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JJazz.Net Blog Title

Monthly Disc Review2016.05.15

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Title : 『the torch』
Artist : rabbitoo



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ギタリスト市野元彦を中心に気鋭のジャズマンによって結成されたバンド、rabbitooの2ndアルバム。日本だけでなくヨーロッパでもリリースされるなどシーンの話題作となった前作『national anthem of unknown country』から2年を経てrabbitooが辿り着いたサウンドは、より深く、ソリッドな音像だ。


アルバムは一曲目、単音のシンセサウンドから始まる。それは聴いている自分の足元がグラつくように変調していきそこにドラム、ベースが順に加わっていく。ビルドアップされたモノクロの世界観がギターがコードを鳴らしたところで、パッと開けるように色づいていく。音数が少なくなったことによって聴いているものの想像力を駆り立て、その予想を裏切っていくこの展開はある意味ですごく「ジャズ」を聴いているような気持ちがしてくる。


前作から一貫してrabbitooのサウンドとは、基本となる枠組みの上で各々がソロをとっていく所謂オーソドックスなジャズのスタイルではなく、ミニマルな繰り返しの中での音の抜き差しに寄って楽曲を展開させていき、そのビルドアップの要素の一つに即興があるというものだ。今作はその方向性を保ったまま個の演奏はより抑制的になり、その結果としてバンドサウンドがよりタイトにそしてぐっとソリッドになった。ギターやシンセの音色は様々だが、サックスの息遣いと乾いた生のドラムサウンドが音色の面でアルバムに芯を通すような存在であり、同時にこの音楽が生のバンドで、人力で作られている意味をすごく現している。

音響、ミニマル、ビートと即興演奏について示唆に富むこの一枚は、世界的にみてもジャズの最先端シーンの一角を担う作品だ。


文:花木洸 HANAKI hikaru


【rabbitoo - the torch Album Preview】




Recommend Disc

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Title : 『the torch』
Artist : rabbitoo
LABEL : SONG X JAZZ
NO : SONG X 036
RELEASE : 2016.3.23

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【MEMBER】
市野元彦 Motohiko Ichino : guitar, keyboards
藤原大輔 Daisuke Fujiwara : tenor saxophone, flute, synthesizer, electronics
佐藤浩一 Koichi Sato : rhodes, synthesizer, piano
千葉広樹 Hiroki Chiba : contrabass, electric bass, violin, electronics
田中徳崇 Noritaka Tanaka : drums


【SONG LIST】
01. バターランプの頂きにて 5:32
02. 火のこどもたち 6:13
03. MET-ROPE-OPLE 4:30
04. やがて星は泥の眠りから醒める 7:01
05. 影に満ちて梟は雪のように眠る 3:25
06. Nodding Robo Labo 4:49
07. 15 Arrows 3:10
08. 渦巻 6:24
09. pool 4:25
All songs produced and arranged by rabbitoo


この連載の筆者、花木洸が先日発売になりました『Jazz The New Chapter 3』で編集・選盤・レビュー記事などを担当。ブラック・ミュージックの最先端からUKジャズ、ネクスト・ジャズ・ファンク、ラージアンサンブル等ここにしかない記事・インタビューが盛り沢山となっています。


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■タイトル:『Jazz The New Chapter 3』
■監修:柳樂光隆
■発売日:2015年9月10日
■出版社: シンコーミュージック

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今日においてはジャズこそが時代を牽引し、ディアンジェロやフライング・ロータスなど海外の最先端アーティストから、ceroなど日本のポップ・シーンにも大きな影響を与えている。この状況を予言し、新時代の到来を告げた「Jazz The New Chapter(ジャズ・ザ・ニュー・チャプター)」の第3弾がいよいよ登場。2014年の刊行時より刷数を重ね、SNS上でも未だ話題沸騰中の第1弾・第2弾に続き、2015年9月末に〈Blue Note JAZZ FESTIVAL in JAPAN〉が開催されるなど、かつてない活況を迎えているジャズの次なる未来は、ニューチャプターが切り拓く!


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Reviewer information

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花木 洸 HANAKI hikaru

東京都出身。音楽愛好家。
幼少期にフリージャズと即興音楽を聴いて育ち、暗中模索の思春期を経てジャズへ。
2014年より柳樂光隆監修『Jazz the New Chapter』シリーズ(シンコーミュージック)
及び関西ジャズ情報誌『WAY OUT WEST』に微力ながら協力。
音楽性迷子による迷子の為の音楽ブログ"maigo-music"管理人です。

花木 洸 Twitter
maigo-music

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