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bar bossa vol.2

bar bossa


vol.2 - お客様:高木洋介さん


いらっしゃいませ。

bar bossaへようこそ。

月の2回目はbar bossa常連のお客様をこのブログ上にお迎えして、
「俺がコンピCDを作るんだったらこうするね」というテーマで選曲していただきます。

では、記念すべき一回目は高木洋介さんです。

ボサノヴァの古いレコードを集めているコレクターの方や、レコード屋で働いているスタッフの方、あるいは東京都内の飲み屋を徘徊している人、および飲み屋のスタッフにはかなり有名な方なので「あ、高木さんだ」と思われている方も多いことでしょう。

高木さんは某大手会社に勤務する普通のサラリーマンです。
「東京にはこういう人がいるから豊かな文化がある」と、他の国や地方に行った時にいつも痛感します。
高木さんはブラジルのジャズ・サンバのピアノトリオが専門です。そしてもちろんアメリカやヨーロッパのジャズもかなり詳しく聞いています。
しかし、あるこだわりをお持ちなんです。
それは、「電化した音楽」は全く聞かない、ということです。食わず嫌いではなく、何度もトライしたようなのですが、やっぱり好きになれないのだそうです。
「電化がダメ」なので、かなり幅は狭くなるのですが、新しいアーティストはもちろんのこと、和モノ、その他の国々関係なく、「良ければ聞く」そうです。
この「良ければ聞く」というのがポイントで、音楽業界の人ではないので、変なしがらみがなく、「高木さんが良い」と言えばそれは「良い音楽」なのです。
そして、その姿勢は高木さんの「飲み屋選び」の基準にもあらわれています。
高木さんが今どんなピアノトリオを聞いているのか、今どんな飲み屋に行っているのかをチェックしていると、東京の流れが把握できます。
高木さんは以前にブログをやっていたのですが、最近はツイッターのみのようです。
後でまとめて出版すればいいのにと思うくらいの情報量ですので、ご興味のある方はチェックしてみて下さい。
@musicanossa


林(以下H)「それでは高木さん、飲み物はどうしますか?」

高木(以下T)「マッカランのハイボールでお願いします。」

H「マッカランは大盛りですよね。」

T「もちろんです。」

H「では、早速ですがどんな曲を選ばれました?」

T「いやあ、常々、やれ無人島盤だとか墓場持参盤だと騒いでおりますが、いざ10曲選べと云われたら難しい仕事ですな。難産でした・・・。で、結局出揃ったラインナップを眺めると、60'sブラジル物のピアノトリオ系ばかり。よくもまぁ、20年近くも飽きもせずにおんなじのばかりを。酔狂というか馬鹿というか。本当に困ったものです・・・。」

H「あの、大丈夫です。その酔狂加減というか馬鹿加減を期待してますから。」

T「え、今、馬鹿って... まあ一曲目はこれですね。」

Astrud Gilberto & Stan Getz / Voce E Eu『Getz Au Go Go』



T「出だし3秒に当方理想のボッサノーヴァが集約されております。バールボッサで酔っ払って何度この話をしたことか・・・(苦笑)。」

H「エルシオ・ミリトのドラムのこの誰にも真似できない軽さとグルーヴ感がアメリカのジャズに乗り移った瞬間。これが僕もボサノヴァがたどり着いたある種の理想だと思います。いやあ、でも僕も何回かけさせられたことか。これだけで高木さん2時間くらい語れますよね。ちなみに高木さんが今『ボッサノーヴァ』って発音しているのは高木さんが所属するボサノヴァ愛好家のコミュニティでは、こう発音、表記するって決まってるからですよね。で、2曲目は?」


T「定番中の定番ですが、コレだけはやはり外せないでしょ。Beco das Garrafasが産んだ奇跡の一枚。This is Bossa Nova。」

Os Gatos / E Nada Mais『Aquele Som Dos Gatos』



H「あの~、定番中の定番って思ってるのは高木さん周辺のボサノヴァマニアだけだと思いますが。でも良い曲ですよね。デオダートが渡米する前にブラジルに残した最高の録音だと僕も思います。あ、高木さんはデオダートは渡米後は電化してるから興味ないですよね。では3曲目は?」


T「京都のVirgin Megastoreでコレと出会っていなければ、今ココには居ない筈。我が人生を狂わせた一枚。」

Lennie Dale / The Lady Is A Tramp『Lennie Dale e o Sambalanco Trio』



H「お、出ましたね。レニー・デイルを語らせたら右に出るものはいないという。高木さん、ホントこのザワザワしたあの時代だけが持つ空気感、好きですよね。では4曲目は?」


