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Monthly Disc Review2015.10.15:Monthly Disc Review

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Title : 『Pendulum』
Artist : 林正樹



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林正樹というピアニストの活動を一言で説明するのは難しい。僕の記憶としては渡辺貞夫、菊地成孔といったジャズマン、あるいは椎名林檎、小野リサまで実に幅広く活動しているピアニストそして作曲家が林正樹だ。今月取り上げるのはそんな彼のソロ・アルバム。


「コンポーズ」を主眼に置いた、とされるこの作品は、アルバムの最初から最後までくつろいだ雰囲気で溶けていくような音楽。ピアニストとしての派手なテクニックや凝ったハーモニーは一切感じさせることは無いが、一音一音をどこまでも大切に、丁寧に紡いでいく中には計り知れないほどの技術とピアニズムを感じる。気が付くとともすれば単調に聴こえてしまいそうなこの作品に僕はすっかり聴き入ってしまった。


作品を彩るメンバーは、藤本一馬、アントニオ・ロウレイロ、徳澤青弦など、どこかジャンルに縛られない印象の音楽家達。ベースやドラムといったリズム楽器を排し徹底されたメロディへのこだわりは、くつろいだ雰囲気を持ちながらも、何か一つ欠けただけで成立しなくなってしまうような、そんな危うさももっている。残響の一つ一つからピアノのペダルを踏む音まで何も零すこと無く録音された音も素晴らしい。Fumitake Tamuraのエレクトロニクスも、前面には出ずアンサンブルに影をつけていくような不思議な役割を果たしている。驚きは演奏者のエゴが全く感じられない事。そして粛々と紡がれていく音楽には様々なルーツが感じられるけれど、どこまでも無国籍。無国籍なのになんだか昔からずっと近くにあった音楽のような、そんな不思議な親近感を持っている。


『Pendulum(=振り子)』と名付けられたこのアルバムは、そのタイトルに反してそこだけ時間が止まったような佇まい。描いているのは昼かもしれないし、夜かもしれない。夏かもしれないし、冬かもしれない。古い友人の事かもしれないし、昔観た映画のことかもしれない。音楽を聴いていたはずなのに、いつの間にか僕の中には沢山の情景が浮かび上がっては消えていく。

きっと5年後も10年後も僕はこの音楽に寄り添って生きているような気がする。


文:花木洸 HANAKI hikaru





【林正樹《Pendulum》】






Recommend Disc

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Title : 『Pendulum』
Artist : 林正樹
LABEL : SPIRAL RECORDS
NO : XQAW-1108
RELEASE : 2015.9.2

アマゾン詳細ページへ


【MEMBER】
林正樹(piano)
Antonio Loureiro(Vibraphone, Voice)
Joana Queiroz(clarinet)
藤本一馬(Guitar)
徳澤青弦(Cello)
Fumitake Tamura(Electronics)


【SONG LIST】
1. Flying Leaves
2. Bluegray Road
3. Initiate
4. Kobold
5. Teal
6. Shadowgraph
7. Paisiello St.
8. Ripple
9. Thirteenth Night
10. Butt
11. Jasper
12. Pendulum
* All Composed and Arranged by Masaki Hayashi



この連載の筆者、花木洸が先日発売になりました『Jazz The New Chapter 3』で編集・選盤・レビュー記事などを担当。ブラック・ミュージックの最先端からUKジャズ、ネクスト・ジャズ・ファンク、ラージアンサンブル等ここにしかない記事・インタビューが盛り沢山となっています。


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■タイトル:『Jazz The New Chapter 3』
■監修:柳樂光隆
■発売日:2015年9月10日
■出版社: シンコーミュージック

アマゾン詳細ページへ


今日においてはジャズこそが時代を牽引し、ディアンジェロやフライング・ロータスなど海外の最先端アーティストから、ceroなど日本のポップ・シーンにも大きな影響を与えている。この状況を予言し、新時代の到来を告げた「Jazz The New Chapter(ジャズ・ザ・ニュー・チャプター)」の第3弾がいよいよ登場。2014年の刊行時より刷数を重ね、SNS上でも未だ話題沸騰中の第1弾・第2弾に続き、2015年9月末に〈Blue Note JAZZ FESTIVAL in JAPAN〉が開催されるなど、かつてない活況を迎えているジャズの次なる未来は、ニューチャプターが切り拓く!


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「Monthly Disc Review」アーカイブ花木 洸

2015.04 ・2015.05 ・2015.06 ・2015.07 ・2015.08 ・2015.09




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花木 洸 HANAKI hikaru

東京都出身。音楽愛好家。
幼少期にフリージャズと即興音楽を聴いて育ち、暗中模索の思春期を経てジャズへ。
2014年より柳樂光隆監修『Jazz the New Chapter』シリーズ(シンコーミュージック)
及び関西ジャズ情報誌『WAY OUT WEST』に微力ながら協力。
音楽性迷子による迷子の為の音楽ブログ"maigo-music"管理人です。

花木 洸 Twitter
maigo-music

Monthly Disc Review2015.1001:Monthly Disc Review

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Title : 『Eight Winds』
Artist : Sokratis Sinopoulos Quartet



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今から20年くらい前、池澤夏樹の「ギリシアの誘惑」というエッセイを読み、
青いエーゲ海が見たくなり、ギリシャに行ってみようかと真剣に考えていた。
けれども、なぜかその前にハワイや竹富島の海を訪ねてしまい、
青い海はしばらくいいかな、という心境になり、
以来、ギリシャのことは頭の隅に追いやってしまった。

