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Monthly Disc Review2015.12.01:Monthly Disc Review

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Title : 『Rothko Chapel - Morton Feldman/Erik Satie/John Cage』
Artist : KIM KASHKASHIAN, SARAH ROTHENBERG, STEVEN SCHICK, HOUSTON CHAMBER CHOIR, ROBERT SIMPSON



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いわゆる現代音楽の入口を探して、
ペルトやライヒに手を伸ばして耳を傾ける。
ジャズやポップスに慣れ親しんだ身としては、
その未体験の音楽に胸の奥の方がザワザワとする。
少しだけ奥に足を踏み入れては立ち止まり、また探り探り歩みを進める。
まだ100%の信頼を置いていないけれども、なんだか気になる。
今のところ、現代音楽との付き合い方はそんな感じだ。
自分の中にそれらの居場所が定まっていないが故に得られる快感、
というようなものを求めての行為だろうか。


この「ROTHKO CHAPEL」も、そんな快感を求めて手に取ってみた。
抽象画家マークロスコの壁画に囲まれ、すべての宗教に開かれ、
祈り、瞑想、対話の空間として設計建築されたという
ロスコ・チャペルの完成式の為に書かれた「ROTHKO CHAPEL」。
約26分に及ぶこの曲は、確実に我々を瞑想状態に誘う。
実際にロスコの作品に囲まれたチャペルの空間を体感し、
そして、祈り、瞑想するには
ヒューストンまで行かなくてはならないのだが、
フェルドマンによって書かれたこの音楽によって、
間違いなく疑似体験が可能だ。
何を祈り、瞑想し、対話をするかは、
個々にゆだねられているものだろうけれども、
残念ながら、祈りと、瞑想と、対話が必要な時代であることを
感じずにはいられない日々だ。


ロスコや、フェルドマン、サティ、ケージという名に惹かれ
手に取ったアルバムだが、
今、「ROTHKO CHAPEL」を聞くことは、
何か大きな意味があるような気がする。


世界は、祈りと、瞑想と、対話を必要としている。


文:平井康二


Rothko Chapel(ECM)





Recommend Disc

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Title : 『Rothko Chapel - Morton Feldman/Erik Satie/John Cage』
Artist : KIM KASHKASHIAN, SARAH ROTHENBERG, STEVEN SCHICK, HOUSTON CHAMBER CHOIR, ROBERT SIMPSON
LABEL : ECM(ECM 2378)
RELEASE : 2015.10.2



【MEMBER】
Kim Kashkashian (Viola)
Sarah Rothenberg (Piano, Celeste)
Steven Schick (Percussion)
Sonja Bruzauskas (Mezzo-Sporano)
Lauren Snouffer (Soprano)
Houston Chamber (Choir)
Robert Simpson (Conductor)


【SONG LIST】
01. ROTHKO CHAPEL
02. GNOSSIENNE NO. 4
03. FOUR²
04. OGIVE NO. 1
05. EAR FOR EAR (ANTIPHONIES)
06. OGIVE NO. 2
07. GNOSSIENNE NO. 1
08. FIVE
09. GNOSSIENNE NO. 3
10. IN A LANDSCAPE


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「Monthly Disc Review 平井康二」アーカイブ平井康二

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平井康二(cafeイカニカ オーナー)

1967年生まれ。レコード会社、音楽プロダクション、
音楽出版社、自主レーベル主宰など、約20年に渡り、
音楽業界にて仕事をする。
2009年、cafeイカニカをオープン
おいしいごはんと良い音楽を提供するべく日々精進。


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cafeイカニカ

●住所/東京都世田谷区等々力6-40-7
●TEL/03-6411-6998
●営業時間/12:00~18:00(毎週水、木曜日定休)
お店の情報はこちら

Monthly Disc Review2015.11.15:Monthly Disc Review

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Title : 『Speaking In Tongues』
Artist : Luciana Souza



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ワールド・ミュージックとジャズ、というのは随分前から近くて遠いような不思議な距離関係にあったように思う。アフロ・キューバンからラテン、ブラジリアン・フュージョン...並べるときりがないのだけれど、僕には近年その距離がぐっと近づいて来た感触がある。今回紹介するアルバムは正にワールド・ミュージックとジャズの見事に絡み合ったような、そんなアルバム。


 ルシアナ・ソウザはボサ・ノヴァの名曲を作り出したヴァルテル・サントスとテレーザ・ソウザの2人の間に生まれたブラジル/ジャズのフィールドで活躍するサンパウロ出身の女性ボーカリスト。ダニーロ・ペレス、ギジェルモ・クレインといったラテン・ルーツのジャズマンだけでなくジョン・パティトゥッチやフレッド・ハーシュ、さらにはハービー・ハンコックやマリア・シュナイダーにも起用される才女だ。


 その彼女の最新作は、西アフリカのベナン出身リオーネル・ルエケ(Gt)、スイス出身でパット・メセニー・グループにも参加したグレゴア・マレ(Harmonica)、スウェーデン出身でリオーネルのトリオ"GILFEMA"でも活躍するマッシモ・ビオルカティ(b)、そして自身のバンドやサイドマンで今もっとも注目されるジャズ・ドラマーと言えるであろうケンドリック・スコット(ds)というメンバーの多国籍さが目を引く。


