Title : 「Double Circle」
Artist : Enrico Pieranunzi, Federico Casagrande
ちょうど三年前の2012年の今頃、Marc Johnsonの演奏を追いかけていて、Enrico Pieranunziに行き当たる。正直、イタリアのジャズに関しては、未聴の分野で"ピエラヌンツィ"って響きがいいね、なんていうくらい。EGEAでのリリース作品を何枚か買い漁っているうちに、2000年に発表された『Raconti mediterranei』の冒頭の一曲目"The Kingdom(where nobody dies)"に出会うことになる。
"地中海物語"というアルバムの邦題のとおり、青い地中海の景色を想像させる作品で、なかでも"The Kingdom(where nobody dies)"は、梅雨から夏に向かっていく憂鬱なこの時季に、カフェでは欠かせない一曲となり、毎日毎日、この曲を流すことに。お客様にも、"この曲は何?"と何度となく尋ねられ、その度に、"ピエラヌンツィ"と呪文のように繰り返しては、アルバム『Raconti mediterranei』をお勧めして、何人もの方が購入した模様。
そして、今回の『Double Circle』。PieranunziのピアノとFederico Casagrandeのアコースティックギターのデュオ作品という前情報を得て、"The Kingdom(where nobody dies)"に匹敵するカフェでのへヴィーローテーション曲があるのではないかと秘かに期待をしていたのでした。そして先日、届いたばかりのアルバムをお客様のいない夕暮れのカフェで試し聴き。
答えは、大正解。
冒頭の一曲目、"Ann Blomster Sang"の、その美しいメロディとそれを奏でるピアノとアコースティックギターの響きは、カフェにこの上ない心地よい風を運んで来てくれて、まさにこれからの時季にうってつけの一曲。『Raconti mediterranei』同様、この先夏の終わりくらいまでcafeイカニカにいらっしゃったお客様は、この"Ann Blomster Sang"を聴かされ、アルバム『Double Circle』を薦められることになると思われます、ご容赦を。
加えて最後に収録されているのは、タイトルが"Charlie Haden"そう、彼への追悼の一曲。確かに、晩年のCharlie HadenとPieranunziのデュオ作品も聴いてみたかったなぁ、と思いを巡らせたりも。トータルタイム48分46秒という理想的なアルバムサイズの中に、今のPieranunziの美学が凝縮された、これからの季節に必携の奇跡的な一枚だと言っても大げさではないかもしれないですよ。
文:平井康二
【I Piccoli Live di Auditorium TV - Enrico Pieranunzi & Federico Casagrande "Let's make it strange"】
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
Reviewer information |
平井康二(cafeイカニカ オーナー) 1967年生まれ。レコード会社、音楽プロダクション、 |
cafeイカニカ
●住所/東京都世田谷区等々力6-40-7 |