feed markRSS
JJazz.Net Blog Title

カミラ・メサインタビュー[インタビュアー黒沢綾]

camilamezaINTERVIEW.jpg


チリ出身、現在はNYを拠点に活躍するシンガー/ギタリストのカミラ・メサ。

2016年の前作『Traces』ではシャイ・マエストロやケンドリック・スコットらが参加、近年は彼女の溢れる才能に世界中が熱い視線を送っています。

今年5月には弦楽四重奏からなるアンサンブル、The NECTAR ORCHESTRAとの最新アルバム『Ambar』をリリース。そして、その作品をたずさえて先日来日、完成度の高いアンサンブルを披露し観客を魅了しました。

今月10月の番組「PICK UP」では、そんなカミラ・メサとのインタビューを紹介しています。

https://www.jjazz.net/programs/pick-up/
(配信期間:2019年10月2日~2019年11月6日)

そして番組で紹介しきれなかったインタビューをこちらにまとめました。
番組と共にお楽しみ下さい!

[Interview:黒沢綾]


camila_kurosawa600.jpg


カミラ・メサ インタビュー


■5⽉リリースのニューアルバム『Ambar(アンバー)』 は弦楽四重奏を含むオーケストラ編成での作品。今までの作品とは違う新たな⼀⾯を見せていただきました。弦楽を取り⼊れたアンサンブル作品に行き着いた理由を教えて下さい。

[カミラ・メサ]
そもそもの始まりは6年ほど前。つまり前作『Traces』と並行して企画は進んでいたことになるわね。あのアルバムのサウンドは今回のサウンドとは随分違うものだけど、あの時点で今回のベースプレイヤーでもありストリングスアレンジを手掛けてくれたノーム・ウィーゼンバーグの共同作業が始まっていました。かねてから弦楽四重奏の音に惹かれていたという事もあって、今回のアルバムの方向性が見えてきた感じ。弦楽四重奏のサウンドはとてもリリカルで、シンガーとしてインスパイアされるものがあるサウンドなの。


■The NECTAR ORCHESTRAのレコーディングメンバーについて教えてください。

[カミラ・メサ]
まずはピアノとキーボードのエデン・ラディン。彼とは学生時代の友人だけど卒業してからの音楽活動が多いわね。そしてご存じ、ケイタ・オガワ。日本のドラマー、パーカッショニスト。それから先程紹介した、ベースのノーム・ウィーゼンバーグ。で、ニューヨークのオリジナルメンバーの中には日本人バイオリニスト大村朋子さんがいます。そしてフォン・チェム・ホェイ(バイオリン)、ベンヤミン・フォン・グートツァイト(ヴィオラ)、ブライアン・サンダース(チェロ)というメンバーです。


■オーガニックでありながら現代的なサウンド。作曲やサウンド⾯で今回特に意識されたことは?

[カミラ・メサ]
重要視したことのひとつとして、曲の持つストーリーを伝えるということ。そして音の重なり。例えるなら絵画のような。見るたびに違うディテールに見えてくるような感じ。その時の自分の感情によって、異なる部分に惹かれることがあるでしょ。The NECTAR ORCHESTRAはそういった体験をしてもらおうと意図しているの。アルバムを聴く度、以前は聴こえなかった音が聴こえるという新たな発見があればと。それは、作る側としても聴き手としても好きなアプローチなの。


■アルバムを通して生命力のある一枚だと感じました。タイトル『Ambar』にこめた意味を教えてください。

[カミラ・メサ]
生命力、それがこのタイトルにこめた想いと繋がります。感じてもらえて嬉しいわ。
『Ambar』(=琥珀)という言葉には様々なメタファー(隠喩)が含まれている。木々が排出した樹液が時間をかけて化石化し、のちに琥珀となる。樹木に傷がついた時、自らの樹液で補修、癒してゆくというプロセスがあるの。だから自らが秘めているパワーをこの言葉は表しています。
同時に、石になった琥珀そのものが「ネガティブなものをポジティブにエネルギー変換する」という意味合いを持つ石だということも後から知ったわ。曲を創作する、音楽を表現する過程とはそういうものよね。自分から発するものが琥珀という結晶となって皆さんのもとに届く。癒し、とは美しい概念だと思います。


■サウンド面に注目されることが多いと思いますが、私はシンガーソングライターとして作詞のプロセスにも興味があります。どういったヒントやアイデアから言葉を生むのでしょう。

[カミラ・メサ]
ここ6年くらいを振り返って思うのは、歌は「祈り」に近いものだということ。自分が書いたものをパフォーマンスするたび、歌詞を反芻しているわけよね。繰りかえし繰りかえし。だから言葉は大切だし尊重しないとね。だって、言葉の積み重ねで自分の現実は出来上がっていくものでしょう?だから慎重に注意を払っているわ。特に、悲しみや葛藤の感情。どうやっても自分の中では解決し難い、どちらかというと居心地の良くない感情を歌詞にする時ね。そういう時は、自分自身を友人と見立てて語り合っている事にするの。「大丈夫だよ」「うまくいくから」と言ってあげて安心を得ていくの。すると歌うたびにその居心地の悪かった感情が良いものに変わってゆく。それが歌詞を書くことの醍醐味だと思ってるわ。
分かりやすい題材としては、自然、人間関係、色彩、人生そのものがインスピレーションになっているわね。


■あなたの作品は現代ジャズシーンからも注⽬されています。 NYに渡って10年ほど経ちますが、NYジャズシーンがあなたに与えた影響は?