 ルシアナ・ソウザは2曲を除いて歌詞を歌うボーカルとしてではなく、歌詞の無いボイスのパフォーマンスを見せ、そこに絡むリオーネルの自由奔放で極めて独創的なスタイルのボイスとギター、グレゴア・マレのハーモニカが音色も含めてこのアルバムの多国籍さを担っているとしたら、そこに一本筋を通すようにベースとドラムが構築するリズムがこのアルバムをジャズたらしめているという事になるだろう。誰一人伝統的なジャズの手法をとってはいないのだけれど、ジャズに聴こえるから不思議だ。フロントの三人は一糸乱れぬユニゾンを見せたかと思えばそれぞれでソロを取り始めるこの絡み合いが絶妙でクセになる。


 このアルバムの2015年の音楽としての新鮮さについて考えると、クリアで手の込んだミックスは触れないわけにはいかない。曲によって質感を大きく変えるドラムサウンドや曲によってエフェクトが加えられたハーモニカに顕著なように、オーガニックな素材に対する新しいアプローチは、ジャンルは違えど今年話題になったアラバマ・シェイクスとも近いものが感じられる。


 ジャズ・ファンにもワールド・ミュージック・ファンにも聴いて欲しい一枚。これはジャズという枠を取っ払っても今年のベスト候補のアルバムになるかもしれない。


文:花木洸 HANAKI hikaru


【Luciana Souza EPK of new album "Speaking in Tongues" 】






Recommend Disc

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Title : 『Speaking In Tongues』
Artist : Luciana Souza
LABEL : Sunnyside
NO : SSC1410
RELEASE : 2015.10.10

アマゾン詳細ページへ


【MEMBER】
Luciana Souza (vo)
Lionel Loueke (g,voice)
Gregoire Maret (harmonica)
Massimo Biolcati (b)
Kendrick Scott (ds,perc)


【SONG LIST】
01. At The Fair
02. Hymn
03. Straw Hat
04. Split
05. Filhos De Gandhi
06. A Pebble In Still Water
07. Free At Last
08. A.M.
09. No One To Follow


この連載の筆者、花木洸が先日発売になりました『Jazz The New Chapter 3』で編集・選盤・レビュー記事などを担当。ブラック・ミュージックの最先端からUKジャズ、ネクスト・ジャズ・ファンク、ラージアンサンブル等ここにしかない記事・インタビューが盛り沢山となっています。


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■タイトル:『Jazz The New Chapter 3』
■監修:柳樂光隆
■発売日:2015年9月10日
■出版社: シンコーミュージック

アマゾン詳細ページへ


今日においてはジャズこそが時代を牽引し、ディアンジェロやフライング・ロータスなど海外の最先端アーティストから、ceroなど日本のポップ・シーンにも大きな影響を与えている。この状況を予言し、新時代の到来を告げた「Jazz The New Chapter(ジャズ・ザ・ニュー・チャプター)」の第3弾がいよいよ登場。2014年の刊行時より刷数を重ね、SNS上でも未だ話題沸騰中の第1弾・第2弾に続き、2015年9月末に〈Blue Note JAZZ FESTIVAL in JAPAN〉が開催されるなど、かつてない活況を迎えているジャズの次なる未来は、ニューチャプターが切り拓く!


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「Monthly Disc Review」アーカイブ花木 洸

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花木 洸 HANAKI hikaru

東京都出身。音楽愛好家。
幼少期にフリージャズと即興音楽を聴いて育ち、暗中模索の思春期を経てジャズへ。
2014年より柳樂光隆監修『Jazz the New Chapter』シリーズ(シンコーミュージック)
及び関西ジャズ情報誌『WAY OUT WEST』に微力ながら協力。
音楽性迷子による迷子の為の音楽ブログ"maigo-music"管理人です。

花木 洸 Twitter
maigo-music


Monthly Disc Review2015.11.01:Monthly Disc Review

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Title : 『Children Of The Light』
Artist : Danilo Perez/John Patitucci/Brian Blade



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難解か、聴きやすいか、と問われれば、間違いなく前者と答える。
Weather Report解散後のWayne Shorterの一連のソロ作品がそうであるように、
決して我々リスナーを心地よいだけのリスニングシートに座らせてはくれない。


近年のShorterの作品は、一度、聴き終えると大抵の場合、黙り込む。
そして、ちょっと今はもういいか、しばらく置いておこうかな、という判断をする。
しかし、1時間もしないうちに、気になって仕方がなくなり、
もう一回聴いてみようか、と再チャレンジする。
一回目よりは何かが見えてきた気分になるのだけれど、
まだ見えないものの方が、沢山あるような気分が残って終わる。
その繰り返しで、気が付くと何度も何度も聴いているのだ。


何度目かには今まで気付かなかった、甘味を感じたり、
時には、かなりきつく苦みを感じたり、と、
それはまるで良質なコーヒーを味わうような感覚に似ている。


Danilo Perez, John Patitucci, Brian Bladeという
もうすでに現代のジャズ界においてはキーパーソンとなっている
三人によるこの作品も、まさにそんな味わいの一枚だ。
その理由は明解で、そこには、Shorterと共に過ごした
10年余りの年月が色濃く投影されているからに他ならない。

Perezを中心としたピアノトリオの作品であるはずなのに、
トリオである感じが全くしない、居ないはずのShorterのサックスが聞こえる。
Shorterが不在のShorterのアルバムとでもいった方がいい。
そして、一度目は、黙り込み、また気になって、聴いてみる、
その繰り返しを経て、気付くと何度も何度も聴いている、
というShorter作品と同じ道を辿ることになるであろう味わい深い作品。


