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田中邦和 & 林正樹 インタビュー ~『田中邦和 & 林正樹 / Double Torus』

『ダブル・トーラス』

 
メガネのような、ドーナツが2つくっついたような形。(こちらを参考
そしてそれは、9月12日に発売される、サキソフォニスト・田中邦和と、ピアニスト・林正樹によるデュオのアルバムタイトルでもある。
 
2012年1月に門仲天井ホールで公開録音されたこの作品には、時には緊密に、時には緩やかに対話する二人の様子が収められている。
バッハやエリントン、パーカー、モンクなどの楽曲の世界を、自在に伸び縮みさせて表現している。
 

二人に、アルバムについてなど、ほぼ同じ質問をメールで投げかけてみました。

 

田中邦和 & 林正樹

 

田中邦和 & 林正樹 インタビュー

 

田中邦和

■選曲はどういうふうに決まっていきましたか? 

共演するようになって、デュオを重ねていくうちにお互いに出し合った曲です。結果的に、曲の構造やサウンドの響きを細部まで大事にする曲がそろった感があります。唯一オリジナルの「ダブルトーラス」は、リハーサルの直前に林君が「この二人でやる、あたかも即興でやったかのような曲」を思いつき、さっと書き上げてくれたものです。
 
 

■音楽以外では、お二人でどのような話をされますか? 

あまり意識しないのでよくわからないところです。先日二人で短いツアーをしたのですが、ほぼ現地集合、現地解散、移動もばらばらだったという、さりげない感じでした。あ、でも仲悪いわけではないと思いますよ。
 
 

■自分の楽器と相手の楽器の魅力をそれぞれ教えて下さい。 

サックスは音が自在にまげられるというか、音色も含めてそういった自由さがあります。ピアノは、オーケストラですよね。ただし、林君がギタリストでもドラマーでも本質は変わらないと思います。楽器よりヒトありきです。林君のピアノは他の人と違うのです。解像度がダントツで、独創的なアイデアの宝庫です。
 
 

■アルバム収録曲の中から、相手のベストプレイを教えて下さい。

あの日の記録ですから、一曲にしぼるのは難しいですが、好きなのは「item6」でしょうか。いろんなシーンの変化が見事です。
 
 
 

林正樹

■二人で演奏するようになった経緯、このアルバムを録音するようになった経緯は? 

この二人は一緒に演奏したら絶対にいいはず!と、2007年の冬に、プロデューサーの徳永氏が共演の機会を設けてくれたんです。案の定、その予感は的中し、その後、都内を中心に定期的に二人でライブを行う様になりました。共演を重ねる度、この2人でしか表現できないJAZZの形がより鮮明になり、今が記録に残す良い時期なのではないかと。僕らの産みの親である徳永氏プロデュースの下、今回のレコーディングが実現しました。何を隠そう徳永氏は、現在大学で数学を教えている准教授でありながら、邦和さんとは大学時代の同級生でもある方なのです。門仲天井ホールでの公開レコーディングは、それならではの程よい緊張感があり、よりいい演奏に繋がったのではないかと思ってます。
 
 

■音楽以外では、お二人でどのような話をされますか? 

眼鏡の話しや、美味しいものの話しでしょうか。二人の共通点の一つに眼鏡へのこだわりがあって、それは今回のアルバムタイトル「ダブルトーラス」に隠された意味の一つにもなっています。でも話はやはり音楽の話が中心ですよ。
 
 

■自分の楽器と相手の楽器の魅力をそれぞれ教えて下さい。 

ピアノの出方次第で、ハーモニー、リズムの土台をしっかりと構築する状態、或はそれを敢えて壊して不安定にするスリリングな状態まで、かなり振れ幅を持って自由にコントロールできるところが、このようなデュオ編成におけるピアノの魅力だと思います。サックスが単音を歌い上げる表現力は、ピアノがどう頑張ってもできない表現ばかりでジェラシーですね。特に邦和さんの人柄から醸し出される、甘く暖かい低音の音色が好きです。
 
 

■アルバム収録曲の中から、相手のベストプレイを教えて下さい。 

敢えて一つというなら「Morning Glory」でしょうか。この曲と「Silence」は僕が邦和さんとのDUOを形に残すなら絶対に収録したいなと思っていました。古き良き時代のジャズをバックボーンに持ちながらも新しい世界に向かって行く邦和さんの大きく暖かな心を感じます。
 
[Interview:樋口亨]
 
 
 
Double Torus
 
■タイトル:『Double Torus』
■アーティスト:田中邦和 & 林正樹
■レーベル:AIRPLANE LABEL
■型番:APX1009
■発売日:2012年9月12日
■価格:2,625円(税込)
 

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田中邦和 & 林正樹

田中邦和(右) & 林正樹(左)

 

田中邦和  http://www.kuni-kuni.net/

1966年生まれ。
大学在学中にジャズ研究会に所属、以後サックスを独学にて習得する。
卒業後5年間の会社員生活を送るが、そののちミュージシャンへと転身。現在に至る。
甘く豊かなサウンドと、ジャズからポップス、クラブミュージックまでの幅広いジャンルで培ったスタイルが持ち味である。
現在は沖祐市(東京スカパラダイスオーケストラのキーボーディスト)とのバンド「sembello」(映画「新・仁義無き戦い~謀殺」サウンドトラック。オリジナルアルバム「sembellogy」。スタンダード・ムード音楽バンド「ブラックベルベッツ」、バリトンサックス11人によるアンサンブル「東京中低域」、「梵鉾」で活動の他、ライブ、コンサート、レコーディングなど精力的におこなっている。
これまでの共演者は、林田健司、ボズ・スキャッグス、Losalios、ラブサイケデリコ、クラムボン、森雪之丞、堂島孝平、(以上ポップス)、山下洋輔、森山威男、クリヤマコト、ジョージ・ガゾーン、エリック・アレキサンダー、エイブラハム・バートン(以上ジャズ)、fantastic plastic machine、ジョー・クラウゼル、coldfeet、( 以上DJ、club music)、等多数。
 
 

林正樹  http://www.c-a-s-net.co.jp/masaki/

1978年東京生まれ。
5才よりピアノを始め、中学入学後ポピュラー音楽に目覚め、独学で音楽理論の勉強を始める。
その後、佐藤允彦、大徳俊幸、国府弘子らに師事し、ピアノ、作曲、編曲などを学ぶ。
97年12月に、民謡歌手の伊藤多喜雄のバンドで南米ツアー、国内ツアーに参加し、プロ活動を始める。
現在は自作曲を中心に演奏するソロピアノでの活動や、自己のカルテット「STEWMAHN」、さがゆきとの「KOKOPELLI」の他に「West/Rock/Woods」「Salle Gaveau」「菊地成孔&ペペ・トルメントアスカラール」「クアトロシエントス」ピアノトリオ「宴」「エリック宮城 EM Band」「SPICK & SPIN」「Archaic」など多数のバンドに在籍中。
2008年にオリジナル曲を集めたピアノソロアルバム『Flight for the 21st』を発売。
2009年NHK「ドキュメント20min」のテーマ音楽を担当。
2011年3月に「林正樹STEWMAHN」の1stアルバム『Crossmodal』をリリース。

 

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