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CALMインタビュー ~『CALM』

日本でクラブミュージックが盛り上がり始めた90年代後半、いち早くクリエイターとして海外のシーンから注目を集めた日本人アーティストCALM。新作『CALM』は、見ての通り6枚目にして初めて自らのアーティスト名をアルバムタイトルとしています。様々な名義で幅広いサウンドをリリースしながらも、根底にはっきりと感じ取れる彼独自の強烈な「音楽への愛」が多くのリスナーを魅了し続けている、注目のアーティストのインタビューです。



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CALM インタビュー

■ほぼ毎年リリースしているアルバムの6枚目にして、タイトルに自身のアーティスト名をつけたことなど、今回のアルバムに込めた思いなどについて教えてください。

このアルバムを出すまでに本当に色んなことがありました。
音楽シーンの変化はここ数年でかつてないほどとても大きなものだったかもしれません。
そんな中、プライベートなことも含めですが、もう一度自分自身に向かい合ってみようと思い今回のアルバムに取りかかりました。
ファーストアルバム以来となる、生楽器やゲストミュージシャン無しで、自分独りで作り、ミックスし完成させたアルバム。
そこで色々悩んだ結果『Calm』というセルフタイトルのアルバム名になりました。
毎回そうですが、今回はいつも以上に自分のエゴというか自分のエッセンスのみで作りあげ、少しプライベートになりますが、亡き祖母に捧げたアルバムになります。


■DJではなくプロダクションで、クラブミュージックにジャズを持ち込んだ日本でのパイオニア、そして日本のクラブジャズが海外から注目される突破口をあけた存在だと思います。自身が考える「ジャズ」とは?また、当時と現在で違いを感じますか?

自分のことをクラブ系ジャズだとは思っていません。ただのジャズ好きで、他の音楽と同様に素晴らしい音楽を吸収してそれを吐き出しているだけです。
それがたまたま海外の人達の耳に引っかかって、それが逆輸入してきたのかもしれません。
悲しいかないつまでたっても日本の欧米至上主義というのは変わってないのかもしれません。
その後日本の良質な音楽達が日本国内でも広がっていったのですが、残念ながら今その勢いは見受けられません。
ただ逆を言えば、自分がデビューしたときと同じような状況なのかもしれないので、時代は廻るという見方でいけば、この先また楽しい時代が来るかもしれません。
音楽には希望というものも含まれているし、それに感動がプラスされれば人の人生すら180度変えることが出来るパワーがあるはずなので、今の音楽不況でさえもなんとかなるのではないでしょう。
商業的ではなくそれぐらい本当のパワーを持った音楽がもっと世に出てくればいいですね。


■デビューから13年。「続ける」ということについてご意見を聞かせてください。

継続は力なり。色んなことをやりながらも時代にフィットしながらも自分というものは芯にきちんとある。
スタイルを時代に合わせたり、売れるよう音に変化させることは誰だってできるけれども、そこに本当の自分というものがなければもう戻って来ることはできないし、自分じゃないことをやり続けることは、最終的には自分で自分にジ・エンドを突きつけることとなるはず。
Calmという音楽を、ときにOrganLanguageだったり、K.F.だったり、Japanese Synchro Systemと、変名や別プロジェクトにきちんと落とし込んで活動し、ブレなく活動してきたからこそ今というのがあるんだと思う。
セールスだけを求めたり、自分のエゴのみで動いていたらきっとこうはいかなかっただろう。
この先のことは全くわからないけど、出来れば死ぬまで音楽をやり続けたい。


■作品をはじめパーティーのサウンドシステムでも音質にこだわった活動をされ
ています。その理由は?