今日のコーヒーが少しばかり苦く感じたとしても、
ミルクや砂糖を入れてしまっては台無しだ。
その先に、本来の味わいが待っているのだから。


文:平井康二


【Pérez Patitucci Blade - Children of the Light - The Making of the Album】






『Children Of The Light』(Mack Avenue)





Recommend Disc

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Title : 『Children Of The Light』
Artist : Danilo Perez/John Patitucci/Brian Blade
LABEL : Mack Avenue(KKE053)
RELEASE : 2015.9.18

アマゾン詳細ページへ


【MEMBER】
Danilo Perez (p)
John Patitucci (b)
Brian Blade (ds)


【SONG LIST】
01. Children of the Light
02. Sunburn and Mosquito (dedicated to Carolina)
03. Moonlight on Congo Square
04. Lumen
05. Within Everything
06. Milky Way
07. Light Echo/Dolores
08. Ballad for a Noble Man (in memory of Doug Sommer)
09. Looking for Light
10. Luz del Alma
11. African Wave


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平井康二(cafeイカニカ オーナー)

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音楽出版社、自主レーベル主宰など、約20年に渡り、
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Monthly Disc Review2015.10.15:Monthly Disc Review

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Title : 『Pendulum』
Artist : 林正樹



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林正樹というピアニストの活動を一言で説明するのは難しい。僕の記憶としては渡辺貞夫、菊地成孔といったジャズマン、あるいは椎名林檎、小野リサまで実に幅広く活動しているピアニストそして作曲家が林正樹だ。今月取り上げるのはそんな彼のソロ・アルバム。


「コンポーズ」を主眼に置いた、とされるこの作品は、アルバムの最初から最後までくつろいだ雰囲気で溶けていくような音楽。ピアニストとしての派手なテクニックや凝ったハーモニーは一切感じさせることは無いが、一音一音をどこまでも大切に、丁寧に紡いでいく中には計り知れないほどの技術とピアニズムを感じる。気が付くとともすれば単調に聴こえてしまいそうなこの作品に僕はすっかり聴き入ってしまった。


作品を彩るメンバーは、藤本一馬、アントニオ・ロウレイロ、徳澤青弦など、どこかジャンルに縛られない印象の音楽家達。ベースやドラムといったリズム楽器を排し徹底されたメロディへのこだわりは、くつろいだ雰囲気を持ちながらも、何か一つ欠けただけで成立しなくなってしまうような、そんな危うさももっている。残響の一つ一つからピアノのペダルを踏む音まで何も零すこと無く録音された音も素晴らしい。Fumitake Tamuraのエレクトロニクスも、前面には出ずアンサンブルに影をつけていくような不思議な役割を果たしている。驚きは演奏者のエゴが全く感じられない事。そして粛々と紡がれていく音楽には様々なルーツが感じられるけれど、どこまでも無国籍。無国籍なのになんだか昔からずっと近くにあった音楽のような、そんな不思議な親近感を持っている。


『Pendulum(=振り子)』と名付けられたこのアルバムは、そのタイトルに反してそこだけ時間が止まったような佇まい。描いているのは昼かもしれないし、夜かもしれない。夏かもしれないし、冬かもしれない。古い友人の事かもしれないし、昔観た映画のことかもしれない。音楽を聴いていたはずなのに、いつの間にか僕の中には沢山の情景が浮かび上がっては消えていく。

きっと5年後も10年後も僕はこの音楽に寄り添って生きているような気がする。


文:花木洸 HANAKI hikaru





【林正樹《Pendulum》】






Recommend Disc

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Title : 『Pendulum』
Artist : 林正樹
LABEL : SPIRAL RECORDS
NO : XQAW-1108
RELEASE : 2015.9.2

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【MEMBER】
林正樹(piano)
Antonio Loureiro(Vibraphone, Voice)
Joana Queiroz(clarinet)
藤本一馬(Guitar)
徳澤青弦(Cello)
Fumitake Tamura(Electronics)


【SONG LIST】
1. Flying Leaves
2. Bluegray Road
3. Initiate
4. Kobold
5. Teal
6. Shadowgraph
7. Paisiello St.
8. Ripple
9. Thirteenth Night
10. Butt
11. Jasper
12. Pendulum
* All Composed and Arranged by Masaki Hayashi



この連載の筆者、花木洸が先日発売になりました『Jazz The New Chapter 3』で編集・選盤・レビュー記事などを担当。ブラック・ミュージックの最先端からUKジャズ、ネクスト・ジャズ・ファンク、ラージアンサンブル等ここにしかない記事・インタビューが盛り沢山となっています。


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■タイトル:『Jazz The New Chapter 3』
■監修:柳樂光隆
■発売日:2015年9月10日
■出版社: シンコーミュージック

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今日においてはジャズこそが時代を牽引し、ディアンジェロやフライング・ロータスなど海外の最先端アーティストから、ceroなど日本のポップ・シーンにも大きな影響を与えている。この状況を予言し、新時代の到来を告げた「Jazz The New Chapter(ジャズ・ザ・ニュー・チャプター)」の第3弾がいよいよ登場。2014年の刊行時より刷数を重ね、SNS上でも未だ話題沸騰中の第1弾・第2弾に続き、2015年9月末に〈Blue Note JAZZ FESTIVAL in JAPAN〉が開催されるなど、かつてない活況を迎えているジャズの次なる未来は、ニューチャプターが切り拓く!