月日が経って、現在のギリシャはどうやら観光に訪れるには
ふさわしくない状態に陥っているようで、
青いエーゲ海よりもデフォルト(債務不履行)の国というイメージに。

そんなギリシャに、lyraという楽器がある。
古代ギリシャの竪琴で、古くはハープのように
指で弾くものであったらしいが、現代のlyraは弓で弾く楽器だ。

今回、ECMからSokratis Sinopoulos Quartet 『Eight Winds』という一枚がリリースされた。
そうSokratisだ、ソクラティス。(歴史の教科書に出てくるソクラテスはsokratesと綴る)
ギリシャでは珍しくない名前なのかもしれないが、
その名前だけでなんだか興味がそそられる。

ECMの作品を通じて、ヨーロッパ諸国の民族楽器や
その音楽に初めて触れるという機会を得ることは多いのだが、
今回もlyraの音色に初めて出会う。

Sokratis Sinopoulosの奏でるlyraは、
オリエンタルに響くこともあれば、
アイリッシュフィドルのようにも聞こえたりと、
各楽曲によって様々な表情を見せる。

しかし、なによりも驚くのは、この古代からの楽器lyraが、
ジャズアプローチのPiano Trioに取り込まれ、
Quartet編成となって演奏されると
極めて現代的な音楽として2015年の今に響き渡るということだ。
単なる、いにしえの民族楽器の響きを楽しむというレベルではなく、
現在進行形のアートフォームとしての存在感がそこにはある。
それは、ジャズが最もコンテンポラリーな音楽フォームであることの証明でもあろう。


こういう未知の音楽体験を得られるが故、ECMのカタログを追いかけることになるのだ。


古代からの楽器が現代的なアートフォームに向かい入れられることによって得られる
極めてコンテンポラリーな空気感は、
同じくECM作品ではoudを奏でるAnouar Brahemも同様で、
機会があれば、是非、こちらも一聴を。


「ギリシアの誘惑」から20年以上が経った今、lyraの音色によって
再びギリシャへ想いを馳せることになったのだけれど、
やはりデフォルトの危機に揺れる国へ出向くのは現実的ではない。
しばらくは、このSokratisの作品を聞きながら
lyraの音色がアテネの街角に響く様を
想像して過ごすこととしようか。


文:平井康二


【Sokratis Sinopoulos Quartet - Thrace】






●Sokratis Sinopoulos facebook
https://www.facebook.com/sokratissinopoulos





Recommend Disc

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Title : 『Eight Winds』
Artist : Sokratis Sinopoulos Quartet
LABEL : ECM(2407)
RELEASE : 2015.8.28

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【MEMBER】
Sokratis Sinopoulos: lyra
Yann Keerim: piano
Dimitris Tsekouras: bass
Dimitris Emanouil: drums


【SONG LIST】
01. Eight Winds
02. Yerma
03. 21st March
04. Thrace
05. Aegean Sea
06. In Circles
07. Lyric
08. Street Dance
09. Forever
10. 21st March (Variation)
11. Stillness
12. Eight Winds (Variation)


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「Monthly Disc Review 平井康二」アーカイブ平井康二

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平井康二(cafeイカニカ オーナー)

1967年生まれ。レコード会社、音楽プロダクション、
音楽出版社、自主レーベル主宰など、約20年に渡り、
音楽業界にて仕事をする。
2009年、cafeイカニカをオープン
おいしいごはんと良い音楽を提供するべく日々精進。


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cafeイカニカ

●住所/東京都世田谷区等々力6-40-7
●TEL/03-6411-6998
●営業時間/12:00~18:00(毎週水、木曜日定休)
お店の情報はこちら

Monthly Disc Review2015.0915:Monthly Disc Review

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Title : 『Melting Point』
Artist : The NYC Improv Project



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今回はこの連載が始まって初めてのコンピレーション・アルバム。
Melting Point -The NYC Improv Project-と銘打ったこのアルバムは総勢17人ものアーティストが集った"完全即興録音"となっている。アーティストがいくつかの組み合わせで行った録音を一つのアルバムに収めたもので、ヒリヒリとしたライブ感が楽しめる作品だ。


マーク・ジュリアナ(ds)、マウリス・ブラウン(tp)、ジャリール・ショウ(as)、ニア・フェルダー(gt)など最近名前をよく聞くようなアメリカのジャズシーンで最も勢いのあるメンバー達が集ったこのセッションには、スキャットソロが光るベースとボーカルのデュオから、人力のヒップホップ・ビートにラップが乗った曲、ハードバップ、アフロキューバンからファンクまで幅広い音楽がつめ込まれている。曲順もそれらがランダムに配置されており一見まとまりが無さそうにみえるが、様々な要素が混ざり合い混沌とした現在のジャズシーンのリアルを切り取ったような不思議なまとまりがあり、僕は『真夏の夜のジャズ』を思い出した。フォーマットは様々だが皆同じ時代の、同じ感覚の元で演奏されている。


そしてギタリストのダイスケ・アベ、Sly 5th Ave『AKUMA』やSnarky Puppyのアルバムにも参加するケイタ・オガワ(perc)、タク・イワサキ(voice)、プレイヤーとしてだけでなくプロデューサーからレコーディングまでを手がけるノリ・ナラオカ(b)といった日本人の名前が混ざっていることに気づく。


先日リリースされたファビアン・アルマザン、ギラッド・ヘクセルマン等が参加したニューヨークで活躍するサックス奏者カズキ・ヤマナカの自主制作盤『Songs Unconscious-minded』もダイスケ・アベが参加しノリ・ナラオカのプロデュースだった。このアルバムをリリースした大阪の新興レーベルMFA Recordsの登場をはじめ、日本のジャズ/日本人のジャズを取り巻く環境も日々面白くなってきていて目が離せない。


