Title : 『CLEANUP』
Artist : 石若駿
今や若手ナンバー・ワン・ドラマーであることはもはや疑いの余地が無くなった石若駿。1992年生まれ、今年大学を卒業したばかりの彼の、初のフルアルバムとなるのがこの『Cleanup』だ。
メンバーにはこの連載でも紹介した吉本章紘カルテットのメンバーである吉本章絋(sax)、アーロン・チューライ(pf)、須川崇志(b)に加えて、石若と同い年の中島朱葉(sax)、1つ年上の井上銘(gt)、年下の高橋侑成(pf)、さらに石若をここまでフックアップし続けてきた大ベテランの金澤英明(b)とサウンドのテイストから年齢まで実に多彩なメンバーが集まっているが、その音楽の多彩さはそのまま石若自身の音楽の多彩さも物語っている。
ほぼ全曲がリーダーである石若のコンポジション。オーネット・コールマンを彷彿とさせるフリーキーなタイトル曲や、現代のジャズジャズらしい#1、フォーキーなギターとローズが心地よい#4、さらには石若自身のピアノとベースとのデュオによる#6などフォーマットは様々だが、一貫してサウンドは彼がこれまで積み重ねてきたジャズそのもの。
メンバーがどこまでも自由に演奏できるように用意された楽曲は、吉本や中島の持っているトラディショナルなサウンドに完全にフィットしているし、アーロンや井上の時に突拍子もないような大胆なプレイも受け入れ、実際にプレイの面でも彼らと反応しあう石若のドラムは真剣勝負なのだけれどどこか楽しげで愛嬌に溢れている。メンバーの中ではギターの井上銘のプレイが秀逸。時にはローコードでギターを鳴らし、時にはフィードバックでノイジーなソロをとり、時にはエフェクトを多様しながらもストレートなラインでソロをとったりと楽曲に様々なテクスチャーを持ち込んで色付けしていくセンスは、近年の日本のジャズギタリストの中でも確実に頭一つ飛び出た才だ。
リーダー自身の作曲とディレクションによって進み派手なドラムソロが無いという点では「ドラマーのリーダー作」として、とても現代的でスマートにも見えるのだけれど、この作品はどうやらそれだけではない。リーダーが用意した大小様々な額縁の中にメンバー各人が自由にペイントしていくようなこの作品は、演奏がヒートアップすると額縁からはみ出し、時には額縁そのものが変化していくような、キメを抑えながらもかなり自由奔放でハプニングとスリルに溢れた作品になっている。
文:花木洸 HANAKI hikaru
石若駿リーダー作のリリースに合わせ、花木さんがインタビューを行いました。
生い立ちから、初のリーダーアルバム、そして彼が今"面白い"と思っている音楽まで語ってくれました。
石若駿が何故これだけ注目されるのかを知ることのできる興味深い内容です。
石若駿インタビュー(インタビュアー:花木 洸)
この連載の筆者、花木洸が先日発売になりました『Jazz The New Chapter 3』で編集・選盤・レビュー記事などを担当。ブラック・ミュージックの最先端からUKジャズ、ネクスト・ジャズ・ファンク、ラージアンサンブル等ここにしかない記事・インタビューが盛り沢山となっています。
■タイトル:『Jazz The New Chapter 3』
■監修:柳樂光隆
■発売日:2015年9月10日
■出版社: シンコーミュージック
今日においてはジャズこそが時代を牽引し、ディアンジェロやフライング・ロータスなど海外の最先端アーティストから、ceroなど日本のポップ・シーンにも大きな影響を与えている。この状況を予言し、新時代の到来を告げた「Jazz The New Chapter(ジャズ・ザ・ニュー・チャプター)」の第3弾がいよいよ登場。2014年の刊行時より刷数を重ね、SNS上でも未だ話題沸騰中の第1弾・第2弾に続き、2015年9月末に〈Blue Note JAZZ FESTIVAL in JAPAN〉が開催されるなど、かつてない活況を迎えているジャズの次なる未来は、ニューチャプターが切り拓く!
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・2015.04 ・2015.05 ・2015.06 ・2015.07 ・2015.08 ・2015.09 ・2015.10 ・2015.11
Reviewer information |
花木 洸 HANAKI hikaru 東京都出身。音楽愛好家。 |