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花木 洸 HANAKI hikaru

東京都出身。音楽愛好家。
幼少期にフリージャズと即興音楽を聴いて育ち、暗中模索の思春期を経てジャズへ。
2014年より柳樂光隆監修『Jazz the New Chapter』シリーズ(シンコーミュージック)
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Monthly Disc Review2015.1001:Monthly Disc Review

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Title : 『Eight Winds』
Artist : Sokratis Sinopoulos Quartet



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今から20年くらい前、池澤夏樹の「ギリシアの誘惑」というエッセイを読み、
青いエーゲ海が見たくなり、ギリシャに行ってみようかと真剣に考えていた。
けれども、なぜかその前にハワイや竹富島の海を訪ねてしまい、
青い海はしばらくいいかな、という心境になり、
以来、ギリシャのことは頭の隅に追いやってしまった。

月日が経って、現在のギリシャはどうやら観光に訪れるには
ふさわしくない状態に陥っているようで、
青いエーゲ海よりもデフォルト(債務不履行)の国というイメージに。

そんなギリシャに、lyraという楽器がある。
古代ギリシャの竪琴で、古くはハープのように
指で弾くものであったらしいが、現代のlyraは弓で弾く楽器だ。

今回、ECMからSokratis Sinopoulos Quartet 『Eight Winds』という一枚がリリースされた。
そうSokratisだ、ソクラティス。(歴史の教科書に出てくるソクラテスはsokratesと綴る)
ギリシャでは珍しくない名前なのかもしれないが、
その名前だけでなんだか興味がそそられる。

ECMの作品を通じて、ヨーロッパ諸国の民族楽器や
その音楽に初めて触れるという機会を得ることは多いのだが、
今回もlyraの音色に初めて出会う。

Sokratis Sinopoulosの奏でるlyraは、
オリエンタルに響くこともあれば、
アイリッシュフィドルのようにも聞こえたりと、
各楽曲によって様々な表情を見せる。

しかし、なによりも驚くのは、この古代からの楽器lyraが、
ジャズアプローチのPiano Trioに取り込まれ、
Quartet編成となって演奏されると
極めて現代的な音楽として2015年の今に響き渡るということだ。
単なる、いにしえの民族楽器の響きを楽しむというレベルではなく、
現在進行形のアートフォームとしての存在感がそこにはある。
それは、ジャズが最もコンテンポラリーな音楽フォームであることの証明でもあろう。


こういう未知の音楽体験を得られるが故、ECMのカタログを追いかけることになるのだ。


古代からの楽器が現代的なアートフォームに向かい入れられることによって得られる
極めてコンテンポラリーな空気感は、
同じくECM作品ではoudを奏でるAnouar Brahemも同様で、
機会があれば、是非、こちらも一聴を。


「ギリシアの誘惑」から20年以上が経った今、lyraの音色によって
再びギリシャへ想いを馳せることになったのだけれど、
やはりデフォルトの危機に揺れる国へ出向くのは現実的ではない。
しばらくは、このSokratisの作品を聞きながら
lyraの音色がアテネの街角に響く様を
想像して過ごすこととしようか。


文:平井康二


【Sokratis Sinopoulos Quartet - Thrace】






●Sokratis Sinopoulos facebook
https://www.facebook.com/sokratissinopoulos





Recommend Disc

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Title : 『Eight Winds』
Artist : Sokratis Sinopoulos Quartet
LABEL : ECM(2407)
RELEASE : 2015.8.28

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【MEMBER】
Sokratis Sinopoulos: lyra
Yann Keerim: piano
Dimitris Tsekouras: bass
Dimitris Emanouil: drums


【SONG LIST】
01. Eight Winds
02. Yerma
03. 21st March
04. Thrace
05. Aegean Sea
06. In Circles
07. Lyric
08. Street Dance
09. Forever
10. 21st March (Variation)
11. Stillness
12. Eight Winds (Variation)


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「Monthly Disc Review 平井康二」アーカイブ平井康二

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Monthly Disc Review2015.0915:Monthly Disc Review

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Title : 『Melting Point』
Artist : The NYC Improv Project



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今回はこの連載が始まって初めてのコンピレーション・アルバム。
Melting Point -The NYC Improv Project-と銘打ったこのアルバムは総勢17人ものアーティストが集った"完全即興録音"となっている。アーティストがいくつかの組み合わせで行った録音を一つのアルバムに収めたもので、ヒリヒリとしたライブ感が楽しめる作品だ。


マーク・ジュリアナ(ds)、マウリス・ブラウン(tp)、ジャリール・ショウ(as)、ニア・フェルダー(gt)など最近名前をよく聞くようなアメリカのジャズシーンで最も勢いのあるメンバー達が集ったこのセッションには、スキャットソロが光るベースとボーカルのデュオから、人力のヒップホップ・ビートにラップが乗った曲、ハードバップ、アフロキューバンからファンクまで幅広い音楽がつめ込まれている。曲順もそれらがランダムに配置されており一見まとまりが無さそうにみえるが、様々な要素が混ざり合い混沌とした現在のジャズシーンのリアルを切り取ったような不思議なまとまりがあり、僕は『真夏の夜のジャズ』を思い出した。フォーマットは様々だが皆同じ時代の、同じ感覚の元で演奏されている。


