに!
https://maosho.lnk.to/komebushihibiki

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Title : 『Clifford Brown And Max Roach』
Artist : Clifford Brown And Max Roach


クリフォード・ブラウン(1930-1956)は、ディジー・ガレスピーやファッツ・ナヴァロの後を継ぎ、ハードバップを確立した重要人物です。
10歳でトランペットを始め、18歳の頃からプロ活動を開始。1950年の自動車事故で大怪我を負い、一時演奏から遠ざかりますが、その間はピアノを弾きながらリハビリを続け、翌年には完全復帰。1953年にはアート・ブレイキーやライオネル・ハンプトンと共演し、瞬く間にシーンの中心人物となりました。


彼のトランペットの特徴は、圧倒的に明確で美しいアタック。速いテンポでもすべての8分音符を丁寧にタンギングして吹くため、アーティキュレーションが極めて粒立ち良く響きます。音域全体が安定しており、自在に楽器を操る事ができました。
また、ドラッグ・酒・タバコを一切摂らず、真摯に音楽と向き合う姿勢は、依存症から立ち直ろうとする多くの仲間にとって精神的な支えにもなっていたと伝えられています。


1924年生まれのマックス・ローチは、18歳ごろから瞬く間にニューヨーク・ジャズシーンの中心へ。ケニー・クラークと並んでビ・バップ黎明期から活躍し、近代ジャズドラムの基礎を築いた人物です。
ソニー・ロリンズの「セント・トーマス」のカリプソのリズムに代表されるようなアフロ・カリビアンのリズムをジャズに取り入れることで新しい可能性を開拓し、60年代以降は公民権運動に深く関わり、音楽を通じて社会的メッセージを発信し続けました。


そんな二人が率いたクインテットは、1954年の結成からわずか2年の間に、ジャズ史に残る名盤を残しました。『Clifford Brown and Max Roach』(1955)、『Study in Brown』(1955)、『At Basin Street』(1956)。そしてライブ盤『Live at the Bee Hive』なども後に発表され、彼らの熱気を今に伝えています。
しかし1956年6月26日、クリフォードは交通事故でわずか25歳の生涯を閉じます。その短い活動期間で残した録音は、今もなお多くのミュージシャンの教科書となり続けています。


Delilah
ヴィクター・ヤング作、映画『Samson and Delilah』(1949)の主題歌。ローチのマレットによるエスニックな響きが印象的です。テナーのハロルド・ランドの落ち着いたソロと、リッチー・パウエルの若さが同居し、ハードバップの新時代を告げる一曲。ブラウンのソロにはディジーやファッツの影響が色濃く表れ、彼がその正統な後継者であることを示しています。


Parisian Thoroughfare
バド・パウエル作。ガーシュウィン「パリのアメリカ人」を思わせるイントロから始まり、ローチの小刻みなハイハットに乗って軽快なメロディが展開。ブラウン=ローチ・クインテットはイントロやアウトロの工夫に長けており、後の「A列車で行こう」の汽笛アレンジにも通じます。


The Blues Walk
クリフォード・ブラウン作のブルース。全員の高い演奏技術と、ローチの安定したライドシンバルのグルーヴが際立ちます。ローチのスネアの応答性やソロの展開は、以降のドラマーにとって教科書的存在となりました。


Daahoud
転調の多い難曲ながら、ブラウンは圧倒的なテクニックと歌心を両立させた代表的トランペット・ソロを披露。


Joy Spring
ブラウンの妻ロレインの愛称から取られた曲。軽快なテンポと転調を自然に織り込んだメロディは、ブラウンの作曲家としての才能を物語ります。


Jordu
デューク・ジョーダン作。今日スタンダードとして知られるのは、この録音によるところが大きいでしょう。


What Am I Here For?
デューク・エリントン作。快活なファスト・スウィングでアルバムを締めくくります。シンプルながらもエネルギッシュな演奏です。


『Clifford Brown and Max Roach』は、わずか2年間の活動の中で生まれた輝ける記録です。ブラウンの透徹した音色とローチの揺るぎないリズム、そして若き仲間たちの演奏が、ハードバップの黄金時代の幕開けを告げています。
まさに「完璧に美しく整ったジャズ」を体現した一枚として、何度でも聴き返す価値があります。


文:曽根麻央 Mao Soné



Recommend Disc

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Title :『Clifford Brown And Max Roach』
Artist : Clifford Brown And Max Roach
LABEL : Emarcy
発売年 : 1954年



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【SONG LIST】

01. Delilah
02. Parisian Thoroughfare
03. The Blues Walk
04. Daahoud
05. Joy Spring
06. Jordu
07. What Am I Here for



曽根麻央『8つの小品』
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ジャズピアニスト兼作曲家・曽根麻央が贈る最新スタジオアルバム『8つの小品』。第一子誕生という人生最大の節目に生まれたこの作品は、家族の愛、日常の輝き、そして音楽への深い探求が織り込まれた45分間の組曲。緻密なオーケストレーション、ジャズとクラシックの垣根を超えた響き、そして親子の時間から生まれた優しくもダイナミックな旋律。新たな旅立ちの予感と共に、音楽の喜びを届ける一枚。

【Songs】
1. Ⅰ. Overture (feat. Ryo Miyachi, Hironori Suzuki)
2. Ⅱ. The Light You'll See
3. Ⅲ. Maria's Eye
4. Ⅳ. When the Angel Cries (feat. May Inoue, Ryo Miyachi, Hironori Suzuki)
5. Ⅴ. Lullaby
6. Ⅵ. Rumba (feat. Kojiro Tokunaga, Ryo Miyachi, Kan)
7. Ⅶ. Love Letter (feat. Edmar Colón)
8. Ⅷ. Finale Part 1 (feat. Kan)
9. Ⅷ. Finale Part 2 (feat. Ryo Miyachi, Hironori Suzuki)

【CD Bonus Track】
10. Waltz for Debby
11. A Song for Jobim
12. Lullaby (Piano Solo ver.)