Som Tres / Samblues『Som/3』



T「バランスの良さでToninhoとSabaの右に出るリズム隊なし。欲を言えば、あと数枚Som/Maiorでレコーディングして欲しかった・・・。」

H「たぶん、今、高木さんが喋ってること、意味が全部わかるの日本で50人くらいしかいないような気がしますが。でもすごくわかります。あの、僕、こういう話すごく好きです。ついてこれる人だけついてきて下さい。で、5曲目は?」


Le Trio Camara / Muito A Vontade 『Le Trio Camara』



T「某ボッサノーヴァの大師匠曰く『これぞ、Pierre Barouhの成し得た大偉業なり』。」

H「ですね。これも知っている人は常識過ぎる常識なのですが、あえて説明しておきますと、映画『男と女』のピエール・バルーが設立したサラヴァ・レーベルから発表された音源なんですよね。ピエール・バルー、やる時はやりますね。で、6曲目は?」


Rio 65 Trio / Meu Fraco E Cafe Forte『Rio 65 Trio』



T「ジャズサンバにおける生涯再生回数はこの曲がダントツかも。貴重なEdison Machadoのドラムソロ映像をどうぞ。」

H「こういう映像が楽しめるyou tubeってすごい世界ですよね。これはとりあえず見てもらうしかないでしょう。では7曲目は?」


Sambrasa Trio / Sambrasa『Em Som Maior』



T「十数年前、一旦サンバジャズから足を洗うきっかけになった一枚ですね。聴いた瞬間に『上がり』を感じたというか、これ以上のものはもうないだろうと。素晴らしい演奏であるとともに、サンバジャズ全盛期の終わりを告げる一枚なのかも。」

H「あの、今の高木さんの言葉を聞いて『?』って人もいるかも知れないんですけど、深いんです。この時期までジャズ・サンバ界の多くのミュージシャンが試行錯誤してきたことを、エルメート・パスコアルとアイルト・モレイラがここで全部総括して、二人はその後、アメリカに向かうわけですよね。ちなみに高木さん、ここまで到達するのに何百万円もレコードにつぎ込んでます。では8曲目は?」


Luiz Eca / Nao Faz Assim『Luiz Eca - Serie BIS Bossa Nova』



T「これはかなり貴重且つ素敵な音源です。色々手を尽くしてみましたが、どうしても原盤が見つけられず。Bebeto加入前、ベースがOtavioな頃のゼロ期Tamba Trioです。(あくまでも推測ですけど・・・。ベースがBebetoではないことはBebeto本人より確認済み)原盤に関する情報をお持ちの方からの情報を求む!」

H「おおおお、これ来ましたか。これまた日本で50人くらいしかわからない話をしていますね。ゼロ期タンバ、痺れる言葉ですね。これまた蛇足になりますが、タンバは1期、2期~とずっとメンバーが変更していき、それぞれが魅力的なサウンドを残していますが、『それ以前=ゼロ期』というのが存在したんですね。ベベート不在のタンバ。今この瞬間、日本中の『タンバ感』が変更されましたね。さて9曲目は?」


Luiz Carlos Vinhas / Estrelinha - Muito A Vontade - Que Pena - Aquarius『No <>』



T「ヴィーニャスが経営していたハコでのライヴ録音です。あまりにも生々しいライヴ感はエヴァンスのビレッジ・バンガードをも凌ぎますね・」

H「おお、ビレッジ・バンガードを凌ぎますか。言い切っちゃいましたねえ。良いですねえ。これは聞いてもらって納得してもらいましょうか。では最後の10曲目は?」


Tenirio Jr. / Fim De Semana Em Eldorado『Embalo』



T「〆の一枚は、言わずと知れたサンバジャズの金字塔をば。」

H「やっぱり、これですよね。でも『言わずと知れた』って表現、何百人がわかるんだろうって感じがしますが。高木さん、今日はお忙しいところ、どうもありがとうございました。」




高木さん、年末のお忙しい時期にどうもありがとうございました。
これで、日本中に高木さんの熱い情熱が伝われば良いですね。

みなさん、今回はいかがでしたか?

日本には全世界に誇れる「音楽マニア」という人種がいて、彼らを世界に発信出来ればいいなと思います。

クリスマスの飾りつけやお歳暮やおせち料理の展示が目立つようになりましたね。
そろそろ分厚いコートを取り出したりしているのではないでしょうか。

それではまた、こちらのお店でお待ちしております。


bar bossa 林 伸次

「bar bossa」アーカイブ
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林 伸次
1969年徳島生まれ。
レコファン(中古レコード店)、バッカーナ&サバス東京(ブラジリアン・レストラン)、
フェアグランド(ショット・バー)を経た後、1997年渋谷にBAR BOSSAをオープンする。
2001年ネット上でBOSSA RECRDSをオープン。
著書に『ボサノヴァ(アノニマスタジオ)』。
選曲CD、CDライナー執筆多数。
連載『カフェ&レストラン(旭屋出版)』。

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