そしてギタリストのダイスケ・アベ、Sly 5th Ave『AKUMA』やSnarky Puppyのアルバムにも参加するケイタ・オガワ(perc)、タク・イワサキ(voice)、プレイヤーとしてだけでなくプロデューサーからレコーディングまでを手がけるノリ・ナラオカ(b)といった日本人の名前が混ざっていることに気づく。


先日リリースされたファビアン・アルマザン、ギラッド・ヘクセルマン等が参加したニューヨークで活躍するサックス奏者カズキ・ヤマナカの自主制作盤『Songs Unconscious-minded』もダイスケ・アベが参加しノリ・ナラオカのプロデュースだった。このアルバムをリリースした大阪の新興レーベルMFA Recordsの登場をはじめ、日本のジャズ/日本人のジャズを取り巻く環境も日々面白くなってきていて目が離せない。


文:花木洸 HANAKI hikaru





【The NYC Improv Project"Melting Point" | Inpartmaint Inc】
http://www.inpartmaint.com/site/13612/





Recommend Disc

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Title : 『Melting Point』
Artist : The NYC Improv Project
LABEL : MFA RECORDS
NO : MFAR-1001
RELEASE : 2015.7.23

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【MEMBER】
Jazzmeia Horn(vo)(M1,6)
Maurice Brown(tp)(M3,5)
Mark Guiliana(dr) (M3,5)
Nir Felder(gt) (M3,5)
Daisuke Abe(gt) (M3,5)
Jaleel Shaw(alto.sax)(M4,7)
Ben Paterson(p/org) (M4,7)
Jamison Ross(dr) (M4,7)
Keita Ogawa(perc)(M6,7
Chaance Barnes(vo)(M8)
Victor Gould(rhodes) (M8)
Jonathan Greenstein(tenor.sax) (M8)
Darrian Douglas(dr) (M8)
Tak Iwasaki(voice)(M9)
Sullivan Fortner(p/rhodes) (M9,10)
Joe Dyson(dr) (M9,10)
Nori Naraoka(b)(M1,3,4,5,6,8,9,10)

【SONG LIST】
1. West 4 City Blues
2. Trumpet Intro
3. Free Style No.3
4. On Christopher St.
5. Melting Point
6. Oiseau de Proie ~Bird of Prey~
7. Asked For a Groove
8. Don't Mind
9. Through Brooklyn Bridge
10. 2:31 am


この連載の筆者、花木洸が先日発売になりました『Jazz The New Chapter 3』で編集・選盤・レビュー記事などを担当。ブラック・ミュージックの最先端からUKジャズ、ネクスト・ジャズ・ファンク、ラージアンサンブル等ここにしかない記事・インタビューが盛り沢山となっています。


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■タイトル:『Jazz The New Chapter 3』
■監修:柳樂光隆
■発売日:2015年9月10日
■出版社: シンコーミュージック

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Monthly Disc Review2015.0901:Monthly Disc Review

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Title : 『FIT TO FLY』
Artist : Guido Santoni Trio



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エンジニアの話。
信頼できるエンジニアの名前がクレジットされていると
その作品の信頼性というか、株がグッとあがる。

古くは、BLUENOTEのRudy Van Gelder、
そしてECMのJan Erik Kongshaug、
または、Tommy LiPuma作品のAl Schumitt、等々。
その名前の存在感は、時として演奏者を上回っている。

レコーディング現場でのエンジニアの耳は、
その場の誰よりも、純粋に音だけに触れている。
演奏者は、自分の演奏の良し悪しに耳がいってしまうし
全体を掌握しているはずのプロデューサーは、
どこかで、予算の事や売れるか否かが気になっている、

なんていうのは、多少、誇張した妄想ではあるけれども、
少なからず、そういう傾向があるのは否めないはず。
とはいえ、音響学的な見地からばかり良し悪しを判断されてしまうのは
困りものだけれど、前出の一流どころは、
その辺にざらにいるミュージシャンよりも
音楽的才能が豊かで、(Jan Erik Kongshaugのギタープレイなどは、最高に素敵だ)
そんな面々が、コントロールルームのど真ん中に座って、
じっと耳を澄ましているスタジオ現場は、なんとも心地よい緊張感が漂い、
必ずや良い作品が生まれると、想像できる。
(エンジニアのジャッジが曖昧だと、しまりの無い現場になるのだ、これは経験談)


さて、本題。
Guido Santoniは、ピアニスト。
そして録音は、Stefano Amerio。今回はこの名前に注目。

ここ数年、ECMの作品でも頻繁に目にすることが多くなってきているStefano Amerio。
(このレビューの5月と6月の作品も、Amerioの手による)
今作、『FIT TO FLY』は、そのAmerioが自身のスタジオ"artesuono recording studio"
で録音し、Produce,Recording,Mixing,Masteringまで手掛けているという、
言ってしまえば、ほぼAmerioの作品。

前作で、ジャズオーディオディスク大賞なる賞を受賞していて、これは四年振りの作品。
どうしてもAmerioの録音芸術作品という視点抜きには、聴くことが難しいが、
Guidoのソングライティングと、Trioの演奏は、抑制が効いていて好ましい。
ECMのEicherが好んでAmerioを使っているということからも、
その共通項は容易に想像できるであろう。

Amerioが鎮座するスタジオの心地よい緊張感を想像しながら
ようやく過ごしやすくなってきた晩夏の夜に、
じっくりと耳を傾けることをお勧めする。
(ある程度、しっかりした音響機器での再生が理想ですが...。)