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「Monthly Disc Review」アーカイブ曽根麻央
2020.04『Motherland / Danilo Perez』2020.05『Color Of Soil /タイガー大越』2020.06『Passages / Tom Harrell 』2020.07『Inventions And Dimensions / Herbie Hancock』2020.08『Birth Of The Cool / Miles Davis』2020.09『Chet Baker Sings / Chet Baker』2020.10『SFJAZZ Collective2 / SFJAZZ Collective』2020.11『Money Jungle: Provocative In Blue / Terri Lyne Carrington』2020.12『Three Suites / Duke Ellington』2021.01『Into The Blue / Nicholas Payton』2021.02『Ben And "Sweets" / Ben Webster & "Sweets" Edison』2021.03『Relaxin' With The MilesDavis Quintet / The Miles Davis Quintet 』2021.04『Something More / Buster Williams』2021.05『Booker Little / Booker Little』2021.06『Charms Of The Night Sky / Dave Douglas』2021.07『Play The Blues / Ray Bryant Trio』2021.08『The Sidewinder / Lee Morgan』2021.09『Esta Plena / Miguel Zenón』2021.10『Hub-Tones / Freddie Hubbard』2021.11『Concert By The Sea / Erroll Garner』2021.12『D・N・A Live In Tokyo / 日野皓正』2022.1『The Tony Bennett Bill Evans Album / Tony Bennett / Bill Evans』2022.2『Quiet Kenny / Kenny Dorham』2022.3『Take Five / Dave Brubeck』・2022.4『Old And New Dreams / Old And New Dreams』2022.5『Ella Fitzgerald And Louis Armstrong / Ella And Louis』2022.6『Live from Miami / Nu Deco Ensemble & Aaron Parks』2022.7『Oscar Peterson Trio + One / Oscar Peterson Trio Clark Terry』2022.8『Ugetsu/ Art Blakey & The Jazz Messengers』2022.9『Sun Goddess / Ramsey Lewis』2022.10『Emergence / Roy Hargrove Big Band』2022.11『Speak No Evil / Wayne Shorter』2022.12『The Revival / Cory Henry』2023.1『Complete Communion / Don Cherry』2023.2『Your Mother Should Know: Brad Mehldau Plays The Beatles / Brad Mehldau』2023.3『Without a Net / Wayne Shorter』2023.4『LADY IN LOVE / 中本マリ』2023.5『Songs Of New York / Mel Torme』2023.6『Covers / James Blake』2023.7『Siembra / Willie Colón & Rubén Blades』2023.8『Undercover Live at the Village Vanguard / Kurt Rosenwinkel』2023.09『Toshiko Mariano Quartet / Toshiko Mariano Quartet』2023.10『MAINS / J3PO』2023.11『Knower Forever / Knower』2023.12『Ella Wishes You A Swinging Christmas / Ella Fitzgerald』2024.01『Silence / Charlie Haden with Chet Baker, Enrico Pieranunzi, Billy Higgins』2024.02『Rhapsody in Blue Reimagined / Lara Downes』2024.03『Djesse Vol. 4 / Jacob Collier』2024.04『Voyager / Moonchild』2024.05『Evidence with Don Cherry / Steve Lacy』2024.06『Quietude / Eliane Elias』2024.07『Alone Together / Lee Konitz, Brad Mehldau, Charlie Haden』2024.08『The Rough Dancer And The Cyclical Night (Tango Apasionado) / Astor Piazzolla』2024.09『Potro De Rabia Y Miel / Camarón De La Isla』2024.10『Calle 54 / Various』2024.11『Trumpets Of Michel-ange / Ibrahim Maalouf』2024.12『Sings for Only the Lonely / Frank Sinatra』2025.01『Hero Worship / Hal Crook』2025.02『Undercurrent / Kenny Drew』2025.03『Live In Toronto 1952 / Lennie Tristano Quintet』2025.04『Antidote / Chick Corea & The Spanish Heart Band』2025.05『Hot Five & Hot Seven / Louis Armstrong』2025.06『Panamonk / Danilo Pérez』2025.07『Nat King Cole Sings/George Shearing Plays / Nat King Cole、George Shearing』

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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

曽根麻央Official Site

こんにちは、ピアニスト/トランペッターの曽根麻央です。
いよいよ夏本番。皆さん、いかがお過ごしでしょうか? お出かけや音楽イベントを楽しみにされている方も多いかと思います。私自身も、いくつかのコンサートのディレクションとアレンジを担当しており、連日楽譜と向き合う日々です。素晴らしいアーティストたちと共に準備を進めていますので、いくつかご紹介させてください。


コンサートのお知らせ


7/21 <東京>浅野祥 三味線 "鼓動"
銀座・王子ホール

https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2557618


8/1 <大阪> 曽根麻央 meets 三浦一馬 "Latin Tango"
あいおいニッセイ同和損保 ザ・フェニックスホール

https://t.pia.jp/en/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2456312


8/10 <東京>ドリアン・ロロブリジーダ×ビルマン聡平×曽根麻央
Hakuju Hall

https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=2516897


ーーーーーーーーーー

さて今日は2人の偉大なアーティスト、Nat King ColeとGeorge Shearingの共演アルバム
『Nat King Cole Sings/George Shearing Plays』(1962)をご紹介します。

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Title : 『Nat King Cole Sings George Shearing Plays』
Artist : Nat King Cole / George Shearing


Nat King Coleといえば、ジャズの歴史に残る弾き語りの名手で、一般的には彼の独特な歌のスタイルで知られていますね。しかしジャズピアノの歴史においても、ジャズピアノの祖のような存在・Earl Hines直径のスタイルをColeは独自に発展させ、後世に多大な影響を与えた人物でもあります。
リズミカルで親しみやすいピアノのプレイ・スタイルの持ち主で、まさに名手です。


そんなKing ColeがGeorge Shearingという同い年のピアニストに伴奏とアレンジをまかせ、自身は歌に専念した作品が今回紹介するアルバムになっています。

Shearingも特徴のあるスタイルで知られています。彼のまるでビッグバンドのサックス・セクションのハーモニーを聴いているかのような、メロディーに対してハーモニーをピタッと合わせてくるスタイルと共に、ヴィブラフォンがピアノのメロディーと同じ音域で、ギターがオクターブ下で奏でる、バンドの一体感が非常に強く、その一体感のあるサウンドで作風が統一されているのが、いわゆるShearingシグネチャー・サウンドです。このアルバムでは、そもそもとてもゴージャスな響きのShearingサウンドにオーケストラが入り、より色彩感を高めています。

King Coleの歌はその濃厚な伴奏の上でさらに存在感を示しています。彼はの魅力はどちらかというと低音ヴォイスにあるのですが、それでもバンドの音を飛び越えてしっかりと我々の耳に届いてきます。アタックの強い音の切り出し方、しかしそれに続くハスキーでメローな声質がたまらなく、今だに世界中から愛されるキャラクターですね。


「September Song」のイントロ出だしからShearingサウンドが前回で、それに呼応するようにストリングスが絡んできます。そしてKing Coleが低音から歌い出すとスピーカーが震えるのがわかります。Shearingのサウンドとストリングスの伴奏のバランスもとてもよく、名演と言えるトラックです。


それに続く「Pick Yourself Up」はJerome Kernがフレッド・アステアのミュージカル映画『Swing Time』に書いた曲です。この映画では他に「The Way You Look Tonight」など他多数の名曲が披露されています。各セクション転調に転調を重ねるコミカルな曲で聴いていて楽しくなります。


続く「I Got It Bad (And That Ain't Good)」「Let There Be Love」はKing Coleの最も有名なヒットソングと言っていいでしょう。「Let There Be Love」でスウィンギーなピアノソロも楽しめる一曲になっています。



ここまで聴いて、おそらくこのアルバムのアレンジの素晴らしさに気付いた方は多いのではないでしょうか?クレジットを見るとShearingがアレンジャーとして書いてありますので、おそらくほとんどの曲は彼が大まかの方針とリズムセクションのアレンジを決めていて、もう一人のアレンジャーで指揮者のRalph Carmichaelがその上でオーケストラのアレンジを担ったのではないかと推測されます。

メンションし忘れましたが、Shearingは全盲のピアニストとして知られています。彼の聞こえているアイディアをメンバーやチームと共有して一つの作品を作る工程は、僕らの想像の範囲を超える努力があったのではないかと思います。そしてShearingのとんでもない記憶力にも圧倒されます。


「Azure-Te」は独特な不協和音が特徴的な曲で、これもShearingサウンドの良さを最大限引き出した曲になっています。


「Fly Me To The Moon」はみんながよく知るメロディーの前にあるverseという前奏部分がとても美しいのですが、このアルバムでもKing Coleが素晴らしい歌唱でverseから歌い上げてくれています。verseはDb、メロディーはBbという不思議なアレンジになっていますが、シームレスに転調して曲の雰囲気を変えていくアレンジ・テクニックも素晴らしいです。