文:花木洸 HANAKI hikaru





【The NYC Improv Project"Melting Point" | Inpartmaint Inc】
http://www.inpartmaint.com/site/13612/





Recommend Disc

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Title : 『Melting Point』
Artist : The NYC Improv Project
LABEL : MFA RECORDS
NO : MFAR-1001
RELEASE : 2015.7.23

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【MEMBER】
Jazzmeia Horn(vo)(M1,6)
Maurice Brown(tp)(M3,5)
Mark Guiliana(dr) (M3,5)
Nir Felder(gt) (M3,5)
Daisuke Abe(gt) (M3,5)
Jaleel Shaw(alto.sax)(M4,7)
Ben Paterson(p/org) (M4,7)
Jamison Ross(dr) (M4,7)
Keita Ogawa(perc)(M6,7
Chaance Barnes(vo)(M8)
Victor Gould(rhodes) (M8)
Jonathan Greenstein(tenor.sax) (M8)
Darrian Douglas(dr) (M8)
Tak Iwasaki(voice)(M9)
Sullivan Fortner(p/rhodes) (M9,10)
Joe Dyson(dr) (M9,10)
Nori Naraoka(b)(M1,3,4,5,6,8,9,10)

【SONG LIST】
1. West 4 City Blues
2. Trumpet Intro
3. Free Style No.3
4. On Christopher St.
5. Melting Point
6. Oiseau de Proie ~Bird of Prey~
7. Asked For a Groove
8. Don't Mind
9. Through Brooklyn Bridge
10. 2:31 am


この連載の筆者、花木洸が先日発売になりました『Jazz The New Chapter 3』で編集・選盤・レビュー記事などを担当。ブラック・ミュージックの最先端からUKジャズ、ネクスト・ジャズ・ファンク、ラージアンサンブル等ここにしかない記事・インタビューが盛り沢山となっています。


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■タイトル:『Jazz The New Chapter 3』
■監修:柳樂光隆
■発売日:2015年9月10日
■出版社: シンコーミュージック

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今日においてはジャズこそが時代を牽引し、ディアンジェロやフライング・ロータスなど海外の最先端アーティストから、ceroなど日本のポップ・シーンにも大きな影響を与えている。この状況を予言し、新時代の到来を告げた「Jazz The New Chapter(ジャズ・ザ・ニュー・チャプター)」の第3弾がいよいよ登場。2014年の刊行時より刷数を重ね、SNS上でも未だ話題沸騰中の第1弾・第2弾に続き、2015年9月末に〈Blue Note JAZZ FESTIVAL in JAPAN〉が開催されるなど、かつてない活況を迎えているジャズの次なる未来は、ニューチャプターが切り拓く!


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「Monthly Disc Review」アーカイブ花木 洸

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花木 洸 HANAKI hikaru

東京都出身。音楽愛好家。
幼少期にフリージャズと即興音楽を聴いて育ち、暗中模索の思春期を経てジャズへ。
2014年より柳樂光隆監修『Jazz the New Chapter』シリーズ(シンコーミュージック)
及び関西ジャズ情報誌『WAY OUT WEST』に微力ながら協力。
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Monthly Disc Review2015.0901:Monthly Disc Review

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Title : 『FIT TO FLY』
Artist : Guido Santoni Trio



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エンジニアの話。
信頼できるエンジニアの名前がクレジットされていると
その作品の信頼性というか、株がグッとあがる。

古くは、BLUENOTEのRudy Van Gelder、
そしてECMのJan Erik Kongshaug、
または、Tommy LiPuma作品のAl Schumitt、等々。
その名前の存在感は、時として演奏者を上回っている。

レコーディング現場でのエンジニアの耳は、
その場の誰よりも、純粋に音だけに触れている。
演奏者は、自分の演奏の良し悪しに耳がいってしまうし
全体を掌握しているはずのプロデューサーは、
どこかで、予算の事や売れるか否かが気になっている、

なんていうのは、多少、誇張した妄想ではあるけれども、
少なからず、そういう傾向があるのは否めないはず。
とはいえ、音響学的な見地からばかり良し悪しを判断されてしまうのは
困りものだけれど、前出の一流どころは、
その辺にざらにいるミュージシャンよりも
音楽的才能が豊かで、(Jan Erik Kongshaugのギタープレイなどは、最高に素敵だ)
そんな面々が、コントロールルームのど真ん中に座って、
じっと耳を澄ましているスタジオ現場は、なんとも心地よい緊張感が漂い、
必ずや良い作品が生まれると、想像できる。
(エンジニアのジャッジが曖昧だと、しまりの無い現場になるのだ、これは経験談)


さて、本題。
Guido Santoniは、ピアニスト。
そして録音は、Stefano Amerio。今回はこの名前に注目。

ここ数年、ECMの作品でも頻繁に目にすることが多くなってきているStefano Amerio。
(このレビューの5月と6月の作品も、Amerioの手による)
今作、『FIT TO FLY』は、そのAmerioが自身のスタジオ"artesuono recording studio"
で録音し、Produce,Recording,Mixing,Masteringまで手掛けているという、
言ってしまえば、ほぼAmerioの作品。

前作で、ジャズオーディオディスク大賞なる賞を受賞していて、これは四年振りの作品。
どうしてもAmerioの録音芸術作品という視点抜きには、聴くことが難しいが、
Guidoのソングライティングと、Trioの演奏は、抑制が効いていて好ましい。
ECMのEicherが好んでAmerioを使っているということからも、
その共通項は容易に想像できるであろう。