文:平井康二


https://www.facebook.com/GuidoSantoniTrio
http://www.artesuono.it/





Recommend Disc

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Title : 『FIT TO FLY』
Artist : Guido Santoni Trio
LABEL : Arte Suono(ART122)
RELEASE : 2015.7.10

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【MEMBER】
Guido Santoni (p)
Danilo Gallo (b)
U.T.Gandhi (ds)


【SONG LIST】
01. Sudden Flashes
02. Dragging Soul
03. Beyond My Boundary
04. Far Away But Never far Apart
05. Fit To Fly
06. Easy Works
07. Blending Into The Sky
08. Sensitivity
09. Asking The Immensity


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「Monthly Disc Review 平井康二」アーカイブ平井康二

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平井康二(cafeイカニカ オーナー)

1967年生まれ。レコード会社、音楽プロダクション、
音楽出版社、自主レーベル主宰など、約20年に渡り、
音楽業界にて仕事をする。
2009年、cafeイカニカをオープン
おいしいごはんと良い音楽を提供するべく日々精進。


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cafeイカニカ

●住所/東京都世田谷区等々力6-40-7
●TEL/03-6411-6998
●営業時間/12:00~18:00(毎週水、木曜日定休)
お店の情報はこちら

Monthly Disc Review2015.0815:Monthly Disc Review

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Title : 『THE WAY』
Artist : 宮川純



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リーダーの宮川純は1987年生まれ。アルバムはこれで三枚目となるが、ピアニストで言うとシャイ・マエストロやギターのジュリアン・レイジと同じ生年でジャズの世界で言うところの新世代に位置づけられるだろう。

ここに「高校生の頃、僕のアイドルだったのが、東京事変とベン・フォールズだった」と語っていることと、彼が10代の時に<ヤマハ・ティーンズ・ミュージック・フェスティバル>で今人気のロックバンドcinema staffと東海地区代表を掛けて争っていたことを加えると「ただのピアニストじゃないぞ」という気配がしてくる。


アルバム全編に共通する板崎拓也、石若駿とのピアノトリオのコンビネーションは完璧で、石若は細かいサインやフックを仕掛けているし宮川はそれを絶対に見逃さない。そこに時には釣れない素振りを見せたり一緒になってフックをメイクしていく板崎との三者の関わりは、正にピアノトリオを聴くときの醍醐味といった塩梅で聴けば聴くほどとんでもなくスリリングだ。ギターの荻原亮もソロは少ないながらも「JB's Poem」と「Pulse」ではそれぞれちがった毛色ながらどちらも白熱のギターソロを聴かせる。宮川もいわゆる熱量のあるソロだけでなく、時にはコンパクトなソロを聴かせたり、「The Water is Wide」でウーリッツァーでメロディを粛々と紡いだり、「JB's Poem」でローズと生ピアノをバッキングとフィルで華麗に使い分けたりする宮川の達者ぶりは同世代でも随一だろう。石若も「The Golden Bug」でのいわゆるスネアをズラした今風のリズムと「Just A Moment」での高速4ビートを叩いているのは本当に同じ人物なのかと疑うくらい多彩なリズムを使い分け、曲中でも細かなフィールで次々に彩りを加えている。
コンテンポラリーな楽曲といわゆる"New Chapter"的な作品が実に自然に同居しているところはこの世代の、そしてアルバムほぼ全曲の作曲者でもある宮川のバランス感覚の賜物だろう。


これら演奏面と同じくらい特筆すべき面白さはこのアルバムの録音だ。
一曲目の「Introduction」のドラムの音を聴いた瞬間に「待ちに待っていたアルバムがついに出た!」と、僕はそう思った。
ロバート・グラスパーやクリス・バワーズ、ホセ・ジェームズといったミュージシャンはレコーディング・エンジニアにあえてジャズのエンジニアでは無い人材を起用してライブ音楽であるジャズに録音作品としての面白さを付与してきた。このアルバムに参加している黒田卓也もそんなジャズメンの一人だ。そこに呼応するような作品が日本でも「ついに出た」のだ。

6月にも日本のこの世代のミュージシャンを取り上げたが、この世代が今、日本のジャズに開き始めた風穴を押し広げていることは間違いない。


文:花木洸 HANAKI hikaru


【参考】
インタビュー:日本のジャズ新時代を告げる重要作をリリースした宮川 純に柳樂光隆(JTNC)が迫る【前編】 - CDJournal CDJ PUSH

http://www.cdjournal.com/main/cdjpush/miyakawa-jun/1000001107

・全曲試聴
Jun Miyakawa - The Way (Sound Sample)' by T5Jazz Records on SoundCloud

https://soundcloud.com/t5jazz/sets/jun-miyakawa-the-way-sound-sample




【Jun Miyakawa / The Water Is Wide (Official Music Video)】







Recommend Disc

miyakawajyun200.jpg

Title : 『THE WAY』
Artist : 宮川純
LABEL : T5jazz Records
NO : T5J-1010
RELEASE : 2015.7.22

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【MEMBER】
宮川純 - piano, Rhodes, Wurlitzer
荻原亮 - guitar
坂崎拓也 - bass
石若駿 - drums
*黒田卓也 - trumpet (#1, #2 & more)

【SONG LIST】
01. 1. Introduction
02. The Way
03. JB's Poem
04. Pulse
05. The Water Is Wide
06. Automata
07. Glossy
08. The Gold Bug
09. Just A Moment