ジャズ・ヴォーカル、そしてアンサンブル・アレンジの完成形とも言える名盤。ぜひこの夏、ゆったりとした時間の中でじっくりと味わってみてください。


文:曽根麻央 Mao Soné



Recommend Disc

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Title :『Nat King Cole Sings George Shearing Plays』
Artist : Nat King Cole / George Shearing
LABEL : Capitol Records
発売年 : 1961年



アマゾン詳細ページへ


【SONG LIST】

01. September Song
02. Pick Yourself Up
03. I Got It Bad (And That Ain't Good)
04. Let There Be Love
05. Azure-Té
06. Lost April
07. A Beautiful Friendship
08. In Other Words
09. Serenata
10. I'm Lost
11. There's A Lull In My Life
12. Don't Go




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「Monthly Disc Review」アーカイブ曽根麻央
2020.04『Motherland / Danilo Perez』2020.05『Color Of Soil /タイガー大越』2020.06『Passages / Tom Harrell 』2020.07『Inventions And Dimensions / Herbie Hancock』2020.08『Birth Of The Cool / Miles Davis』2020.09『Chet Baker Sings / Chet Baker』2020.10『SFJAZZ Collective2 / SFJAZZ Collective』2020.11『Money Jungle: Provocative In Blue / Terri Lyne Carrington』2020.12『Three Suites / Duke Ellington』2021.01『Into The Blue / Nicholas Payton』2021.02『Ben And "Sweets" / Ben Webster & "Sweets" Edison』2021.03『Relaxin' With The MilesDavis Quintet / The Miles Davis Quintet 』2021.04『Something More / Buster Williams』2021.05『Booker Little / Booker Little』2021.06『Charms Of The Night Sky / Dave Douglas』2021.07『Play The Blues / Ray Bryant Trio』2021.08『The Sidewinder / Lee Morgan』2021.09『Esta Plena / Miguel Zenón』2021.10『Hub-Tones / Freddie Hubbard』2021.11『Concert By The Sea / Erroll Garner』2021.12『D・N・A Live In Tokyo / 日野皓正』2022.1『The Tony Bennett Bill Evans Album / Tony Bennett / Bill Evans』2022.2『Quiet Kenny / Kenny Dorham』2022.3『Take Five / Dave Brubeck』・2022.4『Old And New Dreams / Old And New Dreams』2022.5『Ella Fitzgerald And Louis Armstrong / Ella And Louis』2022.6『Live from Miami / Nu Deco Ensemble & Aaron Parks』2022.7『Oscar Peterson Trio + One / Oscar Peterson Trio Clark Terry』2022.8『Ugetsu/ Art Blakey & The Jazz Messengers』2022.9『Sun Goddess / Ramsey Lewis』2022.10『Emergence / Roy Hargrove Big Band』2022.11『Speak No Evil / Wayne Shorter』2022.12『The Revival / Cory Henry』2023.1『Complete Communion / Don Cherry』2023.2『Your Mother Should Know: Brad Mehldau Plays The Beatles / Brad Mehldau』2023.3『Without a Net / Wayne Shorter』2023.4『LADY IN LOVE / 中本マリ』2023.5『Songs Of New York / Mel Torme』2023.6『Covers / James Blake』2023.7『Siembra / Willie Colón & Rubén Blades』2023.8『Undercover Live at the Village Vanguard / Kurt Rosenwinkel』2023.09『Toshiko Mariano Quartet / Toshiko Mariano Quartet』2023.10『MAINS / J3PO』2023.11『Knower Forever / Knower』2023.12『Ella Wishes You A Swinging Christmas / Ella Fitzgerald』2024.01『Silence / Charlie Haden with Chet Baker, Enrico Pieranunzi, Billy Higgins』2024.02『Rhapsody in Blue Reimagined / Lara Downes』2024.03『Djesse Vol. 4 / Jacob Collier』2024.04『Voyager / Moonchild』2024.05『Evidence with Don Cherry / Steve Lacy』2024.06『Quietude / Eliane Elias』2024.07『Alone Together / Lee Konitz, Brad Mehldau, Charlie Haden』2024.08『The Rough Dancer And The Cyclical Night (Tango Apasionado) / Astor Piazzolla』2024.09『Potro De Rabia Y Miel / Camarón De La Isla』2024.10『Calle 54 / Various』2024.11『Trumpets Of Michel-ange / Ibrahim Maalouf』2024.12『Sings for Only the Lonely / Frank Sinatra』2025.01『Hero Worship / Hal Crook』2025.02『Undercurrent / Kenny Drew』2025.03『Live In Toronto 1952 / Lennie Tristano Quintet』2025.04『Antidote / Chick Corea & The Spanish Heart Band』2025.05『Hot Five & Hot Seven / Louis Armstrong』2025.06『Panamonk / Danilo Pérez』

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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

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曽根麻央 Monthly Disc Review2025.06_Danilo Pérez : Panamonk :Monthly Disc Review

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Title : 『Panamonk』
Artist : Danilo Pérez


こんにちは、曽根麻央です。今回は、1996年にインパルス・レーベルからリリースされたアルバム『Panamonk』をご紹介します。
このアルバムは、パナマ出身のピアニスト、ダニーロ・ペレスが、セロニアス・モンクの楽曲を中心に、ラテン音楽のテイストを織り交ぜながらソロを展開しているのが特徴です。

ダニーロ・ペレスというと、Wayne Shorter Quartetでの演奏が有名ですが、『Panamonk』はそれ以前、1996年の作品です。彼は当時、トランペッターのディジー・ガレスピー(ビバップやラテンジャズの確立者の一人)のバンドに参加したほか、トム・ハレル、ジョー・ロヴァーノ、そしてジャズドラムの神様的存在ロイ・ヘインズのバンドなどでも演奏し、トッププレイヤーたちから高く信頼されていた存在でした。

中でも、ガレスピーから受けた影響は非常に大きかったようで、ペレス自身が「自分のルーツをもっと勉強しなさい」(実際はもっとキツい言い回しだったそうですが...笑)と叱咤されたというエピソードを話してくれたことがあります。そうした葛藤や模索の末に生まれたのが、この『Panamonk』。ジャズという自分が追い求めてきた音楽と、自身のルーツの融合を目指したアルバムだと言えるでしょう。


メンバー
Danilo Pérez - Piano
Avishai Cohen - Bass
Terri Lyne Carrington または Jeff "Tain" Watts - Drums


※どの曲でCarringtonかWattsが演奏しているかはCDクレジットにも明記されていないため、スタイルからの推測になります。


アルバムは、ペレスによるピアノソロ「Monk's Mood (Take 1)」で幕を開け、すぐにオリジナル曲「PanaMonk」が始まります。これは当時のレギュラー・トリオ(Cohen & Watts)による演奏と考えられます。Wattsならではの、付点4分音符を一拍と捉えたようなライド・シンバルの演奏が聴けます。これはWynton Marsalisのカルテットでも見られた彼の象徴的なスタイルで、それを前提にペレスが書いた曲なのではないかと推測できます。


「Bright Mississippi」はモンク作曲の楽曲ですが、ここではキューバの舞曲 Danzón のリズムで演奏されます。フレーズが常に4拍目から始まるのが特徴で、これも非常に面白いアレンジです。こちらはCarringtonがドラムを担当していると考えられます。


