Title : 『Melting Point』
Artist : The NYC Improv Project
今回はこの連載が始まって初めてのコンピレーション・アルバム。
Melting Point -The NYC Improv Project-と銘打ったこのアルバムは総勢17人ものアーティストが集った"完全即興録音"となっている。アーティストがいくつかの組み合わせで行った録音を一つのアルバムに収めたもので、ヒリヒリとしたライブ感が楽しめる作品だ。
マーク・ジュリアナ(ds)、マウリス・ブラウン(tp)、ジャリール・ショウ(as)、ニア・フェルダー(gt)など最近名前をよく聞くようなアメリカのジャズシーンで最も勢いのあるメンバー達が集ったこのセッションには、スキャットソロが光るベースとボーカルのデュオから、人力のヒップホップ・ビートにラップが乗った曲、ハードバップ、アフロキューバンからファンクまで幅広い音楽がつめ込まれている。曲順もそれらがランダムに配置されており一見まとまりが無さそうにみえるが、様々な要素が混ざり合い混沌とした現在のジャズシーンのリアルを切り取ったような不思議なまとまりがあり、僕は『真夏の夜のジャズ』を思い出した。フォーマットは様々だが皆同じ時代の、同じ感覚の元で演奏されている。
そしてギタリストのダイスケ・アベ、Sly 5th Ave『AKUMA』やSnarky Puppyのアルバムにも参加するケイタ・オガワ(perc)、タク・イワサキ(voice)、プレイヤーとしてだけでなくプロデューサーからレコーディングまでを手がけるノリ・ナラオカ(b)といった日本人の名前が混ざっていることに気づく。
先日リリースされたファビアン・アルマザン、ギラッド・ヘクセルマン等が参加したニューヨークで活躍するサックス奏者カズキ・ヤマナカの自主制作盤『Songs Unconscious-minded』もダイスケ・アベが参加しノリ・ナラオカのプロデュースだった。このアルバムをリリースした大阪の新興レーベルMFA Recordsの登場をはじめ、日本のジャズ/日本人のジャズを取り巻く環境も日々面白くなってきていて目が離せない。
文:花木洸 HANAKI hikaru
【The NYC Improv Project"Melting Point" | Inpartmaint Inc】
http://www.inpartmaint.com/site/13612/
この連載の筆者、花木洸が先日発売になりました『Jazz The New Chapter 3』で編集・選盤・レビュー記事などを担当。ブラック・ミュージックの最先端からUKジャズ、ネクスト・ジャズ・ファンク、ラージアンサンブル等ここにしかない記事・インタビューが盛り沢山となっています。
■タイトル:『Jazz The New Chapter 3』
■監修:柳樂光隆
■発売日:2015年9月10日
■出版社: シンコーミュージック
今日においてはジャズこそが時代を牽引し、ディアンジェロやフライング・ロータスなど海外の最先端アーティストから、ceroなど日本のポップ・シーンにも大きな影響を与えている。この状況を予言し、新時代の到来を告げた「Jazz The New Chapter(ジャズ・ザ・ニュー・チャプター)」の第3弾がいよいよ登場。2014年の刊行時より刷数を重ね、SNS上でも未だ話題沸騰中の第1弾・第2弾に続き、2015年9月末に〈Blue Note JAZZ FESTIVAL in JAPAN〉が開催されるなど、かつてない活況を迎えているジャズの次なる未来は、ニューチャプターが切り拓く!
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
Reviewer information |
花木 洸 HANAKI hikaru 東京都出身。音楽愛好家。 |