この連載の筆者、花木洸が編集協力として参加した、金子厚武 監修『ポストロック・ディスク・ガイド』(シンコーミュージック)が発売になりました。シカゴ音響派などジャズとも互いに影響しあって拡がった音楽ジャンルについて、広い視点から俯瞰するような内容になっています。


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■タイトル:『ポストロック・ディスク・ガイド』
■監修:金子 厚武
■発売日:2015年5月30日
■出版社: シンコーミュージック
■金額:¥2,160 単行本(ソフトカバー)

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20年に及ぶポストロック史を、600枚を超えるディスクレビューで総括!貴重な最新インタヴューや、概観を捉えるためのテキストも充実した画期的な一冊。90年代に産声をあげた真にクリエイティヴな音楽が、今ここに第二章を迎える。


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「Monthly Disc Review」アーカイブ花木 洸

2015.04 ・2015.05 ・2015.06 ・2015.07 




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花木 洸 HANAKI hikaru

東京都出身。音楽愛好家。
幼少期にフリージャズと即興音楽を聴いて育ち、暗中模索の思春期を経てジャズへ。
2014年より柳樂光隆監修『Jazz the New Chapter』シリーズ(シンコーミュージック)
及び関西ジャズ情報誌『WAY OUT WEST』に微力ながら協力。
音楽性迷子による迷子の為の音楽ブログ"maigo-music"管理人です。

花木 洸 Twitter
maigo-music

Monthly Disc Review2015.0801:Monthly Disc Review

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Title : 『Treehouse』
Artist : Tom Hewson Trio



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以前、こんな文章を残したことがある。
「大好きなミュージシャンがこの世を去ってしまい、新作が聴けなくなってしまうことと、
自分の方が先にこの世を去り、聴くことのできない作品がこの世に存在すること、
どちらの場合がより悲しいか。」


この時、僕はとても才能のある自分よりもかなり若いミュージシャンに出会っていて、
彼女の生み出す作品をすべて聴き続けたいと思っていた。
しかし、ふと思ったのだ、彼女と自分の年齢差を考えると
ほぼ確実に自分の方が先にこの世を去るのだと。
それは、自分がこの世を去った後に生み出される作品がおそらく存在すること、
そして自分はそれを聴くことが出来ないということを意味していた。
それくらい、その若いミュージシャンに心酔していたのだ。


Tom Hewsonの存在を知り、その作品を耳にした時、
自分が以前に書いた"自分が逝った後に生み出される作品"という文章を思い出させた。
それは、Tomがまだ若いピアニストだということ(恐らく現在30歳くらい)のみならず、
多くのジャズミュージシャンの場合、老いて枯れてもなお、
素晴らしい作品が発表されることが頭をよぎったからだ。
(先月のレビューのCHARLIE HADENのように)

晩年のTom Hewsonの作品を聴いている自分は全く想像がつかない。
と言っても仕方のない現実なので、とりあえずはTomの作品をしばらく追ってみようかと思う。


今作は、レギュラートリオとして活動している"treehouse"の作品。
このトリオ、piano,vibraphon,bassという編成。
ピアニストTomのリーダーアルバムではあるけれども、この編成の場合、
やはりvibeの存在感はかなり大きい。
vibeが響き出すと、景色が一変する。
ひんやりとした舌触りのスイーツを口にしたような、
海辺を渡る夕暮れの潮風に身をゆだねているような、
夏に聴くVibeの音色は快楽である。


調べてみるとTomは、John Taylorをメンターとする、とあり、
確かにソングライティングにその影を感じることが出来る。
師の域に達するまでには、まだまだ時間が必要なのは当然のこととして、
まずは、今のこの若い才能と演奏を楽しむことを優先したい。
"自分が逝った後に生み出される作品"には触れることが出来ないのだから。


この原稿を書き終えた数日後に、John Taylorの訃報を聞く。
やはりこの喪失感は、なんとも云えず、ただ残念でならない。
こうなってしまうと、師を失ったTom Hewsonの今後の作品に、
今作以上にJohn Taylorの姿を追い求めてしまいそうだ。
一人のリスナーとしては、Tomの作品に潜むJohn Taylorの影を
勝手に想像して楽しむことにしたい。

Johnの冥福をお祈りします。


文:平井康二


http://tomhewson.com/
http://tomhewson.com/treehouse/





Recommend Disc

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Title : 『Treehouse』
Artist : Tom Hewson Trio
LABEL : CAM JAZZ(CAMJ-3316-2)
RELEASE : 2015.7.3

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【MEMBER】
Tom Hewson (p)
Lels Wright (vib)
Calum Goiurlay (b)


【SONG LIST】
01. Sparticle
02. Treehouse
03. Lifting
04. Not Relevant
05. Gelsomina
06. Splitting
07. Glitch
08. Silver Strands
09. Lingering
10. Beanie's Bounce


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平井康二(cafeイカニカ オーナー)

1967年生まれ。レコード会社、音楽プロダクション、
音楽出版社、自主レーベル主宰など、約20年に渡り、
音楽業界にて仕事をする。
2009年、cafeイカニカをオープン
おいしいごはんと良い音楽を提供するべく日々精進。


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●住所/東京都世田谷区等々力6-40-7
●TEL/03-6411-6998
●営業時間/12:00~18:00(毎週水、木曜日定休)
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Monthly Disc Review2015.0715:Monthly Disc Review

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Title : 『Covered』
Artist : Robert Glasper