Amerioが鎮座するスタジオの心地よい緊張感を想像しながら
ようやく過ごしやすくなってきた晩夏の夜に、
じっくりと耳を傾けることをお勧めする。
(ある程度、しっかりした音響機器での再生が理想ですが...。)


文:平井康二


https://www.facebook.com/GuidoSantoniTrio
http://www.artesuono.it/





Recommend Disc

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Title : 『FIT TO FLY』
Artist : Guido Santoni Trio
LABEL : Arte Suono(ART122)
RELEASE : 2015.7.10

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【MEMBER】
Guido Santoni (p)
Danilo Gallo (b)
U.T.Gandhi (ds)


【SONG LIST】
01. Sudden Flashes
02. Dragging Soul
03. Beyond My Boundary
04. Far Away But Never far Apart
05. Fit To Fly
06. Easy Works
07. Blending Into The Sky
08. Sensitivity
09. Asking The Immensity


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「Monthly Disc Review 平井康二」アーカイブ平井康二

2015.4.1 ・2015.5.1 ・2015.6.1 ・2015.7.1 ・2015.8.1




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平井康二(cafeイカニカ オーナー)

1967年生まれ。レコード会社、音楽プロダクション、
音楽出版社、自主レーベル主宰など、約20年に渡り、
音楽業界にて仕事をする。
2009年、cafeイカニカをオープン
おいしいごはんと良い音楽を提供するべく日々精進。


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Monthly Disc Review2015.0815:Monthly Disc Review

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Title : 『THE WAY』
Artist : 宮川純



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リーダーの宮川純は1987年生まれ。アルバムはこれで三枚目となるが、ピアニストで言うとシャイ・マエストロやギターのジュリアン・レイジと同じ生年でジャズの世界で言うところの新世代に位置づけられるだろう。

ここに「高校生の頃、僕のアイドルだったのが、東京事変とベン・フォールズだった」と語っていることと、彼が10代の時に<ヤマハ・ティーンズ・ミュージック・フェスティバル>で今人気のロックバンドcinema staffと東海地区代表を掛けて争っていたことを加えると「ただのピアニストじゃないぞ」という気配がしてくる。


アルバム全編に共通する板崎拓也、石若駿とのピアノトリオのコンビネーションは完璧で、石若は細かいサインやフックを仕掛けているし宮川はそれを絶対に見逃さない。そこに時には釣れない素振りを見せたり一緒になってフックをメイクしていく板崎との三者の関わりは、正にピアノトリオを聴くときの醍醐味といった塩梅で聴けば聴くほどとんでもなくスリリングだ。ギターの荻原亮もソロは少ないながらも「JB's Poem」と「Pulse」ではそれぞれちがった毛色ながらどちらも白熱のギターソロを聴かせる。宮川もいわゆる熱量のあるソロだけでなく、時にはコンパクトなソロを聴かせたり、「The Water is Wide」でウーリッツァーでメロディを粛々と紡いだり、「JB's Poem」でローズと生ピアノをバッキングとフィルで華麗に使い分けたりする宮川の達者ぶりは同世代でも随一だろう。石若も「The Golden Bug」でのいわゆるスネアをズラした今風のリズムと「Just A Moment」での高速4ビートを叩いているのは本当に同じ人物なのかと疑うくらい多彩なリズムを使い分け、曲中でも細かなフィールで次々に彩りを加えている。
コンテンポラリーな楽曲といわゆる"New Chapter"的な作品が実に自然に同居しているところはこの世代の、そしてアルバムほぼ全曲の作曲者でもある宮川のバランス感覚の賜物だろう。


これら演奏面と同じくらい特筆すべき面白さはこのアルバムの録音だ。
一曲目の「Introduction」のドラムの音を聴いた瞬間に「待ちに待っていたアルバムがついに出た!」と、僕はそう思った。
ロバート・グラスパーやクリス・バワーズ、ホセ・ジェームズといったミュージシャンはレコーディング・エンジニアにあえてジャズのエンジニアでは無い人材を起用してライブ音楽であるジャズに録音作品としての面白さを付与してきた。このアルバムに参加している黒田卓也もそんなジャズメンの一人だ。そこに呼応するような作品が日本でも「ついに出た」のだ。

6月にも日本のこの世代のミュージシャンを取り上げたが、この世代が今、日本のジャズに開き始めた風穴を押し広げていることは間違いない。


文:花木洸 HANAKI hikaru


【参考】
インタビュー:日本のジャズ新時代を告げる重要作をリリースした宮川 純に柳樂光隆(JTNC)が迫る【前編】 - CDJournal CDJ PUSH

http://www.cdjournal.com/main/cdjpush/miyakawa-jun/1000001107

・全曲試聴
Jun Miyakawa - The Way (Sound Sample)' by T5Jazz Records on SoundCloud

https://soundcloud.com/t5jazz/sets/jun-miyakawa-the-way-sound-sample




【Jun Miyakawa / The Water Is Wide (Official Music Video)】







Recommend Disc

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Title : 『THE WAY』
Artist : 宮川純
LABEL : T5jazz Records
NO : T5J-1010
RELEASE : 2015.7.22

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【MEMBER】
宮川純 - piano, Rhodes, Wurlitzer
荻原亮 - guitar
坂崎拓也 - bass
石若駿 - drums
*黒田卓也 - trumpet (#1, #2 & more)

【SONG LIST】
01. 1. Introduction
02. The Way
03. JB's Poem
04. Pulse
05. The Water Is Wide
06. Automata
07. Glossy
08. The Gold Bug
09. Just A Moment