「Think of One」もモンクの楽曲で、ここでは5拍子の2-3クラーベを用いたアレンジになっています。この変拍子クラーベはペレスが提唱したコンセプトの一つで、後のラテンジャズに大きな影響を与えました。Carrington本人がこのトラックは自分の演奏だと言っていたのを直接本人から聞いたことがあります。


その後には、ペレスのオリジナル・バラード「Mercedes' Mood」や、ファンク調の「Hot Bean Strut」が続きます。さらに、モンクのバラード「Reflections」が6/8拍子のアフロ調でアレンジされるなど、創意に満ちた展開が続きます。


「September in Rio」ではスペイン出身のシンガー、Olga Románが参加。複雑なラインを含みつつも美しい流れをもった、ペレスらしい楽曲です。


その後は、スタンダード「Everything Happens to Me」のラテンアレンジ、そしてモンクの名曲「'Round Midnight」が続きます。


11曲目では、モンクの「Evidence」と「Four in One」という2曲を左右の手で同時に演奏するという大胆な試みがなされており、モンク楽曲に対するペレスのユニークな解釈力が光っています。このトラックのドラムは、間違いなくWattsでしょう。


そして最後に、「Monk's Mood (Take 2)」が短く演奏され、アルバムは静かに幕を閉じます。

アルバム全体としては聴きやすく、ジャズ好きには非常に刺さる内容だと思います。音楽的には相当に攻めたアレンジも多いのですが、それでも音楽が崩壊することなく、しっかりとジャズの楽しさを伝えてくれる作品です。
ぜひ一度聴いてみてください。

文:曽根麻央 Mao Soné



Recommend Disc

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Title :『Panamonk』
Artist : Danilo Pérez
LABEL : Impulse!
発売年 : 1996年



アマゾン詳細ページへ


【SONG LIST】

01. Monk's Mood 1
02. PanaMonk
03. Bright Mississippi
04. Think Of One
05. Mercedes' Mood
06. Hot Bean Strut
07. Reflections
08. September In Rio
09. Everything Happens To Me
10. 'Round Midnight
11. Evidence And Four In One
12. Monk's Mood 2




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「Monthly Disc Review」アーカイブ曽根麻央
2020.04『Motherland / Danilo Perez』2020.05『Color Of Soil /タイガー大越』2020.06『Passages / Tom Harrell 』2020.07『Inventions And Dimensions / Herbie Hancock』2020.08『Birth Of The Cool / Miles Davis』2020.09『Chet Baker Sings / Chet Baker』2020.10『SFJAZZ Collective2 / SFJAZZ Collective』2020.11『Money Jungle: Provocative In Blue / Terri Lyne Carrington』2020.12『Three Suites / Duke Ellington』2021.01『Into The Blue / Nicholas Payton』2021.02『Ben And "Sweets" / Ben Webster & "Sweets" Edison』2021.03『Relaxin' With The MilesDavis Quintet / The Miles Davis Quintet 』2021.04『Something More / Buster Williams』2021.05『Booker Little / Booker Little』2021.06『Charms Of The Night Sky / Dave Douglas』2021.07『Play The Blues / Ray Bryant Trio』2021.08『The Sidewinder / Lee Morgan』2021.09『Esta Plena / Miguel Zenón』2021.10『Hub-Tones / Freddie Hubbard』2021.11『Concert By The Sea / Erroll Garner』2021.12『D・N・A Live In Tokyo / 日野皓正』2022.1『The Tony Bennett Bill Evans Album / Tony Bennett / Bill Evans』2022.2『Quiet Kenny / Kenny Dorham』2022.3『Take Five / Dave Brubeck』・2022.4『Old And New Dreams / Old And New Dreams』2022.5『Ella Fitzgerald And Louis Armstrong / Ella And Louis』2022.6『Live from Miami / Nu Deco Ensemble & Aaron Parks』2022.7『Oscar Peterson Trio + One / Oscar Peterson Trio Clark Terry』2022.8『Ugetsu/ Art Blakey & The Jazz Messengers』2022.9『Sun Goddess / Ramsey Lewis』2022.10『Emergence / Roy Hargrove Big Band』2022.11『Speak No Evil / Wayne Shorter』2022.12『The Revival / Cory Henry』2023.1『Complete Communion / Don Cherry』2023.2『Your Mother Should Know: Brad Mehldau Plays The Beatles / Brad Mehldau』2023.3『Without a Net / Wayne Shorter』2023.4『LADY IN LOVE / 中本マリ』2023.5『Songs Of New York / Mel Torme』2023.6『Covers / James Blake』2023.7『Siembra / Willie Colón & Rubén Blades』2023.8『Undercover Live at the Village Vanguard / Kurt Rosenwinkel』2023.09『Toshiko Mariano Quartet / Toshiko Mariano Quartet』2023.10『MAINS / J3PO』2023.11『Knower Forever / Knower』2023.12『Ella Wishes You A Swinging Christmas / Ella Fitzgerald』2024.01『Silence / Charlie Haden with Chet Baker, Enrico Pieranunzi, Billy Higgins』2024.02『Rhapsody in Blue Reimagined / Lara Downes』2024.03『Djesse Vol. 4 / Jacob Collier』2024.04『Voyager / Moonchild』2024.05『Evidence with Don Cherry / Steve Lacy』2024.06『Quietude / Eliane Elias』2024.07『Alone Together / Lee Konitz, Brad Mehldau, Charlie Haden』2024.08『The Rough Dancer And The Cyclical Night (Tango Apasionado) / Astor Piazzolla』2024.09『Potro De Rabia Y Miel / Camarón De La Isla』2024.10『Calle 54 / Various』2024.11『Trumpets Of Michel-ange / Ibrahim Maalouf』2024.12『Sings for Only the Lonely / Frank Sinatra』2025.01『Hero Worship / Hal Crook』2025.02『Undercurrent / Kenny Drew』2025.03『Live In Toronto 1952 / Lennie Tristano Quintet』2025.04『Antidote / Chick Corea & The Spanish Heart Band』2025.05『Hot Five & Hot Seven / Louis Armstrong』

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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

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曽根麻央 Monthly Disc Review2025.05_Louis Armstrong: Hot Five & Hot Seven:Monthly Disc Review

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Title : Hot Five & Hot Seven
Artist : Louis Armstrong



皆さんこんにちは、曽根麻央です。
今日はこれまであまり取り上げてこなかった、ジャズの最も歴史的な録音の一つについてお話ししたいと思います。


この時代、まだ「アルバム」という形で楽曲をまとめて発表する文化はほとんどなく、基本的にシングル(SP盤)として一曲ずつリリースされていました。今回はその中から、ジャズの歴史において極めて重要な7曲を厳選してご紹介します。


Louis Armstrong - Hot Five / Hot Seven


ジャズ史上最も偉大な存在のひとり、ルイ・アームストロング。
1925年から1928年頃に録音された、彼の初期キャリアを代表する録音セッションが「Hot Five(ホット・ファイブ)」および「Hot Seven(ホット・セブン)」です。


Hot Fiveは文字通り5人編成で、アームストロングのコルネット(のちにトランペット)に、クラリネット、トロンボーン、バンジョー、ピアノという構成。
後のHot Sevenでは、これにチューバやドラムスが加わり、より厚みのあるアンサンブルになっています。
ピアノには、アール・ハインズ(Earl Hines)が後期セッションで参加しており、その革新的な演奏スタイルはジャズ・ピアノの未来を切り拓きました。
それ以前のジャズ(特にニューオリンズ・スタイル)では、管楽器が同時に集団即興(コレクティブ・インプロヴィゼーション)を行うスタイルが主流で、いわゆる「ソロ」はほとんど存在していませんでした。
しかしHot Fiveでは、アームストロングが明確なソリストとしてフィーチャーされ、トロンボーンやクラリネットは伴奏的な役割に回るなど、モダン・ジャズに通じる「ソロ重視」の形式が初めて明確に表現されるようになります。これは、ジャズ即興演奏の概念を大きく進化させた革命的な出来事でした。