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ロバート・グラスパーの新譜。ピアノ・トリオ作品としては『Double Booked』(2009)以来の実に6年ぶりの作品で、この6年の間に何があったかというとそれはもちろんエクスペリメント名義での『Black Radio(以下BR)』諸作だ。この新作ではエクスペリメントでのメンバーではなく初期のトリオ作品のヴィセンテ・アーチャー(b)、ダミオン・リード(ds)というメンバーに戻している。


スタジオライブ録音という事でMCや観客の拍手や歓声が入る場面もあるが作品の音作りとしては一般的なピアノトリオ作品とは異なっていて、バスドラムを中心とした低音のドスが効いたサウンド。『BR』シリーズと同じエンジニアを起用したようだ。


『Covered』というタイトルの通りアルバムの大半を占めるのは過去から現在までのジャズ以外の楽曲。RadioheadからJoni Mitchel、自らもレコーディングに参加したKendrick LamarやBilalの楽曲までロバート・グラスパーのiPodの中からセレクトされた楽曲+自身の楽曲と1曲のジャズ・スタンダードという構成になっている。


「『BR』を聴いてジャズに興味をもった人にも聴いてもらえるように」と各所でアナウンスした通り、このアルバムにはグラスパーの『BR』から一貫したポップ感覚が各所に詰め込まれている。曲の進行とともに3者が煽り合いアドリブが加熱していくような、いわゆるビルドアップしていくような音楽、バトル音楽としてのジャズではなく、ポップな枠組みを崩さないように即興の中でもメロディを非常に大事に慈しむように奏でる場面が多い。そしてそのポップさを可能にしているのが彼らのジャズマンとしての技術であることは記さねばならない。


"I Don't Even Care"では噛み付くような前のめりの右手のアドリブに対して、左手のバッキングは驚くほど冷静に、明らかに右手とは違ったタイム感と落ち着きを持って同じフレーズをループする背景と同化している。"So Beautiful"等の比較的はっきりとしたソロをとる楽曲に置いても決して聴き苦しくならないのはこの左手との温度差とバックの演奏のループ感に要因があるように思う。アドリブが始まると同時にフェードアウトする"Reckoner"も、再びテーマにフェードインした時にはドラムのビートはそのままにピアノとベースは3/4拍子という面白いアンサンブルが試みられている。正確無比にビートを刻み加減速のほとんど無いドラムと少ない音数かつ決して軸をぶらさないベースは、明らかにエクスペリメントの持つグルーヴ感とは異なっていて、このトリオ作では違うメンバーを起用した事も頷ける。この2人が作るビートの上にグラスパー独特のタイム感をもって散りばめるピアノは決して無理をすること無く余裕すら感じられるが、今や一聴してそれと分かるほどの個性を放っている。


そうやって聴いていくと、アルバムの中で唯一ピアノ以外のソロがフィーチャーされ、ポップとは異なった指標の曲のタイトルが"In Case You Forgot"(あなたが忘れるといけないから)というのもグラスパーなりのジョークのように思えてくる。


エクスペリメントでのアンサンブルのタクトを振るようなピアノとも「黒いメルドー」と呼ばれた初期の作品とも異なった、成熟したピアニストとしてそしてバンドリーダーとしての魅力が感じられる作品。ピアノ・トリオという伝統的かつある種ジャズの代名詞的なフォーマットで挑んだこの作品は、誤解を恐れずに言うならばこの作品は数あるピアノトリオ作品の中でもちょっとした奇作だ。


文:花木洸 HANAKI hikaru




【Robert Glasper - I Don't Even Care (Live At Capitol Studios)】







Recommend Disc

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Title : 『Covered』
Artist : Robert Glasper
LABEL : ユニバーサル ミュージック
NO : UCCQ-1042
RELEASE : 2015.6.10

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【MEMBER】
ロバート・グラスパー(p)  
ヴィセンテ・アーチャー(b)  
ダミアン・リード(ds)

【SONG LIST】
01. Introduction
02. I Don't Even Care
03. Reckoner
04. Barangrill
05. In Case You Forgot
06. So Beautiful  
07. The Worst
08. Good Morning
09. Stella By Starlight
10. Levels
11. Got Over feat. Harry Belafonte
12. I'm Dying of Thirst


この連載の筆者、花木洸が編集協力として参加した、金子厚武 監修『ポストロック・ディスク・ガイド』(シンコーミュージック)が発売になりました。シカゴ音響派などジャズとも互いに影響しあって拡がった音楽ジャンルについて、広い視点から俯瞰するような内容になっています。


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■タイトル:『ポストロック・ディスク・ガイド』
■監修:金子 厚武
■発売日:2015年5月30日
■出版社: シンコーミュージック
■金額:¥2,160 単行本(ソフトカバー)

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20年に及ぶポストロック史を、600枚を超えるディスクレビューで総括!貴重な最新インタヴューや、概観を捉えるためのテキストも充実した画期的な一冊。90年代に産声をあげた真にクリエイティヴな音楽が、今ここに第二章を迎える。


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「Monthly Disc Review」アーカイブ花木 洸

2015.04 ・2015.05 ・2015.06 




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花木 洸 HANAKI hikaru

東京都出身。音楽愛好家。
幼少期にフリージャズと即興音楽を聴いて育ち、暗中模索の思春期を経てジャズへ。
2014年より柳樂光隆監修『Jazz the New Chapter』シリーズ(シンコーミュージック)
及び関西ジャズ情報誌『WAY OUT WEST』に微力ながら協力。
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