この連載の筆者、花木洸が編集協力として参加した、金子厚武 監修『ポストロック・ディスク・ガイド』(シンコーミュージック)が発売になりました。シカゴ音響派などジャズとも互いに影響しあって拡がった音楽ジャンルについて、広い視点から俯瞰するような内容になっています。


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■タイトル:『ポストロック・ディスク・ガイド』
■監修:金子 厚武
■発売日:2015年5月30日
■出版社: シンコーミュージック
■金額:¥2,160 単行本(ソフトカバー)

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20年に及ぶポストロック史を、600枚を超えるディスクレビューで総括!貴重な最新インタヴューや、概観を捉えるためのテキストも充実した画期的な一冊。90年代に産声をあげた真にクリエイティヴな音楽が、今ここに第二章を迎える。


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「Monthly Disc Review」アーカイブ花木 洸

2015.04 ・2015.05 ・2015.06 ・2015.07 




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花木 洸 HANAKI hikaru

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Monthly Disc Review2015.0801:Monthly Disc Review

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Title : 『Treehouse』
Artist : Tom Hewson Trio



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以前、こんな文章を残したことがある。
「大好きなミュージシャンがこの世を去ってしまい、新作が聴けなくなってしまうことと、
自分の方が先にこの世を去り、聴くことのできない作品がこの世に存在すること、
どちらの場合がより悲しいか。」


この時、僕はとても才能のある自分よりもかなり若いミュージシャンに出会っていて、
彼女の生み出す作品をすべて聴き続けたいと思っていた。
しかし、ふと思ったのだ、彼女と自分の年齢差を考えると
ほぼ確実に自分の方が先にこの世を去るのだと。
それは、自分がこの世を去った後に生み出される作品がおそらく存在すること、
そして自分はそれを聴くことが出来ないということを意味していた。
それくらい、その若いミュージシャンに心酔していたのだ。


Tom Hewsonの存在を知り、その作品を耳にした時、
自分が以前に書いた"自分が逝った後に生み出される作品"という文章を思い出させた。
それは、Tomがまだ若いピアニストだということ(恐らく現在30歳くらい)のみならず、
多くのジャズミュージシャンの場合、老いて枯れてもなお、
素晴らしい作品が発表されることが頭をよぎったからだ。
(先月のレビューのCHARLIE HADENのように)

晩年のTom Hewsonの作品を聴いている自分は全く想像がつかない。
と言っても仕方のない現実なので、とりあえずはTomの作品をしばらく追ってみようかと思う。


今作は、レギュラートリオとして活動している"treehouse"の作品。
このトリオ、piano,vibraphon,bassという編成。
ピアニストTomのリーダーアルバムではあるけれども、この編成の場合、
やはりvibeの存在感はかなり大きい。
vibeが響き出すと、景色が一変する。
ひんやりとした舌触りのスイーツを口にしたような、
海辺を渡る夕暮れの潮風に身をゆだねているような、
夏に聴くVibeの音色は快楽である。


調べてみるとTomは、John Taylorをメンターとする、とあり、
確かにソングライティングにその影を感じることが出来る。
師の域に達するまでには、まだまだ時間が必要なのは当然のこととして、
まずは、今のこの若い才能と演奏を楽しむことを優先したい。
"自分が逝った後に生み出される作品"には触れることが出来ないのだから。


この原稿を書き終えた数日後に、John Taylorの訃報を聞く。
やはりこの喪失感は、なんとも云えず、ただ残念でならない。
こうなってしまうと、師を失ったTom Hewsonの今後の作品に、
今作以上にJohn Taylorの姿を追い求めてしまいそうだ。
一人のリスナーとしては、Tomの作品に潜むJohn Taylorの影を
勝手に想像して楽しむことにしたい。

Johnの冥福をお祈りします。


文:平井康二


http://tomhewson.com/
http://tomhewson.com/treehouse/





Recommend Disc

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Title : 『Treehouse』
Artist : Tom Hewson Trio
LABEL : CAM JAZZ(CAMJ-3316-2)
RELEASE : 2015.7.3

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【MEMBER】
Tom Hewson (p)
Lels Wright (vib)
Calum Goiurlay (b)


【SONG LIST】
01. Sparticle
02. Treehouse
03. Lifting
04. Not Relevant
05. Gelsomina
06. Splitting
07. Glitch
08. Silver Strands
09. Lingering
10. Beanie's Bounce


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「Monthly Disc Review 平井康二」アーカイブ平井康二

2015.4.1 ・2015.5.1 ・2015.6.1 ・2015.7.1




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平井康二(cafeイカニカ オーナー)

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音楽出版社、自主レーベル主宰など、約20年に渡り、
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Monthly Disc Review2015.0715:Monthly Disc Review

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Title : 『Covered』
Artist : Robert Glasper



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ロバート・グラスパーの新譜。ピアノ・トリオ作品としては『Double Booked』(2009)以来の実に6年ぶりの作品で、この6年の間に何があったかというとそれはもちろんエクスペリメント名義での『Black Radio(以下BR)』諸作だ。この新作ではエクスペリメントでのメンバーではなく初期のトリオ作品のヴィセンテ・アーチャー(b)、ダミオン・リード(ds)というメンバーに戻している。


スタジオライブ録音という事でMCや観客の拍手や歓声が入る場面もあるが作品の音作りとしては一般的なピアノトリオ作品とは異なっていて、バスドラムを中心とした低音のドスが効いたサウンド。『BR』シリーズと同じエンジニアを起用したようだ。