Cornet Chop Suey

3管編成ながら、クラリネットとトロンボーンはほぼバッキングに回り、アームストロングのコルネット・ソロが際立ちます。ピアノも、当時主流だったストライド奏法(左手がベース音と和音を交互に演奏するスタイル)を見事に披露し、アンサンブル全体にリズムと推進力を与えています。


Heebie Jeebies

アームストロングがスキャット唱法を録音で初めて披露したとされる伝説的なトラックです。
録音中に歌詞カードが落ちたため即興でスキャットに切り替えた、という逸話が有名ですが、近年ではこのエピソードには演出の可能性も指摘されています。とはいえ、スキャット・ボーカルを世に広めた記念碑的録音であることは間違いありません。


Muskrat Ramble

この曲はトロンボーンやクラリネットのソロも大きくフィーチャーされ、アンサンブル全体の高い即興能力が際立ちます。
それぞれのミュージシャンが順番にフィーチャーされる構成は、後のジャズ・コンボのスタイルにも強い影響を与えました。


Gut Bucket Blues

初期の録音で、ブルース形式に基づいたシンプルな構成。
ピアノはストライド奏法の影響が色濃く、バンジョーとともにリズムを支えています。ブギウギ的要素はここではまだ少ないものの、当時のスタイルをよく反映しています。


Potato Head Blues

アームストロングのソロが、単なるアルペジオにとどまらず経過音を多用し、滑らかで歌うようなラインを構築しています。
中間部のブレイク(バンドが止まり、ソロだけが残る)では彼のリズム感と創造性が際立ち、即興演奏の可能性を大きく押し広げた名演です。


Struttin'With Some Barbecue

作曲はアームストロングの妻であり、ピアニストのリル・ハーディン・アームストロング。
トランペットの早いパッセージと高音域のクリアな演奏が光る、技術と音楽性の融合が見られる楽曲です。


West End Blues

こちらは「Hot Seven」名義で録音された名曲で、ジャズ史を代表する一曲。
冒頭のトランペット・カデンツァはあまりにも有名で、現在でも世界中のトランペッターが練習する定番のフレーズです。
また、トロンボーン、クラリネット、ピアノそれぞれのソロも魅力的で、まさにモダンジャズの原型とも言える作品です。


録音技術についての逸話
当時の録音ではマイクは1本のみ使用されるのが一般的で、音量バランスは演奏者の立ち位置で調整していました。
アームストロングの音量が大きすぎて、部屋の外から吹かざるを得なかったという逸話も残っていますが、これには多少の誇張があるかもしれません。とはいえ、彼の存在感と音色の力強さを象徴するエピソードです。


この時代のアームストロングの録音は、後のジャズの基礎となるソロ表現、即興の自由さ、アンサンブルの構造を切り拓いたものであり、今日に至るまで多くのミュージシャンに影響を与え続けています。
今回ご紹介した7曲も、ぜひ注意深く聴いてみてください。何度聴いても新たな発見があるはずです。


文:曽根麻央 Mao Soné



Recommend Disc

louis200.jpg
Title :『Hot Five & Hot Seven』
Artist : Louis Armstrong
LABEL : MCA Records



【SONG LIST】

01. Cornet Shop Suey
02. Heebie Jeebies
03. Georgia Grind
04. Muskrat Ramble
05. King Of The Zulus
06. Snag It
07. Wild Man Blues
08. Potato Head Blues
09. Weary Blues
10. Gully Low Blues
11. Struttin' With Some Barbecue
12. Hotter Than That

※数あるHot Five & Hot Seven 録音の一部作品として紹介




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「Monthly Disc Review」アーカイブ曽根麻央
2020.04『Motherland / Danilo Perez』2020.05『Color Of Soil /タイガー大越』2020.06『Passages / Tom Harrell 』2020.07『Inventions And Dimensions / Herbie Hancock』2020.08『Birth Of The Cool / Miles Davis』2020.09『Chet Baker Sings / Chet Baker』2020.10『SFJAZZ Collective2 / SFJAZZ Collective』2020.11『Money Jungle: Provocative In Blue / Terri Lyne Carrington』2020.12『Three Suites / Duke Ellington』2021.01『Into The Blue / Nicholas Payton』2021.02『Ben And "Sweets" / Ben Webster & "Sweets" Edison』2021.03『Relaxin' With The MilesDavis Quintet / The Miles Davis Quintet 』2021.04『Something More / Buster Williams』2021.05『Booker Little / Booker Little』2021.06『Charms Of The Night Sky / Dave Douglas』2021.07『Play The Blues / Ray Bryant Trio』2021.08『The Sidewinder / Lee Morgan』2021.09『Esta Plena / Miguel Zenón』2021.10『Hub-Tones / Freddie Hubbard』2021.11『Concert By The Sea / Erroll Garner』2021.12『D・N・A Live In Tokyo / 日野皓正』2022.1『The Tony Bennett Bill Evans Album / Tony Bennett / Bill Evans』2022.2『Quiet Kenny / Kenny Dorham』2022.3『Take Five / Dave Brubeck』・2022.4『Old And New Dreams / Old And New Dreams』2022.5『Ella Fitzgerald And Louis Armstrong / Ella And Louis』2022.6『Live from Miami / Nu Deco Ensemble & Aaron Parks』2022.7『Oscar Peterson Trio + One / Oscar Peterson Trio Clark Terry』2022.8『Ugetsu/ Art Blakey & The Jazz Messengers』2022.9『Sun Goddess / Ramsey Lewis』2022.10『Emergence / Roy Hargrove Big Band』2022.11『Speak No Evil / Wayne Shorter』2022.12『The Revival / Cory Henry』2023.1『Complete Communion / Don Cherry』2023.2『Your Mother Should Know: Brad Mehldau Plays The Beatles / Brad Mehldau』2023.3『Without a Net / Wayne Shorter』2023.4『LADY IN LOVE / 中本マリ』2023.5『Songs Of New York / Mel Torme』2023.6『Covers / James Blake』2023.7『Siembra / Willie Colón & Rubén Blades』2023.8『Undercover Live at the Village Vanguard / Kurt Rosenwinkel』2023.09『Toshiko Mariano Quartet / Toshiko Mariano Quartet』2023.10『MAINS / J3PO』2023.11『Knower Forever / Knower』2023.12『Ella Wishes You A Swinging Christmas / Ella Fitzgerald』2024.01『Silence / Charlie Haden with Chet Baker, Enrico Pieranunzi, Billy Higgins』2024.02『Rhapsody in Blue Reimagined / Lara Downes』2024.03『Djesse Vol. 4 / Jacob Collier』2024.04『Voyager / Moonchild』2024.05『Evidence with Don Cherry / Steve Lacy』2024.06『Quietude / Eliane Elias』2024.07『Alone Together / Lee Konitz, Brad Mehldau, Charlie Haden』2024.08『The Rough Dancer And The Cyclical Night (Tango Apasionado) / Astor Piazzolla』2024.09『Potro De Rabia Y Miel / Camarón De La Isla』2024.10『Calle 54 / Various』2024.11『Trumpets Of Michel-ange / Ibrahim Maalouf』2024.12『Sings for Only the Lonely / Frank Sinatra』2025.01『Hero Worship / Hal Crook』2025.02『Undercurrent / Kenny Drew』2025.03『Live In Toronto 1952 / Lennie Tristano Quintet』2025.04『Antidote / Chick Corea & The Spanish Heart Band』



