feed markRSS
JJazz.Net Blog Title

坪口昌恭インタビュー ~『Abyssinian...Solo Piano』~

10月16日土曜日に、自身初となるソロピアノアルバム『Abyssinian...Solo Piano』を発表する坪口昌恭さんのインタビューをお届けします。
ジャズとエレクトロニクスの両方を絶妙のバランス感覚で取り入れている坪口昌恭さん。演奏者としてピアノに向き合うようになっている近年の経過報告といえる今回のアルバムでは、オリジナル曲はもちろんのことスタンダードからクラシックまで取り上げ、当たり前ですが響きも含めて「ピアノ」がタップリ聴ける内容です。

発売記念ライブも決定しています。詳細はインタビューに続いて。

では、メールインタビューを御覧ください。


tzboguchi.jpg


坪口昌恭 インタビュー

■新作『アビシニアン』は初のソロピアノ。坪口さんといえばエレクトロニクスの印象が強いですが、今回のようにピアノにじっくりと向きあうようになったきっかけは何かあるのでしょうか?

アコースティック・ピアノはなんと言ってもMost Favorite Instrumentなんですよ。2000年代は『東京ザヴィヌルバッハ』や『DCPRG』でエレクトロニクス系の音楽に没頭する一方で、『坪口昌恭TRIO』や菊地成孔の一連のプロジェクトでピアノ主体に演奏してきましたし、ビバップの伝道師バリー・ハリスさんと交流を持ち、伝統的なジャズ・スタイルも追求してきたのです。ただ近年、DUOや小編成のアコースティック・セッションを増やし、自分のピアノに説得力が増してきたという感触はあります。具体的には、映画音楽の「Last Tango In Paris」をレパートリーに取り入れ、自分の中のラテン魂に火がついたことが大きいです。ラテンというジャンルをやりたくなったとかそういうことではなく、普遍的な楽器であるピアノで人々に自分の音楽を伝えるんだ、という根本意識の問題でしょうね。


■ピアノという楽器の魅力を教えてください。

木と金属でできていて重力を感じるところ。それと、音楽の基本衝動であろう「歌って、叩いて、踊る」という行為から一見遠いところにある楽器でありながら、すべての要素を表現できること。


■クラシックピアノのレッスンを改めて受け始めたと伺っています。何か発見はありますか?

ピアノは元々「ピアノフォルテ」という名称だったように、弱音(ピアノ)から強い音(フォルテ)まで表現できる楽器。頭ではわかっていながら、今まではメゾ・フォルテ以上でしか演奏していなかったような気がします。本来の「ピアノ」のタッチや表現が、以前よりはできるようになってきました。まだまだですが・・・。


■クラシックピアノのレッスンを受ける一方、尚美学園大学 / 同大学院で教えてらっしゃいますが、「学ぶ」ということについてご意見を聞かせてください。

音楽や芸術は、本来教えてもらうのではなく、本当にやりたいのならば自分で見つけていくべきものだと思います。ただ、楽器の奏法上の基礎、ジャズ/ビバップのセオリーなどはやはり一度は正しく学ぶべきでしょう。必ずしも早い時期にとは言いません。習いたくなった時がチャンス。30歳、40歳を過ぎて初めて知ることで、かえって深く心にしみるという場合もあります。
僕は教える立場にはいますが、少し先回りしてお膳立てをしているだけで、学生から実に多くのことを学びます。学ぶというのは学生時代だけの話ではありませんね。一生学び続けるものでしょう。もはや音楽だけの話ではありませんが。


■今後の活動について教えてください。

レコ発に伴って年内、都内で何カ所かソロピアノをやります。『東京ザヴィヌルバッハ』では12月2日に青山「月見ル君想フ」にてソロ・パフォーマンスをします。またギターを交えた『坪口昌恭Quartet』で、来年は国内ツアーがしたいですね。JJazz.Netさんにも応援して配信していただいている(10月13日から)『坪口昌恭&渥美幸裕』での活動も、来年に向けてスケールアップしていきたいです。再始動した『DCPRG』もありますし、相変わらず色とりどりの活動を展開していきますよ!


2010年10月1日
坪口昌恭

[Interview:樋口亨]


坪口昌恭『Abyssinian...Solo Piano』発売記念ライブ

<日時>
2010年10月12日(火)
開場 18:30 開演 19:30

<会場>
代官山 晴れたら空に豆まいて

<出演>
坪口昌恭 solo
・坪口昌恭 Quartet [坪口昌恭 - Piano, Effect、宮嶋洋輔 - Guitar、永見寿久 - ac. & el.Bass、安藤正則 - Drums]
thirdiq [渥美幸裕 - Gt、菱山正太 - Key、小森耕造 - Drums} 

<料金>
前売り 3,000円 当日 3,500円 +1D 500円


abyssiniancd.jpg


■タイトル:『Abyssinian...Solo Piano』
■アーティスト:坪口昌恭
■発売日:2010年10月16日(土)
■レーベル:エアプレーンレーベル
■カタログ番号:APX1005
■価格:2,350円(税込)

■収録曲
1. Logos by 坪口昌恭
2. Tune Up by Miles Davis
3. The Peacocks by Jimmy Rowles
4. Evidence by Thelonious Monk
5. Afro Poly Etude by 坪口昌恭
6. Abyssinian by 坪口昌恭
7. New Doll by Peter Ilych Tcaikovsky
8. Last Tango In Paris  by Gato Barbieri
9. Castalia by 坂本龍一



坪口昌恭 プロフィール】

1964年12月3日福井県生まれ、大阪育ち。5歳より両親(音楽教師)にピアノの手ほどきを受ける。
多重力的エレクトロ・ジャズユニット『東京ザヴィヌルバッハ』(1999~)を主宰し、ewe Inc.他より7枚のアルバムを発表。
キューバ系ジャズ・ミュージシャンたちと2004年夏ニューヨークにて録音したソロ・アルバムを2枚発表。
アコースティック主体の『坪口昌恭TRIO』(2001~2008)では、エフェクティブな手法やポリ・スイングを実践し、リミックス・アルバム「Radio-Acoustique」(Flyrec)リリース。
'90年代はジャズロックバンド『坪口昌恭PROJECT』(1989~1998)を率いて活動し、2枚のアルバムを発表。菊地成孔(Sax)との共演歴は20年を越え、『DCPRG』(1999~2007)をはじめ、近年は『菊地成孔Dub Sextet』『菊地成孔Quintet Live Dub』『UA×菊地成孔』のピアニストとして活躍中。 2008年9月に、20代前半の若手を集め『坪口昌恭Quartet』の活動開始。よりメインストリームなサウンド指向で原点回帰しつつ新境地を目指す。 2009年より、Piano Soloや小 編成でのセッションが活性化。ジャズ・ピアニストとしての多彩な魅力をアピール。キーボードマガジンをはじめとする音楽誌への執筆多数。
先鋭的な音楽活動の一方で、Barry Harris(Pf)直伝によるBe-Bopセオリーを受け継ぎ、尚美学園大学/同大学院にて後進の指導にあたっている。


アーカイブ