『Covered』というタイトルの通りアルバムの大半を占めるのは過去から現在までのジャズ以外の楽曲。RadioheadからJoni Mitchel、自らもレコーディングに参加したKendrick LamarやBilalの楽曲までロバート・グラスパーのiPodの中からセレクトされた楽曲+自身の楽曲と1曲のジャズ・スタンダードという構成になっている。


「『BR』を聴いてジャズに興味をもった人にも聴いてもらえるように」と各所でアナウンスした通り、このアルバムにはグラスパーの『BR』から一貫したポップ感覚が各所に詰め込まれている。曲の進行とともに3者が煽り合いアドリブが加熱していくような、いわゆるビルドアップしていくような音楽、バトル音楽としてのジャズではなく、ポップな枠組みを崩さないように即興の中でもメロディを非常に大事に慈しむように奏でる場面が多い。そしてそのポップさを可能にしているのが彼らのジャズマンとしての技術であることは記さねばならない。


"I Don't Even Care"では噛み付くような前のめりの右手のアドリブに対して、左手のバッキングは驚くほど冷静に、明らかに右手とは違ったタイム感と落ち着きを持って同じフレーズをループする背景と同化している。"So Beautiful"等の比較的はっきりとしたソロをとる楽曲に置いても決して聴き苦しくならないのはこの左手との温度差とバックの演奏のループ感に要因があるように思う。アドリブが始まると同時にフェードアウトする"Reckoner"も、再びテーマにフェードインした時にはドラムのビートはそのままにピアノとベースは3/4拍子という面白いアンサンブルが試みられている。正確無比にビートを刻み加減速のほとんど無いドラムと少ない音数かつ決して軸をぶらさないベースは、明らかにエクスペリメントの持つグルーヴ感とは異なっていて、このトリオ作では違うメンバーを起用した事も頷ける。この2人が作るビートの上にグラスパー独特のタイム感をもって散りばめるピアノは決して無理をすること無く余裕すら感じられるが、今や一聴してそれと分かるほどの個性を放っている。


そうやって聴いていくと、アルバムの中で唯一ピアノ以外のソロがフィーチャーされ、ポップとは異なった指標の曲のタイトルが"In Case You Forgot"(あなたが忘れるといけないから)というのもグラスパーなりのジョークのように思えてくる。


エクスペリメントでのアンサンブルのタクトを振るようなピアノとも「黒いメルドー」と呼ばれた初期の作品とも異なった、成熟したピアニストとしてそしてバンドリーダーとしての魅力が感じられる作品。ピアノ・トリオという伝統的かつある種ジャズの代名詞的なフォーマットで挑んだこの作品は、誤解を恐れずに言うならばこの作品は数あるピアノトリオ作品の中でもちょっとした奇作だ。


文:花木洸 HANAKI hikaru




【Robert Glasper - I Don't Even Care (Live At Capitol Studios)】







Recommend Disc

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Title : 『Covered』
Artist : Robert Glasper
LABEL : ユニバーサル ミュージック
NO : UCCQ-1042
RELEASE : 2015.6.10

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【MEMBER】
ロバート・グラスパー(p)  
ヴィセンテ・アーチャー(b)  
ダミアン・リード(ds)

【SONG LIST】
01. Introduction
02. I Don't Even Care
03. Reckoner
04. Barangrill
05. In Case You Forgot
06. So Beautiful  
07. The Worst
08. Good Morning
09. Stella By Starlight
10. Levels
11. Got Over feat. Harry Belafonte
12. I'm Dying of Thirst


この連載の筆者、花木洸が編集協力として参加した、金子厚武 監修『ポストロック・ディスク・ガイド』(シンコーミュージック)が発売になりました。シカゴ音響派などジャズとも互いに影響しあって拡がった音楽ジャンルについて、広い視点から俯瞰するような内容になっています。


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■タイトル:『ポストロック・ディスク・ガイド』
■監修:金子 厚武
■発売日:2015年5月30日
■出版社: シンコーミュージック
■金額:¥2,160 単行本(ソフトカバー)

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20年に及ぶポストロック史を、600枚を超えるディスクレビューで総括!貴重な最新インタヴューや、概観を捉えるためのテキストも充実した画期的な一冊。90年代に産声をあげた真にクリエイティヴな音楽が、今ここに第二章を迎える。


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「Monthly Disc Review」アーカイブ花木 洸

2015.04 ・2015.05 ・2015.06 




Reviewer information

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花木 洸 HANAKI hikaru

東京都出身。音楽愛好家。
幼少期にフリージャズと即興音楽を聴いて育ち、暗中模索の思春期を経てジャズへ。
2014年より柳樂光隆監修『Jazz the New Chapter』シリーズ(シンコーミュージック)
及び関西ジャズ情報誌『WAY OUT WEST』に微力ながら協力。
音楽性迷子による迷子の為の音楽ブログ"maigo-music"管理人です。

花木 洸 Twitter
maigo-music

Monthly Disc Review2015.0701:Monthly Disc Review

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Title : 『Tokyo Adagio』
Artist : CHARLIE HADEN,GONZALO RUBALCABA



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東京の夜は、いつも刺激的で魅惑に溢れていて、
夕闇と共に立ち現れる高層ビル群の夜景に心を躍らせていたのは
いつの頃だったろうか。喧騒の中を漂い、美食と快楽らしきものを
求めては、それが多くの場合幻想でしかないということを知らずに、
まだ見ぬ光り輝いているはずの未来へと駆り立てられ、
無為に時間を浪費していた時代。