Reviewer information

maosona_A.png
曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

曽根麻央Official Site

曽根麻央 Monthly Disc Review2025.04_Chick Corea : Antidote :Monthly Disc Review

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Title : 『Antidote』
Artist : Chick Corea & The Spanish Heart Band


皆さんこんにちは。曽根麻央です。
今日はChick Coreaの2019年の作品、『Antidote』を紹介したいなと思います。
Chick Coreaはピアニストとしての活躍がフィーチャーされますが、「スペイン」などの代表曲が世界中で愛されているように作曲家としての功績も大きく、この作品『Antidote』ではその両サイドの彼のアーティスト性が見事にキャプチャーされています。
またこの作品はChick Coreaの以前よりの有名曲「Armando's Rhumba」もリメイクされていて、昔からのChick Coreaファンも嬉しい作品になっています。しかもフラメンコ奏者Paco de Lucíaの1990年のアルバムでもChick Coreが参加している「Zyryab」という曲もも新たなアレンジで演奏されていて胸熱なアルバムになっています。

このアルバムは全体を通してラテン音楽、フラメンコ音楽など多国籍なグルーヴを演奏しています。ベーシストCarlitos Del Puerto とドラマーMarcus Gilmore が中心となり、このヴァラエティ豊かなグルーヴを牽引しています。彼らが中心となって編成されたChick Coreaの8人編成ラテン・バンドは『The Spanish Heart Band』と名付けられていて、

Chick Corea - piano, keyboards, synthesizers
Carlitos Del Puerto - bass guitar
Marcus Gilmore - drums

のリズムセクションを中心に、Paco de Lucíaのバンドメンバーでもあった

Jorge Pardo - flute, saxophone
Niño Josele - guitar

がラテンとフラメンコのリズムをよりオーガニックなものに昇華して、

Michael Rodriguez - trumpet
Steve Davis - trombone

という現代のジャズシーンの最高峰のホーンセクションがインプロソロでも大活躍し、

Nino De Los Reyes - flamenco tap dance

がフラメンコのテイストをさらに与えてくれています。
さらにそこにRuben Bladesなどのゲストが参加していて、とても豪華な編成のアルバムです。
Ruben Bladesは日本では『プレデター2』に出演した俳優として知られていますが、実は素晴らしいシンガーソングライターで歌手でもあります。以前の記事でRubenのリーダー作品も紹介しています。
https://www.jjazz.net/jjazznet_blog/2023/07/-monthly-disc-review20237-willie-colon-ruben-blades-siembra.php

全体として特筆すべきはChick Coreaのピアノのタッチやソロのアイディアはもちろんですが、現在最高峰のドラマーMarcus Gilmore の色々な種類のリズムに対する理解の深さ、そしてグルーヴ、ドラムの音色の美しさが挙げられます。

タイトルソング「Antidote」は、Ruben BladesとChick Coreaの共作で、サルサの楽曲としての要素があるだけでなく、そこにChick Coreaの和音やホーンセクションのアレンジセンス、またフラメンコ・ルンバのテイストが加わり、このグループの方向性を示した一曲になています。


「Duende」は1982年のアルバム『Touchstone』からの再アレンジです。元のアレンジでは3分ほどの短いコンポジションですが、こちらではかなり拡大解釈され、3菅編成の美しさを聴くことが出来ます。Michael RodriguezとSteve Davis の二人の名手のソロがフィーチャーされています。


「The Yellow Nimbus, Pt. 1」はフラメンコのBuleríasというリズムが大枠になっているChick Coreaのオリジナル曲です。


それに続く「The Yellow Nimbus, Pt. 2」はフラメンコ・ルンバが基板になっている曲で、組曲になっています。


「My Spanish Heart」は1976年のChick Coreaの有名な代表作のアルバムタイトルで、オリジナルでは1分程度の短いピアノ曲ですが、このバージョンでは拡大解釈され、歌詞もついています。Ruben Bladesが歌っています。


「Armando's Rhumba」同じく1976年の『My Spanish Heart』に収録された20小節の有名な曲ですが、今回のアレンジではダイナミックなイントロイントロやシャウトコーラス、ホーンセクションのバックグラウンドがが追加されたりしていて、ファン必聴の一曲になっています。
メンバー全員をフィーチャーしていて、ジャム曲のような立ち位置になっています。


「Zyryab」は1990年のPaco de Lucíaのアルバムの代表曲ですが、Chick Coreaも参加していることで知られています。この『Antidote』ではChick Coreaが新しいセクションを追加し、より壮大な曲へと進化を遂げています。おそらくこのアルバムのハイライト的な曲だと思います。


「Pas de Deux」はストラヴィンスキーのコンポジションをChick CoreaとCarlitos Del Puerto のデュオで演奏していて、その次の曲の「Admiration」のイントロとして演奏されています。


「Admiration」はゆっくりなクンビア(コロンビアのリズム)とフラメンコ・ルンバが混ざったようなグルーヴの曲です。


ぜひこのアルバムを聴いてチック・コリアが思い描いたワールドミュージックを体感してみてください!

文:曽根麻央 Mao Soné



Recommend Disc

99369_200.jpg
Title :『Antidote』
Artist : Chick Corea & The Spanish Heart Band
LABEL : Concord Jazz
発売年 : 2019年



アマゾン詳細ページへ


【SONG LIST】

01. Antidote
02. Duende
03. The Yellow Nimbus - Part 1
04. The Yellow Nimbus - Part 2
05. Prelude to My Spanish Heart
06. My Spanish Heart
07. Armando's Rhumba
08. Desafinado
09. Zyryab
10. Pas De Deux
11. Admiration




