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JJazz.Net Blog Title

Monthly Disc Review2015.0701

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Title : 『Tokyo Adagio』
Artist : CHARLIE HADEN,GONZALO RUBALCABA



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東京の夜は、いつも刺激的で魅惑に溢れていて、
夕闇と共に立ち現れる高層ビル群の夜景に心を躍らせていたのは
いつの頃だったろうか。喧騒の中を漂い、美食と快楽らしきものを
求めては、それが多くの場合幻想でしかないということを知らずに、
まだ見ぬ光り輝いているはずの未来へと駆り立てられ、
無為に時間を浪費していた時代。


そういう時代がいつの間にか終わってしまったのか、
あるいは、僕自身がそういう場所から降りることを選択しただけなのか、
正直、本当のところはなんとも言えないのだけれど、
少しだけ、あのギラギラと輝いていた東京の夜が、
懐かしくも愛おしくもある。


今から10年前、2005年の東京の夜を想像してみる。
浮足立ったバブルはとうの昔に終焉を迎えているはずなのだけれど、
まだ、成長する未来を妄想することが許された時代。
そして、あの大きな災害が数年後に訪れるなんていうことは
誰一人、想像もしていなかった時代。
何も確信のようなものや、安心材料があった訳ではなく、
かといって大きな不安を抱くマイナス要因もない、
ただなんとなく、平穏な日々が続いていくんだろうな、
というくらいにしか考えていなかった時代。


2005年3月、表参道のBLUE NOTE TOKYOに、
CHARLIE HADENとGONZALO RUBALCABAが残したこの音源を聴きながら、
バブルと震災の狭間の幸福な時代を思い出す。

TOKYO ADAGIOに収められた、ゆるやかで平穏な時間は、
今の東京には、おそらく感じることのできない
貴重な瞬間であったのだと強く感じる。
当然、もうCHARLIE HADENのBassが東京の夜に響くことはないのだけれど。


文:平井康二




【Charlie Haden - Gonzalo Rubalcaba / Tokyo Adagio】







Recommend Disc

TOKYO ADAGIO200.jpg

Title : 『Tokyo Adagio』
Artist : CHARLIE HADEN,GONZALO RUBALCABA
LABEL : ユニバーサルミュージック(UCCI-1021)
RELEASE : 2015.7.1

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【MEMBER】
Gonzalo Rubalcaba (p)
Charlie Haden (b)
Recorded Live at Blue Note Tokyo, Japan on March 16th to March 19th, 2005.

【SONG LIST】
01. En La Orilla Del Mundo
02. My Love And I
03. When Will The Blues Leave
04. Sandino
05. Solamente Una Vez
06. Transparence


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「Monthly Disc Review 平井康二」アーカイブ平井康二

2015.4.1 ・2015.5.1 ・2015.6.1




Reviewer information

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平井康二(cafeイカニカ オーナー)

1967年生まれ。レコード会社、音楽プロダクション、
音楽出版社、自主レーベル主宰など、約20年に渡り、
音楽業界にて仕事をする。
2009年、cafeイカニカをオープン
おいしいごはんと良い音楽を提供するべく日々精進。


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