[カミラ・メサ]
やはりとても刺激的ね。現地の人々、特に音楽に関わっている人たちって、常に一番いい自分でいるよう努めている。最高の音楽が作れるようにと。そういった一人一人のエネルギーが伝染するのね、私も最善を尽くしたいと常に思っているわ。そういう環境にいることが一番の刺激ね。


■旅やコンサート続きだと思いますが喉のケアや普段気遣っていることを教えてください。

[カミラ・メサ]
とにかくたくさん水を飲む。あとヨガ。朝、習慣的にやりたいと思っているけど時差ボケが酷い事もあってなかなか難しいけど。あとは睡眠が大事!って分かっているけど、コンサートが終わったら皆で盛り上がっちゃう時もあるし。(笑)、でもやっぱりショーの直前にはウォームアップが欠かせない。いきなり筋肉を使うことがないように心掛けているわ。


■気が早いですが、次回作の構想などあれば教えてください。

[カミラ・メサ]
実はつい最近NYでパフォーマンスをした「PORTAL」というタイトルの1時間分の音源はあるの。それとは別として、やりたいと思っていることは沢山ある。いつかやりたいのはソロアルバムを作ること。その時はエレクトリック要素も入れたいわ。そしてラテン系、具体的に言うと故郷チリのミュージシャンに捧げるテーマで作品作りがしてみたい。ほかにも色々と考えてるので楽しみにしていて!


[Interview:黒沢綾]


【Camila Meza - All Your Colors (Official Video)】



【Camila Meza & The Nectar Orchestra (Live) | JAZZ NIGHT IN AMERICA】




ALBUM情報

ambar200.jpg

タイトル:『Ambar』
アーティスト:Camila Meza
発売日:2019年5月29日
レーベル: CORE PORT
製品番号:RPOZ-10047



アマゾン詳細ページへ


【SONG LIST】
01.カルフ
02.ワルツNo.1
03.アウェイクン
04.ディス・イズ・ノット・アメリカ
05.オーリャ・マリア
06.夕暮れ
07.オール・ユア・カラーズ
08.ミラグリ・ドス・ペイシェス(魚たちの奇跡)
09.インタールード
10.アンバー
11.フォール
12.ククルクク・パロマ

camilamezaA600.jpg
CAMILA MEZA [カミラ・メサ] プロフィール

チリ出身のシンガー/ギタリスト/作曲家。16才から活動を開始して2枚のアルバムをリリース後、NYニュースクールに入学してからはNYを拠点として活動。ファビアン・アルマザン、ライアン・ケバリー他多くの話題作に参加しつつ2016年作『Traces』で本格的にシーンの重要人物として脚光をあび、2年連続でダウンビート誌クリティック・ポール「Rising Star」に名を連ねる。2016年シャイ・マエストロとのデュオで日本ツアー、2017年はヨーロッパ・ツアー、ライアン・ケバリー・カタルシスのメンバーとして来日、さらにシャイ・マエストロ・トリオのフィーチャリングとして東京JAZZに出演。近年はストリングス・カルテットを擁したThe Nectar Orchestraを率いて活動中。そのグループと共に2019年に待望のメジャー・デビュー・アルバム『Ámbar』を発表。

https://camilameza.com/


kurosawa600_new.jpg

黒沢綾 (Singer,Piano) プロフィール

幼少よりクラシックピアノ、作曲、クラシック声楽を学ぶ。尚美学園大学JAZZ&POPSコースに入学後、自然な流れでジャズに傾倒。在学中よりプロとして活動をスタート。同コースを首席で卒業。以降、都内近郊でジャズシンガーとして着実にキャリアを重ねながらオリジナル曲を制作。2009年アルバム『うららか』、2013年『Twill』をリリース。ソングライターとして確かな実績を持つ。また上田力率いる【Jobim my Love】プロジェクトに10年以上ヴォイスアーティストとして参加。南米音楽への造詣を深める。ジャズの形式を用いた自由な音楽性、歓びに満ちたサウンドスケープをモットーとする。透明感あるクリスタルヴォイス、また楽器としての声による即興的なアプローチを得意とすることからヴォイス・プレイヤーとしてジャズ・コンテンポラリー作品に参加。参加作品は、栗林すみれ『Pieces of Color』、千葉史絵『Beautiful Days』、岸淑香『feat.手』等。またparis matchのコーラスを2011年から務め、Billboard Live TOKYOをはじめコンサートやツアーに参加。相撲と着物とジャズをこよなく愛す和洋折衷シンガー。
現在、インターネットラジオ・ステーションJJazz.Netの番組ナビゲーターをつとめる。

オフィシャルブログ

アーカイブ