そういう時代がいつの間にか終わってしまったのか、
あるいは、僕自身がそういう場所から降りることを選択しただけなのか、
正直、本当のところはなんとも言えないのだけれど、
少しだけ、あのギラギラと輝いていた東京の夜が、
懐かしくも愛おしくもある。


今から10年前、2005年の東京の夜を想像してみる。
浮足立ったバブルはとうの昔に終焉を迎えているはずなのだけれど、
まだ、成長する未来を妄想することが許された時代。
そして、あの大きな災害が数年後に訪れるなんていうことは
誰一人、想像もしていなかった時代。
何も確信のようなものや、安心材料があった訳ではなく、
かといって大きな不安を抱くマイナス要因もない、
ただなんとなく、平穏な日々が続いていくんだろうな、
というくらいにしか考えていなかった時代。


2005年3月、表参道のBLUE NOTE TOKYOに、
CHARLIE HADENとGONZALO RUBALCABAが残したこの音源を聴きながら、
バブルと震災の狭間の幸福な時代を思い出す。

TOKYO ADAGIOに収められた、ゆるやかで平穏な時間は、
今の東京には、おそらく感じることのできない
貴重な瞬間であったのだと強く感じる。
当然、もうCHARLIE HADENのBassが東京の夜に響くことはないのだけれど。


文:平井康二




【Charlie Haden - Gonzalo Rubalcaba / Tokyo Adagio】







Recommend Disc

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Title : 『Tokyo Adagio』
Artist : CHARLIE HADEN,GONZALO RUBALCABA
LABEL : ユニバーサルミュージック(UCCI-1021)
RELEASE : 2015.7.1

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【MEMBER】
Gonzalo Rubalcaba (p)
Charlie Haden (b)
Recorded Live at Blue Note Tokyo, Japan on March 16th to March 19th, 2005.

【SONG LIST】
01. En La Orilla Del Mundo
02. My Love And I
03. When Will The Blues Leave
04. Sandino
05. Solamente Una Vez
06. Transparence


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「Monthly Disc Review 平井康二」アーカイブ平井康二

2015.4.1 ・2015.5.1 ・2015.6.1




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平井康二(cafeイカニカ オーナー)

1967年生まれ。レコード会社、音楽プロダクション、
音楽出版社、自主レーベル主宰など、約20年に渡り、
音楽業界にて仕事をする。
2009年、cafeイカニカをオープン
おいしいごはんと良い音楽を提供するべく日々精進。


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cafeイカニカ

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Monthly Disc Review2015.0615:Monthly Disc Review

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Title : 『Moving Color』
Artist : 吉本章紘カルテット



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今月のレコメンドは、日本人サックス奏者吉本章紘の最新作『Moving Color』。
前作『Blending Tone』から3年ぶりとなるリーダー作。ベースを須川崇志に替えた以外は前作と同じメンバーで、このバンド以外でもメンバーはそれぞれのグループに参加しあうなどかなり気心のしれたメンバーと言えるだろう。

全8曲が吉本のオリジナル曲で、アルバムタイトル通りの色とりどり鮮やかな曲が続く。作曲者の吉本が思い描いたサウンドの彩りを担っているのは、ビート・メイカーでもあるパプアニューギニア出身のピアニストアーロン・チューライ(pf)、辛島文雄トリオや日野皓正カルテットで活躍した須川崇志(b)、今や名実ともに若手ナンバーワンドラマーとも言える90年代生まれのドラマー石若駿(ds)というバンドメンバーだ。


1曲目の「Deep-Sea Fish Waltz」から全体を通してアーロン・チューライと石若はかなり自由度が高く、アンサンブルの中に色を散りばめ、須川のベースがそこに1本軸を通すように鳴ることもあれば、よりアグレッシブにフロントと反応しあう場面もありという全員が提案しつつ、反応しつつ繰り広げられるメンバー間のインタープレイはかなり聴きもので、聴きながら思わず感嘆をもらすような場面がどの曲にもある。コンテンポラリーな楽曲が続く中で、「The Mystery Of Onion Rings」では4ビートのブルースという伝統的な枠を使いながらも、それぞれの解釈で現代的にアップグレードされた新しい音を使って良い意味で遠慮のない会話がなされる。


このバンドの一番の魅力は何と言ってもこの遠慮の無い「会話」であるように感じた。「Nostalgic Farm」での美しいサックスにからむ端正なサウンドから次曲、「Sabaku No Akari」でバンドサウンド全体が大きな生き物のように唸って魅せる爆発力。このコントラストに代表されるように、バンドメンバー全員の楽曲への理解、イメージの共有のレベルが尋常ではない。この一時間近いアルバムのレコーディングを1日で終えたことがそれを物語っている。一分の隙も油断もなく次々に展開されるこのバンドサウンドは、今も日々ライブで磨きがかかっていっていることは間違いない。是非ライブに行ってその目で確かめて欲しい。


正直、まだ6月だが今年のベスト候補のジャズアルバムが出てきてしまったと思っている。これはジャズに限った話ではないが、「日本人のジャズ」を海外のジャズと区別して考えている人が多いのではないか?と思うことが多々ある。

そんな現状を軽々と飛び越えるようなこのアルバムは、ジャズを志す日本の若者にとって、何より日本でジャズを聴く僕にとっての希望である。


文:花木洸 HANAKI hikaru




【Akihiro Yoshimoto Quartet 『Moving Color』視聴】






この連載の筆者、花木洸が編集協力として参加した、金子厚武 監修『ポストロック・ディスク・ガイド』(シンコーミュージック)が発売になりました。シカゴ音響派などジャズとも互いに影響しあって拡がった音楽ジャンルについて、広い視点から俯瞰するような内容になっています。

