Title : 「In maggiore」
Artist : Paolo Fresu/Daniele di Bonaventura
トランペットの音色を耳にすると、どうしてもマイルスのそれと比較して聴いてしまうというのは、帝王が残した功罪のひとつだ。トランペットという楽器を選び、ジャズを志すというのは相当な覚悟が必要なのではないだろうかと想像出来る。Paolo Fresuも当然、マイルスからの影響を読み解かれ語られてきたプレイヤーの一人なのであろうが、僕の中ではもう、帝王のことはどうでもいい。イタリア・サルデーニャ島に生まれたという時点で、Paoloが見てきた世界はマイルスとは随分と違うはずだ。それは、今作が見せてくれる景色が雄弁に語っている。マイルスが常に纏っていた重苦しい空気はなく、イタリア男が纏う色気と哀愁のようなものが全面に匂い立っているのだ。(これは日本人が抱くイタリアへの勝手なイメージであることを承知の上で。)
今作は、Paolo Fresuのトランペット、フリューゲルに同じくイタリアのバンドネオン奏者、Daniele di Bonaventuraが絡むデュオ作品。バンドネオンの音色こそ、日本人にとっては異国感を極めて強く感じる楽器で、今作は、僕らを容易く異国へ誘ってくれる。それも、イタリアの海辺の田舎町で、時間は夕暮れあたりか。少し好ましく思っている仲の良い綺麗な女性との食事の約束を控えているのだけれども、不思議と今日は気分が高揚しない。それは、沈んだ曇り空のせいか、あるいは何か別に理由が・・・というシチュエーションだ。これはあくまでも個人的な妄想だけれど、かなり視覚的刺激を与えてくれる一枚であることは間違いない。どうやら"Wenn aus den Himmel"とうタイトルでドキュメンタリーフィルムが制作されているようなので、機会があったら是非、見てみたいものだ。そのフィルムに海辺の田舎町の綺麗な女性が写っているのかどうかは知らないけれども。
文:平井康二
【Wenn aus dem Himmel... (quando dal cielo...) - Trailer HD】
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平井康二(cafeイカニカ オーナー) 1967年生まれ。レコード会社、音楽プロダクション、 |
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