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「Monthly Disc Review」アーカイブ曽根麻央
2020.04『Motherland / Danilo Perez』2020.05『Color Of Soil /タイガー大越』2020.06『Passages / Tom Harrell 』2020.07『Inventions And Dimensions / Herbie Hancock』2020.08『Birth Of The Cool / Miles Davis』2020.09『Chet Baker Sings / Chet Baker』2020.10『SFJAZZ Collective2 / SFJAZZ Collective』2020.11『Money Jungle: Provocative In Blue / Terri Lyne Carrington』2020.12『Three Suites / Duke Ellington』2021.01『Into The Blue / Nicholas Payton』2021.02『Ben And "Sweets" / Ben Webster & "Sweets" Edison』2021.03『Relaxin' With The MilesDavis Quintet / The Miles Davis Quintet 』2021.04『Something More / Buster Williams』2021.05『Booker Little / Booker Little』2021.06『Charms Of The Night Sky / Dave Douglas』2021.07『Play The Blues / Ray Bryant Trio』2021.08『The Sidewinder / Lee Morgan』2021.09『Esta Plena / Miguel Zenón』2021.10『Hub-Tones / Freddie Hubbard』2021.11『Concert By The Sea / Erroll Garner』2021.12『D・N・A Live In Tokyo / 日野皓正』2022.1『The Tony Bennett Bill Evans Album / Tony Bennett / Bill Evans』2022.2『Quiet Kenny / Kenny Dorham』2022.3『Take Five / Dave Brubeck』・2022.4『Old And New Dreams / Old And New Dreams』2022.5『Ella Fitzgerald And Louis Armstrong / Ella And Louis』2022.6『Live from Miami / Nu Deco Ensemble & Aaron Parks』2022.7『Oscar Peterson Trio + One / Oscar Peterson Trio Clark Terry』2022.8『Ugetsu/ Art Blakey & The Jazz Messengers』2022.9『Sun Goddess / Ramsey Lewis』2022.10『Emergence / Roy Hargrove Big Band』2022.11『Speak No Evil / Wayne Shorter』2022.12『The Revival / Cory Henry』2023.1『Complete Communion / Don Cherry』2023.2『Your Mother Should Know: Brad Mehldau Plays The Beatles / Brad Mehldau』2023.3『Without a Net / Wayne Shorter』2023.4『LADY IN LOVE / 中本マリ』2023.5『Songs Of New York / Mel Torme』2023.6『Covers / James Blake』2023.7『Siembra / Willie Colón & Rubén Blades』2023.8『Undercover Live at the Village Vanguard / Kurt Rosenwinkel』2023.09『Toshiko Mariano Quartet / Toshiko Mariano Quartet』2023.10『MAINS / J3PO』2023.11『Knower Forever / Knower』2023.12『Ella Wishes You A Swinging Christmas / Ella Fitzgerald』2024.01『Silence / Charlie Haden with Chet Baker, Enrico Pieranunzi, Billy Higgins』2024.02『Rhapsody in Blue Reimagined / Lara Downes』2024.03『Djesse Vol. 4 / Jacob Collier』2024.04『Voyager / Moonchild』2024.05『Evidence with Don Cherry / Steve Lacy』2024.06『Quietude / Eliane Elias』2024.07『Alone Together / Lee Konitz, Brad Mehldau, Charlie Haden』2024.08『The Rough Dancer And The Cyclical Night (Tango Apasionado) / Astor Piazzolla』2024.09『Potro De Rabia Y Miel / Camarón De La Isla』2024.10『Calle 54 / Various』2024.11『Trumpets Of Michel-ange / Ibrahim Maalouf』2024.12『Sings for Only the Lonely / Frank Sinatra』2025.01『Hero Worship / Hal Crook』2025.02『Undercurrent / Kenny Drew』2025.02『Live In Toronto 1952 / Lennie Tristano Quintet』



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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

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曽根麻央 Monthly Disc Review2025.03_Lennie Tristano Quintet : Live In Toronto 1952 :Monthly Disc Review

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Title : 『Live In Toronto 1952』
Artist : Lennie Tristano Quintet Featuring Warne Marsh And Lee Konitz


みなさんこんにちは。曽根麻央です。少しずつ暖かかく感じられる日が増えてきていますが、昼と夜の温度差で風邪をひかないようまだまだ気をつけないといけない時期ですね。
つい先日ふっとカフェに入ったらレニー・トリスターノのLPがドンと飾ってあり、珍しいな、と見つめていました。そういえばこのJJazz.Netのディスクレビューでトリスターノについてお話ししたことがなかったと思い、今回取り上げてみました。


今日は数あるトリスターノの作品の中でも『Live In Toronto 1952』というライブ版を取り上げてみようと思います。この作品は決して音質が良いわけでもなく、最初の曲は変なFade Inの仕方をしているにも関わらず、この時代のトリスターノの生きたエネルギーを体感することができる作品かなと思います。バンドとしてもクインテットの一体感が素晴らしく、全体のアンサンブルにも注目の作品です。


レニー・トリスターノの音楽といえばまず思うのは、この時代を先駆けた異質な音楽であるということです。
彼が活動し始めた40年はちょうどビ・バップ誕生とそのムーヴメントが大きな影響をジャズ音楽に与えたところです。また後半にさしかかるとその影響を強く受けたアーティストたちの各々個性が出てきて次の流れへと移ろうとしていた時代と言っても良いでしょう。NYCではクールジャズ、西海岸ではウェスト・コーストジャズのようなPOSTビ・バップと言われるモダンジャズが誕生しつつあった時代ですね。多様な音楽が誕生する中でそれらとも一線を画す存在がレニー・トリスターノの世界だったのではないでしょうか?
計算されたかのようでありながら意表をついてくる間や旋律、ビ・バップにそのルーツを置きながらもより高度なレベルでリズム・モーチーフの発展をさせるスタイル、美しいピアノのタッチとメトロのミックなグルーヴ、クラシック音楽のような旋律同士がせめぎ合う対位法のようない複数人で行う即興、複数のサックスとピアノで作られる独特のハーモニー、こんなイメージでしょうか。


この『Live In Toronto 1952』はタイトルの通り1952年のアルバムです。1950年はマイルス・デイヴィスが『Birth of Cool』で複数の管楽器を用いたジャズで新たなジャズのサウンドの可能性を示した年でした。
1952年はチェット・ベイカーやジェリー・マリガンが2菅、ピアノレスの編成で『Gerry Mulligan Quartet Volume 1』などのアルバムを、のちのウェスト・コースト・サウンドを発信していた時代でもあります。こういった音楽はビ・バップに比べて野生的な個人個人の熱量ではなく、より計画されたアンサンブルから生まれる知的な熱量を感じます。
この1952年の時のトリスターノは間違えなくこれらの音楽の影響は受けていたor与えていたと思います。


このビ・バップからPOSTビ・バップ前期の時代に言えるのが、ドラムという楽器の使い方が他の楽器に比べて発展が大きく遅れていることです。ビ・バップは旋律楽器の革命でしたし、それ以降の音楽もマックス・ローチがリーダーで活躍し出すぐらいまではドラムはシンプルに4分音符を中心にベースと一緒にリズムキープの仕事をしているイメージです。ドラムが華々しく活躍したビ・バップ以前のビッグバンド時代や、マックス・ローチやアート・ブレイキーの登場からは考えられないことですが、ドラムがある意味主役ではなくなったジャズの歴史の中でも珍しい期間の音源かなと思います。
この『Live in Toronto 1952』でもドラムは基本的にリズムキープに徹していて、ほぼインタープレイというものをしません。しかしそれがこのアルバムのこの時代ならではの面白いところであり、そのドラムのあり方にしては考えられないレベルで発展した管楽器とピアノの旋律とハーモニー、そしてリズムを集中して音楽を聴くことができます。ある意味この時代ドラムが退化したのは音楽が発展する上で必然だったのかもしれませんね。
間違えて欲しくないのは時代のドラマーが下手だったとかそういうことを言っているのではありません。このレベルでリズムキープできるのは素晴らしいことですし、普通はここまで集中したシンプルな演奏は現代のドラマーにはできないでしょう。


メンバー
Lennie Tristano (p) Warns Marsh (ts) Lee Konitz (as) Peter Ind (b) Al Levitt (ds)


サックスの二人はトリスターノの音楽を一緒に作った二人と言って良いでしょう。トリスターノの作り出す複雑で難解なメロディーやハーモニーを正確に演奏し、このバンドのユニークなサウンドを明確なものにしています。
分かりやすいのは「317 East 32nd」は「East Of The Sun」というジャズスタンダードの替え歌になっています。最初のコーラスは「East Of The Sun」をトリスターノが演奏します。それでも半音ずらしたりしてかなり奇妙な「East Of The Sun」ですが、2コーラス目にはそれに続くようにcontrafactのメロディーが書かれています。これが「317 East 32nd」のメロディーになっています。トリスターノの書く旋律の面白さがわかる気がします。contrafactとは、以前の記事でも何回かお話ししましたがジャズの作曲のスタイルで、既存の楽曲のコード進行を用いながら自分なりの新しいメロディーを書き自らの作品とするスタイルのことです。