音楽にはメロディーやコード、リズム、そして歌詞などがあるけれども、そこにその音楽に合った音質が加われば、ただのBGMや娯楽でしかなかったものが素晴らしき感動へと変わっていくはず。
クリアーな音が良いという訳ではないけれども、例えばDJをやるときには、色んなアーティストとの曲をかけるわけだし、そのアーティストは伝えたい音楽と音質でそのレコードなりCDなりに落とし込んでいるので、出来る限りその音質に忠実にプレイしたいと思って、自分のパーティーでは出来る限りの良質な機材を持ち込んでベストに近い音質でプレイ出来るよう頑張っています。
自分の作品でも同じことで、自分の音楽が一番伝わりやすい音質というものになるべく近づけるよう、こだわりを持ってやっています。
先きほどにも述べた通り、音楽には感動が潜んでいます。
その感動を受け取りやすくする努力は出来る限りしているということで、その先ユーザーがどう取るのかはユーザー自身の問題でもあり自由でもあります。


■今後の活動について教えてください。

ライブは現在ツアー中で、10/30(土)に渋谷Plugにてワンマンライブをやり、年内はひとまずそれで終了です。
(詳しくはコチラをチェック)
ライブはCDとは全く違う次元のことをやっています。
自分のPCの音に、キーボード、サックス、ベースがそのときそのとき、まさにその一瞬しか出来ない再現不可能な世界を作り出します。
決め事がほとんどないライブなので、毎回違った雰囲気になります。
そういう意味では制作、ライブ、DJ、それぞれ一聴すると違う感じかもしれませんが、それを全て含めてCalmという存在になるのかもしれません。

制作面では、今半分くらいできているのですが、ノンビートのアルバムを作っています。
ノンビートと言っても、チルアウトやアンビエント的な括りではなく、ビートによる高揚感を排除した楽曲が並んだアルバムだと思ってください。
例えば今回リリースした『Calm』というアルバムの中の「River is Deep」や「Stories」は実際はもっと長い曲なのですが、アルバム用に短くエディットされています。
そんな内側にはめる感じのアルバムを、出来れば出来上がったらすぐに自主流通で販売したいと考えてます。(恐らく年明け早々には)

ライブツアーをやっているバンドでのアルバムも作りたいと思ってますが、なにせメンバーがとても忙しい人達なのでそれは来年できるかどうか。
でもとにかくライブが乗りに乗っているので、ライブ盤ではなく、きちんとしたスタジオ録音の新曲でチャレンジしたいです。

更にサックスの加藤君 (加藤雄一郎) とのスローテンポのウォーキングリズムを主体としたユニット、field.echoというのも来年にはリリースしたいです。
こちらはもう既に楽曲が8曲ほどできているので、加藤君の矢沢永吉さんとのツアーが終わった冬ぐらいから少しずつ完成させていきたいです。

そして来年にはCalmとしての新たなチャレンジのアルバムも作りたいです。
アナログオンリーのダンスミュージックも構想にあります。
リクエストが多いOrganLanguageの続編も少しですが考えてます。

色々と構想がありますが、あとは時間との戦いになってきますね。

DJはコンスタントにやっています。特に自分のパーティーはオープンラストで一人でセレクトしています。
詳しくはウェブ の方を覗いてみてください。

[Interview:樋口亨]


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■タイトル:『CALM
■アーティスト:CALM
■発売日:2010年9月15日
■レーベル:MUSIC CONCEPTION
■カタログ番号:MUCOCD-022
■価格:2,835円(税込)




CALM プロフィール】

ジャンルにとらわれず、全ての良質な音楽を軸として唯一無二の音を放つサウンドクリエーター。
あえてカテゴリーにあてはめて表現するならば、チルアウト、バレアリック、アンビエント、ジャズから、ブラックミュージック、ダンスミュージックに至るまでの要素を絶妙に調合し、自らのエッセンスでまとめあげて世界に発信している。

97年のデビュー以来、Calm、Organlanguage、K.F.、THA BLUE HERB / BOSSとのユニットJapanese Synchro Systemなど、様々な名義を使い分けて幅広い楽曲を生み出し、現在に至るまで実にほぼ毎年フルアルバムなどをリリース。勢力的な活動を続けている。

代表曲には、"Light Years"、"Shining of Life"、EGO-WRAPPIN' 中納良恵をVoに迎えた"Sunday Sun"などがある。

またDJとしてのキャリアも重ね、ダンスフロアに笑顔を育むをテーマに活動。
つくり出す楽曲同様あらゆる良質な音楽から貪欲に選曲し、解放している。
2つのレギュラーパーティー、Bound for Everywhereと Monday Moonを中心に各地へ。
可能であれば出来る限りの機材を持ち込んでの音づくりをし、心に届く音でのプレイを信条としている。

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