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■タイトル:『ポストロック・ディスク・ガイド』
■監修:金子 厚武
■発売日:2015年5月30日
■出版社: シンコーミュージック
■金額:¥2,160 単行本(ソフトカバー)

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20年に及ぶポストロック史を、600枚を超えるディスクレビューで総括!貴重な最新インタヴューや、概観を捉えるためのテキストも充実した画期的な一冊。90年代に産声をあげた真にクリエイティヴな音楽が、今ここに第二章を迎える。





Recommend Disc

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Title : 『Moving Color』
Artist : 吉本章紘カルテット
LABEL : MOR Records
NO : MOR 1001
RELEASE : 2015.5.15

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【MEMBER】
Akihiro Yoshimoto Quartet
吉本章紘 Akihiro Yoshimoto - Tenor Saxophone
アーロン・チューライ Aaron Choulai - Piano
須川崇志 Takashi Sugawa - Bass
石若 駿 Shun Ishiwaka - Drums

【SONG LIST】
1. Deep-Sea Fish Waltz
2. The Mystery Of Onion Rings
3. Possum
4. Nostalgic Farm
5. Sabaku No Akari
6. Reminiscing About Banana Beer
7. Ice Castle
8. Water Drops

All Songs written by Akihiro Yoshimoto

Recorded at Studio Dede - Feb 28 2014 by Tsukasa Okamoto
Mixed & Mastered by Akihito Yoshikawa(Studio Dede)
Design:Yosuke Wada


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「Monthly Disc Review」アーカイブ花木 洸

2015.04 ・2015.05 




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花木 洸 HANAKI hikaru

東京都出身。音楽愛好家。
幼少期にフリージャズと即興音楽を聴いて育ち、暗中模索の思春期を経てジャズへ。
2014年より柳樂光隆監修『Jazz the New Chapter』シリーズ(シンコーミュージック)
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Monthly Disc Review2015.0601:Monthly Disc Review

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Title : 「Double Circle」
Artist : Enrico Pieranunzi, Federico Casagrande



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ちょうど三年前の2012年の今頃、Marc Johnsonの演奏を追いかけていて、Enrico Pieranunziに行き当たる。正直、イタリアのジャズに関しては、未聴の分野で"ピエラヌンツィ"って響きがいいね、なんていうくらい。EGEAでのリリース作品を何枚か買い漁っているうちに、2000年に発表された『Raconti mediterranei』の冒頭の一曲目"The Kingdom(where nobody dies)"に出会うことになる。

"地中海物語"というアルバムの邦題のとおり、青い地中海の景色を想像させる作品で、なかでも"The Kingdom(where nobody dies)"は、梅雨から夏に向かっていく憂鬱なこの時季に、カフェでは欠かせない一曲となり、毎日毎日、この曲を流すことに。お客様にも、"この曲は何?"と何度となく尋ねられ、その度に、"ピエラヌンツィ"と呪文のように繰り返しては、アルバム『Raconti mediterranei』をお勧めして、何人もの方が購入した模様。

そして、今回の『Double Circle』。PieranunziのピアノとFederico Casagrandeのアコースティックギターのデュオ作品という前情報を得て、"The Kingdom(where nobody dies)"に匹敵するカフェでのへヴィーローテーション曲があるのではないかと秘かに期待をしていたのでした。そして先日、届いたばかりのアルバムをお客様のいない夕暮れのカフェで試し聴き。

答えは、大正解。
冒頭の一曲目、"Ann Blomster Sang"の、その美しいメロディとそれを奏でるピアノとアコースティックギターの響きは、カフェにこの上ない心地よい風を運んで来てくれて、まさにこれからの時季にうってつけの一曲。『Raconti mediterranei』同様、この先夏の終わりくらいまでcafeイカニカにいらっしゃったお客様は、この"Ann Blomster Sang"を聴かされ、アルバム『Double Circle』を薦められることになると思われます、ご容赦を。

加えて最後に収録されているのは、タイトルが"Charlie Haden"そう、彼への追悼の一曲。確かに、晩年のCharlie HadenとPieranunziのデュオ作品も聴いてみたかったなぁ、と思いを巡らせたりも。トータルタイム48分46秒という理想的なアルバムサイズの中に、今のPieranunziの美学が凝縮された、これからの季節に必携の奇跡的な一枚だと言っても大げさではないかもしれないですよ。


文:平井康二




【I Piccoli Live di Auditorium TV - Enrico Pieranunzi & Federico Casagrande "Let's make it strange"】







Recommend Disc

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Title : 「Double Circle」
Artist : Enrico Pieranunzi, Federico Casagrande
LABEL : Cam Jazz(CAMJ 7885)
RELEASE : 2015.5.20

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【MEMBER】
Enrico Pieranunzi (p)
Federico Casagrande (g)

【SONG LIST】
01. Anne Blomster Sang
02. Periph
03. Sector 1
04. Clear
05. Dangerous Paths
06. Within The House Of Night
07. No-nonsense
08. Beija Flo
09. Disclosure
10. Sector 2
11. Charlie Haden


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「Monthly Disc Review 平井康二」アーカイブ平井康二

2015.4.1 ・2015.5.1




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平井康二(cafeイカニカ オーナー)

1967年生まれ。レコード会社、音楽プロダクション、
音楽出版社、自主レーベル主宰など、約20年に渡り、
音楽業界にて仕事をする。
2009年、cafeイカニカをオープン
おいしいごはんと良い音楽を提供するべく日々精進。


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