また「April」は「I Remember April」のcontrafactでこちらも同様に1コーラス目は通常のジャズスタンダードの「I Remember April」をピアノトリオで演奏し、2コーラス目からサックスが入ってきて「April」を演奏します。



「Back Home」は1コーラス目からそのメロディーですがチャーリー・パーカーの「Donna Lee」のcontrafactです。とは言っても実は「Donna Lee」自体が「Indiana」という曲のcontrafactなので、contrafactのcontrafactの曲と言って良いでしょう。



この3曲の序盤だけを聞いてもトリスターノのスタイルをなんとなく感じることができると思います。このcontrafactの旋律、そのスタイルがピアノソロやサックスソロでも現れていて、それが曲やバンド全体のカラーを統一してるといえます。


このユニークなリズム・モチーフの使い方はリズム・モチーフ(奇数の音価の場合が多いですが)を一つのグループとして、それを繰り返し発展させることでリズムに意外性を持たせ、拍子を錯覚させる手法ですが、これは後のビル・エヴァンスのスタイルにも大きな影響を与えています。


文:曽根麻央 Mao Soné



Recommend Disc

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Title :『Live In Toronto 1952』
Artist : Lennie Tristano Quintet Featuring Warne Marsh And Lee Konitz
LABEL : Jazz Records
発売年 : 1952年



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【SONG LIST】

01.Lennie's Pennies
02.317 East 32nd
03.You Go To My Head
04.April
05.Sound-Lee
06.Back Home




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「Monthly Disc Review」アーカイブ曽根麻央
2020.04『Motherland / Danilo Perez』2020.05『Color Of Soil /タイガー大越』2020.06『Passages / Tom Harrell 』2020.07『Inventions And Dimensions / Herbie Hancock』2020.08『Birth Of The Cool / Miles Davis』2020.09『Chet Baker Sings / Chet Baker』2020.10『SFJAZZ Collective2 / SFJAZZ Collective』2020.11『Money Jungle: Provocative In Blue / Terri Lyne Carrington』2020.12『Three Suites / Duke Ellington』2021.01『Into The Blue / Nicholas Payton』2021.02『Ben And "Sweets" / Ben Webster & "Sweets" Edison』2021.03『Relaxin' With The MilesDavis Quintet / The Miles Davis Quintet 』2021.04『Something More / Buster Williams』2021.05『Booker Little / Booker Little』2021.06『Charms Of The Night Sky / Dave Douglas』2021.07『Play The Blues / Ray Bryant Trio』2021.08『The Sidewinder / Lee Morgan』2021.09『Esta Plena / Miguel Zenón』2021.10『Hub-Tones / Freddie Hubbard』2021.11『Concert By The Sea / Erroll Garner』2021.12『D・N・A Live In Tokyo / 日野皓正』2022.1『The Tony Bennett Bill Evans Album / Tony Bennett / Bill Evans』2022.2『Quiet Kenny / Kenny Dorham』2022.3『Take Five / Dave Brubeck』・2022.4『Old And New Dreams / Old And New Dreams』2022.5『Ella Fitzgerald And Louis Armstrong / Ella And Louis』2022.6『Live from Miami / Nu Deco Ensemble & Aaron Parks』2022.7『Oscar Peterson Trio + One / Oscar Peterson Trio Clark Terry』2022.8『Ugetsu/ Art Blakey & The Jazz Messengers』2022.9『Sun Goddess / Ramsey Lewis』2022.10『Emergence / Roy Hargrove Big Band』2022.11『Speak No Evil / Wayne Shorter』2022.12『The Revival / Cory Henry』2023.1『Complete Communion / Don Cherry』2023.2『Your Mother Should Know: Brad Mehldau Plays The Beatles / Brad Mehldau』2023.3『Without a Net / Wayne Shorter』2023.4『LADY IN LOVE / 中本マリ』2023.5『Songs Of New York / Mel Torme』2023.6『Covers / James Blake』2023.7『Siembra / Willie Colón & Rubén Blades』2023.8『Undercover Live at the Village Vanguard / Kurt Rosenwinkel』2023.09『Toshiko Mariano Quartet / Toshiko Mariano Quartet』2023.10『MAINS / J3PO』2023.11『Knower Forever / Knower』2023.12『Ella Wishes You A Swinging Christmas / Ella Fitzgerald』2024.01『Silence / Charlie Haden with Chet Baker, Enrico Pieranunzi, Billy Higgins』2024.02『Rhapsody in Blue Reimagined / Lara Downes』2024.03『Djesse Vol. 4 / Jacob Collier』2024.04『Voyager / Moonchild』2024.05『Evidence with Don Cherry / Steve Lacy』2024.06『Quietude / Eliane Elias』2024.07『Alone Together / Lee Konitz, Brad Mehldau, Charlie Haden』2024.08『The Rough Dancer And The Cyclical Night (Tango Apasionado) / Astor Piazzolla』2024.09『Potro De Rabia Y Miel / Camarón De La Isla』2024.10『Calle 54 / Various』2024.11『Trumpets Of Michel-ange / Ibrahim Maalouf』2024.12『Sings for Only the Lonely / Frank Sinatra』2025.01『Hero Worship / Hal Crook』2025.02『Undercurrent / Kenny Drew』



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曽根麻央 Mao Soné

曽根麻央は2018年にジャズの二刀流として、 2枚組CD『Infinite Creature』でメジャー・デビュー果たしたトランペッター、ピアニスト、作曲家。

 幼少期よりピアノを、8歳でトランペットを始める。9歳で流山市周辺での音楽活動をスタートさせる。18歳で猪俣猛グループに参加し、同年バークリー音楽大学に全額奨学金を授与され渡米。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席(summa cum laude)で卒業。在学中にはタイガー大越、ショーン・ジョーンズ、ハル・クルック等に師事。グラミー賞受賞ピアニスト、ダニーロ・ペレスの設立した教育機関、グローバル・ジャズ・インスティチュートにも在籍し、ダニーロ・ペレス、ジョー・ロバーノ、ジョン・パティトゥッチ、テリ・リン・キャリントン等に師事、また共演。
 これまでにニューポート、モントレー、モントリオール、トロント、ドミニカ等の国際的なジャズ・フェスティバルに出演。
2017年には自己のバンドでニューヨークのブルーノートやワシントンDCのブルース・アレイ等に出演。2018年メジャー・デビュー。2019年には故・児山紀芳の代役でNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」の司会を担当。また2020年公開のKevin Hæfelin監督のショート・フィルム「トランペット」の主演・音楽を務めるなど、演奏を超えて様々な活動の場を得ている。

 曽根は国際的に権威ある機関より名誉ある賞を数々受賞している。
2014年度フィラデルフィア『国際トランペット協会(ITG)ジャズ・コンペティション』で優勝。
同年『国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション』にて13人のファイナリストに世界中の応募者の中から選出。
2015年に地元・流山市より『ふるさとづくり功労賞』受賞。
2016年アムステルダム『"Keep An Eye" 国際ジャズアワード』にて優勝。

曽根麻央Official Site

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